JP6783505B2 - 薄片化黒鉛、電極材料及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料 - Google Patents

薄片化黒鉛、電極材料及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂の物性を効果的に高め得る薄片化黒鉛、該薄片化黒鉛を含む電極材料及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料に関する。
従来、少ない添加量で樹脂の機械的物性等を効果的に改善し得るため、薄片化黒鉛が注目されている。このような薄片化黒鉛の製造方法の一例が下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の薄片化黒鉛の製造方法では、黒鉛を硝酸などの強酸性の水溶液中に浸漬し、加熱する。硝酸イオンなどの酸性イオンを黒鉛のグラフェン間にインターカレートさせる。この硝酸イオンがインターカレートされた黒鉛を加熱することにより、黒鉛を剥離し、グラフェン積層数がより少ない薄片化黒鉛を得ることができる。
また、下記非特許文献1では、ハマーズの方法により酸化薄片化黒鉛を製造する方法が開示されている。
特表2009−511415号公報
J.Chem.Soc.W.S.Hummers et.al.1958,80,1339
しかしながら、特許文献1や、非特許文献1の製造方法により得られた薄片化黒鉛は、酸化されている。従って、特許文献1や、非特許文献1の薄片化黒鉛は、樹脂中への分散性が十分ではなく、得られた複合材料の機械的強度を十分に高められないことがあった。
本発明の目的は、樹脂中での分散性に優れ、樹脂の機械的強度を効果的に高め得る、薄片化黒鉛を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記薄片化黒鉛を含む電極材料及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料を提供することにある。
本願の第1の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、40〜90ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σe)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σe/σb)が、0.05以下である。
本願の第2の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σg/σb)が、0.2以上、40以下の範囲にある。
本願の第3の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)に対する比(σm/σg)が、0.01以上、0.3以下の範囲にある。
本願の第4の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σm/σb)が、0.01以上、0.3以下の範囲にある。
本願の第5の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、かつ広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下の範囲にある。
本願の第5の発明に係る薄片化黒鉛は、好ましくは、最大距離を隔てて対向している両端間の最短距離をAとし、該両端間の道のりをBとしたときに、A/Bで表される屈曲度が、0.7以上、1.0以下である。
本願の第5の発明に係る薄片化黒鉛は、好ましくは、厚みが0.5μm以下であり、積層面方向における最大寸法が3.0μm以上、1000μm以下である。
本願の第6の発明に係る薄片化黒鉛は、化合物がグラフトされており、かつ温度25℃のN−メチルピロリドン中における沈降速度が、0.12mm/分以下である。
本願の第6の発明に係る薄片化黒鉛は、好ましくは、前記化合物の重量平均分子量が200以下である。
本願の第6の発明に係る薄片化黒鉛は、好ましくは、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物又はFriedel−Crafts反応性化合物である。
本願の第6の発明に係る薄片化黒鉛は、好ましくは、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%である。
以下、本願の第1〜第6の発明を総称して、本発明と称する場合があるものとする。
本発明に係る電極材料は、本発明に従って構成される薄片化黒鉛と、バインダー樹脂とを含む。
本発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、本発明に従って構成される薄片化黒鉛と、樹脂とを含む。好ましくは、前記樹脂が熱可塑性樹脂である。好ましくは、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンである。好ましくは、前記ポリオレフィンがポリプロピレンである。
本発明によれば、樹脂中での分散性に優れ、樹脂の機械的強度を効果的に高め得る薄片化黒鉛を提供することが可能となる。
実施例1で得られた薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRスペクトルを示す図である。 実施例1で得られた複合材料シートの倍率1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す図である。 比較例1で得られた炭素材料の固体高分解能13C−NMRスペクトルを示す図である。 比較例1で得られた複合材料シートの倍率1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す図である。 比較例2で得られた酸化薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRスペクトルを示す図である。 比較例2で得られた複合材料シートの倍率1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
(第1〜第4の発明)
本願の第1の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、40〜90ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σe)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σe/σb)が、0.05以下である。
本願の第2の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σg/σb)が、0.2以上、40以下の範囲にある。
本願の第3の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)に対する比(σm/σg)が、0.01以上、0.3以下の範囲にある。
本願の第4の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、かつ固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σm/σb)が、0.01以上、0.3以下の範囲にある。
本願の第1〜第4の発明によれば、樹脂中での分散性に優れ、樹脂の機械的強度を効果的に高め得る薄片化黒鉛を提供することが可能となる。
なお、第1〜第4の発明は、それぞれ、独立に用いてもよく、第1〜第4の発明のうち少なくとも2以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いる場合、樹脂中での分散性をより一層高めることができ、樹脂の機械的強度をより一層効果的に高めることが可能となる。
以下、この第1〜第4の発明の欄においては、第1〜第4の発明を総称して本発明と称する場合があるものとする。
薄片化黒鉛;
本明細書において、薄片化黒鉛とは、グラフェン積層構造を有する炭素材料を剥離処理して得られるものであり、元の炭素材料よりも薄いグラフェンシートの積層体をいう。
グラフェン積層構造を有する炭素材料としては、黒鉛などの複数のグラフェンが積層されている構造を有する炭素材料を用いることができる。また、黒鉛原料として黒鉛に酸処理を施した熱膨張性黒鉛や、その熱膨張性黒鉛を加熱膨張化させた膨張黒鉛を用いてもよい。なお、天然黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない、一次薄片化黒鉛を炭素材料として用いてもよい。
薄片化黒鉛におけるグラフェンシート積層数は、元の炭素材料より少なければよいが、通常、数層〜200層程度である。樹脂の引張弾性率等の機械的強度を効果的に高める観点から、積層数は、150層以下であることが好ましく、100層以下であることがより好ましい。
薄片化黒鉛は、薄いグラフェンシートが積層された構造を有する。よって、薄片化黒鉛のアスペクト比は比較的大きい。なお、本発明において薄片化黒鉛のアスペクト比とは、薄片化黒鉛の厚みに対する薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法の比をいう。
薄片化黒鉛のアスペクト比が低すぎると、上記積層面に交差する方向に加わった外力に対する補強効果が十分でないことがある。薄片化黒鉛のアスペクト比が高すぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果が望めないことがある。従って、薄片化黒鉛のアスペクト比の好ましい下限は50程度であり、好ましい上限は5000程度である。
本発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が、300m/g以下である。好ましくは、BET比表面積が、250m/g以下であり、200m/g以下であることがより好ましい。
このように、本発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂中での分散性が高いにも関わらず、BET比表面積が小さい。この理由については、以下のように説明される。
本発明に係る薄片化黒鉛は、後述する製造方法により製造されるため、グラフェン層間において、化合物がグラフトされている。そのため、BET比表面積測定時のように、空気中で乾燥させた状態では、グラフト分子の影響により凝集しやすい。その結果、BET比表面積の測定値が低くなる。
他方、樹脂中や溶媒中においては、グラフト分子によって樹脂や溶媒との親和性が高まる。その結果、BET比表面積の低い本願の薄片化黒鉛は、むしろ、樹脂中や溶媒中により一層分散されることとなる。
なお、本明細書においては、上記化合物がグラフトされている薄片化黒鉛も総称して薄片化黒鉛という場合があるものとする。
薄片化黒鉛にグラフトされる化合物としては、分子鎖の短い化合物が好ましい。分子鎖の短い化合物とは、重量平均分子量が、20〜2000の範囲にある化合物のことをいう。樹脂への分散性をより一層高める観点から、薄片化黒鉛にグラフトされる化合物の重量平均分子量は、40〜1000の範囲にあることが好ましく、70〜500の範囲にあることがより好ましい。
薄片化黒鉛にグラフトされる化合物としては、特に限定されず、例えば、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物又はシクロペンタジエニル錯体化合物等が挙げられる。なかでも、炭素材料との反応性が優れることから、Diels−Alder反応性化合物又はFriedel−Crafts反応性化合物であることが好ましい。
Diels−Alder反応性化合物としては、一般的なジエン、および親ジエン体であればいずれも用いることができ、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイミド等のマレイン酸類、テトラシアノエチレン、フマル酸ジメチル、アクロレイン等のアルケン類、アセチレンジカルボン酸ジメチル等のアルキン類、ベンゾキノン、アントラキノン、キノジメタン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等の環状ジエン、親ジエン体、アントラセン等のアセン類、フルフリルアルコール、フルフラール等のフラン類、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のブタジエン類、ベンザイン等のアライン類、ベンジリデンアニリン等のイミン類、スチレンやそれらの誘導体などが挙げられる。
Friedel−Crafts反応性化合物としては、一般的なハロゲン化物やカルボン酸ハロゲン化物、酸無水物等であればいずれも用いることができ、例えばN−クロロオクタンやN−オクタノイルクロリド等のアルキルハロゲンや脂肪族酸ハロゲン化物、ベンゾイルクロライド等の安息香酸ハロゲン化物、又は無水コハク酸や無水フタル酸、無水プロピオン酸等の酸無水物などを用いることができる。
ラジカル反応性の化合物としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、グリシジル基、チオール基、ハロゲン基など有する化合物を挙げることができる。
また、シクロペンタジエニル錯体化合物としては、フェロセン、ニッケロセン、チタノセン、ジルコノセンやそれらの誘導体が挙げられる。すなわち、薄片化黒鉛に他の化合物がグラフトする限りグラフトの形態は特に限定されず、シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた配位結合により化合物が薄片化黒鉛に結合されていてもよい。シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた結合である場合には、薄片化後の洗浄等により過剰の化合物を容易に除去することができ、好ましい。
このような薄片化黒鉛にグラフトされる化合物は、一度剥離したグラフェンの再積層化や凝集を妨げる効果があり、溶媒や樹脂分散性に優れる。従って、化合物のグラフト量は、得られた薄片化黒鉛100重量部に対し、0.5〜100重量部であることが好ましい。
上記グラフトされている化合物の検出は、NMRやIR、熱重量測定等の既知の分析法により検出することができる。検出方法としては、特定の分析法に限定されないが、簡便さと定量性の観点から通常、熱重量測定が用いられる。この熱重量測定では、化合物が薄片化黒鉛にグラフトしている場合、一般的にその分解温度が通常の分解温度よりも高温側で検出される。また、この熱分解物の構造解析の目的で、MS測定などを組み合わせてもよい。
また、本発明に係る薄片化黒鉛は、酸素含有率が8原子%未満である。従って、本発明の薄片化黒鉛は、樹脂中への分散性に優れており、また、導電性にも優れている。樹脂中への分散性や、導電性をより一層高める観点から、酸素含有率は、4原子%未満であることが好ましく、2原子%未満であることがより好ましい。
本発明の薄片化黒鉛は、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下であることが好ましい。この場合、樹脂の弾性率などの機械的強度をより一層効果的に高めることができる。なお、上記q及び半値幅は、後述の第5の発明の欄で詳細に説明するものとする。
本発明の薄片化黒鉛は、温度25℃のN−メチルピロリドン中における沈降速度が、0.12mm/分以下であることが好ましい。この場合、樹脂の剛性などの機械的強度をより一層高めることができる。なお、上記沈降速度は、後述の第6の発明の欄で詳細に説明するものとする。
固体高分解能13C−NMR;
薄片化黒鉛のようなグラフェン積層構造を有する炭素材料では、例えば、エッジ部に存在する炭素原子と、中央部に存在する炭素原子とで、周囲に存在する炭素原子の数が異なる。このような周囲に存在する炭素原子の数の相違を、固体高分解能13C−NMRにより検出することができる。
固体高分解能13C−NMRは、例えば、固体NMR装置(Bruker社製、商品名「ASX400」、9.4T、100.61MHz)を用い、直径4mmのプローブを回転速度10kHzのマジックアングルスピニングを行い測定することができる。
このような方法で薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRを測定すると、薄片化黒鉛の最外層の平面炭素のピーク(σb)は、13C−NMRスペクトルの125ppm付近に現れる。他方、薄片化黒鉛のエッジ部分の炭素や、構造欠陥等により平面性が損なわれた炭素のピーク(σe)は、13C−NMRスペクトルの40〜90ppm付近に現れる。よって、薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRを測定したときの、40〜90ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σe)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σe/σb)を求めると、薄片化黒鉛の平面性の情報を得ることができる。なお、本明細書において、125ppmのピークは、薄片化黒鉛の最外層の平面炭素のピーク(σb)を示す限り、125ppm近傍に存在するピークであってもよい。
第1の発明に係る薄片化黒鉛は、40〜90ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σe)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σe/σb)が、0.05以下である。従って、第1の発明に係る薄片化黒鉛の平面性は高い。
他方、σe/σbが、0.05より大きいと、平面性が損なわれる。すなわち、重なり合う複数のグラフェンシートがランダムな曲面状の構造を採るため、グラフェンシート同士が絡みあうこととなる。その結果、薄片化黒鉛の樹脂中における分散性が低下する。
また、より一層樹脂への分散性を高める観点から、40〜90ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σe)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σe/σb)は、0.02以下であることが好ましい。
また、薄片化黒鉛の内部に存在する平面炭素のピーク(σg)は、13C−NMRスペクトルの135ppm付近に現れる。よって、薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRを測定したときの、135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σg/σb)を求めると、薄片化黒鉛の厚み方向の情報を得ることができる。なお、本明細書において、135ppmのピークは、薄片化黒鉛の内部に存在する平面炭素のピーク(σg)を示す限り、135ppm近傍に存在するピークであってもよい。
第2の発明に係る薄片化黒鉛は、135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σg/σb)が、0.2以上、40以下の範囲にあり小さい。すなわち、薄片化黒鉛の厚みが薄い。従って、第2の発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂中への分散性に優れている。
また、より一層樹脂への分散性を高める観点から、135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σg/σb)は、0.3以上、30以下の範囲にあることが好ましく、0.4以上、20以下の範囲にあることがより好ましい。
さらに、化合物がグラフトしている炭素のピーク(σm)は、13C−NMRスペクトルの160〜190ppm付近に現れる。よって、薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRを測定したときの、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)に対する比(σm/σg)を求めると、薄片化黒鉛にグラフトされている化合物の情報を得ることができる。
第3の発明に係る薄片化黒鉛は、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)に対する比(σm/σg)が、0.01以上、0.3以下の範囲にある。すなわち、第3の発明に係る薄片化黒鉛には、化合物がグラフトされている。そのため、第3の発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂への分散性に優れている。
また、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σm/σb)を求めることによっても、薄片化黒鉛にグラフトされている化合物の情報を得ることができる。
第4の発明に係る薄片化黒鉛は、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σm/σb)も、0.01以上、0.3以下の範囲にある。すなわち、第4の発明に係る薄片化黒鉛には、化合物がグラフトされている。そのため、第4の発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂への分散性に優れている。
また、より一層樹脂への分散性を高める観点から、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)に対する比(σm/σg)又は160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σm/σb)は、0.02以上、0.2以下の範囲にあることが好ましく、0.02以上、0.1以下の範囲にあることがより好ましい。
なお、第1〜第4の発明に係る薄片化黒鉛は、例えば、後述の製造方法の欄で説明する製造方法により製造することができる。
(第5の発明)
第5の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下である。従って、第5の発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂中での分散性に優れており、樹脂の弾性率などの機械的強度を効果的に高めることができる。
薄片化黒鉛;
本明細書において、薄片化黒鉛とは、グラフェン積層構造を有する炭素材料を剥離処理して得られるものであり、元の炭素材料よりも薄いグラフェンシートの積層体をいう。
グラフェン積層構造を有する炭素材料としては、黒鉛などの複数のグラフェンが積層されている構造を有する炭素材料を用いることができる。また、黒鉛原料として黒鉛に酸処理を施した熱膨張性黒鉛や、その熱膨張性黒鉛を加熱膨張化させた膨張黒鉛を用いてもよい。なお、天然黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない、一次薄片化黒鉛を炭素材料として用いてもよい。
薄片化黒鉛におけるグラフェンシート積層数は、元の炭素材料より少なければよいが、通常、数層〜数千層程度である。樹脂の引張弾性率等の機械的強度を効果的に高める観点から、積層数は、500層以下であることが好ましく、300層以下であることがより好ましい。
上記のように、薄片化黒鉛は、薄いグラフェンシートが積層された構造を有する。特に、第5の発明においては、薄片化黒鉛の厚みが、0.5μm以下であることが好ましい。薄片化黒鉛の厚みが厚すぎると、十分に樹脂の機械的強度を高められないことがある。
また、薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法は、3.0μm以上、1000μm以下であることが好ましい。積層面方向の最大寸法が小さすぎると、十分に樹脂の機械的強度を高められないことがある。他方、積層面方向の最大寸法が大きすぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果が望めないことがある。
薄片化黒鉛の厚みに対する薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法の比は、アスペクト比で表される。薄片化黒鉛のアスペクト比が低すぎると、上記積層面に交差する方向に加わった外力に対する補強効果が十分でないことがある。薄片化黒鉛のアスペクト比が高すぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果が望めないことがある。従って、薄片化黒鉛のアスペクト比の好ましい下限は5程度であり、好ましい上限は100程度である。
薄片化黒鉛は、剛直であり、屈曲し難い。特に、第5の発明においては、最大距離を隔てて対向している両端間の最短距離をAとし、該両端間の道のりをBとしたときに、A/Bで表される屈曲度が、0.7以上、1.0以下であることが好ましい。薄片化黒鉛の屈曲度が上記範囲内にある場合、少量の薄片化黒鉛の添加によっても、樹脂の機械的強度をより一層効果的に高めることができる。
第5の発明に係る薄片化黒鉛は、BET比表面積が、300m/g以下である。好ましくは、BET比表面積が、200m/g以下であり、さらに100m/g以下であることがより好ましい。
このように、第5の発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂中での分散性が高いにも関わらず、BET比表面積が小さい。この理由については、以下のように説明される。
第5の発明に係る薄片化黒鉛は、後述する製造方法により製造されるため、グラフェン層間において、化合物がグラフトされている。従って、樹脂中や溶媒中においては、高い分散性を示す。他方、BET比表面積測定時のように、空気中で乾燥させた状態では、グラフト分子の影響により凝集しやすい。そのため、第5の発明に係る薄片化黒鉛は、樹脂中や溶媒中での分散性が高いにも関わらず、BET比表面積の測定値が低い。
また、このように、第5の発明に係る薄片化黒鉛は、グラフェン層間において、化合物がグラフトされているため、樹脂中や溶媒中においては、グラフェン層間に樹脂や溶媒が取り込まれる。従って、BET比表面積の低い第5の発明に係る薄片化黒鉛は、むしろ、樹脂中や溶媒中により一層分散されることとなる。
なお、本明細書においては、上記化合物がグラフトされている薄片化黒鉛も総称して薄片化黒鉛という場合があるものとする。
薄片化黒鉛にグラフトされる化合物としては、分子鎖の短い化合物が好ましい。分子鎖の短い化合物とは、分子量が、50〜1000の範囲にある化合物のことをいう。樹脂への分散性をより一層高める観点から、薄片化黒鉛にグラフトされる化合物の分子量は、90〜500の範囲にあることが好ましく、90〜200の範囲にあることがより好ましい。
薄片化黒鉛にグラフトされる化合物としては、特に限定されず、例えば、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物又はシクロペンタジエニル錯体化合物等が挙げられる。なかでも、分子鎖のより一層短い化合物がグラフトされることから、Diels−Alder反応性化合物又はFriedel−Crafts反応性化合物であることが好ましい。
Diels−Alder反応性化合物としては、一般的なジエン、および親ジエン体であればいずれも用いることができ、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイミド等のマレイン酸類、テトラシアノエチレン、フマル酸ジメチル、アクロレイン等のアルケン類、アセチレンジカルボン酸ジメチル等のアルキン類、ベンゾキノン、アントラキノン、キノジメタン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等の環状ジエン、親ジエン体、アントラセン等のアセン類、フルフリルアルコール、フルフラール等のフラン類、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のブタジエン類、ベンザイン等のアライン類、ベンジリデンアニリン等のイミン類、スチレンやそれらの誘導体などが挙げられる。
Friedel−Crafts反応性化合物としては、一般的なハロゲン化物やカルボン酸ハロゲン化物、酸無水物等であればいずれも用いることができ、例えばN−クロロオクタンやN−オクタノイルクロリド等のアルキルハロゲンや脂肪族酸ハロゲン化物、ベンゾイルクロライド等の安息香酸ハロゲン化物、又は無水コハク酸や無水フタル酸、無水プロピオン酸等の酸無水物などを用いることができる。
ラジカル反応性の化合物としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、グリシジル基、チオール基、ハロゲン基など有する化合物を挙げることができる。
また、シクロペンタジエニル錯体化合物としては、フェロセン、ニッケロセン、チタノセン、ジルコノセンやそれらの誘導体が挙げられる。すなわち、薄片化黒鉛に他の化合物がグラフトする限りグラフトの形態は特に限定されず、シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた配位結合により化合物が薄片化黒鉛に結合されていてもよい。シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた結合である場合には、薄片化後の洗浄等により化合物を除去することができ、好ましい。
このような薄片化黒鉛にグラフトされる化合物は、一度剥離したグラフェンの再積層化や凝集を妨げる効果があり、溶媒や樹脂分散性に優れる。従って、化合物のグラフト量は、得られた薄片化黒鉛100重量部に対し、0.5〜100重量部であることが好ましい。
上記グラフトされている化合物の検出は、NMRやIR、熱重量測定等の既知の分析法により検出することができる。検出方法としては、特定の分析法に限定されないが、簡便さと定量性の観点から通常、熱重量測定が用いられる。この熱重量測定では、化合物が薄片化黒鉛にグラフトしている場合、一般的にその分解温度が通常の分解温度よりも高温側で検出される。また、この熱分解物の構造解析の目的で、MS測定などを組み合わせてもよい。
第5の発明の薄片化黒鉛は、温度25℃のN−メチルピロリドン中における沈降速度が、0.12mm/分以下であることが好ましい。この場合、樹脂の剛性などの機械的強度をより一層高めることができる。なお、上記沈降速度は、後述の第6の発明の欄で詳細に説明するものとする。
半値幅;
第5の発明に係る薄片化黒鉛は、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下の範囲内にある。
広角X線散乱プロファイルにおけるqは、散乱ベクトルのことをいい、以下の式により求められる。
q=(4π/λ)sinθまたはq=2π/d
(λ:X線の波長、d:面間隔)
薄片化黒鉛を含むグラフェン積層構造を有する炭素材料の面間隔は、通常、d=0.335nmとされている。従って、第5の発明においては、面間隔がd=0.33nm〜0.37nm、すなわちq=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅を測定することにより、薄片化黒鉛の結晶層の厚みの指標とした。
より詳細には、上記のようにして求められるピークの半価幅が小さい場合、結晶層の厚みが大きくなる。この場合、樹脂に接触する薄片化黒鉛の表面積が小さくなってしまうため、樹脂の拘束効果が下がり、十分に樹脂の機械的強度を高められないことがある。他方、ピークの半値幅が大きすぎると、結晶層が薄くなりすぎて、フィラーとしての剛性が下がる。従って、樹脂の強度を効果的に高めることができない。
従って、第5の発明においては、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.05以上、0.3以下の範囲内にある。ピークの半値幅を上記範囲内とすることで、薄片化黒鉛の比表面積が高められている。すなわち、フィラーとして用いたときに樹脂の機械的強度を効果的に高めることができる。
樹脂の機械的強度を効果的に高める観点から、半値幅は、0.1以上、0.3以下の範囲内にあることがより好ましく、0.1以上、0.25以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
なお、広角X線散乱プロファイルでは、強力なX線源を用いた方がピーク形状を明瞭にすることができる。強力なX線源としては、シンクロトロン放射光を用いることができる。
第5の発明に係る薄片化黒鉛は、例えば、後述の製造方法の欄で説明する製造方法により製造することができる。
(第6の発明)
第6の発明に係る薄片化黒鉛は、化合物がグラフトされており、かつ温度25℃のN−メチルピロリドン中における沈降速度が、0.12mm/分以下である。従って、樹脂の剛性などの機械的強度を高めることができる。
薄片化黒鉛;
本明細書において、薄片化黒鉛とは、グラフェン積層構造を有する炭素材料を剥離処理して得られるものであり、元の炭素材料よりも薄いグラフェンシートの積層体をいう。
グラフェン積層構造を有する炭素材料としては、黒鉛などの複数のグラフェンが積層されている構造を有する炭素材料を用いることができる。また、黒鉛原料として黒鉛に酸処理を施した熱膨張性黒鉛や、その熱膨張性黒鉛を加熱膨張化させた膨張黒鉛を用いてもよい。なお、天然黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない、一次薄片化黒鉛を炭素材料として用いてもよい。
薄片化黒鉛におけるグラフェンシート積層数は、元の炭素材料より少なければよいが、通常、数層〜200層程度である。樹脂の引張弾性率等の機械的強度を効果的に高める観点から、積層数は、500層以下であることが好ましく、300層以下であることがより好ましい。
上記のように、薄片化黒鉛は、薄いグラフェンシートが積層された構造を有する。従って、薄片化黒鉛のアスペクト比は、比較的大きい。なお、本明細書において、アスペクト比とは、薄片化黒鉛の厚みに対する薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法の比のことをいう。
薄片化黒鉛のアスペクト比が低すぎると、上記積層面に交差する方向に加わった外力に対する補強効果が十分でないことがある。薄片化黒鉛のアスペクト比が高すぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果が望めないことがある。従って、薄片化黒鉛のアスペクト比の好ましい下限は5程度であり、好ましい上限は100程度である。
上述したように、第6の発明に係る薄片化黒鉛には、化合物がグラフトされている。薄片化黒鉛にグラフトされる化合物としては、分子鎖の短い化合物が好ましい。本明細書においては、上記化合物がグラフトされている薄片化黒鉛も総称して薄片化黒鉛という場合があるものとする。また、分子鎖の短い化合物とは、重量平均分子量が、20〜2000の範囲にある化合物のことをいう。薄片化黒鉛にグラフトされている化合物の重量平均分子量は、200以下であることが好ましい。樹脂への分散性をより一層高める観点から、薄片化黒鉛にグラフトされている化合物の重量平均分子量は、20〜180の範囲にあることがより好ましく、60〜140の範囲にあることがさらに好ましい。
薄片化黒鉛にグラフトされている化合物の分子量は、例えば、H−NMRや、13C−NMRなどの装置により測定することができる。
薄片化黒鉛にグラフトされる化合物としては、特に限定されず、例えば、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物又はシクロペンタジエニル錯体化合物等が挙げられる。なかでも、より一層分子量の小さい化合物がグラフトされることから、Diels−Alder反応性化合物又はFriedel−Crafts反応性化合物であることが好ましい。
Diels−Alder反応性化合物としては、一般的なジエン、および親ジエン体であればいずれも用いることができ、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイミド等のマレイン酸類、テトラシアノエチレン、フマル酸ジメチル、アクロレイン等のアルケン類、アセチレンジカルボン酸ジメチル等のアルキン類、ベンゾキノン、アントラキノン、キノジメタン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等の環状ジエン、親ジエン体、アントラセン等のアセン類、フルフリルアルコール、フルフラール等のフラン類、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のブタジエン類、ベンザイン等のアライン類、ベンジリデンアニリン等のイミン類、スチレンやそれらの誘導体などが挙げられる。
Friedel−Crafts反応性化合物としては、一般的なハロゲン化物やカルボン酸ハロゲン化物、酸無水物等であればいずれも用いることができ、例えばN−クロロオクタンやN−オクタノイルクロリド等のアルキルハロゲンや脂肪族酸ハロゲン化物、ベンゾイルクロライド等の安息香酸ハロゲン化物、又は無水コハク酸や無水フタル酸、無水プロピオン酸等の酸無水物などを用いることができる。
ラジカル反応性の化合物としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、グリシジル基、チオール基、ハロゲン基など有する化合物を挙げることができる。
また、シクロペンタジエニル錯体化合物としては、フェロセン、ニッケロセン、チタノセン、ジルコノセンやそれらの誘導体が挙げられる。すなわち、薄片化黒鉛に他の化合物がグラフトする限りグラフトの形態は特に限定されず、シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた配位結合により化合物が薄片化黒鉛に結合されていてもよい。シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた結合である場合には、薄片化後の洗浄等により化合物を除去することができ、好ましい。
薄片化黒鉛にグラフトされている化合物は、一度剥離したグラフェンの再積層化や凝集を妨げる効果があり、溶媒や樹脂分散性に優れる。従って、化合物のグラフト化率は、0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましく、2〜10重量%であることがさらに好ましい。
なお、薄片化黒鉛にグラフトされている化合物のグラフト化率は、以下のようにして求めることができる。
空気雰囲気下、30〜600℃の温度範囲において、10℃/分の昇温速度により熱重量測定(TGA測定)を行い、500℃に昇温されるまでに分解した分解物の重量をA、500℃まで昇温しても分解しなかった未分解物の重量をBとして、下記の式により求められる。
グラフト化率(重量%)=A/B×100
また、グラフトされている化合物の検出は、NMRやIR、熱重量測定等の既知の分析法により検出することができる。検出方法としては、特定の分析法に限定されないが、簡便さと定量性の観点から通常、熱重量測定が用いられる。この熱重量測定では、化合物が薄片化黒鉛にグラフトしている場合、一般的にその分解温度が通常の分解温度よりも高温側で検出される。また、この熱分解物の構造解析の目的で、MS測定などを組み合わせてもよい。
第6の発明の薄片化黒鉛は、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下であることが好ましい。この場合、樹脂の弾性率などの機械的強度をより一層効果的に高めることができる。なお、上記q及び半値幅は、上述の第5の発明の欄で詳細に説明するものとする。
沈降速度;
第6の発明において、沈降速度は以下の方法により測定される。
まず、30mlのフルフリルアルコールを入れた直径30mm、高さ60mmの円柱状の容器を用意する。次に、用意したフルフリルアルコール中に、0.5gのサンプルを投入する。投入後、液体の温度を25℃に維持して60分静置する。静置後、沈殿物の高さを測定し、下記式を用いて沈降速度を測定した。
沈降速度(mm/分)=沈殿物の高さ(mm)/時間(分)
第6の発明に係る薄片化黒鉛は、このようにして求めた液体中における沈降速度が、0.12mm/分以下と遅い。従って、樹脂の剛性を効果的に高めることができる。この理由については、以下のように説明される。
通常、薄片化黒鉛に化合物がグラフトされる場合、グラフェン端部に化合物がグラフトされる。これに対して、第6の発明に係る薄片化黒鉛においては、グラフェン層間において化合物がグラフトされている。そのため、液体中においては、薄片化黒鉛のグラフェン層間に液体が浸入し、薄片化黒鉛が膨潤する。その結果、薄片化黒鉛が液体中に分散しやすくなり、沈降速度が低下することとなる。
また、第6の発明に係る薄片化黒鉛においては、上記のようにグラフェン層間において化合物がグラフトされているため、樹脂中に添加すると、樹脂もグラフェン層間に浸入する。その結果、樹脂中における薄片化黒鉛の分散性が高くなり、樹脂の剛性が高められる。また、グラフェン層間において、樹脂は拘束され易い。これにより、樹脂の剛性がより一層効果的に高められることとなる。
このように、第6の発明の薄片化黒鉛では、液体中における沈降速度が、0.12mm/分以下と遅いため、すなわちグラフェン層間において化合物がグラフトされているため、樹脂の剛性を効果的に高めることができる。
さらに、第6の発明においては、液体中における沈降速度が、0.1mm/分以下であることが好ましく、0.08mm/分以下であることがより好ましく、0.05mm/分以下であることがさらに好ましい。その場合においては、より一層樹脂の剛性を高めることができる。
なお、第6の発明に係る薄片化黒鉛は、例えば、後述の製造方法の欄で説明する製造方法により製造することができる。
上記第1〜第6の発明は、それぞれ、独立に用いてもよく、第1〜第6の発明のうち少なくとも2以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、第5の発明や第6の発明に、第1〜第4の発明の構成を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いる場合、樹脂中での分散性をより一層高めることができ、樹脂の機械的強度をより一層効果的に高めることが可能となる。
以下、第1〜第6の発明(以下、第1〜第6の発明を、本発明と総称するものとする)に係る薄片化黒鉛の製造方法、電極材料及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料についてさらに詳細に説明する。
(薄片化黒鉛の製造方法)
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法は、特に限定されない。例えば、以下の方法により、製造することができる。
まず、上述したグラフェン積層構造を有する炭素材料を、20℃における表面張力が50mN/m以下である液状物を含む液体に浸漬させる。しかる後、電磁波を照射し炭素材料を液体の沸点より低い温度で加熱する。それによって、炭素材料に接触している液体を気化させることなく、炭素材料を薄片化し、薄片化黒鉛を得る。上記炭素材料の薄片化は、炭素材料に化合物を化学結合させることにより、より一層確実に行うことができる。
グラフェン積層構造を有する炭素材料としては、黒鉛などの複数のグラフェンが積層されている構造を有する炭素材料を用いることができる。また、黒鉛原料として黒鉛に酸処理を施した熱膨張性黒鉛や、その熱膨張性黒鉛を加熱膨張化させた膨張黒鉛を用いてもよい。なお、天然黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない、一次薄片化黒鉛を炭素材料として用いてもよい。
本明細書において、液体とは、20℃における表面張力が50mN/m以下である液状物、あるいは少なくとも一種の20℃における表面張力が50mN/m以下である液状物を含む液状物の混合物のことをいう。上記液状物の混合物については、混合物そのものの表面張力が50mN/m以下であってもよいし、20℃における表面張力が50mN/m以下である少なくとも一種の液状物を含んでいれば、混合物そのものの表面張力は50mN/m以下でなくともよい。
例えば、炭素材料を浸漬させる液体として、炭素材料に化学結合し得る化合物を用いることができる。また、溶媒と炭素材料に結合し得る化合物の混合物を用いてもよい。
炭素材料にグラフトさせる(化学結合させる)化合物としては、特に限定されず、例えば、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物又はシクロペンタジエニル錯体化合物等が挙げられる。なかでも、分子鎖のより短い化合物がグラフトされることから、Diels−Alder反応性化合物又はFriedel−Crafts反応性化合物であることが好ましい。
Diels−Alder反応性化合物としては、一般的なジエン、および親ジエン体であればいずれも用いることができ、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイミド等のマレイン酸類、テトラシアノエチレン、フマル酸ジメチル、アクロレイン等のアルケン類、アセチレンジカルボン酸ジメチル等のアルキン類、ベンゾキノン、アントラキノン、キノジメタン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等の環状ジエン、親ジエン体、アントラセン等のアセン類、フルフリルアルコール、フルフラール等のフラン類、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のブタジエン類、ベンザイン等のアライン類、ベンジリデンアニリン等のイミン類、スチレンやそれらの誘導体などが挙げられる。
Friedel−Crafts反応性化合物としては、一般的なハロゲン化物やカルボン酸ハロゲン化物、酸無水物等であればいずれも用いることができ、例えばN−クロロオクタンやN−オクタノイルクロリド等のアルキルハロゲンや脂肪族酸ハロゲン化物、ベンゾイルクロライド等の安息香酸ハロゲン化物、又は無水コハク酸や無水フタル酸、無水プロピオン酸等の酸無水物などを用いることができる。
ラジカル反応性の化合物としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、グリシジル基、チオール基、ハロゲン基など有する化合物を挙げることができる。
また、シクロペンタジエニル錯体化合物としては、フェロセン、ニッケロセン、チタノセン、ジルコノセンやそれらの誘導体が挙げられる。すなわち、薄片化黒鉛に他の化合物がグラフトする限り化学結合の形態は特に限定されず、シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた配位結合により化合物が薄片化黒鉛に結合されていてもよい。シクロペンタジエニル錯体化合物を用いた化学結合である場合には、薄片化後の洗浄等により化合物を除去することができ、好ましい。
上記溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数8以下のアルコール類、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、N−メチルピロリドン及びN,N−ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。好ましくは、炭素数8以下のアルコール類、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、N−メチルピロリドン及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる群から選択された少なくとも1種を含む。溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。また、上記好ましい溶媒に加えて、さらに水等の他の溶媒を加えて用いてもよい。
上述したように本製造方法においては、液体に浸漬されている炭素材料に電磁波を照射する。この場合の電磁波としては、特に限定されず、5kHz〜100GHz程度の波長の電磁波を用いることができる。従って、電磁波はマイクロ波であってもよい。
上記電磁波を照射する装置については、電磁波を照射し得る限り適宜の電磁波発生装置を用いることができる。また、市販の調理用電子レンジを電磁波照射装置として用いてもよい。その場合には、調理用電子レンジ内に上記液体に浸漬されている炭素材料を配置し、電磁波を照射すればよい。
より一層効率よくマイクロ波などの電磁波を照射するために、例えば、フロー式のリアクターと、電磁波を発生する電磁波発生器と、電磁波を伝送する導波管とを備える装置を用いてもよい。上記フロー式のリアクターとしては、直列に連続した複数の室を有する横型のリアクターを使用できる。
上記フロー式のリアクター内では、炭素材料と、液体との混合物が、上方に空間を残した状態で搬送される。また、電磁波は、上記導波管により上記空間に伝送される。このようなフロー式のリアクターを用いた場合、薄片化黒鉛を連続的に生産することができる。
また、上記フロー式のリアクターは、仕切り板によって複数の室に区切られていてもよく、リアクター内の内容物を撹拌するための撹拌手段を有していてもよい。導波管は、仕切り板の位置に設けられていてもよい。このような照射装置を用いた場合には、より一層確実に炭素材料に電磁波を照射することができる。
電磁波の照射量については、炭素材料を加熱して薄片化黒鉛を得ることができる限り、特に限定されない。
電磁波の照射により、液体に浸漬されている炭素材料が加熱される。炭素材料の加熱は、液体の沸点より低い温度で行われる。そのため、液体を気化させることなく、炭素材料に化合物が効率よくグラフトする。これにより、グラフェン間のπ結合が弱まり、化合物がグラフェン積層構造の端部だけでなく、内部にまでグラフトされることとなる。それによって、グラフェン間が剥離し、炭素材料が薄片化するものと考えられる。
電磁波の照射以外の加熱方法としては、ヒーター等を用いた全体加熱も可能であるが、この場合は、炭素材料の薄片化が十分に進行しない。この理由としては、以下のように考えられる。
ヒーター等により全体加熱する場合は副反応が生じやすく、炭素材料に対する化合物の結合反応の効率も低い。そのため、化合物のグラフトが炭素材料の端部のみで生じ、内部へと進行しないものと考えられる。他方、電磁波の照射による加熱は、炭素材料を直接加熱することから、局所的に炭素材料表面が高温となり、化合物の結合が生じやすくなるものと考えられる。
電磁波照射による加熱の昇温速度については、特に限定されないが、昇温速度が速いほど炭素材料の局所加熱が生じやすいことから、薄片化黒鉛を得やすい。従って、電磁波の照射により加熱される炭素材料の昇温速度は直接測定することが困難であるが、炭素材料が浸漬されている液体の温度としての昇温速度は、15℃/分以上が好ましく、40℃/分以上がより好ましく、さらに好ましくは100℃/分以上であり、特に好ましくは500℃/分以上である。もっとも、昇温速度が速すぎると、電磁波の照射量が膨大になるため、炭素材料が浸漬されている液体の温度としての昇温速度は、1000℃/分以下であることが好ましく、500℃/分以下であることがより好ましい。
本製造方法においては、電磁波の照射による加熱以外にも、ヒーター等による加熱を併用してもよい。例えば、ヒーター等を用いて液体の沸点より低い温度に予備加熱しておくことで、電磁波の照射量を低減できる。これによって、電磁波エネルギーや装置の負荷を下げることができる。
なお、本製造方法においては、上記のように電磁波の照射により炭素材料を加熱する工程において、炭素材料に接触している液体を気化させることにより薄片化黒鉛を得る。従って、詳細には、薄片化黒鉛が液体中に分散している薄片化黒鉛分散液が得られる。この薄片化黒鉛分散液から液体を除去することにより、薄片化黒鉛を回収できる。
薄片化黒鉛分散液からの薄片化黒鉛の回収に当たっては、ろ過、遠心分離、重力沈降、溶媒分離、凝集剤又は吸着剤等の既知の手法を用いることができる。その場合は、未反応化合物等の不純物を溶媒等を用いて分離することが望ましい。
上記のように、本製造方法では、酸化過程を経ず薄片化黒鉛が製造される。よって、得られた薄片化黒鉛は、導電性に優れている。
(薄片化黒鉛−樹脂複合材料)
第1〜第4の発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、それぞれ、上述した第1〜第4の発明に係る薄片化黒鉛と、樹脂とを含む。上記薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と、樹脂とを混合することにより得られる。薄片化黒鉛は、上述したように、BET比表面積、酸素含有率及び固体高分解能13C−NMRにおけるピーク強度の積算値の比が特定の範囲にあるため、樹脂中への分散性に優れている。従って、第1〜第4の発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は弾性率等の機械的強度や、導電性が高められている。
第5の発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、上述した第5の発明に係る薄片化黒鉛と、樹脂とを含む。上記薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と、樹脂とを混合することにより得られる。
上記薄片化黒鉛は、BET比表面積が300m/g以下であり、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下であるため、樹脂の拘束効果に優れている。従って、第5の発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、弾性率等の機械的強度が飛躍的に高められている。
第6の発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、上述した第6の発明に係る薄片化黒鉛と、樹脂とを含む。上記薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と、樹脂とを混合することにより得られる。
上記薄片化黒鉛は、化合物がグラフトされており、温度25℃のN−メチルピロリドン中における沈降速度が、0.12mm/分以下である。従って、第6の発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、剛性が効果的に高められている。また、グラフトされている化合物の重量平均分子量が、200以下の薄片化黒鉛が混合されている場合、樹脂中に薄片化黒鉛がより一層分散され、得られた樹脂複合材料では、より一層剛性が高められている。
また、本発明においては、炭素材料にグラフトさせる化合物として、所望の樹脂と親和性の高い化合物を用いることで、樹脂中での薄片化黒鉛の分散性をより一層高めることができる。従って、樹脂としては、特に限定されず、様々な公知の樹脂を用いることができる。樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
なかでも、樹脂として、熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。熱可塑性樹脂を用いた薄片化黒鉛−樹脂複合材料では、加熱下により様々な成形方法を用いて、容易に様々な成形品とすることができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリジメチルシロキサン又はこれらの共重合体などが挙げられる。
好ましくは、樹脂としてポリオレフィンを用いることができる。ポリオレフィンは安価であり、加熱下の成形が容易である。そのため、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いることにより、薄片化黒鉛−樹脂複合材料のコストを低減でき、かつ薄片化黒鉛−樹脂複合材料をより一層容易に成形することができる。
上記ポリオレフィンとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ブテン単独重合体、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの単独重合体又は共重合体などが挙げられる。好ましくは、より安価であるポリプロピレンが用いられる。なお、ポリオレフィンは、マレイン酸などで変性されたものであってもよい。
薄片化黒鉛と樹脂との配合割合は特に限定されないが、好ましくは、樹脂100質量部に対し、薄片化黒鉛が、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。配合割合を上記下限以上及び上記上限以下とすることにより、本発明の薄片化黒鉛−樹脂複合材料の引張弾性率等の機械的強度を効果的に高めることができる。
薄片化黒鉛の配合割合が少なすぎると、薄片化黒鉛−樹脂複合材料の機械的強度を十分に高められないことがある。薄片化黒鉛の配合割合が多すぎると、薄片化黒鉛−樹脂複合材料が脆くなり、割れやすくなることがある。
本発明の薄片化黒鉛−樹脂複合材料においては、本発明の目的を阻害しない範囲で、様々な添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、フェノール系、リン系、アミン系もしくはイオウ系等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系等の紫外線吸収剤;金属害防止剤;ヘキサブロモビフェニルエーテルもしくはデカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン化難燃剤;ポリリン酸アンモニウムもしくはトリメチルフォスフェート等の難燃剤;各種充填剤;帯電防止剤;安定剤;顔料等を挙げることができる。
薄片化黒鉛と樹脂とを混合する方法としては、特に限定されないが、例えば、プラストミルなどの二軸スクリュー混練機、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールなどの混練装置を用いて、加熱下において混練する方法などが挙げられる。これらの中でも、プラストミルを用いて溶融混練する方法が挙げられる。
さらに、本発明により得られる薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、適宜の賦型方法を用いて様々な形状とすることができる。このような賦型方法としては、プレス加工、射出成型、または押出成型などの成型方法を好適に用いることができる。さらに、溶融塗工方法により賦型してもよい。上記のような賦型方法を用い、シート状などの所望の形状とすることができる。
(電極材料)
本発明に係る電極材料は、上述した薄片化黒鉛と、バインダー樹脂とを含む。上記電極材料は、薄片化黒鉛と、バインダー樹脂とを混合することによって得られる。本発明の薄片化黒鉛は、酸化過程を経ずに製造されるため、該薄片化黒鉛がバインダー樹脂中に分散された電極材料は、導電性に優れている。
従って、本発明の電極材料は、リチウムイオン二次電池用の正極助材、負極材、キャパシタ用電極材等の用途に好適に用いることができる。
バインダー樹脂としては、特に限定されず、水系バインダー樹脂を用いてもよく、非水系バインダー樹脂を用いてもよい。水系バインダー樹脂としては、上記スチレンブタジエンゴム(SBR)または、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。非水系バインダー樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、及びブチラール樹脂などを用いることができる。
好ましくは、バインダー樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系樹脂を用いることが望ましい。その場合においては、薄片化黒鉛の導電性を阻害することなく、電解液への濡れ性をより一層向上させることができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1及び比較例1〜2]
(実施例1)
フルフラール(東京化成工業社製)とオクチルアミン(東京化成工業社製)を室温にて等モル混合して2時間攪拌の後、エバポレーターを用いて脱水処理を行うことで1−(フラン−2−イル)−N−オクチルメタンイミンを得た。
次に、200mlのガラス瓶に炭素材料(SECカーボン社製、品番「ファインパウダーSNO15」)0.3gと、得られた1−(フラン−2−イル)−N−オクチルメタンイミン20gとを入れ、十分浸透させてなる分散液を得た。しかる後ガラス瓶の開口部を開放した状態で、マイクロ波発生装置(アクタック社製、商品名「スピードウェーブ2」)を用いて昇温速度10℃/分にて170℃まで加熱し、1分間保持したのち常温まで自然冷却した。この加熱−冷却操作は、15回繰り返し行った。得られた分散液をろ過し、アセトンを用いて十分洗浄し、乾燥させ、薄片化黒鉛を得た。得られた薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRを測定したところ、図1に示すスペクトルが得られた。
また、得られた薄片化黒鉛10質量部と、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「EG8」)100質量部とを、ラボプラストミルを用いて180℃で混練して熱プレスを行うことで、5mm厚の複合材料シートを得た。得られた複合材料シートの倍率1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。図2より、樹脂中に薄片化黒鉛が、均一に分散されていることがわかる。
(比較例1)
比較例1では、実施例1で用いたもとの炭素材料(SECカーボン社製、品番「ファインパウダーSNO15」)をそのまま用いた。比較例1の炭素材料の固体高分解能13C−NMRを測定したところ、図3に示すスペクトルが得られた。
また、薄片化黒鉛の代わりに炭素材料をそのまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合材料シートを得た。得られた複合材料シートの倍率1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。図4より、もとの炭素材料をそのまま用いた場合、樹脂中での分散性が不十分であることがわかる。
(比較例2)
炭素材料(SECカーボン社製、品番「ファインパウダーSNO15」、BET比表面積:17m/g、酸素含有率:0.2原子%)0.25gを65重量%の濃硫酸11.5mlに供給して、得られた混合物を10℃の水浴により冷却しながら撹拌した。次に、上記炭素材料と濃硫酸との撹拌によって得られた混合物に、過マンガン酸カリウム1.5gを徐々に加えながら混合物を撹拌し、混合物を35℃で30分に亘って反応させた。
次に、反応混合物に水23gを徐々に加えて、混合物を98℃で15分に亘って反応させた。しかる後、反応混合物に水70gと30重量%の過酸化水素水4.5gとを加えて反応を停止させた。次に、混合物を14000rpmの回転速度にて30分に亘って遠心分離した後、得られた酸化黒鉛を5重量%の希塩酸及び水により十分に洗浄して、しかる後に乾燥させた。得られた酸化黒鉛を1000℃に加熱したヒーターに投入し、酸化黒鉛中に含まれる酸成分を爆発させることで層間を剥離して酸化薄片化黒鉛を得た。酸化薄片化黒鉛の固体高分解能13C−NMRを測定したところ、図5に示すスペクトルが得られた。
また、薄片化黒鉛の代わりに得られた酸化薄片化黒鉛を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合材料シートを得た。得られた複合材料シートの倍率1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図6に示す。図6より、酸化薄片化黒鉛を用いた場合、実施例1と比較して、樹脂中での薄片化黒鉛の凝集が見られる。
(評価)
実施例1及び比較例1〜2の薄片化黒鉛又は炭素材料のBET比表面積、酸素含有率、グラフト率、固体高分解能13C−NMR、複合材料シートの引張弾性率並びに破断伸びは、以下の要領で測定した。
(1)BET比表面積
実施例1及び比較例1〜2により得られた薄片化黒鉛及び炭素材料を、比表面積測定装置(カンタクローム社製、ChemBET PULSARTM TPR/TPD)で窒素ガスを用い、BET比表面積を測定した。
(2)酸素含有率
酸素含有率は、元素分析により求めた。炭素、水素、窒素の測定はvario MICRO cube(Elementar社製)を用いて燃焼炉温度950℃、還元炉温度550℃、ヘリウム流量200ml/分、酸素流量25〜30ml/分にて行った。酸素分析は、varioEL−III(Elementar社製)により燃焼炉温度1140℃、窒素流量64ml/分で測定した。
(3)グラフト率測定
熱重量測定装置(島津製作所社製、商品名「TGA−50」)を用いて、昇温速度10℃/分にて重量減少を測定し、200℃の重量をWi、500℃の重量をWfとして下記式により求めた。
グラフト率(重量%)=(Wi−Wf)/Wf×100
(4)固体高分解能13C−NMR
固体高分解能13C−NMR測定は、固体NMR装置(Bruker社製、商品名「ASX400」、9.4T、100.61MHz)を用い、直径4mmのMASプローブの回転速度10kHzにて行った。得られた図1,図3及び図5に示す固体高分解能13C−NMRスペクトルから、σb、σe、σg及びσmピークにおけるピーク強度の積算値を求めた。
(5)引張弾性率及び破断伸び
実施例1及び比較例1〜2で得られた複合材料シートの引張弾性率及び破断伸びは、JIS K7176に準拠して測定した。
結果を下記表1に示す。
[実施例2〜4及び比較例3〜5]
(実施例2)
60mlのポリテトラフルオロエチレン容器に炭素材料として、熱膨張性黒鉛(東洋炭素株式会社製、品番:PF−8)0.5gと、N−メチルピロリドン(沸点=202℃、20℃における表面張力=41mN/m)19.5gとを入れ、熱膨張性黒鉛にN−メチルピロリドンを十分浸透させてなる分散液を得た。この分散液に、無水マレイン酸0.5gを添加し、十分に撹拌した。しかる後ポリテトラフルオロエチレン容器の開口部を開放した状態で、マイクロ波発生装置(アクタック社製、品番:スピードウェーブ2)を用いて昇温速度60℃/分にて190℃まで加熱、30分間保持したのち常温まで自然冷却した。この加熱−冷却操作は、3回繰り返し行った。得られた分散液をろ過し、アセトンを用いて十分洗浄し、乾燥し、薄片化黒鉛を得た。
また、得られた薄片化黒鉛10質量部と、ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「J−721GR」)90質量部と、マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂(三井化学社製、商品名「アドマーQE800」)10質量部とを押出機に供給して溶融混練し、押出機先端に取り付けたTダイから押出し冷却ロールにてシート成形することにより、表面平滑な厚み0.5mmの複合材料シートを得た。
(実施例3)
炭素材料として、熱膨張性黒鉛の代わりに天然黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、品番:SRP−150)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、薄片化黒鉛及び複合材料シートを得た。
(実施例4)
炭素材料として、熱膨張性黒鉛の代わりに天然黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、品番:SG−BH8)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、薄片化黒鉛及び複合材料シートを得た。
(比較例3)
実施例2で得られた薄片化黒鉛の代わりに、市販薄片化黒鉛(Asbury社製、品番:グラフェンNano99)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合材料シートを得た。
(比較例4)
実施例2で得られた薄片化黒鉛の代わりに、市販熱膨張性黒鉛(東洋炭素株式会社製、品番:PF−8)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合材料シートを得た。
(比較例5)
実施例2で得られた薄片化黒鉛の代わりに、市販熱膨張性黒鉛(SECカーボン社製、品番:SNO−5)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、複合材料シートを得た。
(評価)
実施例2〜4及び比較例3〜5の薄片化黒鉛のBET比表面積、半値幅並びに複合材料シートの弾性率、屈曲度は、以下の要領で測定した。
(1)BET比表面積
実施例2〜4及び比較例3〜5により得られた薄片化黒鉛を、比表面積測定装置(島津製作所株式会社製、商品名「比表面積測定装置ASAP−2000」)で窒素ガスを用い、BET比表面積を測定した。
(2)半値幅
実施例2〜4及び比較例3〜5の半値幅は、広角X線散乱測定を行うことにより求めた。試料としての薄片化黒鉛、熱膨張性黒鉛又は天然黒鉛の粉体は、内径2mmのキャピラリーに封入し測定に供した。光源としては、シンクロトロンを用い、温度20℃の雰囲気下で波長:0.15nmのX線を試料に照射し、広角X線散乱スペクトルを得た。得られたスペクトルのq=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅を算出した。
(3)屈曲度
実施例2〜4及び比較例3〜5で得られた複合材料シートを断面試料作製装置(JEOL社製、商品名「IB−09010CP」)で切断することにより試料を得た。得られた試料の断面を、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名「S−3400N」)を用いて観察した。試料断面における薄片化黒鉛、熱膨張性黒鉛及び天然黒鉛を無作為に30個以上選択し、屈曲度を測定した。具体的に、屈曲度は、最大距離を隔てて対向している両端間の最短距離をAとし、該両端間の道のりをBとしたときに、A/Bとして算出した。
(4)弾性率
実施例2〜4及び比較例3〜5で得られた複合材料シートの弾性率は、JIS K6767に準拠して測定した。
[弾性率の判定基準]
◎:2.1GPa以上
○:1.8GPa以上、2.1GPa未満
×:1.8GPa未満
結果を下記表2に示す。
[実施例5〜7及び比較例6〜8]
(実施例5)
200mlのガラス瓶に炭素材料として、天然黒鉛(SECカーボン株式会社製、品番:ファインパウダーSNO15)0.5gと、N−メチルピロリドン(沸点=202℃、20℃における表面張力=41mN/m)30gとを入れ、天然黒鉛にN−メチルピロリドンを十分浸透させてなる分散液を得た。この分散液に、無水マレイン酸を0.2g添加し、十分に撹拌した。しかる後ガラス瓶の開口部を開放した状態で、マイクロ波発生装置(アクタック社製、品番:スピードウェーブ2)を用いて昇温速度50℃/分にて170℃まで加熱し、10分間保持したのち常温まで自然冷却した。得られた分散液をろ過し、アセトンを用いて十分洗浄し、乾燥し、薄片化黒鉛を得た。
また、得られた薄片化黒鉛10質量部と、ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、品番:EA9)100質量部とを、押出機に供給して溶融混練し、押出機先端に取り付けたTダイから押出し冷却ロールにてシート成形することにより、表面平滑な厚み0.5mmの複合材料シートを得た。
(実施例6)
もとの炭素材料として熱膨張性黒鉛(エアーウォーター社製、品番:GREP−EG)を用いたこと以外は実施例5と同様にして、薄片化黒鉛及び複合材料シートを得た。
(実施例7)
もとの炭素材料として、天然黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、品番:SRP−150)0.5gと、フルフリルアルコール(沸点=170℃、20℃における表面張力=38mN/m)30gとを入れ、天然黒鉛にフルフリルアルコールを十分浸透させてなる分散液を得た。しかる後ガラス瓶の開口部を開放した状態で、マイクロ波発生装置(アクタック社製、品番:スピードウェーブ2)を用いて昇温速度50℃/分にて170℃まで加熱し、10分間保持したのち常温まで自然冷却した。この加熱−冷却操作は、1回行った。得られた分散液をろ過し、アセトンを用いて十分洗浄し、乾燥し、薄片化黒鉛を得た。
また、得られた薄片化黒鉛10質量部と、ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、品番:EA9)100質量部とを、押出機に供給して溶融混練し、押出機先端に取り付けたTダイから押出し冷却ロールにてシート成形することにより、表面平滑な厚み0.5mmの複合材料シートを得た。
(比較例6)
実施例5で得られた薄片化黒鉛の代わりに、市販天然黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、品番:SRP−150)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、複合材料シートを得た。
(比較例7)
実施例5で得られた薄片化黒鉛の代わりに、市販熱膨張性黒鉛(エアーウォーター社製、品番:GREP−EG)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、複合材料シートを得た。
(比較例8)
市販薄片化黒鉛(Asbury社製、品番:Nano27)を用い、ラジカル開始剤として過酸化ベンゾイル(シグマアルドリッチ社製、10時間半減期温度73.6℃)を用いて、溶融混練により薄片化黒鉛にポリプロピレンをグラフトし、薄片化黒鉛を得た。
また、得られた薄片化黒鉛10質量部と、ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、品番:EA9)100質量部とを、押出機に供給して溶融混練し、押出機先端に取り付けたTダイから押出し冷却ロールにてシート成形することにより、表面平滑な厚み0.5mmの複合材料シートを得た。
(評価)
実施例5〜7及び比較例6〜8の薄片化黒鉛、熱膨張性黒鉛及び天然黒鉛の沈降速度、グラフト化率及びグラフト鎖の重量平均分子量並びに複合材料シートの引張弾性率は、以下の要領で測定した。
(1)沈降速度
まず、30mlのフルフリルアルコールの入った直径30mm、高さ60mmの円柱状の容器を用意する。次に、フルフリルアルコール中に、0.5gのサンプルを投入する。次に、投入後、液体の温度を25℃に維持して60分静置する。静置後、沈殿物の高さを測定し、下記式を用いて沈降速度を測定した。
沈降速度(mm/分)=沈殿物の高さ(mm)/時間(分)
(2)グラフト化率
空気雰囲気下、30〜600℃の温度範囲において、10℃/分の昇温速度により熱重量測定(TGA測定)を行った。このとき、500℃に昇温されるまでに分解した分解物の重量をA、500℃まで昇温しても分解しなかった未分解物の重量をBとして、グラフト化率を下記の式により算出した。
グラフト化率(重量%)=A/B×100
(3)グラフト鎖の重量平均分子量
重アセトンに測定サンプルを溶解し、H−NMR測定により評価した。
(4)引張弾性率
実施例5〜7及び比較例6〜8で得られた複合材料シートの引張弾性率は、JIS K6767に準拠して測定した。
結果を下記表3に示す。
なお、実施例5,6のH−NMR測定の評価結果では、グラフト成分のほとんどが無
水マレイン酸の単量体あるいは2量体であり、重量平均分子量が200以下であった。また、実施例7のH−NMR測定の評価結果では、グラフト成分のほとんどがフルフリルアルコールの2量体であり、重量平均分子量が200以下であった。他方、比較例8におけるグラフト成分は、ポリプロピレンであり、重量平均分子量が200を大きく超えていた。

Claims (15)

  1. BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、40〜90ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σe)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σe/σb)が、0.05以下であり、
    かつ化合物がグラフトされており、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%であり、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物、又はシクロペンタジエニル錯体化合物である、薄片化黒鉛。
  2. BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σg/σb)が、0.2以上、40以下の範囲にあり、
    かつ化合物がグラフトされており、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%であり、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物、又はシクロペンタジエニル錯体化合物である、薄片化黒鉛。
  3. BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の135ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σg)に対する比(σm/σg)が、0.01以上、0.3以下の範囲にあり、
    かつ化合物がグラフトされており、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%であり、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物、又はシクロペンタジエニル錯体化合物である、薄片化黒鉛。
  4. BET比表面積が300m/g以下であり、酸素含有率が8原子%未満であり、固体高分解能13C−NMRスペクトルにおいて、160〜190ppmの範囲にあるピークにおけるピーク強度の積算値(σm)の125ppmのピークにおけるピーク強度の積算値(σb)に対する比(σm/σb)が、0.01以上、0.3以下の範囲にあり、
    かつ化合物がグラフトされており、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%であり、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物、又はシクロペンタジエニル錯体化合物である、薄片化黒鉛。
  5. BET比表面積が300m/g以下であり、広角X線散乱プロファイルにおいて、q=17.0〜19.0の間に存在する最大ピークの半値幅が、0.1以上、0.3以下の範囲にあり、
    かつ化合物がグラフトされており、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%であり、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物、又はシクロペンタジエニル錯体化合物である、薄片化黒鉛。
  6. 最大距離を隔てて対向している両端間の最短距離をAとし、該両端間の道のりをBとしたときに、A/Bで表される屈曲度が、0.7以上、1.0以下である、請求項に記載の薄片化黒鉛。
  7. 厚みが0.5μm以下であり、積層面方向における最大寸法が3.0μm以上、1000μm以下である、請求項又はに記載の薄片化黒鉛。
  8. 化合物がグラフトされており、かつ温度25℃のN−メチルピロリドン中における沈降速度が、0.12mm/分以下であり、前記化合物のグラフト化率が、0.5〜20重量%であり、前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物、Friedel−Crafts反応性化合物、ラジカル反応性の化合物、又はシクロペンタジエニル錯体化合物である、薄片化黒鉛。
  9. 前記化合物の重量平均分子量が200以下である、請求項に記載の薄片化黒鉛。
  10. 前記化合物が、Diels−Alder反応性化合物又はFriedel−Crafts反応性化合物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛。
  11. 請求項10のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛と、バインダー樹脂とを含む、電極材料。
  12. 請求項10のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛と、樹脂とを含む、薄片化黒鉛−樹脂複合材料。
  13. 前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項12に記載の薄片化黒鉛−樹脂複合材料。
  14. 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンである、請求項13に記載の薄片化黒鉛−樹脂複合材料。
  15. 前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、請求項14に記載の薄片化黒鉛−樹脂複合材料。
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