JP6785216B2 - 新規アレルゲン - Google Patents

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Description

本発明は、アレルギーの分野に関する。本発明はとりわけ、哺乳動物から新規アレルゲンを同定すること、ならびに哺乳動物に対するアレルギーを診断および処置することに関する。
工業化された社会において人口の約20%が、さまざまな環境源に由来する抗原への暴露に対し過敏(アレルギー性)となっている。即時型および/または遅延型の過敏症を誘発するそのような抗原は、アレルゲンと呼ばれる(Breiteneder, Hoffmann-Sommergruber et al. 1997)。アレルゲンには、草木、動物皮屑、昆虫、食物、薬剤および化学物質の産物が含まれる。アトピー性アレルギーに関与する抗体は主に、免疫グロブリンEのアイソタイプ(IgE)に属する。IgEは、特異的高親和性受容体FcεRIを介して、好塩基球、マスト細胞および樹状細胞に結合する。アレルゲンに暴露されると、細胞表面のアレルゲン特異的IgE抗体が架橋し、ヒスタミンおよびロイコトリエンのような炎症メディエーターの放出を導き、その結果アレルギーが生理学的に発現する(Akdis 2006)。
アレルギー診断試験においては、アレルゲン原料由来タンパク質に対し特異性を有する、患者のIgE抗体の検出が行われる。しかしながら、陽性のIgE試験、すなわちIgE感作は、必ずしもアレルギーの臨床的発現をもたらさない。この食い違いが、より良い新たな診断方法を開発しようとする主な理由の1つである。典型的な試験においては、タンパク質の混合物を含有する、アレルゲン原料の水性抽出物が用いられる。殆どのアレルゲン原料について、粗抽出物中に存在するアレルゲンタンパク質は、一部しか同定および特徴付けされていない。患者において特異的IgE抗体を検出する診断試験方法では、患者からの血清を用いるインビトロ免疫アッセイを用いるか、または特定の抽出物を患者の皮膚に局所適用する皮膚プリック試験(SPT)を行うことができる(Wainstein, Yee et al. 2007)。臨床診療では、アレルギーであるとの医師の診断は通常、該当するアレルゲン原料に対するIgE感作試験が陽性であること、およびそのアレルゲンに対するアレルギー反応の臨床的履歴が確かにあること、の両方に基づいてなされる。
近年、アレルゲン抽出物中の多くの重要なアレルゲンタンパク質が同定および特徴付けされている。それにより、個々のアレルゲンコンポーネントのそれぞれに対する特異的IgE抗体を定量することが可能となっており、これはしばしばコンポーネント分解診断(component resolved diagnostics;CRD)(Hiller, Laffer et al. 2002)(Valenta, Lidholm et al. 1999)または分子ベースアレルギー(molecular-based allergy;MA)診断(Canonica, Ansotegui et al. 2013)と称される。
アレルゲン抽出物を用いる従来のIgE解析と比較して、分子ベースアレルギー(MA)診断がいくつもの際立った利点を有することが、現在広く認識されている(Canonica, Ansotegui et al. 2013)。アレルゲン原料からの関連のアレルゲンコンポーネントすべてを解析することで、IgE試験の臨床的有用性が著しく高まることが、例えば小麦、ピーナツおよびヘーゼルナッツについて示されている(Nicolaou, Poorafshar et al. 2010; Codreanu, Collignon et al. 2011; Ebisawa, Moverare et al. 2012)((Masthoff, Mattsson et al. 2013)。MAを適用するのに必要な条件は、アレルゲン原料からの個々のアレルゲンコンポーネントの大多数が同定および特徴付けされているということである。
MA診断の最も重要な意義の1つは、真のIgE感作と交差反応性による感作とを見分けることであり、これは、アレルギー症状をもたらすアレルゲン原料が単一のものであるか、密接に関連する少数のものであるか、あるいはさまざまに異なる複数のものであるかを医師が判断するために役立ちうる。このことは、花粉過敏症(Stumvoll, Westritschnig et al. 2003)、毒(venom)過敏症(Mueller, Schmid-Grendelmeier et al. 2012)、および食物アレルギー(Matsuo, Dahlstrom et al. 2008; Ebisawa, Shibata et al. 2012)の診断の改善をもたらしうる。特にピーナツおよびヘーゼルナッツアレルギーにおいて、アレルゲンコンポーネントIgE試験により、古典的抽出物IgE試験によるよりも、アレルギーの臨床的アウトカムをより良く予測することができる(Nicolaou, Poorafshar et al. 2010; Codreanu, Collignon et al. 2011; Masthoff, Mattsson et al. 2013)。その1つの理由として、いくつかのコンポーネントは微量であり得、そのために他の種に由来する類似コンポーネントとの交差反応によるIgE反応性を示すに過ぎない場合がある。したがって、そのような交差反応コンポーネントに対するIgE反応性を示すに過ぎない個体は、問題のアレルゲンに対して臨床症状を起こす可能性は低いであろう(Asarnoj, Moverare et al. 2010; Asarnoj, Nilsson et al. 2012)。アレルゲン抽出物中のそのような微量の交差反応性コンポーネントすべてを同定することは、それらの臨床的関与が低くても非常に重要である。なぜなら、患者の臨床検査においては、すべてのコンポーネントに対するIgE反応性の合計が抽出物全体のIgE反応性となることが、抽出物中の他の重要でないかまたは未知のコンポーネントに対するIgE反応性を除外するために重要だからである。このようにして、MA診断のアウトカムは、最適な免疫療法治療の選択における改善、および異なる食物アレルギーのリスクの評価における改善をもたらしうる。
アレルゲンコンポーネントのもう1つの用途は、それを抽出物中にスパイクすることにより、抽出物による診断感度の向上のために使用するというものである。これは、アレルゲンマイクロアレイまたは診察室試験のような、小規模または非検査室免疫アッセイにおいては、アッセイ条件が比較的良好でないこと、抗体結合アレルゲン試薬の収容量が比較的少ないこと、および天然アレルゲン抽出物の効力が低いことが相俟って診断感度が不十分となりうることから、特に重要でありうる。
したがって、各アレルゲン原料において重要なアレルゲンタンパク質をすべて同定および特徴付けすることに大きな意味がある。
アレルギー治療は通常、例えば抗ヒスタミン剤によって、アレルギー症状を軽減することであるが、より長期にわたる効果的なアレルギー治療を特異的免疫療法によって行うことができる。アレルゲンタンパク質に対する防御免疫応答の特異的活性化を引き起こす、最も一般的には皮下または舌下への、疾患原因アレルゲン抽出物の適用。正確なメカニズムは解明されていないが、そのような免疫系の特異的活性化により、後に同じアレルゲンに環境暴露された際のアレルギー症状を軽減することができる(Akdis and Akdis 2007)。標準的な免疫療法は、粗天然物抽出物の代わりに1つまたは複数の精製されたアレルゲンタンパク質を使用することへと、さらに発展している。そのような免疫療法は、草花粉アレルギー患者に対して有効に実施されており(Jutel, Jaeger et al. 2005)(Cromwell, Fiebig et al. 2006)(Saarne, Kaiser et al. 2005)、動物皮屑アレルギーの治療に用いることが提案されている(Valenta, Lidholm et al. 1999; Gronlund, Saarne et al. 2009)。
近年、アレルゲン特異的IgG抗体への注目が高まっている。これは、アレルゲンに対する阻止抗体として機能することによって直接的に、または、Fc受容体を介して作用することによって間接的に、IgE抗体の作用を調節しうる(Akdis and Akdis 2007; Uermosi, Beerli et al. 2010; Uermosi, Zabel et al. 2014)。
したがって、アレルゲンに対する特異的IgE応答および特異的IgG応答の両方を調べることは、IgE応答のみを測定するよりも臨床的意義が大きい(Custovic, Soderstrom et al. 2011; Caubet, Bencharitiwong et al. 2012; Du Toit, Roberts et al. 2015)。免疫療法が、主としてIgG4サブクラスからなる特異的IgG応答を誘導することはよく知られている。この抗体応答は有効な免疫療法のメカニズムの一部であるから(Uermosi, Beerli et al. 2010; Uermosi, Zabel et al. 2014)、アレルゲン特異的IgG抗体の解析は、治療有効性をモニターする手段でありうる。
したがって、アレルゲン特異的IgGのレベルの測定は、該アレルゲンに対する生まれつきの、または環境暴露もしくは免疫療法治療によって誘導された寛容を反映し得、IgEレベルとの組み合わせにおいて、診断試験の臨床的意義を向上しうる。
ウマ皮屑は、鼻炎、結膜炎、気管支炎および喘息といった症状を伴う呼吸器系アレルギーの原因として一般的なものになりつつある(Liccardi, D'Amato et al. 2011)。ウマアレルゲンに対する職業上の暴露は、大きなアレルギー感作リスク因子であるが(Tutluoglu, Atis et al. 2002)、学校のような他の場所でもかなりの濃度のアレルゲンが検出されうる(Kim, Elfman et al. 2005)。ある研究では、ウマ皮屑に対するIgE感作を、高い喘息発症リスクと関連付けている(Ronmark, Perzanowski et al. 2003)。
ウマの毛および皮屑の抽出物は、複雑なアレルゲンタンパク質を含み、次の4つのウマアレルゲンがこれまでに同定されている:Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3 および Equ c 4。最初の2つはいずれもリポカリンタンパク質ファミリーのメンバーであり、天然原料から精製されているが(Dandeu, Rabillon et al. 1993; Goubran Botros, Rabillon et al. 1998)、Equ c 1だけが組換えタンパク質として発現されている(Gregoire, Rosinski-Chupin et al. 1996)。Equ c 1のアミノ酸配列は、ネコアレルゲンFel d 4のアミノ酸配列と67%同じである(Smith, Butler et al. 2004)。Equ c 3、すなわちウマ血清アルブミンは、比較的保存性の高いタンパク質で、他の哺乳動物アルブミンと広範な交差反応性を示す(Goubran Botros, Gregoire et al. 1996)。Equ c 4は、まず精製され(Goubran Botros, Rabillon et al. 1998; Goubran Botros, Poncet et al. 2001)、後になってウマの汗のラセリン(latherin)と同定された(McDonald, Fleming et al. 2009)。セクレトグロビンタンパク質ファミリーのC−Dサブファミリーの新たなウマアレルゲンが最近特徴付けられた(Equ c 15k, WO2011/133105)。
Equ c 1は、既知のウマアレルゲンの中で最も重要なものと言われており(Dandeu, Rabillon et al. 1993)、その組換えタンパク質に対するIgE抗体認識は、調査されたウマアレルギー対象人口の76%に認められた(Saarelainen, Rytkonen-Nissinen et al. 2008)。精製された天然アレルゲンを用いた別の研究によると、Equ c 2に対してはウマアレルギー患者の33%、Equ c 4に対しては23%が過敏であるに過ぎなかった(Goubran Botros, Rabillon et al. 1998)。ウマ血清アルブミンに対するIgE結合の程度はいくつかの研究が対象としており、それによると、40%までのウマアレルギー対象において反応性がある(Spitzauer et al. 1993; Cabanas et al. 2000)。しかしながら、血清アルブミンに対する感作にはしばしば、他のアレルゲンコンポーネントに対し、より高い濃度のIgE抗体が伴うので、その特異的な臨床的意義は不明である(Spitzauer, Schweiger et al. 1993; Cabanas, Lopez-Serrano et al. 2000)。最近の研究により、それらウマアレルゲンコンポーネントによる相対的有症率が調査され、Equ c 15kに対するIgE反応性を有するウマアレルギー患者の48%が症状を有したことが示されている(WO2011/133105)。
既知のウマアレルゲンコンポーネントのいずれに対しても反応性を示さない血清を用いることにより、新たなウマアレルゲンを精製し、セクレトグロビンとして同定した。N末端配列解析およびMALDI ToF MSにより、その配列を部分的に決定した。全アミノ酸配列を3’RACEにより確認し、天然精製タンパク質と同様のIgE反応性を有する組換え一本鎖タンパク質を大腸菌において製造した。また、診断および処置における該アレルゲンの使用、ならびに該アレルゲンを含む診断用キットおよび医薬組成物も開示する。
本発明は第一の側面において、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖を有し、それらを合わせた全体としての、配列番号3の配列および配列番号4の配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、単離されたヘテロ二量体タンパク質に関する。
さらなる側面において本発明は、全体としての、配列番号3のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、一本鎖タンパク質に関する。
さらなる側面において本発明は、配列番号3の配列との配列同一性が少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、単離されたタンパク質に関する。
さらなる側面において本発明は、配列番号4の配列との配列同一性が少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、単離されたタンパク質に関する。
さらなる側面において本発明は、配列番号3の配列を有する第1のペプチド鎖、および配列番号4の配列を有する第2のペプチド鎖を有するヘテロ二量体タンパク質のIgE抗体エピトープを少なくとも1つ有する、本発明の上記側面のいずれかのタンパク質のフラグメントに関する。
さらなる側面において本発明は、固体または可溶性の支持体に固定化された、本発明の上記側面のタンパク質またはタンパク質フラグメントに関する。タンパク質およびペプチドの固定化に適当な支持体は当分野でよく知られており、本発明はこの側面において、該タンパク質またはタンパク質フラグメントの免疫原特性に実質的な負の影響を及ぼさないいずれの支持体をも含む。ここで、用語「固定化」とは、使用する支持体に適当な、任意の種類の結合でありうると理解される。一態様において、本発明のタンパク質またはタンパク質フラグメントは、診断方法において使用するのに適当な固体支持体、例えばImmunoCAP、EliAまたはVarelisAに固定化される。他の一態様においては、本発明のタンパク質またはタンパク質フラグメントは、溶液中の天然または合成ポリマー構造、例えば溶液中の1つまたはそれ以上のデンドリマー構造に固定化される。
さらなる側面において本発明は、標識または標識要素が付された、本発明の上記側面のタンパク質またはタンパク質フラグメントに関する。すなわち、一態様において、本発明は、ルミネセンス標識、例えば光ルミネセンス標識、例えば蛍光もしくは燐光標識、化学ルミネセンス標識、またはラジオルミネセンス標識が付された、本発明のタンパク質またはタンパク質フラグメントである。他の一態様においては、本発明のタンパク質またはタンパク質フラグメントは、識別されうる要素、例えば親和性官能基で誘導体化される。タンパク質およびペプチドの標識のための親和性官能基は当分野においてよく知られており、当業者は任意の適当な官能基、例えばビオチンを選択することができる。
本発明はさらなる一態様において、本発明の上記側面のタンパク質またはタンパク質フラグメントをコードする核酸分子、また、該核酸分子を含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、および該宿主細胞をタンパク質発現に適当な条件下に培養することを含む、本発明の上記側面のタンパク質またはタンパク質フラグメントの組換え製造方法に関する。
さらなる一態様において、本発明は、
- 1型アレルギーを有することが疑われる患者からの免疫グロブリン含有体液サンプルを、本発明の上記側面のタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントと接触させるステップ;および
- 前記サンプルにおいて、前記タンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントに特異的に結合する抗体、例えばIgE抗体の存在を検出するステップ
を含み、
ここで、抗体、例えばIgE抗体の存在は、前記患者が1型アレルギーを有することを示唆する、
1型アレルギーのインビトロ評価方法に関する。
一態様において、本発明の方法は、前記タンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントに特異的に結合するIgEおよび/またはIgG抗体の存在を検出することを含む。他の態様において、本発明は、他のまたはさらなるアイソタイプの抗体、例えばIgA、IgDおよび/またはIgMを用いる。この態様において、特異的IgE抗体の存在は、前記患者がウマに対する1型アレルギーを有することを示唆し、特異的IgG抗体のレベルは、ウマに対する、生まれつきの、または環境的暴露もしくは免疫療法によって誘導された免疫寛容に関する情報を与える。
本発明の方法は、一態様において、
- 1型アレルギーを有することが疑われる患者からの免疫グロブリン含有体液サンプルを、ウマからのさらなる精製アレルゲンコンポーネント少なくとも1つと接触させるステップ;および
- 前記サンプルにおいて、前記のウマからの精製アレルゲンコンポーネントに特異的に結合するIgE抗体の存在を検出するステップ
をさらに含み、
ここで、前記タンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントに特異的に結合するIgE抗体の存在と、前記ウマからのアレルゲンコンポーネントに特異的に結合するIgE抗体の不存在との組み合わせは、前記患者がネコに対する1型アレルギーを有することを示唆する。
この態様において、ウマからのさらなる精製アレルゲンコンポーネントは、好ましくは、天然および組換えのEqu c 1、Equ c 2、Equ c 3、Equ c 4/5およびEqu c 15kからなる群から選択される。
本発明は、さらなる側面において、本願において記載される標識および/または固定化されたタンパク質および/またはタンパク質フラグメントを用いるアッセイに関する。一態様において、本発明は、
(i)前記のように、調べる抗体アイソタイプを固体または可溶性の支持体上に捕捉するステップ;
(ii)本発明のタンパク質またはタンパク質フラグメントを加えるステップ;および
(iii)タンパク質またはタンパク質フラグメントと抗体の結合を直接的または間接的に検出するステップ
を含むアッセイである。一態様において、タンパク質またはタンパク質フラグメントはフルオロフォアで標識されており、この場合、検出は直接的検出である。他の一態様において、タンパク質またはタンパク質フラグメントは前記のように、例えば酵素結合要素、例えばアビジンまたはストレプトアビジンで誘導体化されている。
したがって、本発明は、多くの異なる種類のIgEおよびIgGアッセイにおいて、例えば前記のようにIgE感作対象から得たIgE抗体を支持体上に捕捉し、標識アレルゲンの結合により検出するリバース(reverse)アッセイにおいて、有用である。
本発明は、さらなる側面において、本発明の前記側面の方法を実施するための、固体支持体上に固定化された本発明のタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントを含むキットに関する。
この側面の一態様において、固体支持体は、ニトロセルロース、ガラス、シリコンおよびプラスチックの群から選択され、および/またはマイクロアレイチップである。
この側面の一態様において、本発明のキットは、固定化されたタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントと結合した抗体、例えばIgE抗体および/またはIgG抗体に結合することができる検出試薬をさらに含む。そのような検出試薬は、例えば、免疫アッセイの分野において知られるような、検出可能な標識(例えば色素、フルオロフォアまたは酵素)で標識された抗IgE抗体でありうる。
本発明の側面はさらに、ヒトまたは動物体に対して実施される処置または診断方法、例えばヒトまたは動物体に対して実施される1型アレルギーの処置または診断方法における使用のための、本発明の前記側面のタンパク質またはタンパク質フラグメントを包含し、また、1型アレルギーの処置方法であって、そのような処置に感受性の個体に、本発明の前記側面のタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントを投与することを含む方法を包含する。
本発明の態様をさらに挙げる:
[1] 第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖を有し、それらを合わせた全体としての、配列番号3の配列および配列番号4の配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも70%である、単離されたヘテロ二量体タンパク質。
[2] 全体としての、配列番号3の配列および配列番号4の配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも75%、好ましくは80%、85%、90%、95%または98%である、上記項1に記載の単離されたヘテロ二量体タンパク質。
[3] 全体としての、配列番号3のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、一本鎖タンパク質。
[4] 配列番号3の配列との配列同一性が少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、単離されたタンパク質。
[5] 配列番号4の配列との配列同一性が少なくとも70%、例えば75%、80%、85%、90%、95%または98%である、単離されたタンパク質。
[6] 配列番号3の配列を有する第1のペプチド鎖および配列番号4の配列を有する第2のペプチド鎖を有するヘテロ二量体タンパク質のIgE抗体エピトープを少なくとも1つ有する、上記項1〜5のいずれかに記載のタンパク質のフラグメント。
[7] 固体または可溶性の支持体に固定化されている、上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質またはタンパク質フラグメント。
[8] 検出可能な標識が付けられている、上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質またはタンパク質フラグメント。
[9] 上記項1〜5のいずれかに記載のタンパク質または上記項6に記載のタンパク質フラグメントをコードする核酸分子。
[10] 配列番号9の配列との同一性が少なくとも80%であるヌクレオチド配列を含む、上記項9に記載の核酸分子。
[11] 配列番号10の配列との同一性が少なくとも80%であるヌクレオチド配列を含む、上記項9に記載の核酸分子。
[12] 上記項3に記載の一本鎖タンパク質をコードし、配列番号9の配列および配列番号10の配列を組み合わせたものとの全体としての配列同一性が少なくとも80%であるヌクレオチド配列を含む、上記項9に記載の核酸分子。
[13] 上記項9〜12のいずれかに記載の核酸分子を含むベクター。
[14] 上記項13に記載のベクターを含む宿主細胞。
[15] 上記項1〜5のいずれかに記載のタンパク質または上記項6に記載のタンパク質フラグメントの組換え産生方法であって、上記項14に記載の宿主細胞を、該タンパク質の発現に適当な条件下に培養することを含む、方法。
[16]・1型アレルギーを有することが疑われる患者からの免疫グロブリン含有体液サンプルを、上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントと接触させるステップ;および
・前記サンプルにおいて、前記タンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントに特異的に結合する抗体の存在を検出するステップ
を含み、
ここで、前記のように結合した抗体の存在は、前記患者が1型アレルギーを有することを示唆する、
1型アレルギーのインビトロ評価方法。
[17] 前記サンプルにおいて、前記タンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントに特異的に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体の存在を検出することを含み、
ここで、特異的IgE抗体の存在は、前記患者がウマに対する1型アレルギーを有することを示唆し、特異的IgG抗体のレベルは、ウマに対する、生まれつきの、または環境的暴露もしくは免疫療法によって誘導された免疫寛容に関する情報を与える、
上記項16に記載の方法。
[18]・1型アレルギーを有することが疑われる患者からの免疫グロブリン含有体液サンプルを、ウマからのさらなる精製アレルゲンコンポーネント少なくとも1つと接触させるステップ;および
・前記サンプルにおいて、前記のウマからの精製アレルゲンコンポーネントに特異的に結合するIgE抗体の存在を検出するステップ
をさらに含み、
ここで、前記タンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントに特異的に結合するIgE抗体の存在と、前記のウマからのアレルゲンコンポーネントに特異的に結合するIgE抗体の不存在との組み合わせは、前記患者がネコに対する1型アレルギーを有することを示唆する、
上記項16または17に記載の方法。
[19] 前記のウマからのさらなる精製アレルゲンコンポーネントが、天然および組換えのEqu c 1、Equ c 2、Equ c 3、Equ c 4/5およびEqu c 15kからなる群から選択される、上記項18に記載の方法。
[20] 上記項16〜19のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、固体支持体上に固定化された上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントを含むキット。
[21] 固体支持体が、ニトロセルロース、ガラス、シリコンおよびプラスチックの群から選択される、上記項20に記載のキット。
[22] 固体支持体がマイクロアレイチップである、上記項20または21に記載のキット。
[23] 固定化されたタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントと結合した抗体に結合することができる検出試薬をさらに含む、上記項20〜22のいずれかに記載のキット。
[24] 検出試薬が、IgG抗体および/またはIgE抗体に結合することができる、上記項23に記載のキット。
[25] ヒトまたは動物体に対して実施される処置または診断方法において使用するための、上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質またはタンパク質フラグメント。
[26] ヒトまたは動物体に対して実施される1型アレルギーの処置または診断方法において使用するための、上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質またはタンパク質フラグメント。
[27] 1型アレルギーの処置方法であって、処置に感受性の個体に、上記項1〜6のいずれかに記載のタンパク質、ペプチド鎖またはタンパク質フラグメントを投与することを含んでなる方法。
定義
用語「タンパク質」および用語「ペプチド」は、それらの当分野における通常の意味を有すると解釈される。本発明において、特に断りがなければ、これら用語は互換的に用いられる。
タンパク質の「長さ」は、当該タンパク質のアミノ酸残基の数である。
タンパク質の「フラグメント」は、少なくとも10個のアミノ酸からなるか、または元のタンパク質の長さの少なくとも10%の長さを有するタンパク質フラグメントを意味すると解釈される。フラグメントは、元のタンパク質の全長の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%および90%の長さを有するタンパク質フラグメントを包含する。
タンパク質の「バリアント」とは、バリアントタンパク質全長にわたって計算して、元のタンパク質との配列同一性が少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%または98%を超えるバリアントを言う。元のタンパク質とバリアントタンパク質のアラインメントを行い配列同一性を計算するためのソフトウェアツールが数多く市販されており、その例はEuropean Bioinformatics Institute (Cambridge, United Kingdom) から提供されるClustal Omegaである。タンパク質バリアントは、元のタンパク質の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、100%、105%または110%の長さを有しうる。したがって、タンパク質バリアントは、その製造の結果として、ヘキサヒスチジンタグ、リンカー配列またはベクター由来アミノ酸のような追加のアミノ酸を含みうる。また、元のアレルゲンタンパク質の「バリアント」たりうるためには、バリアントタンパク質は好ましくは、元のアレルゲンタンパク質の少なくとも1つのIgE抗体エピトープを含むべきであり、すなわち、元のアレルゲンタンパク質に感作された典型的患者からの血清サンプルからIgE抗体を結合すべきである。元のアレルゲンタンパク質のバリアントが元のアレルゲンタンパク質のIgE抗体エピトープを含むかどうかは、実施例10に記載する阻害アッセイにより調べることができる。元のIgE結合エピトープのIgE結合エピトープを含むバリアントは、元のタンパク質への結合の「顕著な阻害」を起こす分子であり、これは緩衝液のみ(IgE希釈液、Thermo Fisher Scientific)による阻害との比較として、結合を少なくとも10%、20%、30%、40%または50%阻害しうる分子であると解釈すべきである。好ましくは、バリアントは、元のアレルゲンタンパク質と実質的に同じレベルで、IgE抗体を結合する。結合レベルは、実施例8に記載するように、バリアントまたはフラグメントを固相に固定し、個々の血清のIgE反応性を測定することにより、測定することができる。この定義の目的で、「実質的に同じレベル」とは、バリアントの結合レベルと元のタンパク質の結合レベルとの差が25%、20%、15%、10%または5%までであることを意味すると理解すべきである。
「ヘテロ二量体タンパク質」とは、その天然型(native form)において、共有結合または非共有結合により結合した、アミノ酸配列の異なる2つのタンパク質鎖を含むタンパク質を言う。それらモノマー単位、すなわちタンパク質鎖は、起源の生物において1つの遺伝子または別個の遺伝子でコードされうる。
「配列同一性」とは、2つの(ヌクレオチドまたはアミノ酸)配列が、アラインメントにおいて同じ位置に同じ残基を有する程度を言い、パーセンテージで表される。ここでの「アラインメント」とは、2つまたはそれ以上の生物学的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸配列を、類似性の程度または相同の可能性を評価する目的で、同一性レベルおよび(アミノ酸配列の場合)保存度が最大となるように並べるプロセスまたは結果を言う。ヘテロ二量体タンパク質の場合、「全体としての(overall)」配列同一性を決定するために、各鎖のアミノ酸配列またはそれをコードする核酸配列を連結して、アラインメントに用いうる。Fassler およびCooper, “BLAST Glossary”, BLAST(登録商標)Help, Bethesda (MD): National Center for Biotechnology Information (US); 2008-も参照されたい。
用語「ベクター」は、異種の遺伝子材料を、それが複製および/または発現されうる別の細胞中に人工的に運ぶ担体として用いられるDNA分子を言う。
図1は、ウマ皮屑タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分別を示す。A280吸光度を実線で、導電率を破線で示す。矢印は、IgE反応性を試験した画分の位置を示す。縦棒は、さらなる精製に付した、活性画分を含むプールを示す。 図2は、未知のウマ皮屑コンポーネントの、疎水性相互作用クロマトグラフィーによる第2の精製ステップを示す。A280吸光度を実線で示し、ポンプBにおけるTris(pH8.0)緩衝液のパーセンテージ(%B)を破線で示す。矢印は、IgE反応性を試験した画分の位置を示す。縦棒は、さらなる精製に付した、活性画分を含むプールを示す。 図3は、未知のウマ皮屑コンポーネントの、陰イオン交換クロマトグラフィーによる第3の精製ステップを示す。A280吸光度を実線で、導電率を破線で示す。矢印は、IgE反応性を試験した画分の位置を示す。横棒は、さらなる試験に付したプールを示し、そのうちの1つが活性画分を含んだので、さらなる精製に付した。 図4は、未知のウマ皮屑コンポーネントの、逆相クロマトグラフィーによる第4の精製ステップを示す。A280吸光度を実線で示し、ポンプBにおける90%アセトニトリル中0.05%TFAの緩衝液のパーセンテージ(%B)を破線で示す。縦棒は、それぞれをSDS PAGE分析およびIgE反応性試験に付した、3つのピーク(1、2、3として示す)のプールを示す。 図5は、RPC精製ステップからの3つのピークの還元および非還元サンプルのSDS−PAGE分析を示す。レーンMは、左に示す分子量の分子量マーカータンパク質を含む。 図6は、Equ c sの鎖1の全長タンパク質の仮定ヌクレオチド配列(a)とアミノ酸配列(b)を示す。(c)には、ネコ由来の類似の分子Fel d 1の鎖1とのアミノ酸アラインメントを示す。 図7は、Equ c sの鎖2の全長タンパク質の仮定ヌクレオチド配列(a)とアミノ酸配列(b)を示す。(c)には、ネコ由来の類似の分子Fel d 1の鎖2とのアミノ酸アラインメントを示す。 図8は、画分中のタンパク質濃度を高めるためにより急な勾配を用いて行った、陰イオン交換クロマトグラフィーのプールのRPC精製ステップを示す。縦棒は、MS/MS溶液内消化(in-solution digestion)分析に付した画分D4およびD5を示す。 図9は、IMACによる組換えEqu c sの精製を示す(a)。A280吸光度を実線で、導電率を破線で示す。イミダゾール溶出勾配は800〜1200mlの範囲である。矢印は、プールし陰イオン交換クロマトグラフィー(b)に付したピークを示す。矢印はピーク1およびピーク2を示し、縦棒はこれらプールの範囲を示す。 図10は、組換えEqu c s abの分析的ゲル濾過分析を示す。A280吸光度を実線で、導電率を破線で示す。(a)において、rEqu c s abのAIECからのピーク1の分析を示す。 図10は、組換えEqu c s abの分析的ゲル濾過分析を示す。A280吸光度を実線で、導電率を破線で示す。(b)において、rEqu c s abのAIECからのピーク2の分析を示す。 図10(c)、組換えEqu c s abのAIECからのピーク1およびピーク2の、還元および非還元条件でのSDS PAGE分析を示す。 図11は、35人のウマ皮屑感作患者における、天然Equ c sと組換えEqu c sとのIgE反応性における相関を示す。0.35kU/Lおよび0.1kU/Lのレベルを点線で示す。 図12は、25人のウマ皮屑アレルギー患者のコホートにおける、ウマ皮屑抽出物(HDE)、Equ c 1、nEqu c 2、nEqu c 3、nEqu c 4、rEqu c 15kおよびrEqu c sに対するIgE抗体のレベルを示す。0.1kU/Lを下回った数をコンポーネントごとに一纏めに示す。点線は0.35kU/Lのレベルを、実線は0.1kU/Lのレベルを示す。横棒は、IgEの中央レベルを示す。 図13は、ウマ皮屑感作患者のコホートにおける、rEqu c sおよびrFel d 1に対するIgE抗体結合の比較を示す。0.35kU/Lおよび0.1kU/Lのレベルを点線で示す。
配列表
下記配列を配列表に記載する。
発明の詳細な説明
本発明は1つの側面において、1つまたはそれ以上のジスルフィド結合により連結された、分子量が5kDaのオーダーである第1のペプチド鎖および分子量が10kDaのオーダーである第2のペプチド鎖を含み、非還元条件下におよそ18kDaに相当する電気泳動移動度(見掛けの分子量)を示す、セクレトグロビンファミリーに属する単離されたウマアレルゲン(本発明においてEqu c sと称する)に関する。本発明のこの側面はまた、前記に定義されるように天然Equ c sとある程度の配列同一性を有し、好ましくは天然Equ c sの少なくとも1つのIgE抗体エピトープを含む、Equ c sのバリアントおよびフラグメントを包含する。そのようなバリアントおよびフラグメントは、好ましくは、Equ c s反応性血清に対しIgE反応性を示し、実施例10に記載するアッセイにより測定した場合、そのようなバリアントまたはフラグメントによって、元のrEqu c s分子とのIgE結合が少なくとも10%阻害されうる。後述の本発明の他の側面においても、用語「Equ c s」は、記載の簡潔のために、そのようなバリアントおよびフラグメントをも包含するものとして用いられる。
別の側面において、本発明は、本発明の前記側面のアレルゲンをコードする、単離された核酸分子、および該核酸分子を含むベクター、ならびに該ベクターを含む宿主細胞に関する。そのようなベクター含有宿主細胞によって産生される組換えタンパク質またはペプチドは、用いた宿主細胞に応じて、グリコシル化されていても、されていなくてもよい。
さらなる側面において、本発明は、患者におけるI型アレルギーを評価するためのインビトロの方法であって、患者からの体液サンプル、例えば血液または血清サンプルをEqu c sまたは本発明の前記側面に係る組成物と接触させ、それにより患者サンプルがEqu c sに特異的に結合するIgE抗体を含むか否かを決定しうる方法に関する。そのような方法は、当分野において知られたどのような様式で行ってもよい。Equ c sを、例えば、固体支持体に固定化するか(例えば、従来の検査室免疫アッセイ、マイクロアレイまたはラテラルフローアッセイにおいて)、または液相試薬として使用しうる。
さらに別の側面において、本発明は、患者におけるI型アレルギーを評価するためのインビトロの方法であって、患者からの体液サンプル、例えば血液または血清サンプルをEqu c sと接触させ、それにより患者サンプルが、Equ c sに特異的に結合するが他のウマアレルゲンコンポーネント、例えばEqu c 1、Equ c 2、Equ c 3、Equ c 4/5またはEqu c 15kには結合しないIgE抗体を含むか否かを決定しうる方法に関する。Equ c sに対してIgE反応性を示すが他のウマアレルゲンに対してはIgE反応性を示さない患者は、ウマではなくネコに最初に感作された可能性がある。
上記側面において、野生型Equ c s分子は、この野生型タンパク質のIgE抗体エピトープを含む、Equ c sの天然または人工のフラグメントまたはバリアントで置き換えうる。
本発明はさらに、I型アレルギーを処置する方法であって、処置を必要とする患者に、Equ c s、または下記に説明する改変Equ c sを投与することを含む方法に関する。本発明のこの側面は、コンポーネント分解(component-resolved)免疫療法(ValentaおよびNiederberger 2007)を包含するそのような免疫療法における、Equ c sの使用にも関する。この側面の一態様において、Equ c sは、その天然の形態で、または天然分子と同様の生化学的および免疫学的性質を示す組換え形態で使用しうる。他の一態様においては、Equ c sは、処置される個体において、好ましくはIgG応答を誘導することができる一方で、IgE抗体結合能は排除または減弱するように化学的または遺伝子的に作成された改変形態で使用しうる。改変の例は、分子の断片化、切断、タンデム化(tandemerization)もしくは凝集、内部セグメントの欠失、アミノ酸残基の置換、ドメイン再構成、またはジスルフィド架橋または他の巨大分子構造もしくは低分子量化合物への結合の破壊による三次元構造の少なくとも一部の破壊を包含するが、それらに限定されない。この側面のさらに別の態様においては、Equ c sの個々の10kDaおよび/または5kDaサブユニットを、改変Equ c sとして使用する。
本発明の前記側面のいずれにおいても、Equ c sタンパク質は、その天然の原料、例えばウマからの尿、唾液もしくは他の体液または組織(例えば毛または皮屑)から精製しうる。Equ c sタンパク質は、当業者に知られた方法または本願において記載される方法により、組換えDNA技術によって製造するか、または化学的に合成してもよい。
本書に記載されるアレルゲンであるウマタンパク質Equ c sは、セクレトグロビンタンパク質ファミリー、特に、2個のヘテロ二量体サブユニットから形成される四量体タンパク質を含む1つのサブファミリーに属する。このヘテロ二量体は、異なる遺伝子から誘導された2つの鎖がジスルフィド架橋によって連結されたものからなる(Klug et al. 2000)。本書に記載されるウマセクレトグロビンは、5±2kDaのサブユニットと10±2kDaのサブユニット(これらは、本発明の目的のために、それぞれ、5kDaサブユニットおよび10kDaサブユニットと称される)からなる18±2kDaのヘテロ二量体であり、本発明においてEqu c sと称される。この分子量の値は、下記実施例3に記載されるように、SDS−PAGEで測定される見掛けの分子量による。見掛けの分子量とは、電気泳動分離媒体およびその濃度、使用する緩衝液の直線勾配または勾配等を包含する分離条件によって、変化しうると理解される。また、10kDaサブユニットは、N−グリコシル化部位を有し、それがグリカン構造によって占められると見掛けの分子量が変化しうる。
5kDa鎖のアミノ酸配列は、予測アミノ酸配列:
(配列番号3)を有し、理論分子量は7.9kDaである。
10kDa鎖のアミノ酸配列は、予測アミノ酸配列:
(配列番号4)を有し、理論分子量は9.6kDaである。
広範な哺乳動物種における構造的に関連のあるタンパク質が論じられているが、主要なネコアレルゲンFel d 1 (Acc no P30438 および P30440) およびEqu c 15k (WO2011/133105) のわずか2つのタンパク質しか、アレルゲンとして規定されていないことに注目すべきである。
ウマアレルギー患者において見られるウマ皮屑抽出物に対するIgE反応性の大部分は、ウマ皮屑アレルゲンEqu c 1、Equ c 2、Equ c 3、Equ c 4/5 および Equ c 15k によるものであるが、本発明者らは、ネコアレルギーの個体が、上記5つの既知のウマアレルゲンコンポーネントのいずれにも反応性を示さないにも関わらずウマ皮屑抽出物に対しIgE反応性を示すいくつかのケースに遭遇した。本発明は、ネコアレルゲンFel d 1のホモログタンパク質の発見を導く、ウマ皮屑抽出物に対するこの未知のIgE反応性に関与するウマアレルゲンの同定および特徴付けを記載する。
ネコ感作対象からの血清コレクションにおいて、多数の血清を、既知のウマ皮屑アレルゲンのいずれに対する反応性も検出されない一方で、ウマ皮屑抽出物に対する反応性を有すると特徴付けることができた。その血清を用いた場合にウマ皮屑抽出物に対するIgE結合を組換えFel d 1によって阻害することができ、これにより、該IgE反応性は、免疫学的にFel d 1に類似するウマタンパク質に対するものであることが示唆された。
前記血清を用いて、ウマ皮屑から新たに主要なアレルゲンを精製することができ、セクレトグロビンタンパク質ファミリーのメンバーとして同定することができた。この新たなウマタンパク質(本発明においてEqu c sと称される)は、1つの5kDaアミノ酸鎖および1つの10/11kDaアミノ酸鎖がジスルフィド架橋によって連結されたものからなる。この2つのポリペプチド鎖が別個の遺伝子によりコードされるという事実に鑑み、本発明の研究は、これまでウマゲノムの生物情報学的研究によって知られていないヘテロ二量体タンパク質の存在を証明する。これは、既知のウマアレルゲンとは区別される。このアレルゲンは、既知のウマアレルゲンのパネルへの重要な追加を意味し、ウマアレルギー診断において有用でありうる。これは、主要なネコアレルゲンFel d 1と交差反応性のアレルゲンであるから、この分子に対するIgE反応性は、臨床症状に関係するかまたは関係しないウマ皮屑に対する交差反応性の感作を反映しうる。
以下の実施例は、ウマからのEqu c sと称されるセクレトグロビンの単離および使用に関して本発明を説明するものである。実施例は説明のためのものに過ぎないので、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は特許請求の範囲によって規定される。
ウマ皮屑抽出物中の、Fel d 1に類似する未知アレルゲンコンポーネントを検出する血清の決定
ウマ皮屑抽出物、ネコ皮屑抽出物、およびFel d 1の標準ImmunoCAPテストを使用した。組換えEqu c 1およびEqu c 15k、ならびにウマ皮屑から精製したEqu c 2およびEqu c 4、およびウマ血清から精製したEqu c 3を用いる実験用immunoCAPテストを、実質的にWO2011/133105に記載されるように調製した。
ネコ皮屑抽出物に対する感作レベルの高い血清のコレクションを、ネコおよびウマの皮屑コンポーネントに対するIgE反応性について試験した。ここで選択された5つの血清は、既知の5つのウマアレルゲンコンポーネントのいずれにも反応性を示すことなく、ネコ皮屑抽出物、Fel d 1およびウマ皮屑抽出物に対し高いIgE反応性を示すことによって特徴付けられた(表1)。したがって、これら血清は、ウマ皮屑抽出物中の未知のアレルゲンコンポーネントを検出した。
選択した血清を、ウマ皮屑抽出物およびネコ皮屑抽出物の両方を固相として用いる阻害試験に使用した(表2)。阻害剤である組換えEqu c 15k、Fel d 1およびFel d 7はそれぞれ100μg/mlの終濃度で使用した。阻害コントロール緩衝液として、0.3%ヒト血清アルブミンを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を使用した。各阻害についての2連の測定の平均値を計算し、阻害の割合を、各阻害剤によって消失された阻害コントロール緩衝液使用時の結合の割合として計算した。選択された血清において、ネコ皮屑抽出物への結合はFel d 1によりほぼ完全に阻害された(表2a)。それ以外の試験した阻害剤はいずれも、何ら阻害を示さなかった。このことは、ネコ皮屑抽出物に対するIgE結合の大部分は、Fel d 1に対する反応性によるものであることを示している。同様に、ウマ皮屑抽出物固相への結合はrFel d 1により完全に阻害されたが、それ以外の阻害剤のいずれによっても阻害されなかった(表2b)。このことは、前記血清のウマ皮屑抽出物に対する結合は、ネコアレルゲンFel d 1と免疫学的に類似するウマ皮屑コンポーネントに対するものであることを示している。Equ c 15kはセクレトグロビンファミリーに属するが、このタンパク質は、ウマ皮屑抽出物に対する結合の阻害を示さなかった。このことは、求めるウマコンポーネントはEqu c 15kではないことを示している。これは、その2つのタンパク質が異なるセクレトグロビンサブファミリーに属する、すなわち、Fel d 1はB−Eサブファミリーに、Equ c 15kはC−Dサブファミリーに属する(Laukaitis and Karn 2005)(WO2011/133105)という事実によって説明することができる。
ネコアレルゲンFel d 1に類似するウマ皮屑アレルゲンコンポーネントの精製
実施例1に記載した血清を用いて、ウマ皮屑抽出物中に、Fel d 1に類似する未知のアレルゲンコンポーネントを検出することができた。また、クロマトグラフ手法を用いてウマ皮屑抽出物を分画し、画分をImmunoCAP固相に固定化することにより、未知コンポーネントを複数のクロマトグラフィーステップにおいて追跡することができた。
サイズ排除クロマトグラフィー
ウマ皮屑(Allergon, Vaelinge, Sweden)を20mM MOPS(pH7.6)、0.15M NaCl(MBS=MOPS緩衝生理食塩液)で抽出し、遠心により清澄化し、0.45μm混合セルロースエステルフィルター(Millipore, Billerica, MA, USA)で濾過した。第1の精製ステップとして、清澄化した抽出物を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)用のSuperdex(商標)75 カラム (XK26/100, Vt= 505 mL, GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden) に適用し、MBSにより流速2ml/分で溶出を行った。
クロマトグラムを図1に示す。図中に矢印で示される6つの画分を、文献に記載されるように固相に固定化した(Marknell DeWitt, Niederberger et al. 2002)。前記血清を用いた場合の固定化画分に対するIgE結合を、表3に示す。試験された画分18、22および26が、未知アレルゲンコンポーネントを最も多量に含むことがわかる。画分16〜27(図1において縦棒で示す)をプールし、疎水性相互作用クロマトグラフィーに付した。
疎水性相互作用クロマトグラフィー
SECからのプールを1M NHSOに調整し、20mM tris(pH8.0)中の1M NHSOで平衡化したPhenyl Sepharose(商標)HPカラム (HR10/10, Vt= 8.0 mL, GE Healthcare Life Sciences) に適用した。1M〜0MのNHSOのNHSO直線勾配で溶出を行った(図2のクロマトグラムにおいて、溶出体積140〜260mlの間の50%〜100%Bとして示す)。強く結合したタンパク質を溶離するために、ポンプAを洗浄し、緩衝液を20mM Tris(pH8.0)中の30%イソプロパノールに変えた。0〜30%イソプロパノールのイソプロパノール勾配を用いて、カラムに残るタンパク質を溶離した(クロマトグラムにおいて、溶出体積285〜325mlの間の100%〜0%Bとして示す)。クロマトグラムに示す7つのピークを、カップリング緩衝液(0.1M NaHCO、pH8.0)で1:2希釈し、ImmunoCAP固相に固定し、前記検出用血清を用いてIgE反応性について試験した(表4)。イソプロパノール溶出勾配の画分60に、最も高いIgE反応性が見られた。画分58〜66をプールし、陰イオン交換クロマトグラフィーに付した。
陰イオン交換クロマトグラフィー
HICプールを、その体積の半量のTris(pH8.5)を添加することにより調整した。その後、プールを、20mM Tris(pH8.5)で平衡化した陰イオン交換カラムSource(商標)15Q (PE4.6/100, Vt= 1.66 mL, GE Healthcare Life Sciences) に適用した。同じ緩衝液中の0〜0.50MのNaCl直線勾配で溶出すると、タンパク質は複数のピークに分かれて溶出され(図3)、そのうちの7つを、カップリング緩衝液で1:4希釈した後、固定化した。この希薄化において殆どの画分中に未知コンポーネントに対するIgE反応性が検出されたので(表5a)、SDS PAGEにおけるタンパク質バンドパターンに基づいてB4−B1、C1−C4およびC1−C11の3つのプールをプールし、カップリング緩衝液で1:20希釈した後、固定化した。これらのさらなる希釈化プール画分のIgE解析により、第1のプールB4−B1において最も活性が高いことがわかった(表5b)。このプールを最終クロマトグラフィーステップであるRPC精製に付した。
逆相クロマトグラフィー
陰イオン交換プールを、TFAを終濃度0.065%で添加することにより調整し、最終RPC精製ステップに付すために、そのサンプルを、水中の0.065%TFAで平衡化したSource(商標)15 RPCカラム (Resource, Vt= 3.2 mL; GE Healthcare Life Sciences) に適用した。90%アセトニトリル中の0.05%TFAからなる緩衝液Bの0〜60%直線勾配で溶出を行った。勾配の終盤近くに3つのピークの溶出があり(図4)、それを固相に固定化し、試験した。表6に示すように、最初の2つのピークが未知コンポーネントを高レベルに含んでおり、なかでもピーク番号2が最初のピークよりも含有レベルが少し高かった。
精製された画分の、SDS PAGE、N末端配列解析およびMALDI TOF MSによる解析
RPC画分のSDS PAGE解析により、最初の2つのRPCピークについて、還元条件で5kDaにおいて1つのバンド、10/11kDaにおいて2重のバンドがあり、これらは非還元条件では合わさって18kDaにおけるブロードなバンドとなるという、同様のパターンが示された。このバンドパターンは、典型的に還元条件で5および10kDaの2バンド、非還元条件で15〜20kDaの1バンドという、セクレトグロビンファミリーのタンパク質のものと一致する。2つのバンドの最大のバンドはグリコシル化されており、そのためdiffuseとなりうるか、または本ケースにおけるように2重バンドとなりうる。
RPCピーク2のEdman分解によるN末端配列解析を、本質的に文献に記載されるように実施したところ(Mattsson, Lundgren et al. 2009)、7残基目以降明確性が低下する2通りの配列が提示された:

アミノ酸の相対量は各サイクルで同様であったので、このデータから一次および二次配列を決定することは不可能であった。この2通りの配列は、配列表にも配列番号44として示す。
一次元SDS PAGEゲル電気泳動の5、10および11kDaバンドからのスポットをトリプシンでゲル内消化して、Bruker Daltonics Autoflex 2装置 (Bruker Daltonics, Bremen, Germany) を用いるマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析 (MALDI TOF MS)、次いでペプチドマスフィンガープリント (PMF) 分析により解析したところ、NCBI-NRデータベースのいずれかの既知タンパク質との明らかな一致は、5kDaバンドで未同定ウマタンパク質の予測配列(XP 005596696)との一致が見られたことを除き、見られなかった。ただし、この登録された配列は一部がセクレトグロビンと相同であるにも関わらず、分子量はこのファミリーの分子としては大き過ぎ、それを取り出したバンドと一致しなかった。予測配列には欠陥があると考えられた。
Fel d 1の鎖1および鎖2と類似するアミノ酸配列を決定する、ウマゲノム配列の生物情報学的解析
鎖1
実施例1において示されるように未知ウマ皮屑タンパク質と免疫学的に類似するネコアレルゲンタンパク質Fel d 1は、2つのアミノ酸鎖 鎖1および鎖2 (それぞれ、acc no: NP 001041618 および NP 001041619) がジスルフィド架橋で連結されたものからなる。
Fel d 1の鎖1の配列 (NP 001041618) でウマゲノムデータベース(wsg)をTBLASTN検索すると、アミノ酸17〜79が、ウマゲノム配列の105199塩基対セグメントであるAcc No. AAWR02030062の(逆ストランドの)ヌクレオチド位置77633〜77453の翻訳と一致した。
この配列を含むより大きなセグメントとして、Acc No. AAWR02030062の90000-70021を、Fel d 1の鎖1の前駆配列と共に、遺伝子検出プログラムFGENESH+に掛けた。このプログラムは、ゲノム配列内の相同遺伝子を検索する。結果は、Acc No. AAWR02030062の、
77850 → 77790
77632 → 77445
76428 → 76399
という3つのエクソンからなる仮定配列であった。
Equ c sの鎖1と称されるこの仮定配列の完全なDNA配列を、図6aに示す (配列番号45)。これは92のアミノ酸残基 (配列番号1、図6b) をコードし、その最初の22残基はシグナルペプチドを構成するとSignalPにより予測された。クローン化cDNAから導かれる成熟タンパク質は、3つのシステインを含む70アミノ酸残基から成り、予測分子量は7.9kDa、予測等電点は4.96であった。この予測配列を用いるタンパク質BLASTホモロジー検索により、セクレトグロビンとの相同性を有するアミノ酸配列が示される。予測配列は、Fel d 1の鎖1 (配列番号47) と67%のアミノ酸が同じであった (図6c)。
鎖2
上記と同様にFel d 1の鎖2の配列 (NP 001041619) でウマゲノムデータベース(wsg)をTBLASTN検索すると、アミノ酸21〜85が、ウマゲノム配列の105199塩基対セグメントであるAcc No. AAWR02030062の(順ストランドの)ヌクレオチド位置82588〜82782の翻訳と一致した。
この配列を含むより大きなセグメントとして、Acc No. AAWR02030062の70021〜94020を、Fel d 1の鎖2の前駆配列と共に、遺伝子検出プログラムFGENESH+に掛けた。このプログラムは、ゲノム配列内の相同遺伝子を検索する。結果は、Acc No. AAWR02030062の、
82004 → 82064
82589 → 82770
である2つのエクソンからなる不完全な仮定配列であった。
この仮定配列は、Fel d 1の鎖2の配列との相同性に基づき、最後のエクソンを欠く。タンパク質BLAST検索で、Fel d 1の鎖2のエクソン3と、ヌクレオチド82770に続く翻訳ゲノム配列とを比較すると、Fel d 1の鎖2のエクソン3と相同性を有するゲノム配列が同定された。Equ c sのこの仮定エクソン3は、in frameで前のエクソンと連結することができ、Fel d 1の鎖2のエクソン3と相同の位置に終止コドンを有した。この最終エクソンの配列は、ゲノム配列Acc No. AAWR02030062の90025〜90127に見られた。
Equ c sの鎖2と称されるこの仮定配列の完全なDNA配列を、図7aに示す (配列番号46)。これは114のアミノ酸残基 (配列番号2、図7b) をコードし、その最初の23残基はシグナルペプチドを構成するとSignalPにより予測された。クローン化cDNAから導かれる成熟タンパク質は、3つのシステインを含む91アミノ酸残基から成り、予測分子量は9.6kDa、予測等電点は4.84であった。この予測配列を用いるタンパク質BLASTホモロジー検索により、セクレトグロビンとの相同性を有するアミノ酸配列が示される。予測配列は、Fel d 1の鎖2 (配列番号48) と47%のアミノ酸が同じであった (図7c)。
ウマ皮膚からのEqu c sの鎖1および鎖2のmRNAのPCR増幅および配列決定
RNAqueousキット (Ambion, Austin, TX, USA) を用いて、ウマ皮膚から全RNAを調製した。mRNA Purificationキット (Thermo Fisher Scientific) を用いて、全RNAからポリアデニル化RNAを単離し、First-Strand cDNA Synthesisキット (Thermo Fisher Scientific) を用いてファーストストランドcDNAを調製した。Frohman (Frohman 1993) に従い、開始コドン前の非翻訳配列からの遺伝子特異的フォワードオリゴヌクレオチドプライマー:
5'-ATAAAAGGGCTGCAGAATTG-3' (配列番号11、鎖1) および
5'-GCAGCAGAAACCCTGCCCTG-3' (配列番号12、鎖2)
を用いて3'RACEを行った。クローニングのために末端NdeI制限部位を有する、開始コドン前の非翻訳配列からの第2の遺伝子特異的フォワードオリゴヌクレオチドプライマー:
5'-GTGAGCACCTGCCACCTG-3' (配列番号13、鎖1) および
5'-GAAGAGCATTCTAGCAGTTG-3' (配列番号14、鎖2)、
ならびに特異的リバースオリゴヌクレオチドプライマー:
5'-GAATCTTCTAATCAGACAC-3' (配列番号15、鎖1) および
5'-GGTAGAGGAGACAGGTGTC-3' (配列番号16、鎖2)
を用いて第2のPCRを行った。鎖1の4つの独立した3'RACEクローン、および鎖2の3つの独立した3'RACEクローンを単離し、全体の配列を決定し、それによりEqu c sの予測鎖のコード配列を確認することができた。DNA配列決定はApplied Biosystems 3130 Genetic Analyzer (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA) を用いて行った。DNAおよびアミノ酸の配列の解析および計算は、GCG Wisconsin Package (Accelrys, San Diego, CA, USA) のプログラムを用いて行った。
Equ c sの鎖1および鎖2の仮定配列を用いる、N末端配列解析およびMALDI TOF解析
Equ c sの仮定配列を用いて、実施例3に記載した2通りのアミノ酸配列の再評価を行った。この2通りの配列は今や、Equ c sタンパク質の成熟鎖1および鎖2の仮定N末端配列と同じDICPAV (配列番号3の残基1〜6) および CPSFYAV (配列番号4の残基1〜7) であると解釈することができる。
本質的に文献に記載されるように (Mattsson, Lundgren et al. 2009)、図5のピーク2の還元サンプルの5、10および11kDaバンド、および同じピークの非還元サンプルの18kDaバンドをゲル内消化して、MALDI ToFペプチドマスフィンガープリント (PMF) 分析に付した。5kDaバンドにおいて、Equ c sの鎖1の仮定配列中の仮想トリプシン切断ペプチドと分子量が一致する8つの異なるペプチドが検出された(表7a)。これらペプチドは、仮定成熟配列の89%を、当該アミノ酸鎖のN末端およびC末端を含んでカバーした。
11kDaバンドにおいては、Equ c sの鎖2の仮定配列中の仮想トリプシン切断ぺプチドと分子量が一致する2つの異なるペプチドが検出された(表7b)。これらペプチドは、仮定成熟配列の32%を、当該アミノ酸鎖のN末端を含んでカバーした。鎖2の配列の少しの部分しか同定されなかった理由は、これがN−グリコシル化を含むこと、およびトリプシン切断部位が、大きすぎるかまたは小さすぎるペプチドを与えるように分布しているという事実である。18kDaバンドにおいては、鎖1および鎖2の両方からのペプチドが検出された。
これらペプチドのシグナル強度をMS/MS解析が可能となるよう高めるために、実施例2に記載したのと同様であるがより急な勾配(それにより最初の2つのピークは完全には分離されなくなる)を用いたRPCクロマトグラフィー精製からの2つの画分を用いた(図8)。その最初の2つのピークからの画分(画分D5およびD4)を還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンによる溶液内消化(in solution digestion)に付した。そのサンプルを用いて、5および10kDaバンドのPMF解析によりカバーされた全アミノ酸配列が、仮定フラグメントと同じ配列を有することを、MS/MS解析により確認することができた(表8)。このサンプルからの想定されるセミトリプシン(切断部位(すなわち、トリプシンによる切断は各ペプチドの一方の端のみで起こされた)のさらなる解析により、鎖2のC末端の近くの大きなペプチドフラグメントが同定された(表8)。
SDS−PAGE分析(図5)および上記質量分析により、5および10kDaのアミノ酸鎖をそれぞれEqu c sの鎖1および鎖2として同定しうる証拠が与えられる。これらアミノ酸鎖は、天然の非還元状態において、1つまたはそれ以上のジスルフィド架橋により連結され、それによりヘテロ二量体タンパク質を形成する。すなわち、この解析により、1つの遺伝子によりコードされる配列番号3の配列と別の遺伝子によりコードされる配列番号4の配列とが合わさって、従来知られていないヘテロ二量体セクレトグロビンタンパク質を形成することが示される。
組換えEqu c sの製造および免疫学的特徴付け
組換えEqu c sのクローニングおよび精製
合成Equ c s一本鎖遺伝子を、5kDaサブユニットおよび10kDaサブユニットのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、3×(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、配列番号5の残基72−86)を含むリンカーペプチドをコードする配列と組み合わせることによって設計した。固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によるタンパク質精製を可能にするようC末端ヘキサヒスチジンタグを付加して、その全長合成遺伝子を、ベクターpET23a(+)(Novagen, Madison, WI, USA)のNdeI部位およびXhoI部位にクローン化した。
組換えタンパク質(rEqu c s abと称される)の全体のアミノ酸配列は次のとおりである:
(配列番号5)
ヌクレオチド配列は、大腸菌(DNA2.0, Menlo Park, CA, USA)において最適なコドン頻度となるよう設計した。
組換えタンパク質全体をコードする核酸配列は次のとおりである:
(配列番号6)
鎖1をコードする核酸配列は次のとおりである:
(配列番号9)
鎖2をコードする核酸は次のとおりである:
(配列番号10)
N末端の10kDaサブユニットにリンカーおよび5kDaサブユニットが続き、それにより2つのサブユニットを各アミノ酸鎖の異なる末端に配して連結する、もう1つのコンストラクトを設計した。このもう1つの組換えタンパク質(rEqu c s baと称される)のアミノ酸配列は:
(配列番号7)
であり、該タンパク質をコードする核酸配列は:
(配列番号8)
である。
プラスミドDNAコンストラクトを大腸菌株BL21-AI (Invitrogen) に導入し、3Lバイオリアクター (Belach Bioteknik, Skogaes, Sweden) を用いて組換えEqu c s一本鎖タンパク質を製造した。
組換えEqu c sの精製方法は、このタンパク質の2つのバリアントでほとんど同じであった。回収した細胞を20 mM Tris-HCl(pH 8.0)に再懸濁し、懸濁液をEmulsiflex C5ホモジナイザー (Avestin, Ottawa, Ontario, Canada) に10000〜15000kPaで通すことによって細胞を溶解した。遠心および濾過によって清澄化した後、上清をNiSOを充填したChelating Sepharose FFカラム (GE Healthcare Life Sciences) に適用した。20 mM Tris-HCl(pH 8.0)、0.15 M NaCl中の20 mM イミダゾールでカラムを洗浄し、同じ緩衝液中の20-500 mMのイミダゾール直線勾配において組換えタンパク質を溶出した(図9a)。組換えタンパク質のさらなる精製を、Q Sepharose(商標)FFカラム (GE Healthcare Life Sciences) において20 mM Tris-HCl(pH 8.0)を用いるAIECにより行った。0-0.6 M NaCl直線勾配を用いてタンパク質を溶出すると2重のピークが現れ、該2つのピークを別々にプールした(図9b)。これら調製物のタンパク質濃度を、計算されたmg/mL当たりの吸光係数0.34を用いて280nmにおける吸光度から決定した。
組換えEqu c sの生化学的特徴付け
rEqu c s abのピーク1およびピーク2の分析的ゲル濾過により、ピーク1は二量体および単量体形態のrEqu c sの混合物を含み(図10a)、ピーク2は凝集物を多く含む(図10b)ことが示された。この結果は、もう1つの組換え形態であるrEqu c s baにおいても同様であった(データを示していない)。
一本鎖組換えEqu c sのSDS PAGE解析により、還元条件で19kDaに単一のバンドが示され、非還元条件でわずかに低い見掛けの分子量16kDaのバンドが示された(図10c)。非還元条件においては、より高い分子量のバンドも主に39kDaに存在し、二量体形態のタンパク質を示すものと考えられた。
rEqu c sの第1のバリアント(rEqu c s ab)のN末端配列解析により、予測された配列から外れていない、イニシエーターメチオニンが完全に維持された、明白で明瞭な配列が読み取られた。第2のバリアント(rEqu c s ba)の調製物においては、イニシエーターメチオニンはほぼ半分のサンプルにおいて維持され、残りの調製物は第2のアミノ酸鎖で開始した。結論として、組換え調製物は両方とも、インタクトなrEqu c sを含んでいた。
組換えEqu c sに対するIgE結合の評価
2つの形態の組換えEqu c sのピーク1およびピーク2のそれぞれを、文献(Marknell DeWitt, Niederberger et al. 2002)に記載されるように実験用ImmunoCAP(商標)に固定化し、実施例1に記載される血清とのIgE反応を利用して、各調製物のIgE反応性を調べた。表9に示すように、すべての調製物が前記血清に対し同様のIgE反応性を示し、これは、天然タンパク質を含む精製された画分とのIgE反応性とも一致した(表6、画分2)。
35人のウマ皮屑感作対象からの血清を用いて、組換えEqu c s abとRPCからの天然精製タンパク質画分2(図4)とのIgE反応性を比較するさらなる解析を行った。
精製された天然Equ c sに対するIgE結合と組換えEqu c sに対するIgE結合との一致は良好であったので(r=0.99)、この組換えタンパク質が免疫学的に活性であり構造的に天然タンパク質に類似することが示された。これらのデータは、同定されたゲノム配列情報から予測されたEqu c sの5kDaおよび10kDaサブユニットのアミノ酸配列は正確であり、精製ウマ皮屑アレルゲンEqu c sのアミノ酸配列を表すことの強力な証拠を提供する。
ウマアレルギー患者コホートにおけるnEqu c 1、nEqu c 2、nEqu c 3、nEqu c 4、Equ c 15kおよびEqu c sのIgE結合活性の評価
スペイン(n=20)およびスウェーデン(n=5)の25人のウマアレルギー患者からの血清を本試験に用いた。すべての患者が、喘息、鼻結膜炎および蕁麻疹のような症状を伴うウマアレルギーであると医師に診断されており、ウマ皮屑抽出物に対する皮膚プリック試験に陽性であった。すべてのサンプルおよび臨床データは、該サンプルおよびデータを収集したバイオバンクを担う各施設の倫理委員会の承認の下に収集された。
25人のウマアレルギー患者における、ウマ皮屑抽出物、nEqu c 1、nEqu c 2、nEqu c 3、nEqu c 4、rEqu c 15kおよびrEqu c s abに対する特異的IgE抗体のレベルを、ImmunoCAP(商標)を用いて測定した(図12、表10)。表10において、すべてのImmunoCAP(商標)レベルはkU/Lで示し、各患者の国名をES(スペイン)またはSE(スウェーデン)と示す。ウマ暴露時のアレルギー症状の記録は、鼻炎 (rhin)、喘息 (astm)、蕁麻疹 (urt) またはアナフィラキシー (anaph) である。
試験した25の血清中、13例(52%)がrEqu c sに対し≧0.35kU/LのIgE反応性を示し、12例(48%)がrEqu c 15kに対して、16例(64%)がnEqu c 2に対して、19例(76%)がnEqu c 1に対してIgE反応性を示した。nEqu c 3およびnEqu c 4/5に対しては、試験した血清中わずか5例(20%)および7例(28%)しかIgE抗体結合を示さなかったので、それらはいずれも被験者の中では主要でないアレルゲンであることが示された。本試験のコホートにおいて、rEqu c sのみに反応した患者は無かったが、25の血清中4例(16%)および2例がそれぞれEqu c 15kのみ、およびEqu c 1のみに反応した。Equ c 15kに反応性のすべての血清において、Equ c sに対するIgE抗体の濃度は、ウマ皮屑に対するIgE抗体濃度に対して、平均で30%であった。nEqu c 1に対するIgE抗体の対応する相対濃度は52%であり、nEqu c 2、nEqu c 3、nEqu c 4/5およびEqu c 15kに対するIgE抗体の対応する相対濃度はそれぞれ、35%、69%、9%および37%であった(これらアレルゲンに対し特異的に反応する血清において)。25の血清中24例が、ウマ皮屑抽出物に対してIgE抗体結合を示した。それら血清のすべてが、試験した5つの個々のウマアレルゲンの少なくとも1つに対して結合を示した。個々のコンポーネントに対するIgE結合レベルの合計は、ウマ皮屑抽出物に対するものと一致するか、またはそれを上回った。
Equ c sと、ネコ由来セクレトグロビンである主要ネコアレルゲンFel d 1との交差反応性
本発明の研究の出発点であった未知のIgE反応性はFel d 1によって阻害されたので、組換えEqu c sとFel d 1の関係を調べた。実施例8に記載したウマアレルギー患者25人を含む35人のウマ皮屑感作対象の血清において、Fel d 1に対するIgE結合のレベルを調べた。組換えEqu c sとrFel d 1とに対するIgEレベルの間に、明らかな相関が見られ(r=0.92)(図13)、ほぼ全ての患者において、Fel d 1に対するIgE反応性がEqu c sに対するIgE反応性よりも高かった。
Equ c sとFel d 1との関係をさらに調べるために、固相上のウマ皮屑抽出物、rFel d 1およびrEqu c sと、阻害剤としての終濃度100μg/mlのrEqu c 15k、rEqu c sおよびrFel d 1を用いて、実施例1において使用した5つの血清における交差阻害を調べた。阻害コントロール緩衝液として、0.3%ヒト血清アルブミンを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を用いた。各阻害の2連の測定の平均を計算し、阻害の割合を、各阻害剤によって消失された阻害コントロール緩衝液使用時の結合の割合として計算した。
上記の選択された血清において、ウマ皮屑抽出物に対する結合を阻害することができたのはFel d 1およびEqu c sのみであったので、Equ c sは確かに、それら血清の結合を説明できるウマ皮屑抽出物中の未知タンパク質であることが示された(表11A)。Fel d 1 immunoCAPに対する結合は、Fel d 1自体によって阻害されたが、Equ c sによっては阻害されず(11B)、Equ c sに対する結合はFel d 1およびEqu c sのいずれによっても阻害された(11C)。このことは、これら2つのタンパク質の配列は同一性が高いこと(図6cおよび図7c)とウマ皮屑感作血清集団に対するIgE結合の相関性が高いこととの両方により示唆されるとおりに、Fel d 1とEqu c sとの間でIgE結合は確かに交差反応性であることを示す。さらに、ウマ皮屑感作血清集団においてFel d 1はEqu c s固相への結合を阻害するがEqu c sはFel d 1への結合を阻害しないという事実、また、Fel d 1に対するIgE結合はEqu c sに対する結合よりも常に高いという事実から、それら血清が元々Fel d 1に感作されており、Equ c sに対する結合は交差反応性の結果であったことが示唆された。

アレルゲンタンパク質のバリアントまたはフラグメント(被験物質)のIgE結合特性評価
元のアレルゲンタンパク質、本発明の場合はEqu c sを、固体支持体に固定化する。該当の種で感作され、該種からの元のアレルゲンタンパク質に対しIgE反応性を示す少なくとも3人のヒト患者からの血清サンプルを、100μg/mlの終濃度の被験物質、また並行してネガティブコントロールとして緩衝液のみ、および大腸菌の非アレルゲン性マルトース結合タンパク質(MBP)と共に、室温で2時間インキュベートする。次いで、サンプルを、Equ c sを固定化した固体支持体へのIgE結合について試験し、Equ c sのバリアントまたはフラグメントとのプレインキュベーションがIgE結合を特異的に阻害または明らかに低下するかを調べる。
文献

Claims (15)

  1. 第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖を有し、それらを合わせた全体としての、配列番号3の配列および配列番号4の配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも90%であり、配列番号3の配列を有する第1のペプチド鎖および配列番号4の配列を有する第2のペプチド鎖を有するヘテロ二量体タンパク質のIgE抗体エピトープを有する、単離されたヘテロ二量体タンパク質。
  2. 全体としての、配列番号3の配列および配列番号4の配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも95%または98%である、請求項1に記載の単離されたヘテロ二量体タンパク質。
  3. 全体としての、配列番号3のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも90%であり、配列番号3の配列を有する第1のペプチド鎖および配列番号4の配列を有する第2のペプチド鎖を有するヘテロ二量体タンパク質のIgE抗体エピトープを有する、一本鎖タンパク質。
  4. 全体としての、配列番号3のアミノ酸配列および配列番号4のアミノ酸配列を組み合わせたものとの配列同一性が、少なくとも95%または98%である、請求項3に記載の一本鎖タンパク質。
  5. 固体または可溶性の支持体に固定化されている、および/または検出可能な標識が付けられている、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする核酸分子。
  7. 請求項6に記載の核酸分子を含むベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターを含む宿主細胞。
  9. ・1型アレルギーを有することが疑われる患者からの免疫グロブリン含有体液サンプルを、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質と接触させるステップ;および
    ・前記サンプルにおいて、前記タンパク質に特異的に結合する抗体の存在を検出するステップ
    を含み、
    ここで、前記のように結合した抗体の存在は、前記患者が1型アレルギーを有することを示唆する、
    1型アレルギーのインビトロ評価方法。
  10. 前記サンプルにおいて、前記タンパク質に特異的に結合するIgE抗体および/またはIgG抗体の存在を検出することを含み、
    ここで、特異的IgE抗体の存在は、前記患者がウマに対する1型アレルギーを有することを示唆し、特異的IgG抗体のレベルは、ウマに対する、生まれつきの、または環境的暴露もしくは免疫療法によって誘導された免疫寛容に関する情報を与える、
    請求項9に記載の方法。
  11. ・1型アレルギーを有することが疑われる患者からの免疫グロブリン含有体液サンプルを、ウマからのさらなる精製アレルゲンコンポーネント少なくとも1つと接触させるステップ;および
    ・前記サンプルにおいて、前記のウマからの精製アレルゲンコンポーネントに特異的に結合するIgE抗体の存在を検出するステップ
    をさらに含み、
    ここで、前記タンパク質に特異的に結合するIgE抗体の存在と、前記のウマからのアレルゲンコンポーネントに特異的に結合するIgE抗体の不存在との組み合わせは、前記患者がネコに対する1型アレルギーを有することを示唆する、
    請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記のウマからのさらなる精製アレルゲンコンポーネントが、天然および組換えのEqu c 1、Equ c 2、Equ c 3、Equ c 4/5およびEqu c 15kからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項9〜12のいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、固体支持体上に固定化された請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むキット。
  14. ヒトまたは動物体に対して実施される処置または診断方法、またはアレルギーの処置または診断方法において使用するための、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質。
  15. アレルギーが1型アレルギーである、請求項14に記載のタンパク質。
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