JP6792501B2 - 清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法 - Google Patents

清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法に関する。
近年、トイレの清掃に使用される目的で、紙製の使い捨ての清掃用シートが普及している。当該清掃用シートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、使用後にトイレに流して処理可能とされるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
特許第3865506号公報
このような清掃用シートにおいては、清掃時に破れることがないように、水解性を確保しつつ、湿潤強度を向上させることが求められる。
清掃用シートの湿潤強度を向上させるための方法として、本発明者らは、セルロースナノファイバー(セルロース微細繊維、以下「CNF」という。)を清掃用シートの原紙シートに含有させるという方法を見出した。
セルロース繊維を解繊して、原紙シートに含有させるCNFを製造する方法としては、リンのオキソ酸を用いる方法があり、例えば特開2013−127141号公報においては、「100〜170℃に加熱しながら、リンのオキソ酸或いはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物により、セルロースを含む繊維原料を処理する」方法を提案する。同文献においては、当該方法によって、「1〜1000nmの繊維幅を有し、かつ繊維を構成するセルロースのヒドロキシ基の一部が、所定の官能基で置換されて、リンオキソ酸基が導入された微細繊維状セルロース」が得られるとする。
しかしながら、本発明者等が知見するところによると、上記方法によって製造される微細繊維状セルロース、すなわちCNFは、黄色味がかった(黄変化した)ものとなる。また、上記方法によるCNFの分散液は、透明度や粘度の点でも改善の余地がある。さらに、同文献は、リン原子にヒドロキシ基及びオキソ基が結合したオキソ酸(リンオキソ酸)によってセルロースを含む繊維原料(セルロース繊維)を処理するとする。しかしながら、同文献は、リンオキソ酸等としてリン酸基を有する化合物のみを例示しており、その他の化合物についての具体的な例示は存在しない。また、同文献は、コスト、微細化の程度、製造効率、分散液の安定性、環境負荷を問題とするのみであり、得られるCNFが黄色くなることを問題としていない。したがって、リンオキソ酸が無数に存在することも合わせて考慮すると、特開2013−127141号公報からは、得られるCNFが黄色くなるとの問題を解決するための糸口が見えない。
そして、含有させるCNFが黄色味がかったものである場合、これを含有する清掃用シートも黄色味がかったものとなってしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、シートを黄色味がかった色とすることなく、CNFによって湿潤強度を向上させた清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた清掃用シートであって、
前記原紙シートは、
目付量が30〜150gsmであり、
セルロースナノファイバーを含有しており、
前記セルロースナノファイバーは、
繊維幅が1〜1000nmであり、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする。
構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用シートであって、
前記セルロースナノファイバーは、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメートが導入されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の清掃用シートであって、
前記原紙シートは、
水溶性バインダーを含有しており、
前記水性薬剤は、前記水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、清掃用シートの製造方法であって、
原紙シートに対して、セルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
原紙シートに対して、水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
を有し、
前記セルロースナノファイバーは、
セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、製造され
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする。
構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の清掃用シートの製造方法であって、
前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、水分率が10%以下となるまで行って製造されることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の清掃用シートの製造方法であって、
前記セルロースナノファイバーは、
前記添加物(A)の添加量を前記セルロース繊維1kgに対して1〜10,000gとし、前記添加物(B)の添加量を前記添加物(A)1molに対して0.01〜100molとして製造されることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法であって、
前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、100〜210℃で行って製造されることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法であって、
前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、pH3〜12で行って製造されることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項4〜8のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法であって、
原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
前記水溶性バインダー及び前記セルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
を有し、
前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする。
本発明によれば、シートを黄色味がかった色とすることなく、CNFによって湿潤強度を向上させた清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法を提供することができる。
本実施形態に係るトイレクリーナーの一例を示す平面図である。 (a)は、従来の紙の繊維配向を示す図、(b)は、本発明の繊維配向を示す図である。 トイレクリーナーのエンボス部分の拡大図及び断面図である。 エンボスの接触面積の一例を示す説明図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(溶液付与設備)の模式図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(加工設備)の模式図である。 抄造装置の一例を示す概略図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの他の一例を示す平面図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの他の一例を示す平面図である。 図10のA−A部分拡大図である。 (a)は、図11のB−B切断部端面図、(b)は、図11のC−C切断部端面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃用シートとしての水解性シートを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、水解性シートはトイレクリーナーを一例にして説明するが、水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の水性薬剤を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナーの製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向)として説明する。
[トイレクリーナーの説明]
トイレクリーナー100は、複数枚(例えば、2枚)の原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の水性薬剤が含浸されている。なお、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
原紙シートの目付量は、30〜150gsm程度である。なお、目付量は、JIS P8124に基づくものである。
〔原紙シート〕
トイレクリーナー100の原紙シートは、トイレを掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
繊維集合体としては、水解性を有する繊維集合体であれば特に限定されないが、単層又は複数層の紙又は不織布を好適に用いることができる。原料繊維は、天然繊維でも合成繊維でも良く、これを混合することも可能である。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸等からなる生分解性繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維を主体としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニールアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリニトリル繊維、合成パルプ、ガラスウール等を併用することができる。
特に、繊維集合体として、少なくともパルプを含むものであることが好ましく、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜の割合で配合したものが適する。
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
また、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向の比率(縦/横)については、特に限定するものではないが、0.8〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。図2(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、図2(b)に示すように、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向比率を0.8〜2.0、好ましくは、0.8〜1.2とすることで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナー100を提供することができる。なお、縦横の繊維配向の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
〔水溶性バインダー〕
また、トイレクリーナー100の原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが付与されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
特に、水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ金属塩が好ましい。
CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となるためである。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、水性薬剤中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナー100の場合には、水溶性バインダーとして、CMCが付与されている。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
〔CNF〕
また、トイレクリーナー100には、CNFが添加されている。
即ち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、CNFが添加されている。
ここで、CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいう。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
本実施形態で用いられるCNFは、セルロース繊維のヒドロキシ基(−OH基)の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入(修飾、変性)された(エステル化された)ものである。好ましくは、セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメート(カルバミン酸のエステル)も導入されたものである。
構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
亜リン酸のエステルは、リン原子にヒドロキシル基(ヒドロキシ基)(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、かつそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物である。故に、亜リン酸のエステルは、リン酸基を有する化合物と同様にマイナス電荷が高い。したがって、亜リン酸のエステルを導入すると、セルロース分子間の反発が強くなり、セルロース繊維の解繊が容易になる。また、亜リン酸のエステルを導入すると、分散液の透明度や粘度が向上する。特に、亜リン酸のエステルと共にカルバメートをも導入すると、透明度や粘度がより向上する。この点、カルバメートは、アミノ基を有する。したがって、カルバメートを導入すると、プラス電荷をも有することになる。故に、カルバメートをも導入すると、亜リン酸のエステル及びカルバメートによる電荷的相互作用が高まり、粘度が向上するものと考えられる。なお、カルバメートは、同時にリン酸基を有する化合物を導入する場合よりも、亜リン酸のエステルを導入する場合の方が、より導入し易くなる。
さらに、亜リン酸のエステルを導入した場合は、リン酸基を有する化合物を導入した場合と異なり、得られるCNFの黄変化が防止される。この点、この黄変化が防止されるとの効果は、リンのオキソ酸一般を導入することで得られる効果ではなく、亜リン酸のエステルを導入した場合のみに得られる効果である。したがって、黄変化を防止するとの観点では、リンのオキソ酸という概念は意味を有しない。亜リン酸のエステルに黄変化防止効果が存在することは、本発明者等が独自に発見したものである。
なお、本発明者等は、リン酸基を有する化合物を導入した場合に黄変化し易いのは、メイラード反応や還元反応によってセルロースに二重結合が生じ易くなるためではないかと考える。亜リン酸のエステルよりもリン酸基を有する化合物の方が水素の数が多いため、pHが低くなる。そして、pHが低い方が、アミンと糖との反応が生じ易くなり、又はセルロースが還元し易くなる。したがって、リン酸基を有する化合物を導入しようとすると、加熱時にセルロースが分解して糖が生成し易くなり、又はセルロースが還元し易くなる。結果、リン酸基を有する化合物を導入する場合の方が、黄変化し易くなるのである。
亜リン酸のエステルの導入量は、CNF1g当たり、好ましくは0.06〜3.39mmol、より好ましくは0.61〜1.75mmol、特に好ましくは0.95〜1.42mmolである。導入量が0.06mmol未満であると、セルロース繊維の解繊が容易にならないおそれがある。また、CNFの水分散液が、不安定になるおそれもある。他方、導入量が3.39mmolを超えると、セルロース繊維が水に溶解するおそれがある。
亜リン酸のエステルの導入量は、元素分析に基づいて評価した値である。この元素分析には、堀場製作所製X−Max 50 001を使用する。
構造式(1)で示す官能基の置換度(DS)は、好ましくは0.01〜0.55、より好ましくは0.10〜0.28、特に好ましくは0.15〜0.23である。置換度が0.01未満であると、セルロース繊維の解繊が容易にならないおそれがある。他方、置換度が0.55を超えると、セルロース繊維が黄変化するおそれがある。
カルバメート基の置換度は、好ましくは0.01〜0.50、より好ましくは0.05〜0.45、特に好ましくは0.10〜0.40である。置換度が0.01未満であると、透明度や粘度が十分に高まらないおそれがある。他方、置換度が0.50を超えると、セルロース繊維が黄変化するおそれがある。
なお、置換度とは、セルロース中の一グルコース単位に対する官能基(構造式(1)で示す官能基やカルバメート基)の平均置換数をいう。置換度は、例えば、反応温度や反応時間で制御することができる。反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたりすると、置換度が上昇する。ただし、置換度が上昇し過ぎると、セルロースの重合度が著しく低下する。
CNFの繊維幅(単繊維の平均直径)は、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは2〜400nm、特に好ましくは3〜100nmである。繊維幅が1nm未満であると、セルロースが水に溶解し、CNFとしての物性、例えば、強度や剛性、寸法安定性等を有さなくなるおそれがある。他方、繊維幅が1000nmを超えると、もはやCNFとは言えず、通常のセルロース繊維となる。
CNFの繊維幅は、電子顕微鏡を使用して次のように測定する。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のCNFの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10,000倍又は30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。この観察においては、観察画像に2本の対角線を引き、更に対角線の交点を通過する直線を任意に3本引く。そして、この3本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。この計測値の中位径を繊維幅とする。
CNFの軸比(繊維長/繊維幅)は、好ましくは3〜1,000,000、より好ましくは6〜340,000、特に好ましくは10〜340,000である。軸比が3未満であると、もはや繊維状とは言えなくなる。他方、軸比が1,000,000を超えると、分散液(スラリー)の粘度が高くなり過ぎるおそれがある。
CNFの結晶化度は、好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜90%、特に好ましくは65〜85%である。結晶化度が50%未満であると、強度、耐熱性が不十分であるとされるおそれがある。結晶化度は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、解繊等によって調整することができる。結晶化度は、JIS−K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、CNFは、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度はCNF全体における結晶質部分の割合を意味する。
CNFの光透過率(固形分0.2%溶液)は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは60.0%以上、特に好ましくは70.0%である。光透過率が40.0%未満であると、透明性が不十分であるとされるおそれがある。CNFの光透過率は、例えば、パルプ繊維の選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
光透過率は、0.2%(w/v)のCNF分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)をSpectrophotometerU−2910(日立製作所)を用いて測定した値である。
CNFの濃度を1質量%(w/w)とした場合における分散液のB型粘度は、好ましくは10〜300,000cps、より好ましくは1,000〜200,000cps、特に好ましくは10,000〜100,000cpsである。B型粘度は、固形分濃度1%のCNFの水分散液について、JIS−Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度はスラリーを攪拌させたときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
(CNFの製造方法)
本実施形態においては、セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱してセルロース繊維に亜リン酸のエステル、好ましくは亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する。また、この亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維を洗浄した後に、解繊してCNFを得る。
(セルロース繊維)
セルロース繊維としては、例えば、植物由来の繊維(植物繊維)、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等を使用することができる。これらの繊維は、必要により、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、セルロース繊維としては、植物繊維を使用するのが好ましく、植物繊維の一種であるパルプ繊維を使用するのがより好ましい。セルロース繊維がパルプ繊維であると、CNFの物性調整が容易である。
植物繊維としては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ、バガス等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等を使用することができる。これらの繊維は、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)、古紙パルプ(DIP)等を使用することができる。これらのパルプは、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
広葉樹クラフトパルプ(LKP)は、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。針葉樹クラフトパルプ(NKP)は、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。古紙パルプ(DIP)は、雑誌古紙パルプ(MDIP)であっても、新聞古紙パルプ(NDIP)であっても、段古紙パルプ(WP)であっても、その他の古紙パルプであってもよい。
(添加物(A))
添加物(A)は、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる。添加物(A)としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等を使用することができる。これらの亜リン酸類又は亜リン酸金属塩類は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、亜リン酸水素ナトリウムを使用するのが好ましい。
添加物(A)を添加するにあたって、セルロース繊維は、乾燥状態であっても、湿潤状態であっても、スラリーの状態であってもよい。また、添加物(A)は、粉末の状態であっても、水溶液の状態であってもよい。ただし、反応の均一性が高いことから、乾燥状態のセルロース繊維に水溶液の状態の添加物(A)を添加するのが好ましい。
添加物(A)の添加量は、セルロース繊維1kgに対して、好ましくは1〜10,000g、より好ましくは100〜5,000g、特に好ましくは300〜1,500gである。添加量が1g未満であると、添加物(A)の添加による効果が得られないおそれがある。他方、添加量が10,000gを超えても、添加物(A)の添加による効果が頭打ちとなるおそれがある。
(添加物(B))
添加物(B)は、尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる。添加物(B)としては、例えば、尿素、チオ尿素、ビウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素等を使用することができる。これらの尿素又は尿素誘導体は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、尿素を使用するのが好ましい。
添加物(B)は、加熱されると、下記の反応式(1)に示すようにイソシアン酸及びアンモニアに分解される。そして、イソシアン酸はとても反応性が高く、下記の反応式(2)に示すようにセルロースの水酸基及びカルバメートを形成する。
NH−CO−NH → HN=C=O+NH …(1)
Cell−OH+H−N=C=O → Cell−O−C−NH …(2)
添加物(B)の添加量は、添加物(A)1molに対して、好ましくは0.01〜100mol、より好ましくは0.2〜20mol、特に好ましくは0.5 〜10molである。添加量が0.01mol未満であると、セルロース繊維に亜リン酸のエステルが十分に導入されないおそれがある。他方、添加量が100molを超えても、尿素の添加による効果が頭打ちとなるおそれがある。
(加熱)
添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維を加熱する際の加熱温度は、好ましくは100〜210℃、より好ましくは100〜200℃、特に好ましくは100〜180℃である。加熱温度が100℃以上であれば、亜リン酸のエステルを導入することができる。ただし、加熱温度が210℃を超えると、セルロースの劣化が急速に進み、着色や粘度低下の要因となるおそれがある。
添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維を加熱する際のpHは、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜11、特に好ましくは6〜9である。pHが低い方が亜リン酸のエステル及びカルバメートが導入され易くなる。ただし、pHが3未満であると、セルロースの劣化が急速に進行してしまうおそれがある。
添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維の加熱は、当該セルロース繊維が乾燥するまで行うのが好ましい。具体的には、セルロース繊維の水分率が、好ましくは10%以下となるまで、より好ましくは0.1%以下となるまで、特に好ましくは0.001%以下となるまで乾燥する。もちろん、セルロース繊維は、水分の無い絶乾状態になっても良い。
添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維の加熱時間は、例えば1〜1,440分、好ましくは10〜180分、より好ましくは30〜120分である。加熱時間が長過ぎると、亜リン酸のエステルやカルバメートの導入が進み過ぎるおそれがある。また、加熱時間が長過ぎると、セルロース繊維が黄変化するおそれがある。
添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維を加熱する装置としては、例えば、熱風乾燥機、抄紙機、ドライパルプマシン等を使用することができる。
(前処理)
セルロース繊維に亜リン酸のエステル等を導入するに先立って、及び/又は亜リン酸のエステル等を導入した後において、セルロース繊維には、必要により、叩解等の前処理を施すことができる。セルロース繊維の解繊に先立って当該パルプ繊維に前処理を施しておくことで、解繊の回数を大幅に減らすことができ、解繊のエネルギーを削減することができる。
セルロース繊維の前処理は、物理的手法又は化学的手法、好ましくは物理的手法及び化学的手法によることができる。物理的手法による前処理及び化学的手法による前処理は、同時に行うことも、別々に行うこともできる。
物理的手法による前処理としては、叩解を採用するのが好ましい。セルロース繊維を叩解すると、セルロース繊維が切り揃えられる。したがって、セルロース繊維同士の絡み合いが防止される(凝集防止)。この観点から、叩解は、セルロース繊維のフリーネスが700ml以下となるまで行うのが好ましく、500ml以下となるまで行うのがより好ましく、300ml以下となるまで行うのが特に好ましい。セルロース繊維のフリーネスは、JIS P8121−2(2012)に準拠して測定した値である。また、叩解は、例えば、リファイナーやビーター等を使用して行うことができる。
化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。ただし、化学的手法による前処理としては、酵素処理を施すのが好ましく、加えて酸処理、アルカリ処理、及び酸化処理の中から選択された1又は2以上の処理を施すのがより好ましい。以下、酵素処理及びアルカリ処理について、順に説明する。
酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましく、両方を併用するのがより好ましい。これらの酵素を使用すると、セルロース繊維の解繊がより容易になる。なお、セルラーゼ系酵素は、水共存下でセルロースの分解を惹き起こす。また、ヘミセルラーゼ系酵素は、水共存下でヘミセルロースの分解を惹き起こす。
セルラーゼ系酵素としては、例えば、トリコデルマ(Trichoderma、糸状菌)属、アクレモニウム(Acremonium、糸状菌)属、アスペルギルス(Aspergillus、糸状菌)属、ファネロケエテ(Phanerochaete、担子菌)属、トラメテス(Trametes、担子菌)属、フーミコラ(Humicola、糸状菌)属、バチルス(Bacillus、細菌)属、スエヒロタケ(Schizophyllum、担子菌)属、ストレプトミセス(Streptomyces、細菌)属、シュードモナス(Pseudomonas、細菌)属などが産生する酵素を使用することができる。これらのセルラーゼ系酵素は、試薬や市販品として購入可能である。市販品としては、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラ−ゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)、セルラーゼ系酵素GC220(ジェネンコア社製)等を例示することができる。
また、セルラーゼ系酵素としては、EG(エンドグルカナーゼ)及びCBH(セロビオハイドロラーゼ)のいずれかもを使用することもできる。EG及びCBHは、それぞれを単体で使用しても、混合して使用してもよい。また、ヘミセルラーゼ系酵素と混合して使用してもよい。
ヘミセルラーゼ系酵素としては、例えば、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)等を使用することができる。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼも使用することができる。
ヘミセルロースは、植物細胞壁のセルロースミクロフィブリル間にあるペクチン類を除いた多糖類である。ヘミセルロースは多種多様で木材の種類や細胞壁の壁層間でも異なる。針葉樹の2次壁では、グルコマンナンが主成分であり、広葉樹2次壁では4−O−メチルグルクロノキシランが主成分である。そこで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)からCNFを得る場合は、マンナーゼを使用するのが好ましい。また、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)からCNFを得る場合は、キシラナーゼを使用するのが好ましい。
セルロース繊維に対する酵素の添加量は、例えば、酵素の種類、原料となる木材の種類(針葉樹か広葉樹か)、機械パルプの種類等によって決まる。ただし、セルロース繊維に対する酵素の添加量は、好ましくは0.1〜3質量%と、より好ましくは0.3〜2.5質量%、特に好ましくは0.5〜2質量%である。酵素の添加量が0.1質量%未満であると、酵素の添加による効果が十分に得られないおそれがある。他方、酵素の添加量が3質量%を超えると、セルロースが糖化され、CNFの収率が低下するおそれがある。また、添加量の増量に見合う効果の向上を認めることができないとの問題もある。
酵素としてセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、酵素反応の反応性の観点から、弱酸性領域(pH=3.0〜6.9)であるのが好ましい。一方、酵素としてヘミセルラーゼ系酵素を使用する場合、酵素処理時のpHは、弱アルカリ性領域(pH=7.1〜10.0)であるのが好ましい。
酵素処理時の温度は、酵素としてセルラーゼ系酵素及びヘミセルラーゼ系酵素のいずれを使用する場合においても、好ましくは30〜70℃、より好ましくは35〜65℃、特に好ましくは40〜60℃である。酵素処理時の温度が30℃以上であれば、酵素活性が低下し難くなり、処理時間の長期化を防止することができる。他方、酵素処理時の温度が70℃以下であれば、酵素の失活を防止することができる。
酵素処理の時間は、例えば、酵素の種類、酵素処理の温度、酵素処理時のpH等によって決まる。ただし、一般的な酵素処理の時間は、0.5〜24時間である。
酵素処理した後には、酵素を失活させるのが好ましい。酵素を失活させる方法としては、例えば、アルカリ水溶液(好ましくはpH10以上、より好ましくはpH11以上)を添加する方法、80〜100℃の熱水を添加する方法等が存在する。
次に、前述したアルカリ処理の方法について、説明する。
アルカリ処理の方法としては、例えば、アルカリ溶液中に、亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維を浸漬する方法が存在する。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であっても、有機アルカリ化合物であってもよい。無機アルカリ化合物としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩等を例示することができる。また、アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム等を例示することができる。アルカリ金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等を例示することができる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等を例示することができる。
有機アルカリ化合物としては、例えば、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物及びその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を例示することができる。具体的には、例えば、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等を例示することができる。
アルカリ溶液の溶媒は、水及び有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)であるのが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であるのがより好ましい。
アルカリ溶液の25℃におけるpHは、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは11〜14である。pHが9以上であると、CNFの収率が高くなる。ただし、pHが14を超えると、アルカリ溶液の取り扱い性が低下する。
(洗浄)
亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維は、解繊するに先立って、洗浄する。セルロース繊維を清浄することで、副生成物や未反応物を洗い流すことができる。また、この清浄が前処理におけるアルカリ処理に先立つものであれば、当該アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量を減らすことができる。
セルロース繊維の洗浄は、例えば、水や有機溶媒等を使用して行うことができる。
(解繊)
亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維は、洗浄後に解繊(微細化処理)する。この解繊によって、パルプ繊維はミクロフィブリル化し、CNFとなる。
セルロース繊維を解繊するにあたっては、当該セルロース繊維をスラリー状にしておくのが好ましい。このスラリーの固形分濃度は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1.0〜5.0質量%である。固形分濃度が上記範囲内であれば、効率的に解繊することができる。
セルロース繊維の解繊は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、高速回転式ホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、一軸混練機、多軸混練機、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。ただし、セルロース繊維の解繊は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られるCNFの寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、セルロース繊維を均一に微細化するのが難しく、場合によっては、一部に解れない繊維塊が残ってしまうおそれがある。
セルロース繊維の解繊に使用するグラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。また、セルロース繊維の解繊に使用する高速回転式ホモジナイザーとしては、エムテクニック社製のクレアミックス−11S等が存在する。
なお、本発明者等は、回転する砥石間で磨砕する方法と、高圧水流で微細化する方法とで、それぞれセルロース繊維を解繊し、得られた各繊維を顕微鏡観察した場合に、高圧水流で微細化する方法で得られた繊維の方が、繊維幅が均一であることを知見している。
高圧水流による解繊は、セルロース繊維の分散液を増圧機で、例えば30MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し(高圧条件)、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が、例えば30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する(減圧条件)方式で行うと好適である。この圧力差で生じるへき開現象によって、パルプ繊維が解繊される。高圧条件の圧力が低い場合や、高圧条件から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするために繰り返し解繊(ノズルから噴出)する必要が生じる。
高圧水流によって解繊する装置としては、高圧ホモジナイザーを使用するのが好ましい。高圧ホモジナイザーとは、例えば10MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力でセルロース繊維のスラリーを噴出する能力を有するホモジナイザーをいう。セルロース繊維を高圧ホモジナイザーで処理すると、セルロース繊維同士の衝突、圧力差、マイクロキャビテーションなどが作用し、セルロース繊維の解繊が効果的に生じる。したがって、解繊の処理回数を減らすことができ、CNFの製造効率を高めることができる。
高圧ホモジナイザーとしては、セルロース繊維のスラリーを一直線上で対向衝突させるものを使用するのが好ましい。具体的には、例えば、対向衝突型高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー/MICROFLUIDIZER(登録商標)、湿式ジェットミル)である。この装置においては、加圧されたセルロース繊維のスラリーが合流部で対向衝突するように2本の上流側流路が形成されている。また、セルロース繊維のスラリーは合流部で衝突し、衝突したセルロース繊維のスラリーは下流側流路から流出する。上流側流路に対して下流側流路は垂直に設けられており、上流側流路と下流側流路とでT字型の流路が形成されている。このような対向衝突型の高圧ホモジナイザーを用いると高圧ホモジナイザーから与えられるエネルギーが衝突エネルギーに最大限に変換されるため、より効率的にセルロース繊維を解繊することができる。
セルロース繊維の解繊は、得られるCNFの平均繊維幅、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度が、前述した所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
このようなトイレクリーナー100は、CMC・CNFが原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMC・CNFの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、トイレクリーナー100は、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくなるからである。
〔水性薬剤〕
また、本実施形態のトイレクリーナー100には、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む所定の水性薬剤が含浸されており、具体的には、架橋剤の他、水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の水性薬剤が含浸されている。当該水性薬剤は、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの重量に対して100〜500重量%含浸させるが、好ましくは150〜300重量%である。
架橋剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができるが、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
水性洗浄剤としては、例えば、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。
香料としては、例えば、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
また、上述した水性薬剤の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を水性薬剤に含ませてもよい。
本発明によれば、原紙シートに、水溶性バインダー及びCNFを配合するとともに、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を含浸させることで、原紙シートに水溶性バインダーを配合し、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を含浸させる場合より、湿潤引張強度を向上させることができる。
また、原紙シートに配合されるCNFは、上記の製造方法によって製造された黄色味を有しないCNFであるから、シートを黄色味がかった色とすることなく、トイレクリーナー100の湿潤引張強度を向上させることができる。
〔エンボス〕
また、トイレクリーナー100の表面は原紙シートのままでも良いが、エンボス加工が施されていることが好ましく、トイレクリーナー100の場合、例えば、図1に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。
エンボスの形状、数、面積率等は任意であるが、トイレクリーナー100の場合、エンボスEM11は、菱形格子となるように配置されており、これにより、エンボスEM11が正方格子や矩形格子に配置される場合と比較して拭きムラを軽減することができる。また、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されている。
エンボスEM11は、図3(a)に示すように、膨出部PR21が曲面の形状を有している。
また、エンボスEM12は、図3(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
そして、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されているので、エンボスEM11の膨出部PR21及びEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、図3(c)に示すように連なったエンボスEM21として形成されることになる。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
このように形成された2種類のエンボスEM11及びEM12により、清掃対象物等との接触面積を増やすことができるので、トイレクリーナー100の硬さが緩和されて、拭き取り性能が高くなる。
すなわち、トイレクリーナー100のシート全面に、膨出部PR21が曲面であるエンボスEM11と、膨出部PR22が平面であるエンボスEM12を組み合わせて形成することにより、拭取り作業時にトイレクリーナー100に力が加わった時点で各エンボスが変形して、初めて接触面積が増加することになるので、接触面積を増加させると共に、各エンボスの変形に起因して、しなやかさも向上することになる。
例えば、図4(a)に示すように、単一のエンボスEM11の場合には、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11が変形して生じる接触面積CN31は、エンボスEM11近傍に離散的に生じる。これに対して、2種類のエンボスEM11及びEM12を組み合わせた場合には、図4(b)に示すように、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11及びEM12が変形して生じる接触面積SN32は、図4(a)の接触面積CN31と比較して、増加することが分かる。
また、2種類のエンボスEM11及びEM12は、通常のエンボスの効果を同様に得ることができ、トイレクリーナーの風合い、吸収性及び嵩高性等を向上させることができる。さらに、連なったエンボスEM21は、通常のエンボスと同様に、エンボスを施すことによる見栄えの良さの効果も得ることができる。
また、トイレクリーナー100は、折り加工されることにより、Y方向の中央部で2つ折りに折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。なお、トイレクリーナー100の折り畳み方は、2つ折りに限ることはなく、例えば、4つ折りにしても良く8つ折りにしても良い。
[トイレクリーナーの製造方法]
次に、トイレクリーナーの製造方法について説明する。図5は、トイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。図6は、トイレクリーナーの原紙シート(抄紙シート)に対して水溶性バインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図7は、図6に示す溶液付与設備で水溶性バインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
トイレクリーナーの製造方法では、図5に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
次いで、図5及び図6に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対して水溶性バインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程(S4)と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S5)とを行う。なお、1次原反ロールは2本以上であれば適宜本数を変更可能であるが、以下の説明においては、2本使用する場合の例について説明する。
次いで、図5及び図7に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S5)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S6)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S7)とを行う。
以下、各工程の詳細については、詳述する。
〔抄紙工程〕
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
なお、原紙シートには、パルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
また、本発明の実施形態では、後述する溶液付与設備の溶液付与工程で水溶性バインダー溶液が付与されるが、抄紙工程の段階で水溶性バインダー溶液を付与するようにしてもよい。
抄紙工程でも水溶性バインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更に水溶性バインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
抄紙工程で水溶性バインダー溶液を付与する方法としては、例えば、抄紙原料であるパルプを含む分散液中に水溶性バインダーと該水溶性バインダーのパルプ繊維への定着剤を添加して、これを原料として湿式抄造する方法が知られている(特開平3−193996号公報)。つまり水溶性バインダーを内添する方法である。また、パルプを含む分散液からシートを湿式抄紙し、プレス脱水或いは半乾燥した後に水溶性バインダーを噴霧乾燥或いは塗工乾燥して、所定量の水溶性バインダーを含有する繊維シートを製造することも可能である。つまり水溶性バインダーを外添する方法である。この際には、プレス脱水を行うよりも熱風通過乾燥機などのプレ乾燥方式を用いた方が、低密度でより水解性の良い繊維シートを得ることができる。更に上述の湿式抄紙法ではなく、水を使わずにパルプ繊維を乾式で解繊して、ウェブを形成した後に水溶性バインダーを噴霧し、その後乾燥して繊維シートを製造することも可能である。いわゆるエアレイド製法である。
図8には、バインダーとして水溶性バインダーを用いた場合の繊維シートの製造に好ましく用いられる製造装置の一例の概略図が示されている。図8に示す製造装置(湿式抄造機)は、フォーマー14と、ワイヤーパートと、第1ドライパート17と、スプレーパートと、第2ドライパート24とを備えて構成されている。
フォーマー14は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパートへ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。また、パルプスラリーにバインダーを混合することも可能である。ワイヤーパートは、フォーマーから供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート17は、ワイヤーパートにおいて形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパートは、第1ドライパート17で乾燥された紙にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート24は、スプレーパートでバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。
フォーマー14から供給された完成紙料がワイヤーパートにおいて抄造され、ワイヤー15上に湿紙が形成される。湿紙は、ワイヤーパートに設置されているサクションボックス16による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。次いで湿紙は、第1ドライパート17に導入されて乾燥される。第1ドライパート17はスルーエアードライヤー(以下、TADという)から構成されている。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム18と、該回転ドラム18をほぼ気密に覆うフード19とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード19内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム18の外側から内部に向けて流通する。湿紙は、図8中、矢印方向に回転する回転ドラム18の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙にはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙は乾燥され紙となる。
第1ドライパート17で得られた紙には、スプレーパートにおいてバインダーを含む水溶液(水溶性バインダー溶液)が噴霧される。スプレーパートは第1及び第2ドライパート17,24間の位置である。両ドライパート17,24は、コンベアを介して連結されている。
コンベアは、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト20と下コンベアベルト21とを備えている。コンベア20は、第1ドライパート17のTADによって乾燥されて紙をこれら両ベルト20,21間に挟持した状態で第2ドライパート24へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト20の下流側の折り返し端には真空ロール22が配置されている。真空ロール22は、上コンベアベルト20の裏面に紙を吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト20を搬送させるようになっている。
図8に示すように、スプレーパートはスプレーノズル23を備えている。スプレーノズル23は第2ドライパート24の下方で且つ真空ロール22に対向するように配設されている。スプレーノズル23は、真空ロール22に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、紙に該噴霧液を添加(外添)するものである。
スプレーパートにおいてバインダーが供給された後、紙は第2ドライパート24へ搬送される。第2ドライパート24はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙は、フード26内に設置されたヤンキードライヤーの回転ドラム25の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム25に抱かれて搬送されている間に紙の乾燥が進行する。
なお、スプレーパートにおいてバインダーを供給する位置は、第1及び第2ドライパート17,24間の位置であればよく、例えば、上コンベアベルト20の上方(図8に示す第1及び第2ドライパート17,24間の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、さらに第2ドライパート24で乾燥させた後の紙に対して上方(図8に示す第2ドライパート24の右側の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、第1及び第2ドライパート17,24間、及び第2ドライパート24の後において、バインダーを噴霧する方向は上方からに限らず、下方からでも、上下両方からでもよい。
本実施形態では、抄紙工程において、原紙シートの縦横の繊維配向の比率(縦/横)が0.8〜2.0、好ましくは0.8〜1.2となるように調整が行われる。繊維配向の調整は、例えば、抄紙機において、抄紙原料をワイヤーパートに供給する角度を調整することで行うことができる。抄紙原料を供給する角度は、例えば、ヘッドボックスのスライス開度を調整することにより行うことができる。または、抄紙機の搬送方向(走行方向)と直交する方向に振動を与える等により繊維配向を調整することとしてもよい。
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図6に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
〔溶液付与工程〕
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図6に示すように、プライ連続シート(抄紙シート)1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式の各スプレーノズル3,3により水溶性バインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
水溶性バインダー溶液は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を水溶性バインダーとして含むものである。水溶性バインダー溶液中におけるカルボキシルメチルセルロースの濃度としては、0.6〜10重量%、好ましくは、0.7重量%以上、4重量%未満とする。
また、水溶性バインダー溶液は、CNFを含んでいる。
なお、水溶性バインダー溶液の噴霧方法として、プライ連続シート1Bの片方の外面に上述の水溶性バインダー溶液を噴霧するようにしても良い。また、上述の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aの少なくとも一方のシートの外面(各シートが対向しない面)に対して、2流体方式のスプレーノズルより上述の水溶性バインダー溶液を噴霧し、直後に当該連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしても良い。
2流体方式のスプレーノズル3は、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴霧することができる。
本実施形態において、スプレーノズル3のノズル径は、0.09gal/min以下とする。また、本実施形態のスプレー条件としては、水溶性バインダー溶液の濃度;4%未満、水溶性バインダー溶液の粘度;400〜1300MPa.s、吐出温度;50〜70℃、液圧;2MPa以上、エア圧;0.05〜0.2MPsとなるようにすることが好ましい。また、バインダー(CMC)の添加量が原紙(プライ連続シート1B)に対して0.7重量%以上となるように水溶性バインダー溶液を噴霧することが好ましい。また、CNFの添加量が原紙(プライ連続シート1B)の重量に対して0.1重量%以上、2.0重量%以下となるように水溶性バインダー溶液を噴霧することが好ましい。
このようにして、プライ連続シート1Bの外面に水溶性バインダー溶液を噴霧することで、トイレクリーナーは、厚み方向において中央(両面に塗布した場合)又は水溶性バインダー溶液の非塗布面(片面に塗布した場合)から水溶性バインダー溶液の塗布面に向かうにつれて水溶性バインダーの含有量が徐々に増加した状態となるので、水解性を確保しつつ、表面強度を向上させることができ、強く擦ってもダメージが生じにくいトイレクリーナーを製造することが可能となる。
〔乾燥工程〕
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cの水溶性バインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの厚み方向外側から内側に向かうにつれて、水溶性バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で水性薬剤が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該水性薬剤を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナーを乾き難くすることができる。また、連続シート1Cの外面付近でCMCの架橋反応が多く生じることとなるので、得られるトイレクリーナーの表面強度を強固なものとすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
また、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図7に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図7に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの水性薬剤(架橋剤、水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等を含む)の含浸、当該水性薬剤を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナーが製造される。
次に、本発明の実施例及び比較例について、湿潤引張強度、水解性、表面強度及びシートの色味に関する評価を行った結果について説明する。
<1・サンプル作成>
各実施例及び比較例の条件は、下記の通りである。なお、各実施例に対応する試料は、下記条件に合致するように、水溶性バインダー塗布設備にて、秤量(ドライ状態)45gsmの原紙を2プライにした後各シートの外面に、CMC・CNFが混合された水溶液を、スプレー塗布した後、熱風乾燥機(温度180℃)を通過させ、水分率が約8%になるまで乾燥させ、所定幅にスリットしながら、原紙シートの加工用原反を作成する。サンプリングした原紙シートに、シリンジで、薬液をシートの重量の200重量%となるよう均一に含浸させ、試料とした。なお、バインダー溶液へのCNFの添加方法は3.0%の分散溶液としてバインダー溶液に添加した。
(実施例1)
パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60
秤量(ドライ状態);90g/m(2プライ)
CMC品番;CMC 1330 ダイセル社
CMC塗布量;0.6dry・g/m
CNFの種類;下記CNF1
CNF配合率;0.1重量%
水性薬剤成分;架橋剤(亜鉛)3.56重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)14.5重量%、プロピレングリコール(PG)3.0重量%
水性薬剤含浸量;原紙重量の200重量%
(比較例1)
CNF配合率;0.0重量%
他の条件は、実施例1と同様である。
(比較例2)
CNFの種類;下記CNF2
他の条件は、実施例1と同様である。
次に、実施例1及び比較例2で用いたCNFについて、説明する。
セルロース繊維に、リンオキソ酸(リン酸水素ナトリウム又は亜リン酸水素ナトリウム)及び尿素を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊してセルロース微細繊維を製造した。セルロース繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプを使用した。また、解繊は、高圧ホモジナイザーを使用して行った。さらに、叩解は、亜リン酸変性パルプに対し、PFIミルを使用して9,200回転で行った。
リンオキソ酸及び尿素の添加量、加熱の温度及び時間は、表Iに示すとおりとした。得られたセルロース微細繊維の物性や評価については、表IIに示した。B型粘度及び透過度の評価方法は、前述したとおりとした。また、黄変化については、目視によって判断するものとし、次の基準で評価した。
(黄変化)
◎:透明又は白くなった場合
×:明らかに黄色くなった場合
<2.試験内容>
実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルを用いて、以下の試験を行った。
(湿潤引張強度試験)
300mm×300mmの原紙を用いて作成した、実施例1、比較例1及び比較例2に対応するサンプルにつき、MD方向の引張強度[cN/25mm]を測定する。引張強度を測定する際、上記サンプルは、JIS P8113に準じてダンベルカッターで幅25mm×120mmに裁断し、試験機条件を引張速度500mm/分、チャック間距離50mmとして測定を行う。なお、各湿潤引張強度の値は、5回測定を行った引張強度の平均値である。
(水解性試験)
実施例1、比較例1及び比較例2に対応するサンプルにつき、水解性を、JIS P4501(2006)4.5「ほぐれやすさ」に準じた方法に従って測定する。
評価は、「80秒以下の場合:◎」、「81〜100秒未満の場合:〇」、「100秒以上の場合:×」とした。
(表面強度試験)
原紙にエンボス加工を施した、実施例1、比較例1及び比較例2に対応するサンプルにつき、プライを剥がさずに幅75mm×長さ240mmにそれぞれ切り取って、幅方向の両端部領域が重なるように3つ折りにし、測定部分を学振型摩擦堅牢度試験機で擦り、目視で紙面に毛羽立ちや破れ等のダメージが確認された時点の回数を計測する。この際、線状部が測定部分となるようにサンプルを切り取って折り畳むようにする。
なお、学振型摩擦堅牢度試験機による試験条件は下記のとおりである。
・学振型摩擦堅牢度試験機:テスター産業株式会社製 品番AB301
・摩擦子:形状 20mm×R50mm
荷重 200gf(白綿布止め、アーム含む)
単位面積あたりの荷重 50gf/cm(荷重200gf/接触面積4.0cm
摩擦子の綿布止めにPPバンド(積水樹脂株式会社 品番19K(幅15mm×長さ60mm))1枚を隙間が生じたり、しわが生じたりしないように、ねじ止めで摩擦子に固定する。
・試料台:形状 R200mm
ストローク 120mm
往復速度 30cps
・サンプル:幅25mm(プライを剥がさず幅75mmを3つ折り)
×長さ240mm(試料台側)
・試験手順:(1)サンプルを試料台に弛まないように取り付ける。
(2)摩擦子を試料台に静かに降ろす。
(3)スタートSWを押して試験開始。
・判定方法:学振させてサンプルの状態を確認し、目視で紙面に毛羽立ちや破れ
等のダメージが確認された時点の回数を計測した。
上記試験では、トイレクリーナーを実際に使用する場面を想定、すなわち汚れが付着したことにより便器の縁等がザラザラした状態を想定し、表面に網目模様が施されたPPバンドを学振子として使用している。これにより、トイレクリーナーの実際の使用時を想定した環境試験が可能となり、トイレクリーナーが実際の使用時に耐え得るか否かについて信頼性の高い評価を行うことができる。
評価は、MD方向及びCD方向のいずれの方向でも平均値が50回を越えた場合は◎、40〜49径は〇、30〜39回を△、30回未満を×とした。
(シートの色味試験)
目視によって、シートの黄変化の有無について評価した。評価基準は以下の通りである。
○:黄変化なし
×:黄変化あり
各試験の結果を表IIIに示す。
<評価>
実施例1及び比較例2と、比較例1との比較により、原紙シートにCNFを添加することによって、シートの湿潤引張強度及び表面強度を向上させることができることが分かる。
また、実施例1と比較例2との比較により、本発明によれば、従来のリンオキソ酸処理を行って得られたCNFを使用した場合と異なり、シートが黄色味を帯びることを防止することができることが分かる。
また、実施例1、比較例1及び比較例2のいずれにおいても、水解性は良好であったことから、CNFの添加によって、シートの水解性に悪影響を及ぼさずにシートの湿潤引張強度及び表面強度を向上させることができることが分かる。
以上のように、本実施形態の清掃用シートは、セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊することで、製造されたCNFを、原紙シートに対して添加したものである。
これにより、シートを黄色味がかった色とすることなく、湿潤強度を向上させることができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、水解性シートとして、トイレクリーナーを例示したが、これに限らず、身体を拭くための体拭き用シート、お尻拭き用シートなど、使用後にトイレなどで大量の水とともに流して廃棄するニーズのある物品に適用可能である。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、膨出部PR21が曲面の形状を有しているエンボスEM11と、膨出部PR22が平面の形状を有しているエンボスEM12を例示しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、いかなる形状のエンボスでも適用可能である。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、すべてのエンボスEM11及びEM12が、図1の図面手前方向に凸になっているが、図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12と、図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12を交互に配置するものであってもよい。
具体的には、図9に示すように、図9の図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12(実線部分)と、図9の図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12(破線部分)を交互に配置することにより、エンボス加工により水解性シートの表面強度を高めると共に、トイレクリーナー101両面のどちらでも拭き取り性能の高い水解性シートを提供することができる。
また、トイレクリーナーのエンボスパターンのみを変更した変形例を図10〜図12に示す。
図10〜図12において、凹部e2は、凸部e1を反転した形状である。凸部e1と凹部e2は、交互に一例に配置され、この列が多列に、かつ隣り合う列における凸部e1と凹部e2が互いに半ピッチずれるように配列されたエンボスパターンを形成している。このように、凸部e1及び凹部e2が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部e1と凹部e2の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、スプレー方式により、水溶性バインダー溶液を付与するようにしたが、1次原反ロール1から連続的に繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して、ドクターチャンバー方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対してバインダー溶液を付与するドクターチャンバーを備える転写設備)、または/および、3ロール方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対してバインダー溶液を付与するディップロールと、ディップロールにバインダー溶液を付与するパンを備える転写設備)によってバインダー溶液を付与するようにしてもよい。つまり、溶液付与工程において、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対応して設けられた印刷機から水溶性バインダー溶液を対応する原紙に転写するようにすることとしても良い。
また、水溶性バインダーとCNFを別々のタイミングでシートに付与しても良い。即ち、CNFを水溶性バインダーに添加せず、別途、CNFを含む溶液をシートに付与しても良い。また、CNFを、水性薬剤に添加して、シートに付与することとしても良い。
100、101 トイレクリーナー
1 1次原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
1E エンボス済シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 第1乾燥設備
5 スリッター
6 ワインダー設備
11 2次原反ロール
12 エンボスロール
13 仕上げ加工設備
14 フォーマー
15 ワイヤー
16 サクションボックス
17 第1ドライパート
18 回転ドラム
19 フード
20 上コンベアベルト
21 下コンベアベルト
22 真空ロール
23 スプレーノズル
24 第2ドライパート
25 回転ドラム
26 フード
EM11、EM12、EM21 エンボス
PR21、PR22 膨出部
HT21、HT22 膨出部の高さ
CN31、SN32 接触面積
e1 凸部
e2 凹部

Claims (9)

  1. 原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた清掃用シートであって、
    前記原紙シートは、
    目付量が30〜150gsmであり、
    セルロースナノファイバーを含有しており、
    前記セルロースナノファイバーは、
    繊維幅が1〜1000nmであり、
    セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする清掃用シート。
    構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
  2. 前記セルロースナノファイバーは、
    セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメートが導入されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用シート。
  3. 前記原紙シートは、
    水溶性バインダーを含有しており、
    前記水性薬剤は、前記水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃用シート。
  4. 清掃用シートの製造方法であって、
    原紙シートに対して、セルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
    原紙シートに対して、水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
    を有し、
    前記セルロースナノファイバーは、
    セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、製造され
    セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする清掃用シートの製造方法。
    構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。
  5. 前記セルロースナノファイバーは、
    前記加熱を、水分率が10%以下となるまで行って製造されることを特徴とする請求項4に記載の清掃用シートの製造方法。
  6. 前記セルロースナノファイバーは、
    前記添加物(A)の添加量を前記セルロース繊維1kgに対して1〜10,000gとし、前記添加物(B)の添加量を前記添加物(A)1molに対して0.01〜100molとして製造されることを特徴とする請求項4又は5に記載の清掃用シートの製造方法。
  7. 前記セルロースナノファイバーは、
    前記加熱を、100〜210℃で行って製造されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法。
  8. 前記セルロースナノファイバーは、
    前記加熱を、pH3〜12で行って製造されることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法。
  9. 原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
    前記水溶性バインダー及び前記セルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
    を有し、
    前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法。
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