JP6790814B2 - ポリプロピレン樹脂フィルムおよびそれを用いた加熱処理用包装体 - Google Patents

ポリプロピレン樹脂フィルムおよびそれを用いた加熱処理用包装体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン樹脂フィルムおよびそれを用いた加熱処理用包装体に関する。
レトルト用包装体、薬液の輸液バッグなど、加圧処理を行って殺菌、滅菌が必要な包装袋に求められる性能として、内容物を確認可能な透明性、空気孔を開けずとも排液可能にするための柔軟性、極寒地(例えば−20℃といった環境)での運搬時に乱雑に取り扱っても破袋しないための耐低温衝撃性、121℃前後の滅菌、殺菌処理でも変形、融着しないための耐熱性、易製袋性のためのフィルムの口開き性やヒートシール特性などの二次加工適性が挙げられる。とりわけ輸液バッグに関しては、かつては上述の性能を満たす材料として塩化ビニル樹脂が使用されていたが、可塑剤の溶出、廃棄処理に難があることなどの問題、近年の地球環境への配慮から、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂に代替されてきている。
また、輸液バッグの製袋工程には、スパウト、排出ポート・注入ポートなどの射出部品などと融着させる工程があり、十分な融着のためにはフィルムを溶融させることが必要である。そのために非常に過酷な条件で(高温、高圧、長時間など)ヒートシールがされる。反面、十分な溶融状態ではシールバーに溶融樹脂が付着してしまい、生産性の悪化は否めない。そこで積層により外層と内層とに融点差を設け、外層を固体のまま、内層を溶融させる技術が開示されている(特許文献1)。また、フィルムに極低温下での耐衝撃性、透明性、耐熱性を付与するため、積層により複数の層を設けたフィルムが提案されている(特許文献2)。
特開2007−245490号公報 特開2011−68116号公報
しかしながら、特許文献2では内層について2構成が開示されているが、1つは内層において耐衝撃性の面で改良の余地があった。また2つ目についてはフィルムとしての極低温下での耐衝撃性は得られているものの、内層の柔軟性が高過ぎるためにブロッキングが起こりやすく、製袋工程において閉じたフィルムを開け難いといった、フィルムの口開き性に関する課題が残されていた。加熱処理用包装体に必要な性能である透明性、耐熱性、柔軟性、耐衝撃性、特に極低温下(例えば−20℃)での耐低温衝撃性、ヒートシール性のような2次加工適性をバランスよく兼ね備え、かつ製袋工程において閉じたフィルムを開けやすい、フィルムの口開き性に優れたフィルムはいまだ知られていない。
したがって、本発明の課題は、透明性、耐熱性、柔軟性、耐低温衝撃性、2次加工適性を兼ね備え、かつ、製袋工程時の口開き性にも優れた生産性の高いポリプロピレン樹脂フィルムおよびそれを用いた加熱処理用包装体を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点の解決のために多様な検討、解析を実施し、複数の層が積層されてなるポリプロピレン樹脂フィルムにおいて、特定のプロピレン樹脂と特定のプロピレン−α−オレフィン共重合体を特定量配合したプロピレン樹脂組成物の層を、包装体としたときの内側の層となる面に設けることにより、上記問題点を解決できるとの知見を得て、本発明に至った。
本発明は、以下のポリプロピレン樹脂フィルムおよび加熱処理用包装体を提供する。
[1]第一の層、第二の層および第三の層の順で少なくとも3層が積層され、
第一の層は、第一のプロピレン樹脂および第一のエチレン−α−オレフィン共重合体を含む第一のプロピレン樹脂組成物を含み、
第一のプロピレン樹脂は、DSC測定における融解ピーク温度が122〜140℃の範囲であり、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲であり、
第一のエチレン−α−オレフィン共重合体は、密度が0.870〜0.915g/cmの範囲であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が1〜5g/10分の範囲であり、
第一のプロピレン樹脂組成物は、第一のプロピレン樹脂および第一のエチレン−α−オレフィン共重合体の合計100wt%中、第一のプロピレン樹脂を50〜70wt%、第一のエチレン−α−オレフィン共重合体を30〜50wt%含み;
第二の層は、第二のプロピレン樹脂、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体および第三のプロピレン樹脂を含む第二のプロピレン樹脂組成物を含み、
第二のプロピレン樹脂は、DSC測定における融解ピーク温度が120〜150℃のプロピレン重合体を30〜70wt%、α−オレフィン含有率が7〜30wt%のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を70〜30wt%含み、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲であり、
第二のエチレン−α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が1〜5g/10分の範囲であり、
第三のプロピレン樹脂は、DSC測定における融解ピーク温度が150〜170℃の範囲であり、
第二のプロピレン樹脂組成物は、第二のプロピレン樹脂、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体および第三のプロピレン樹脂の合計100wt%中、第二のプロピレン樹脂を1〜98wt%、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体を1〜50wt%、第三のプロピレン樹脂を1〜50wt%含み;
第三の層は、DSC測定における融解ピーク温度が150〜170℃の範囲であり、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が2〜20g/10分の範囲である、第四のプロピレン樹脂を含む;
ポリプロピレン樹脂フィルム。
[2]第二のプロピレン樹脂組成物が、さらに、高圧法により製造され、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が0.1〜50g/10分の範囲であり、密度が0.910〜0.930g/cmの範囲である低密度ポリエチレン樹脂を、第二のプロピレン樹脂組成物100重量部中に1〜50重量部含む、前記[1]に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
[3]第一のプロピレン樹脂が、メタロセン触媒を用いて製造される、前記[1]または[2]に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
[4]第一のプロピレン樹脂が、エチレン含有率1〜4wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体である、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
[5]第一のプロピレン樹脂組成物が、さらに、高圧法により製造され、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が0.1〜50g/10分の範囲であり、密度が0.910〜0.930g/cmの範囲である低密度ポリエチレン樹脂を、第一のプロピレン樹脂組成物100重量部中に1〜30重量部含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
[6]第二のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度が、第一のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂フィルムを含む、加熱処理用包装体。
[8]輸液バッグである、前記[7]に記載の加熱処理用包装体。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムによれば、積層されている各層に特定のプロピレン樹脂および/またはエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることで、優れた透明性、耐熱性、柔軟性、耐低温衝撃性、2次加工適性をバランス良く兼ね備え、かつ、製袋工程において閉じたフィルムを開けやすい、フィルムの口開き性に優れたフィルムを提供することができる。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、第一の層、第二の層および第三の層の順で少なくとも3層が積層されている多層フィルムであり、各々の層が、以下に詳細に説明する条件を満たすプロピレン樹脂および/またはエチレン−α−オレフィン共重合体を含む。ただし、各層の間に必要に応じて任意の層、例えば接着層を設けることも、本発明の趣旨に反するものではない。さらに、本発明の加熱処理用包装体は、本発明のポリプロピレン樹脂フィルムを含むものである。以下、本発明のポリプロピレン樹脂フィルムおよびその各構成成分、ポリプロピレン樹脂フィルムおよび各構成成分の製造方法、ならびに本発明のポリプロピレン樹脂フィルムを用いた加熱処理用包装体について、詳細に説明する。
<<第一の層>>
第一の層(以下、「内層」ということもある)は、フィルムのヒートシール性を制御するために、または低温シール性や易剥離性の付与のために設けられる層である。第一の層は、第一のプロピレン樹脂組成物(以下、「プロピレン樹脂組成物(Z)」ということもある)を含む。
<プロピレン樹脂組成物(Z)>
内層に使用するプロピレン樹脂組成物(Z)は、好ましくは、第一のプロピレン樹脂(以下、「プロピレン樹脂(F)」または「成分(F)」ということもある)、第一のエチレン−α−オレフィン共重合体(以下、「エチレン−α−オレフィン共重合体(G)」または「成分(G)」ということもある)、および、必要に応じて、高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂を含む。各成分について、以下説明する。
(1)第一のプロピレン樹脂(成分(F))
プロピレン樹脂組成物(Z)の一成分として用いられる成分(F)は、以下の条件(F−i)および(F−ii)を満たすプロピレン樹脂である。
(F−i)DSC測定における融解ピーク温度が122〜140℃の範囲である。
(F−ii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
[(F−i)成分(F)の融解ピーク温度]
プロピレン樹脂組成物(Z)は、ポリプロピレン樹脂フィルムを包装体としたときに包装体の内層を構成する成分であるため、加熱処理を経ても溶融などにより包装体の内容物を汚染しないことが要求される。よって、成分(F)は耐熱性が高いこと、即ち成分(F)の融解ピーク温度Tm(F)が高いことが好ましい。耐熱性を損なうことなく柔軟性や透明性を高く保ちつつ、ヒートシール時の薄肉化を抑制することができる点から、Tm(F)は122〜140℃の範囲である。Tm(F)は、好ましくは125〜136℃の範囲であり、より好ましくは130〜136℃の範囲である。
ここで、各成分の融解ピーク温度は、示差走査型熱量計(DSC)で求められる値である。具体的には、サンプル量5.0mgを採り、市販のDSC測定機器(例えば、TAインスツルメンツ社製DSC)を用いて200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度として求められる値である。
[(F−ii)成分(F)のメルトフローレート]
プロピレン樹脂組成物(Z)は、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが好ましく、このため、成分(F)のメルトフローレート(230℃、2.16kg)(以下、「MFR(F)」ということもある)は、0.5〜20g/10分の範囲である。MFR(F)が0.5g/10分以上であるとき、界面荒れ、表面荒れを発生せず、外観良好なフィルムが得られやすい。MFR(F)が20g/10分以下であるとき、厚み変動が起こりにくく、成形性が良好となる。MFR(F)は、好ましくは2〜10g/10分の範囲である。ここで、メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定する値である。メルトフローレートは、逐次重合の場合は、重合条件である温度や圧力を調節したり、水素などの連鎖移動剤を添加する量を制御したりすることにより、調整を行うことができる。
・プロピレン樹脂(F)の製造方法
成分(F)は、当業者に公知の重合方法を用いて製造することができる。具体的な重合方法としては、触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、または圧力が200kg/cm(19.6MPa)以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。分子量分布を小さくして低結晶成分の量を小さくすることができるため、成分(F)は、メタロセン触媒を用いて製造することが好ましい。
成分(F)は、上記条件(F−i)および(F−ii)を満たすプロピレン樹脂であればその種類に特に制限はないが、好ましい成分(F)として、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン樹脂を例示することができる。メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン樹脂の市販品としては、日本ポリプロ社製商品名「ウィンテック(WINTEC)」などを挙げることができる。また、成分(F)は、プロピレンと他のモノマーとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体であってもよい。成分(F)がプロピレン−エチレンランダム共重合体であるとき、そのエチレン含有率は、1〜4wt%の範囲であることが好ましい。エチレン含有率は、共重合を行うときのプロピレンとエチレンの量比によって制御することができ、13C−NMRなどの手段により測定することができる。
[プロピレン樹脂組成物(Z)における成分(F)の占める割合]
プロピレン樹脂組成物(Z)における、成分(F)の占める割合は、成分(F)および成分(G)の合計100wt%中、50〜70wt%の範囲であり、好ましくは55〜65wt%の範囲である。成分(F)の含有率を上記範囲とすることで、良好な柔軟性、透明性を得ることができ、低温下での耐衝撃性が低下しにくくなる。
(2)第一のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(G))
プロピレン樹脂組成物(Z)の一成分として用いられる成分(G)は、以下の条件(G−i)および(G−ii)を満たすエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。
(G−i)密度が0.870〜0.915g/cmの範囲である。
(G−ii)メルトフローレート(190℃、2.16kg)が1〜5g/10分の範囲である。
[(G−i)成分(G)の密度]
成分(G)は、密度が0.870〜0.915g/cmの範囲である。密度をこの範囲とすることで、ポリプロピレン樹脂相との屈折率差を小さくし、透明性を良好にすることができる。耐低温衝撃性、柔軟性、透明性を良好なものに保つ点から、成分(G)の密度は、好ましくは0.905g/cm以下であり、より好ましくは0.900g/cm以下である。ここで、各成分の密度は、JIS K7112に基づき、ピクノメーター法で求められる値である。
[(G−ii)成分(G)のメルトフローレート]
成分(G)のメルトフローレート(190℃、2.16kg)(以下、「MFR(G)」ということもある)は、1〜5g/10分の範囲である。MFR(G)が1g/10分以上であるとき、界面荒れ、表面荒れを発生せず、外観良好なシートが得られやすい。MFR(G)が5g/10分以下であるとき、厚み変動が起こりにくく、成形性が良好となる。MFR(G)は、好ましくは1.5〜3.5g/10分の範囲である。MFR(G)の測定は、JIS K7210Aの条件Dに基づく方法により、行われる。
・成分(G)の製造方法
成分(G)は、透明性の観点から、密度を低くすることが好ましく、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには、分子量分布が狭いことが好ましい。そこで、成分(G)の製造には分子量分布を狭くすることができるメタロセン触媒を用いることが好ましい。メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることができる。具体的には、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35006号、特開平3−163088号の各公報などに記載されているメタロセン触媒が例示される。具体的な重合方法としては、触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、または圧力が200kg/cm(19.6MPa)以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法などが挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
成分(G)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、上記条件(G−i)および(G−ii)を満たす限り、エチレンとα−オレフィンの配合比は特に制限されず、任意の配合比、好ましくはエチレンを主成分とする共重合体を用いることができる。α−オレフィンの種類も特に制限されないが、好ましくは、炭素数3〜20のα−オレフィンである。α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどを好ましく例示でき、エチレン−α−オレフィン共重合体の市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)およびエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。
また、好ましい成分(G)として、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を例示することができる。エチレン−α−オレフィン共重合体の市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)およびエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。
[プロピレン樹脂組成物(Z)における成分(G)の占める割合]
プロピレン樹脂組成物(Z)における、成分(G)の占める割合は、成分(F)および成分(G)の合計100wt%中、30〜50wt%の範囲であり、好ましくは35〜45wt%の範囲である。成分(G)の含有量をこの範囲とすることで、良好な柔軟性や透明性を得ることができ、低温下での耐衝撃性が低下しにくくなる。
(3)高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂(D)
プロピレン系樹脂組成物(Z)には、成分(F)および(G)のほか、以下に示す高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂(D)(以下、「成分(D)ということがある」)を添加することで、よりよいフィルム成形性を発現することができる。
プロピレン樹脂組成物(Z)の主成分として用いられる成分(F)は、積層フィルムに高い柔軟性と透明性を付与させるのに極めて有効であるが、成分(F)は線状ポリプロピレンであるため、高溶融張力成分が少なく、溶融張力が必要な成形法には適用が困難である。フィルム表面の荒れの解消や、物性の異方性を抑制するために、広いリップ幅のダイの使用や、ブロー比の小さい成形を行う場合には溶融張力が必要である。
成分(F)の分子量分布を拡げ、相対的に高分子量成分、即ち高溶融張力成分を増やそうとすると、必然的に低分子量成分も増し、結果として、それがフィルム表面へのブリードアウトによるベタツキ、外観不良といった問題を生じさせるため、透明性が要求される用途には不向きとなる。また、通常の分岐を有さないポリプロピレンでの分子量分布拡大では、高溶融張力成分の確保が充分ではない。
そこで、成分(D)を特定量添加することにより、低分子量成分の増加を抑えつつ、高溶融張力成分を増加させることができ、その結果として、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、厚み変動が抑制でき、より安定したフィルム成形が可能となる。
成分(D)は、以下の条件(D−i)および(D−ii)を満たす、高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂である。
(D−i)メルトフローレート(190℃、2.16kg)が、0.1〜50g/10分の範囲である。
(D−ii)密度が0.910〜0.930g/cmの範囲である。
[(D−i)成分(D)のメルトフローレート]
成分(D)のメルトフローレート(以下、「MFR(D)」ということもある)は、0.1〜50g/10分の範囲である。MFR(D)を0.1g/10分以上とすることで、流動性が得られ、良好な分散性を示し、溶融張力が付与され、よりよいフィルム成形性の付与効果が得られる。MFR(D)を50g/10分以下とすることで、成分(D)自体の溶融張力を保ち、溶融張力が付与され、よりよいフィルム成形性の付与効果が得られる。MFR(D)は、好ましくは0.3〜30g/10分の範囲であり、より好ましくは0.5〜20g/10分の範囲である。
[(D−ii)成分(D)の密度]
成分(D)の密度は、0.910〜0.930g/cmの範囲である。密度が0.910g/cm以上であると工業的に容易に製造することができ、0.930g/cm以下とすることで、高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂の特徴である長鎖分岐成分量が多くなり、成分(D)自体の溶融張力が高まるため、シート成形性の付与効果が十分に得られる。成分(D)の密度は、好ましくは0.913〜0.929g/cmの範囲であり、より好ましくは0.915〜0.928g/cmの範囲である。
・成分(D)の製法
低密度ポリエチレン樹脂である成分(D)は、高圧法としても知られる当業者に公知の方法により、製造することができる。具体的には、エチレン圧1,000〜4,000気圧、温度100〜350℃の条件下で、ラジカル開始剤を触媒として多段ガス圧縮機を用いて重合することができる。
成分(D)には、上記条件を満たす限り、市販のものを用いてもよい。高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂(D)の市販品としては日本ポリエチレン社製商品名ノバテックLDなどが挙げられる。
・プロピレン樹脂組成物(Z)における成分(D)の量
プロピレン樹脂組成物(Z)が成分(D)を含む場合、成分(D)のプロピレン樹脂組成物(Z)中に占める量は、プロピレン樹脂組成物(Z)100重量部中に1〜50重量部の範囲であることが好ましい。成分(D)の含有量が1重量部以上であると、十分なフィルム成形性を付与することができる。成分(D)の含有量が50重量部以下であれば、透明性および柔軟性、耐熱性を保ち、良好なシート物性のバランスが得られやすい。
・成分(F)に含まれる高温での可溶分
プロピレン樹脂組成物(Z)は包装体の内層に使用されると内容物と接するため、内容物を汚染しないクリーン性が必要である。プロピレン樹脂組成物(Z)に用いられるプロピレン樹脂(F)は、温度昇温溶離分別法(TREF)で測定される40℃以下の可溶分の割合(S40)が7.5wt%以下であることが好ましく、より好ましくは6wt%以下であり、さらに好ましくは4wt%以下である。40℃以下の可溶分の割合(S40)を7.5wt%以下とすることで、低結晶成分の量を低減し、そのため内容物を汚染する恐れが少なくなり、クリーン性が必要なレトルト包装体用途、輸液バッグ用途として適切に用いることができる。例えば、成分(F)としてプロピレンとエチレンの共重合体を用いる場合には、エチレンの含有量を4wt%以下とすることで、可溶分の割合を好ましい範囲に抑えることができる。
温度昇温溶離分別法(TREF)は、具体的には以下に示す方法により行われる。試料を140℃でo−ジクロロベンゼンに溶解する。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼンを1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。得られた溶出曲線から40℃で溶出する成分の全量に対する割合(重量%)を算出する。用いるカラム、溶媒、温度などの条件を例示すると、以下のとおりである。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:o−ジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.2mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
低結晶成分を低減し、その結果可溶分を減少させることができることから、内層に使用する好ましいプロピレン樹脂組成物(Z)として、メタロセン触媒を用いて製造された成分(F)と、メタロセン触媒を用いて製造された成分(G)とを含むプロピレン樹脂組成物を例示することができる。メタロセン触媒を用いて製造された成分(F)または(G)の市販品としては、先に例示したとおりである。
[成分(F)に対する成分(G)あるいは成分(G)+(D)のメルトフローレート]
PP成分である(F)のメルトフローレート(以下、MFR(Z−PP))に対して、PE成分である(G)あるいは(G)+(D)のメルトフローレート(以下、MFR(Z−PE))は関係式(ZM)を満たすことが望ましい。
(ZM)=MFR(Z−PP)/MFR(Z−PE)≧1.8
なお、MFR(Z−PP)はJIS K7210に準拠して測定する値(230℃、2.16kg)であり、MFR(Z−PE)の測定は、JIS K7210Aの条件Dに基づく方法(190℃、2.16kg)により行われる。
この数値が1.8を下回るとPP成分のPE成分が最適な分散状態とならず、フィルムの十分な口開き性やフィルム強度が発現しないことがある。より好ましくは(FM)≧3.1であり、さらに好ましくは(FM)≧3.6である。
<<第二の層>>
第二の層(以下、「中間層」ということもある)は、ポリプロピレン樹脂フィルムにおいて第一の層および第三の層の間に配される層である。第二の層は、第二のプロピレン樹脂組成物(以下、「プロピレン樹脂組成物(X)」ということもある)を含む層である。
<プロピレン樹脂組成物(X)>
プロピレン樹脂組成物(X)は、第二のプロピレン樹脂(以下、「プロピレン樹脂組成物(A)」または「成分(A)」ということもある)、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体(以下、「エチレン−α−オレフィン共重合体(B)」または「成分(B)」ということもある)、第三のプロピレン樹脂(以下、「プロピレン樹脂(C)」または「成分(C)」ということもある)、必要に応じて、高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂(D)を含む。各成分について、以下説明する。
(1)第二のプロピレン樹脂(成分(A))
プロピレン樹脂組成物(X)の一成分として用いられる成分(A)は、プロピレン重合体およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を含む樹脂である。成分(A)には透明性、柔軟性が高いことが求められる。これらの要求を高い水準で満たすために、成分(A)は、以下の条件(A−i)および(A−ii)を満たす。
(A−i)DSC測定における融解ピーク温度が120〜150℃のプロピレン重合体(A1)を30〜70wt%、α−オレフィン含有率が7〜30wt%のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)を70〜30wt%含有する。
(A−ii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲である。
[(A−i)プロピレン重合体(A1)およびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)]
[プロピレン重合体(A1)の融解ピーク温度]
成分(A)に含まれるプロピレン重合体(A1)(以下、「成分(A1)」ということもある)は、成分(A)において結晶性を決定し、耐熱性、柔軟性、透明性などに影響を与える成分である。成分(A)の耐熱性を向上させるためには、成分(A1)の融解ピーク温度Tm(A1)が高いことが好ましい。柔軟性や透明性を高く保ちつつ、耐熱性を損なうことなく、ヒートシール時の薄肉化を抑制することができる点から、Tm(A1)は120〜150℃の範囲である。Tm(A1)は、好ましくは125〜145℃の範囲であり、より好ましくは125〜140℃の範囲である。
[成分(A)中に占める成分(A1)の割合]
成分(A)中に占める成分(A1)の割合W(A1)は、成分(A)の耐熱性に影響を与える要素である。柔軟性や透明性および耐衝撃性を充分に発揮するため、W(A1)は、70wt%以下である。一方、耐熱性を保ち、滅菌、殺菌工程において変形してしまう恐れをなくすため、W(A1)は30wt%以上である。W(A1)は、好ましくは35〜65wt%の範囲である。
プロピレン重合体(A1)の製法は、成分(A1)が上記条件を満たすものが得られる限り特に制限されず、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーの製造において当業者に公知の方法を使用することができる。
プロピレン重合体(A1)は、プロピレン単独重合体でもよく、プロピレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、例えばプロピレン−エチレン共重合体であってもよい。成分(A1)がプロピレン以外のコモノマーを含む共重合体である場合、コモノマーの含有率は、成分(A1)全体の重量に対して10重量%以下であることが好ましい。成分(A1)に使用されるコモノマーは、好ましくはα−オレフィンである。α−オレフィンは、好ましくは炭素数が2または4〜20、より好ましくは炭素数2または4〜8のα−オレフィンである。コモノマーは、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物などから選択される。これらのコモノマーは、二種以上共重合されていてもよい。好ましいコモノマーは、エチレン、1−ブテンまたは1−ヘキセンである。
[プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)]
成分(A)に含まれるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(A2)(以下、「成分(A2)」ということもある)は、成分(A)の柔軟性と耐衝撃性および透明性を向上させるために配合される。成分(A2)に用いられるα−オレフィンは、成分(A1)に使用されるコモノマーとして先に述べたα−オレフィンと同じものを用いることができる。成分(A2)は、好ましくはメタロセン触媒を用いた共重合により得られる。
[成分(A2)中のα−オレフィン含有率]
一般に、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体においてα−オレフィン含有率が増加することで結晶性は低下し、柔軟性向上効果は大きくなる。このため、成分(A2)中のα−オレフィン含有率(以下、α[A2]ということもある)は、7wt%以上である。α[A2]は、より好ましくは8wt%以上であり、さらに好ましくは10wt%以上である。一方、成分(A2)の結晶性を低下させつつ透明性を保つために、α[A2]は30wt%以下である。α[A2]は、好ましくは25wt%以下である。
[成分(A)中に占める成分(A2)の割合]
成分(A)中に占める成分(A2)の割合W(A2)は、ポリプロピレン樹脂フィルムに高い耐熱性を与えるため、70wt%以下である。また、ポリプロピレン樹脂フィルムに柔軟性と耐衝撃性を与えるため、W(A2)は、30wt%以上である。W(A2)は、好ましくは65〜30wt%の範囲である。
ここで、W(A1)およびW(A2)は、温度昇温溶離分別法(TREF)により求められる値であり、α[A2]は、NMRにより求められる値である。また、成分(A1)がα−オレフィンとの共重合体である場合の成分(A1)のα−オレフィン含有率(以下、「α[A1]」ということもある)は、α[A2]と同様にして求められる。各々の値は、具体的には、次の方法により求められる。
・温度昇温溶離分別法(TREF)によるW(A1)およびW(A2)の特定
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体などの結晶性分布を温度昇温溶離分別法(TREF)により評価する手法は、当業者によく知られているものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
成分(A1)と成分(A2)との結晶性には大きな違いがあり、また、両成分ともメタロセン触媒を用いて製造されると結晶性分布が狭くなることから、成分(A)中に成分(A1)と成分(A2)の中間的な成分は極めて少なく、両成分をTREFにより精度良く分別することが可能である。
TREF測定は、具体的には次のようにして行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒である−15℃のo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
得られた溶出曲線において、成分(A1)と成分(A2)は結晶性の違いにより各々異なる温度T(A1)とT(A2)にその溶出ピークを示し、その差は充分大きいため、中間の温度T(A3)(={T(A1)+T(A2)}/2)においてほぼ分離が可能である。ここで、T(A3)までに溶出する成分の積算量をW(A2)wt%、T(A3)以上で溶出する部分の積算量をW(A1)wt%と定義すると、W(A2)は、成分(A2)の量と対応しており、積算量W(A1)は、結晶性が比較的高い成分(A1)の量と対応している。
測定に用いられる装置、仕様の一例を以下に示す。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃ 温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1mL
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm
窓形状:2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
〔測定条件〕
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL 試料注入量:0.1mL 溶媒流:1mL/分
・α[A1]またはα[A2]の特定
分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により各成分を分離した後、NMRにより、各成分のα−オレフィン含有率α[A1]またはα[A2]が特定される。昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules 21 314−319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、以下に例示されるような方法を用いてα[A1]またはα[A2]を特定する。
・昇温カラム分別
直径50mmで高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(A3)(TREF測定により得られる)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(A3)に保持したまま、温度T(A3)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(A3)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次に、10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、温度T(A3)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮した後、5倍量のメタノール中でポリマーを析出する。析出ポリマーを濾過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
13C−NMRによるα−オレフィン含有率の測定
上記分別により得られた成分のα−オレフィン含有率α[A1]またはα[A2]は、プロトン完全デカップリング法により測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求められる。測定に用いられる装置、仕様の一例を以下に示す。
機種:日本電子(株)製 GSX−400または同等の装置
(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL 温度:130℃
パルス角:90° パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules 17 1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は表1の通りである。表中Sααなどの記号はCarmanら(Macromolecules 10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 0006790814
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEEおよびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度とスペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
従って、[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 …(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりα−オレフィン含有率が求まる。
α−オレフィン含有率(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合および/または1,3−結合)が含まれ、それにより、表2に示す微小なピークを生じる。
Figure 0006790814
正確なα−オレフィン(エチレン)含有率を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、α−オレフィン含有率は実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ触媒で製造された共重合体の解析と同じく(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
α−オレフィン含有率のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
α−オレフィン含有率(重量%)
=(MW×X/100)/{MW×X/100+42×(1−X/100)}×100
(ここで、MWはα−オレフィンの分子量、Xはモル%表示でのα−オレフィン含有率である。)
[(A−ii)成分(A)のメルトフローレート]
成分(A)は、そのメルトフローレート(230℃、2.16kg)(以下、MFR(A)ということもある)が0.5〜20g/10分の範囲である。成形機スクリュの回転への抵抗を小さくしてモータ負荷や先端圧力を抑制することができる点や、フィルム表面の荒れを抑制し外観を良好なものに保つことができるため、MFR(A)は0.5g/10分以上であり、好ましくは1.0g/10分以上である。一方、安定な成形を可能にし、均一なシートを得ることができるため、MFR(A)は20g/10分以下であり、好ましくは10g/10分以下である。
MFR(A)は、成分(A1)および成分(A2)に対応する各々のMFR(以下、各々MFR(A1)およびMFR(A2)ということもある)と、成分(A1)および(A2)の配合比率に基づき決定される。成分(A)においては、MFR(A)が0.5〜20g/10分の範囲にあれば、MFR(A1)およびMFR(A2)の値は、本発明の目的を損なわない範囲で各々制限されない。ただし、外観不良などが生じる恐れを小さくするため、MFR(A1)およびMFR(A2)の差は小さいことが好ましい。MFR(A1)およびMFR(A2)は、好ましくは共に0.5〜20g/10分の範囲であり、より好ましくは、共に1.0〜10g/10分の範囲である。ここで、各MFRの値は、JIS K7210に準拠して測定する値である。
また、成分(A)は、上記条件(A−i)および(A−ii)に加えて、下記条件(A−iii)を満たすことが好ましい。
(A−iii)水冷インフレーション法にて成形した200μm厚のシートで測定した固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60℃〜20℃の範囲に観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一ピークを示す。
成分(A)が相分離構造を取る場合には、成分(A1)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(A2)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは単一ではなくなる。この場合にはシートとしての透明性が悪化しやすいという問題が生じる。よって、ガラス転移温度が成分(A1)と(A2)とでほぼ等しい、即ちDMAにおいてガラス転移を表すピークが一つであることが好ましい。
固体粘弾性測定(DMA)は、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。周波数は1Hzを用い、測定温度は−60℃から20℃までは3℃/30秒の速度で昇温し、20℃以上は3℃/40秒の速度で段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これらの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると、0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、本発明では、本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
なお、DMA測定用の試料片は、例えば水冷インフレーション法により200μm厚のシートとして得ることができる。水冷インフレーション法による試料片の製造条件は、後記の実施例で詳記している。ただし、後述の方法において、各押出機に投入する原料は成分(A)のみである。また、測定に使用する装置や試料の柔軟性によっては、200μm厚のシートでは応力の検知が不十分となり、測定が困難な場合がある。このような場合は当該シートを複数枚、例えば2枚重ねて測定を行えばよく、当該方法で測定することによって同様の結果が得られる。
・成分(A)の構成要素の制御方法
成分(A)の各要素は、以下のように制御され、成分(A)に必要とされる構成要件を満たすように、成分(A)を製造することができる。
Tm(A1)の制御は、例えば、重合槽に供給するプロピレンとコモノマーとしてのα−オレフィンの量比を、適宜調整することなどにより可能である。Tm(A1)を、例えば120℃〜150℃に制御するためには、使用する触媒の種類にも依存するが、成分(A1)のα−オレフィン含有率(α[A1])が概ね0〜10wt%程度の範囲となるように調整することで、所望のTm(A1)を有する成分(A1)を製造することができる。α[A1]の測定方法は、先に述べたとおりである。
また、α[A2]を所定の範囲に制御するためには、成分(A2)の製造が逐次重合による場合は、第2工程における重合槽に供給するプロピレンとα−オレフィンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体中のα−オレフィン含有率の関係は、メタロセン触媒を用いる場合、その種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするα[A2]を有する成分(A2)を製造することができる。
W(A1)およびW(A2)は、逐次重合の場合は、成分(A1)を製造する第1工程の製造量と第2工程での成分(A2)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。成分(A)のメルトフローレートの調整は前述したとおり、MFR(A1)およびMFR(A2)の配合比率により調整することができる。
[プロピレン樹脂組成物(X)における成分(A)の割合]
プロピレン樹脂組成物(X)中における成分(A)の占める割合は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100wt%中、1〜98wt%の範囲であり、好ましくは30〜90wt%の範囲である。成分(A)の含有量を上記範囲とすることで、良好な柔軟性、透明性を得ることができ、低温下での耐衝撃性が低下しにくくなる。
・成分(A)の製造方法
本発明に用いられる成分(A)は、好ましくは、メタロセン触媒を用いて、第1工程で成分(A1)を30〜70wt%、第2工程で成分(A2)を70〜30wt%、逐次重合することで得られる。逐次重合の具体的方法は、例えば特開2005−132979号公報に記載の方法を用いることができ、ここで言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。また、成分(A)は、逐次重合品でなくても、成分(A1)と成分(A2)とのブレンド物であってもよい。
(2)第二のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(B))
プロピレン樹脂組成物(X)の一成分として用いられる成分(B)は、プロピレン樹脂組成物(X)の耐衝撃性、柔軟性に影響を与える成分であり、以下の条件(B−i)および(B−ii)を満たすエチレン−α−オレフィン共重合体である。
(B−i)密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。
(B−ii)メルトフローレート(190℃、2.16kg)が1〜5g/10分の範囲である。
[(B−i)エチレン−α−オレフィン共重合体の密度]
成分(B)は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲である。密度を上記範囲とすることで、ポリプロピレン樹脂相との屈折率差を小さくし、透明性を良好にすることができる。また耐低温衝撃性、柔軟性、透明性を良好なものに保つ点から、成分(B)の密度は好ましくは0.905g/cm以下であり、より好ましくは0.900g/cm以下である。また、成分(B)は柔軟性の観点から、成分(B)の密度は、前述の成分(G)の密度より小さいことが好ましい。
[(B−ii)成分(B)のメルトフローレート]
成分(B)は、そのメルトフローレート(190℃、2.16kg)(以下、MFR(B)ということもある)が1〜5g/10分の範囲である。好ましくは、MFR(B)は、2〜5g/10分の範囲である。MFR(B)の測定方法については、先にMFR(G)の項で述べたものと同様である。
・成分(B)の製造方法
成分(B)は、透明性の観点から、密度を低くすることが好ましく、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性が低く、分子量の分布が狭いことが好ましい。そこで、成分(B)の製造には結晶性を低く、分子量分布を狭くできるメタロセン触媒を用いることが好ましい。メタロセン触媒としては、エチレン−α−オレフィン共重合体の重合に用いられる公知の各種触媒を用いることができる。具体的な触媒、重合方法は、先に成分(G)の項で述べたものと同様である。
成分(B)は、エチレンとα−オレフィンの共重合体であり、上記条件(B−i)および(B−ii)を満たす限り、エチレンとα−オレフィンの配合比は特に制限されず、任意の配合比、好ましくはエチレンを主成分とする共重合体を用いることができる。また、α−オレフィンの種類も特に制限されないが、好ましくは、炭素数3〜20のα−オレフィンである。α−オレフィンの好ましい例およびエチレン−α−オレフィン共重合体や成分(B)の市販品の好ましい例は、先に成分(G)の項で挙げたものと同様である。
[プロピレン樹脂組成物(X)における成分(B)の割合]
成分(B)のプロピレン樹脂組成物(X)中に占める割合は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量100wt%に対して、1〜50wt%の範囲である。成分(B)の含有率が1wt%以上であれば、耐低温衝撃性を十分に付与することができる。一方で、成分(B)の含有率が50wt%以下であれば、耐熱性を保ち、またシートの厚みムラを生じることなく、良好な外観のシートを得ることができる。成分(B)のプロピレン樹脂組成物(X)中に占める割合は、好ましくは15〜40wt%の範囲であり、より好ましくは15〜35wt%の範囲である。
(3)第三のプロピレン樹脂(成分(C))
プロピレン樹脂組成物(X)は、以下の条件(C−i)を満たす成分(C)を含む。
(C−i)DSC測定による融解ピーク温度が、150〜170℃の範囲である。
プロピレン樹脂組成物(X)の主成分として用いられる成分(A)は、積層シートに高い柔軟性と透明性を付与させるのに極めて有効であるが、成分(A1)は比較的低融点の成分であるため、高結晶成分が少なく、ヒートシール時の薄肉化などの問題を有している。成分(A)の結晶性分布を拡げ、相対的に高結晶成分を増やそうとすると、必然的に低結晶成分も増し、結果として、それが積層シート表面へのブリードアウトによるベタツキ、外観不良といった問題を生じるため、透明性が要求される用途には不向きとなる。
そこで、高結晶成分の少ない成分(A)に対し、成分(C)を特定量添加することにより、低結晶成分および低分子量成分の増加を抑制しつつ、高結晶成分を増加させることができ、その結果として、ブリードアウト、厚み変動や界面荒れなどの外観不良が起こることを抑制し、ヒートシール時の薄肉化を抑制するなどの2次加工適性を発現させることが可能となる。
[(C−i)成分(C)の融解ピーク温度]
成分(C)として好ましいものは、融解ピーク温度Tm(C)が、Tm(A1)より高いプロピレン樹脂である。融解ピーク温度がTm(A1)より高い成分を配合することにより、得られるフィルムに、ブリードアウトなどの外観不良を起こさずに、ヒートシール時の薄肉化を抑制する機能を付与することができる。
Tm(C)は、150℃〜170℃の範囲である。成分(C)が十分な量の高結晶成分を有することができ、十分に流動性を低下させ、ヒートシール時の薄肉化を抑制する点から、Tm(C)は150℃以上である。工業的に製造することの容易性の点から、Tm(C)は170℃以下である。Tm(C)は、好ましくは155〜170℃の範囲であり、より好ましくは158〜167℃の範囲である。
成分(C)は、上記条件(C−i)を満足する樹脂が得られればいかなる方法で製造してもよい。例として、プロピレン重合体(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)からなる組成物を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン重合体(C1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)を混合装置により混合して製造してもよく、また、第1工程でプロピレン重合体(C1)を製造し、引き続き第2工程でプロピレン重合体(C1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体(C2)を製造して、成分(C)を連続的に製造してもよい。具体的な製造方法としては、特開2006−35516号公報、特開2001−172454号公報に記載されている製造方法を好ましく例示することができ、ここでこれらを言及したことで同公報の全内容が本明細書に取り込まれたものとする。
成分(C)は、上記条件(C−i)を満たすプロピレン樹脂であればその種類に特に制限はなく、例えばプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。
なお、成分(C)は市販されているものから適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名ノバテックPP(NOVATEC PP)、日本ポリプロ社製商品名ニューコン(NEWCON)、三菱化学社製商品名ゼラス(ZELAS)などが挙げられ、上記要件を満足するグレードを適宜選択すればよい。
[プロピレン樹脂組成物(X)における成分(C)の割合]
成分(C)がプロピレン樹脂組成物(X)中に占める割合は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100wt%中、1〜50wt%の範囲である。成分(C)の量が1wt%以上であると、十分な量の高結晶性成分により、十分な薄肉化抑制効果が得られる。成分(C)の割合は好ましくは15wt%以上であり、より好ましくは20wt%以上である。成分(C)の量が50wt%以下であると、柔軟性や透明性などの物性低下を起こさず、本発明の樹脂組成物に要求される品質を満たすことができる。成分(C)の割合は、好ましくは45wt%以下であり、より好ましくは40wt%以下である。
なお、プロピレン樹脂組成物(X)には上記要件を満たす成分(C)が所定量含まれていればよく、例えば、成分(A)と成分(C)は必ずしも別個独立した樹脂を形成している必要はない。例としては、連続重合法によって第1工程でプロピレン樹脂(C)を重合した後、引き続き第2工程で成分(A2)を重合して得られた樹脂に、別途成分(A1)を混合して製造される場合が挙げられ、このような場合も本願発明の範囲に含まれる。
(4)高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂
プロピレン樹脂組成物(X)には、高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂を添加することで、よりよいフィルム成形性を発現することができる。低密度ポリエチレン樹脂としては、先に成分(D)の項で述べたとおりのものを用いることができる。プロピレン樹脂組成物(X)中に成分(D)を配合する場合には、その量はプロピレン樹脂組成物(X)100重量部中に1〜50重量部の範囲であることが好ましい。
<<第三の層>>
第三の層(以下、「外層」ということもある)は、ポリプロピレン樹脂フィルムを包装体としたときに、包装体の外側に配される層である。外層の材料は、ポリプロピレン樹脂フィルムの耐熱性、透明性を損なわなければ特に限定されるものではなく、例えばポリエステル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、プロピレン樹脂などが挙げられる。その中でも、第四のプロピレン樹脂(以下、「プロピレン樹脂(E)」または「成分(E)」ということもある)を含むプロピレン樹脂組成物(Y)から形成されることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂フィルムの外層として好ましく用いられるプロピレン樹脂組成物(Y)は、透明性および耐熱性が優れていることが重要である。フィルムとしての透明性を得るには、中間層だけではなく外層も透明化しなければならない。加えて、殺菌、滅菌などの加熱処理でも変形しないこと、二次加工であるヒートシールにおいてヒートシールバーに付着しないことが好ましい。
これらの要求を高い水準で満たすために、プロピレン樹脂組成物(Y)は、下記条件(E−i)および(E−ii)を満たす成分(E)を含有する。
(E−i)DSC測定における融解ピーク温度が150〜170℃の範囲である。
(E−ii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が2〜20g/10分の範囲である。
[(E−i)成分(E)の融解ピーク温度]
成分(E)の融解ピーク温度Tm(E)は、150〜170℃の範囲である。Tm(E)が150℃以上であれば、十分な耐熱性が得られ、ヒートシール時にヒートシールバーにくっつきにくくなる。Tm(E)が170℃以下であれば、工業的に製造することが容易である。Tm(E)は、好ましくは155〜170℃の範囲であり、より好ましくは158〜168℃の範囲である。
[(E−ii)成分(E)のメルトフローレート]
成分(E)は、積層時の界面荒れ、表面荒れを発生せず、また厚み変動などを起こさない易成形性を得るために適度な流動性を有することが重要であり、流動性の尺度である成分(E)のメルトフローレート(230℃、2.16kg)(以下、MFR(E)ということもある)は、2〜20g/10分の範囲である。MFR(E)が2g/10分以上であれば界面荒れ、表面荒れを発生せず、外観良好なフィルムが得られる。一方、MFR(E)が20g/10分以下であれば、厚み変動を起こさず、成形性を保つことができる。MFR(E)は、好ましくは2〜15g/10分の範囲にあり、より好ましくは4〜15g/10分の範囲である。ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
プロピレン樹脂(E)は、上記条件(E−i)および(E−ii)を満足すればプロピレンホモポリマーであってもよく、他のα−オレフィンとのランダム共重合体、あるいは他のα−オレフィンとのブロック共重合体であってもよい。α−オレフィンの例としては、先に成分(G)の項で挙げたものと同様である。
成分(E)は、上記条件(E−i)および(E−ii)を満足するものが得られる限り、いかなる方法で製造してもよい。プロピレン重合体(E1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(E2)からなる組成物(いわゆるブロック重合体)を製造する場合には、別々に製造されたプロピレン重合体(E1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体(E2)を、混合装置を用いて混合することにより製造してもよく、プロピレン重合体(E1)を製造し、引き続きプロピレン重合体(E1)の存在下にプロピレン−エチレンランダム共重合体(E2)を製造して、プロピレン樹脂(E)を連続的に製造してもよい。
成分(E)は、市販されているものの中から適宜選択し、使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製商品名ノバテックPP(NOVATEC PP)、日本ポリプロ社製商品名ニューコン(NEWCON)、三菱化学社製商品名ゼラス(ZELAS)などが挙げられる。これらの使用において条件(E−i)および(E−ii)を満足するグレードを適宜選択すればよい。
・改質材(E3)
プロピレン樹脂組成物(Y)には、さらに耐低温衝撃性を付与するために、エラストマー成分(E3)を添加してもよい。ポリプロピレン樹脂フィルムの外層に配合することのできるエラストマー成分としては、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であり、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテンなどを好ましく例示できる。
好適に用いることのできるエチレン−α−オレフィン共重合体は、成分(E)との屈折率差を小さくするために、密度を合わせることが必要であり、さらに、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには分子量分布が狭いことが好ましい。そこで、分子量分布を狭くすることができる、メタロセン触媒により重合された重合体を用いることが好ましい。
成分(E3)としてのエチレン−α−オレフィン共重合体は、先に述べた成分(G)または(B)としてのエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることもできる。また、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)およびエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられる。これらの使用においては、透明性、ベタツキ、ブリードアウトなどの問題を起こさないよう適宜密度とMFRを選定すればよい。また、プロピレン樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、さらに他の成分を含有させてもよい。
・プロピレン樹脂組成物(Y)中の各成分の割合
プロピレン樹脂組成物(Y)が成分(E3)を含む場合、成分(E)の外層中に占める割合は、外層の全重量に対して60〜99wt%の範囲であることが好ましく、成分(E3)の外層中に占める割合は外層の全重量に対して1〜40wt%の範囲であることが好ましい。より好ましくは成分(E)の含有量が70〜95wt%の範囲であり、成分(E3)の含有量が5〜30wtの範囲%である。成分(E)の含有量が60wt%以上、即ち成分(E3)の含有量が40wt%以下であると、十分な耐熱性を得ることができ、加熱処理工程において変形が生じる恐れが小さくなる。成分(E)の含有量が99wt%以下、即ち成分(E3)の含有量が1wt%以上であると、十分な耐低温衝撃性付与効果が得られる。
<付加的成分(添加剤)>
ポリプロピレン樹脂フィルムにおける中間層、外層、内層に用いられる各プロピレン樹脂組成物(X)、(Y)および(Z)は、フィルムとして好適に用いるために、ブリードアウトの発生など本発明の効果を著しく損なわない範囲で、任意の添加剤を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤などを挙げることができる。各種添加剤について以下に詳しく述べる。さらに本発明の効果を著しく損なわない範囲で、柔軟性を付与する成分としてエラストマーを配合することができる。
(イ)酸化防止剤
酸化防止剤として、当業者に公知の酸化防止剤を用いることができ、例えば、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノおよびジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤の配合量は、各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。配合量を上記範囲内とすることで、熱安定性の効果が得られ、かつ樹脂を製造する際に劣化が起こりヤケとなる、酸化防止剤自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。
(ロ)アンチブロッキング剤
アンチブロッキング剤としては、無機系および有機系のアンチブロッキング剤のいずれをも使用することができる。
アンチブロッキング剤の具体例としては、例えば無機系としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機系としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシルセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂などが挙げられる。特に合成シリカ、ポリメチルメタクリレートが、分散性、透明性、耐ブロッキング性、耐傷つき性のバランスから好適である。
また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッソ樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダなどの縮合リン酸塩などを用いることができ、特に有機酸処理、なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬など公知の方法を採用することができる。
アンチブロッキング剤の粒子はいかなる形状であってもよく、球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状など任意の形状とすることができる。
アンチブロッキング剤の粒子の大きさは、平均粒子径で1〜7μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは1〜4μmである。平均粒子径を1μm以上とすることで、得られるシートの滑り性、開口性を良好に保つことができる。一方、7μm以下とすることで、透明性、耐傷つき性を保つことができる。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値であり、角状、柱状、針状または板状であるときの平均粒子径の規定方法は、当業者に公知である。
これらアンチブロッキング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アンチブロッキング剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。配合量を0.01重量部以上とすることで、シートのアンチブロッキング性、滑り性、開口性が良好になりやすい。配合量を1.0重量部以下とすることで、シートの透明性を保ち、また、それ自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。
(ハ)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類などが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイドなどが挙げられる。
置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルミチン酸アマイドなどが挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイドなどが挙げられる。芳香族系ビスアマイドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドのうち、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが好適に使用される。
スリップ剤を配合する場合の配合量としては、樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。0.01重量部以上とすることで、開口性や滑り性がより良好になりやすい。1.0重量部以下とすることで、過剰なスリップ剤の浮き出しを防ぎ、フィルム表面にブリードすることでの透明性の悪化を招きにくくなる。
(ニ)核剤
核剤の具体例としては、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム、アルミニウムヒドロオキシ−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートと炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物((株)ADEKA製、商品名NA21)などが挙げられる。
上記核剤を配合する場合の配合量としては、各々の樹脂100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部である。0.0005重量部以上とすることで、核剤としての効果が十分に得られる。0.5重量部以下とすることで、それ自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。
また、上記以外の核剤として高密度ポリエチレン樹脂を挙げることができる。高密度ポリエチレン樹脂としては、密度が0.940〜0.980g/cm、好ましくは、0.950〜0.970g/cmであるものを好適に用いることができる。密度をこの範囲とすることで、透明性改良効果が得られる。高密度ポリエチレン樹脂の190℃でのメルトフローレート(MFR)は、5g/10分以上、好ましくは7〜500g/10分、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。MFRが5g/10分より大きいと、高密度ポリエチレン樹脂の分散径が充分に小さくなり、それ自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。また、高密度ポリエチレン樹脂が微分散するためには、高密度ポリエチレン樹脂のMFRが、ポリプロピレン樹脂フィルムの各成分のMFRより大きいことが好ましい。
核剤として使用される高密度ポリエチレン樹脂の製造方法は、目的の物性を有する重合体を製造し得る限りその重合方法や触媒について特に制限はない。触媒については、チーグラー型触媒(即ち、担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、カミンスキー型触媒(即ち、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。高密度ポリエチレン系樹脂の形状について制限はなく、ペレット状であってもよく、また、粉末状であってもよい。
核剤として使用する場合、高密度ポリエチレンの配合量としては樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。配合量を0.01重量部以上とすることで、核剤としての効果が十分に得られる。5重量部以下とすることで、それ自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。
(ホ)中和剤
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学工業(株)製)などを挙げることができる。
中和剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。配合量を上記範囲内とすることで、中和剤としての効果が十分に得られ、押出機内部の劣化樹脂を掻き出すことや、それ自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。
(ヘ)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合している全ての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられる。
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系安定剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部である。ヒンダードアミン系安定剤の配合量を0.005重量部以上とすることで、耐熱性、耐老化性などの安定性の向上効果が得られ、2重量部以下とすることで、それ自体が異物となるなどのフィッシュアイの原因を除去することができる。
(ト)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として公知のものであれば特に限定されることなく使用することができ、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩などのカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩などのスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩などの硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩などのリン酸エステル塩などが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩などのアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩などの第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリンなどのアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルなどのエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテルなどのエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステルなどのエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミンなどの含窒素形のものなどが挙げられる。
両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸などのアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩などのN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタインなどのベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリンなどのアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミドなどのエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
帯電防止剤を配合する場合の配合量は、樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.8重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。これら帯電防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量を0.01重量部以上とすることで、表面固有抵抗を減らして帯電による障害を防止することができる。2重量部以下とすることで、シート表面にブリードによる粉吹きが発生しにくくなる。
<<その他の層>>
ポリプロピレン樹脂フィルムを構成する第一、第二および第三の層は、これらの層が順番に積層されていてもよいが、各層の間に接着層などの任意の層を追加して設けることもできる。接着層に用いられる材料としては、本発明の効果を損なわない限り、当業者に公知の任意の材料を用いることができ、当業者に公知の方法により、フィルムの所望の位置に設けられる。
<ポリプロピレン樹脂フィルムの各層を構成する樹脂組成物の製造方法>
ポリプロピレン樹脂フィルムにおける中間層を構成するプロピレン樹脂組成物(X)は、上述したプロピレン樹脂組成物(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)およびプロピレン樹脂(C)、必要に応じて高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂(D)、さらに他の付加的成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合し、必要に応じて、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサーなどの混練機により混練する方法により得られる。ポリプロピレン樹脂フィルムにおける外層または内層を構成するプロピレン樹脂組成物(Y)および(Z)についても、上述した各成分を、上記方法により混合、混練することにより得られる。各成分は同時に混合してもよいし、一部をマスターバッチとした上で、混合、混練してもよい。
<<<ポリプロピレン樹脂フィルム>>>
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、厚みが0.01mm〜1.0mmの範囲であることが好ましい。また、フィルム全体の厚みを100としたときの中間層の厚みの割合は、好ましくは50〜96の範囲であり、より好ましくは60〜90の範囲である。中間層の厚みの割合を50以上とすることで、柔軟性、耐衝撃性が良好になりやすくなり、96以下とすることで、耐熱性が良好になりやすくなる。
ポリプロピレン樹脂フィルムの外層の厚みの割合は、フィルム全体の厚みを100としたときに、好ましくは2〜48の範囲であり、より好ましくは5〜30の範囲である。
ポリプロピレン樹脂フィルムの内層の厚みの割合は、フィルム全体の厚みを100としたときに、好ましくは2〜48の範囲であり、より好ましくは5〜30の範囲である。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、加熱処理後も優れた柔軟性を有していることを特徴としており、柔軟性の尺度である引張弾性率が400MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が400MPa以下、より好ましくは380MPa以下、さらに好ましくは360MPa以下であると、ごわごわ感がなくなるため、触感が良く、高級感を醸し出すことが出来るという点で非常に優れている。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、透明性の尺度である内部ヘイズ(Haze)が加熱処理後で好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下である。内部ヘイズを上記範囲とすることで、内容物を明瞭に見ることができ、内容物に異物が入っていないかどうか確認可能であるという点で非常に優れている。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、耐衝撃性、とりわけ、例えば−20℃などの極低温での耐衝撃性に優れており、耐低温衝撃性の尺度である−20℃における衝撃強度試験において5kJ/m以上という優れた耐衝撃性を有し、運搬工程、保存工程などで万が一落としても破袋せず、製品として使用可能であるという点で優れている。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、121℃前後の加熱処理を行っても変形を起こさないという優れた耐熱性を有している。変形したものは外観が悪く、製品価値が下がってしまい、製品として用いることはできない。また、本発明のプロピレン樹脂フィルムは優れたクリーン性を有しており、内容物と接する内層において内容物を汚染する可能性がある低分子量成分、低規則性成分が極めて少ない。
また、本発明のポリプロピレン樹脂フィルムはヒートシールを行った場合のヒートシール部の形状保持温度が高く、2次加工適性に優れている。一般に、ポリプロピレン樹脂フィルムをヒートシールすると、ある温度で大幅に形状が変化する、即ちヒートシール部が極端に薄肉となったり、ヒートシール部の周囲に極端な肉厚部ができる。形状保持温度とは、ヒートシールによって上記のような大幅な形状変化を起こさない上限温度をいい、具体的には以下の方法によって決定される。即ち、プロピレン樹脂フィルムをヒートシール(ヒートシール条件:圧力3.4kgf/cm(0.33MPa)、時間1.5秒、温度120〜170℃を5℃刻み)し、当該ヒートシール部を光学顕微鏡にて観察する。ヒートシール部の変形度合いを目視で確認し、ヒートシールによって大幅に形状が変化した温度、即ちヒートシール部が極端に薄肉となったり、ヒートシール部の周囲に極端な肉厚部ができるような温度を測定し、その温度から5℃低い温度を形状保持温度とする。形状保持温度が140℃以上であると、ヒートシール部の薄肉化が抑制され、強度保持に優れる。形状保持温度は、好ましくは145℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。
また、本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、製袋時のフィルムの剥離性が良いことを特徴としており、いわゆるフィルムの口開き性、具体的には口開き性の尺度である耐ブロッキング性に優れている。ブロッキング強度は好ましくは1500gf/4cm以下であり、より好ましくは1000gf/4cm以下であり、さらに好ましくは500gf/4cm以下である。ブロッキング強度が上記範囲であると、製袋時に容易にフィルムの口開きを行うことができ、生産時の不良品発生を抑制でき、生産ラインの稼働率を高く保持できるという点において優れている。
また、本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、製袋時のフィルムの滑り性が良いことを特徴としており、いわゆるフィルムの口開き性に優れる。具体的には滑り性の尺度であるスリップ性試験評価による静摩擦係数が好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.0以下である。静摩擦係数が上記範囲であると、製袋時に容易にフィルムの口開きを行うことができ、生産時の不良品発生を抑制でき、生産ラインの稼働率を高く保持できるという点において優れている。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、公知のフィルムの製造方法で製造することができる。例えば、Tダイ、サーキュラーダイを用いた押出成形などであり、より詳しくはTダイキャスト法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法などの公知の技術によって製造することができる。なかでも、押出機で溶融混練された樹脂がサーキュラーダイから押し出され、水などの冷媒に接触させられることにより冷却されてフィルムを製造する水冷インフレーション法や水冷デフレーション法が、透明性が良いフィルムを製造することができる。このような方法はフィルムにとって好ましい製造方法である。
水冷インフレーション法は、具体的には、以下の工程を含む方法である:
(1)各層用のプロピレン樹脂組成物(X)、(Y)および(Z)をそれぞれ各押出機中で溶融混練すること;
(2)各押出機が接続した環状の共押出多層サーキュラーダイから、各層用の溶融混練したプロピレン樹脂組成物(X)、(Y)および(Z)を積層した状態で押し出すこと;
(3)チューブ状に溶融し、押し出された樹脂をエアーによりブローして膨張させ、エアーリングで徐冷すること;および
(4)樹脂を冷却水に接触させることにより急冷し、ポリプロピレン樹脂フィルムを得ること。
サーキュラーダイの溶融押出部のクリアランス(リップ幅)は、好ましくは0.5〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは0.7〜1.2mmの範囲である。成形温度は190〜280℃、好ましくは200〜230℃である。ブロー比は1.0〜2.0の範囲、好ましくは1.0〜1.5の範囲である。製膜速度は5〜50m/分、好ましくは10〜40m/分である。水冷には、例えばサイジングリンクまたは水槽式の水冷リングが用いられる。冷却水の水温は、10〜60℃、好ましくは、15〜40℃である。本発明は、上記工程を含む水冷インフレーション法によるポリプロピレン樹脂フィルムの製造方法を包含する。
本発明のポリプロピレン樹脂フィルムは、上述のように柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性、クリーン性に優れ、厚みムラ、界面荒れなどの外観不良による透明性悪化を抑制することができ、耐低温衝撃性に優れ、さらに製袋時のフィルムにおける口開き性に優れるため、殺菌や滅菌などの加熱処理工程が必要な加熱処理用包装体として好適である。本発明の加熱処理用包装体は、前記ポリプロピレン樹脂フィルムからなる袋状の収容部を含む。また、包装体は、包装体の内容物を注出可能なように該収容部と融着された、スパウト、排出ポート・注入ポートなどの射出部品を有してもよい。さらに、包装体の用途に応じて、例えば、周辺部に点滴などの際に吊り下げるための穴部、開封のための切り込みなどを設けてもよい。本発明の加熱処理用包装体の収容部は、例えば、筒状に成形したフィルムの両端を熱圧着した、または2枚のポリプロピレン樹脂フィルムを内層同士が接触するように重ねて周囲を熱圧着して得られる。この際、内容物の注出口となる射出部品は、前記収容部の成形時に同時にヒートシールして形成させてもよいし、収容部の形成と射出部品の形成を別工程で行うことも可能である。
加熱処理包装体の例としては、レトルト包装体のほか、血液バッグ、人工透析用バッグのような医療用容器としての輸液バッグなどが挙げられる。本発明のポリプロピレン樹脂フィルムを含む加熱処理用包装体、例えば輸液バッグもまた、本発明の一態様である。
以下において、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例および比較例との対照において説明し、本発明の構成の要件の合理性と有意性を実証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例で用いた物性測定法、特性評価法、樹脂材料は以下の通りである。
1.樹脂物性の測定方法
(イ)メルトフローレート:
プロピレン樹脂組成物(A)、プロピレン樹脂(C)、プロピレン樹脂(E)およびプロピレン樹脂(F)のメルトフローレートは、JIS K7210 A法 条件Mに従い、試験温度:230℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mmで測定した。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)、エチレン−α−オレフィン共重合体(G)および高圧法で製造された低密度ポリエチレン樹脂(D)のメルトフローレートは、JIS K7210 A法 条件Dに従い、試験温度:190℃、公称荷重:2.16kg、ダイ形状:直径2.095mm 長さ8.00mmで測定した。
(ロ)密度:
JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定した。
(ハ)融解ピーク温度:
TAインスツルメント社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、さらに10℃/分の昇温速度で融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(ニ)tanδピーク温度測定
試料は、水冷インフレーション成形で得た厚さ200μmのシートから、10mm幅×18mm長の短冊状に切り出したものを用いた。なお、厚さ200μmのシートを使用する場合に応力の検知が困難な場合は、当該シートを2枚重ねて測定を行った。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
(ホ)W(A1)、W(A2)、α[A1]およびα[A2]は、前述の方法で測定した。
2.フィルムの評価方法
(イ)耐熱性:
<積層フィルムの耐熱性評価>
円筒状になっているポリプロピレン樹脂シートを流れ方向に210mmの大きさに切り出し、切り出した一方の端を、インパルスシーラーを用いてヒートシールして袋状にした。ついでその中に水を250mL充填し、切り出したもう一端を、インパルスシーラーを用いてヒートシールして密封した。ヒートシールとヒートシールの間の距離は200mmとなるようにシールした。このようにして得られたサンプル袋を、高温高圧調理殺菌試験機(日阪製作所製、RCS−40RTGN型)の中に入れた後、加圧し、121℃まで雰囲気温度を上昇させて、その温度を30分間保持した。その後、約40℃まで冷却し、該サンプル袋を試験機から取り出した。(以下、この殺菌処理をしたシート(サンプル袋)を加熱処理後シートということもある。)
加熱処理後シートの耐熱性評価は以下の基準で行った。
×:変形、しわ、内面融着を起こしており、使用不可
○:変形、しわ、内面融着を起こしていないか、ごく僅かであり使用可能なレベル
各実施例、比較例での結果は「外観」とし、表5に示す。
(ロ)透明性(内部ヘイズ):
加熱処理後シートの両面を流動パラフィンによりスライドグラスで密着させ、JIS K7136−2000に準拠し、ヘイズメータで測定した。得られた値が小さいほど透明性がよいことを意味する。
(ハ)柔軟性(引張弾性率):
JIS K7127−1989に準拠し、下記の条件にて、加熱処理後シートの流れ方向(MD)についての引張弾性率を測定した。得られた値が小さいほど柔軟性に優れていることを意味する。
サンプル長さ:110mm
サンプル幅:10mm
チャック間距離:50mm
クロスヘッド速度:0.5mm/分
(ニ)耐衝撃性:
<低温累積落袋試験>
水を詰めたままの加熱処理後多層シート(2個)を5℃で48時間状態調整後、その温度で200cmから鉄板の上に5回落下させ評価した。破袋しなかったものを○、破袋したものを×とした。
<衝撃強度>(単位:kJ/m)
東洋精機製フィルムインパクトテスターを用い、単位シート厚み当たりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、加熱処理後シートを−20℃の雰囲気下に24時間以上放置し、状態調整を行った後、−20℃にて加熱処理後シートを直径50mmのホルダーに固定し、12.7mmφの半球型の金属貫通部を打撃させ、貫通破壊に要した仕事量(kJ)から、加熱処理後シートの衝撃に対する脆さを測定した。この値が5kJ/m以上であると極低温での輸送工程を経ても破袋を抑制できる点で優れていることを示している。
(ホ)2次加工適性(フィルムの口開き性):
フィルムの口開き性として、内層面同士の耐ブロッキング性とスリップ性を測定した。具体的な測定方法および評価方法は以下のとおりである。
<耐ブロッキング性>
得られたフィルムより2cm(幅)×15cm(長)の試料フィルムを採り、内層面同士をそれぞれ長さ2cmにわたり重ね(接触面積4cm)、0.25kg/cm(24.5kPa)の荷重下で温度40℃の雰囲気下に24時間状態調整した後、荷重を除き、23℃、50%RHの雰囲気下で2時間状態調整した後、ショッパー型引張試験器を用いて500mm/分の速度で試料の剪断剥離に要する力を求めた(単位:N/4cm)。この値が小さいほど耐ブロッキング性に優れることを意味する。
<スリップ(滑り)性>
得られたフィルムを温度23℃、50%RHの雰囲気下に24時間状態調整した後、ASTM−D1894に準拠して、フィルムのコロナ処理面同士の摩擦をスリップテスター法にて静摩擦係数で評価した。この値が小さいほど滑り性に優れることを意味する。
3.使用樹脂
(1)プロピレン樹脂組成物(A)
中間層の成分(A)として、下記の製造例(A−1)により逐次重合で得られたプロピレン樹脂PP(A−1)を用いた。
[製造例(A−1):PP(A−1)の製造]
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75L、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製商品名「ベンクレイSL」、平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。乾燥機の仕様および乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96L/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(触媒の調製)
撹拌および温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160mL、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mLを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mLに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)9.6mLを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(R)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mLに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mLを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mLに調製した。
(予備重合/洗浄)
続いて、槽内温度を40℃に昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mLデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)9.5mL、さらに混合ヘプタン5,600mLを添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600mL除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mM、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を170mL添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン樹脂組成物の製造を行った。
(ii)第一重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100L)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に上記の方法で調製した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.568g/時間、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/時間で連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.1MPaGに保ち、かつ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.07、水素濃度が100ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/時間であった。
第一重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を分析したところ、MFRは6.0g/10分、エチレン含有量は2.2wt%であった。
(iii)第二重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100L)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を2.0MPaGに保ち、かつ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.453、水素濃度が330ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が17.9kg/時間になるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二重合工程での重合反応量を制御した。活性は31.429kg/g−触媒であった。
こうして得られたプロピレン樹脂PP(A−1)の物性の各種分析結果を、下記の表3に示す。
Figure 0006790814
造粒
さらに、得られたプロピレン樹脂PP(A−1)100重量部に対し、酸化防止剤1としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン株式会社製商品名「イルガノックス1010」)を0.05重量部、酸化防止剤2としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製商品名「イルガホス168」)を0.05重量部添加し、充分に撹拌混合し、スクリュ口径30mmの池貝製作所製PCM二軸押出機にて、スクリュ回転数200rpm、吐出量10kg/時間、押出機温度200℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでプロピレン樹脂PP(A−1)のフィルムを得た。
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
中間層の成分(B)として、下記製造例(B−1)で得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(B−1)を使用した。
製造例(B−1)
エチレンと1−ヘキセンの共重合体を製造した。触媒の調製は、特表平7−508545号公報の実施例の「触媒系の調製」に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10Lに希釈して触媒溶液を調製した。
内容積1.5Lの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように供給し、反応器内の圧力を130MPaに保ち、127℃で反応を行った。1時間あたりのポリマー生産量は約2.5kgであった。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体PE(B−1)の各種分析結果を以下の表4に示す。
Figure 0006790814
(3)プロピレン樹脂(C)
中間層のプロピレン樹脂(C)として、市販品のプロピレン樹脂PP(C−1)を用いた。
PP(C−1):
市販品、日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP FY6H」
プロピレン単独重合体 MFR:1.9g/10分、融解ピーク温度:167℃
(4)中間層用樹脂組成物(X)
上述した樹脂組成物(A)、樹脂(B)および樹脂(C)を用い、以下の中間層用樹脂組成物(X−1)を調製した。
中間層用樹脂組成物(X−1)
前記PP(A−1)55wt%、前記PE(B−1)20wt%および前記PP(C−1)25wt%からなる。
(5)外層用樹脂組成物(Y)
以下の外層用樹脂組成物(Y−1)を調製した。
外層用樹脂組成物(Y−1)
プロピレン樹脂(E−1)として、市販品の日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3」(プロピレン単独重合体、MFR:11g/10分、融解ピーク温度:163℃)70wt%、前記PP(A−1)のプロピレン系樹脂組成物21wt%および前記PE(B−1)のエチレン−α−オレフィン共重合体9wt%からなる。
(6)内層用樹脂組成物(Z)
以下に示す樹脂(F)および(G)、場合により(D)を用い、以下の内層用樹脂組成物(Z)を調製した。
・プロピレン樹脂(F)
市販品のプロピレン樹脂PP(F−1)とPP(F−2)を用いた。
PP(F−1):
市販品、日本ポリプロ社製商品名「ウィンテックPP WFW4」
プロピレン−エチレンランダム共重合体 MFR:7.0、融解ピーク温度:135℃、TREFでの40℃以下可溶分(S40):1.3wt%
PP(F−2):
市販品、日本ポリプロ社製商品名「ウィンテックPP WFX4」
プロピレン−エチレンランダム共重合体 MFR:7.0、融解ピーク温度:125℃、TREFでの40℃以下可溶分(S40):1.4wt%
・エチレン−α−オレフィン共重合体(G)
市販品のエチレン−α−オレフィン共重合体PE(G−1)とPE(G−2)を用いた。
PE(G−1):
市販品、日本ポリエチレン社製商品名「カーネル KF261T」
エチレン−α−オレフィン共重合体 MFR:2.2、融解ピーク温度:90℃、密度0.898g/cm
PE(G−1):
市販品、日本ポリエチレン社製商品名「カーネル KS340T」
エチレン−α−オレフィン共重合体 MFR:3.5、融解ピーク温度:60℃、密度0.880g/cm
・低密度ポリエチレン(D)
市販品の低密度ポリエチレン樹脂PE(D−1)を用いた。
PE(D−1):
市販品、日本ポリエチレン社製商品名「ノバテックLD LF280H」
低密度ポリエチレン樹脂 MFR:0.7、融解ピーク温度:115℃、密度0.928g/cm
実施例1ではPP(F−1)およびPE(G−1)を、実施例2ではPP(F−1)、PE(G−1)および(D−1)を、表5に記載の割合にて混合(ドライブレンド)して、内層用の樹脂組成物を得た。
(実施例1〜11)
下記表5に記載された各層用の原料ペレットを、表に記載の比率にて配合し、ドライブレンドを行った後、二軸押出機(テクノベル社製KZW−25)にて溶融混練しペレットを得た。内層用押出機として、口径30mmの単軸押出機、外層用および最内層用押出機として、口径18mmの単軸押出機を用い、マンドレル口径50mm、リップ幅1.0mmのサーキュラーダイから設定温度200℃にて押出し、10℃に調整した水冷リングにて水冷して、3m/分の速度で、折り幅90mmとなるように、水冷インフレーション成形を行い、表5に記載の層構成からなり総厚み200μmの筒状成形体を得た。
次に、得られた積層シートからなる筒状成形体を前述の方法で加熱処理を行った後に、23℃、50%RHの雰囲気下において24時間以上保持した後、積層シートの物性を評価した。評価結果を以下の表5に示す。
(比較例1)
内層に以下に示す樹脂組成物(Z−1)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、積層シートを得た。各物性の評価結果を表5に示す。
内層用樹脂組成物(Z−1)
前記PP(F−1)に代えて前記PP(A−1)のプロピレン樹脂74wt%、前記PE(G−1)に代えて前記PE(B−1)のエチレン−α−オレフィン共重合体25wt%、および市販品の日本ポリプロ社製商品名「ノバテックPP MA3」(プロピレン単独重合体、MFR:11g/10分、融解ピーク温度:163℃)1wt%からなる組成物。
(比較例2〜5)
下記表5に記載された各層用の原料ペレットを、表に記載の比率にて配合し、前記実施例1と同様にして、積層シートを得た。各物性の評価結果を表5に示す。
Figure 0006790814
比較例1では透明性や耐熱性では良好な結果を示したものの、PP(A−1)の割合、特にPP(A−1)のエチレン成分が多く柔軟性が高過ぎ、フィルムが過度に密着してしまうため、耐ブロッキング性、スリップ性が悪く、口開き性の優れたフィルムを得ることができなかった。
また、表5の比較例2〜5は、成分(G)の割合が本発明の規定外である為、透明性や耐熱性、柔軟性では良好な結果を示したものの、成分(G)が最適な分散状態では無く、耐ブロッキング性、スリップ性が悪く、口開き性の優れたフィルムを得ることができなかった。
また、表5の比較例2〜4は、実施例成分(G)の割合が本発明の規定外である30wt%以下である為に、低温累積落袋性、衝撃強度が悪く、耐低温衝撃性の優れたフィルムを得る事ができなかった。
一方表5から、本発明の規定の範囲内での配合、構成である実施例1〜11のポリプロピレン樹脂フィルムは透明性、柔軟性、耐熱性、耐低温衝撃性に優れつつ、耐ブロッキング性、スリップ性においても優れている、即ち口開き性も優れていることが示された。
本発明のフィルム成形用樹脂組成物は成形性に優れ、さらに本樹脂組成物を用いたポリプロピレン樹脂フィルムは透明性、柔軟性、耐熱性、耐低温衝撃性、2次加工適性に優れ、かつ口開き性に優れているものであり、それを用いた加熱処理用包装体は、輸液バッグやレトルト包装体用途に極めて有用である。

Claims (9)

  1. 第一の層、第二の層および第三の層の順で少なくとも3層が積層され、
    第一の層は、第一のプロピレン樹脂および第一のエチレン−α−オレフィン共重合体を含む第一のプロピレン樹脂組成物を含み、
    第一のプロピレン樹脂は、DSC測定における融解ピーク温度が122〜140℃の範囲であり、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲であり、エチレン含量が7wt%以上であるプロピレン−エチレンランダム共重合体を含まないものであり、
    第一のエチレン−α−オレフィン共重合体は、密度が0.870〜0.915g/cmの範囲であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が1〜5g/10分の範囲であり、
    第一のプロピレン樹脂組成物は、第一のプロピレン樹脂および第一のエチレン−α−オレフィン共重合体の合計100wt%中、第一のプロピレン樹脂を50〜70wt%、第一のエチレン−α−オレフィン共重合体を30〜50wt%含み;
    第二の層は、第二のプロピレン樹脂、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体および第三のプロピレン樹脂を含む第二のプロピレン樹脂組成物を含み、
    第二のプロピレン樹脂は、DSC測定における融解ピーク温度が120〜150℃のプロピレン重合体を30〜70wt%、α−オレフィン含有率が7〜30wt%のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を70〜30wt%含み、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜20g/10分の範囲であり、
    第二のエチレン−α−オレフィン共重合体は、密度が0.860〜0.910g/cmの範囲であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が1〜5g/10分の範囲であり、
    第三のプロピレン樹脂は、DSC測定における融解ピーク温度が150〜170℃の範囲であり、
    第二のプロピレン樹脂組成物は、第二のプロピレン樹脂、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体および第三のプロピレン樹脂の合計100wt%中、第二のプロピレン樹脂を1〜98wt%、第二のエチレン−α−オレフィン共重合体を1〜50wt%、第三のプロピレン樹脂を1〜50wt%含み;
    第三の層は、DSC測定における融解ピーク温度が150〜170℃の範囲であり、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が2〜20g/10分の範囲である、第四のプロピレン樹脂を含む;
    ポリプロピレン樹脂フィルム。
  2. 第一のプロピレン樹脂が、温度昇温溶離分別法(TREF)で測定される40℃以下の可溶分の割合(S40)が7.5wt%以下の樹脂である、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
  3. 第二のプロピレン樹脂組成物が、さらに、高圧法により製造され、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が0.1〜50g/10分の範囲であり、密度が0.910〜0.930g/cmの範囲である低密度ポリエチレン樹脂を、第二のプロピレン樹脂組成物100重量部中に1〜50重量部含む、請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
  4. 第一のプロピレン樹脂が、メタロセン触媒を用いて製造される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
  5. 第一のプロピレン樹脂が、エチレン含有率1〜4wt%のプロピレン−エチレンランダム共重合体である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
  6. 第一のプロピレン樹脂組成物が、さらに、高圧法により製造され、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が0.1〜50g/10分の範囲であり、密度が0.910〜0.930g/cmの範囲である低密度ポリエチレン樹脂を、第一のプロピレン樹脂組成物100重量部中に1〜30重量部含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
  7. 第二のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度が、第一のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂フィルム。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂フィルムを含む、加熱処理用包装体。
  9. 輸液バッグである、請求項に記載の加熱処理用包装体。
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