●ヘッドアップディスプレイ●
以下、本発明に係る画像表示装置の実施形態であるヘッドアップディスプレイ(以下「HUD」とする。)について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、HUD1000は、光源装置100と、第1光学系である走査光学系200と、第2光学系である虚像光学系300と、を有してなる。
HUD1000は、物体(自動車や航空機、船舶等の移動体)に搭載され、当該物体の動作や制御に関する情報を視認しやすく表示する画像表示装置である。以下、HUD1000を自動車に装備した場合の例を用いて説明する。
HUD1000は、走査光学系200において表示対象の情報を含む中間画像を形成する。この中間画像が虚像光学系300において拡大投射され、利用者11において拡大虚像12として視認できる状態になる。走査光学系200における中間画像の形成には、光源装置100から出射された光が用いられる。
本実施形態に係る虚像光学系300は、自動車のフロントウインドシールド10(いわゆるフロントガラス)をコンバイナ302として用いている。なお、フロントウインドシールド10の代わりに、別体の透過反射部材をコンバイナ302として用いてもよい。以下の説明において、虚像光学系300における中間画像の投射対象は、「コンバイナ302」または「フロントウインドシールド10」のいずれかを用いる。
自動車のフロントウインドシールド10は、利用者11の視野における上下方向に傾斜している。したがって、フロントウインドシールド10は、その上辺側が利用者11側に近く、下辺側が利用者11から遠い。また、フロントウインドシールド10は、利用者11の視野における左右方向に湾曲している。当該自動車が右ハンドル仕様の場合、フロントウインドシールド10は利用者11の視野の左側から中間部分に向けて利用者11から遠ざかるようになっていて、中間部分から右側に向かうにつれて利用者11に近くなるように湾曲している。
走査光学系200において形成された中間画像がコンバイナ302に投射されると、利用者11にとってはコンバイナ302の物理的な位置よりも離れた位置に拡大虚像12として見えるようになる。この拡大虚像12に、当該自動車の動作状態等に情報(移動速度、移動距離、行き先表示等のナビゲーション情報)が、表示される。
中間画像が投射されるコンバイナ302としてフロントウインドシールド10を利用するタイプのHUD1000をフロントガラス投射型という。一方、フロントウインドシールド10とは別体の透過反射部材を用いるタイプをコンバイナ投射型という。いずれのタイプであっても表示可能な情報に差異は生じない。自動車内部の居室空間におけるデザイン性の観点や、利用者11の視界にフロントウインドシールド10とは別体の物(コンバイナ302)が入る煩わしさ等の観点から、フロントガラス投射型の方がより好適である。
フロントガラス投射型の場合、一般に、車両のダッシュボード内に中間画像を生成する光学系(走査光学系200)が埋め込まれる。なお、利用者11の視点は、単に基準となる視点位置(基準アイポイント)を示している。利用者11の視点範囲は、自動車の運転者アイレンジ(JIS D0021)と同等かそれ以下である。
ここで、本実施形態の説明に用いる3次元直交座標系について図1を用いて説明する。図1において、利用者11から拡大虚像12に向かう方向、すなわち、利用者11の視野の方向がHUD1000を搭載した自動車の進行方向前方になる。
図1に示すように、利用者11の視野方向をZ軸方向とし、前方向を−Z方向、後ろ方向を+Z方向とする。また、利用者11の視野の左右方向をX軸方向とする。この場合、利用者11における右手方向(紙面奥方向)を+X方向とし、左手方向を−X方向(紙面手前方向)とする。また利用者11の視野の上下方向をY軸方向とする。利用者11における上方向を+Y方向とし、下方向を−Y方向とする。言い換えると、自動車の幅方向をX軸方向、高さ方向をY軸方向、長さ方向をZ軸方向とする。
ここで、HUD1000の全体構成について説明する。図1に示すように、虚像光学系300を構成する拡大凹面鏡301からコンバイナ302へ入射される中間画像(画像光)の入射領域の中心を「入射領域中心303」とする。入射領域中心303の接平面は、X軸方向から見て、利用者11の視点と拡大虚像12の中心(虚像中心305)とを結ぶ第1仮想軸304に対して傾斜している。また入射領域中心303における接平面をY軸方向から見ると第1仮想軸304に対して傾斜している。なお、第1仮想軸304は、入射領域中心303を通過する軸である。
また、拡大凹面鏡301の反射面の中心を、反射面中心307とする。反射面中心307は、拡大凹面鏡301の有効反射領域の中心であり、走査光学系200から虚像光学系300へ入射される光束の中心である。
走査光学系200において形成される中間画像の中心(後述する被走査面素子202の中心)と反射面中心307とを結ぶ第2仮想軸306を想定すると、図1に示すように、第2仮想軸306は、X軸方向から見て、第1仮想軸304に対して傾斜している。また、第2仮想軸306をY軸方向から見ると第1仮想軸304に対して傾斜している。なお、「被走査面の中心」とは、後述する被走査面素子202の有効走査領域の中心を意味する。
●虚像光学系
まず、虚像光学系300の詳細な構成について説明する。図1において示すように、虚像光学系300は、拡大凹面鏡301と、コンバイナ302と、を有してなる。コンバイナ302については、既に説明をしたとおりである。拡大凹面鏡301には、後述する被走査面素子202において形成された「カラーの2次元画像」が画像情報の画素単位の光(各画素に対応する光)が中間画像として届く。拡大凹面鏡301は、この中間画像をコンバイナ302に向けて反射する。
●光源装置
次にHUD1000の各構成について説明する。図2に示すように光源装置100は、カラー画像である拡大虚像12を形成するために用いられる画像表示用ビーム101を出射する。画像表示用ビーム101は、赤(以下「R」と表示する。)、緑(以下「G」と表示する。)、青(以下「B」と表示する。)の3色のビームを1本に合成した光ビームである。
光源装置100は、赤色のレーザー光を出射する第1光源110と、緑色のレーザー光を出射する第2光源120と、青色のレーザー光を出射する第3光源130と、を独立的に有する。第1光源110と第2光源120と第3光源130は、半導体レーザー素子でああって、端面発光レーザーと呼ばれるレーザーダイオード(LD)や、面発光レーザー(VCSEL)を用いることもできる。なお、上記の各光源には半導体レーザー素子に代えてLED素子を用いてもよい。
また、光源装置100は、各光源から出射された光の発散性を抑止する第1コリメータレンズ111と、第2コリメータレンズ121と、第3コリメータレンズ131と、を有する。
また、光源装置100は、各コリメータレンズを通過した光それぞれに対応し、各光の光束径を規制して整形する第1アパーチャ112と、第2アパーチャ122と、第3アパーチャ132と、を有する。また、光源装置100は、整形された各色の光束を合成して画像表示用ビーム101を出射するビーム合成プリズム140と、集光レンズ150と、を有する。
ビーム合成プリズム140は、赤色の光を透過させて緑色の光を反射する第1ダイクロイック膜141と、赤色と緑色の光を透過させて青色の光を反射する第2ダイクロイック膜142と、を有する。
第1光源110から出射された赤色光は、第1コリメータレンズ111と第1アパーチャ112を介してビーム合成プリズム140に入射する。ビーム合成プリズム140に入射した赤色光は、第1ダイクロイック膜141を通過して直進する。
第2光源120から出射された緑色光は、第2コリメータレンズ121と第2アパーチャ122を介してビーム合成プリズム140に入射する。ビーム合成プリズム140に入射した緑色光は、第1ダイクロイック膜141で反射されて赤色光と同方向(第2ダイクロイック膜142の方向)に導光される。
第3光源130から出射された青色光は、第3コリメータレンズ131と第3アパーチャ132を介してビーム合成プリズム140に入射する。ビーム合成プリズム140に入射した青色光は、第2ダイクロイック膜142で赤色光及び緑色光と同方向に反射される。
以上のように、第2ダイクロイック膜142を通過した赤色光及び緑色光と、第2ダイクロイック膜142で反射した青色光は、ビーム合成プリズム140から同じ方向に出射される。ビーム合成プリズム140から出射されたレーザー光は、赤色光と緑色光と青色光が1本の光束として合成されたレーザー光束である。このレーザー光束は、集光レンズ150によって画像表示用ビーム101に変換される。
集光レンズ150は、後述する光走査手段である2次元偏向素子201(図3参照)に収束光である画像表示用ビーム101を導光する光学素子であって、波長587.56nm(基準波長)による焦点距離fは、150mmよりも長いものが好適である。
画像表示用ビーム101を構成するR、G、Bの各色レーザー光束は、表示対象である「2次元のカラー画像」に係る信号やデータに応じて、強度変調されている。このレーザー光束の強度変調は、各色の半導体レーザーを直接変調する方式(直接変調方式)でも良いし、各色の半導体レーザーから出射されたレーザー光束を変調する方式(外部変調方式)でも良い。
すなわち、各光源は、それぞれを駆動する駆動手段によって、R、G、Bの各色成分の画像信号により発光強度を変調された各色のレーザー光を出射する。
●走査光学系
次に、走査光学系200について詳細に説明する。まず、走査光学系200が備える被走査面素子202について説明する。図12は、被走査面素子202は画像表示用ビーム101の入射方向の斜め上から被走査面素子202を見た斜視図である。図12に示すように被走査面素子202は、X方向が長手方向、Y方向が短手方向であって、長手方向に湾曲したシリンダ形状を有している。被走査面素子202の湾曲部分の頂部に相当する凸部分は、−Z方向に向いている。なお、被走査面素子202は、短手方向においても湾曲していてもよい。短手方向にも湾曲する場合、その凸面は−Z方向に向いている。
上記の被走査面素子202を備える走査光学系200は、図3に示すように、走査光学系200は、光走査手段である2次元偏向素子201と、画像形成部である被走査面素子202と、を有してなる。
図3(a)は、走査光学系200をXZ平面において−Y方向から+Y方向を見た様子を示す光学配置図である。すなわち、図3(a)は、走査光学系200を下側から見た平面図である。
図3(b)は、走査光学系200をYZ平面において−X方向から+X方向を見た様子を示す光学配置図である。すなわち、図3(b)は、走査光学系200を左方向から見た側面図
である。
図3(a)に示すように、被走査面素子202は少なくともXZ平面において、拡大凹面鏡301側に凸面を向けて湾曲している。X方向は、すでに説明したとおり、被走査面素子202の長手方向である。この長手方向は、拡大虚像12の長手方向と同一方向になる。
また、被走査面素子202は、図3(b)に示すようにYZ平面において、拡大凹面鏡301側に凸面を向けて湾曲していてもよい。Y方向は、すでに説明したとおり、被走査面素子202の短手方向である。この短手方向は、拡大虚像12の短手方向と同一方向になる。
なお、被走査面素子202は、2次元偏向素子201の光走査によって拡大凹面鏡301側に中間画像を現す透過部材である。
図3に示すように、走査光学系200は、2次元偏向素子201と被走査面素子202の間に、画像表示用ビーム101に対して集光作用や発散作用を与える集光素子を含まない。これによってHUD1000は、ロバスト性を向上させながら、コストを低減することができる。
光走査手段である2次元偏向素子201は、光源装置100から出射された画像表示用ビーム101を2次元的に偏向する素子である。2次元偏向素子201は、互いに直交する2軸を用いて揺動するように構成された微小なミラーの集合体であって、半導体プロセス等で微小揺動ミラー素子として作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)である。なお、2次元偏向素子201として用いるMEMSの構造は、上記の例に限られるものではなく、1軸に2個の微小ミラーを配置して、この1軸の周りに2個の微小ミラーが互いに直交する方向に揺動するように構成したものなどでもよい。
画像表示用ビーム101は、2次元偏向素子201による偏向動作に対応して被走査面素子202に入射する。この画像表示用ビーム101によって、被走査面素子202は主走査方向と副走査方向において2次元的に走査される。より具体的には、例えば、主走査方向は高速で走査され、かつ副走査方向は低速で走査されるラスタースキャンが行われる。この被走査面素子202における2次元走査によって、中間画像が形成される。ここで形成される中間画像は、「カラーの2次元画像」である。本実施形態では、カラー画像を前提として説明しているが、被走査面素子202においてモノクロ画像を形成してもよい。
なお、被走査面素子202において各瞬間に表示されるのは「画像表示用ビーム101が、その瞬間に照射している画素のみ」である。したがって、上記の「カラーの2次元画像」は、画像表示用ビーム101によって2次元的に走査されたことによる「各瞬間に表示される画素の集合」として形成される。
被走査面素子202は、微細な凸レンズを用いて構成されている。画像表示用ビーム101により被走査面素子202に形成された中間画像は、上記の微細凸レンズ構造によって拡大されて虚像光学系300側に現れる。この拡大された中間画像は、拡大凹面鏡301によって反射されてコンバイナ302に投射される。コンバイナ302は投射された画像を利用者11側に反射する。この画像が利用者11の網膜に結像されて拡大虚像12として視認される。以上の構成によって、利用者11が頭を少々動かしても(視点を動かしても)、拡大虚像12を確実に視認できようになる。
なお、被走査面素子202は、微細凸レンズ構造(マイクロレンズアレイ)に限ることはなく、拡散板や透過スクリーン、または反射スクリーンなどを用いても良い。本実施形態では、マイクロレンズアレイである被走査面素子202は、複数のマイクロレンズが2次元配列されているものを前提としているが、これに代えて、複数のマイクロレンズを1次元配列したもの、又は3次元配列したものを用いてもよい。
次に、走査光学系200の実施例について説明する。以下に示す表1は、実施例1に係るHUD1000の仕様と画像形成部である被走査面素子202の寸法の例を示す。
以下の表2は、光走査手段である2次元偏向素子201(MEMS)の仕様の例を示す。なお、振り角とは、2次元偏向素子201が備える微小ミラーの傾斜角度のことをいう。
以下の表3は、光源装置100と走査光学系200に含まれる光学素子に関するデータの例を示す。表3中の「面番号」は、光源装置100が備える第1光源110、第2光源120、第3光源130の発光点を「第0面」とし、被走査面素子202への光の入射側を第9面としている。第1面から第8面は、上記の各光源部から出射された光に対して収束や発散などの光学的作用を与える面を示している。
表3中に示す第5面は、第1アパーチャ112と第2アパーチャ122と第3アパーチャ132のそれぞれのアパーチャ面に対応する。これらアパーチャ面の主走査方向と副走査方向のサイズによって規定されるアパーチャの開口面積は、各アパーチャによってそれぞれ異なる大きさを持っている。
赤色光源に対応する第1アパーチャ112のアパーチャ面は、主走査方向のサイズが2.08mm、副走査方向のサイズが3.04mmである。これに対し、緑色光源に対応する第2アパーチャ122と、青色光源に対応する第3アパーチャ132のアパーチャ面の主走査方向のサイズはともに2.0mm、副走査方向のサイズはともに2.4mmである。すなわち、赤色光源である第1光源部に対応する第1アパーチャ112の開口面積は、第2アパーチャ122、第3アパーチャ132のいずれの開口面積よりも大きい。これによって、赤色光源からの光の取り込み効率を高くすることができる。
また表3に示すように、被走査面素子202のY曲率半径Ry(1.00E+18)と、X曲率半径Rx(44.8)の関係は、|Rx|<|Ry|である。なお、被走査面素子202におけるY曲率半径Ryとは、被走査面素子202の短手方向(Y方向)の中心における曲率半径をいう。また、被走査面素子202におけるX曲率半径Rxとは、被走査面素子202の長手方向(X方向)の中心における曲率半径をいう。
また、被走査面素子202の短手方向の中心における曲率半径(Y曲率半径Ry)は、1.00E+18であるから実質的に平面である。一方、被走査面素子202の長手方向の中心における曲率半径(X曲率半径Rx)は、44.8である。したがって、被走査面素子202は長手方向において湾曲形状を有するシリンダ形状を有している。
また表3に示すように、集光レンズ150は、光走査手段である2次元偏向素子201に収束光を導光する光学素子であって、波長587.56nmの光に対する焦点距離fは150mmよりも大きい。これによって、被走査面素子202上のビームスポット径を小さくし、解像度の高い中間画像を形成できる。
次に、実施例1の走査光学系200を備えるHUD1000の光学性能について説明する。図4は、被走査面素子202における主走査断面方向の光路図の例を示している。以下、実施例1の説明において図4(a)に示すように被走査面素子202の形状を仮に平面にした場合を比較例として用いながら、HUD1000の光学性能について説明する。以下の光学性能に係る諸元は、計算機シミュレーションにより算出したものである。
図4(a)は、比較例であって被走査面素子202を長手方向において仮に平面にした場合の光路図である。図4(b)は、すでに説明したとおり、主走査方向における曲面形状を有する被走査面素子202の光路図である。
次に、実施例1における被走査面素子202上の画像表示用ビーム101の到達位置とビームスポット径の大きさの相関について図5を用いて説明する。図5のグラフの横軸は、以下に表4における「番号」に対応する主走査方向と副走査方向の角度に2次元偏向素子201の微小ミラーの角度を設定したときの被走査面素子202上に光の到達位置を示している。なお、表4の角度は、走査光学系200の光軸に対する微小ミラーの角度を示している。また、図5のグラフの縦軸はビームスポット径の大きさを示している。
図5(a)のグラフは、被走査面素子202を平面にした場合の比較例であって、図5(b)のグラフが被走査面素子202の場合である。図5のグラフを比較して明らかなとおり、被走査面素子202が長手方向における曲面形状になっていると、被走査面素子202が平面の場合に比べて、被走査面素子202上における各位置でのビームスポット径の大きさのばらつきが小さくなる。
次に、図6を用いて、被走査面素子202を法線方向(Z軸方向、すなわち前後方向)に移動させた場合に生ずる、画像表示用ビーム101の各到達位置でのビームスポット径の変化について説明する。図6のグラフにおける横軸は、表3に示された諸元によって規定される被走査面素子202の位置を原点とした場合の移動量を示している。また、縦軸は被走査面素子202上に形成されるビームスポット径の大きさを示している。
図6(a)は、比較例として、平面である被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と主走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。図6(b)は、同様に比較例として、平面である被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と副走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。図6(c)は、長手方向において湾曲している被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と主走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。図6(d)は、長手方向において湾曲している被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と副走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。
図6中に示されている実線とグラフ縦軸との交点の値は、実施例1におけるビームスポット径の目標値である。実施例1に係る被走査面素子202であればビームスポット径は、主走査方向におけるビームスポット径の目標値は103μmであって、副走査方向におけるビームスポット径の目標値は89μmである。
また、図6中に示している縦軸と平行の2つの破線とグラフ横軸との交点の値である原点からの移動量の差分は、ビームスポット径の目標値を満足するために許容される被走査面素子202の前後方向の許容移動量を示している。図6に示すように、被走査面素子202が平面であると、許容移動量は10.8mm程度である。一方、本実施例に係る被走査面素子202であれば、許容移動量は13mm程度である。
したがって、被走査面素子202が主走査方向(長手方向)において湾曲する曲面形状であれば、主走査方向のビームスポット径を満足できる大きさにするための被走査面素子202の前後方向の許容移動量を大きくすることができる。
同様に、被走査面素子202の副走査方向における許容移動量を比較すると、被走査面素子202が平面であれば7.2mm程度であるが、被走査面素子202が主走査方向において曲面形状でれば、許容移動量は8.5mm程度である。すなわち、本実施例に係る被走査面素子202であれば、副走査方向の許容移動量も大きくすることができる。
以上のとおり、本実施例に係る被走査面素子202であれば、主走査方向において曲面形状をなしていることで、走査光学系200を組立てる際に、被走査面素子202の位置ずれの許容値を大きくすることができる。この結果として、ロバスト性が高くなる。
次に、被走査面素子202における光の到達点(画像表示用ビーム101の到達点)について、上記に倣って比較しながら説明する。図7は、表4における各微小ミラーの角度の組み合わせにおける被走査面素子202上での光の到達点の様子を示したものである。すなわち、図7は被走査面素子202上における画像形成の形を示している。
図7(a)は、被走査面素子202の形状を平面にした場合の例である。図7(b)は、被走査面素子202が長手方向において湾曲している場合の例である。被走査面素子202の形状が、長手方向(主走査方向に)において湾曲する曲面形状であれば、平面の場合よりも画像(中間画像)の歪みを小さくできることがわかる。したがって、走査光学系200の後段に配置される虚像光学系300によって表示される拡大虚像12における画像の歪みも小さくできるので、画質の良い拡大虚像12を表示することができる。
次に、走査光学系200の別の実施例について説明する。以下に示す表5は、実施例2に係るHUD1000の仕様と画像形成部である被走査面素子202の寸法の例を示す。
以下の表6は、光走査手段である2次元偏向素子201(MEMS)の仕様の例を示す。なお、振り角とは、2次元偏向素子201が備える微小ミラーの傾斜角度のことをいう。
以下の表7は、光源装置100と走査光学系200に含まれる光学素子に関するデータの別の例を示す。表7中の「面番号」は、光源装置100が備える第1光源110,第2光源120、第3光源130の発光点を「第0面」として、被走査面素子202への光の入射面を第9面としている。第1面から第8面は、上記の各光源部から出射された光に対して収束や発散などの光学的作用を与える面を示している。
表7中に示す第5面は、第1アパーチャ112と第2アパーチャ122と第3アパーチャ132のそれぞれのアパーチャ面に対応する。これらアパーチャ面の主走査方向と副走査方向のサイズによって規定されるアパーチャの開口面積は、各アパーチャによってそれぞれ異なる大きさを持っている。
赤色光源に対応する第1アパーチャ112のアパーチャ面は、主走査方向のサイズが2.08mm、副走査方向のサイズが3.04mmである。これに対し、緑色光源に対応する第2アパーチャ122と、青色光源に対応する第3アパーチャ132のアパーチャ面の主走査方向のサイズはともに2.0mm、副走査方向のサイズはともに2.4mmである。すなわち、赤色光源である第1光源部に対応する第1アパーチャ112の開口面積は、第2アパーチャ122、第3アパーチャ132のいずれの開口面積よりも大きい。これによって、赤色光源からの光の取り込み効率を高くすることができる。
また表7に示すように、被走査面素子202のY曲率半径Ry(1.00E+18)と、X曲率半径Rx(58.821)の関係は、|Rx|<|Ry|である。被走査面素子202におけるY曲率半径Ryとは、被走査面素子202の短手方向(Y方向)の中心における曲率半径をいう。また、被走査面素子202におけるX曲率半径Rxとは、被走査面素子202の長手方向(X方向)の中心における曲率半径をいう。
また、被走査面素子202の短手方向の中心における曲率半径(Y曲率半径Ry)は、1.00E+18であるから実質的に平面である。一方、被走査面素子202の長手方向の中心における曲率半径(X曲率半径Rx)は、58.821ある。したがって、被走査面素子202は、拡大虚像12の長手方向において湾曲形状を有するシリンダ形状である。
また表7に示すように、集光レンズ150は、光走査手段である2次元偏向素子201に収束光を導光する光学素子であって、波長587.56nmの光に対する焦点距離fが150mmよりも大きい。これによって、被走査面素子202上のビームスポット径を小さくし、解像度の高い中間画像を形成できる。
次に、実施例2の走査光学系200を備えるHUD1000の光学性能について説明する。図8は、被走査面素子202における主走査断面方向の光路図の例を示している。以下、実施例1の説明において図8(a)に示すように被走査面素子202の形状を仮に平面にした場合を比較例として用いながら、HUD1000の光学性能について説明する。以下の光学性能に係る諸元は、計算機シミュレーションにより算出したものである。
図8(a)は、比較例であって、被走査面素子202の形状を仮に平面にした場合の光路図である。図8(b)は、実施例2に係る被走査面素子202の光路図である。
次に、実施例2における被走査面素子202上の画像表示用ビーム101の到達位置とビームスポット径の大きさの相関について図9を用いて説明する。図9のグラフの横軸は、以下に表8における「番号」に対応する主走査方向と副走査方向の角度に2次元偏向素子201の微小ミラーの角度を設定したときの被走査面素子202上に光の到達位置を示している。なお、表8の角度は、走査光学系200の光軸に対する微小ミラーの角度を示している。また、図9のグラフの縦軸はビームスポット径の大きさを示している。
図9(a)のグラフは、被走査面素子202を平面にした場合の比較例であって、図9(b)のグラフが被走査面素子202の場合である。図9のグラフを比較して明らかなとおり、被走査面素子202が長手方向における曲面形状になっていると、被走査面素子202が平面の場合に比べて、被走査面素子202上における各位置でのビームスポット径の大きさのばらつきが小さくなる。
次に、図10を用いて、被走査面素子202を法線方向(Z軸方向、すなわち前後方向)に移動させた場合に生ずる、画像表示用ビーム101の各到達位置でのビームスポット径の変化について説明する。図10のグラフにおける横軸は、表7に示された諸元によって規定される被走査面素子202の位置を原点とした場合の移動量を示している。また、縦軸は被走査面素子202上に形成されるビームスポット径の大きさを示している。
図10(a)は、比較例として、平面である被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と主走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。図10(b)は、同様に比較例として、平面である被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と副走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。図10(c)は、長手方向において湾曲している被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と主走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。図10(d)は、長手方向において湾曲している被走査面素子202をZ軸方向に移動させたときの画像表示用ビーム101の到達位置と副走査方向のビームスポット径の大きさの相関を示している。
図10中に示されている実線とグラフ縦軸との交点の値は、実施例2におけるビームスポット径の目標値である。実施例2に係る被走査面素子202であればビームスポット径は、主走査方向におけるビームスポット径の目標値は110μmであって、副走査方向におけるビームスポット径の目標値は95μmである。
また、図10中に示している縦軸と平行の2つの破線とグラフ横軸との交点の値である原点からの移動量の差分は、ビームスポット径の目標値を満足するために許容される被走査面素子202の前後方向の許容移動量を示している。図10に示すように、被走査面素子202が平面であると、許容移動量は13mm程度である。一方、本実施例に係る被走査面素子202であれば、許容移動量は15mm程度である。
したがって、被走査面素子202が主走査方向(長手方向)において湾曲する曲面形状であれば、主走査方向のビームスポット径の大きさを満足できる被走査面素子202の前後方向の許容移動量を大きくすることができる。
同様に、被走査面素子202の副走査方向における許容移動量を比較すると、被走査面素子202が平面であれば7.2mm程度であるが、被走査面素子202が主走査方向において曲面形状でれば、許容移動量は9.6mm程度である。すなわち、本実施例に係る被走査面素子202であれば、副走査方向の許容移動量も大きくすることができる。
以上のとおり、本実施例に係る被走査面素子202であれば、主走査方向において曲面形状をなしていることで、走査光学系200を組立てる際に、被走査面素子202の位置ずれの許容値を大きくすることができる。この結果として、ロバスト性が高くなる。
次に、平面の被走査面素子202における光の到達点(画像表示用ビーム101の到達点)について、上記に倣って比較しながら説明する。図11は、表8における各微小ミラーの角度の組み合わせにおける被走査面素子202上での光の到達点の様子を示したものである。すなわち、図11は被走査面素子202上における画像形成の形を示している。
図11(a)は、被走査面素子202の形状を平面にした場合の例である。図11(b)は、被走査面素子202が長手方向において湾曲している場合の例である。被走査面素子202の形状が、長手方向(主走査方向に)において湾曲する曲面形状であれば、平面の場合よりも画像(中間画像)の歪みを小さくできることがわかる。したがって、走査光学系200の後段に配置される虚像光学系300によって表示される拡大虚像12における画像の歪みも小さくできるので、画質の良い拡大虚像12を表示することができる。
以上説明したHUD1000によれば、被走査面素子202を虚像光学系300の拡大凹面鏡301側に凸面を向けた湾曲形状にすることで、被走査面素子202上におけるビームスポット径のばらつきを抑制することができる。これによって、ビームスポット径を目標範囲内に抑えるために被走査面素子202の位置調整量を大きく確保することができる。換言すれば、ビームスポット径を目標範囲内に抑えるために被走査面素子202の許容移動量を増やすことができる。
また、被走査面素子202上における画像の歪曲を改善することができる。さらに、2次元偏向素子201と被走査面素子202との間にパワーを持つ光学素子を配置する必要もないので、ロバスト性が高く、低コストで簡易な構成による小型の画像形成装置を提供することができる。
●上記実施例による効果
画像形成部を反射鏡側に湾曲させることで、画像形成部におけるビームスポット径のばらつきを抑制することができる。また、ビームスポット径を目標範囲に抑えるための画像形成部の許容移動量の増やすことができる。さらに、画像形成部において形成される画像の歪曲を改善することができる。
また、長手方向に対応した画像形成部の中心の曲率半径が、短手方向に対応した画像形成部の中心の曲率半径よりも小さい。これによって、虚像の長手方向で起こりやすい画像の歪みや解像性能の低下をより効果的に改善できる。
また、画像形成部をシリンダ形状にすることで、画像の長手方向の歪みや解像性能の低下をさらに改善できる。
また、光走査手段から画像形成部の間に、集光、あるいは発散の作用を有する光学素子を含まない。これによって、低コストであってもロバスト性が高い画像表示装置を得ることができる。
また、光走査手段に収束光を導光する光学素子の波長587.56nmにおける焦点距離fが150mmよりも長い。これによって、画像形成部上のビームスポット径を小さくすることができ、解像度が高い画像を表示することができる。
また、赤色光源用のコリメータレンズ後のアパーチャの開口面積が緑色と青色光源用のコリメータレンズ後のアパーチャの開口面積よりも大きい。これによって、赤色光源からの光の取り込み効率の高くすることができる。
また、光源としてレーザーやLEDを使用することができる。したがって、光源にランプを用いる場合と比較すると小型かつ、長寿命のものを備えることができ、かつ、色再現性の良い画像を表示することができる。
また、移動体に搭載することで、運転者が少ない視線移動で警報・情報を認知できる。