以下、本願発明の直流遮断装置の実施形態1〜8を図1〜図18に基づいて詳述する。
[実施形態1]
本実施形態1の直流遮断装置の構成を図1に示す。第1,第2直流系統10,20間における直流線路に、第1機械式遮断器1,および、電力変換回路6が挿入される。電力変換回路6は、第1コンデンサアーム2aおよび第2コンデンサアーム2bと、中間半導体スイッチ5と、インダクタ7と、で構成される。
第1コンデンサアーム2aは、直流線路の正極と負極との間に第1コンデンサ3aと第1アームスイッチ部4aを直列に接続することによって構成される。第1アームスイッチ部4aは第1抵抗41aおよび第1半導体スイッチ42aを直列に接続することによって構成される。第1アームスイッチ部4aは、片方向の電流を制御し、その逆方向への電流は導通する機能を持つ。第1アームスイッチ部4aの第1抵抗41aと第1半導体スイッチ42aの接続順序はどのような順序でも良い。
第2コンデンサアーム2bは、直流線路の正極と負極との間に第2アームスイッチ部4bと第2コンデンサ3bを直列に接続することによって構成される。第1コンデンサアーム2aと第2コンデンサアーム2bは、第1,第2コンデンサ3a,3bと第1,第2アームスイッチ部4a,4bの接続の順序が2線の直流線路の極性に対して、逆になるように接続される。
例えば、第1コンデンサアーム2aは直流線路の正極側に第1コンデンサ3a,負極側に第1アームスイッチ部4aが接続され、第2コンデンサアーム2bは直流線路の正極側に第2アームスイッチ部4b,負極側に第2コンデンサ3bが接続される。ただし、第1,第2アームスイッチ部4a,4bが導通を制御できる電流方向は、いずれも直流線路の正極側から負極側への方向である。
それぞれの第1,第2コンデンサアーム2a,2bの第1,第2コンデンサ3a,3bと第1,第2アームスイッチ部4a,4bの共通接続点Mの間を接続し、第1コンデンサ3a,第2コンデンサ3bを直列接続する直列経路を形成する。この直列経路には、中間半導体スイッチ5およびインダクタ7が設けられる。ここで中間半導体スイッチ5は、第2コンデンサアーム2bから第1コンデンサアーム2aの方向への電流が制御できる極性(逆方向は導通)に接続する。
第1,第2半導体スイッチ42a,42bおよび中間半導体スイッチ5は一方向へ導通し、そのオン・オフを制御できるスイッチング素子と、それに対して逆並列にダイオードを接続することによって構成される。片方向への電流の導通を制御し、それと逆方向への電流を導通させるスイッチング素子の構成であれば、どのような種類の半導体スイッチング素子を用いても良い。
第1,第2半導体スイッチ42a,42bおよび中間半導体スイッチ5は、定常状態および遮断時などの過渡状態において発生しうる最大の直流線路間の電圧に耐えられるような耐電圧を持つ半導体スイッチを適用する。また、その構成は、複数の半導体スイッチング素子を直列・並列して構成しても良い。複数直列とした場合、その電圧バランスを調整するような補助回路(例えば各半導体スイッチと並列に同じ値の抵抗を挿入するなど)を備えても良い。
第1機械式遮断器1は、図1では直流線路正極側に接続されているが負極側でも良い。第1機械式遮断器1は、オフ状態において、定常状態及び遮断時や事故時等における過渡状態などにおいて直流線路間に発生する最大の直流電圧に耐えられる耐電圧となる。
第1,第2抵抗41a,41bや第1,第2コンデンサ3a,3b,第1機械式遮断器1も複数の素子で構成しても良い。第1,第2コンデンサ3a,3bの容量は第1機械式遮断器1に流れる事故電流を相殺させるに足りる大きさとするのが望ましい。第1,第2抵抗41a,41bは第1,第2コンデンサ3a,3bの充電用であり、比較的大きな値とするのが望ましい。
以下、本実施形態1における直流遮断装置の動作を説明する。本実施形態1では、基本的に第1機械式遮断器1のある第1直流系統10側に直流電圧源を有し、第2直流系統20側の端子間に負荷が接続され、かつ、短絡や地絡の事故は第2直流系統20側において発生する事を想定している。
直流線路に事故がない定常動作時においては、第1機械式遮断器1をオン状態とし、また、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンとする。また、中間半導体スイッチ5はオフ状態としておく。
このとき直流電流は、第1直流系統10側から第1機械式遮断器1および正負の直流線路を通って第2直流系統20側に流れる。第1,第2コンデンサアーム2a,2bには、第1,第2アームスイッチ部4a,4b,第1,第2コンデンサ3a,3bを介して電流が流れ、第1,第2コンデンサ3a,3bがそれぞれ第1系統電圧VDC1(=第2系統電圧VDC2)と等しくなるまで充電される。
直流線路に地絡・短絡等が発生した場合の動作を図2,図3に基づいて説明する。短絡によって発生した事故電流isを図示しない直流電流検出器で検出する。例えば、第1機械式遮断器1に流れる電流(以下、機械式遮断器通過電流と称する)i1を検出し、それが閾値以上になった場合に事故と判定する(図2の時刻T1)。
それに伴って第1,第2コンデンサアーム2a,2bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオフする(時刻T1)。第1,第2半導体スイッチ42a,42bの遮断が完了した後、中間半導体スイッチ5をオンする(時刻T2)。
これにより、第1,第2コンデンサアーム2a,2bの第1,第2コンデンサ3a,3bは中間半導体スイッチ5によって直流線路の正負極間に直列接続された形となり、電力変換回路6は最大で2≡VDC1の電圧を直流端子間に発生させる。
その結果、第1機械式遮断器1には事故電流isと逆方向の共振電流icが流れ、機械式遮断器通過電流i1(=is−ic)は減少を開始する。機械式遮断器1を開路操作し(時刻T3)、第1機械式遮断器1の物理的な開路動作の完了後(時刻T4)もアーク放電により開路した端子間に電流が流れ続ける。しかし、共振電流icが増加し事故電流isと等しくなると、機械式遮断器通過電流i1がゼロとなるため、アーク放電が切れ、第1機械式遮断器1の開路が完了する(時刻T5)。
第1機械式遮断器1の開路操作を開始するタイミングは、機械式遮断器通過電流i1が零に至る前に物理的に開路状態となり、充分遮断状態を維持できるタイミングで良い。従って、図2では中間半導体スイッチ5をONした時刻T2の後に、第1機械式遮断器1の開路操作を開始しているが、機械式遮断器通過電流i1がゼロに至る前に充分遮断状態を維持できるのであれば、時刻T2の前に開路動作を開始してもよい。
開路完了後、直流線路での地絡・短絡等の障害が取り除かれた場合に復帰する際のシーケンスを図4に示す。時刻T1で中間半導体スイッチ5をまずオフし、次に時刻T2で第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンする。その後、第1機械式遮断器1をオン(時刻T3→時刻T4)する。これにより第1,第2コンデンサ3a,3bが第1系統電圧VDC1に充電され、次の遮断動作を実施する準備が完了する。
以上示したように、本実施形態1における直流遮断装置によれば、直流遮断装置における定常時の電流による損失を無くすことができる。(第1機械式遮断器1の抵抗損失をゼロと仮定した場合)
また、事故電流isを相殺する電流の電源を外部から供給する必要がない。さらに、低損失、構成が簡単なハイブリッド式の直流遮断装置を提供することが可能となる。
また、地絡や短絡等の事故発生時は、電力変換回路6による共振電流icにより、素早く第1機械式遮断器1のアークを消し、第1機械式遮断器1を開放することが可能となる。
[実施形態2]
本実施形態2における直流遮断装置の構成を図5に示す。本実施形態2は、実施形態1と電力変換回路6の構成が実施形態1とは異なる。
電力変換回路6は、3つ以上の複数のコンデンサアームと、2つ以上の複数の中間半導体スイッチ5と、インダクタ7によって構成される。以下ではアーム数がn(n=3以上の整数)である時の場合について説明する。
電力変換回路6の両端に配置される第1コンデンサアーム2−1および第nコンデンサアーム2−nは、実施形態1の第1コンデンサアーム2aおよび第2コンデンサアーム2bと同じである。
第2コンデンサアーム2−2から第n−1コンデンサアーム2−(n―1)は、直流線路の正極に接続された正極アームスイッチ部4cと、直流線路の負極に接続された負極アームスイッチ部4dと、正極アームスイッチ部4cと負極アームスイッチ部4dとの間に接続された第2〜第n−1コンデンサ3cによって構成される。
正極アームスイッチ部4cは、直列接続された抵抗41cと正極半導体スイッチ42cと、を備える。負極アームスイッチ部4dは、直列接続された抵抗41dと負極半導体スイッチ42dとを備える。
第1コンデンサアーム2−1の第1コンデンサ3aと第1アームスイッチ部4aとの共通接続点Mと、その隣の第2コンデンサアーム2−2の正極アームスイッチ部4cと第2コンデンサ3cの共通接続点M1を、直列経路により接続する。直列経路には、中間半導体スイッチ5およびインダクタ7が設けられる。
第2コンデンサアーム2−2の第2コンデンサ3cと負極アームスイッチ部4dの共通接続点M2と、その隣の第3コンデンサアーム2−3の正極アームスイッチ部4cと第3コンデンサ3cの共通接続点M1を、直列経路によって接続する。直列経路には、中間半導体スイッチ5およびインダクタ7が設けられる。
以下、同様に第2コンデンサアーム2−2から第n−1コンデンサアーム2−(n−1)の間を直列経路で接続し、直列経路には中間半導体スイッチ5およびインダクタ7を設ける。第n−1コンデンサアーム2−(n−1)と第nコンデンサアーム2−nの間は、第n−1コンデンサアーム2−(n−1)の共通接続点M2と、第nコンデンサアーム2−nの共通接続点Mを直列経路で接続し、直列経路には中間半導体スイッチ5およびインダクタ7を設ける。
第2コンデンサアーム2−2から第n−1コンデンサアーム2−(n−1)における正極,負極アームスイッチ部4c,4dの抵抗41c,41dは、それぞれのアームスイッチ部4c,4dに設けても良いし、片方(1つのアームスイッチ部4cまたは4d)に集約しても良い。また、個々の抵抗41c,41dの抵抗値は同じとする必要は無い。ただし、コンデンサアーム2毎の抵抗41c,41dによる抵抗値(抵抗41cの抵抗値と抵抗41dの抵抗値の和)は同じとするのが望ましい。同様に、中間半導体スイッチ5に直列に接続されるインダクタ7は、各中間半導体スイッチ5毎に配置しても、一つ、もしくは、いくつかに集約しても良い。
本実施形態2の動作および作用を説明する。基本的な動作・作用は、実施形態1と同様である。短絡発生時、すべての第1〜第nコンデンサアーム2−1〜2−nの第1,第2半導体スイッチ42a,42b,正極半導体スイッチ42c,負極半導体スイッチ42dをオフし、また、すべての中間半導体スイッチ5をオンする。
これにより、すべての第1〜第nコンデンサ3a〜3cが直列接続され、電力変換回路6の両端には最大で第1系統電圧VDC1のn倍の電圧が発生する。この電圧源によって発生する電流(コンデンサ3a〜3cとインダクタ7による共振電流)によって、第1機械式遮断器1に流れる事故電流isの短絡電流を相殺し、機械式遮断器通過電流i1を零とすることで、アークを遮断する。その後の動作は実施形態1と同様である。
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、実施形態1と比較して、電力変換回路6の出力電圧を高くすることができ、素早く共振電流icを大きくすることができる。その結果、素早く機械式遮断器通過電流i1(=is−ic)を減少させることができるため、より早く第1機械式遮断器1のアークを消弧し、第1機械式遮断器1を開放できる。
[実施形態3]
本実施形態3における直流遮断装置の構成を図6に示す。本実施形態3は、電力変換回路6の両端に第1機械式遮断器1aおよび第2機械式遮断器1bを配置したものである。図6では、実施形態1の電力変換回路6の両端に第1,第2機械式遮断器1a,1bを設けているが、実施形態2の電力変換回路6の両端に第1,第2機械式遮断器1a,1bを設けても良い。
以下、本実施形態3の動作および作用を図7,図8に基づいて説明する。本実施形態3では、直流電圧源を第1直流系統10側,第2直流系統20側のいずれかまたは両方に設けてもよく、また事故電流の方向も限定しない。
初期状態において、第1機械式遮断器1aおよび第2機械式遮断器1bは開路状態とする。また、第1,第2コンデンサ3a,3bはいずれも放電されているとする。このとき、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをいずれもオンしておく。また、中間半導体スイッチ5はオフしておく。
次に、第1機械式遮断器1aを閉路にする。これにより2つの第1,第2コンデンサ3a,3bが第1,第2アームスイッチ部4a,4bを介していずれも第1系統電圧VDC1に充電される。充電が完了したら、第2機械式遮断器1bを閉路する。以上の手順により、第1直流系統10と、第2直流系統20を導通させる前に、第1,第2コンデンサ3a,3bを充電することができる。第1機械式遮断器1aと第2機械式遮断器1bの投入順序は逆にしても良い。
次に、第2直流系統20側で短絡が発生したときの動作を図7,図8に基づいて説明する。ここで、第1機械式遮断器1aを通過する電流を第1機械式遮断器通過電流i1aと表現している。この場合の動作は、短絡発生の検出まで、実施形態1における動作と同様である。ただし、短絡電流の方向の検出が必要である。短絡電流が直流線路の正側において、第1直流系統10側から第2直流系統20側へ流れていた場合、以下の動作を実施する。
第1,第2半導体スイッチ42a,42bをいずれもオフし(時刻T1)、次に中間半導体スイッチ5をオンする(時刻T2)。第1機械式遮断器1aをオフする(時刻T3〜T4)。電力変換回路6の直流線路両端の電圧が第1系統電圧VDC1より高くなり、事故電流isを相殺する共振電流icが流れる。その結果、第1機械式遮断器通過電流i1aが減少し、第1機械式遮断器1aのアークが切れることで遮断される。
その後、第2機械式遮断器1bをオフする(時刻T6〜T7)。第1,第2機械式遮断器1a,1bをオフ状態を確認し、中間半導体スイッチ5をオフした後に、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンしても良い。その場合、第1,第2抵抗41a,41bによって、第1,第2コンデンサ3a,3bに充電されたエネルギーが放出される。
第1直流系統10側で短絡が発生したときの動作を説明する。事故電流が直流線路の正極側において、第2直流系統20側から第1直流系統10側へ流れていた場合、以下の動作を実施する。第1,第2半導体スイッチ42a,42bをいずれもオフし、次に中間半導体スイッチ5をオンする。
また、第2機械式遮断器1bをオフする。電力変換回路6の直流線路両端の電圧が第2系統電圧VDC2より高くなり、事故電流isを相殺する共振電流icが流れる。その結果、第2機械式遮断器通過電流i1b(=is−ic)は減少し、第2機械式遮断器1bのアークが切れることで遮断される。
その後、第1機械式遮断器1aをオフする。第1,第2機械式遮断器1a,1bをオフし遮断を確認し、中間半導体スイッチ5をオフした後に、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンしても良い。その場合、第1,第2抵抗41a,41bによって、第1,第2コンデンサ3a,3bに充電されたエネルギーが放出される。
復帰シーケンスは、実施形態1の図4の復帰シーケンス例と同じであるが、初期充電シーケンス同様、第1機械式遮断器1aと第2機械式遮断器1bとでタイミングをずらす動作を行う。
以上の第1,第2機械式遮断器1a,1b及び第1,第2半導体スイッチ42a,42b,中間半導体スイッチ5の動作は、実施形態2に対して、第1,第2機械式遮断器1a,1bを電力変換回路6の両端に設けた場合でも同様である。
以上示したように、本実施形態3によれば、実施形態1,2と同様の作用効果を奏する。また、短絡電流の方向に寄らず、電流を遮断できる。
また、初期状態から第1,第2機械式遮断器1a,1bを投入する際、既に線路に短絡が発生していたとしても、両直流線路が閉路される前に電力変換回路6のコンデンサの充電が可能になる。その結果、第1,第2機械式遮断器1a,1bが完全に投入された際にすぐに遮断動作を実行でき、事故に対する保護性能が向上する。
[実施形態4]
本実施形態4における直流遮断装置の構成を図9に示す。本実施形態4は、実施形態3に対し、第1機械式遮断器1aの第1直流系統10側の正負極間および第2機械式遮断器1bの第2直流系統20側の正負極間に、直流コンデンサ8aおよび直流コンデンサ8bを設けたものである。本実施形態4は、第1,第2実施形態の第1機械式遮断器1aに対しても同様に適用できる。
本実施形態4の動作および作用を説明する。基本的な開路動作は実施形態3における動作と同様であるため説明は省略する。
直流コンデンサ8aは、遮断動作時に機能する。例えば、第2直流系統20側で短絡が発生し、第1機械式遮断器1aの遮断動作を行う場合について説明する。電力変換回路6の第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオフし、その後、中間半導体スイッチ5をオンすることで、電力変換回路6が正・負の直流線路両端に電圧を発生させる。
そのとき、共振電流は電力変換回路6の正側から第1機械式遮断器1aを通り、直流コンデンサ8aと、第1直流系統10側とに別れ、電力変換回路6の負極側に流れる。第1直流系統10側は内部インピーダンスや線路のインダクタンスを含むインピーダンスにより電流が制限される。
一方、直流コンデンサ8aは、電力変換回路6の電圧変化にともなって過渡的に低いインピーダンスとなるため、瞬間的に大きな電流が流れやすい。結果として、第1直流系統10側の電源又は負荷への電流を抑制すると共に、第1機械式遮断器1aへの共振電流を素早く大きくすることができる。
その結果、第1機械式遮断器1aの開放速度を速くすることができる。また、第1機械式遮断器1aが開放された後、第1直流系統10側の電源又は負荷の線路インピーダンスが有するエネルギーを、直流コンデンサ8aが吸収することで、電圧上昇を抑制する事ができる。
以上の動作・作用は直流コンデンサ8bおよび第2機械式遮断器1b側も同様である。
以上示したように、本実施形態4によれば、実施形態1〜3と同様の作用効果を奏する。また、第1,第2機械式遮断器1a,1bに流れる短絡電流に対して、電力変換回路6から流れる共振電流の増加を早くすることで、第1,第2機械式遮断器1a,1bの遮断をより高速化できる。
[実施形態5]
本実施形態5における直流遮断装置を図10に示す。本実施形態5における直流遮断装置は、第1,第2直流系統10,20間における直流線路に電力変換回路6を設ける。また、電力変換回路6と第1直流系統10との間に第1機械式遮断器1を設ける。第1機械式遮断器1は正極、負極のいずれの線路に挿入しても良い。
電力変換回路6は、第1コンデンサアーム2aと、第2コンデンサアーム2bと、中間コンデンサ21と、抵抗22と、中間半導体スイッチ5と、インダクタ7と、を有する。
第1コンデンサアーム2aは、第1,第2直流系統10,20間における直流線路の正極と負極との間に第1コンデンサ3aと第1アームスイッチ部4aを直列接続することによって構成される。第1アームスイッチ部4aは、第1抵抗41aおよび第1半導体スイッチ42aを直列接続することにより構成される。第1コンデンサ3aは一端が第1アームスイッチ部4aに接続され、他端が直流線路の正極または負極に接続される。図10では、第1コンデンサ3aの他端は直流線路の正極に接続されている。
第2コンデンサアーム2bは、第1,第2直流系統10,20間における直流線路の正極と負極との間に第2コンデンサ3bと第2アームスイッチ部4bを直列接続することによって構成される。第2アームスイッチ部4bは、第2抵抗41bおよび第2半導体スイッチ42bを直列接続することによって構成される。第2コンデンサ3bは一端が第2アームスイッチ部4bに接続され、他端が直流線路の正極または負極のうち第1アームスイッチ部4aの第1コンデンサ3aとは逆側に接続される。図10では、第2コンデンサ3bの他端は直流線路の負極に接続される。
第1抵抗41aと第1半導体スイッチ42aの共通接続点と、第2抵抗41bと第2半導体スイッチ42bの共通接続点と、の間には中間コンデンサアームが接続される。中間コンデンサアームは抵抗22と中間コンデンサ21と抵抗22を直列接続することによって構成される。
第1コンデンサ3aと中間コンデンサ21、および、中間コンデンサ21と第2コンデンサ3bを接続し、第1,中間,第2コンデンサ3a,21,3bを直列接続する直列経路を形成する。この直列経路には、第1コンデンサ3aと中間コンデンサ21の間,および、中間コンデンサ21と第2コンデンサ3bの間に中間半導体スイッチ5とインダクタ7が設けられる。
中間半導体スイッチ5は、片方向の電流の導通・遮断を制御し、その逆方向への電流は導通する機能を有する。中間半導体スイッチ5の導通・遮断を制御できる電流方向は、直流線路の負側から正側とする。
第1,第2半導体スイッチ42a,42bの通電・導通を制御できる電流極性は、直流線路の正極側から負極側とする。
第1,第2抵抗41a,41b,抵抗22は第1,第2,中間コンデンサ3a,3b,21を充電するための抵抗である。第1,第2半導体スイッチ42a,42bは、想定される直流電圧最大値に耐えられる耐電圧をもつ半導体スイッチを適用する。第1,第2半導体スイッチ42a,42bは、複数の半導体スイッチング素子を直列、又は、並列に接続して構成してもよく、またスイッチング素子の種類は特定のものに限定されるものではない。インダクタ7は各中間半導体スイッチ5に直列に設ける必要は無く、必要に応じて一つのインダクタにまとめても良い。
本実施形態5における動作および作用を説明する。本実施形態5では、基本的に第1機械式遮断器1のある第1直流系統10側に直流電圧源を有し、第2直流系統20側の端子間に負荷が接続され、かつ、短絡や地絡の事故は第2直流系統20側において発生する事を想定している。
直流線路に事故がない定常動作時においては、第1機械式遮断器1をオン状態とする。また、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンとし、中間半導体スイッチ5はオフ状態とする。
このとき直流電流は、第1直流系統10側から第1機械式遮断器1および正負の直流線路を通って流れる。第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオン,中間半導体スイッチ5がオフの状態では、すべての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21は直流線路の正極と負極の間に第1,第2抵抗41a,41b,抵抗22を介して並列に接続された状態となり、その結果、すべての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21は第1系統電圧VDC1(=第2系統電圧VDC2)に充電される。
直流線路に地絡・短絡等の事故が発生した場合の動作を図11,図12に基づいて説明する。短絡によって発生した過大な事故電流isを図示しない直流電流検出器で検出する。例えば、第1機械式遮断器1の線路に電流検出器を備え、機械式遮断器通過電流i1を監視し、一定の閾値以上の電流が流れたときに短絡と判断する。
それに伴って、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオフし(時刻T1)、その後すべての中間半導体スイッチ5をオンする(時刻T2)。また、第1機械式遮断器1を開路操作する(時刻T3〜T4)。
その結果、すべての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21は直流線路の正極と負極の間に直列接続された形となり、電力変換回路6はコンデンサ3個の電圧を足し合わせた電圧(全ての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21の電圧が第1系統電圧VDC1だった場合、3×VDC1)を直流線路間に発生させる。
その結果、「電力変換回路6の両端の電圧≠第1機械式遮断器1側の第1系統電圧VDC1」となっている期間において、電力変換回路6から第1機械式遮断器1に共振電流icが供給される。共振電流icは第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21とインダクタ7によって共振する。
この共振電流icが事故電流isと等しくなると、機械式遮断器通過電流i1(=is−ic)がゼロになる瞬間が発生し、開路操作によって発生していた第1機械式遮断器1のアークが消弧し、開路が完了する。
開路完了後は、中間半導体スイッチ5および第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンしても良い。オンする事で、中間コンデンサ21およびインダクタ7のエネルギーを第1,第2抵抗41a,41bにより発散することができる。
次に、図13に基づいて、本実施形態5の復帰シーケンスを説明する。時刻T1で中間半導体スイッチ5をまずオフし、次に時刻T2で第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンする。その後、第1機械式遮断器1をオン(時刻T3→時刻T4)する。これにより第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21が第1系統電圧VDC1に充電され、次の遮断動作を実施する準備が完了する。
以上示したように、本実施形態5によれば、直流遮断装置における定常時の電流による損失を無くすことができる。(機械式遮断器の抵抗をゼロと仮定した場合)
また、電力変換回路6の共振電流により、素早く第1機械式遮断器1のアークを消弧し、第1機械式遮断器1を開放できる
[実施形態6]
本実施形態6における直流遮断装置を図14に示す。本実施形態6は、実施形態5と電力変換回路6の構成が異なる。
本実施形態6は、第1アームスイッチ部4aと第2アームスイッチ部4bとの間に抵抗22,中間コンデンサ21,抵抗22を直列接続した中間コンデンサアームを複数並列接続したものである。電力変換回路6が備える第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21の数は合計で4つ以上となる。
また、各コンデンサ21の間の直列経路には中間半導体スイッチ5およびインダクタ7が設けられる。インダクタ7は各中間半導体スイッチ5に備えても、一つのインダクタにまとめても良い。
本実施形態6における動作および作用を説明する。基本的な動作・作用は、実施形態5と同じである。
直流線路に事故がない定常動作時においては、第1機械式遮断器1をオン状態とする。また、第1,第2アームスイッチ部4a,4bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンとし、すべての中間半導体スイッチ5はオフとする。
このとき直流電流は第1直流系統10側から第1機械式遮断器1および正負の直流線路を通って流れる。第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオン,中間半導体スイッチ5がオフの状態では、すべての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21は、直流線路の正極と負極との間に第1,第2抵抗41a,41b,抵抗22を介して並列に接続された状態となり、すべての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21は第1系統電圧VDC1(=第2系統電圧VDC2)に充電される。
直流線路に地絡・短絡等が発生した場合、短絡電流を図示しない直流電流検出器で検出する。例えば、第1機械式遮断器1の線路に電流検出器を備え、機械式遮断器通過電流i1を監視し、一定の閾値以上の電流が流れたときに短絡と判断する。
短絡の判定にともなって、第1,第2アームスイッチ部4a,4bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオフする。その後、中間半導体スイッチ5をオンとする。また、第1機械式遮断器1を開路操作する。
その結果、すべての第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21は直流線路の正極と負極の間に直列接続された形となり、電力変換回路6は直流線路間にすべてのコンデンサの電圧を足し合わせた電圧(第1,第2コンデンサ3a,3bと中間コンデンサ21の合計数をn個とし、第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21すべての電圧がVDC1の場合、n×VDC1)を直流線路間に発生させる。
これにより、「電力変換回路6の両端の電圧≠第1機械式遮断器1側の第1系統電圧VDC1」となっている期間において、電力変換回路6から第1機械式遮断器1に共振電流icが供給される。共振電流icは第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21とインダクタ7によって共振する。
第1機械式遮断器1に流れる電流は事故電流isと共振電流icが等しくなるとゼロになる瞬間が発生し、開路操作によって発生していた第1機械式遮断器1のアークが消弧し、開路が完了する。
開路完了後は、第1,第2半導体スイッチ42a,42bおよび中間半導体スイッチ5をオンしても良い。オンする事で、第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21およびインダクタ7のエネルギーを第1,第2抵抗41a,41bにより発散することができる。
以上示したように、本実施形態6によれば、実施形態5と同様の作用効果を奏する。また、実施形態5に対して、電力変換回路6の出力電圧を高くすることができ、素早く共振電流を大きくすることができることで、より早く第1機械式遮断器1のアークを消弧し、第1機械式遮断器1を開放できる
[実施形態7]
本実施形態7の直流遮断装置を図15に示す。図15に示すように、本実施形態7は、実施形態5の電力変換回路6の両端に第1機械式遮断器1aおよび第2機械式遮断器1bを配置したものである。実施形態6の電力変換回路6の両端に第1機械式遮断器1aおよび第2機械式遮断器1bを配置しても良い。
本実施形態7の動作および作用を図15に基づいて説明する。本実施形態7では、直流電圧源が第1直流系統10側,第2直流系統20側のいずれか、または両方に存在していてもよく、また事故電流isの方向も限定しない。
初期状態において、第1機械式遮断器1aおよび第2機械式遮断器1bはオフ状態とする。また、第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21はいずれも放電されているとする。このとき、第1,第2アームスイッチ部4a,4bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをいずれもオンしておく。また、中間半導体スイッチ5は全てオフしておく。
次に、第1機械式遮断器1aを閉路する。これにより3つの第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21がいずれも第1系統電圧VDC1に充電される。充電が完了したら、第2機械式遮断器1bを閉路する。
以上の手順により、第1直流系統10側と、第2直流系統20側を導通させる前に、第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21を充電することができる。これにより、万が一、第1,第2機械式遮断器1a,1bの投入直後に短絡が発生したり、直流線路に電源がなく、短絡が発生している状態が不明であったりした場合に、電力変換回路6が機能しない状態で過電流が発生するのを抑制できる。第1,第2機械式遮断器1a,1bの投入順序は逆にしても良い。
次に、第2直流系統20側で短絡が発生したときの動作を図16に基づいて説明する。短絡発生の検出までは、実施形態5における動作と同様である。ただし、短絡電流の極性の検出が必要である。短絡電流が直流線路の正側において、第1直流系統10側から第2直流系統20側へ流れていた場合、以下の動作を実施する。
第1,第2アームスイッチ部4a,4bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをいずれもオフし(時刻T1)、次に中間半導体スイッチ5を全てオンする(時刻T2)。また、第1機械式遮断器1aをオフする(時刻T3〜T4)。電力変換回路6の直流線路両端の電圧が第1系統電圧VDC1より高くなり、短絡電流を相殺する共振電流icが流れ、第1機械式遮断器通過電流i1aが減少する。その際に第1機械式遮断器1aのアークが消弧することで遮断される。
その後、第2機械式遮断器1bをオフする。両方の第1,第2機械式遮断器1a,1bのオフ状態を確認した後、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンしても良い。その場合、第1,第2抵抗41a,41bによって、コンデンサ21に充電されたエネルギーが放出される。
第1直流系統10側で短絡が発生したときの動作を説明する。短絡電流が直流線路の正側において、第2直流系統20側から第1直流系統10側へ流れていた場合、以下の動作を実施する。第1,第2アームスイッチ部4a,4bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをいずれもオフし、次に中間半導体スイッチ5をオンする。また、第2機械式遮断器1bをオフする。電力変換回路6の直流線路両端の電圧が第2系統電圧VDC2より高くなり、短絡電流を相殺する共振電流が流れ、第2機械式遮断器通過電流i1bが減少する。その際に第2機械式遮断器1bのアークが消弧することで遮断される。
その後、第1機械式遮断器1aをオフする。両方の第1,第2機械式遮断器1a,1bのオフ状態を確認した後、第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンしても良い。その場合、第1,第2抵抗4a,4b,抵抗22によって、第1,第2コンデンサ3a,3b,中間コンデンサ21に充電されたエネルギーが放出される。
次に、図17に基づいて、本実施形態7の復帰シーケンスを説明する。時刻T1で中間半導体スイッチ5をまずオフし、次に時刻T2で第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオンする。その後、第1機械式遮断器1aをオン(時刻T3→時刻T4)する。これにより第1,第2コンデンサ3a,3bが第1系統電圧VDC1に充電され、次の遮断動作を実施する準備が完了する。その後、第2機械式遮断器1bをオン(時刻T5〜T6)する。
以上の第1,第2機械式遮断器1a,1b及び第1,第2半導体スイッチ42a,42b,中間半導体スイッチ5の動作は実施形態6に対して、第1,第2機械式遮断器1a,1bを電力変換回路6の両端に設けた場合でも同様である。
以上示したように、本実施形態7によれば、短絡電流の方向に寄らず、電流を遮断できる。
また、初期状態から第1,第2機械式遮断器1a,1bを投入する際、既に線路に短絡が発生していたとしても、両直流線路が閉路される前に電力変換回路6の充電が可能になる。その結果、第1,第2機械式遮断器1a,1bが完全に投入された際にすぐに遮断動作を実行でき、事故に対する保護性能が向上する。
[実施形態8]
本実施形態8における直流遮断装置を図18に示す。図18に示すように、本実施形態8は、実施形態7に対して、第1,第2機械式遮断器1a,1bの第1直流系統10側,第2直流系統20側に、直流コンデンサ8a,8bを設けたものである。実施形態5,6の第1機械式遮断器1に対しても同様に適用できる。
本実施形態8における直流遮断装置の動作および作用を説明する。基本的な開路動作は実施形態7における動作と同様であるので省略する。
直流コンデンサ8aは、遮断動作時に機能する。例えば、第2直流系統20側で短絡が発生し、第1機械式遮断器1aの遮断動作を行う場合について説明する。第1,第2アームスイッチ部4a,4bの第1,第2半導体スイッチ42a,42bをオフし、その後、中間半導体スイッチ5をオンすることで、電力変換回路6が正・負の直流線路両端に電圧を発生させる。
そのとき、電流は電力変換回路6の正極側から第1機械式遮断器1aを通り、直流コンデンサ8aと、第1直流系統10の直流負荷側とに別れ、電力変換回路6の負極側に流れる。第1直流系統10は内部インピーダンスや線路のインダクタンスを含むインピーダンスにより電流が制限される。
一方、直流コンデンサ8aは、電力変換回路6の電圧変化にともなって過渡的に低いインピーダンスとなるため、瞬間的に大きな電流が流れやすくなる。結果として、第1直流系統10側の電源又は負荷への電流を抑制すると共に、第1機械式遮断器1aへの逆電流を素早く大きくすることができる。
それにより、第1機械式遮断器1aの開放速度を速くすることができる。また、第1機械式遮断器1aが開放された後、第1直流系統10側の電源又は負荷の線路インピーダンスが有するエネルギーを、直流コンデンサ8aが吸収することで、第1直流系統10の電圧上昇を抑制する事が出来る。
以上の動作・作用は直流コンデンサ8bおよび第2機械式遮断器1b側も同様である。
以上示したように、本実施形態8によれば、機械式遮断器通過電流に対して、電力変換回路6が発生させる共振電流の増加を早くすることで、遮断をより高速化できる。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。