以下、本発明の実施形態を説明する。以下に記載されている装置の構造などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
図1〜図4を参照し、コンロ1の外観構造を説明する。コンロ1は、グリル付きテーブルコンロである。コンロ1は、筐体2と天板3を備える。筐体2は、上部が開口する略直方体状に形成されている。天板3は、筐体2の開口する上部にネジ(図示略)で固定されている。天板3の右側には、バーナ開口部201が設けられ、左側には、バーナ開口部202が設けられている。それらバーナ開口部201,202の夫々の内側を上下に挿通するように、右コンロバーナ5と左コンロバーナ6が設けられている。天板3の後端側には、排気口部9が設けられている。排気口部9は、筐体2内に設置されたグリル庫(図示略)内のガス燃焼によって生じた燃焼ガスを外部に排出する。排気口部9には、複数のスリット191を備える安全カバー190が上側から装着されている。
筐体2は、筐体本体部20、右前パネル24、左前パネル25等を互いに組み付け、ネジ(図示略)で固定することで構成されている。筐体本体部20は、前側が開口する平面視略U字形状に形成されている。筐体本体部20は、板金部材で形成され、右側板部21、左側板部22、後板部23(図3参照)を備える。後板部23は、右側板部21及び左側板部22の夫々の後端部同士を繋いでいる。筐体本体部20の開口する前側部分において、右側板部21の前端部の上部と、左側板部22の前端部の上部との間には、金属製の上梁部(図示略)が略水平に渡設されている。右側板部21の前端部の下部と、左側板部22の前端部の下部との間には、金属製の下梁部(図示略)が渡設されている。
図1,図2に示すように、筐体本体部20の開口する前側部分の右側には、右前パネル24がネジ(図示略)で固定され、左側には、左前パネル25がネジ(図示略)で固定されている。右前パネル24と左前パネル25の夫々の前面部は、上端部から下側になるにつれて前方に傾斜している(図1,図3,図4参照)。それ故、使用者がコンロ1の前面を前側から見下ろした場合、右前パネル24と左前パネル25の夫々の前面部が使用者の視線に対向するので、コンロ1の前面の視認性を向上できる。右前パネル24と左前パネル25に挟まれる中央部には、正面視略矩形状の開口部(図示略)が設けられている。該開口部の後ろ側には、グリル庫の前側に設けられたグリル開口(図示略)が配置される。開口部には、グリル扉10が前後方向に移動可能に設けられ、グリル開口を開閉する。グリル扉10の前面部は、右前パネル24と左前パネル25の夫々の前面と同一角度で、上端部から下側になるにつれて前方に傾斜している。グリル扉10の前面部には、前方に突出する取手部101が設けられている。使用者が取手部101を手前側に引き出すと、グリル扉10の背面下部に連結した受皿と焼き網(図示略)を、グリル庫内から同時に取り出すことができる。
右前パネル24の前面部におけるグリル扉10の右隣には、点火ボタン41が設けられている。その右隣には、点火ボタン42が設けられている。左前パネル25の前面部におけるグリル扉10の左隣には、点火ボタン43が設けられている。点火ボタン41を押し込むと、右コンロバーナ5が点火され、再度押し込むと消火される。点火ボタン42を押し込むと、グリル庫内に設置されたグリルバーナ(図示略)が点火され、再度押し込むと消火される。点火ボタン43を押し込むと、左コンロバーナ6が点火され、再度押し込むと消火される。点火ボタン43の左隣には、電池ボックス70が手前に引き出し可能に設けられている。電池ボックス70は、コンロ1に電源を供給する乾電池(図示略)を格納する。電池ボックス70の直上には、乾電池の電圧低下を報知する為のLED17が設けられている。
点火ボタン41の上方には、火力調節レバー111が設けられている。点火ボタン42の上方には、火力調節レバー121が設けられている。点火ボタン43の上方には、火力調節レバー131が設けられている。火力調節レバー111は、右前パネル24の後方に設けられた右コンロバーナ5用のガス量調節装置(図示略)の後述するブラケットに軸支されている。火力調節レバー111は、ブラケットを中心とする左右方向の回動操作により、ガス量調節装置を操作し、右コンロバーナ5の火力調節を行う。火力調節レバー121は、右前パネル24の後方に設けられたグリルバーナ用のガス量調節装置(図示略)の後述するブラケットに軸支されている。火力調節レバー121は、ブラケットを中心とする左右方向の回動操作により、ガス量調節装置を操作し、グリルバーナの火力調節を行う。火力調節レバー131は、左前パネル25の後方に設けられた左コンロバーナ6用のガス供給装置90(図6参照)の後述するブラケット103に軸支されている。火力調節レバー131は、ブラケット103を中心とする左右方向の回動操作により、ガス量調節装置90を操作し、左コンロバーナ6の火力調節を行う。
点火ボタン41の下方には、ロック操作部112が設けられている。点火ボタン42の下方には、ロック操作部122が設けられている。点火ボタン43の下方には、ロック操作部132が設けられている。ロック操作部112,122,132は、点火ボタン41〜43に夫々対応するチャイルドロック機構(図示略)を操作するレバー部材である。ロック操作部112は、点火許容位置とロック位置との間を左右方向にスライドさせることによって、点火ボタン41の押し込み操作を可能、又は不能にする。ロック操作部122は、点火許容位置とロック位置との間を左右方向にスライドさせることによって、点火ボタン42の押し込み操作を可能、又は不能にする。ロック操作部132は、点火許容位置とロック位置との間を左右方向にスライドさせることによって、点火ボタン43の押し込み操作を可能、又は不能にする。
図4〜図6を参照し、左前パネル25の構造を説明する。なお、右前パネル24の構造は、左前パネル25の構造と同様であるので、説明を省略する。図4,図5に示すように、左前パネル25は、使用者側に対向する前面部26を備える。前面部26は、上部傾斜面261、下部傾斜部262、湾曲部263等を備える。上部傾斜面261は、前面部26の上端部から下側になるにつれて前方に傾斜する部分である。下部傾斜部262は、前面部26の下端部において下側になるにつれて後方に傾斜する部分である。湾曲部263は、上部傾斜面261と下部傾斜部262を湾曲状に繋ぐ部分である。これにより、前面部26は、上下方向の中央位置よりもやや下側の位置において前方向に突出する側面視略L字状に形成されている(図3,図4参照)。上部傾斜面261の上下幅は、湾曲部263の上下幅よりも広く形成されている。それ故、使用者の視線は、湾曲部263に比べて上部傾斜面261に集中し易くなっている。
図4,図5に示すように、前面部26の右側には、点火ボタン43用の開口部33が設けられている。開口部33は、正面視やや横長の略矩形状に形成されている。開口部33の下方には、開口部33よりも小さい正面視横長の略矩形状の開口部35が設けられている。前面部26の左側であって、上部傾斜面261の下部と、湾曲部263と、下部傾斜部262とを少なくとも含む領域には、電池ボックス70用の開口部34が設けられている。開口部34は、正面視やや縦長の略矩形状に形成されている。開口部34の上端部の位置は、開口部33の上端部の位置と同一である。開口部34の下端部の位置は、開口部33の下端部の位置よりも下側である。開口部34は、電池ボックス70の前端部に設けられた蓋部72によって閉じられる。開口部34の左上角部の上方には、略円形状の孔部36が設けられている。孔部36は、左前パネル25の背面側に取り付けられる回路基板(図示略)上のLED17を外部に露出させる。
図6に示すように、前面部26の背面側において、開口部33の周縁部に沿うようにして、支持枠80が固定されている。支持枠80は、背面視略矩形枠状に形成され、上枠部81、左右一対の縦枠部82(図6では右側の縦枠部82のみ図示)、下枠部83を備える。上枠部81は左右方向に延び、開口部33の周縁部のうち上側部分に沿って配置される。左右一対の縦枠部82は、上枠部81の左右両端から鉛直下方に延び、開口部33の周縁部のうち左右両側部分に沿って配置される。各縦枠部82は、面方向を左右方向に向けた板状に形成されている。各縦枠部82の上部には、左右方向に貫通する軸支穴821が設けられている。下枠部83は、一対の縦枠部82の夫々の下端部の間に渡設され、開口部33の周縁部のうち下側部分に沿って配置される。
下枠部83には、スライド部材13が左右方向にスライド移動可能に支持されている。スライド部材13は、平面視左右方向に延びる板状に形成され、その上面の左右両端部には、上方向に突出する突起部133(片方のみ図示)が夫々設けられている。スライド部材13の前端部の略中央部には、上述のロック操作部132が設けられている。ロック操作部132は、前方向に突出する棒状に形成されている。ロック操作部132は、開口部35を介して前方に突出し、開口部35内を左右方向に移動可能である。スライド部材13は、点火ボタン43を操作不能にするチャイルドロック機構を構成する。チャイルドロック機構の仕組みについては後述する。
図6を参照し、ガス供給装置90の構造を説明する。ガス供給装置90は、筐体2内の前側で、且つ左前パネル25の点火ボタン43の後方に設けられている。ガス供給装置90は、左コンロバーナ6に供給するガス量を調節する。ガス供給装置90は、点火消火機構91、ガス量増減機構92、火力調節機構93を備える。点火消火機構91は、ガス供給装置90の下部に設けられ、点火ボタン43の押し込み操作により、左コンロバーナ6の点火消火を行う。ガス量増減機構92は、ガス供給装置90の中央部に設けられ、左コンロバーナ6に供給するガス量の増減を行う。火力調節機構93は、ガス供給装置90の上部に設けられ、火力調節レバー131の回動操作に応じて、ガス量増減機構92のガス量増減の調節を行うことにより、左コンロバーナ6の火力調節を行う。
点火消火機構91は、バルブボディ95を備える。バルブボディ95は、ガス供給装置90の下部に設けられ、前後方向に延びる略円筒状に形成されている。バルブボディ95は内部にガス流路を備える。ガス流路はバルブボディ95の軸方向に延びる。バルブボディ95のガス流路内には、スピンドル96が挿入されている。スピンドル96は、該流路に沿って進退可能である。バルブボディ95の前端部には、略桿状の点火スイッチ98が設けられている。点火ボタン43は、非操作状態において、点火ボタン43の背面側に設けられた後述する第一当接面61と当接する。点火スイッチ98は、点火ボタン43の押し込み操作によって後方に押し込まれると、スピンドル96を後方に押す。スピンドル96は、戻しバネ97によって前方へ常時付勢されている。
スピンドル96は、点火ボタン43による押し込み操作により、メイン弁(図示略)を押し開き、後述する吐出口102へのガス流路を開閉する。マグネット式安全弁99は、点火操作により押下されてガス流路を開き、左コンロバーナ6燃焼時の熱起電力によって開弁状態に保持する。マグネット式安全弁99の下部近傍には、ガス流入口(図示略)が設けられている。ガス流入口は、バルブボディ95のガス流路内にガスを流入させる。ガス流路は、ガス量増減機構92内のガス流路に接続する。
バルブボディ95の前側には、ケーシング105が設けられている。ケーシング105は上下方向に延びる略円筒状に形成され、バルブボディ95と同軸上に配置されている。ケーシング105内には、点火スイッチ98がプッシュバネ(図示略)を介して嵌め込まれている。点火スイッチ98は、ケーシング105の前端側から前方に突出している。点火スイッチ98の下部には、プッシュプッシュ機構(図示略)が設けられている。プッシュプッシュ機構は、点火時と消火時とで交互に点火スイッチ98の進退位置を決定する。プッシュプッシュ機構は、点火操作における点火ボタン43の押し込みが解放されると、メイン弁を開弁したまま、マグネット式安全弁99を閉弁可能状態とする所定位置まで後退して点火スイッチ98を係止する。また、消火操作における点火ボタン43の押し込みを解放すると、点火スイッチ98の係止を解除し、所定ストロークだけ前方にスピンドル96を戻して、メイン弁を閉弁させる。
ガス量増減機構92は、上下方向に延びる略筒状の機体部921を備える。機体部921内には上下方向に延びるガス流路(図示略)が形成され、バルブボディ95内のガス流路と接続する。機体部921の上部は斜め後方に屈曲し、その後端部には、吐出口102が設けられている。吐出口102は、機体部921のガス流路を流れたガスを吐出する。吐出口102は、左コンロバーナ6のスロート部6Aに設けられた流入口6Bと対向する。それ故、吐出口102から吐出されたガスは、流入口6Bからスロート部6A内に流入し、左コンロバーナ6に供給される。機体部921のガス流路内には、ニードル弁(図示略)が設けられている。ニードル弁は、火力調節レバー131の回動操作に応じて、ガス流路内を上下方向に移動される。ニードル弁が上下方向に移動すると、ガス流路から吐出口102へ流れるガスの通路面積が増減する。これにより、ニードル弁の弁開度が調節され、左コンロバーナ6に供給されるガス量が調節される。
火力調節機構93は、ブラケット103と火力調節レバー131を備える。ブラケット103は、火力調節レバー131を回動可能に軸支する。火力調節レバー131は、左右方向における回動操作によって、機体部921のガス流路内に設けられたニードル弁を上下方向に移動させる。これにより、吐出口102から吐出されるガス量が増減するので、左コンロバーナ6の火力調節を行うことができる。
図7,図8を参照し、点火ボタン43の構造を説明する。なお、本実施形態では、点火操作前の点火ボタン43の姿勢(図4〜図6参照)を基本姿勢とし、その基本姿勢における方向で構造を説明する。点火ボタン43は、例えば樹脂による一体成型品である。点火ボタン43は、正面視略矩形状で、且つ背面側が開口された略箱状に形成され、前面部45、右面部46(図8参照)、左面部47、上面部48、底面部49を備える。
図7に示すように、前面部45は、上から順に、上部傾斜面451、指掛け部452、下部傾斜面453を備える。上部傾斜面451は、前面部45の上部に設けられ、上側から下側になるにつれて前側に傾斜する。上部傾斜面451の傾斜角度は、左前パネル25の上部傾斜面261の傾斜角度と同一である。指掛け部452は、使用者が指を掛けて押し込む部分であり、上部傾斜面451の下端から前方に且つ略水平に張り出している。指掛け部452は、平面視略矩形状に形成され、その前端側の左右の両角部は略円弧状に形成されている。指掛け部452の上面の前端側には、滑り止め用の3つの凸部57が横並びに形成されている。下部傾斜面453は、上部傾斜面451の下端に接続し、上部傾斜面451と同様に、上側から下側になるにつれて前側に傾斜し、その下部において後方に湾曲しながら底面部49の前端部に接続する。
上面部48は、点火ボタン43の上部に設けられ、平面視左右方向に長い略矩形状に形成されている。上面部48は、上部傾斜面451の上端と接続する。上面部48の上面には、点火標識部481が設けられている。点火標識部481は、上面部48よりも小さい平面視左右方向に長い略矩形状で且つ凹状に窪んで形成され、その内側の底面には、点火標識シールが貼付されている。点火標識シールは、左コンロバーナ6が点火されていることを使用者に知らせる為のシールである。点火標識シールは、単色又は模様の何れも採用でき、単色であれば、例えばオレンジ色、赤色、黄色等のような目立つ色が好ましい。また、点火標識シール以外に、例えばペンキ等の塗料を塗ってもよく、又は別部材を固定してもよい。また、点火標識部481は、点火されていることを示すことができればよいので、色の標識以外に、例えば文字、図形、マーク、若しくは凹凸面等を施してもよい。
右面部46は、前面部45の右端部から後方に延びる。右面部46の外面において、指掛け部452よりも上方で、且つ上部傾斜面451よりも後方であって、さらに上面部48よりも下方の位置には、右側方に突出する棒状の揺動軸51が設けられている。左面部47は、前面部45の左端部から後方に延びる。左面部47と右面部46は互いに対向する。左面部47の外面において、指掛け部452よりも上方で、且つ上部傾斜面451よりも後方であって、さらに上面部48よりも下方の位置には、左側方に突出する棒状の揺動軸52が設けられている。揺動軸51と52は、左右方向に延びる同一軸心を有する。
底面部49は、下部傾斜面453の下端部から後方に向けて略水平に延び、且つ右面部46の下端部と左面部47の下端部との間に渡設されている。底面部49の下面の右端部には、被係止部54が設けられている。被係止部54は、右面部46の下端部から底面部49よりも下方に突出し、右側面視略台形状で且つ底面視略L字状に形成されている。底面部49の下面の左端部には、被係止部55が設けられている。被係止部55は、被係止部54と左右対称形状であって、左面部47の下端部から底面部49よりも下方に突出し、左側面視略台形状で且つ底面視略L字状に形成されている。
図8に示すように、点火ボタン43の背面側には、前面部45、右面部46、左面部47、上面部48、及び底面部49によって周囲を覆われた空洞が形成されている。その空洞を上下に仕切るようにして、前面部45の上下方向中段よりもやや上側の位置には、リブ状の壁部58が設けられている。壁部58は、前面部45の背面から後方に向けて略水平に延びる。その壁部58の下面における略中央部には、当接部60が設けられている。当接部60は、前面部45の背面から後方に向けて略水平に突出する略角柱状に形成されている。当接部60は、ガス供給装置90の点火スイッチ98の先端部に当接し、点火ボタン43の押し込み力を点火スイッチ98に伝達させる。本実施形態の当接部60は、例えば肉抜き成形によって複数のリブ601で構成され、十分な強度を保持している。
当接部60の後方に突出する後端面は、角度が互いに異なる側面視略L字状の二面で構成され、第一当接面61と第二当接面62を備える。第一当接面61と第二当接面62は、夫々複数のリブ601の各端面で平坦部を形成する。第一当接面61は、当接部60の後端面の上側に形成され、鉛直方向に平行な平坦部を形成する(図6参照)。第二当接面62は、第一当接面61よりも下方前方に位置し、第一当接面61の下端部から前側に対して斜め下方に傾斜する平坦部を形成する(図6参照)。第一当接面61は、点火ボタン43の非操作状態(点火操作前)において、点火スイッチ98と正対して当接する部位である。第二当接面62は、点火操作により、点火ボタン43が揺動軸51,52周りに後方に揺動され、点火スイッチ98の押し込みを完了させる際に、点火スイッチ98と正対して当接する部位である。上記の通り、第一当接面61及び第二当接面62は、複数のリブ601の各端面によって形成された平坦部であるので、点火ボタン43の押し込み力を、点火スイッチ98に対して作用させ易くすることができる。
図6を参照し、点火操作前において、点火ボタン43が基本姿勢を保持する仕組みを説明する。左前パネル25の開口部33に沿って固定された支持枠80の内側に対し、点火ボタン43が背面側から挿入され、点火ボタン43の揺動軸51,52が、各縦枠部82の軸支穴821に軸支される。これにより、点火ボタン43が支持枠80の内側において揺動可能に支持される。点火ボタン43を基本姿勢に保持した状態では、点火ボタン43の重心は、揺動軸51,52よりも斜め前方に位置する。それ故、支持枠80に軸支された状態では、点火ボタン43は、揺動軸51,52を中心に自然に後方に揺動する。よって、仮にガス供給装置90を取り除いた状態では、上下方向に対して下側部分が後方に傾斜した姿勢で止まるようになっている。本実施形態では、点火ボタン43の後方には、ガス供給装置90が設けられ、点火ボタン43の当接部60の第一当接面61に対し、ガス供給装置90の点火スイッチ98の先端部が後方から当接する。それ故、点火ボタン43は、前方にやや押されるので、点火操作前の状態において、指掛け部452が略水平となる基本姿勢を保持できる。
図6を参照し、点火ボタン43のチャイルドロック機構の仕組みを説明する。例えば、点火操作前の状態で、ロック操作部132をロック位置(右方位置)に移動すると、スライド部材13はロック位置に移動される。すると、点火ボタン43の一対の被係止部54,55の後方に、スライド部材13の上面に設けられた一対の突起部133が夫々配置される。これにより、点火ボタン43を押し込んでも、点火ボタン43の一対の被係止部54,55が、スライド部材13の一対の突起部133に係止するので、点火ボタン43の押し込み操作を不能にできる。そして、点火ボタン43のロックを解除する為に、ロック操作部132を点火許容位置(左方位置)に移動すると、スライド部材13は点火許容位置に移動される。すると、点火ボタン43の被係止部54,55に係止していたスライド部材13の一対の突起部133は左方にずれるので、点火ボタン43は揺動可能となる。これにより、点火ボタン43の押し込み操作が可能となる。
図4〜図16を参照し、点火ボタン43による左コンロバーナ6の点火操作を説明する。本実施形態では、点火操作前、点火操作初期〜中期、点火操作末期〜点火操作完了時、点火操作後の4つの場面に分けて順に説明する。
[点火操作前]
図4〜図6に示すように、点火操作前では、点火ボタン43は基本姿勢に保持される。このとき、点火ボタン43は、開口部33を塞ぐようにして配置される(図4,図5参照)。指掛け部452は略水平な状態であり、グリル扉100の取手部101と同一位置に配置される。点火ボタン43の上部傾斜面451は、左前パネル25の上部傾斜面261と同一角度に傾斜して配置される。点火ボタン43の下部傾斜面453は、左前パネル25の上部傾斜面261の下部の傾斜形状と、湾曲部263の湾曲形状とに沿う様にして配置される。つまり、点火ボタン43の前面部45の形状が、左前パネル25の前面部26の形状に沿うようにして配置されるので、点火ボタン43は、左前パネル25の一部分として認識され、凹凸の無いシンプルなデザインとして、使用者に認識される。よって、左前パネル25の前面部26の美観を向上できる。なお、点火ボタン43の上面部48は、開口部33に埋没して隠れているので、使用者は、点火標識部481を視認できない。
[点火操作初期〜中期]
図6に示すように、使用者は、左コンロバーナ6を点火する為に、点火ボタン43の指掛け部452に指を掛ける。基本姿勢の指掛け部452は略水平な状態であるので、使用者は、指掛け部452のうち手前側である前端側に指を掛け、そのまま斜め下方向(押し込み方向P)に押し込む。すると、図9に示すように、点火ボタン43は、揺動軸51,52を中心に後方に揺動する。これに伴い、点火ボタン43の第一当接面61は、点火スイッチ98を後方に押し込む。点火操作開始時では、図6に示すように、第一当接面61は、点火スイッチ98に正対して当接しているので、点火ボタン43の押し込み力を、点火スイッチ98にダイレクトに伝達させ易い。点火スイッチ98が後方に押し込まれると、戻しバネ97の付勢力に抗して、スピンドル96が後方に徐々に押し込まれる。図9に示すように、点火ボタン43が後方に揺動すると、それまで開口部33の内側に隠れていた上面部48が前方に揺動するので、点火標識部481が徐々に露出される。
そして、図9,図10に示すように、指掛け部452は円弧状の軌跡を描きながら斜め下方に揺動するので、前端側が徐々に下方に傾く。これにより、指掛け部452の前端側に掛けていた使用者の指は、指掛け部452に沿って上方に滑り出す。さらに、点火ボタン43の押し込み操作が進むにつれて、押し込み方向Pは次第に斜め下方向から略水平方向に向けて変位することから、力を加える位置も、指掛け部452から上部傾斜面451側に向けて移動する。
他方、点火ボタン43の背面側においては、点火ボタン43が揺動するに従い、当接部60の点火スイッチ98との当接位置は、第一当接面61から第二当接面62に次第に変位する(図10参照)。そして、第二当接面62は、点火操作初期の状態から徐々に起き上がり、点火スイッチ98を後方にさらに押し込む。
[点火操作末期〜点火操作完了時]
図11〜図13に示すように、点火操作末期では、上面部48が前方にさらに揺動するので、点火標識部481がさらに露出される。そして、点火ボタン43の第二当接面62は、点火スイッチ98に正対しつつ点火スイッチ98を後方にさらに押し込む。そして、図13に示すように、スピンドル96がさらに後方に押し込まれ、スピンドル96に設けられたメイン弁によって吐出口102へのガス流路が開かれる。戻しバネ97は大きく圧縮されるため、ガス流路を開き切る為に必要な点火ボタン43の押し込み力は強くなる。ここで、本実施形態では、点火ボタン43と点火スイッチ98を側面から見た場合に、点火ボタン43の第二当接面62は、第一当接面61より下方前方に位置する。これにより、揺動軸51,52と、点火ボタン43の第二当接面62(点火スイッチ98との当接位置)との距離L2(図13参照)は、点火操作開始時における揺動軸51,52と第一当接面61(点火スイッチ98との当接位置)との距離L1(図6参照)よりも大きくなっている。よって、コンロ1では、点火操作開始時に比べ、点火操作を完了させるときの方が、大きなトルクを点火スイッチ98に対して作用させ易くなることから、従来に比べて軽い力で点火ボタン43による点火操作を行うことができる。
さらに、点火操作末期においては、指掛け部452は、点火初期に比べて大きく下方に傾いた状態となる。これにより、力を加える位置は、指掛け部452の境界部455まで移動するので、押し込み方向Pは水平方向に近い角度まで傾く。なお、境界部455とは、上部傾斜面451と指掛け部452の境界部分である。ここで、点火ボタン43及び点火スイッチ98を側面から見た場合において、境界部455と、点火スイッチ98と第二当接面62の当接位置とを結ぶ仮想直線Qは、点火ボタン43の押し込み方向Pに沿った方向に延びている。より具体的には、仮想直線Qは、点火ボタン43の押し込み方向Pと重なっている。このような位置関係によって、コンロ1では、使用者による点火ボタン43の押し込み力を、ダイレクトに点火スイッチ98に作用させることができるので、軽い操作感で点火スイッチ98を押し切ることができる。
さらに、図13に示すように、第二当接面62は、点火スイッチ98の押し込みを完了させる際に、押し込み方向Pにおいて、点火スイッチ98に対して正対した状態で当接している。これにより、使用者による押し込み力を、ダイレクトに点火スイッチ98に作用させることができる。よって、さらに軽い操作感で、点火スイッチ98を押し切ることができる。
点火スイッチ98が押し切られることによって、マグネット式安全弁99はガス流路を開き、左コンロバーナ6燃焼時の熱起電力によって開弁状態に保持される。これにより、バルブボディ95のガス流入口からガス流路内にガスが流れ、機体部921内のガス流路を介して吐出口102から吐出される。吐出口102から吐出されたガスは、左コンロバーナ6のスロート部6Aの流入口6Bに流入し、左コンロバーナ6に供給される。これと同時に、左コンロバーナ6の近傍に設けられたイグナイタ(図示略)が駆動することによって、左コンロバーナ6に点火される。このようにして左コンロバーナ6の点火操作が完了する。
[点火操作後]
点火操作が完了すると、使用者は、奥まで押し切った点火ボタン43から指を離す。このとき、点火操作における点火ボタン43の押し込みが解放されるので、プッシュプッシュ機構はメイン弁を開弁したまま、マグネット式安全弁99を閉弁可能状態とする所定位置まで前方に移動し、点火スイッチ98を係止する。これにより、左コンロバーナ6の燃焼状態が保持される。そして、図14〜図16に示すように、点火ボタン43は点火スイッチ98に押されて前方にやや揺動する。このとき、上面部48の後端側の一部が、開口部33の内側に隠れるが、点火標識部481は、開口部33よりも前方に露出された状態を維持するので、使用者は、点火標識部481を視認することによって、左コンロバーナ6が点火され、燃焼状態であることを容易に認識できる。
なお、左コンロバーナ6を消火する場合、使用者は点火ボタン43を再度押し込み、点火ボタン43から指を離すと、プッシュプッシュ機構による点火スイッチ98の係止が解除されるので、所定ストロークだけ前方にスピンドル96を戻してメイン弁を閉弁させる。これにより、左コンロバーナ6へのガスの供給が遮断され、左コンロバーナ6が消火される。そして、点火スイッチ98は前方に移動して元の位置に戻るので、点火ボタン43は揺動軸51,52を中心に前方に揺動し、指掛け部452が略水平となる基本姿勢に戻る(図4〜図6参照)。
図17を参照し、点火操作中における点火ボタン43の上面部48の角部の揺動軌道と、その視覚的効果について説明する。上記の通り、点火ボタン43は、点火操作により、揺動軸51,52を中心に後方に揺動し、開口部33に埋没していた点火標識部481が外部に露出されるように構成されている。ここで、点火ボタン43及び点火スイッチ98を側面から見た場合において、点火ボタン43が揺動軸51,52を中心に揺動する際に、点火標識部481が設けられる上面部48と上部傾斜面451との角部Eは、円弧状の軌道R上を移動する。軌道Rは、揺動軸51,52から角部Eまでの距離を半径とする円形状の軌道である。そのような軌道R上において、A点は、点火操作中、左前パネル25から最も前方に張り出すときの角部Eの位置である。本実施形態では、そのA点での接線方向Tは、左前パネル25の上部傾斜面261に沿うように延びている。これにより、角部Eは、左前パネル25の上部傾斜面261に沿った浅い角度で、徐々に前方に張り出すように揺動することができる。つまり、角部Eは、左前パネル25の上部傾斜面261に沿うようにして移動することができる。よって、コンロ1は、使用者に対して、角部Eが大きく前方に突出した印象を与えるのを防止できる。
さらに、点火ボタン43の揺動軸51,52は、指掛け部452よりも上方で、且つ上部傾斜面261よりも後方であって、上面部48よりも下方に配置されている。そして、点火スイッチ98が点火状態にあるときには、図16に示すように、点火ボタン43の境界部455が、左前パネル25の上部傾斜面261よりも筐体2側に埋没した位置にある。これにより、点火ボタン43を揺動させる際に、点火ボタン43は全体として左前パネル25の奥側に埋没するように移動するので、角部Eの突出した印象をさらに打ち消すことができる。よって、点火標識部481の突出感をさらに薄めることができる。
以上説明において、左コンロバーナ6が本発明の「バーナ」の一例である。左前パネル25が本発明の「前パネル」の一例である。点火ボタン43が本発明の「点火操作部」の一例である。左前パネル25の上部傾斜面261が本発明の「傾斜面」の一例である。境界部455が本発明の「境界部分」の一例である。
以上説明したように、本実施形態のコンロ1は、左コンロバーナ6にガスを供給するガス供給装置90を備え、該ガス供給装置90の点火スイッチ98を後方に押し込むことにより、ガス供給装置90内に設けられたメイン弁及びマグネット式安全弁を押し開き、左コンロバーナ6にガスを供給可能にする。コンロ1の左前パネル25の開口部33には支持枠80が固定され、該支持枠80には、点火ボタン43が揺動可能に軸支されている。点火ボタン43は、ガス供給装置90の前側に配置され、左右方向に軸心を有する揺動軸51,52によって、支持枠80に軸支されている。点火ボタン43は、点火操作により、揺動軸51,52周りに揺動され、ガス供給装置から前方に延びる点火スイッチ98を後方に押し込むことにより、ガス供給装置90を駆動させ、左コンロバーナ6を点火又は消火させる。
点火ボタン43は、上部傾斜面451と上面部48を備える。上部傾斜面451は、前面部45のうち少なくとも上部に設けられ、左前パネル25の上部傾斜面261に沿って傾斜するように形成されている。上面部48は、上部傾斜面451の上端と接続し、点火スイッチ98が、左コンロバーナ6の消火状態のときに左前パネル25の内側に埋没し、左コンロバーナ6が点火状態のときに左前パネル25の外側に露出するように形成されている。そのような上面部48には、左コンロバーナ6の点火状態を外部に示す為の点火標識部481が設けられている。そのようなコンロ1において、点火ボタン43が揺動する際に、上面部48と上部傾斜面451との間に形成される角部Eが描く軌道R上において、角部Eが最も左前パネル25から前方に張り出した位置での接線方向Tが、左前パネル25の上部傾斜面261に沿うように延びている。これにより角部Eは、左前パネル25の上部傾斜面261に沿った浅い角度で、徐々に前方に張り出すように揺動する。よって、使用者に対して、角部Eが大きく前方に突出した印象を与えるのを防止できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態のコンロ1はグリル付きテーブルコンロであるが、グリス無しのテーブルコンロであってもよい。また、ビルトインタイプのコンロであってもよい。また、コンロ1は、右コンロバーナ5と左コンロバーナ6の2つのコンロバーナを備えるが、コンロバーナの数は2つに限らず、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
上記実施形態では、左コンロバーナ6を点火させる点火ボタン43を一例として説明したが、その他の点火ボタン41,42においても同様の構造を備えてもよい。
上記実施形態の点火ボタン43の当接部60は肉抜き成形され、複数のリブ601で構成されているが、通常の射出成形で、内部が詰まった当接部であってもよい。その場合、第一当接面61及び第二当接面62は、平面で構成すればよい。
上記実施形態では、点火ボタン43に揺動軸51,52を設け、それらを左前パネル25に固定された支持枠80の一対の軸支穴821に軸支させているが、例えば、支持枠80側に揺動軸を設け、その揺動軸に対して、点火ボタンを軸支させてもよい。
上記実施形態では、図13に示すように、点火ボタン43の点火操作末期においては、境界部455と、点火スイッチ98と第二当接面62の当接位置とを結ぶ仮想直線Qは、点火ボタン43の押し込み方向Pと重なっているが、仮想直線Qは、少なくとも点火ボタン43の押し込み方向Pに沿った方向に延びていればよく、必ずしも重なっていなくてもよい。また、仮想直線Qは、押し込み方向Pに対して平行でなくてもよい。
1 コンロ
6 左コンロバーナ
43 点火ボタン
51,52 揺動軸
90 ガス供給装置
261 上部傾斜面
48 上面部
E 角部
T 接線方向
452 指掛け部
455 基端部
481 点火標識部