<第1実施形態>
初めに、第1実施形態に係るタイミング信号生成装置20について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るタイミング信号生成装置20の概略的な構成を示すブロック図である。
図1に示すタイミング信号生成装置20は、後述するGNSSアンテナ1で受信した衛星50,50,・・・からの衛星信号を解析し、当該衛星信号に含まれる軌道情報及び時刻情報に基づいて、GNSS基準時刻に同期したタイミング信号を生成するものである。
本実施形態のタイミング信号生成装置20は、例えば小型の無線基地局設備を搭載したドローンに備えられている。このドローンは地震や津波等の災害が発生し て、交通網が遮断され、人が立ち入れなくなった村や建造物等と通信を行うために利用される。このドローンは通常の基地局設備と同等の機能を有しており、携 帯電話の利用等の際に中継基地局として用いられる。
このドローンは衛星信号を受信するための受信機、アンテナ、及び内部 に方位情報や速度情報等を得るための各種センサを保有しており、利用者が予め指定した場所へ自動飛行、及び滞空することが可能である。このとき、滞空した 状態で静止を維持しているドローンは、固定点にアンテナを設置している状態と同様に扱うことができるため、衛星信号の受信も固定点測位を行うことが可能で ある。そのため利用者が事前に設定した設定位置にて測位を実施することができ、固定点での測位を実施する通常の基地局と、同等の精度のタイミング信号を生 成することができる。このタイミング信号は、基地局として必要な基準信号として用いることが可能である。
次に、本実施形態のタイミング信号生成装置20の構成について、より具体的に説明する。
図1には第1実施形態のタイミング信号生成装置20の主な構成が示される。このタイミング信号生成装置20は、GNSSアンテナ1を備える。また、タイミ ング信号生成装置20は、信号復調部2、測位計算部3、測位推定位置算出部4、設定位置記憶部5、直近位置記憶部6、記憶位置バッファ7、判定部8、ア ラーム発生部9、位置切替部10、及びタイミング信号生成部11等を備えている。
具体的には、上記のタイミング信号生成 装置20は公知のコンピュータとして構成され、CPU、ROM、RAM、及び発振回路等を備えている。また、上記のROM等には、本発明のタイミング信号 生成方法を実現するためのプログラムが記憶されている。そして、上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、タイミング信号生成装置20を、信号復調 部2、測位計算部3、測位推定位置算出部4、設定位置記憶部5、直近位置記憶部6、記憶位置バッファ7、判定部8、アラーム発生部9、位置切替部10、及 びタイミング信号生成部11等として動作させることができる。
GNSSアンテナ1は、GNSSを構成する衛星 50,50,・・・から送信される所定の周波数帯の衛星信号を受信するアンテナである。ここで、衛星としては、例えば、GPS、ガリレオ、及び GLONASS等において運用される人工衛星が考えられるが、例えば準天頂衛星等を含めてもよい。
信号復調部2は、 GNSSアンテナ1で受信した衛星信号を復調することにより、当該衛星信号に含まれている軌道情報及び時刻情報を取り出す。この情報の取得は、衛星 50,50,・・・のそれぞれに特有の擬似ランダム雑音コード(PRNコード)によりコード変調されている衛星信号を復調することにより行われる。得られ た軌道情報や時刻情報は測位計算部3及びタイミング信号生成部11に出力され、測位計算、及びタイミング信号の生成のために用いられる。
測位計算部3は、信号復調部2で得られた軌道情報及び時刻情報を用いて、GNSSアンテナ1が設置されている位置である受信点(以下、単に「受信点」と称する場合がある。)の位置を測位する。
この測位計算を具体的に説明すると、測位計算部3は、衛星50において図略の原子時計で計測されて電波に前述の時刻情報として含められる電波送信時刻と、 タイミング信号生成装置20が備える図略の水晶時計で計測した電波受信時刻と、を用いて、衛星50から送信された衛星信号(電波)が受信点まで到達するの に要する伝搬遅延時間を計算する。この伝搬遅延時間に光速を乗じることにより、衛星50から受信点までの擬似距離が求められる。また、衛星50から受信点 までの理論的な距離は、軌道情報及び時刻情報に基づいて得られる衛星50の電波送信時の位置と、受信点を未知の複数のパラメータ(緯度、経度及び高度)で 表した位置と、の2点間の距離として表すことができる。
ここで、受信側のタイミング信号生成装置20が備える水晶時計 と、送信側の衛星50が備える原子時計と、の間には、無視できない誤差(時計誤差)が生じる。そこで、測位計算においては、この時計誤差も未知のパラメー タとして表して、上記の擬似距離が上記の理論的な距離と等しいことを表す方程式を立てる。未知のパラメータの数は4であるから、4個以上の衛星 50,50,・・・からの衛星信号に基づいた複数の方程式を連立させて解くことにより、受信点の現在位置の測位計算結果である測位解が得られる。測位計算 部3は、受信点の測位解を定期的に(例えば、1秒毎に)求めて、測位推定位置算出部4に出力する。
測位推定位置算出部4 は、測位計算部3から反復的に入力される測位解に基づいて、測位結果から推定される受信点の位置である測位推定位置(以下、単に「測位推定位置」と称する 場合がある。)を算出する。この測位推定位置は、タイミング信号生成装置20において、タイミング信号生成部11がタイミング信号を生成するために用いる 受信点の位置の選択肢として扱われる。測位推定位置算出部4は、算出した測位推定位置を、判定部8及び位置切替部10に出力する。
本実施形態の測位推定位置算出部4は、過去の所定期間内に入力された複数の測位解について平均値及び分散を求め、分散が所定値未満となった場合に、当該平 均値を測位推定位置とする。別の言い方をすれば、測位推定位置算出部4は、バラツキが小さい一連の測位解を取りまとめ、これらの測位解を代表する値を測位 推定位置とする。これにより、例えばマルチパスや衛星信号の強度の一時的な低下等に起因して、突発的に大きな誤差を含んだ測位解が測位推定位置算出部4に 入力されたとしても、その誤差の影響を小さく抑え、精度の高い測位推定位置を算出することができる。このように、測位推定位置は、測位計算に基づく位置で あるということができる。
設定位置記憶部5は、タイミング信号生成装置20の利用者(ユーザ)が、設置を計画する GNSSアンテナ1の位置(受信点)を当該タイミング信号生成装置20に設定した場合に、その位置を記憶する。言い換えれば、設定位置記憶部5は、ユーザ がタイミング信号生成装置20に入力した受信点の位置を記憶する。以下では、この位置を「設定位置」と称する場合がある。受信点の位置の設定は、タイミン グ信号生成装置20が備える図示しないキー及びダイアル等の入力部を操作したり、外部のコンピュータがタイミング信号生成装置20と通信して指示したりす ることで行うことができる。また、上記の設定位置は、例えば地図から読み取ったり、或いは測量を行ったりすることでも得ることができる。
このように、本実施形態のタイミング信号生成装置20では、意図している受信点の位置(受信点のあるべき位置)を、事前に外部から与えることができるようになっている。設定位置記憶部5は、記憶する設定位置を記憶位置バッファ7に出力する。
ただし、前記設定位置は、必ずしも事前に外部から与えられる位置であるとは限らず、例えばこれに代えて、タイミング信号生成装置20の内部で生成される位 置であってもよい。また、必ずしも設定位置記憶部5に記憶されている位置とは限らず、その都度生成される位置であってもよい。
直近位置記憶部6は、直近にタイミング信号生成部11でタイミング信号を生成するために用いられた受信点の位置を記憶する。以下では、この位置を単に「直 近位置」と呼ぶ場合がある。この直近位置は、設定位置記憶部5が記憶する設定位置、測位推定位置算出部4が算出した最新の測位推定位置、又は、過去の測位 推定位置のうち何れかに一致する。直近位置記憶部6は、記憶する直近位置を記憶位置バッファ7に出力する。
記憶位置バッ ファ7は、設定位置記憶部5が出力する設定位置、又は、直近位置記憶部6が出力する直近位置を、一時的に記憶する。以下では、この位置を単に「記憶位置」 と呼ぶ場合がある。記憶位置バッファ7が記憶する位置(記憶位置)は、上述の測位推定位置と同様に、タイミング信号生成装置20において、タイミング信号 生成部11がタイミング信号を生成するために用いる受信点の位置の選択肢として扱われる。
本実施形態では、直近位置記憶 部6が何らかの位置を記憶している場合には、記憶位置バッファ7は、設定位置記憶部5が出力する設定位置ではなく、直近位置記憶部6が出力する直近位置を 記憶するようになっている。即ち、記憶位置バッファ7は、設定位置よりも直近位置を優先して記憶する。ただし、その後に再度ユーザが最新の設定位置の入力 を試みた場合には、その最新の設定位置を優先してもよい。記憶位置バッファ7は、記憶した位置(記憶位置)を判定部8に出力する。
判定部8は、記憶位置バッファ7から入力される記憶位置がGNSSアンテナ1の現実の位置を表すものとして確からしいか否かを、測位推定位置算出部4から 入力される測位推定位置を用いて判定する。言い換えれば、判定部8は、ユーザが設定した位置、又は、直近にタイミングの算出のために用いられた受信点の位 置が、今もなお確からしいか否かを判定する。判定部8による判定結果は、位置切替部10及びアラーム発生部9に出力される。
具体的には、本実施形態の判定部8は、測位推定位置と記憶位置との間の距離Lが閾値Lt以下であるか否かを判定する。なお、当該距離Lは、2点の位置から、周知である三平方の定理を用いて計算することができる。この判定の結果、測位推定位置と記憶位置とが乖離する長さである距離Lが閾値Lt以下である場合(L≦Lt)、当該記憶位置がある程度信頼できると考えられる。そこで、この場合、判定部8は、位置切替部10がタイミング信号生成部11に出力する位置を、当該位置切替部10に記憶位置バッファ7から入力された記憶位置とするように制御する。
一方、上記の判定の結果、測位推定位置と記憶位置との間の距離Lが閾値Ltを上回っている場合(L>Lt)、当該記憶位置があまり信頼できない(疑わしい)と考えられる。そこで、この場合、判定部8は、位置切替部10がタイミング信号生成部11に出力する位置を、当該位置切替部10に測位推定位置算出部4から入力された測位推定位置とするように制御する。
アラーム発生部9は、判定部8での判定の結果、測位推定位置と記憶位置との間の距離Lが閾値Ltを上回っていた場合(L>Lt)、ユーザに報知するためのアラームを発生し、そうでない場合(L≦Lt)、 アラームを発生させない。このアラームは、ユーザの聴覚に訴えるものであってもよいし、視覚に訴えるものであってもよい。これにより、GNSSアンテナ1 の現在の位置が、ユーザが当初に意図していた位置から大きく外れていたり、或いは事後的に無視できない程度に移動されたりした場合に、ユーザがこの状況を 知り、適宜の措置を講ずることができる。ユーザがとり得る措置としては、例えばアラームが発生している間のタイミング信号は利用しない等が挙げられる。こ れにより、例えばドローンが突風や飛翔物との衝突で滞空位置が大きく動いてしまった場合において、精度が著しく劣化したタイミング信号を利用してしまう問 題を防ぐことができる。この場合はドローンが再度設定された位置に戻り、アラームが解除されるのを待てばよい。
位置切替 部10は、測位推定位置と記憶位置とのうちの何れをタイミング信号生成部11によるタイミング信号の生成のために用いるかを、判定部8の判定結果に応じて 切り替える。具体的に説明すると、位置切替部10は、判定部8での判定の結果、測位推定位置と記憶位置との間の距離Lが閾値Lt以下である場合(L≦Lt)、記憶位置バッファ7から入力された記憶位置をタイミング信号生成部11に出力する。一方、位置切替部10は、判定部8での判定の結果、測位推定位置と記憶位置との間の距離Lが閾値Ltを上回る場合(L>Lt)、測位推定位置算出部4から入力された測位推定位置をタイミング信号生成部11に出力する。
なお、上記の受信点のユーザによる設定が行われず、かつ、電源投入直後等でタイミング信号の生成がまだ行われていない場合、記憶位置バッファ7が何れの位 置も記憶しないこともあり得る。この場合は、判定部8は、測位推定位置算出部4から入力された測位推定位置をタイミング信号生成部11に出力するように、 位置切替部10を制御する。また、判定部8は、この場合にアラーム発生部9がアラームを発生させないように制御する。
位 置切替部10が出力する位置(測位推定位置又は記憶位置)は、タイミング信号生成部11に出力されると同時に、直近位置記憶部6にも出力される。直近位置 記憶部6は、位置切替部10から入力された位置を、上記の直近位置として記憶する。直近位置記憶部6が記憶する直近位置は、位置切替部10から新しい位置 が入力される毎に、最新のものに更新される。この更新に伴い、記憶位置バッファ7が記憶する記憶位置も、最新の直近位置に更新される。
タイミング信号生成部11は、位置切替部10から入力された位置(測位推定位置又は記憶位置)を用いて、タイミング信号を生成する。
具体的に説明すると、本実施形態のタイミング信号生成部11は、測位計算部3が行う測位計算で説明した上述の方程式において、位置切替部10から入力され た位置を上記の受信点の未知のパラメータに代入するとともに、軌道情報に基づく衛星50の位置を代入して解くことにより、残りの未知のパラメータである時 計誤差を求める。次に、タイミング信号生成部11は、得られた時計誤差に基づいて、タイミング信号生成装置20が備える水晶時計のタイミングに対してオフ セット処理等を行うことにより、GNSS基準時刻と同期した1秒周期信号(1PPS:One Pulse per Second)と、同じくGNSS基準 時刻と同期した10MHzの基準周波数信号と、を出力する。本実施形態では、上記の1PPS信号及び基準周波数信号が、タイミング信号に該当する。
位置切替部10が出力する位置(即ち、測位推定位置又は記憶位置)と、現実のGNSSアンテナ1の位置とは、厳密には一致せず、その間には必ず誤差が含ま れている。従って、タイミング信号の生成にあたって、位置切替部10から入力された位置を上記の方程式における受信点の未知のパラメータに代入すること は、当該位置にGNSSアンテナ1が配置されているとみなして計算することと実質的に同義である。
以上の構成とすること により、タイミング信号生成装置20は、GNSSアンテナ1が実際に設置されている位置に関して、測位推定位置又は記憶位置のうち確からしい方の「位置」 に基づいて、タイミング信号生成部11によりタイミング信号を生成する。記憶位置バッファ7が記憶する位置(記憶位置)は、設定位置である場合と、直近に タイミング信号の生成に用いられた測位推定位置である場合と、がある。
ここで、一般的に、高精度のタイミング信号を生成 できるか否かは、受信点として、如何に正確な位置情報を設定できるかに大きく左右される。言い換えれば、ユーザがタイミング信号生成装置20(言い換えれ ば、GNSS受信機)に設定する受信点の位置がGNSSアンテナ1の現実の位置に近ければ近いほど、タイミング信号の精度も高められる。
従って、ユーザが受信点(GNSSアンテナ1)を、既知の位置にズレがない状態で正確にかつ固定的に設置することができれば、当該位置をタイミング信号生 成装置20に与えることで高精度のタイミング信号が得られる。しかしながら、現実的には、そのような理想的な状態でGNSSアンテナ1を設置できるとは限 らない。また、本実施形態で説明したドローンの場合も、滞空位置が外的要因により大きく揺らぐ場合があり、結果としてアンテナ位置が設定位置と大きく乖離 してしまう場合が想定される。
この点、本実施形態のタイミング信号生成装置20において、判定部8は、ユーザが予め入力 して設定位置記憶部5に記憶された位置、又は、直近でタイミングの算出に用いられて直近位置記憶部6に記憶されている位置が、現実の受信点の位置に対して 所定程度確からしいか否かを、測位計算に基づいて取得される測位推定位置とのズレの大きさ(上記の距離L)に基づいて判定する。そして、所定程度確からし くない場合は、判定部8は、タイミング信号生成部11が設定位置又は記憶位置に基づくタイミング信号を生成するのを停止させる制御、及び、アラーム発生部 9にアラームを発生させる制御を行う。このタイミング生成停止制御及びアラーム発生制御により、基準時刻からズレたタイミング信号が生成されて、それが利 用されてしまうことを未然に防ぐことができるとともに、ユーザが状況に早期に気付いて適切な対応をとることができる。
ま た、記憶位置(ユーザが設定する等した設定位置、又は直近にタイミング算出のために用いられた位置)と、測位推定位置(測位計算により得られた位置)と、 のズレが大きい場合には、ユーザが入力した位置に誤りがあったため、又はGNSSアンテナ1が地球に対して移動したために、そのような大きな位置ズレが生 じたと考えることができる。そこで、この場合には、判定部8は、上記のタイミング生成停止制御を行うとともに、タイミング信号生成部11に、最新の測位推 定位置に基づいてタイミング信号を生成させるように制御する。これにより、GNSSアンテナ1の設置位置が、当初に意図していた位置から大きく外れている 場合や、GNSSアンテナ1が事後的に移動した場合に、自動で、タイミングの算出に用いる「位置」を変更することができる。よって、タイミング信号生成装 置20が移動を伴う場合にも、地図の読取り又は測量をやり直したりする必要がなく、ユーザの手間を軽減することができる。
次に、図3を参照して、タイミング信号生成装置20において行われる処理を説明する。図3は、第1実施形態におけるタイミング信号生成方法を実現するための処理を示すフローチャートである。
まず、ユーザが受信点の位置の設定をする等して位置が設定されているか否かが判断され(ステップS101)、設定がされている場合は、設定位置記憶部5が記憶する内容(設定位置)が、記憶位置として、記憶位置バッファ7に記憶される(ステップS102)。
なお、記憶位置バッファ7の内容は、事前に内部に用意しておいた記憶素子から読み出して、それを初期値として利用してもよいし、或いは処理のスタート時に予めリセットしてもよい。後者の場合はステップS102の処理が行われない場合となり、記憶位置は空となる。
次に、測位計算部3が測位計算を行い、測位推定位置算出部4が、得られた測位解に基づいて測位推定位置を算出する(ステップS103)。
測位推定位置が得られると、記憶位置バッファ7の内容(記憶位置)が空か否かが判定される(ステップS104)。
ステップS104の判断で、記憶位置が空である場合、タイミング信号生成部11は、測位推定位置算出部4が算出した測位推定位置に基づいて、タイミング信 号を生成する(ステップS105)。その後、直近位置である当該測位推定位置が、記憶位置として記憶位置バッファ7に記憶され(ステップS106)、処理 がステップS103に戻る。
ステップS104の判断で、何らかの位置が記憶位置バッファ7に記憶されていた場合、判定部8が、ステップS103で求められた測位推定位置と、記憶位置バッファ7が記憶する記憶位置と、の間の距離Lが閾値Ltを上回るか否かを判断する(ステップS107)。
ステップS107の判断で、上記の距離Lが閾値Ltを 上回っていた場合、アラーム発生部9がアラームを発生させる(ステップS108)。その後、上記の記憶位置が空だった場合と同様に、測位推定位置に基づい てタイミング信号が生成されるとともに(ステップS105)、当該測位推定位置が記憶位置となるように、記憶位置バッファ7の内容が更新される(ステップ S106)。その後、処理がステップS103に戻る。
上記の距離Lが閾値Lt以下である場合、タ イミング信号生成部11は、記憶位置バッファ7が記憶する記憶位置に基づいて、タイミング信号を生成する(ステップS109)。この場合、アラームの発生 処理は行われない(アラームが既に発生していた場合は停止される)。また、直近位置と記憶位置は一致するため、記憶位置バッファ7の内容は更新されない。 その後、処理がステップS103に戻る。
上記のステップS103〜S109の処理が反復して行われることにより、タイミ ング信号生成装置20においては、設定位置又は直近にタイミング信号の生成に用いられた測位推定位置が継続して監視され、当該位置と、最新の測位推定位置 と、のズレが一定の距離を超える場合には、最新の測位推定位置に基づいてタイミング信号が生成される。従って、正確なタイミング信号を安定的に生成するこ とができる。
以上に説明したように、本実施形態のタイミング信号生成装置20は、設定位置記憶部5と、タイミング信号生 成部11と、判定部8と、を備える。設定位置記憶部5は、衛星50からの衛星信号を受信するGNSSアンテナ1の位置を、内部又は外部から設定された場合 に、当該設定された位置である設定位置を記憶する。タイミング信号生成部11は、設定位置にGNSSアンテナ1が配置されているとみなして計算することに より得られるGNSSアンテナ1と衛星50との擬似距離を用いた計算により、タイミング信号を生成できる。判定部8は、設定位置がGNSSアンテナ1の位 置を表すものとして所定程度確からしいか否かの判定を行い、所定程度確からしい場合には設定位置に基づいてタイミング信号生成部11にタイミング信号を生 成させ、所定程度確からしくない場合には、設定位置に基づくタイミング信号の生成を停止させるタイミング生成停止制御、及び、アラームを発生させるアラー ム発生制御を行う。
これにより、ユーザの操作等により設定される設定位置の確からしさを評価することで、位置の設定の誤り、及び、GNSSアンテナ1の設置位置の誤り等に対して適切に対応することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置20においては、設定位置に基づいてタイミング信号生成部11がタイミング信号を生成している間(言い換えれ ば、記憶位置バッファ7が設定位置を記憶している間)、判定部8は、当該設定位置が所定程度確からしいか否かの判定を反復継続的に行う。
これにより、GNSSアンテナ1が事後的に移動することによる位置ズレに対して、適切に対応することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置20において、記憶位置バッファ7が設定位置を記憶している場合に、判定部8は、GNSSアンテナ1が受信した衛星信号を用いて行われた測位計算に基づく測位推定位置と、記憶位置(設定位置)と、の間の距離Lが閾値Lt以下である場合に(L≦Lt)、設定位置が所定程度確からしいと判定する。判定部8は、距離Lが閾値Ltを上回る場合に(L>Lt)、設定位置が所定程度確からしくないと判定する。
これにより、実際に測位計算を行って得られるGNSSアンテナ1の位置である測位推定位置と、設定位置と、のズレに基づいて、設定位置の確からしさを適切に評価することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置20において、記憶位置バッファ7が設定位置を記憶している場合に、設定位置が所定程度確からしくないと判定し た場合は、タイミング信号生成部11に、測位推定位置にGNSSアンテナ1が配置されているとみなして得られるGNSSアンテナ1と衛星50との擬似距離 を用いて、タイミング信号を生成させる。
これにより、設定位置が確からしくないと判定された場合に、代わりに測位推定位置を用いてタイミング信号生成部11にタイミング信号の生成を行わせることで、例えばGNSSアンテナ1が移動した場合でも、高精度のタイミング信号を継続して出力することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置20において、タイミング信号生成部11が測位推定位置に基づいてタイミング信号を生成している場合(言い換え れば、記憶位置バッファ7が測位推定位置を記憶している場合)、判定部8は、記憶位置、即ち、タイミング信号生成部11がタイミング信号を直近に生成した ときの測位推定位置(測位直近位置)が、GNSSアンテナ1の位置を表すものとして所定程度確からしいか否かを判定する。そして、所定程度確からしい場合 には、判定部8は、上記の測位直近位置に基づいてタイミング信号を生成させ、所定程度確からしくない場合には、上記の測位直近位置に基づいてタイミング信 号生成部11がタイミング信号を生成するのを停止させるタイミング生成停止制御、及び、アラームを発生させるアラーム発生制御を行う。
これにより、GNSSアンテナ1が設定位置から移動した後、更に移動することによる位置ズレに対して、適切に対応することができる。
また、本実施形態の電子機器であるドローンは、タイミング信号生成装置20を備える。
これにより、予め計画した位置にて運用するような用途において、何らかの要因で、設定位置と実際のGNSSアンテナ1の位置が乖離していたり、事後的に GNSSアンテナ1が移動してしまったりした場合などでも、適切に対応して、正確なタイミングで動作させることができる。
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の変形例に係るタイミング信号生成装置20xについて説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図4に示す変形例のタイミング信号生成装置20xは、地上に固定して運用される電子機器としての無線基地局設備に備えられる点、及び、測位推定位置算出部 4が出力する測位推定位置を用いてタイミング信号生成部11がタイミング信号を生成することはない点で、第1実施形態に係るタイミング信号生成装置20と は異なっている。
簡単に説明すると、このタイミング信号生成装置20xにおいては、設定位置記憶部5が出力する設定位置が、判定部8及び切替部17に入力される。
切替部17は、設定位置記憶部5から入力された設定位置をタイミング信号生成部11に出力する状態と、出力しない状態とを、判定部8からの信号に基づいて切り換える。
判定部8は、測位推定位置と設定位置との間の距離Lが閾値Lt以下である場合は、切替部17が設定位置をタイミング信号生成部11に出力し、そうでない場合は、切替部17が設定位置をタイミング信号生成部11に出力しないように制御する。また、判定部8は、測位推定位置と設定位置との間の距離Lが閾値Ltを上回る場合は、アラーム発生部9がアラームを発生させ、そうでない場合は、アラーム発生部9がアラームを発生させないように(アラームが発生している場合は、停止させるように)制御する。
本変形例のタイミング信号生成装置20xでは、設定位置の確からしさが判定部8により継続的に監視され、確からしくないと判定された場合は、設定位置に基 づくタイミング信号の出力を停止してアラームを発生させる。そして、アラームの発生後であっても、(例えばGNSSアンテナ1の移動によって)設定位置の 確からしさが回復した場合には、判定部8は、アラームの発生を停止し、設定位置に基づくタイミング信号の出力を再開するように制御する。
以上に説明したように、本変形例のタイミング信号生成装置20xにおいて、設定位置が所定程度確からしくないと判定されてアラームが発生した後に、判定部 8は、設定位置が所定程度確からしいか否かの判定を引き続き行い、所定程度確からしいと判定した場合は、アラームを停止させる制御を行う。
これにより、設置を計画する位置をタイミング信号生成装置20xに設定位置として予め入力した後に、当該タイミング信号生成装置20xを現場へ運搬し、実 際に設置するときは、GNSSアンテナ1が正確な位置にあることを、発生しているアラームが停止することで確認し、その上で固定するような作業が可能にな る。これにより、設置作業を正確かつ効率的に行うことができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイミング信号生成装置40について説明する。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態又は変形例と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
上述の第1実施形態及びその変形例では、GNSSアンテナ1によって電波を受信する衛星50の数が4個以上でないと、測位計算部3が測位計算を行うことが できず、ユーザ等により設定された設定位置が受信点の位置を正確に表しているか否かについて判定部8が判定を行うことができない。
この点を考慮して、本実施形態のタイミング信号生成装置40は、電波を受信できる衛星50の数が3個以下(例えば、1個)であっても、設定位置の確からしさについて評価できるように構成されている。
図5に、本実施形態のタイミング信号生成装置40の主たる構成を示している。図5に示すように、このタイミング信号生成装置40は、GNSSアンテナ1、 信号復調部2、搬送波周波数取得部15、コード位相取得部18、設定位置記憶部5、判定部16、アラーム発生部9、切替部17、及びタイミング信号生成部 11等を備えている。
信号復調部2は、前述の第1実施形態と同様に、GNSSアンテナ1で受信した衛星信号から軌道情報 及び時刻情報を取り出すことができる。得られた軌道情報や時刻情報は、判定部16及びタイミング信号生成部11に出力される。また、信号復調部2は、信号 の復調の過程で再現された前記PRNコードをコード位相取得部18に出力するとともに、再現された搬送波を搬送波周波数取得部15に出力する。
搬送波周波数取得部15は、信号復調部2から入力された搬送波の周波数を計測することにより取得する。搬送波周波数取得部15は、得られた搬送波周波数を判定部16に出力する。
コード位相取得部18は、内部の水晶時計のタイミングに基づいてレプリカPRNコードを生成するとともに、このレプリカPRNコードと、信号復調部2から 入力されたPRNコードと、の時間的なズレ(チップ時間)を求めることにより、衛星信号のコード位相を取得する。コード位相取得部18は、得られたコード 位相を判定部16に出力する。
設定位置記憶部5は、前述の第1実施形態と同様に、設定位置を記憶する。設定位置記憶部5は、記憶する設定位置を判定部16及び切替部17に出力する。
判定部16は、信号復調部2が出力する軌道情報及び時刻情報と、搬送波周波数取得部15が出力する搬送波周波数と、設定位置記憶部5が出力する設定位置 と、に基づいて、設定位置が現在のGNSSアンテナ1の設置位置(受信点の位置)を表すものとして確からしいか否かを判定する。判定部16は、この判定結 果を、アラーム発生部9及び切替部17に出力する。なお、判定部16の構成の詳細は後述する。
切替部17は、設定位置記憶部5から入力された設定位置をタイミング信号生成部11に出力する状態と、出力しない状態とを、判定部16からの信号に基づいて切り換える。
タイミング信号生成部11は、切替部17から設定位置が入力された場合、第1実施形態と同様に、当該設定位置に基づいてタイミング信号を生成して出力する。
次に、判定部16について詳細に説明する。この判定部16は、図6に示すように、判定位置生成部23と、擬似距離予測値算出部24と、擬似距離実測値算出部25と、残差比較部26と、を備える。
判定位置生成部23は、判定部16に入力された設定位置に基づいて、当該設定位置の確からしさを判定するために用いられる判定位置を生成する。判定位置 は、設定位置と互いに異なるように定められる。判定位置としては任意の様々な位置とすることができ、1でも複数でもよいが、本実施形態では、図7に示すよ うに、設定位置Hから東西南北のそれぞれの方向に所定距離だけ離れるように4つの判定位置C1,C2,C3,C4が生成されている。判定位置生成部23 は、生成した判定位置C1,C2,・・・を、擬似距離予測値算出部24に出力する。
擬似距離予測値算出部24では、判定 部16に入力された設定位置HにGNSSアンテナ1が設置されていた場合と、判定位置生成部23が生成した判定位置C1,C2,・・・のそれぞれに GNSSアンテナ1が設置されていた場合と、を仮定し、各場合における擬似距離の予測値を算出する。ここで、擬似距離とは、衛星50とGNSSアンテナ1 との距離を意味する。擬似距離予測値は、信号復調部2から得られた軌道情報と時刻情報と、前記の方法で用意した受信機の位置から、衛星50の位置ベクトル を求めることにより得ることができる。
擬似距離実測値算出部25は、搬送波周波数取得部15で取得した周波数から得られ る衛星と受信機との相対速度に更新時間を乗じて得られた距離と、コード位相取得部18で取得したコード位相(チップ時間)に光速を乗じた距離と、を加算す ることによって、擬似距離の実測値を算出する。擬似距離実測値算出部25は、得られた擬似距離の実測値を、残差比較部26に出力する。
残差比較部26は、GNSSアンテナ1が設定位置Hにあると仮定した場合の擬似距離予測値よりも、GNSSアンテナ1が何れかの判定位置 C1,C2,・・・にあると仮定した場合の擬似距離予測値の方が、擬似距離実測値に近いか否かを、それぞれの場合の擬似距離の予測値と実測値との差である 残差を比較することにより判定する。
より具体的には、残差比較部26は、図7に示す判定位置C1,C2,C3,C4のそれぞれについての擬似距離の予測値と、擬似距離の実測値と、の差分である擬似距離残差D1,D2,D3,D4を求める。また、残差比較部26は、設定位置Hについての擬似距離予測値と、擬似距離実測値と、の差分である擬似距離残差DHを求める。
残差比較部26は、各判定位置C1,C2,C3,C4についての擬似距離残差D1,D2,D3,D4と、設定位置Hについての擬似距離残差DHと、の大小を比較する。
その結果、擬似距離残差D1,D2,D3,D4の何れもが、擬似距離残差DHと等しいかそれよりも大きい場合(D1≧DH、D2≧DH、D3≧DH、かつD4≧DH)、 現実の受信点(GNSSアンテナ1)の位置は、判定位置C1,C2,C3,C4よりも設定位置Hに近い可能性が高いと考えられる。別の言い方をすれば、設 定位置が、実際のGNSSアンテナ1の位置を表すものとして、所定程度確からしいということができる。そこで、この場合、残差比較部26は、切替部17が 設定位置Hをタイミング信号生成部11に出力するように制御するとともに、アラーム発生部9がアラームを発生させないように制御する。
一方で、擬似距離残差D1,D2,D3,D4の少なくとも何れかが、擬似距離残差DHよりも小さい場合(D1<DH、D2<DH、D3<DH、又はD4<DH)、 現実の受信点の位置は、設定位置Hよりも、むしろ判定位置C1,C2,C3,C4の何れかに近い可能性が高いと考えられる。別の言い方をすれば、設定位置 が、実際のGNSSアンテナ1の位置を表すものとして所定程度確からしくないということができる。そこで、この場合、残差比較部26は、切替部17が設定 位置Hをタイミング信号生成部11に出力しないように制御するとともに、アラーム発生部9がアラームを発生させるように制御する。
これにより、タイミング信号生成部11は、設定位置が実際の受信点の位置に対して確からしい場合に限り、タイミング信号を生成して出力する。また、アラー ム発生部9は、設定位置が実際の受信点の位置に対して確からしくない場合には、アラームを発生させる。よって、タイミング信号の精度を高く保つことができ るとともに、設定位置と現実の受信点の位置とが乖離する場合は、ユーザがアラームにより早期に気付いて対応することができる。
本実施形態では、図7に示すように、判定位置C1,C2・・・が、設定位置Hの周囲に複数生成されている。従って、GNSSアンテナ1の位置が設定位置H に対してどの方向にズレたとしても、それを、何れかの判定位置C1,C2,・・・における擬似距離予測値が実測値に近づくことで検出し易くなる。従って、 設定位置Hの確からしさを適切に評価することができる。
また、判定位置生成部23が生成する判定位置C1,C2,・・・ が設定位置Hからどれほど離れて配置されるかは、例えばユーザがタイミング信号生成装置40に設定位置Hを設定する際に、適宜指示することにより設定する ことができる。また、特別な指示をタイミング信号生成装置40に対して行うことにより、判定位置C1,C2,・・・が設定位置Hから離れて配置される距離 を、GNSSアンテナ1が受信する衛星信号の強度が大きければ短くなり、小さければ長くなるように、自動的に変更することもできる。これにより、要求され るタイミング精度、電波受信状況等を考慮した柔軟な運用を行うことができる。
なお、本実施形態において、タイミング信号 を生成するためにタイミング信号生成装置40を用いて行われる方法の一連の流れを、図8に示している。図8は、第2実施形態においてタイミング信号を生成 するために行われるタイミング信号生成方法を示すフローチャートである。なお、図8の処理は、第1実施形態(図3)とは異なり、事前に設定位置がタイミン グ信号生成装置40に入力されていることが前提となる。
図8のフローチャートに基づいて簡単に説明すると、まず、判定位置生成部23が、設定位置Hの周囲に判定位置C1,C2,・・・を生成する(ステップS201)。
次に、擬似距離予測値算出部24が、GNSSアンテナ1が設定位置Hにある場合と、各判定位置C1,C2,・・・にある場合と、を仮定し、それぞれの仮定 における擬似距離の予測値を計算する(ステップS202)。この計算には、受信した衛星信号を解析して得られた軌道情報と、時刻情報と、が用いられる。
また、擬似距離実測値算出部25が、受信した衛星信号の搬送波周波数に基づいて、擬似距離の実測値を計算する(ステップS203)。
その後、残差比較部26は、ステップS202で算出した5つの擬似距離の予測値について、それぞれ、ステップS203で算出した擬似距離の実測値との残差 を計算し、当該残差が設定位置Hよりも小さい判定位置C1,C2,・・・が存在するか否かを判断する(ステップS204)。
ステップS204の判断で、擬似距離の予測値と実測値との残差が設定位置Hよりも小さい判定位置C1,C2,・・・が存在した場合、アラーム発生部9がア ラームを発生させるとともに、タイミング信号生成部11によるタイミング信号の生成が停止される(ステップS205、ステップS206)。その後、処理が ステップS201に戻る。
ステップS204の判断で、擬似距離の予測値と実測値との残差が設定位置Hよりも小さい判定位 置C1,C2,・・・が存在しなかった場合、アラーム発生部9はアラームを発生させず、また、タイミング信号生成部11は、設定位置に基づいて、タイミン グ信号を生成する(ステップS207)。その後、処理がステップS201に戻る。
以上の処理がタイミング信号生成装置 40において行われることにより、設定位置HがGNSSアンテナ1の実際の位置を表すものとして所定程度確からしいか否かが反復継続的に評価され、確から しいと判定された場合にのみタイミング信号が生成される。従って、正確なタイミング信号を安定的に生成することができる。
以上に説明したように、本実施形態のタイミング信号生成装置40において、判定部16は、設定位置HにGNSSアンテナ1があると仮定した場合と、設定位 置Hと異なる位置である判定位置C1,C2,・・・にGNSSアンテナ1があると仮定した場合と、のそれぞれにおける、衛星50とGNSSアンテナ1との 擬似距離の予測値を計算する。判定部16は、衛星信号のコード位相や搬送波周波数などにより求めた擬似距離の実測値に対し、設定位置Hよりも前記予測値が 近い判定位置C1,C2,・・・がない場合に、設定位置Hが所定程度確からしいと判定する。判定部16は、擬似距離の実測値に対し、設定位置Hよりも前記 予測値が近い判定位置C1,C2,・・・がある場合に、設定位置Hが所定程度確からしくないと判定する。
これにより、設定位置Hの確からしさを、測位計算を行わずに評価することができるので、受信できる衛星50の数が少ない場合(衛星電波の受信状況が良くない場合)でも良好に運用することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置40において、判定位置C1,C2,・・・は、設定位置Hの周囲に複数生成される。
これにより、設定位置Hに対してGNSSアンテナ1がどの方向にズレている場合であっても、設定位置Hの確からしさを適切に評価することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置40において、判定位置C1,C2,・・・が設定位置Hからどれだけ離れた位置に生成されるかを示す距離を、ユーザが設定可能に構成されている。
これにより、要求されるタイミング精度(言い換えれば、GNSSアンテナ1の位置について求められる精度)に応じた柔軟な運用を実現することができる。
また、本実施形態のタイミング信号生成装置40において、判定位置C1,C2,・・・は、設定位置Hから、GNSSアンテナ1で受信した衛星信号の強度に応じた距離だけ離れた位置に生成される。
これにより、GNSSアンテナ1での衛星信号の受信状況の良否に応じて、設定位置Hの確からしさを適切に判定することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
第1実施形態で、設定位置が所定程度確からしくないと判定された場合に、判定部8が、アラームを発生させる制御を行わずに、設定位置に基づいてタイミング 信号生成部11がタイミング信号を生成するのを停止させる制御、及び、測位推定位置に基づいてタイミング信号を生成させる制御を行うように構成することが できる。或いは、上記の制御に加えて又はそれに代えて、設定位置が所定程度確からしくないと判定された場合に、この設定位置を破棄する制御が行われるもの としてもよい。
同様に、判定部8が測位直近位置の確からしさを判定した結果、所定程度確からしくなかった場合には、この測位直近位置を破棄する制御が行われるものとしてもよい。
第1実施形態の変形例、及び、第2実施形態において、設定位置が所定程度確からしくないと判定された場合に、判定部8,16がタイミング生成停止制御及び アラーム発生制御のうち一方だけを行うように変更することができる。また、上記の制御に加えて又はそれに代えて、設定位置が所定程度確からしくないと判定 された場合に、この設定位置を破棄する制御が行われるものとしてもよい。
上記の第1実施形態では、測位推定位置算出部4は、複数の測位解の平均値に基づいて測位推定位置を算出するものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。例えば平均値に代えて、最頻値或いは中央値に基づいて測位推定位置を算出するものとしてもよい。
第1実施形態において、測位推定位置算出部4が算出する測位推定位置に代えて、測位計算部3による測位結果が、測位計算に基づく位置として位置切替部10に入力されるように構成してもよい。
第1実施形態において、測位計算部3による測位結果の変化を監視し、測位結果の移動速度及び移動方向等が変化した場合にのみ、判定部8による判定が行われてもよい。
第1実施形態において、直近位置記憶部6及び記憶位置バッファ7のうち少なくとも何れかを、タイミング信号生成装置20の電源が失われても記憶内容を保持 可能であるように、例えば不揮発性の記憶部によって構成することができる。この場合、タイミング信号の生成に用いられる位置の継続性を確保することができ る。
第2実施形態において、判定位置生成部23が生成する判定位置C1,C2,・・・の数及び位置は、任意に変更するこ とができる。例えば、判定位置C1,C2,・・・を、設定位置Hに対して東西南北に離れた4点とすることに代えて、東西南北上下に離れた6点としてもよ い。また、判定位置C1,C2,・・・が、設定位置Hに対して2次元的又は3次元的にランダムな方向で所定の距離だけ離れた位置に1又は複数定められても よい。更に、判定位置C1,C2,・・・と設定位置Hとの位置関係は、当該判定位置C1,C2,・・・が生成される毎に変化してもよい。
測位計算部3及びタイミング信号生成部11が使用する軌道情報は、衛星信号から直接取得することに代えて、別の情報源から取得してもよい。例えば、電源投 入直後に短時間で測位可能な状態にするホットスタートのために不揮発性の記憶部に記憶される軌道情報を用いてもよい。例えば、タイミング信号生成装置をイ ンターネットに接続可能に構成し、軌道情報を、インターネットから取得したいわゆるGNSSアシスト情報に基づいて取得してもよい。
GNSSアンテナ1はタイミング信号生成装置20に対して取外し不能に取り付けられてもよいし、タイミング信号生成装置20に電気的に接続された外部アンテナとしてもよい。
タイミング信号は1PPSに限定されず、タイミングはこれより短い又は長い間隔としてもよい。また、タイミング信号は、任意の形態のパルスとしても構わない。更に、基準周波数信号の周波数は10MHzに限定されず、他の周波数としてもよい。
本発明のタイミング信号生成装置は、ドローンに限らず、正確なタイミングで動作することが必要な様々な電子機器に用いることができる。電子機器としては、 例えば、携帯電話や地上デジタル放送などに代表される無線通信設備等が考えられる。また、静止させた状態で使用するのであれば、移動可能な電子機器(例え ば、車載の電子機器)にタイミング信号生成装置を備えるように構成することもできる。