JP6782856B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料噴射弁に関する。
本技術分野の背景技術として、以下の特許文献1に記載されている燃料噴射弁がある。
この特許文献1には、「簡素な構造で燃料噴射率を変更可能な燃料噴射弁を提供するために、燃料噴射弁は、固定コア、ニードル、可動コア、及び、ニードル及び可動コアと固定コアとの間に電磁吸引力を発生させるコイルを備える。ニードルは、磁性材料から形成され本体より外径が大きいニードル大径部を有する。可動コアは、大径内壁面の内側にニードル大径部が位置し小径内壁面の内側に本体が位置する状態でニードルとともにハウジング内を往復移動可能に固定コアの弁座側に設けられている。可動コアは、シール部と弁座とが当接しているときニードルの第2段差面と固定コアの弁座側の端面との距離が弁座とは反対側の端面と固定コアの端面との距離より長くなるよう形成されている。」との構成が開示されている。
特開2016-118208号公報
内燃機関の有害排気成分低減のためには、エンジン(内燃機関)に所望の量の燃料を正確に噴射する燃料噴射弁が求められている。上記特許文献1に記載の燃料噴射弁は、コイルへの通電によって発生する磁気吸引力を用いて噴孔から燃料を噴射する。このような燃料噴射弁では、コイルに通電すると、磁気コアと可動コアとの間に磁気吸引力が発生する。可動コアと磁気コアの間に発生した磁気吸引力によって可動コアが磁気コア側に引き寄せられると、弁体に力が伝達され、弁体は弁座から離間する方向に移動する。可動コアおよび弁体は、磁気コアと衝突することにより移動が規制され、停止する。この開弁期間に燃料が内燃機関に供給され燃焼に利用される。
その後、コイルへの通電を中止すると、磁気コアと可動コアの間に形成された磁束が消失し、磁気吸引力が弁体を下流方向(閉弁方向)に付勢する力よりも小さくなると、弁体は下流方向(閉弁方向)に移動し始め、その後、閉弁する。
ここで、特許文献1に開示されるような技術では、弁体が可動コアとしても機能し、コイルに通電する電流値を変更することで弁体のリフト量を変更することができるが、弁座に対して閉弁時の弁体の衝撃力が大きい。
一方、燃料噴射量の誤差を低減するため、閉弁後に可動子の位置を素早く所定の位置に静止させたいという要請がある。
本発明の目的は、弁体の衝撃力を低減しつつ、閉弁後に可動子の位置を素早く所定の位置に静止させることができる燃料噴射弁を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、スリーブを有する弁体と、前記弁体が着座するシート部材と、磁気コアと、前記磁気コアの吸引力により前記弁体をリフトさせる第1可動子と、前記弁体と別体に構成され、前記第1可動子が前記弁体をリフトさせた後、前記磁気コアの吸引力によりさらに前記弁体をリフトさせる第2可動子と、前記弁体が前記シート部材に着座し、前記第2可動子が前記スリーブから離れた後、前記第1可動子の下端面が衝突する衝突受部と、を備える。
本発明によれば、弁体の衝撃力を低減しつつ、閉弁後に可動子の位置を素早く所定の位置に静止させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の実施形態に係る燃料噴射弁の断面図である。 本発明の実施形態に係る燃料噴射弁の弁体の断面図である。 図1に示す第2可動コアの断面図である。 図1に示す第1可動コアの断面図である。 非通電時の可動コア群の位置関係を示す断面図である。 空隙g1だけ第1可動コア及び第2可動コアが変位した状態を示す図である。 図6の状態から空隙g2’だけ第1可動コア及び第2可動コアが変位した状態を示す図である。 図7の状態から空隙g3だけ第2可動コアが変位した状態を示す図である。 小リフト時と大リフト時の駆動電流値と弁体変位を示す図である。 大リフトで弁体を駆動する場合における、弁体の変位、第1可動コアの変位、第2可動コアの変位を示す図である。 固定部材を用いる変形例を説明するための図である。 磁気絞り部を設ける変形例を説明するための図である。
本実施形態の燃料噴射弁(燃料噴射装置)について、図1〜図12を用いて、以下に説明する。
図1は本実施形態の燃料噴射弁100の構造を示す断面図である。詳細には、図1は、燃料噴射弁100の縦断面図並びにその燃料噴射弁100を駆動するためのEDU121(駆動回路)及びECU120(エンジンコントロールユニット)の構成の一例を示す図である。なお、本実施形態では、便宜上、燃料噴射弁100の軸方向100aに対して燃料供給口112の側を上流側、シート部材102(弁座)の側を下流側として説明する。
図1の燃料噴射弁100は、筒内直接噴射式のガソリンエンジン向けの電磁式燃料噴射弁の例であるが、本発明の効果は、ポート噴射式のガソリンエンジン向けの電磁式燃料噴射弁や、ディーゼルエンジン向けの電磁式燃料噴射弁においても有効である。なお、ECU120とEDU121は一体の部品として構成されてもよい。少なくとも燃料噴射弁100の駆動回路は、燃料噴射弁100の駆動電圧を発生する装置であって、ECUとEDUとが一体となったものであってもよいし、EDU単体であってもよい。
ECU120は、エンジン(内燃機関)の状態を示す信号を各種センサーから取り込み、エンジンの運転条件に応じて適切な駆動パルスの幅や噴射タイミングの演算を行う。ECU120より出力された駆動パルスは、信号線123を通して燃料噴射弁100のEDU121に入力される。EDU121は、コイル108に印加する電圧を制御し、電流をコイル108に供給する。ECU120は、通信ライン122を通して、EDU121と通信を行っており、燃料噴射弁100に供給する燃料の圧力や運転条件によってEDU121によって生成する駆動電流を切替えることが可能である。EDU121は、ECU120との通信によって制御定数を変更できるようになっており、制御定数に応じてコイル108に供給する電流の電流波形が変化する。
まず、燃料噴射弁100の全体構成と燃料の流れについて説明する。上記筒内直接噴射式のガソリンエンジン向けの電磁式燃料噴射弁の場合、燃料供給口112を形成する金属管が図示しないコモンレールに取り付けられる。
このコモンレールは図示しない高圧燃料ポンプから高圧燃料が送られて、設定された圧力(たとえば35MPa)の高圧燃料が溜められるようになっている。そしてコモンレールの高圧燃料は燃料供給口112の燃料入口面112aを介して、燃料噴射弁100の内部に供給される。燃料噴射弁100は、内部に流路の開閉を行う弁体101を有し、弁体101の下流側先端部と対向する位置に円錐面を有したシート部材102が設けられている。シート部材102は、弁体101の弁体側シート部101bが着座することで燃料をシールするシート部115が形成されるとともに、このシート部115の下流側に燃料が噴射される燃料噴射孔116が形成される。換言すれば、シート部材102に弁体101が着座する。
弁体101は、コイル108に通電がないときには、第1スプリング110によってシート部材102に押し付けられ、シート部115と接触してシール座を形成し、燃料をシールする構造となっている。
図2に本実施形態の弁体101の縦断面図を示す。弁体101の上流側先端部にはスリーブ113(係合部)が取り付けられている。換言すれば、弁体101は、スリーブ113を有する。スリーブ113は弁体小径部の外径側に取り付けられる円筒部1131と、スリーブ113の上端において外径側に凸となる凸部1132と、を有する。
第1スプリング110の付勢力は、スリーブ113の凸部上端面113aを介して、弁体101に伝えられ、弁体101は下流方向(シート部材102に向かう方向)に付勢される。
図1に示すように、磁気回路は、可動コア群200、磁気コア107、磁気コア107の外周側に位置するコイル108およびコイルの外径側に位置するヨーク109(ハウジング)により形成され、磁気的な吸引力を磁気コア107と可動コア群200の間で発生することで弁体101を駆動する。
可動コア群200は、第1可動コア201(第1可動子:アウターアンカ)と第2可動コア202(第2可動子:インナーアンカ)に分割されている。弁体101および可動コア群200(第1可動コア201、第2可動コア202)は、ノズルホルダ111(筒状部材)の収容部111a(収容凹部)に内包されている。また、第1可動コア201又は第2可動コア202により開弁される弁体101が第1可動コア201及び第2可動コア202とは別体で独立して構成される。
これにより、後述するように、コイル108に通電する電流値を変更することで弁体101のリフト量を変更することができるとともに、シート部材102に対して弁体101の衝撃力を低減することができる。
図3および図4は可動コア群の縦断面図であり、これらを用いて、可動コア群200の位置関係を示す。EDU121(駆動回路)よりコイル108に駆動電流が流れることで、磁気コア107(図1)と第1可動コア201及び第2可動コア202との間には磁気的な吸引力が生じる。第1可動コア201は、第1可動コアの凹部底面201eと第2可動コア202の下端面202eを介して、第2可動コア202と係合し、第1可動コア201が磁気コア107に向かって移動する際に第2可動コア202を磁気コア107に向かって駆動させる。
これにより弁体101のスリーブ113は、第2可動コア202と係合し、第1可動コア201によって開弁させられる構成となっている。コイル108に通電がない状態では、第1可動コア201の下端面201gは、ノズルホルダ111の収容部111aの収容部下端面111bと接触し、第1可動コア201の動きが規制される。
図5に示すように、第1可動コア201は、磁気コア107に対向する第1対向面201aを有し、当該第1対向面201aが磁気コア107に吸引される。第2可動コア202は、第1可動コア201と別体で構成され、磁気コア107に対向する第2対向面202aを有し、第2対向面202aが磁気コア107に吸引されるように構成されている。
本実施形態では第2可動コア202の下端面202eに凹部202iが形成される。その結果、突起部202fが形成され、閉弁時においても突起部202fが第1可動コア201の凹部201cの底面に接触することで第2可動コア202と凹部201cの底面との間に隙間202g(図3)が形成される。また、第1可動コア201の第1対向面201aに対して第2可動コア202の第2対向面202aが内周側に配置されている。
第1可動コア201の内周部201bは、軸方向100aと直交する方向において、第2可動コア202の外周部202bと対向するように構成される。第1可動コア201は内周側に下流側へ向かって第2可動コア202を収容する凹部201c(収容凹部)が形成されており、凹部201cの内部に第2可動コア202が内包されていている。軸方向100a(弁体軸方向)において、第1可動コア201の凹部底面201eが第2可動コア202の下端面202eと対向するように構成される。
その際、第1可動コア201と第2可動コア202の弁体軸方向(軸方向100a)の長さ関係は、第1可動コア201の軸方向最大長さL1が、第2可動コア202の軸方向最大長さL2に対して長くなるように構成する。また第1可動コア201の凹部201cの深さL3も第2可動コア202の軸方向最大長さL2に対して長くなるように構成する。
弁体101は、上流側係合部202hと係合して弁体101を駆動するスリーブ下端面113c(弁体係合部)を第2可動コア202よりも上流側に有しており、第2可動コア202が上流側に移動した場合にスリーブ下端面113cにより、弁体101を上流側(開弁方向)に移動させる。
第1可動コア201は、第2可動コア202と係合する第1係合部(凹部底面201e)を有し、第1可動コア201が上流方向へ移動すると、第1可動コア201の第1係合部(凹部底面201e)と第2可動コア202の第2係合部(下端面202e)とが係合することで、第2可動コア202が上流方向に移動する。第2可動コア202が上流方向に移動すると、上流側係合部202hとスリーブ113の凸部下端面113bとが係合して、弁体101を上流側に移動させる。
第1可動コア201および第2可動コア202は、移動した際に生ずる流体力を低減するため、それぞれ燃料通路孔201d、燃料通路孔202dを有している。燃料通路孔201d、燃料通路孔202dの孔部の軸方向100a(弁体軸)の垂直方向における面積は、第1可動コア201(外径側可動コア)および第2可動コア202(内径側可動コア)が動作する際の排除体積による流体力を緩和するのに十分な面積を有している。
図1に示すようにノズルホルダ111は、可動コア群200(可動子群)を収容する収容部111aを有しており、図5に示すように収容部111aの底面側(下流側)には、収容部下端面111bが設けられている。通電がない状態では、第2スプリング103の付勢力により、第1可動コア201は、下流側に付勢され、第1可動コア201の下端面201gと収容部下端面111bが接触するように構成されている。
次に図5〜図9を参考にして、弁体101、第1可動コア201、第2可動コア202間に設けられた空隙の関係と、コイル108に電流が印可された際の部材の動作について説明する。
図5はコイル108に通電がない状態を示している。図示していないが、この状態において弁体101はシート部材102に設けられた弁座に接触することで閉弁状態となっている。
第2スプリング103は、第2可動コア202を弁体101に取り付けられたスリーブ113のスリーブ下端面113cから引き離す方向(下方向)に付勢する。第2可動コア202は第2スプリング103によって下流方向に付勢され、第2スプリング103の付勢力は、第2可動コア202の下端面202eと凹部底面201e(第1凹部底面)を介して、第1可動コア201に伝達される。
下流側に付勢された第1可動コア201は、第1可動コア201の下端面201gと収容部下端面111bが接触するように構成されている。そのため、第2可動コア202の下端面202eと第1可動コア201の凹部底面201e(第1係合部)とが接触して、第2可動コア202を弁体101に取り付けられたスリーブ113のスリーブ下端面113cから引き離した状態で維持する。このときの第2可動コア202の第2対向面202aとスリーブ下端面113cとの間には、空隙g1が設けられている。
なお、第2可動コア202(第2可動子)は、第1可動コア201(第1可動子)に形成される凹部201cに配置される。閉弁時に、第1可動コア201と磁気コア107との間の第1隙間(空隙g2)に対して、第2可動コア202と磁気コア107との間の第2隙間(空隙g2+空隙g3)の方が大きい。これにより、後述するように、コイル108に通電する電流値を変更することで弁体101のリフト量を変更することができる。
図5の状態より、コイル108に通電されると、磁気回路を構成する磁気コア107、ヨーク109、第1可動コア201と第2可動コア202に磁束が生じ、磁気コア107と第1可動コア201および磁気コア107と第2可動コア202との間に磁気吸引力が発生する。
式(1)に示すように、第1可動コア201と磁気コア107の間に作用する磁気吸引力Foと第2可動コア202と磁気コア107の間に作用する磁気吸引力Fiの和が、第2スプリング103の付勢力Fzよりも大きくなると、第1可動コア201と第2可動コア202は、磁気コア107側に吸引され、運動を開始する。
Figure 0006782856
図6はスリーブ下端面113cと第2可動コア202(内径側可動コア)との間に予め設けられた空隙g1分だけ、第2可動コア202(内径側可動コア)及び第1可動コア201(外径側可動コア)が変位した状態を示す。図5では磁気コア107と第1可動コア201(外径側可動コア)の第1対向面201aとの間には空隙g2に設けられていたが、図6ではこれらの間の空隙はg2’(g2’=g2−g1)にまで減少する。弁体101のスリーブ113のスリーブ下端面113c(衝突面)と第2可動コア202の第2対向面202a(上流側端面)が衝突する。
このとき、第1可動コア201ならびに第2可動コア202に蓄えられた運動エネルギが、弁体101の開弁動作に使用される。よって、空隙g1(予備リフト)が設定されていることで運動エネルギを利用でき、開弁動作の応答性を向上させることができる。したがって、高い燃料圧力下でも迅速に開弁することが可能となる。
図6の状態からコイル108への通電を継続し、第1可動コア201が第1対向面201aと磁気コア107との間の空隙g2’だけ変位すると、図7に示す状態となる。図7では、第1可動コア201の第1対向面201aが磁気コア107に衝突し、第1可動コア201が上流方向へ向かう動きが規制される。
このとき、図9(a)に示すように、コイル108へ通電する最大駆動電流401を予め設定した閾値よりも小さくすると、式(2)および式(3)の力の関係を満たす。なお、402は最大駆動電流401を流した後に第1可動コア201(外径側可動コア)が磁気コア107に吸引されたまま維持できる保持電流を意味する。
式(2)は第1可動コア201の磁気吸引力Foと第2可動コア202の磁気吸引力Fiの和の方が、弁体101に作用する流体による差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsと第2スプリング103の付勢力(−Fz)との和よりも大きくなる条件を示す。また式(3)は第2可動コア202の磁気吸引力Fiが、弁体101に作用する流体による差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsとの和よりも小さくなる条件を示す。
つまり、第1可動コア201による磁気吸引力Fo及び第2可動コア202による磁気吸引力Fiによって、弁体101に作用する流体による差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsに打ち勝って、第1可動コア201が磁気コア107に接触するまで移動することが可能となる。しかし、第2可動コア202(内径側可動コア)による磁気吸引力Fiだけでは、差圧力Fp及び第1スプリング110による付勢力Fsに打ち勝つことができないことを意味する。そのため図7に示すように、第1可動コア201と磁気コア107の空隙がなくなり、第2可動コア202と磁気コア107間の空隙g3のみが残った状態となる。図9(a)が図7に対応しており、小リフト状態を示す。
Figure 0006782856
Figure 0006782856
図7の状態(小リフト状態)から、コイル108への電流を遮断すると、第1可動コア201及び第2可動コア202と磁気コア107の間に生じている磁束が消失する。そして、磁気吸引力が弁体101に作用する流体による差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsよりも小さくなると、第1可動コア201(外径側可動コア)及び第2可動コア202は下流方向への変位を開始する。この動きに伴って弁体101は閉弁方向(下流方向)への変位を開始し、その後、シート部材102と衝突し、閉弁する。
小リフトの場合に、図9(a)に示すように、弁体101は第1可動コア201と磁気コア107との間に設けられた空隙g2から空隙g1を引いた分(g2’=g2−g1)だけ変位する(弁体変位403)となる。換言すれば、第1可動コア201(第1可動子)は、磁気コア107の吸引力により弁体101をリフトさせる(空隙g2’)。
詳細には、第1可動コア201(第1可動子)が磁気コア107に吸引されると、第1可動コア201(第1可動子)が第2可動コア202(第2可動子)と係合し、かつ、第2可動コア202が弁体101と係合することで、弁体101をリフトさせる。より詳細には、第1可動コア201(第1可動子)が磁気コア107に吸引されると、第1可動コア201に形成される凹部201cの凹部底面201e(底面)が第2可動コア202(第2可動子)の下端面202eと係合し、かつ、第2可動コア202の上流側係合部202h(上端面)が弁体101のスリーブ113のスリーブ下端面113c(下端面)と係合することで、弁体101をリフトさせる。
このように、第1可動コア201(第1可動子)が弁体101をリフトさせた後、第2可動コア202(第2可動子)の上流側係合部202h(上端面)が弁体101のスリーブ113のスリーブ下端面113c(下端面)と係合することで、弁体101をリフトさせる。
第1可動コア201(外径側可動コア)は、磁気コア107、又は磁気コア107以外の第1可動コアの運動を規制する部材に衝突することによって軸方向の変位が規制される。これにより、弁体101のリフト量を安定させることができるため、安定した噴射量を供給することができる。
一方、図9(b)に示すように、コイル108への通電する最大駆動電流404(最大駆動電流値)を予め設定した閾値よりも大きくすると、式(4)に示す条件を満たす。なお、405は最大駆動電流404を流した後に第1可動コア201(外径側可動コア)が磁気コア107に吸引されたまま維持できる保持電流を意味する。式(4)は、第2可動コア202(内径側可動コア)の磁気吸引力Fiが、弁体101に作用する流体による差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsとの和よりも大きくなるという条件を示す。
図9(b)に示す駆動電流を流すと、図8に示すように、第1可動コア201(外径側可動コア)が磁気コア107に衝突するまで空隙g2(図5、図9(a)参照)の分、移動し、さらにその後、第2可動コア202(内径側可動コア)が第2可動コア202(内径側可動コア)と磁気コア107との間の空隙g3の分だけ変位する。結果として、弁体101は、空隙g2’(g2’=g2−g1)と空隙g3の和だけ変位する(大リフト状態)。
換言すれば、第2可動コア202(第2可動子)は、第1可動コア201(第1可動子)が弁体101をリフトさせた後、磁気コア107の吸引力によりさらに弁体101をリフトさせる(空隙g3)。ここで、第2可動コア202は、弁体101と別体に構成される。これにより、特許文献1に開示されるような技術と比較して、シート部材102に対する弁体101の衝撃力を低減することができる。
第2可動コア202の変位は、磁気コア107あるいは第2可動コア202の運動を規制する部材に衝突することによって変位が規制される。そのため、弁体101の挙動は安定し、安定した噴射量を供給することができる。
Figure 0006782856
図8、図9(b)に示す大リフト状態より、コイル108への電流が遮断されると、第2可動コア202(内径側可動コア)に生じている磁束が消失する。そして磁気吸引力が弁体101に作用する流体による差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsよりも小さくなると、第2可動コア202(内径側可動コア)が下流方向へ変位する。
磁束は内径側より消失を開始するのに加え、差圧力Fpと第1スプリング110による付勢力Fsにより、第2可動コア202(内径側可動コア)の方が第1可動コア201(外径側可動コア)に比べて早く閉弁動作に移行する。その結果、第2可動コア202(内径側可動コア)は、第1可動コア201(外径側可動コア)との空隙g3だけ、下流方向へ移動すると、第1可動コア201(外径側可動コア)と衝突し、第1可動コア201(外径側可動コア)を叩き落としながら、弁体101と第2可動コア202は下流方向に変位する。弁体101は閉弁動作を開始し、やがてシート部材102と衝突し、閉弁する。
結果として、図9(b)に示すように、弁体101は大リフト状態の弁変位406となる。
弁体101の閉弁後、第2可動コア202と第1可動コア201は、弁体101から離間する。これにより、閉弁時に弁体101とシート部材102に作用する衝突エネルギは、第2可動コア202と第1可動コア201の質量分だけ減らすことができる。これにより、衝突部位の耐摩耗性の向上と弁体101がシート部材102へ衝突することに起因して生ずる騒音も低減することが可能となる。
図10は、大リフトで弁体101を駆動する場合における、弁体101の変位501(リフト量)、第1可動コア201の変位502、第2可動コア202の変位503を示す図である。図10に示すように第1可動コア201、第2可動コア202が弁体101と離間後、第1可動コア201の下端面201g(下流側端面)が、ノズルホルダ111の収容部下端面111bと係合すると、第1可動コア201の運動が規制され、やがて第1可動コア201が静止する。
換言すれば、弁体101がシート部材102に着座し、第2可動コア202(第2可動子)がスリーブ113から離れた後、第1可動コア201(第1可動子)の下端面201gが収容部下端面111b(衝突受部)に衝突する。これにより、第1可動コア201と第2可動コア202のアンダーシュートが抑制される。
なお、収容部下端面111b(衝突受部)は、ノズルホルダ111(筒状部材)自体で形成される。これにより、部品点数を少なくすることができる。
第2可動コア202は、第1可動コア201が収容部下端面111bと係合する際に生ずる衝突エネルギにより、第2可動コア202が上流側に運動するものの、閉弁方向に付勢されている第2スプリング103の付勢力により、運動が減衰され、やがて第2可動コア202は、第1可動コア201と係合し、静止状態となる。
第1可動コア201と第2可動コア202の質量の比を同程度(20%以内)としておくことで、第1可動コア201と第2可動コア202の運動を素早く減衰させることが可能となる。第1可動コア201を静止状態に至るまでの時間が短ければ短いほど、次噴射との間隔を短縮した際に生ずる噴射量との誤差を少なくし、安定して噴射量を計量することが可能となる。
また、図5に示すように、第1可動コア201と収容部下端面111bとの係合する幅Wは、係合部の隙間を流れる流体によるダンパー効果と、開弁時に運動を妨げない程度の幅とすることで、収容部下端面111bおよび第1可動コア201の下端面201gの耐摩耗性と、衝突時の低騒音性を確保しつつ、閉弁動作の遅れを短縮することが可能となる。
燃料噴射弁100に供給する電流により、弁体101の変位を大リフト状態と小リフト状態とに切り替え可能にするためには、閉弁状態での第2可動コア202の第2対向面202aとスリーブ下端面113cとの間の空隙g1、第1可動コア201の第1対向面201aと磁気コア107との間の空隙g2、第1可動コア201の第1対向面201aと第2可動コア202の第2対向面202aとの間の空隙g3の寸法関係は、大きい順にg2、g3、g1となるように設定する。
このように可動コア群200を第1可動コア201と、第2可動コア202に分割し、コイル108への駆動電流を変えることで、弁体101の変位を二段階に可変とすることができる。
なお、本実施形態においては、吸入空気量、内燃機関回転数、燃料噴射圧力、アクセル開度をセンシングし、その閾値によって、燃料噴射弁に通電する電流波形を切り替えることとしたが、他の情報を用いても、同様の効果が得られる場合には、切替えをすることが可能である。
(変形例)
上記実施形態では、図5に示すように閉弁状態において、第1可動コア201とノズルホルダ111の収容部下端面111bが係合するような構成を例にとって説明したが、図11に示すように固定部材601を収容部下端面111bと第1可動コア201の間に入れ、第1可動コア201と固定部材601が係合するような構成をとってもよい。換言すれば、固定部材601(衝突受部)は、ノズルホルダ111(筒状部材)に取り付けられ、ノズルホルダ111と別部材で構成される。これにより、固定部材601のみを交換することができる。
固定部材601の磁気特性は、磁気回路を形成するノズルホルダ111(筒状部材)、第1可動コア201(第1可動子)、第2可動コア202(第2可動子)、磁気コア107(固定コア)の飽和磁束密度よりも小さい飽和磁束密度を有する材料(例えば、オーステナイト系ステンレス(非磁性体)、マルテンサイト系ステンレス等)を用いるとよい。
換言すれば、固定部材601(衝突受部)の飽和磁束密度は、磁気回路を構成する部材の飽和磁束密度よりも低い。
これにより、第1可動コア201と固定部材601との間に生ずる磁気吸引力を低減することができ、可動コア群200と磁気コア107間に作用する磁気吸引力の低減を抑制することが可能となる。なお、ノズルホルダ111(筒状部材)も磁気回路を構成する部材(磁性体)とすることで、ヨーク109(ハウジング)と第2可動コア202(第2可動子)の間で磁束が流れ易くなる。
もしくは、図12に示すように収容部下端面111bの上流側(コイル108側)に磁気絞り部602を設け、第1可動コア201とノズルホルダ111間を通過する磁束を減らし、可動コア群200と磁気コア107間に作用する磁気吸引力の低減を抑制することも可能である。なお磁気絞り部602は、可動コア群200側に設けてもよいし、ノズルホルダ側に設けても得られる作用効果は変わらず、これに限定されるものではない。
以上説明したように、本実施形態によれば、弁体の衝撃力を低減しつつ、閉弁後に可動子の位置を素早く所定の位置に静止させることができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。
(1).磁気コアと、前記磁気コアに吸引され弁体をリフトさせる第1可動子(アウターアンカ)と、前記弁体と別体に構成され、前記第1可動子(アウターアンカ)が前記弁体をリフトさせてリフト規制部に衝突した後、さらに前記磁気コアに吸引され、前記弁体をリフトさせる第2可動子(インナーアンカ)と、前記弁体が弁座に衝突した後に前記第1可動子(アウターアンカ)の下流面が衝突する衝突受部と、を備えた燃料噴射弁。
(2).(1)に記載の燃料噴射弁において、前記弁体の径方向外側に配置され、前記弁体を内包する筒状部材(ノズルホルダ)を備え、前記衝突受部は前記筒状部材(ノズルホルダ)自体で形成された燃料噴射弁。
(3).(1)に記載の燃料噴射弁において、前記弁体の径方向外側に配置され、前記弁体を内包する筒状部材(ノズルホルダ)を備え、前記衝突受部は前記筒状部材(ノズルホルダ)に取り付けられ、前記筒状部材(ノズルホルダ)と別部材で構成された燃料噴射弁。
(4).(3)に記載の燃料噴射弁において、前記衝突受部は磁気回路構成部材(ハウジングや磁気コア)よりも飽和磁束密度の低い部材で形成される燃料噴射弁。
(5).(3)に記載の燃料噴射弁において、前記筒状部材(ノズルホルダ)は前記磁気コアとともに磁気回路を構成するように配置された燃料噴射弁。
(6).(3)に記載の燃料噴射弁において、軸方向において、前記筒状部材(ノズルホルダ)は第1可動子(アウターアンカ)と重なるように配置された燃料噴射弁。
(7).(1)に記載の燃料噴射弁において、前記第2可動子(インナーアンカ)は前記第1可動子(アウターアンカ)に形成された凹み部に配置され、閉弁時において前記第1可動子(アウターアンカ)と前記磁気コアとの第1隙間に対して、前記第2可動子(インナーアンカ)と前記磁気コアとの第2隙間の方が大きくなるように配置された燃料噴射弁。
(8).(1)に記載の燃料噴射弁において、前記第1可動子(アウターアンカ)が前記磁気コアに吸引されると、第1可動子(アウターアンカ)が前記第2可動子(インナーアンカ)と係合し、かつ、前記第2可動子(インナーアンカ)が前記弁体と係合することで、前記弁体をリフトさせる燃料噴射弁。
(9).(8)に記載の燃料噴射弁において、前記第1可動子(アウターアンカ)が前記磁気コアに吸引されると、第1可動子(アウターアンカ)の凹み部の底面が前記第2可動子(インナーアンカ)の下流面と係合し、かつ、前記第2可動子(インナーアンカ)の上流面が前記弁体の下流面と係合することで、前記弁体をリフトさせる燃料噴射弁。
(10).(1)に記載の燃料噴射弁において、前記第1可動子(アウターアンカ)が前記リフト規制部に衝突した後、第2可動子(インナーアンカ)の上流面が前記弁体の下流面と係合することで前記弁体をリフトさせ、前記リフト規制部に衝突するように構成された燃料噴射弁。
(11).(1)の燃料噴射弁において、前記第1可動子又は前記第2可動子により開弁される弁体が前記第1可動子及び前記第2可動子とは別体で独立して構成される燃料噴射弁。
上記(1)〜(11)によれば、閉弁後に可動子の位置を素早く所定の位置に静止させることで、複数回噴射時の燃料噴射量誤差を低減することが可能となる。
100…燃料噴射弁
100a…軸方向
101…弁体
101b…弁体側シート部
102…シート部材
103…第2スプリング
107…磁気コア
108…コイル
109…ヨーク
110…第1スプリング
111…ノズルホルダ
111a…収容部
111b…収容部下端面
112…燃料供給口
112a…燃料入口面
113…スリーブ
113a…凸部上端面
113b…凸部下端面
113c…スリーブ下端面
115…シート部
116…燃料噴射孔
120…ECU
121…EDU
122…通信ライン
123…信号線
200…可動コア群
201…第1可動コア
201a…第1対向面
201b…内周部
201c…凹部
201d…燃料通路孔
201e…凹部底面
201g…下端面
202…第2可動コア
202a…第2対向面
202b…外周部
202d…燃料通路孔
202e…下端面
202f…突起部
202g…隙間
202h…上流側係合部
202i…凹部
401…最大駆動電流
403…弁体変位
404…最大駆動電流
406…弁変位
501…変位
502…変位
503…変位
601…固定部材
602…磁気絞り部
1131…円筒部
1132…凸部

Claims (10)

  1. スリーブを有する弁体と、
    前記弁体が着座するシート部材と、
    磁気コアと、
    前記磁気コアの吸引力により前記弁体をリフトさせる第1可動子と、
    前記弁体と別体に構成され、前記第1可動子が前記弁体をリフトさせた後、前記磁気コアの吸引力によりさらに前記弁体をリフトさせる第2可動子と、
    前記弁体が前記シート部材に着座し、前記第2可動子が前記スリーブから離れた後、前記第1可動子の下端面が衝突する衝突受部と、
    を備えることを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射弁であって、
    前記弁体を内包する筒状部材を備え、
    前記衝突受部は、
    前記筒状部材自体で形成される
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  3. 請求項1に記載の燃料噴射弁であって、
    前記弁体を内包する筒状部材を備え、
    前記衝突受部は、
    前記筒状部材に取り付けられ、前記筒状部材と別部材で構成される
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  4. 請求項3に記載の燃料噴射弁であって、
    前記衝突受部の飽和磁束密度は、
    磁気回路を構成する部材の飽和磁束密度よりも低い
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  5. 請求項3に記載の燃料噴射弁であって、
    前記筒状部材は、
    前記第1可動子、前記第2可動子、及び前記磁気コアとともに磁気回路を構成する
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  6. 請求項1に記載の燃料噴射弁であって、
    前記第2可動子は、
    前記第1可動子に形成される凹部に配置され、
    閉弁時に、前記第1可動子と前記磁気コアとの間の第1隙間に対して、前記第2可動子と前記磁気コアとの間の第2隙間の方が大きい
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  7. 請求項1に記載の燃料噴射弁であって、
    前記第1可動子が前記磁気コアに吸引されると、前記第1可動子が前記第2可動子と係合し、かつ、前記第2可動子が前記弁体と係合することで、前記弁体をリフトさせる
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  8. 請求項7に記載の燃料噴射弁であって、
    前記第1可動子が前記磁気コアに吸引されると、前記第1可動子に形成される凹部の底面が前記第2可動子の下端面と係合し、かつ、前記第2可動子の上端面が前記弁体のスリーブの下端面と係合することで、前記弁体をリフトさせる
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  9. 請求項1に記載の燃料噴射弁であって、
    前記第1可動子が前記弁体をリフトさせた後、前記第2可動子の上端面が前記弁体のスリーブの下端面と係合することで、前記弁体をリフトさせる
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
  10. 請求項1の燃料噴射弁であって、
    前記弁体は、
    前記第1可動子及び前記第2可動子と別体である
    ことを特徴とする燃料噴射弁。
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