JP6792501B2 - 清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法 - Google Patents
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Description
清掃用シートの湿潤強度を向上させるための方法として、本発明者らは、セルロースナノファイバー(セルロース微細繊維、以下「CNF」という。)を清掃用シートの原紙シートに含有させるという方法を見出した。
セルロース繊維を解繊して、原紙シートに含有させるCNFを製造する方法としては、リンのオキソ酸を用いる方法があり、例えば特開2013−127141号公報においては、「100〜170℃に加熱しながら、リンのオキソ酸或いはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物により、セルロースを含む繊維原料を処理する」方法を提案する。同文献においては、当該方法によって、「1〜1000nmの繊維幅を有し、かつ繊維を構成するセルロースのヒドロキシ基の一部が、所定の官能基で置換されて、リンオキソ酸基が導入された微細繊維状セルロース」が得られるとする。
そして、含有させるCNFが黄色味がかったものである場合、これを含有する清掃用シートも黄色味がかったものとなってしまう。
原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた清掃用シートであって、
前記原紙シートは、
目付量が30〜150gsmであり、
セルロースナノファイバーを含有しており、
前記セルロースナノファイバーは、
繊維幅が1〜1000nmであり、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする。
前記セルロースナノファイバーは、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメートが導入されていることを特徴とする。
前記原紙シートは、
水溶性バインダーを含有しており、
前記水性薬剤は、前記水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする。
原紙シートに対して、セルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
原紙シートに対して、水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
を有し、
前記セルロースナノファイバーは、
セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、製造され、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする。
前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、水分率が10%以下となるまで行って製造されることを特徴とする。
前記セルロースナノファイバーは、
前記添加物(A)の添加量を前記セルロース繊維1kgに対して1〜10,000gとし、前記添加物(B)の添加量を前記添加物(A)1molに対して0.01〜100molとして製造されることを特徴とする。
前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、100〜210℃で行って製造されることを特徴とする。
前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、pH3〜12で行って製造されることを特徴とする。
原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
前記水溶性バインダー及び前記セルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
を有し、
前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする。
なお、水解性シートはトイレクリーナーを一例にして説明するが、水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の水性薬剤を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナーの製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向)として説明する。
トイレクリーナー100は、複数枚(例えば、2枚)の原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の水性薬剤が含浸されている。なお、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
原紙シートの目付量は、30〜150gsm程度である。なお、目付量は、JIS P8124に基づくものである。
トイレクリーナー100の原紙シートは、トイレを掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。図2(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、図2(b)に示すように、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向比率を0.8〜2.0、好ましくは、0.8〜1.2とすることで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナー100を提供することができる。なお、縦横の繊維配向の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
また、トイレクリーナー100の原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが付与されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、水性薬剤中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナー100の場合には、水溶性バインダーとして、CMCが付与されている。
また、トイレクリーナー100には、CNFが添加されている。
即ち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、CNFが添加されている。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のCNFの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10,000倍又は30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。この観察においては、観察画像に2本の対角線を引き、更に対角線の交点を通過する直線を任意に3本引く。そして、この3本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。この計測値の中位径を繊維幅とする。
本実施形態においては、セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱してセルロース繊維に亜リン酸のエステル、好ましくは亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する。また、この亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維を洗浄した後に、解繊してCNFを得る。
セルロース繊維としては、例えば、植物由来の繊維(植物繊維)、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等を使用することができる。これらの繊維は、必要により、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、セルロース繊維としては、植物繊維を使用するのが好ましく、植物繊維の一種であるパルプ繊維を使用するのがより好ましい。セルロース繊維がパルプ繊維であると、CNFの物性調整が容易である。
添加物(A)は、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる。添加物(A)としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素アンモニウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等を使用することができる。これらの亜リン酸類又は亜リン酸金属塩類は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、亜リン酸水素ナトリウムを使用するのが好ましい。
添加物(B)は、尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる。添加物(B)としては、例えば、尿素、チオ尿素、ビウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、テトラメチル尿素等を使用することができる。これらの尿素又は尿素誘導体は、それぞれを単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、尿素を使用するのが好ましい。
NH2−CO−NH2 → HN=C=O+NH3 …(1)
Cell−OH+H−N=C=O → Cell−O−C−NH2 …(2)
添加物(B)の添加量は、添加物(A)1molに対して、好ましくは0.01〜100mol、より好ましくは0.2〜20mol、特に好ましくは0.5 〜10molである。添加量が0.01mol未満であると、セルロース繊維に亜リン酸のエステルが十分に導入されないおそれがある。他方、添加量が100molを超えても、尿素の添加による効果が頭打ちとなるおそれがある。
添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維を加熱する際の加熱温度は、好ましくは100〜210℃、より好ましくは100〜200℃、特に好ましくは100〜180℃である。加熱温度が100℃以上であれば、亜リン酸のエステルを導入することができる。ただし、加熱温度が210℃を超えると、セルロースの劣化が急速に進み、着色や粘度低下の要因となるおそれがある。
セルロース繊維に亜リン酸のエステル等を導入するに先立って、及び/又は亜リン酸のエステル等を導入した後において、セルロース繊維には、必要により、叩解等の前処理を施すことができる。セルロース繊維の解繊に先立って当該パルプ繊維に前処理を施しておくことで、解繊の回数を大幅に減らすことができ、解繊のエネルギーを削減することができる。
アルカリ処理の方法としては、例えば、アルカリ溶液中に、亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維を浸漬する方法が存在する。
亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維は、解繊するに先立って、洗浄する。セルロース繊維を清浄することで、副生成物や未反応物を洗い流すことができる。また、この清浄が前処理におけるアルカリ処理に先立つものであれば、当該アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量を減らすことができる。
亜リン酸のエステル等を導入したセルロース繊維は、洗浄後に解繊(微細化処理)する。この解繊によって、パルプ繊維はミクロフィブリル化し、CNFとなる。
また、本実施形態のトイレクリーナー100には、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む所定の水性薬剤が含浸されており、具体的には、架橋剤の他、水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の水性薬剤が含浸されている。当該水性薬剤は、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの重量に対して100〜500重量%含浸させるが、好ましくは150〜300重量%である。
また、原紙シートに配合されるCNFは、上記の製造方法によって製造された黄色味を有しないCNFであるから、シートを黄色味がかった色とすることなく、トイレクリーナー100の湿潤引張強度を向上させることができる。
また、トイレクリーナー100の表面は原紙シートのままでも良いが、エンボス加工が施されていることが好ましく、トイレクリーナー100の場合、例えば、図1に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。
また、エンボスEM12は、図3(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
次に、トイレクリーナーの製造方法について説明する。図5は、トイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。図6は、トイレクリーナーの原紙シート(抄紙シート)に対して水溶性バインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図7は、図6に示す溶液付与設備で水溶性バインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
以下、各工程の詳細については、詳述する。
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
なお、原紙シートには、パルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
抄紙工程でも水溶性バインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更に水溶性バインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図6に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図6に示すように、プライ連続シート(抄紙シート)1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式の各スプレーノズル3,3により水溶性バインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
また、水溶性バインダー溶液は、CNFを含んでいる。
本実施形態において、スプレーノズル3のノズル径は、0.09gal/min以下とする。また、本実施形態のスプレー条件としては、水溶性バインダー溶液の濃度;4%未満、水溶性バインダー溶液の粘度;400〜1300MPa.s、吐出温度;50〜70℃、液圧;2MPa以上、エア圧;0.05〜0.2MPsとなるようにすることが好ましい。また、バインダー(CMC)の添加量が原紙(プライ連続シート1B)に対して0.7重量%以上となるように水溶性バインダー溶液を噴霧することが好ましい。また、CNFの添加量が原紙(プライ連続シート1B)の重量に対して0.1重量%以上、2.0重量%以下となるように水溶性バインダー溶液を噴霧することが好ましい。
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cの水溶性バインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの厚み方向外側から内側に向かうにつれて、水溶性バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で水性薬剤が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該水性薬剤を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナーを乾き難くすることができる。また、連続シート1Cの外面付近でCMCの架橋反応が多く生じることとなるので、得られるトイレクリーナーの表面強度を強固なものとすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図7に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図7に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの水性薬剤(架橋剤、水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等を含む)の含浸、当該水性薬剤を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナーが製造される。
パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60
秤量(ドライ状態);90g/m2(2プライ)
CMC品番;CMC 1330 ダイセル社
CMC塗布量;0.6dry・g/m2
CNFの種類;下記CNF1
CNF配合率;0.1重量%
水性薬剤成分;架橋剤(亜鉛)3.56重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)14.5重量%、プロピレングリコール(PG)3.0重量%
水性薬剤含浸量;原紙重量の200重量%
CNF配合率;0.0重量%
他の条件は、実施例1と同様である。
CNFの種類;下記CNF2
他の条件は、実施例1と同様である。
◎:透明又は白くなった場合
×:明らかに黄色くなった場合
実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルを用いて、以下の試験を行った。
300mm×300mmの原紙を用いて作成した、実施例1、比較例1及び比較例2に対応するサンプルにつき、MD方向の引張強度[cN/25mm]を測定する。引張強度を測定する際、上記サンプルは、JIS P8113に準じてダンベルカッターで幅25mm×120mmに裁断し、試験機条件を引張速度500mm/分、チャック間距離50mmとして測定を行う。なお、各湿潤引張強度の値は、5回測定を行った引張強度の平均値である。
実施例1、比較例1及び比較例2に対応するサンプルにつき、水解性を、JIS P4501(2006)4.5「ほぐれやすさ」に準じた方法に従って測定する。
評価は、「80秒以下の場合:◎」、「81〜100秒未満の場合:〇」、「100秒以上の場合:×」とした。
原紙にエンボス加工を施した、実施例1、比較例1及び比較例2に対応するサンプルにつき、プライを剥がさずに幅75mm×長さ240mmにそれぞれ切り取って、幅方向の両端部領域が重なるように3つ折りにし、測定部分を学振型摩擦堅牢度試験機で擦り、目視で紙面に毛羽立ちや破れ等のダメージが確認された時点の回数を計測する。この際、線状部が測定部分となるようにサンプルを切り取って折り畳むようにする。
なお、学振型摩擦堅牢度試験機による試験条件は下記のとおりである。
・学振型摩擦堅牢度試験機:テスター産業株式会社製 品番AB301
・摩擦子:形状 20mm×R50mm
荷重 200gf(白綿布止め、アーム含む)
単位面積あたりの荷重 50gf/cm2(荷重200gf/接触面積4.0cm2)
摩擦子の綿布止めにPPバンド(積水樹脂株式会社 品番19K(幅15mm×長さ60mm))1枚を隙間が生じたり、しわが生じたりしないように、ねじ止めで摩擦子に固定する。
・試料台:形状 R200mm
ストローク 120mm
往復速度 30cps
・サンプル:幅25mm(プライを剥がさず幅75mmを3つ折り)
×長さ240mm(試料台側)
・試験手順:(1)サンプルを試料台に弛まないように取り付ける。
(2)摩擦子を試料台に静かに降ろす。
(3)スタートSWを押して試験開始。
・判定方法:学振させてサンプルの状態を確認し、目視で紙面に毛羽立ちや破れ
等のダメージが確認された時点の回数を計測した。
評価は、MD方向及びCD方向のいずれの方向でも平均値が50回を越えた場合は◎、40〜49径は〇、30〜39回を△、30回未満を×とした。
目視によって、シートの黄変化の有無について評価した。評価基準は以下の通りである。
○:黄変化なし
×:黄変化あり
実施例1及び比較例2と、比較例1との比較により、原紙シートにCNFを添加することによって、シートの湿潤引張強度及び表面強度を向上させることができることが分かる。
また、実施例1と比較例2との比較により、本発明によれば、従来のリンオキソ酸処理を行って得られたCNFを使用した場合と異なり、シートが黄色味を帯びることを防止することができることが分かる。
また、実施例1、比較例1及び比較例2のいずれにおいても、水解性は良好であったことから、CNFの添加によって、シートの水解性に悪影響を及ぼさずにシートの湿潤引張強度及び表面強度を向上させることができることが分かる。
これにより、シートを黄色味がかった色とすることなく、湿潤強度を向上させることができる。
図10〜図12において、凹部e2は、凸部e1を反転した形状である。凸部e1と凹部e2は、交互に一例に配置され、この列が多列に、かつ隣り合う列における凸部e1と凹部e2が互いに半ピッチずれるように配列されたエンボスパターンを形成している。このように、凸部e1及び凹部e2が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部e1と凹部e2の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
1 1次原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
1E エンボス済シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 第1乾燥設備
5 スリッター
6 ワインダー設備
11 2次原反ロール
12 エンボスロール
13 仕上げ加工設備
14 フォーマー
15 ワイヤー
16 サクションボックス
17 第1ドライパート
18 回転ドラム
19 フード
20 上コンベアベルト
21 下コンベアベルト
22 真空ロール
23 スプレーノズル
24 第2ドライパート
25 回転ドラム
26 フード
EM11、EM12、EM21 エンボス
PR21、PR22 膨出部
HT21、HT22 膨出部の高さ
CN31、SN32 接触面積
e1 凸部
e2 凹部
Claims (9)
- 原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた清掃用シートであって、
前記原紙シートは、
目付量が30〜150gsmであり、
セルロースナノファイバーを含有しており、
前記セルロースナノファイバーは、
繊維幅が1〜1000nmであり、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする清掃用シート。
- 前記セルロースナノファイバーは、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメートが導入されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用シート。 - 前記原紙シートは、
水溶性バインダーを含有しており、
前記水性薬剤は、前記水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃用シート。 - 清掃用シートの製造方法であって、
原紙シートに対して、セルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
原紙シートに対して、水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
を有し、
前記セルロースナノファイバーは、
セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、製造され、
セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入されていることを特徴とする清掃用シートの製造方法。
- 前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、水分率が10%以下となるまで行って製造されることを特徴とする請求項4に記載の清掃用シートの製造方法。 - 前記セルロースナノファイバーは、
前記添加物(A)の添加量を前記セルロース繊維1kgに対して1〜10,000gとし、前記添加物(B)の添加量を前記添加物(A)1molに対して0.01〜100molとして製造されることを特徴とする請求項4又は5に記載の清掃用シートの製造方法。 - 前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、100〜210℃で行って製造されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法。 - 前記セルロースナノファイバーは、
前記加熱を、pH3〜12で行って製造されることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法。 - 原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
前記水溶性バインダー及び前記セルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
を有し、
前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法。
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