JP6792105B2 - フェノール液化樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、フェノール樹脂に係る技術分野に属する。本発明は、鋳造用鋳型、成型材料、エポキシ硬化剤、各種バインダ等に用いられるフェノール液化樹脂に関するものである。本発明は、特にバイオマスから得られるバイオマスフェノール液化樹脂に関するものである。
20世紀の中葉から現在に至る石油化学の発展により、耐久性が高く使いやすい合成樹脂が多様に、大量に使われるようになり、人類の生活は随分と便利で快適なものとなってきている。
その反面、大気中の二酸化炭素の濃度が400ppmに達するなど環境問題が深刻となり、また石油資源の減少、枯渇といった資源問題も意識されるようになってきている。そのような背景のもとで、再生産可能な資源である植物を中心とするバイオマスを、材料やエネルギー源としてより多く活用することが世界的に強く求められている。
植物由来の原料を使用したプラスチックは、いわゆるカーボンニュートラルの材料であり、石油等の化石資源から製造したプラスチック比べ、その分、二酸化炭素排出量を削減できる。この事実は、石油依存型社会から持続可能型社会への移行の動きに沿うものであり、近年、石油由来物質の代わりにバイオマスを利用して燃料や材料・製品を生産する新たな技術がますます求められるようになって来ている。例えば、タイヤメーカーにおいても、100%植物由来のタイヤを開発し、販売するようになっている。
このようなバイオマスを樹脂化して工業的な利用を促進するために、このバイオマスを液化する技術の開発研究が進められている。その一つとして、植物体(バイオマス)を酸性触媒とフェノール存在下で加溶媒分解(フェノリシス)し液状化した上で、フェノール樹脂として利用する開発が進められている。例えば、特許文献1には、フェノール類(あるいは多価アルコール類)と木粉の混合物とを、工夫した酸性触媒の存在下でより迅速、スムーズに反応させて得られるフェノール樹脂(あるいはウレタン樹脂)が開示されている。かかるフェノール樹脂の耐熱性、荷重たわみ温度は、従来材と同等以上であることが確認されている。難燃性および消火性に関しても、自動車用内装材の難燃性基準であるFMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards)No.302「自動車内装材の燃焼速度の規制」による評価に耐えるものであるなど、当該フェノール樹脂は優れたものであることが報告されている(非特許文献1参照)。
また、特許文献2には、フルクトース、フルクトースを含有する糖類とフェノールとを酸触媒存在下で反応させ、下記式(1)で表される化合物(化合物1)を含有することを特徴とするフェノール樹脂が開示されている。化合物1はフェノール類とヒドロキシメチルフルフラールとの反応物であることが、特許文献2に述べられている。ただし、この化合物1の化学構造決定の根拠に関しては全く示されていない。
Figure 0006792105
ヒドロキシメチルフルフラールを中間生成成分として生成させるフルクトース、フルクトースを含有する糖類を酸触媒下、フェノールと100〜150℃で加熱反応させた生成物である上記フェノール樹脂は、特許文献2によれば、化合物1を含有し、低軟化点で成形時の流動性が高く、優れた成形加工性を備え、しかも硬化物を得る際の硬化剤の使用量を低減しうるものであると記述されている。しかし、 酸触媒の存在下,120〜150℃の反応でヒドロキシメチルフルフラールを中間生成成分として生成させる糖質類はフルクトース、フルクトースを含有する糖類に限られず、グルコース、マンノース、デンプン、ヘミセルロースなど広く存在するので、化合物1がフェノール類とフェノール類との酸触媒存在下の反応生成物としてのヒドロキシメチルフルフラール経由で生成されるとする特許文献2の記載内容は正しいとは言い難い。
また、特許文献2に類似内容の学術論文も発表されている(非特許文献2参照)。ただし、上述の化合物1の化学構造は全く示されていない。単に、異性化糖らしいデンプンの酵素処理低分子化物を酸触媒下においてフェノールと100〜150℃で加熱反応させて生成物を得、電界脱離質量分析(FD−MS)を行った結果が示されているに過ぎない。すなわち、フェノールホルムアルデヒド樹脂と共通した分子量200、306、412、518のマスユニット構造体、および分子量372を代表とするフラン骨格を有すると推定される成分ピークが観測されると述べられているだけであり、上記化合物1と結び付け得る記述はない。
非特許文献2は、ホルムアルデヒドフリーで生成されたものについて述べているにも関わらず、その生成物に、ホルムアルデヒドとの反応で得られる一般のフェノールホルムアルデヒド樹脂と共通した分子量200、306、412、518のマスユニット構造体がなぜ存在するのか不明である。
なお、従来は、液化生成物を得た後、フェノリシス反応にあずからなかったフェノールと反応させ、それを消費させるためにホルムアルデヒドを反応させている例が多かった。木粉をフェノールで液化した場合の例としては、特許文献3がある。こうすることによって、低軟化点で成形時の流動性が高く、優れた成形加工性を備え、しかも硬化物を得る際の硬化剤の使用量を低減しうるバイオマスフェノール樹脂が得られてきていた。バイオマス液化以外のケースでも、リグニンなどのバイオマス成分を利用するバイオマスフェノール樹脂の場合、そのバイオマスフェノール樹脂化にあたり、ホルムアルデヒドを反応させている例が多い(非特許文献3〜7参照)。これらの場合はノボラック樹脂、レゾール樹脂いずれの形ででも用いることができ、ノボラック樹脂とした場合でも、樹脂の流動性、ひいては成形加工性をより高くでき、更には硬化物を得る際の硬化剤の使用量を低減し得るという結果が得られる。ただし、両者とも樹脂としては、ホルムアルデヒド樹脂の範疇に入るものとなり、非ホルマリン樹脂が求められている現状に合わなくなっている。
特開2007−092008号公報 特開2010−090297号公報 特許第3152421号公報
常岡和記ら:機能材料、Vol.30,No.11,22−29(2010). 大久保明浩ら:ネットワークポリマー、Vol.32,No.2、97−100(2011). C.G. da Silva et. al. : Industrial Crops and Products 42 (2013) 87-95. Amine Moubarik et. al. : Industrial Crops and Products 45 (2013) 296-302. Wei Zhang et. al. : International J.Adhesion & Adhesives 40 (2013) 11-18. Wei Zhang et. al. : Industrial Crops and Products 43 (2013) 326-333. Elaine C. et. al. : Composites: Part B 43 (2012) 2851-2860.
本発明の課題として、例えば、下記のことを挙げることができる。
(1)まず、上述の特許文献2における未解決点を解決した、あるいは不正確な点を修正したより進んだ技術開発を進めること。
(2)他方、特許文献1の技術に見られるように、触媒の改良により木粉などバイオマスの液化は効果的に進むようになった。しかし、特許文献1の技術で得られるバイオマスフェノール液化樹脂は、高軟化点で成形時の流動性が低く、硬化させて最終製品を得るための成形において、成形加工性が満足できるものではないという問題点もあり、その解決策を得る必要がある。この課題は、液化過程でフェノリシス反応にあずからなかった未反応のフェノールを、ホルムアルデヒドと反応させて樹脂化させることにより解決できることは知られている。これに反し、非ホルムアルデヒド樹脂が求められている現状を考慮して、ホルムアルデヒドとの反応を採用せず、上記未反応フェノールを減圧留去する手法を採用したため、加工性に悪影響が出て生じた課題を解決すること。
(3)また、従来のフェノール樹脂に比べ、硬化反応性が同等以上で、硬化時におけるホルムアルデヒドおよびアミン等の有害な分解ガスの発生を低減させるという課題の解決も重要である。これは、フェノール樹脂の硬化物を得る際に使用するヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤量を減らすという課題である。さらに、現状では、特許文献1に記載のフェノール樹脂では、従来品に比べ同一硬化条件の下では硬化時間が長くなっており、それを解決するという課題でもある。
繰り返しになるが、上記課題(2)と(3)とは、フェノリシス反応にあずからなかったフェノールをホルムアルデヒドと反応させず、減圧留去する場合でも、低軟化点で成形時の流動性が高く成形加工性に優れ、しかも硬化物を得る際の硬化剤の使用量を低減できるバイオマスフェノール液化樹脂の開発を強く求めるという課題である。
(4)特許文献1で述べたように、触媒の改良により木粉などバイオマスの液化は効果的に進むようになった。しかし、依然として硫酸系の均一系触媒を用いた酸触媒反応を用いており、それに基づく問題点がある。すなわち、硫酸は化学工業において重要な触媒であるが、 金属装置の腐食、生成物との分離、 廃酸処理など製造と環境保全に対する負荷は大きい。そのため取扱いが容易で強酸性を有する固体のブレンステッド酸触媒の使用とそれを用いたプロセスの構築が望まれる。硫酸代替触媒に要求される性能としては、高活性、 耐熱性、化学的安定性、反応の選択性などが挙げられる。一般論としても、硫酸系均一系触媒の使用によって起こる問題は解決されるべき課題となっている。
ここで「バイオマス」とは、生物体、特に木材、竹、ヤシの実などの植物体、セルロース、デンプン、プルラン等の多糖、デキストリン、スクロース、マルトース等の小糖、フルクトース、グルコース等の単糖、リグニン、ヘミセルロースなどの植物成分をいい、更に、例えば、木材工業およびパルプ工業等における木質系廃棄物、間伐材、建築解体材や稲ワラ、さやガラ、バガス等の農業廃棄物等、各種のリグノセルロース類、さらには古古米、食品工業廃棄物等を含み、本明細書中では、特に断らない限りこれらの物質を一括してバイオマスという。本発明においては、酸性触媒存在下、単にフェノール類で液化しただけでは溶融粘度が高く、硬化反応性が乏しいものしか得られないバイオマスに対して適用することが好ましく、具体的には、木粉、グラウンドパルプなどの木材、デンプン、デキストリン、スクロース、グルコース等のバイオマスに適用することが好ましい。また、「バイオマスフェノール液化樹脂」とは、木材などのバイオマスを酸性触媒存在下においてフェノール類で液化して得られるフェノール樹脂初期縮合物様樹脂をいう。
本検討の結果、下記式(A)で表わされる化合物(以下、「本発明化合物」という。)を含有した新規なバイオマスフェノール液化樹脂を見出し、上記課題(1)を解決した。またそこで得られたバイオマスフェノール樹脂の特性が上記課題(2)(3)の要求を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。本発明化合物の化学名は、4−{2−[2−(1−ベンゾフラン−2−イル)エチル]−1−ベンゾフラン−3−イル}フェノールである。
Figure 0006792105
課題4との関連で、先ず液体の均一系酸塩基触媒に比べて、固体の不均一系酸塩基触媒の有利な点を列挙すると、a)触媒が反応容器や反応装置を腐食しない、b)液相反応では、反応後の生成物と触媒の分離が容易である、c)触媒の繰り返し使用が可能である、d)使用済みの液体触媒(硫酸など)の廃棄には高額の費用を要するが、固体触媒の場合は、その問題ははるかに少ない、またe)固体触媒の方が触媒の活性と選択性も優れている場合が多い。これらの有利な点は、いずれも実用上のコストダウンにつながり、環境保全にもプラスである。そこで、本発明者らは、ブレンステッド酸固体触媒を用いる検討を行った。すなわち、液化触媒をスルホ化した活性炭やアンバーリストなど固体酸触媒の使用により効果的に環境負荷を低減させ、同時に上述の課題の解決が図れる。これらの触媒は熱水や酸性水溶液中で非常に安定であることが報告されている。さらに、いくつかのバイオマス、特にフルクトースを主とする単糖類が100〜160℃の反応温度下ではフェノール類と懸濁した状態になり、反応に好都合である。固体酸を充填したカラムに対し反応液を連続的に循環させることも可能であり、装置を用いた連続反応にも適用し得るなど付加的利点も大きい。
本発明として、例えば、下記のものを挙げることができる。
[1]本発明化合物を含有することを特徴とする、バイオマスフェノール液化樹脂。
[2]バイオマスが、フルクトースまたはフルクトースを含有する糖質類である、上記[1]に記載のバイオマスフェノール液化樹脂。
[3]フルクトースを含有する糖質類とフェノールを含有するフェノール類とを酸性触媒存在下において反応する工程を含む、上記[1]または[2]に記載のバイオマスフェノール液化樹脂の製造方法。
[4]前記糖質類が、フルクトースを5質量%以上含有する、上記[3]に記載のバイオマスフェノール液化樹脂の製造方法。
[5]酸性触媒が固体酸触媒である、上記[3]または[4]に記載のバイオマスフェノール液化樹脂の製造方法。
[6]固体酸触媒が、スルホ化した活性炭または架橋ポリスチレンである、上記[5]に記載のバイオマスフェノール液化樹脂の製造方法。
[7]上記[1]または[2]に記載のバイオマスフェノール液化樹脂を用いて製造されることを特徴とする、フェノール樹脂加工品の製造方法。
[8]本発明化合物。
本発明のバイオマスフェノール液化樹脂(以下、「本発明液化樹脂」という。)は、低軟化点で成形時の流動性が高く成形加工性に優れていることなどから、本発明液化樹脂を用いればフェノール樹脂成形品を容易に製造することができる。また、原料として天然成分を用いているから、その分二酸化炭素排出量を削減することができる。また、フェノール樹脂成形品の製造において、本発明液化樹脂は硬化反応性が高いことから、ホルムアルデヒド発生の原因となる硬化剤(ヘキサメチレンテトラミンなど)の使用量を減らすことができる。さらに、本発明液化樹脂は、その調製にあたり、フェノリシス反応にあずからなかったフェノール類とホルムアルデヒドとの反応を行う必要がないため、「非ホルムアルデヒド樹脂」にできるという長所も持っている。また、関連の製造方法がグリーン化学的にも改良された方法になっている。
本発明化合物のH−H COSY NMRスペクトラムである。 本発明化合物のH−13C HSQC NMRスペクトラムである。 液化生成物のGPCクロマトグラムである。横軸は保持時間(分)を、縦軸は示差屈折計検出量(溶質の濃度に対応)を、それぞれ表す。 液化生成物のGPCクロマトグラムである。横軸は保持時間(分)を、縦軸は示差屈折計検出量(溶質の濃度に対応)を、それぞれ表す。
以下、本発明について詳述する。
1 本発明液化樹脂について
本発明液化樹脂は、本発明化合物を含有することを特徴とする。本発明化合物は、硫酸など均一酸性触媒、あるいはスルホ化した活性炭や架橋ポリスチレン(例、アンバーリスト(登録商標))など固体酸触媒など酸性触媒存在下において、フルクトースとフェノールとの反応(フェノリシス)により得ることができる。したがって、一般的なバイオマスフェノール液化樹脂に本発明化合物を任意に配合し、本発明液化樹脂とすることができる他、バイオマスフェノール液化樹脂を製造する過程において、フルクトースとフェノールとが反応することにより自動的に本発明化合物が含有され、本発明液化樹脂とすることもできる。
1.1 バイオマスフェノール液化樹脂に本発明化合物を任意に配合し、本発明液化樹脂とする場合
バイオマスフェノール液化樹脂への本発明化合物の配合量、即ち本発明液化樹脂中における本発明化合物の含有量としては、本発明液化樹脂全体を100質量部とした場合、0.5〜80質量部の範囲内が適当であり、1.5〜20質量部の範囲内が好ましく、2.0〜15質量部の範囲内がより好ましい。本発明化合物の含有量が0.5質量部未満であると流動性が充分に得られないおそれがあり、80質量部より多いと配合物としての添加量を越えるおそれがある。
本発明液化樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明化合物以外に、例えば、顔料、離型剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、潤滑剤などの添加剤を含むことができる。
バイオマスフェノール液化樹脂への本発明化合物の配合は、本発明化合物そのもの、またはそれを含む組成物とバイオマスフェノール液化樹脂とを常法により混合することにより行うことができる。かかる混合は、手動により、または適当な混合機を用いて行うことができる。
1.1.1 本発明化合物の調製
本発明化合物は、酸性触媒存在下において、フルクトースとフェノールとの反応により得ることができる。なお、フルクトース以外のグルコースや、マルトース、デキストリンなどとフェノールとの反応では本発明化合物は得られていない。そのため、本発明化合物は、糖質類の中でもフルクトース関連化合物とフェノールとの反応において特異的に得られるものであるといえる。
ここで「フルクトース」としては、純度の高いフルクトースが最も好ましいが、フルクトースを含有する糖質類(フルクトースを構成糖とする少糖や多糖を含む)であってもよい。かかるフルクトースを含有する糖質類としては、例えば、異性化糖、蔗糖、イヌリン(フルクトース重合体)が挙げられる。
また、各異性体であってもよい。
フルクトース含有糖類の場合、その固形分全体を100質量部としてフルクトースを5質量部以上含有すればよく、30質量部以上含有することが好ましく、55質量部以上、特に95質量部以上含有することがより好ましい。フルクトース含有量が5質量部未満であると、本発明化合物を充分量得られないおそれがある。
本発明化合物を得る際のフルクトースとフェノールとの質量比率としては、フルクトースを1質量部とした際にフェノールがその1.5〜20質量倍の範囲内が適当であり、2〜6質量倍の範囲内が好ましい。フェノールがフルクトースの1.5質量倍未満であると十分量の本発明化合物が得られないおそれがある。
上記酸性触媒としては、例えば、鉱酸類(例えば、塩酸、硫酸、リン酸等)、有機酸類(例えば、メチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸、シュウ酸等)を挙げることができる。この中、メチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸が好ましい。本発明ではそれに加えて、スルホ化した活性炭やアンバーリストなど固体酸触媒も使用することができる。かかる固体酸触媒を用いることにより、反応による環境負荷を低減することができると共に、触媒の活性と選択性を優れたものとし、また、固体酸触媒を充填したカラムを用いるなどして連続装置反応も容易にすることができる。
酸性触媒の使用量としては、鉱酸や有機酸類について、その種類などにより異なるが、フルクトースとフェノールとの合計を100質量部とした場合、0.1〜50質量部の範囲内が適当であり、0.2〜10質量部の範囲内が好ましい。酸性触媒の使用量が0.1質量部未満であると充分な量の本発明化合物が生成されないおそれがあり、50質量部より多いと酸分解やゲル化を惹起するおそれがある。また、固体酸類については、その種類、バイオマスの種類などから適宜調製される。
反応温度としては、20〜200℃の範囲内が適当であり、100〜160℃の範囲内が好ましい。反応温度が20℃未満であると充分に反応せず本発明化合物が生成しないおそれがあり、200℃より高いと過度の分解を惹起するおそれがある。
反応時間としては、均一系の鉱酸や有機酸類の場合、0.5〜20時間の範囲内が適当であり、0.5〜3時間の範囲内が好ましい。反応時間が0.5時間未満であると十分な収率で本発明化合物が得られないおそれがあり、20時間より長いと生産性の低下をきたすおそれがある。固体酸触媒使用の場合、フラスコにバイオマスとフェノールと共に固体酸触媒を仕込んだバッチ法で反応させることも出来、便宜上本特許での実験でも採用しているが、この場合は固体触媒に対する液状媒体の液比を低く出来ないため、固体触媒と反応基質、及び反応物の衝突の頻度が低くなり、反応時間を長く取らざるを得なくなっている。今後、固体触媒をカラムに充填し、反応基質のフェノールなど反応物との懸濁液を注入、通過させるなど、液比を低下させた反応法を採用することにより、反応時間を短縮できる。
フルクトースとフェノールとの反応後、GPCクロマトグラフィーを含む各種液体クロマトグラフィー、薄層グロマトグラフィーなどを用いて常法により本発明化合物を単離精製することができる。具体的には、分取GPCクロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィーや分取用薄層クロマトグラフィーを用いて分析や化学構造決定、さらには特殊な特性化に必要な量採取することができる。
1.1.2 バイオマスフェノール液化樹脂の調製
バイオマスフェノール液化樹脂は、特許文献1などに記載された公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、酸性触媒存在下においてバイオマスとフェノール類とを反応(加溶媒分解、ソルボリシス)させてバイオマスを液化することにより製造することができる。
上記「フェノール類」としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ブチルクレゾール、フェニルフェノール、クミルフェノール、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールAを挙げることができる。これらの中でも、反応性が高く、しかも入手容易な点で、フェノール、クレゾール、キシレノール、ビスフェノールAが好ましく、フェノールがより好ましい。これら一種を用いても、二種以上を併用してもよい。
バイオマスが糖質類の場合の糖質類としては、例えば、単糖類、2糖類、3糖類、少糖類、多糖類が挙げられる。具体的には、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、マルトース、イソマルソース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、異性化糖、デキストリン、オリゴ糖、フラクタン、フラクオリゴ糖、澱粉、粗澱粉、アミロース、アミロペクチン、廃棄糖蜜(澱粉かす)などが挙げられる。これらは1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
上記酸性触媒としては、例えば、鉱酸類(例えば、塩酸、硫酸、リン酸等)、有機酸類(例えば、メチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸、シュウ酸等)を挙げることができる。この中、メチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸が好ましい。
酸性触媒の使用量としては、バイオマスとフェノール類との合計を100質量部とした場合、0.1〜50質量部の範囲内が適当であり、0.2〜10質量部の範囲内が好ましい。酸性触媒の使用量が0.1質量部未満であると充分な量の当該液化反応物が生成されないおそれがあり、50質量部より多いと酸分解やゲル化を惹起するおそれがある。
バイオマスが糖質類である場合も基本的に上記と同じであり、バイオマスフェノール液化樹脂を得る際の糖質類とフェノール類との質量比率としては、糖質類を1質量部とした際にフェノール類がその0.5〜20質量倍の範囲内が適当であり、1.5〜6質量倍の範囲内が好ましい。
酸性触媒やその使用量、反応温度、反応時間などは、前記「1.1.1 本発明化合物の調製」の項で述べたものと基本的に同様である。
未反応のまま残ったフェノール類は、必要に応じて、引き続き所定量のホルマリンを添加して樹脂化反応を行って消費させるか、あるいは減圧蒸留などで留去することができるが、留去することが好ましい。
1.2 バイオマスフェノール液化樹脂を製造する過程において、フルクトースとフェノールとが反応することにより自動的に本発明化合物が含有され、本発明液化樹脂とする場合
バイオマスフェノール液化樹脂は、前述の通り、特許文献1などに記載された公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、酸性触媒存在下においてバイオマスとフェノール類とを反応(加溶媒分解、ソルボリシス)させてバイオマスを液化することにより製造することができる。この場合のバイオマスには前記したフルクトースが、フェノール類にはフェノールが含まれる。それ以外は、前記「1.1.2 バイオマスフェノール液化樹脂の調製」の項で述べたことと同様にして当該バイオマスフェノール液化樹脂を製造することができる。
本バイオマフェノール液化樹脂の製造におけるフェノール類中のフェノールの含有量としては、バイオマス(バイオマスが糖質類であれば糖質類)中のフルクトースを1質量部とした際にその0.5〜20質量倍の範囲内が適当であり、1.5〜6質量倍の範囲内が好ましい。フェノール含有量がフルクトースの0.5質量倍未満であると、本発明液化樹脂中における本発明化合物の含有量が少なくなり、十分な低軟化点や流動性が得られないおそれがある。
1.3 本発明液化樹脂の用途
本発明液化樹脂は、例えば、鋳造用鋳型、成形材料、エポキシ硬化剤、布紙強化用バインダ、塗料、砥石用樹脂などに用いることができる。
2 フェノール樹脂加工品について
本発明は、本発明液化樹脂を用いて製造されるフェノール樹脂加工品を含む。かかる加工品としては、例えば、成形品、接着剤、発泡体、炭素繊維、結合剤、塗料などフェノール樹脂が使われる加工品であればいずれも挙げることができる。具体的には、例えば、自動車部品(エアーコンプレッサー用・パワーステアリング用・テンショナー用の各種プーリ等)、電気・電子・重電部品(プリント配線基板、配電盤ブレーカー、マグネットスイッチ、コンセントプラグ等として)、歯車、摺動ライニング、軸受などの機械部品をはじめ日用雑貨(お椀、トレイ、茶卓、鍋・やかんのとって・つまみ、アイロンハンドル、灰皿等)等の成形品、住宅や冷凍倉庫用断熱パネル、剣山等の発泡体、合板接着剤等の接着剤、自動車のパワステホースの断熱材、防火服用繊維、断熱手袋用繊維、有害ガス吸着用活性炭素繊維、耐火レンガ・シェルモールド用の結合剤、自動車の下塗り塗料、食品用缶の内面塗料、船舶用塗料、化学装置の耐食塗料を挙げることができる。
上記フェノール樹脂加工品は、本発明液化樹脂を用いること以外は常法により製造することができる。具体的には、成形品の場合、例えば、本発明液化樹脂と、硬化剤、硬化促進剤、内部離型剤、充填剤などとを適当な混合機(例、ボールミル、混練押出機、2軸ロール混練機等の2軸混練機)を用いて混合し、この混合物を所望の金型に充填し、熱圧成形することにより製造することができる。また、本発明液化樹脂を適当な溶媒(例、アセトン、メタノール)に懸濁し、それと硬化剤等とを混練し、乾燥した後、所望の金型に充填し、熱圧成形することにより製造することができる。
上記硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ベンジルアミン、ベンゾオキサジン、アゾメチン、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。この中、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
上記硬化促進剤としては、例えば、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム、安息香酸、酢酸カルシウム、スルフェンアミド類、チアゾール類、ベンズイミダゾール類、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、マロン酸やフマル酸等のジカルボン酸を挙げることができる。この中、水酸化カルシウム、酸化マグネシウムが好ましい。
上記内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、カルナバワックスを挙げることができる。この中、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
上記充填剤としては、例えば、木粉、ナットシェルの粉、セルロース粉末、綿繊維、細断布、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、カーボン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ガラス繊維、グラファイト、硫化モリブデン、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ粉末、タルク、陶土、珪灰石を挙げることができる。この中、木粉、セルロース粉末が好ましい。
以下に実施例、比較例、試験例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
200mLナスフラスコに、フェノールと予め合成したメチル硫酸混液をフェノール、メタノールおよび硫酸の重量比が95:5:3となるように秤取り、45℃のウォーターバス中で5分間、400rpmで攪拌した。一方、60℃で12時間以上乾燥させたβ−D−フルクトース9.00gをテフロン(登録商標、以下同じ)内筒に秤量し、ここに上記の混合液を液比3となるよう秤量し加えた。このテフロン内筒をステンレス製耐圧反応管に入れ、130℃に設定したオイルバス中に沈め、400rpmで60分間攪拌し、反応を行った。反応後、耐圧反応管を氷水中で15分間冷却し、黒色(黒緑色)の液体を得た。
呈色液体の一部を使って、この段階で未液化残渣量の定量と未反応フェノール量の定量を行った。
この黒色液体を大過剰のメタノールに溶かし、硫酸を除去するため酸化マグネシウムを理論当量加えて中和した。これをPTFE製メンブレンフィルター(T050;0.5μm保持)で濾過し、中和塩を取り除いた。ウォーターバスを45℃に設定したエバポレーターで濾液を濃縮した後、180℃のオイルバス中で50分間減圧することによってメタノールおよびフェノールを留去し液化物(本発明液化樹脂)を得た。かかる液化物は室温で固体であり、乳鉢で粉砕して50mLネジ口ビンに入れ40℃の真空乾燥機で12時間以上乾燥した。
[実施例2〜7]
液化温度を、それぞれ100、110、120、140、150、あるいは160℃とした以外は、実施例1に準じて液化・乾燥し、液化物(フルクトース由来フェノール液化樹脂)を得た。
[比較例1〜3]
β-D-フルクトースの代わりに、β-D−グルコース、β−D−マルトース、またはシュークロースを用い、これらの乾燥温度を80℃とし、前記混合液との液比をグルコースの場合は3、マルトースとシュークロースの場合は3.16とした以外は、実施例1と同様にして、液化物(グルコース由来フェノール液化樹脂、マルトース由来フェノール液化樹脂、シュークロース由来フェノール液化樹脂)を得た。
[試験例1]曲げ強度の測定
実施例1および比較例1〜3により得られた各フェノール液化物について、後述するように成形用組成物(コンパウンド)を調製し、曲げ試験片を作成して、曲げ強度の測定を行った。
その結果、以下に示すようにフルクトースのフェノール液化物からの成形物は比較例のグルコース、マルトース、およびシュークロースからの同様な成形物と同等の強度を示すとともに、石油由来のノボラック樹脂からの成形物よりも明らかに高い強度が示された。
(1)成形用組成物(コンパウンド)と曲げ試験片の調製
成形用組成物(コンパウンド)を次の量比で調製した。
Figure 0006792105
上記の配合で液化物および試薬を粉砕容器に秤取り、フリッチュ・ジャパン社製Planetary Mono Mill“pulverisette 6”を用いて混合し、均一な粉末状のコンパウンドを得た。混合条件は下記表2に示すとおりである。
Figure 0006792105
ついで、80×10×4mm寸法の金型にコンパウンド5.8gを充填し、160〜170℃、30MPaで5分間熱圧成形して曲げ試験用試験片を作製した。試験片は室温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿下で48時間以上状態調節した後、幅および厚さを各3か所ずつノギスで測定した。
(2)曲げ強度測定試験
曲げ強度測定には島津製作所社製Shimadzu Autograph AGS-5kNGを用い、日本工業規格(JIS)K6911に準拠して荷重速度2.0mm/分、支点間距離64mmの条件下で測定を行った。曲げ強度、曲げ弾性率は同社製ソフトShikibuを用いて求めた。曲げ強度測定は各試料につき2回ずつ行った。
得られた関連の試料の強度を市販ノボラック樹脂からの成形物の強度と比較して以下に示す。
Figure 0006792105
Lは液化物であることを示し、G、M、S、Fはそれぞれグルコース、マルトース、シュークロース、フルクトース由来であること、130は130℃で液化したことを示している。市販ノボラック樹脂からの成形物はNovolacと標記している.
曲げ強度特性において出発物質による差異は認められなかった。また、どの液化物由来試験片も市販ノボラック樹脂を上回る曲げ強度および曲げ弾性率を示した。
[試験例2]分子量分布、熱流動特性、および硬化反応熱の測定
実施例1および比較例1により得られた各フェノール液化物について、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布をそれぞれ比較したところ、出発糖がフルクトースの場合に最小の分子量を持つピークが保持時間約25.1分に認められた。ポリスチレン較正曲線における保持時間25.1分の分子量は353であったが、GPCでは正確な分子量を求めることは難しいことから、高速液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)を用いて分子量を決定したところ、分子量は354と決定できた。液化温度が100〜160℃のすべての場合に該ピークがはっきりと認められた。やや鮮明さが損なわれるが、シュークロースの場合にも認められた。それに対しグルコースおよびマルトースを液化した場合には対応するピークは認められなかった。
このピークを与える化合物の存在は液化物全体の熱流動性を高め、硬化反応性を高めることが、後述するフローテスターによる熱流動特性の測定および示差走査熱量計(DSC)測定による硬化反応熱の測定から、表4に示すとおり明らかとなった。
Figure 0006792105
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の検討
得られた各フェノール樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液を測定試料とし、下記表5に示す条件により分子量分布を調べた。
Figure 0006792105
(2)示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移点(Tg)測定
各液化物のガラス転移点(Tg)を調べるためにDSC測定を行った。測定には日立ハイテクサイエンス社製DSC6200/EXSTAR6000を使用した。各試料について、それぞれ次のように熱履歴の除去処理を行った。すなわち、室温から140℃まで20℃/分で昇温させた後(第1加熱)、速やかに−50℃まで急冷させた。その上で、再び20℃/分で200℃まで昇温させて、DSCサーモグラムを得た。
なお、TgはDSCサーモグラムのベースラインシフトの中間点とするミッドポイント法を用いて決定した。その他測定条件は下記表6に示すとおりである。
Figure 0006792105
(3)フローテスターによる熱流動特性の測定
各液化物について、島津製作所社製、島津フローテスターCFT-500を用いて熱流動特性の測定を行った。熱流動温度(Tf)の測定には昇温測定法を、溶融粘度(η)の測定には定温測定法を用いた。各測定時の条件は下記表7に示すとおりである。
Figure 0006792105
[試験例3]本発明化合物の化学構造同定
実施例1により得られた液化物から、前記GPCによる保持時間約25.1分のピークに相当する物質(GPCにより分子量分別して得た最低分子量区分)を分取用薄層クロマトグラフ手法により分取し、本発明化合物を得た。そして、その本発明化合物を二次元核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析に供した。その結果を図1(H−H COSY NMRスペクトラム)および図2(H−13C HSQC NMRスペクトラム)に示す。
上記二次元核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析のスペクトラムや、赤外線吸収スペクトル(FT−IR)測定、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)による分子量測定、元素分析の結果などから、分子式がC2418であり、一分子中にベンゼン環を3つ持っており、また、一分子中にフェノール性水酸基を一つだけ有し、それ以外の水酸基を持たない本発明化合物の化学構造を同定することができた。水酸基に関する情報を得るためにアセチル化前後のNMR分析も行った。
[実施例8、9、比較例4]
液化時間をそれぞれ20分間(実施例8)、10分間(実施例9)、あるいは5分間(比較例4)とした以外は実施例1に準じて液化し、液化物を得た。
[比較例5〜8]
β−D−フルクトースの代わりに、β−D−グルコースを用い、液化時間をそれぞれ60分間(比較例5)、20分間(比較例6)、10分間(比較例7)、あるいは5分間(比較例8)とした以外は、実施例1に準じて液化し、液化物を得た。
[実施例10、比較例9]
液化触媒をメチル硫酸の代わりに固体酸触媒(アンバーリスト(登録商標)36、シグマアルドリッチ社製)を用い、液化温度を130℃とし、液化時間を60分間(比較例9)あるいは300分間(実施例10)とした以外は、実施例1と同様にして液化物をそれぞれ得た。
[試験例4]液化時間とGPCによる分子量分布
実施例1ならびに実施例8、9および比較例4〜8で得られた液化物について、上記した手法で測定して得たGPCクロマトグラムを図3に比較して示す。図3(1)には実施例1と実施例8、9、比較例4により得られた液化物について示している。図3(1)中、最上段は実施例1の液化物に係るGPCクロマトグラムを、2段目から最下段は順に実施例8、9、比較例4の液化物に係るGPCクロマトグラムを表す。
130℃で10分間以上反応させて得られた液化物(実施例1、8、9)には保持時間25.1分に現れる低分子量化合物が認められた。この化合物の化学構造は本発明化合物と同定されている(上記試験例2等参照)。130℃で5分間という短時間の反応(比較例4)では保持時間25.8分により低分子量の化合物の存在が認められるが、本発明化合物の前駆物質と考えられる。
図3(2)は上から順に比較例5〜8により得られたグルコース由来液化物について示しているが、保持時間25.1分のピークはなく、本発明化合物は生成されなかった。
[試験例5]固体酸触媒の効果
実施例10、比較例9で得られた液化物についてのGPCクロマトグラムを図4に示す。図4中、曲線Aは実施例10の液化物に係るGPCクロマトグラムを、曲線Bは比較例9の液化物に係るGPCクロマトグラムを、コントロールは実施例1の液化物に係るGPCクロマトグラムを、それぞれ表す。
図4から明らかな通り、固体酸触媒を用いると、本発明化合物を生成するためには、反応時間を長く要するようになり、5時間の反応で保持時間25.1分のピークが認められるようになった。かかるピークは本発明化合物に相当する。
本発明液化樹脂は、低軟化点で成形時の流動性が高く成形加工性に優れていることなどから、フェノール樹脂成形品の製造する上で有用である。

Claims (1)

  1. 下記式(A)で表される化合物。
    Figure 0006792105
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