JP6793290B2 - 被験物質の皮膚感作性の評価方法、及び樹脂固定ペプチド - Google Patents

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本発明は、被験物質の皮膚感作性の評価方法、及び樹脂固定ペプチドに関する。
皮膚感作性物質は、生体の感受性によっては重篤なアレルギー反応を誘発する。したがって、医薬品、農薬、食料品、化粧品、及び洗剤等の開発において、その原料や添加剤、最終製品等からは皮膚感作性物質が排除されている必要があり、その確認方法として種々の皮膚感作性試験が報告されている。
これらの皮膚感作性試験としては、被験物質を実験動物に適用する試験である、Maximization試験、Buehler試験、及びLocal Lymph Node Assay等が挙げられる。しかしながら、この様な試験においては、実験動物の飼育及び管理等の必要があるだけでなく、皮膚観察等の作業が煩雑である等の問題があった。また、動物愛護の観点からも代替し得る方法を見出すことが求められていた。
この様な問題を解決する方法として、DPRA(Direct Peptide Reactivity Assay)等のペプチド結合性を指標にするin vitroの試験系が開発されている(非特許文献1〜3)。この試験法は、皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドを評価試薬として用い、ペプチドのみを含む溶液と、ペプチドと被験物質とを混合した溶液とを、HPLCクロマトグラフィーを用いて比較し、ペプチドの減少率を算出することで、被験物質に含まれる皮膚感作性物質の有無を評価するものである。
G.F.Gerberick et al., Development of a Peptide Reactivity Assay for Screening. Toxicol. Sci., 81, 332-343:2004. G.F.Gerberick et al., Quantification of Chemical Peptide Reaction for Screening Contact Allergens: A Classification Tree Model Approach. Toxicol. Sci., 97(2), 417-427:2007. EURL ECVAM Recommendation on the Direct Peptide Reactivity Assay (DPRA) for Skin Sensitisation Testing. European Commission, Joint Research Centre, Institute for Health and Consumer Protection (IHCP), EU Reference Laboratory for Alternatives to Animal Testing (EURL ECVAM), November 2013.
しかしながら、これらの試験系では、水に対する溶解性が低い被験物質については試験そのものが実施できないといった問題があった。また、評価試薬として用いられるペプチドにはシステイン残基を含むものがあり、ペプチド間でジスルフィド結合を形成することにより皮膚感作性物質との結合能が消失するため、皮膚感作性試験の精度が低下するといった問題があった。さらに、HPLCクロマトグラフィーを用いて混合前後のペプチド減少率を算出する際、被験物質(の一部)がペプチドと溶出時間が重なることがあり、正確なペプチド減少率を算出することができないといった問題があった。また、そもそもHPLCクロマトグラフィーはその測定に長い時間と手間が必要となるといった問題があった。
したがって、本発明の目的は、種々の被験物質に対して適用可能であり、簡便かつ迅速に、さらに高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価することが可能な方法を提供することである。また、該方法に用いる評価試薬を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の樹脂固定ペプチドを用いて被験物質の皮膚感作性の評価を行った場合、簡便かつ迅速に、さらに高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の工程を含む被験物質の皮膚感作性の評価方法を提供する。
工程A:皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドと樹脂とが結合した樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させる工程
工程C:工程Aの後、樹脂固定ペプチドに、樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質を接触させる工程
工程D:工程Cの後、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程
また、本発明は、以下の工程Bをさらに含むことが好ましい。
工程B:工程Cの前に、工程Aで得られた混合物から樹脂固定ペプチドを分離する工程
また、本発明は、分光法により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価することが好ましい。
また、前記の樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質は、チオール基検出試薬又はアミノ基検出試薬であることが好ましい。
また、前記の樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質は1,2−インダンジオン又は5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)であることが好ましい。
また、前記の樹脂固定ペプチドは後述の式(1)又は(2)で示される樹脂固定ペプチドであることが好ましい。
なお、本発明では、後述の式(1)又は(2)で示される樹脂固定ペプチドについても提供する。
また、前記の樹脂固定ペプチドは被験物質の皮膚感作性の評価方法に用いられることが好ましい。
なお、本発明では、前記の樹脂固定ペプチドを含む皮膚感作性評価試薬についても提供する。
また、前記の樹脂固定ペプチドは皮膚感作性物質の除去剤として用いられることが好ましい。
なお、本発明では、前記の樹脂固定ペプチドを含む皮膚感作性物質除去剤についても提供する。
本発明によれば、種々の被験物質に対して適用可能であり、簡便かつ迅速に、さらに高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価することができる。
本発明の被験物質の皮膚感作性の評価方法(以下、「本発明の評価方法」と称することがある)は、以下の工程を含むことを特徴とする。
工程A:皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドと樹脂とが結合した樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させる工程
工程C:工程Aの後、樹脂固定ペプチドに、樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質を接触させる工程
工程D:工程Cの後、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程
なお、皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドと樹脂とが結合した樹脂固定ペプチドを、単に「樹脂固定ペプチド」と称することがある。また、前記樹脂固定ペプチドは本発明の評価方法における試薬(以下、「本発明の評価試薬」と称することがある)として用いることができる。
<被験物質の皮膚感作性の評価方法>
本発明の評価方法は、樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させる工程(工程A)、工程Aの後、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)に、樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質を接触させる工程(工程C)、及び、工程Cの後、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程(工程D)を含むことを特徴とする。また、本発明の評価方法では、工程Cの前に、工程Aで得られた混合物から樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)を分離する工程(工程B)を設けてもよい。なお、工程Aで得られた混合物とは、樹脂固定ペプチドと被験物質とを接触することにより得られる混合物を指す。また、「樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)」とは、樹脂固定ペプチドのみ、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物のみ、又は樹脂固定ペプチド及び樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物の両方を意味する。
本発明の評価方法において、被験物質に皮膚感作性物質が含まれる場合は、樹脂固定ペプチドと被験物質とを接触させることで、被験物質に含まれる皮膚感作性物質が樹脂固定ペプチドのペプチド部位と反応・結合し、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物が生じる。一方、被験物質に皮膚感作性物質が含まれない場合は、前記の結合物は生じない。本発明はこの様な結合の有無(結合物の有無)を、樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質を利用することにより、被験物質に皮膚感作性物質が含まれるか否かを判断するものである。
[工程A]
本発明の評価方法における工程Aは、樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させる工程である。工程Aにおいて、被験物質に皮膚感作性物質が含まれる場合は、樹脂固定ペプチドと被験物質との結合物が生じる。接触させる方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂固定ペプチドと被験物質とを溶媒中で混合する方法が挙げられる。具体的には、樹脂固定ペプチドを含む溶液に、被験物質又は被験物質を含む溶液を加えて混合する方法や、被験物質を含む溶液に、樹脂固定ペプチド又は樹脂固定ペプチドを含む溶液を加えることで混合する方法が挙げられる。なお、工程Aには樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させた後に静置する工程を含んでいてもよい。
工程Aにおける樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させる時間(接触時間)は特に限定されないが、1分〜120時間程度が好ましく、より好ましくは5分〜48時間程度、さらに好ましくは10分〜36時間程度である。工程Aにおける温度(反応温度)は0〜100℃程度が好ましく、より好ましくは10〜60℃程度、さらに好ましくは20〜40℃程度である。なお、前記の接触時間とは、樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させた後、他の工程に進むまでの時間を意味し、例えば、樹脂固定ペプチドと被験物質とを溶媒中で混合してから工程C(本発明の評価方法が工程Bを含む場合は工程B)に進むまでの時間を意味する。
工程Aにおいて使用される溶媒としては、樹脂固定ペプチドや被験物質を溶解又は分散することが可能なものであれば特に限定されず、例えば、水、リン酸ナトリウム、又は酢酸アンモニウムを含む水性緩衝液、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサン、オリーブ油等植物油、炭素数1〜4の一価のアルコール等が挙げられる。炭素数1〜4の一価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種又は2種以上を選択して使用することもできる。
工程Aにおける樹脂固定ペプチドの濃度は、使用する溶媒や、被験物質の前記溶媒への溶解度により適宜調節することができるが、例えば、溶媒1mlに対して0.001〜50mgが好ましく、より好ましくは0.01〜10mg、さらに好ましくは0.1〜5mgである。樹脂固定ペプチドの濃度が上記の範囲内にあることで高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価することが可能となる。なお、前記の樹脂固定ペプチドの濃度とは、使用する溶液(1ml)に対する樹脂固定ペプチドの重量(樹脂部位とペプチド部位を含む総重量)(mg)を意味する。
[工程B]
本発明の評価方法は工程Bを含んでいてもよい。工程Bは、工程Cの前に、工程Aで得られた混合物から樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)を分離する工程である。被験物質に皮膚感作性物質が含まれない場合は、工程Aで得られた混合物に樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物が含まれないため、本工程は樹脂固定ペプチドを分離する工程となる。一方、被験物質に皮膚感作性物質が含まれる場合は、本工程は混合物から樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物を分離する工程となる。なお、前記混合物に皮膚感作性物質に結合していない樹脂固定ペプチドが存在する場合は、該樹脂固定ペプチドも樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物と同時に分離することが可能となる。
工程Bにおける分離方法としては、例えば、遠心分離、フィルターろ過による分離、磁性ビーズを利用した分離等が挙げられる。なお、工程Bには分離後の樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)を溶媒にて洗浄する工程を含んでいてもよい。なお、工程Bにて用いられる溶媒は特に限定されず、例えば、工程Aにて例示したものを用いることができる。
遠心分離は、工程Aで得られた混合物を遠心分離に付すことで、混合物中の樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)と、被験物質(樹脂固定ペプチドに結合した皮膚感作性物質を除く)とを分離する方法である。例えば、前記の混合物を遠心分離に付した後に上清を取り除くことで、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)を高い純度で得ることができる。
フィルターろ過による分離は、工程Aで得られた混合物をフィルターろ過に付すことで、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)と、被験物質(樹脂固定ペプチドに結合した皮膚感作性物質を除く)とをサイズの大小によって分離する方法であり、これらのサイズの差が大きい場合に特に有効である。例えば、前記の混合物をフィルターろ過に付すことにより、サイズの大きい樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)がフィルター上に残ることとなる。
磁性ビーズを利用した分離は、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)の樹脂部分に磁性ビーズを使用した場合に有効な分離方法であり、磁性ビーズと磁石の磁力を利用した分離方法である。具体的には、工程Aを経て得られた混合物に磁石を接触させることで、磁石に樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)を付着させ、被験物質(樹脂固定ペプチドに結合した皮膚感作性物質を除く)と分離する方法である。なお、磁石から樹脂固定ペプチドを解離させる方法としては、例えば、磁石の磁力を失わせる方法(例えば、磁石として電磁石を用いる方法)が挙げられる。
本発明の評価方法が工程Bを含む場合、工程Aを経て得られた混合物から樹脂固定ペプチドとは結合能の無い被験物質を除去できるため、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)のみが得られることとなる。その結果、工程Bを含まない場合と比較して、被験物質と樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質との接触により生じる偽陽性及び偽陰性を低減することができるため、皮膚感作性の評価精度がさらに向上する。
[工程C]
本発明の評価方法における工程Cは、工程Aの後、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)に、樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質を接触させる工程である。
工程Cにおける樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質(以下、「物質X」と称することがある)とは、樹脂固定ペプチドと反応することにより光学的応答を与える物質を指す。なお、光学的応答とは、視覚的に認識可能なものであっても、後述の分光法によって測定可能なものであってもよい。
光学的応答が生じる機構は特に限定されないが、例えば、[1]樹脂固定ペプチドと、物質(X)とが反応することにより、発色性又は発光性を有する反応物が生じる機構、[2]樹脂固定ペプチドと物質(X)との反応により、物質(X)が減色又は減光する機構が挙げられる。
前記の機構[1]としては、[1−1]樹脂固定ペプチドと、物質(X)との反応物が発色性又は発光性を有する物質となる機構や、[1−2]樹脂固定ペプチドと、物質(X)とが反応することにより、発色性又は発光性を有する物質(物質(X)の一部が)物質(X)から遊離する機構が例示される。
前記の機構[1−1]を応用した本発明の評価方法の一例を以下に説明する。なお、本例示は、樹脂固定ペプチドとして、リジン残基を1個以上含むペプチドを含む樹脂固定ペプチドを用い、且つ、物質(X)として1,2−インダンジオンを用いたものである。
被験物質に皮膚感作性物質が含まれていない場合、工程Aでは樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物は生じない。次に、工程Cでは、樹脂固定ペプチドのペプチド部位のアミノ基と1,2−インダンジオンが反応し、発光性(蛍光性)を有するこれらの反応物が得られる。
一方、被験物質に皮膚感作性物質が含まれている場合、工程Aを経ることで樹脂固定ペプチドの一部又は全部のペプチド部位において、アミノ基を介してペプチド部位と皮膚感作性物質が結合する。次に、工程Cでは、皮膚感作性物質が結合していない樹脂固定ペプチドでは、発光性(蛍光性)を有するこれらの反応物が得られるものの、皮膚感作性物質が結合している樹脂固定ペプチドのペプチド部位は、1,2−インダンジオンと反応しない。
この様に、被験物質に皮膚感作性物質が含まれていない場合と、被験物質に皮膚感作性物質が含まれている場合とを比較すると、工程Cを経て得られる混合物において発光性(蛍光性)に強弱が生じることとなる。この様な機構を応用し、後述の工程Dにて、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価するものである。
前記の機構[1−2]を応用した本発明の評価方法の一例を以下に説明する。なお、本例示は、樹脂固定ペプチドとして、システイン残基を1個以上含むペプチドを含む樹脂固定ペプチドを用い、且つ、物質(X)として5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(エルマン試薬)を用いたものである。
被験物質に皮膚感作性物質が含まれていない場合、工程Aでは樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物は生じない。次に、工程Cでは、樹脂固定ペプチドのチオール基と5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)が反応し、発色性を有する2−ニトロ−5−メルカプト安息香酸が生成する。
一方、被験物質に皮膚感作性物質が含まれている場合、工程Aを経ることで樹脂固定ペプチドの一部又は全部のペプチド部位において、チオール基を介してペプチド部位と皮膚感作性物質が結合する。次に、工程Cでは、皮膚感作性物質が結合していない樹脂固定ペプチドでは、発色性を有する2−ニトロ−5−メルカプト安息香酸が得られるものの、皮膚感作性物質が結合している樹脂固定ペプチドのペプチド部位は、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)と反応しない。
この様に、被験物質に皮膚感作性物質が含まれていない場合と、被験物質に皮膚感作性物質が含まれている場合とを比較すると、工程Cを経て得られる混合物において発色性に強弱が生じることとなる。この様な機構を応用し、後述の工程Dにて、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価するものである。
工程Cにおける樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質(物質(X))は、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質とが結合することにより、樹脂固定ペプチドとの反応性が消失する物質であることが望ましい。この様な機構としては、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質とが結合することにより、樹脂固定ペプチドと物質(X)との反応部位が不活性化される機構が挙げられる。その一例としては、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合部位が、樹脂固定ペプチドと物質(X)との反応部位と同一であり、先に樹脂固定ペプチドが皮膚感作性物質と結合することで、樹脂固定ペプチドと物質(X)との反応性が消失する様な機構が挙げられる。
つまり、物質(X)は、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合部位(すなわち、皮膚感作性物質が結合し得る樹脂固定ペプチドの部位)と反応することが好ましく、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合部位に結合するものであることがより好ましく、樹脂固定ペプチドのペプチド部位におけるリジン残基の側鎖アミノ基や、システイン残基の側鎖チオール基を介して結合するものであることが特に好ましい。この様な物質(X)としては、例えば、一般的にチオール基検出試薬やアミノ基検出試薬として知られる化合物が挙げられ、具体的には5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドロール、2,2’−ジチオジピリジン、4,4’−ジチオジピリジン、2,2’−ジチオビス(5−ニトロピリジン)、6,6’−ジチオビスニコチン酸等のチオール基検出試薬;1,2−インダンジオン、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)、ニンヒドリン、1,8−ジアザフルオレン−9−オン等のアミノ基検出試薬が挙げられる。
工程Cにおいて、物質(X)と樹脂固定ペプチド(被験物質との結合物を含む)とを接触させる方法としては特に限定されないが、例えば、物質(X)と樹脂固定ペプチド(被験物質との結合物を含む)とを溶媒中で混合する方法が挙げられ、より具体的には、樹脂固定ペプチド(被験物質との結合物を含む)を含む溶液に、物質(X)又は物質(X)を含む溶液を加えて混合する方法が挙げられる。なお、工程Cには混合した後に静置する工程を含んでいてもよい。工程Cでは工程Aにて得られた混合物を含む溶液をそのまま用いてもよいが、他の溶媒に置換して得られた溶液を用いてもよい。また、本発明の評価方法が工程Bを含む場合は、工程Bにて得られた溶液をそのまま用いてもよいが、他の溶媒に置換して得られた溶液を用いてもよい。これらの場合に用いられる溶媒は特に限定されず、例えば、工程Aにて例示したものを用いることができる。
工程Cにおける樹脂固定ペプチドに物質(X)を接触させる時間(接触時間)は特に限定されないが、5秒〜72時間程度が好ましく、より好ましくは30秒〜48時間程度、さらに好ましくは1分〜36時間程度である。工程Aにおける温度(反応温度)は0〜100℃程度が好ましく、より好ましくは10〜60℃程度、さらに好ましくは20〜40℃程度である。なお、前記の接触時間とは、樹脂固定ペプチドに物質(X)を接触させた後、他の工程に進むまでの時間を意味し、例えば、物質(X)と樹脂固定ペプチドとを溶媒中で混合してから工程Dに進むまでの時間を意味する。
工程Cにおける物質(X)の濃度は、使用する溶媒により適宜調節することができるが、例えば、0.001〜100mMが好ましく、より好ましくは0.01〜50mM、さらに好ましくは0.1〜10mMである。物質(X)の濃度が上記の範囲内にあることで高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価することが可能となる。なお、前記の物質(X)の濃度とは、樹脂固定ペプチドに物質(X)を接触させることにより得られる混合溶液における物質(X)の濃度を意味する。
[工程D]
本発明の評価方法における工程Dは、工程Cの後、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程である。光学的応答の観測とは、具体的には、工程Cにより生じた、発光(例えば、蛍光による発光)、発色、減光、及び減色等の光学的応答を観測することを意味し、工程Dではこれらの光学的応答により、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程である。
例えば、前記の機構[1]により光学的応答を発揮する物質(X)(例えば、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)等)を使用する際、工程Aにおいて被験物質に皮膚感作性物質が含まれる場合は、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質とが反応して樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物が生じるため、工程Cにおいて樹脂固定ペプチドと物質(X)との反応が減り、工程Dにおいて光学的応答(発光)が減少する。一方、工程Aにおいて、被験物質に皮膚感作性物質が含まれない場合は、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合物が生じず、工程Cにおいて樹脂固定ペプチドと物質(X)との反応が進行するため、工程Dにおいては光学的応答(発光)が観測される。この様に、光学的応答の有無又はその大小を観測することにより、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無、つまり、被験物質に皮膚感作性物質が含まれるか否かを評価することが可能となる。
また、特定の被験物質を用いて本発明の評価方法を実施することで光学的応答の絶対量(例えば、吸収度や蛍光強度)を計測するとともに、被験物質を使用することなく工程Aを実施すること以外は同様の操作を行うことで光学的応答の絶対量を計測し、これらの差を算出することにより、被験物質に含まれる皮膚感作物質の量を概算することも可能である。また、工程Cにおいて使用する物質(X)が本来有する光学的応答の絶対量を考慮して上記の概算を行うことも可能である。したがって、本発明の評価方法は高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価することが可能であるといえる。
光学的応答の観測方法としては特に限定されないが、簡便性や迅速性の観点からは分光法により評価することが好ましい。つまり、工程Dは分光法により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程であることが好ましい。
分光法としては、例えば、紫外・可視・近赤外分光法、赤外分光法、蛍光分光法、核磁気共鳴分光法、ラマン分光法、及び質量分析が挙げられるが、工程Cにおける物質(X)による発光(例えば、蛍光による発光)・発色・減光・減色等の光学的応答を利用する観点から、紫外・可視・近赤外分光法及び蛍光分光法が好ましい。なお、紫外・可視・近赤外分光法とは、紫外、可視、及び近赤外領域のうち少なくとも1つの領域の光吸収を測定することを特徴とする分光法である。ここで、工程Dにおける光学的応答の観測を視認で行う場合も上記の分光法に含まれるものとする。
工程Dにおいて使用される分光光度計は使用される物質(X)等によって適宜選択可能であり、特に限定されないが、例えば、紫外可視分光光度計や分光蛍光光度計等が挙げられる。
工程Dでは、樹脂固定ペプチドは皮膚感作性物質との結合能を有するペプチド(以下、単に「ペプチド」と称することがある)と樹脂とが結合した状態あってもよいし、ペプチドと樹脂とを切断した状態であってもよいが、ペプチドと樹脂とが結合した状態であることが好ましい。つまり、工程Dは、工程Cの後、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程であって、前記の樹脂固定ペプチドが、ペプチドと樹脂とが結合した状態であることを特徴とする工程であることが好ましい。その理由としては、(1)樹脂固定ペプチドのペプチドと樹脂とを切断することを前提とすると、その切断工程が必要となり、簡便性や迅速性といった観点から不利であること、(2)樹脂固定ペプチドのペプチドと樹脂とを切断する方法(例えば、アルカリ溶液による化学的切断)により、光学的応答に悪影響がおよぶ可能性があり、精度の向上の観点から不利であること、(3)樹脂固定ペプチドのペプチドと樹脂とを切断すると、後述の工程D’を行うことができないため、偽陽性及び偽陰性の低減の観点から不利であること等が挙げられる。一方、ペプチドと樹脂とが結合した状態である場合はペプチドと樹脂とを切断する工程が必要でないため、簡便かつ迅速に、さらに高い精度で被験物質の皮膚感作性を評価することが可能である。
[その他の工程]
本発明の評価方法は、工程A〜D以外にも種々の工程を含んでいてもよく、例えば、工程Aの前工程として、溶媒を用いて樹脂固定ペプチドを洗浄及び活性化する工程(工程A’)や、工程Dの前に、工程Cにて得られた混合物(反応生成物)から、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)と物質(X)とを分離する工程(工程D’)等が挙げられる。工程A’にて用いられる溶媒は特に限定されず、例えば、工程Aにて例示したものを用いることができる。また、工程D’における分離方法としては、例えば、工程Bにて説明した遠心分離、フィルターろ過による分離、磁性ビーズを利用した分離等が挙げられる。また、工程D’にて用いられる溶媒は特に限定されず、例えば、工程Aにて例示したものを用いることができる。本発明の評価方法が工程D’を含む場合、工程Cを経て得られた混合物(反応生成物)から樹脂固定ペプチド又は結合物から反応しなかった物質(X)を除去できる。その結果、工程D’を含まない場合と比較して、被験物質と物質(X)との接触(反応)により生じる偽陽性及び偽陰性を低減することができるため、皮膚感作性の評価精度が向上する。
<樹脂固定ペプチド>
本発明の樹脂固定ペプチドは、皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドと樹脂とが結合した樹脂固定ペプチドである。
前記のペプチドは、皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドであれば特に限定されない。また、前記のペプチドは保護基を有していてもよい。この様なペプチドとしては、例えば、リジン残基を1個以上含むペプチドや、システイン残基を1個以上含むペプチドが挙げられる。これらのペプチドは、皮膚感作性物質とリジン残基やシステイン残基を介して結合する。より具体的には、皮膚感作性物質はリジン残基の側鎖アミノ基や、システイン残基の側鎖チオール基を介して結合する。前記のペプチドにおけるアミノ酸の重合度は特に限定されないが、例えば3〜20であることが好ましく、より好ましくは4〜15、さらに好ましくは5〜10である。
本発明の樹脂固定ペプチドがリンカーを有している場合、リンカーはペプチドに含まれる何れかのアミノ酸と結合していてもよいが、皮膚感作性物質との結合能の観点からは、ペプチドのC末端又はN末端のアミノ酸と結合していることが好ましい。なお、前記のリンカーがペプチドのC末端又はN末端のアミノ酸と結合している場合、ペプチドのC末端又はN末端のアミノ酸の側鎖を介して結合していてもよいし、ペプチドのC末端のカルボキシル基又はN末端のアミノ基を介して結合していてもよい。この中でも、皮膚感作性物質との結合能の観点から、前記のリンカーがペプチドのC末端又はN末端のアミノ酸の側鎖を介して結合していることが好ましい。
前記のリジン残基を1個以上含むペプチドは、皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドであれば特に限定されないが、例えば、ペプチド配列として、RFAAKADやRFAAKAAを含むペプチドであることが好ましい。なお、前記のペプチド配列はアミノ酸一文字表記により示しており、以下のペプチド配列の表記も同様である。また、前記のシステイン残基を1個以上含むペプチドは、皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドであれば特に限定されないが、例えば、ペプチド配列として、RFAACADやRFAACAAを含むペプチドであることが好ましい。なお、これらのペプチドはN末端及び/又はC末端に保護基を有していてもよいし、その側鎖に保護基を有していてもよい。保護基としては、ペプチド合成において通常用いられる保護基を用いることができ、例えば、N末端保護基(例えば、Ac(アセチル)基、Boc(t−ブチルオキシカルボニル)基、Z(ベンジルオキシカルボニル)基、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)基、C末端保護基(例えば、OBzl(ベンジルエステル)基、OtBu(t−ブチルエステル)基)、およびアミノ酸側鎖の保護基(Tos(トシル)基、Pbf(4−メトキシトリチル)基、OcHex(シクロヘキシルエステル)基、MeBzl(メチルベンジル)基、Trt(トリチル)基)が挙げられる。前記のリジン残基を1個以上含むペプチドであって保護基を有するものとしては、Ac−RFAAKAD−OH等が例示され、前記のシステイン残基を1個以上含むペプチドであって保護基を有するものとしては、Ac−RFAACAD−OH等が例示される。
前記のペプチドが、ペプチド配列として、RFAAKADを含むペプチドである場合、前記のペプチドと樹脂は、皮膚感作性物質との結合能の観点から、アスパラギン酸(D)の側鎖のカルボキシル基を介して結合することが好ましい。なお、前記のペプチドが、ペプチド配列として、RFAACADを含むペプチドである場合も同様である。
本発明の樹脂固定ペプチドにおける樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらを2種以上組み合わせた樹脂(例えば、これらの共重合体)が挙げられる。また、磁性ビーズとして使用可能な樹脂を用いることができる。本発明の評価方法では、上記の樹脂を用いることで樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)と皮膚感作性物質を除く被験物質の分離(例えば、遠心分離、フィルターろ過による分離)が容易となる。また、溶媒が水系溶媒又は有機溶媒(特に非プロトン性極性溶媒)であることに関わらず、樹脂固定ペプチドが溶媒によくなじむため、本発明の評価方法では様々な種類の溶媒を用いることができる。なお、これらの樹脂は、ペプチドやリンカーを導入する観点から、アミノ基、カルボキシル基、水酸基等の官能基を有する樹脂が好ましい。この様な樹脂としては、Fmoc-NH-PEG樹脂(渡辺化学工業株式会社製)、Amino PEGA resin、NovaPEG amino resin、NovaSyn TG amino resin(以上、メルク株式会社製)等が挙げられる。
本発明の樹脂固定ペプチドは、ペプチド部位がシステイン残基を含むペプチドである場合であっても、ペプチド間でジスルフィド結合を形成することが無く、長期間に亘って安定である。これは、ペプチドを樹脂に固定することにより、ペプチドそのものを評価試薬として用いる場合と比べて、ペプチドが有するシステイン残基が反応する機会が少なくなることが一つの要因であると考えられる。
本発明の樹脂固定ペプチドは、例えば、下記式(A)で表すことができる。式(A)中のPは皮膚感作性物質との結合能を有するペプチド(ペプチド部位)、Lはリンカー(リンカー部位)、Rは樹脂(樹脂部位)を示す。なお、式(A)ではRに結合するP及びLは1つでも2つ以上であってもよい。また、RはP及びL(ペプチド部位)以外の置換基を有していても良い。
Figure 0006793290
前記式(A)で表される樹脂固定ペプチドとしては、Pはリジン残基を1個以上含むペプチド又はシステイン残基を1個以上含むペプチドであることが好ましい。また、Lは、例えば、2価の炭化水素基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、及びこれらの2以上が結合した2価の基が挙げられる。なお、前記の2価の炭化水素基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(例えば、2価の直鎖状炭化水素基、又は2価の分岐鎖状炭化水素基)、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、及びこれらの2以上が結合した2価の炭化水素基であって、炭素数1〜20(好ましくは炭素数2〜10)の炭化水素基が挙げられる。Lとしては、例えば、アミノ酸やβ−アミノ酸に由来する2価の基、及びこれらの2以上が結合した2価の基が挙げられる。なお、Lは光、アルカリ、熱、酸、及び酵素等の切断方法により切断することが容易なリンカー(「切断リンカー」と称することがある)であっても良いが、簡便性、迅速性、及び精度の向上の観点から前記の切断方法によっては切断することが困難なリンカーであることが好ましい。
また、前記の樹脂固定ペプチドは、下記式(1)又は(2)で表される樹脂固定ペプチドであることが好ましい。なお、式中のRは式(A)におけるものと同様である。下記式(1)又は(2)で表される樹脂固定ペプチドにおいて、Rに結合するペプチド部位やリンカー部位は1つでも2つ以上であってもよい。また、Rはペプチド部位やリンカー部位以外の置換基を有していてもよい。
Figure 0006793290

Figure 0006793290
本発明の樹脂固定ペプチドの製造方法は特に限定されないが、例えばペプチド固相合成法等を用いて製造することができる。具体的には、表面をアミノ基等で修飾した樹脂を固相として用い、必要に応じてリンカー剤と反応させた後、脱水反応によって1つずつアミノ酸鎖を伸長していくことでペプチド部位を作製する方法が挙げられる。
本発明の評価試薬は樹脂固定ペプチドのみからなるものであってもよく、さらに1種又は2種以上の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、pH調整剤、安定化剤、溶媒等を含んでいてもよい。なお、本発明の評価試薬は、固体状(粉末状、顆粒状、錠剤等)、液体状(スラリー状)のいずれの形態で提供されてもよい。
本発明の樹脂固定ペプチドは、皮膚感作性物質の除去剤としても用いることができる。つまり、医薬品、農薬、食料品、化粧品、及び洗剤等の開発において、その原料や添加剤、最終製品等に本発明の樹脂固定ペプチドを添加した後、例えば、工程Bにて説明した分離方法を用いることにより、これらに含まれる皮膚感作性物質を除去することも可能である。なお、皮膚感作性物質除去剤は樹脂固定ペプチドのみからなるものであってもよく、さらに1種又は2種以上の添加剤を含んでいてもよい。つまり、皮膚感作性物質除去剤は本発明の樹脂固定ペプチドを含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、pH調整剤、安定化剤、溶媒等を含んでいてもよい。なお、皮膚感作性物質除去剤は、固体状(粉末状、顆粒状、錠剤等)、液体状(スラリー状)のいずれの形態で提供されてもよい。
本発明の樹脂固定ペプチドは、皮膚感作性物質濃縮剤としても用いることができる。つまり、皮膚感作性物質が含まれている可能性がある原料やその混合物等の被濃縮物質に本発明の樹脂固定ペプチドを添加した後、例えば、工程Bにて説明した分離方法を用いることにより、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)を得ることができる。このため、被濃縮物質中の皮膚感作性物質を選択的に単離・濃縮することが可能である。さらに、樹脂固定ペプチド(皮膚感作性物質との結合物を含む)において、皮膚感作性物質と樹脂固定ペプチドとの結合を化学的に切断することにより、皮膚感作性物質を回収することも可能である。そして、皮膚感作性物質が一定濃度以上に濃縮されている場合は、構造決定も可能である。なお、皮膚感作性物質濃縮剤は樹脂固定ペプチドのみからなるものであってもよく、さらに1種又は2種以上の添加剤を含んでいてもよい。つまり、皮膚感作性物質濃縮剤は本発明の樹脂固定ペプチドを含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、pH調整剤、安定化剤、溶媒等を含んでいてもよい。なお、皮膚感作性物質濃縮剤は、固体状(粉末状、顆粒状、錠剤等)、液体状(スラリー状)のいずれの形態で提供されてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[樹脂固定ペプチド(I)の作製]
NH2−PEG樹脂(官能基導入率0.2mmol/g)上のアミノ基とFmoc−Ala−OHとをカップリングさせた。次に、得られた反応生成物のFmoc基を20%ピペリジンで脱保護し、脱保護されたアミノ基と、Fmoc−βAla−OHとをカップリングさせた。以下、同様の手法を用いて、Fmoc−Asp−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Cys(Trt)−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OHの順にカップリングを行い、無水酢酸を反応させた後、脱保護溶液(水:トリイソプロピルシラン:TFA(体積比)=0.1:0.1:5)で2時間反応させ、洗浄及び乾燥を行うことで、以下のモデル構造を有する樹脂固定ペプチド(I)を作製した。なお、カップリング時間はそれぞれ30分であり、無水酢酸の反応時間は20分であった。
Figure 0006793290
[樹脂固定ペプチド(II)の作製]
NH2−PEG樹脂(官能基導入率0.2mmol/g)上のアミノ基とFmoc−Ala−OHとをカップリングさせた。次に、得られた反応生成物のFmoc基を20%ピペリジンで脱保護し、脱保護されたアミノ基と、Fmoc−βAla−OHとをカップリングさせた。以下、同様の手法を用いて、Fmoc−Asp−Otbu、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OHの順にカップリングを行い、無水酢酸を反応させた後、脱保護溶液(水:トリイソプロピルシラン:TFA(体積比)=0.1:0.1:5)で2時間反応させ、洗浄及び乾燥を行うことで、以下のモデル構造を有する樹脂固定ペプチド(II)を作製した。なお、カップリング時間はそれぞれ30分であり、無水酢酸の反応時間は20分であった。
Figure 0006793290
なお、樹脂固定ペプチド(I)及び(II)の作製にて用いたNH2−PEG樹脂、Fmoc−βAla−OH、Fmoc−Asp−Otbu、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Cys(Trt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OHは全て渡辺化学工業株式会社の製品である。
[実施例1(1−ブロモヘキサンの皮膚感作性の評価)]
以下の操作手順で1−ブロモヘキサンの皮膚感作性を評価した。
1mgの樹脂固定ペプチド(I)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(I)を800μlのDMFにて膨潤した後、500mMの1−ブロモヘキサンのDMF溶液を200μl加え、1−ブロモヘキサンの濃度が100mM、溶液の全量が1mlとなるよう調製した後、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を1ml添加し、24℃にて10分間反応させることで反応溶液を得た。その後、反応溶液を15000rpmで1分間遠心し、その上清をフィルター(Ultrafree−mC−HV Durapore−PVDF、孔径:0.45μm、ミリポア社製)を用い、15000rpmで1分間遠心して測定サンプルを得た。この測定サンプルについて、紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
[実施例2(N,N−ジブチルアニリンの皮膚感作性の評価)]
1−ブロモヘキサンの代わりにN,N−ジブチルアニリンを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
(実施例1及び2のリファレンス1)
1mgの樹脂固定ペプチド(I)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(I)を1mlのDMFにて膨潤し、24℃、暗室にて24時間静置した。静置後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を1ml添加し、24℃にて10分間反応させることで反応溶液を得た。その後、反応溶液を15000rpmで1分間遠心した後、その上清をフィルター(Ultrafree−mC−HV Durapore−PVDF、孔径:0.45μm、ミリポア社製)を用い、15000rpmで1分間遠心して測定サンプルを得た。この反応溶液について、紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例1及び2のリファレンス2)
20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例1における減少率)
以下の計算式を用いて実施例1の減少率を算出したところ、35.4%となった。
減少率(%)=[1−{実施例1の吸光度−実施例1のリファレンス2の吸光度}÷{実施例1のリファレンス1の吸光度−実施例1のリファレンス2の吸光度}]×100
(実施例2における減少率)
実施例1と同様に実施例2の減少率を算出したところ、28.0%となった。
[実施例3(ベンジリデンアセトンの皮膚感作性の評価1)]
以下の操作手順でベンジリデンアセトンの皮膚感作性を評価した。
1mgの樹脂固定ペプチド(I)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(I)を800μlのDMFにて膨潤した後、500mMのベンジリデンアセトンのDMF溶液を200μl加え、ベンジリデンアセトンの濃度が100mM、溶液の全量が1mlとなるよう調製した後、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を1ml添加し、24℃にて10分間反応させることで反応溶液を得た。その後、反応溶液を15000rpmで1分間遠心した後、その上清をフィルター(Ultrafree−mC−HV Durapore−PVDF、孔径:0.45μm、ミリポア社製)を用い、15000rpmで1分間遠心して測定サンプルを得た。この測定サンプルについて、紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例3のリファレンス1)
1mgの樹脂固定ペプチド(I)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(I)を1mlのDMFにて膨潤し、24℃、暗室にて24時間静置した。静置後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物を800μlのリン酸バッファー(PH=7.5)にて膨潤した後、20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を200μl加え、24℃にて10分間反応させることで反応溶液を得た。その後、反応溶液を15000rpmで1分間遠心した後、その上清をフィルター(Ultrafree−mC−HV Durapore−PVDF、孔径:0.45μm、ミリポア社製)を用い、15000rpmで1分間遠心して測定サンプルを得た。この反応溶液について、紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例3のリファレンス2)
20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例3における減少率)
実施例1と同様に実施例3の減少率を算出したところ、28.6%となった。
[実施例4(サリチル酸ベンジルの皮膚感作性の評価)]
以下の操作手順でサリチル酸ベンジルの皮膚感作性を評価した。
1mgの樹脂固定ペプチド(I)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(I)を800μlの水にて膨潤した後、500mMのサリチル酸ベンジルのアセトニトリル溶液を200μl加え、サリチル酸ベンジルの濃度が100mM、溶液の全量が1mlとなるよう調製した後、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物を800μlのリン酸バッファー(PH=7.5)にて膨潤した後、20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を200μl加え、24℃にて10分間反応させることで反応溶液を得た。その後、反応溶液を15000rpmで1分間遠心した後、その上清をフィルター(Ultrafree−mC−HV Durapore−PVDF、孔径:0.45μm、ミリポア社製)を用い、15000rpmで1分間遠心して測定サンプルを得た。この測定サンプルについて、紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
[実施例5(ベンジリデンアセトンの皮膚感作性の評価2)]
サリチル酸ベンジルの代わりにベンジリデンアセトンを用いたこと以外は実施例4と同様の操作を行った。
(実施例4及び5のリファレンス1)
1mgの樹脂固定ペプチド(I)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(I)を800μlの水にて膨潤した後、アセトニトリルを200μl加え、24℃、暗室にて24時間静置した。静置後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を1ml添加し、24℃にて10分間反応させることで反応溶液を得た。その後、反応溶液を15000rpmで1分間遠心した後、その上清をフィルター(Ultrafree−mC−HV Durapore−PVDF、孔径:0.45μm、ミリポア社製)を用い、15000rpmで1分間遠心して測定サンプルを得た。この反応溶液について、紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例4及び5のリファレンス2)
20mMの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)のリン酸バッファー溶液(PH=7.5)を紫外可視分光光度計(装置名:UV‐1800,(株)島津製作所製)を用いて412nmの吸光度を測定した。
(実施例4及び5における減少率)
実施例1と同様に実施例4及び5の減少率を算出したところ、それぞれ99.0%、65.8%となった。
[実施例6(p−ベンゾキノンの皮膚感作性の評価1)]
以下の操作手順でp−ベンゾキノンの皮膚感作性を評価した。
1mgの樹脂固定ペプチド(II)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(II)を800μlのDMFに膨潤させた後、500mMのp−ベンゾキノンのDMF溶液を200μl加え、p−ベンゾキノンの濃度が100mM、溶液の全量が1mlとなるよう調製した後、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの1,2−インダンジオンのアセトニトリル溶液を1ml添加し、24℃にて24時間反応させることで反応溶液を得た。この反応用液について、分光蛍光光度計(装置名:FP−8000DS,JASCO)を用いて550nmにおける蛍光強度を測定した。
[実施例7(p−ベンゾキノンの皮膚感作性の評価2)]
以下の操作手順でp−ベンゾキノンの皮膚感作性を評価した。
1mgの樹脂固定ペプチド(II)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(II)を800μlの水に膨潤させた後、500mMのp−ベンゾキノンのアセトニトリル溶液を200μl加え、p−ベンゾキノンの濃度が100mM、溶液の全量が1mlとなるよう調製した後、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの1,2−インダンジオンのアセトニトリル溶液を1ml添加し、24℃にて24時間反応させることで反応溶液を得た。この反応用液について、分光蛍光光度計(装置名:FP−8000DS,JASCO)を用いて550nmにおける蛍光強度を測定した。
[実施例6のリファレンス1]
1mgの樹脂固定ペプチド(II)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(II)を1mlのDMFに膨潤させた後、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの1,2−インダンジオンのアセトニトリル溶液を1ml添加し、24℃にて24時間反応させることで反応溶液を得た。この反応用液について、分光蛍光光度計(装置名:FP−8000DS,JASCO)を用いて550nmにおける蛍光強度を測定した。
[実施例7のリファレンス1]
1mgの樹脂固定ペプチド(II)を、5mlのカラム(オープンチップカラム、Art.No.CC.07、ザルスタット社製)に入れ、500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒(水:TFA(体積比)=100:0.1)で5回洗浄した。洗浄後の樹脂固定ペプチド(II)を800μlの水に膨潤させた後、アセトニトリルを200μl加え、24℃、暗室にて24時間反応させた。反応後の溶液を500μlのDMFで5回、さらに500μlのA溶媒で5回洗浄した。得られた洗浄物に20mMの1,2−インダンジオンのアセトニトリル溶液を1ml添加し、24℃にて24時間反応させることで反応溶液を得た。この反応用液について、分光蛍光光度計(装置名:FP−8000DS,JASCO)を用いて550nmにおける蛍光強度を測定した。
[実施例6及び7のリファレンス2]
20mMの1,2−インダンジオンのアセトニトリル溶液を、分光蛍光光度計(装置名:FP−8000DS,JASCO)550nmにおける蛍光強度を測定した。
(実施例6における減少率)
以下の計算式を用いて実施例6の減少率を算出したところ、98.8%となった。
減少率(%)=[1−{実施例6の蛍光強度−実施例6のリファレンス2の蛍光強度}÷{実施例6のリファレンス1の蛍光強度−実施例6のリファレンス2の蛍光強度}]×100
(実施例7における減少率)
実施例6と同様に実施例7の減少率を算出したところ、80.3%となった。
<評価>
実施例1〜5とそのリファレンスとの比較より、1−ブロモヘキサン等の感作性物質において、412nmにおける吸光度の減少が見られた。このことから、実施例1〜5において樹脂固定ペプチドのペプチド部位に感作性物質が結合したこと、さらに、感作性物質と結合していない樹脂固定ペプチドのペプチド部位に物質(X)である5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)が結合したことが示唆された。また、有機系溶媒においても、水系溶媒においても樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を測定可能であることが示された。さらに、実施例6及び7においては、樹脂固定ペプチドとしてリジン残基を含む樹脂固定ペプチドを用いても、樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を測定可能であることが示された。また、有機系溶媒においても、水系溶媒においても樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を測定可能であることが示された。

Claims (6)

  1. 以下の工程を含む被験物質の皮膚感作性の評価方法。
    工程A:皮膚感作性物質との結合能を有するペプチドと樹脂とが結合した樹脂固定ペプチドに被験物質を接触させる工程
    工程C:工程Aの後、樹脂固定ペプチドに、樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質を接触させる工程
    工程D:工程Cの後、光学的応答の観測により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する工程
  2. 以下の工程Bをさらに含む請求項1に記載の被験物質の皮膚感作性の評価方法。
    工程B:工程Cの前に、工程Aで得られた混合物から樹脂固定ペプチドを分離する工程
  3. 分光法により樹脂固定ペプチドと皮膚感作性物質との結合の有無を評価する請求項1又は2に記載の被験物質の皮膚感作性の評価方法。
  4. 樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質がチオール基検出試薬又はアミノ基検出試薬である請求項1〜3の何れか1項に記載の被験物質の皮膚感作性の評価方法。
  5. 樹脂固定ペプチドと反応して光学的応答を与える物質が1,2−インダンジオン又は5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)である請求項1〜4の何れか1項に記載の被験物質の皮膚感作性の評価方法。
  6. 樹脂固定ペプチドが下記式(1)又は(2)で示される請求項1〜5の何れか1項に記載の被験物質の皮膚感作性の評価方法。
    Figure 0006793290
    Figure 0006793290
    (式(1)及び(2)中、Rは樹脂を示す。)
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