以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書により提供される粘着クリーナーのいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<<第一実施形態>>
図1は、一実施形態に係る粘着クリーナーにおける粘着テープロールを示す斜視図であり、図2はそのII−II線断面図である。この粘着テープロール10は、テープ状(長尺帯状)の基材20の第一面20Aに粘着面35が形成された粘着テープ12を、その粘着面35が外側(ロールの外周側)を向くようにして、巻芯14の周囲にロール状に巻回してなる。巻芯14としては、コスト、廃棄処分の容易性、クッション性等の観点から、紙製(典型的にはボール紙製)のものを好ましく用いることができる。あるいは、他の材質(例えば合成樹脂)からなる巻芯であってもよい。また、巻芯14を使わずに粘着テープ12のみをロール状に巻回してなる、いわゆるコアレスタイプの粘着テープロールであってもよい。すなわち、本発明において、巻芯14はあくまでも任意的な構成要素である。
粘着テープ12には、粘着テープロール10のほぼ一周長毎に、切断用の切れ目24が設けられている。この切れ目24は、粘着テープ12の長手方向の一端を残部から切断しやすくするために用いられる切断手段であって、例えば、長孔や波形のスリットを並べたもの、ミシン目等の間欠スリット、等であり得る。なお、図1に示す例では、切れ目24が粘着テープ12の幅方向(長手方向と直交する方向)に沿って設けられているが、幅方向に対して斜めに設けられていてもよい。切れ目の延びる方向は、一定であってもよく、途中で変わってもよい。例えば、粘着テープの幅の途中に、切れ目の延びる方向が直線的または曲線的に屈曲する箇所が一または二以上設けられていてもよい。また、図1に示す例では、粘着テープ12の幅全体を横断して切れ目24が設けられているが、粘着テープ12の幅の一方から途中まで延びて切断のきっかけを与えるように設けられた切れ目24であってもよい。
このように構成された粘着テープロール10は、例えば、図3に示すような治具50とともに、該治具50の回転部材52に取り付けられた形態の粘着クリーナー1として用いることができる。回転部材52は棒状であって、棒状の把持部材54の一端に回転自在に支持されている。粘着クリーナー1は、粘着テープロール10の巻芯14に回転部材52を挿入することにより、粘着テープロール10が回転部材52と連動してロール周方向に回転するように構成されている。
なお、粘着クリーナーを構成する治具の形態は、図3に示すものに限定されず、目的および用途に応じて種々の治具を適用することができる。また、この明細書により提供される粘着クリーナーは、図3に示すように治具と粘着テープロールとを含む形態に限定されず、粘着テープロールをそのまま粘着クリーナーとして用いるものであってもよい。すなわち、ここに開示される粘着テープロールは粘着クリーナーとしても把握され得る。また、この明細書により提供される粘着クリーナーの概念には、必要に応じて適当な治具に交換可能または使い切りの形態で取り付けて粘着クリーナーを構成する粘着テープロール(詰め替え用粘着クリーナー)が含まれる。
以下、粘着テープ12の構成をより詳しく説明する。粘着テープ12は、基材20と、その第一面20A上に設けられた第一層31と、第一層31の上に部分的に設けられた第二層32とを有する。第一層31は、粘着剤により構成された層であり、この実施形態ではゴム系粘着剤により構成されたゴム系粘着剤層である。第二層32は、粘弾性材料により構成された層であり、典型的にはアクリル系粘弾性材料により構成されたアクリル系粘弾性層である。粘着面35は、第一層31が露出する第一領域31Aと、第二層32が露出する第二領域32Aとが交互に配置されることにより、全体として粘着性を示すように構成されている。ここで、第二領域32Aは第一領域31Aよりも粘着テープロール10の外側(外周側)に突出している。このように構成することにより、粘着テープ12がロール状に巻かれた状態(すなわち、粘着テープロール10の状態)において、粘着テープ12の背面20Bに第一層31が直接貼り付く面積を減らし、粘着テープロール10からの粘着テープ12の引出し性(巻戻し性)を向上させることができる。
基材20の一方の面20Aは、その全範囲が粘着面35、すなわち第一層31および第二層32の少なくともいずれかが配置された面となっていてもよく、一部を除いた範囲が粘着面35となっていてもよい。例えば、図1,2に示すように、基材20の幅方向の両端に沿って、粘着面35が形成されていない非粘着部(ドライエッジ)22,23を有してもよい。この非粘着部22,23の幅は、各々、例えば1mm〜20mm(典型的には3mm〜15mm)程度とすることができる。非粘着部22の幅と非粘着部23の幅とは、同程度でもよく異なってもよい。また、基材20の幅方向のいずれか一端側にのみ非粘着部が設けられていてもよい。基材20の全長のうち一部の長さのみに、連続してまたは断続的に非粘着部が設けられていてもよい。
この実施形態では、第一層31は、基材20の全範囲または上記非粘着部を残した範囲に、むらなく連続して形成(ベタ塗り)されている。第一層31の厚さ(図2のT1)は、粘着テープロール10の用途に応じて、所望の粘着性能が得られるように適宜設定され得る。第一層31の厚さT1は、通常、2μm以上とすることが適当であり、5μm以上としてもよく、さらには10μm以上としてもよい。第一層31の厚さT1が大きくなると、クリーニング性能(典型的には、清掃対象面上の異物を捕捉する性能)が向上する傾向にある。一方、粘着テープロール10の小型軽量化や資源の節約の観点から、第一層31の厚さT1は、通常、凡そ50μm以下とすることが適当であり、凡そ35μm以下が好ましく、凡そ25μm以下(例えば凡そ20μm以下)でもよい。なお、このように連続的に形成された第一層31の表面は、平滑面であってもよく、微細な凹凸(例えば筋目)が設けられた面であってもよい。第一層31の表面に微細な凹凸を設けることにより、異物捕捉性を向上させ得る。
第二層32の平面形状、断面形状および配置は、粘着テープ12の第二面(背面)20Bに第一層31が直接貼り付く面積を適度に減らすように設定することができる。例えば、複数の線状の第二層32が互いにほぼ平行に配置された態様を好ましく採用し得る。各第二層32の平面形状は、直線状、曲線状、折れ線状、波型等であり得る。製造容易性の観点から、直線状の第二層32が好ましい。この実施形態では、粘着テープ12の長手方向に延びる複数の直線状の第二層32が、第一層31の上に、粘着テープ12の幅方向に間隔をあけて互いにほぼ平行に(ストライプ状に)配置されている。このような形態の粘着テープシート10は、粘着テープ12の長手方向の各部における構成(断面形状)が一定であることから、該長手方向に対する巻戻し力や、粘着テープロール10をその適用対象面(清掃対象面)上で転動させる場合における使用感(手応え)のばらつきが少ないので好ましい。すなわち、上記巻戻しや転動をよりスムーズに行うことができる。このことは、例えば板張りの床面等のような硬質な平滑面上を転動させる場合における転がり音抑制の観点からも有利となり得る。
ここに開示される粘着テープロールは、一の方向に互いにほぼ平行に延びる複数の直線状の第二層からなる第一群と、該一の方向と交差(典型的には直交)する方向に互いにほぼ平行に延びる複数の直線状の第二層からなる第二群と、を有する態様であってもよい。例えば、第一群の第二層と、第二群の第二層とが格子状に配置された態様であり得る。
第二層32の形状が線状である場合、該線の幅(図2のW2)は特に限定されず、用途(例えば、清掃対象面の材質や表面状態、除去対象物等。以下同じ)、第一層31の構成、粘着テープロール10のサイズ等に応じて設計することができる。一態様において、第二層32の幅W2は、例えば凡そ0.1mm以上とすることができ、凡そ0.15mm以上としてもよく、凡そ0.2mm以上としてもよく、さらには凡そ0.3mm以上としてもよい。また、W2は、例えば凡そ5mm以下とすることができ、凡そ2mm以下としてもよく、凡そ1mm以下、凡そ0.7mm以下、さらには凡そ0.5mm以下としてもよい。W2を調節することにより、巻戻し力や使用時の手応えを調節することができる。なお、第二層32の形状が場所による幅の変動を伴う線状である場合(例えば、連続的または段階的に幅の拡大と縮小を繰り返しつつ延びる線状である場合)は、所定長さの範囲における第二層32の幅の平均値に対して上述したW2の数値を適用することができる。
第二層32は、粘着面35の全体に亘ってほぼ均等に配置されていることが好ましい。例えば、図1,2に示すように複数の線状の第二層32が互いにほぼ平行に配置された態様において、それらの第二層32のピッチ(図2のP)は概ね一定であることが好ましい。上記ピッチPは、特に限定されず、用途、第一層31の構成、粘着テープロール10のサイズ等に応じて設計することができる。一態様において、第二層32のピッチPは、例えば凡そ0.5mm以上とすることができ、通常は凡そ1mm以上とすることが適当であり、1.5mm以上としてもよい。また、第二層32のピッチPは、例えば凡そ10mm以下とすることができ、通常は凡そ5mm以下とすることが適当であり、凡そ4mm以下としてもよく、凡そ3mm以下としてもよい。
ここに開示される粘着テープロールの他の態様として、複数のドット状(点状または島状)の第二層が、所定のパターンに沿って、あるいはランダムに配置された態様が例示される。ドット状の第二層の形状は、特に限定されず、例えば円形、楕円形、長円形、扇形(例えば半円形)、リング状、四角形(正方形、長方形、台形、菱形等)、四角形以外の多角形(三角形、六角形等)、その他、各種の図案、記号、文字等を表す形状であってもよい。第二層32の形状がドット状である場合、各ドットの面積は、例えば凡そ0.1mm2以上とすることができ、通常は凡そ0.5mm2以上(例えば凡そ1mm2以上)とすることが適当である。また、各ドットの面積は、例えば凡そ25mm2以下とすることができ、通常は凡そ10mm2以下(例えば凡そ5mm2以下)とすることが適当である。一のドット状第二層は、これに隣接する一のドット状第二層との間に例えば0.1mm〜10mm程度(典型的には0.5mm〜5mm程度、例えば1mm〜3mm程度)の間隔をおいて配置することができる。
粘着面35の一部は、第二層32が露出した第二領域32Aにより構成されている。第二領域32Aは、少なくともその一部が第一領域31Aよりも外側に突出している。このような構成を有することにより、例えば硬質な平滑面(板張りの床面等)を清掃対象面とする場合、該清掃対象面上で粘着面35を転動させると、第二領域32Aが優先的に清掃対象面に接触する一方、第一領域31Aの清掃対象面への接触は制限される。これにより、使用時の手応えが高くなりすぎることを防ぎ、レール引きの発生も回避することができる。また、柔軟性のある粗面(カーペットの表面等)を清掃対象面とする場合は、清掃対象面の変形により該清掃対象面への第一領域31Aの接触面積が増し、良好な異物捕捉性能を発揮することができる。このように、本実施形態の粘着クリーナーは、様々な材質および性状の清掃対象面に対して好ましく適用することができる。
この実施形態では、第二層の厚さT2が、第一領域31Aからの第二領域32Aの突出高さとなる。特に限定するものではないが、上記突出高さT2は、例えば凡そ10μm以上とすることができ、凡そ20μm以上としてもよく、凡そ30μm以上、さらには凡そ40μm以上としてもよい。突出高さT2を大きくすることにより、第一領域31Aの清掃対象面への接触を制限する効果が大きくなる。また、弾性を有する第二層32の突出によって粘着テープロール10に適度なクッション性が付与され、使用時における転がり音の発生を抑制することができる。また、上記クッション性を有することにより、清掃対象面への押付け圧によって該清掃対象面に対する粘着面35の接触面積(特に、第一領域31Aの接触面積)を調節しやすくなる。一態様において、突出高さT2は凡そ50μm以上(例えば凡そ60μm以上)であってよい。また、突出高さT2は、例えば凡そ2mm以下(典型的には凡そ1mm以下)とすることができ、第二層32の形成容易性や形状維持性の観点から、通常は凡そ500μm以下とすることが適当であり、凡そ150μm以下とすることが好ましい。突出高さT2は、凡そ100μm以下としてもよく、凡そ85μm以下としてもよい。突出高さT2が小さくなると、第二層32の厚さも概して小さくなる。このことは、粘着テープ12を切り取る際に第二層32が糸引きを生じる事象を抑制する観点から有利となり得る。ここに開示される技術は、突出高さT2が例えば凡そ65μm以下(さらには凡そ50μm以下)である態様でも好適に実施され得る。
一態様において、第二領域32Aの突出高さT2は、第一層31の厚さT1よりも大きくすることができる(すなわちT1<T2)。このような構成によると、好適なクッション性を有する粘着テープロールが実現されやすい。ここに開示される技術は、上記突出高さT2が上記厚さT1の凡そ1.5倍以上(典型的には2倍以上、例えば3倍以上)である態様で好ましく実施され得る。また、上記突出高さT2が上記厚さT1の凡そ10倍以下(典型的には7倍以下、例えば5倍以下)である態様で好ましく実施され得る。
第一領域31Aと第二領域32Aとの合計面積に占める第二領域32Aの面積の割合は、例えば2%以上とすることができ、通常は5%以上とすることが適当であり、10%以上としてもよく、15%以上、さらには20%以上としてもよい。また、上記割合は、例えば70%以下とすることができ、通常は50%以下とすることが適当であり、40%以下としてもよく、30%以下としてもよい。第一領域31Aと第二領域32Aとの面積割合を調節することにより、使用時の手応えを好適な範囲に調整し得る。なお、(本実施形態における粘着テープロール10では、上記合計面積は、粘着面35の面積および第一層31の形成面積と一致する。
特に限定するものではないが、基材20の第一面20Aから第二領域32Aまでの高さH(本実施形態では、第一層31の厚さと第二層32との合計厚さ、すなわちT1+T2に相当する。)は、例えば250μm以下とすることができ、通常は150μm以下とすることが適当であり、120μm以下(例えば100μm以下)とすることが好ましい。上記高さHを小さくすることは、粘着テープロールの小型化または長尺化の観点から有利となり得る。また、巻戻し力比の調製容易性や粘着性能の観点から、上記高さHは、通常、15μm以上とすることが適当であり、25μm以上とすることが好ましく、35μm以上(例えば45μm以上)とすることがより好ましい。
<巻戻し力>
ここに開示される粘着テープロールは、典型的には、0℃における巻戻し力F0が30℃における巻戻し力F30の10倍以下となるように構成されている。すなわち、F0/F30により算出される巻戻し力比(以下、単に巻戻し力比ともいう。)が10以下である。巻戻し力比が所定以下に制限されていることは、巻戻し力の温度依存性が抑制されていることを意味する。このことによって、低温でも粘着面を更新する際の作業性がよく、かつ室温でも巻きほどけが抑制された粘着テープロールを好適に実現することができる。
ここで、粘着テープロールの巻戻し力は、以下のようにして測定される。
[巻戻し力の測定]
測定対象の粘着テープロールを引張試験機にセットし、測定温度X℃において、粘着テープの巻回外周端を引張試験機のチャックに装着して1000mm/分の速度(巻戻し速度)で引っ張ることにより、上記粘着テープロールを接線方向に巻き戻す。このとき観測される引張強度を必要に応じて粘着面の幅あたりの値に換算することにより、X℃における巻戻し力FXを求めることができる。例えば、上記引張強度を粘着面の幅150mmあたりの値に換算することにより、N/150mmの単位で表わされる巻戻し力FXを求めることができる。測定対象における粘着面の幅が150mmである場合は、換算なしの測定値をN/150mmの単位で表わされる巻戻し力FXとすることができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。測定温度を0℃および30℃とすることにより、巻戻し力F0およびF30をそれぞれ測定することができる。巻戻し力の測定は、測定対象の粘着テープロールを測定温度に1時間以上保持して同温度に馴染ませた後に行うことが望ましい。
一般に、測定環境温度が低くなると、粘着テープロールの巻戻し力は高くなる傾向にある。このため、常温(典型的には20〜30℃程度)におけるレール引きや巻きほどけを抑制しようとして巻戻し力を高くすると、低温で粘着面の更新作業を行う際に巻戻し力が高すぎて粘着テープを引き出しにくくなり、粘着テープが途中で千切れたり裂けたりする、引出し操作に慎重を要するため作業性が低下する、等の不都合が生じがちである。逆に、低温でも粘着面の更新作業を行いやすいように巻戻し力を調整すると、常温ではレール引きや巻きほどけが発生しやすくなる。ここに開示される技術によると、巻戻し力比を小さくすることにより、すなわち巻戻し力の温度依存性を低くすることにより、粘着面更新時の良好な作業性と、レール引きや巻きほどけの発生防止とを両立することができる。
ここに開示される技術において、粘着テープロールの巻戻し力比(すなわち、F0/F30)は、好ましくは凡そ8以下、より好ましくは凡そ6以下であり、凡そ4以下(例えば凡そ3以下)であってもよい。巻戻し力比が小さくなると(すなわち、巻戻し力の温度依存性を低減すると)、粘着面更新時の良好な作業性と、レール引きや巻きほどけの発生防止とがより高レベルで両立する傾向にある。巻戻し力比は、通常は凡そ1以上であり、1を大きく下回る場合には低温での測定において投錨破壊等の不具合が生じることがあり得る。ここに開示される粘着テープロールの巻戻し力比は、1以上の範囲で小さいほど良好な結果が得られる傾向にある。一方、実用的な見地から、ここに開示される粘着テープロールは、巻戻し力比が1より大きい(例えば凡そ1.2以上、さらには凡そ1.5以上である)態様でも好適に実施され得る。巻戻し力比は、粘着面を構成する材料の選択、粘着面の構造(例えば、第一層および第二層の厚さ、第一領域および第二領域の形状、サイズ、配置等)、粘着テープの背面を構成する材料の選択、等により調整することができる。
粘着テープロールの30℃における巻戻し力F30は、特に限定されない。一態様において、巻戻し力F30を凡そ0.3N/150mm以上とすることにより、巻きほどけを抑制する効果が有意に発揮され得る。巻戻し力F30を凡そ0.5N/150mm以上(例えば凡そ0.7N/150mm以上)とすることにより、より高い効果が発揮され得る。一方、粘着面の更新等のために粘着テープロールから粘着テープを意図的に引き出す際の作業性や、粘着面構成材料の粘着テープ背面への転移(転着)防止の観点から、巻戻し力F30は、通常、凡そ5N/150mm以下(典型的には凡そ3N/150mm以下、例えば凡そ2N/150mm以下)とすることが適当であり、凡そ1.5N/150mm以下(例えば凡そ1.0N/150mm以下)であってもよい。
粘着テープロールの0℃における巻戻し力F0は、特に限定されないが、通常は凡そ7N/150mm以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ6.0N/150mm以下、より好ましくは凡そ5.0N/150mm以下であり、凡そ4.0N/150mm以下(例えば凡そ3.0N/150mm以下)であってもよい。巻戻し力F0を小さくすることにより、低温においても粘着テープロールから粘着テープを引き出しやすくなる傾向にある。一方、レール引きや巻きほどけを抑制する観点から、巻戻し力F0は、通常、凡そ0.5N/150mm以上とすることが適当であり、凡そ1N/150mm以上(例えば凡そ1.5N/150mm以上)とすることが好ましい。0℃巻戻し力および30℃巻戻し力の各々は、粘着面を構成する材料の選択、粘着面の構造、粘着テープの背面を構成する材料の選択、等により調整することができる。
<基材>
粘着テープロールの基材としては、各種の樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。樹脂フィルムの材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー)、アクリル樹脂等が例示される。アクリル樹脂としては、アクリロイル基を有するモノマーを多く(典型的には、重量基準で、メタクリロイル基を有するモノマーよりも多く)用いて合成されたもの、メタクリロイル基を有するモノマーを多く(典型的には、重量基準でアクリロイル基を有するモノマーよりも多く)用いて合成されたもののいずれも使用可能である。なお、ここでいうアクリル樹脂の概念には、一般にアクリルゴムと称されるものが包含され得る。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリオレフィンシート(PE製発泡体シート、PP製発泡体シート等)、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等の樹脂発泡体シートが挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。なお、この明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のフィルムであって、発泡体シートとは異なり、いわゆる不織布や織布とも区別される概念である。基材の構成材料には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。
基材は、単層構造であってもよく、二以上の層が積層した複層構造であってもよい。例えば、紙の背面に剥離処理剤による剥離処理層を有する形態の基材、紙の背面に樹脂フィルムが積層された形態の基材、紙の背面に樹脂材料が溶融押出しコーティングされた形態の基材、単層または複層の樹脂フィルム、単層または複層の樹脂発泡体シート、等を好ましく用いることができる。一態様において、少なくとも第二面が樹脂材料(好ましくはポリオレフィン樹脂、例えばPE樹脂)により構成された基材を用いることができる。
基材の第一面(第一層および第二層を支持する面であって、粘着テープロールの外側を向く面)には、コロナ放電処理や下塗り剤の塗布等、第一面に対する投錨性を高めるための表面処理が施されていてもよい。また、第一面に表面処理が施されていない基材を使用してもよい。第一面が紙または布製である基材によると、上記表面処理を必要とすることなく良好な投錨性が得られやすい。このことは、コスト低減や生産性向上等の観点から有利となり得る。
基材の第二面(粘着面に対向する面であって、粘着テープロールの内側を向く面)には、剥離処理剤の塗布等、粘着テープロールの巻戻し力を適切な範囲に調節するための表面処理が施されていてもよい。好ましい一態様において、紙の第二面(公知の目止め剤で処理された面であり得る。)に剥離処理が施された基材や、紙の第二面に積層された樹脂フィルムに剥離処理が施された基材等を用いることができる。剥離処理に使用する剥離処理剤は特に限定されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤やフッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、その他の公知または慣用の剥離処理剤を、目的や用途に応じて用いることができる。剥離処理剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい他の一態様において、第二面に上記表面処理が施されていない基材を用いることができる。例えば、第二面が低極性の樹脂材料(例えば、PE樹脂等のポリオレフィン樹脂)により構成された基材を使用し、第二層を構成する粘弾性材料を適切に選択することにより、上記表面処理(剥離処理等)を必要とすることなく適切な巻戻し力を示す粘着テープロールを好適に実現することができる。
本実施形態では、図2に示すように、支持層202と背面層204とが積層された複層構造の基材20を用いている。支持層202は紙(ここでは上質紙)からなり、その第二面側にラミネートされたPE樹脂フィルムによって背面層204が構成されている。基材20の第二面20B(背面層204の表面)には剥離処理は施されていない。
ここに開示される技術において、基材の厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。一態様において、基材の厚さは、例えば200μm以下とすることができ、150μm以下であってもよく、100μm以下(例えば80μm以下)であってもよい。基材の厚さを小さくすることは、巻きほどけ抑制の観点から有利となり得る。また、基材の厚さは、例えば10μm以上とすることができ、典型的には25μm以上、好ましくは40μm以上であり、50μm以上であってもよい。基材の厚さが大きくなると、該基材の強度は概して向上する傾向にある。したがって、基材の厚さを大きくすることは、粘着テープをロールから引き出す際の千切れや裂けを防止する観点から有利となり得る。例えば、樹脂フィルムや不織布、紙製の基材に対して上記の厚さを好ましく採用することができる。また、例えば発泡体シートを含む単層または複層の基材を用いる態様において、該基材の厚さは、通常、150μm以上(典型的には300μm以上、好ましくは500μm以上、例えば700μm以上)とすることが適当であり、また、3mm以下(典型的には2mm以下、好ましくは1.5mm以下、例えば1.2mm以下)とすることが適当である。
基材の幅(すなわち粘着テープの幅)は、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。粘着テープロールの使い勝手の観点から、基材の幅は、通常、1cm以上とすることが適当であり、3cm以上が好ましく、5cm以上であってもよく、10cm以上であってもよい。基材の幅が大きくなると、粘着テープロールから粘着テープを引き出しにくくなり、また、巻きほどけも起こりやすくなる傾向にある。したがって、ここに開示される技術を適用して巻戻し作業性と巻きほどけの抑制とを両立する意義が大きくなる。かかる観点から、ここに開示される技術は、基材の幅が例えば凡そ12cm以上(典型的には凡そ14cm以上)である形態で好ましく実施され得る。基材の幅は、例えば凡そ100cm以下とすることができ、典型的には凡そ70cm以下、好ましくは凡そ50cm以下であり、凡そ40cm以下であってもよく、凡そ35cm以下、さらには凡そ30cm以下(例えば凡そ25cm以下)であってもよい。ここに開示される技術は、基材の幅が例えば凡そ10cm以上凡そ50cm以下(好ましくは凡そ14cm以上凡そ40cm以下)である形態で好ましく実施され得る。
かかる基材の第一面に形成される粘着面の幅は、通常、凡そ0.8cm以上とすることが適当であり、凡そ2.5cm以上が好ましく、凡そ4.5cm以上であってもよく、さらには凡そ9.5cm以上であってもよい。粘着面の幅が大きくなると、粘着テープロールから粘着テープを引き出す際の千切れや裂けが生じやすくなる傾向にある。このため、ここに開示される技術を適用して巻戻し作業性と巻きほどけの抑制とを両立する意義は大きくなる。かかる観点から、ここに開示される技術は、粘着面の幅が例えば凡そ11cm以上(典型的には凡そ13cm以上)である形態で好ましく実施され得る。粘着面の幅は、例えば凡そ98cm以下とすることができ、典型的には68cm以下、好ましくは凡そ48cm以下であり、凡そ39cm以下、凡そ34.5cm以下、さらには凡そ29.5cm以下(例えば凡そ24.5cm以下)であってもよい。ここに開示される技術は、粘着面の幅が例えば凡そ9.5cm以上凡そ48cm以下(好ましくは凡そ13cm以上凡そ39cm)である形態で好ましく実施され得る。
特に限定するものではないが、円筒状の粘着テープロールの直径は、通常、凡そ10mm以上(典型的には30mm以上、例えば40mm以上)であり得る。ここで粘着テープロールの直径とは、当該粘着テープロールの未使用時における直径(外径)をいう。上記粘着テープロールの直径は、通常、凡そ200mm以下(典型的には凡そ150mm以下、好ましくは凡そ100mm以下)であり、凡そ80mm以下であってもよい。また、円筒状の粘着テープロールを構成する粘着テープの内周径は、通常、凡そ8mm以上(典型的には25mm以上、例えば35mm以上)であり得る。ここで、粘着テープの内周径とは、粘着テープの巻回開始端における巻回径をいい、粘着テープが巻芯に巻かれた形態の粘着テープロールでは該巻芯の外径と概ね一致する。上記粘着テープの内周径は、通常、凡そ190mm以下(典型的には凡そ140mm以下、好ましくは凡そ95mm以下)であり、凡そ75mm以下であってもよい。粘着テープロールにおける粘着テープの巻回厚さ(典型的には、粘着テープロールの直径と粘着テープの内周径との差の1/2に相当する。)は、典型的には1mm以上であり、好ましくは凡そ2.5mm以上、より好ましくは凡そ5mm以上(例えば凡そ7mm以上)である。粘着テープロールの使用開始時と使用終了時との使用感の違いを抑制する観点から、上記巻回厚さは、通常、凡そ50mm以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ30mm以下、より好ましくは凡そ20mm以下であり、凡そ15mm以下(例えば凡そ12mm以下)であってもよい。なお、円筒状の粘着テープロールの幅(巻回軸方向の長さ)は、通常、上述した基材の幅と概ね同等である。ここに開示される技術は、このようなサイズで好ましく実施され得る。
<第一層>
第一層を構成する粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。ここで、ゴム系粘着剤とは、ベースポリマーとしてゴム系ポリマーを含む粘着剤をいう。他の粘着剤についても同様である。
なお、本明細書においてベースポリマーとは、ポリマー成分のなかの主成分(最も配合割合の高い成分)を指す。ここに開示される粘着剤に含まれるポリマー成分において、ベースポリマーの配合割合は、固形分基準で、典型的には凡そ50重量%以上であり、通常は凡そ70重量%以上が適当であり、凡そ90重量%以上であってもよい。上記ベースポリマーの配合割合は、上限が100重量%であり、例えば凡そ99重量%以下であってもよい。粘着性能やコストの観点から、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。
アクリル系粘着剤としては、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む粘着剤が用いられる。ここでアクリル系ポリマーとは、一分子中に少なくともひとつの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成モノマー成分(アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のなかの主成分、すなわち該モノマー成分の総量のうち50重量%以上を占める成分)とするポリマーを指す。アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の70重量%以上(例えば90重量%以上)がアクリル系モノマーであってもよい。なお、本明細書中において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、本明細書中において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
ゴム系粘着剤としては、天然ゴムやその変性物等の天然ゴム系重合体、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、結晶性ポリオレフィン−エチレン/ブチレン−結晶性ポリオレフィンブロック共重合体(CEBC)、およびスチレン−エチレン/ブチレン−結晶性ポリオレフィンブロック共重合体(SEBC)等のゴム系ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとする粘着剤が挙げられる。
ゴム系粘着剤の一好適例として、SISをベースポリマーとする粘着剤(SIS系粘着剤)が挙げられる。この実施形態では、第一層31がSIS系粘着剤により構成されている。上記SIS系粘着剤は、ベースポリマーとしてのSISの他、例えば、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)およびプロセスオイルを主要な成分として含有し得る。各成分の種類や配合比は、粘着テープロールの用途に応じて、所望の粘着性能が得られるように設定され得る。
上記粘着付与樹脂としては、一般的なロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等の各種粘着付与樹脂を、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の配合量は、例えば凡そ50〜200重量部程度とすることができ、通常は凡そ80〜150重量部程度とすることが適当である。
上記プロセスオイルとしては、例えば、一般的なパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等のプロセスオイルを、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。特に限定するものではないが、ベースポリマー100重量部に対するプロセスオイルの配合量は、例えば凡そ50〜200重量部程度とすることができ、通常は凡そ90〜150重量部程度とすることが適当である。
第一層を構成する粘着剤(例えば、SIS系粘着剤)には、さらに、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。これらの添加剤の種類や配合量は、一般的な粘着剤の分野における通常の種類および配合量と同様とすることができる。
第一層を構成する粘着剤は、粘着成分を加熱溶融させて粘着剤層を形成するホットメルト型、粘着成分が水中に分散している水分散型(典型的にはエマルション型)、粘着成分が有機溶剤に溶解している溶剤型等の、種々のタイプの粘着剤であり得る。生産性や環境負荷軽減の観点から、ホットメルト型の粘着剤を好ましく採用し得る。
<第二層>
この実施形態において、第二層を構成する粘弾性材料としては、アクリル系粘弾性材料を用いることができる。ここでアクリル系粘弾性材料とは、アクリルポリマーをベースポリマーとする粘弾性材料、すなわち該粘弾性材料に含まれるポリマー成分のうち最も配合割合の高い成分がアクリル系ポリマーである粘弾性材料をいう。ここに開示される粘弾性材料に含まれるポリマー成分において、ベースポリマーの配合割合は、固形分基準で、典型的には凡そ50重量%以上であり、通常は凡そ70重量%以上が適当であり、凡そ90重量%以上であってもよい。ベースポリマーの配合割合は、上限が100重量%であり、例えば凡そ99重量%以下であってもよい。
なお、ここに開示される技術において、第二層を構成する粘弾性材料は、室温(例えば25℃前後)において粘着性を示す材料(すなわち粘着剤)であってもよく、実質的に粘着性を示さない材料であってもよい。第一層を構成する粘着剤(第一粘着剤)の組成と、第二層を構成する粘弾性材料の組成とは、同一であってもよく異なってもよい。ここに開示される技術の一態様において、第二層を構成する粘弾性材料としては、第一粘着剤とは異なる組成の粘弾性材料(粘着剤であり得る。)を好ましく採用することができる。第二層を構成する粘弾性材料の組成は、例えば、第一粘着剤に追加の成分(例えばフィラー)を添加した組成や、第一粘着剤に含まれ得る一部の成分(例えば粘着付与剤)の含有量を増加、減少またはなくした組成であり得る。あるいは、第一粘着剤のベースポリマーが、第二層を構成する粘弾性材料とは別種のベースポリマー(例えばゴム系ポリマー)であってもよい。好ましい一態様において、第二層を構成する粘弾性材料としては、第一粘着剤に比べて、より粘着力の低いアクリル系粘着剤または実質的に粘着性を示さないアクリル系粘弾性材料であり得る。
アクリル系粘弾性材料(好ましくはアクリル系粘着剤)のベースポリマーであるアクリル系ポリマーは、該ポリマーを構成するモノマー成分が2種以上のモノマーを含む場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体等であってもよい。製造容易性や取扱い性の観点から好ましいアクリル系ポリマーとして、ランダム共重合体およびブロック共重合体が挙げられる。アクリル系ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(アクリル系ランダム共重合体)
好ましい一態様に係るアクリル系ポリマーは、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から合成されたアクリル系ランダム共重合体を含む。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を好ましく使用することができる。
CH2=CR1COOR2 (1)
ここで、上記式(1)中のR1は水素原子またはメチル基である。また、R2は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。)である。アクリル系粘弾性材料の貯蔵弾性率等の観点から、R2がC1−12(例えばC2−10、典型的にはC4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)の一方または両方を用いることが好ましい。
アクリル系ランダム共重合体を構成する全モノマー成分に占める主モノマーの割合は、凡そ60重量%以上であることが好ましく、凡そ80重量%以上であることがより好ましく、凡そ90重量%以上であることがさらに好ましい。全モノマー成分に占める主モノマーの割合の上限は特に限定されないが、アクリル系粘弾性材料の特性(粘着力、凝集力など)の調整を容易とする観点から、通常は凡そ99重量%以下(例えば凡そ98重量%以下、典型的には凡そ95重量%以下)とすることが好ましい。アクリル系ランダム共重合体は、実質的に主モノマーのみを重合したものであってもよい。
上記アクリル系ランダム共重合体を重合するために用いられるモノマー原料は、アクリル系粘弾性材料の特性の調整等を目的として、主モノマーに加えて、該主モノマーと共重合可能な副モノマーをさらに含んでもよい。そのような副モノマーの好適例として、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。上記官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、アクリル系粘弾性材料の特性(粘着力、凝集力等)を調節しやすくする目的で添加され得る。上記官能基含有モノマーの例としては、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基(グリシジル基)含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系ポリマーに架橋点を導入しやすく、またアクリル系粘弾性材料の架橋密度を調節しやすいことから、カルボキシ基、水酸基およびエポキシ基の少なくともいずれかを有する官能基含有モノマーを好ましく採用し得る。なかでも好ましい官能基含有モノマーとして、カルボキシ基含有モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
上述のような官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中に上記官能基含有モノマー(好適にはカルボキシ基含有モノマー)が凡そ1〜10重量%(例えば凡そ2〜8重量%、典型的には凡そ3〜7重量%)配合されていることが好ましい。
上記モノマー原料は、副モノマーとして、例えばアクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記官能基含有モノマー以外の副モノマーの量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中、凡そ20重量%以下(例えば2〜20重量%程度、典型的には3〜10重量%程度)とすることが好ましい。
モノマー原料からアクリル系ポリマー(アクリル系ランダム共重合体)を合成する方法は特に限定されず、従来公知の溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の一般的な重合方法を適宜採用することができる。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ)等が例示される。重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類やモノマーの種類(モノマー混合物の組成)等に応じて適宜選択できる。重合開始剤の使用量は、通常、全モノマー成分100重量部に対して、例えば0.005〜1重量部程度の範囲から選択することが適当である。重合温度は、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
アクリル系ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。例えば、Mwが概ね30万〜100万程度のアクリル系ランダム共重合体をベースポリマーとして好適に使用することができる。好ましい一態様において、上記第二層は、Mwが上記範囲にあるアクリル系ランダム共重合体をベースポリマーとして含む溶剤型組成物から形成されたアクリル系粘弾性層であり得る。
(アクリル系ブロック共重合体)
好ましい他の一態様に係るアクリル系ポリマーは、アクリル系ブロック共重合体である。上記アクリル系ブロック共重合体は、典型的には、少なくとも1つのハードセグメントA(以下「Aブロック」ともいう。)と少なくとも1つのソフトセグメントB(以下「Bブロック」ともいう。)と1分子中に有する。上記ハードセグメントAとは、アクリル系ブロック共重合体の構造のうち、該アクリル系共重合体におけるソフトセグメントBとの関係で、相対的に硬いブロックを指す。また、上記ソフトセグメントBとは、上記アクリル系ブロック共重合体の構造のうち、上記ハードセグメントAとの関係で、相対的に柔らかいブロックを指す。
上記アクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性ポリマー(典型的には熱可塑性エラストマー)の性質を示すものであり得る。ここに開示されるアクリル系粘弾性材料は、上記アクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含むことにより、ホットメルト形式での塗工に適した粘弾性材料(ホットメルト型粘弾性材料)であり得る。第二層の形成にホットメルト型粘弾性材料を用いることは、生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい。
ここで、アクリル系ブロック共重合体とは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むブロック共重合体をいう。例えば、全モノマー単位の50重量%以上がアクリル系モノマーに由来するモノマー単位であるアクリル系ブロック共重合体が好ましい。このようなアクリル系ブロック共重合体は、例えば、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から好ましく合成することができる。
上記アクリル系ブロック共重合体としては、少なくとも1つのアクリレートブロック(以下、Acブロックともいう。)と、少なくとも1つのメタクリレートブロック(以下、MAcブロックともいう。)とを1分子中に備えるものを好ましく用いることができる。例えば、AcブロックとMAcブロックとが交互に配置された構造のアクリル系ブロック共重合体が好ましい。1分子のポリマーに含まれるAcブロックとMAcブロックとの合計ブロック数は、例えば平均2.5〜5程度(例えば平均2.7〜3.3程度、典型的には平均3程度)であり得る。
一態様において、上記Acブロックは、該Acブロックを構成する全モノマー単位のうち凡そ50重量%以上がアルキルアクリレートに由来するモノマー単位であることが好ましい。上記モノマー単位の凡そ75重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)がアルキルアクリレート由来であってもよい。好ましい一態様では、上記アクリル系ブロック共重合体に含まれるAcブロックが、実質的に1種または2種以上(典型的には1種)のアルキルアクリレートからなる重合体である。あるいは、Acブロックは、アルキルアクリレートと他のモノマー(例えばアルキルメタクリレート等)との共重合体であってもよい。
Acブロックを構成するアルキルアクリレートの例としては、アルキル基の炭素原子数が1〜20のアルキルアクリレート(すなわち、C1−20アルキルアクリレート)が挙げられる。C1−20アルキルアクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート(BA)、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート(IOA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート(INA)、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。構成モノマー単位としてC4−14アルキルアクリレートを含むAcブロックが好ましく、構成モノマー単位としてC4−9アルキルアクリレートを含むAcブロック(例えば、BAおよび2EHAの少なくとも一方を含むAcブロック)がより好ましい。構成モノマー単位としてC6−9アルキルアクリレートを含むAcブロックであってもよい。
好ましい一態様では、Acブロックを構成するモノマーのうち50重量%以上が、アルキル基の炭素原子数が4〜14のアルキルアクリレートである。アルキル基の炭素原子数が4〜14のアルキルアクリレートの割合が75重量%以上であってもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)であってもよい。例えば、Acブロックを構成するモノマー単位が実質的にBA単独である構成、2EHA単独である構成、BAおよび2EHAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。
Acブロックを構成するモノマー単位がBAと2EHAの両方を含む態様において、BAと2EHAとの重量比は特に限定されない。上記モノマー単位におけるBA/2EHAの重量比は、例えば10/90〜90/10、好ましくは80/20〜20/80、より好ましくは30/70〜70/30であり、60/40〜40/60であってもよい。
上記MAcブロックは、該MAcブロックを構成する全モノマー単位のうち凡そ50重量%以上がアルキルメタクリレートに由来する主モノマー単位であることが好ましい。上記MAcを構成する全モノマー単位のうち凡そ75重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)がアルキルメタクリレート由来であってもよい。好ましい一態様では、上記アクリル系ブロック共重合体に含まれるMAcブロックが、実質的に1種または2種以上(典型的には1種)のアルキルメタクリレートからなる重合体である。あるいは、MAcブロックは、アルキルメタクリレートと他のモノマー(例えばアルキルアクリレート)との共重合体であってもよい。
MAcブロックを構成するアルキルメタクリレートとしては、アルキル基の炭素原子数が1〜20(好ましくは1〜14)のアルキルメタクリレートが挙げられる。その具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましい一態様では、MAcブロックを構成するモノマーのうち凡そ50重量%以上が、アルキル基の炭素原子数が1〜4(好ましくは1〜3)のアルキルメタクリレートである。アルキル基の炭素原子数が1〜4のアルキルメタクリレートの割合が凡そ75重量%以上であってもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)であってもよい。なかでも好ましいアルキルメタクリレートとして、メチルメタクリレート(MMA)およびエチルメタクリレート(EMA)が挙げられる。例えば、上記モノマー単位が実質的にMMA単独である構成、EMA単独である構成、MMAおよびEMAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。
上記アクリル系ブロック共重合体は、凝集力や弾性に優れた硬い構造のポリマーからなるAブロック(ハードセグメントA)と、粘性に優れた柔らかい構造のポリマーからなるBブロック(ソフトセグメントB)とが交互に配置されるように共重合されたものであり得る。このような構造のアクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとする粘弾性材料は、凝集力や弾性と粘性とを高度に両立させた第二層を形成し得る。また、かかる組成の粘弾性材料は、ホットメルト型粘弾性材料として好ましく使用することができる。ホットメルト型粘弾性材料においては、両端にAブロックが配された構造のアクリル系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。かかる構造のアクリル系ブロック共重合体は、凝集性と熱可塑性とのバランスの良いものとなりやすい。溶融粘度低減等の観点から、星形構造や分岐構造に比べて、直鎖構造のアクリル系ブロック共重合体が有利である。
なお、アクリル系ブロック共重合体が2以上のAブロックを有する場合において、それらのAブロックのモノマー組成、分子量(重合度)、構造等は、互いに同一であってもよく異なってもよい。アクリル系ブロック共重合体が2以上のBブロックを有する場合における該Bブロックについても同様である。
上記Aブロックとしては、上述のようなMAcブロックを好ましく採用し得る。上記Bブロックとしては、上述のようなAcブロックを好ましく採用し得る。好ましい一態様では、アクリル系ブロック共重合体が、MAcブロック−Acブロック−MAcブロック(ABA型)構造のトリブロック共重合体である。例えば、このようなトリブロック共重合体であって、2つのMAcブロックが実質的に同一のモノマー組成を有するものを好ましく採用し得る。
一態様において、C6−9アルキルアクリレートに由来するモノマー単位を含むソフトセグメントBを有するアクリル系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。C6−9アルキルアクリレートの具体例としては、2EHA、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、INA、IOA等が挙げられる。このようなアルキルアクリレートは、概してホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が低いため、Acブロックの構成モノマー成分として用いられることにより、該Acブロックを有するアクリル系ブロック共重合体の低温性能を向上させ、ひいては該アクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとする粘弾性材料(第二層)の低温性能(例えば、低温における柔軟性)を向上させ得る。その結果、低温条件下における巻戻し力の上昇が少なくなり、巻戻し力比(F0/F30)が抑制され得る。ホモポリマーのTgが−55℃未満(より好ましくは凡そ−60℃以下、例えば凡そ−65℃以下)であるC6−9アルキルアクリレートによると、上述の効果がよりよく発揮され得る。なお、上記で例示したC6−9アルキルアクリレートのTgは、2EHAが−70℃、n−オクチルアクリレートが−65℃、n−ノニルアクリレートが−60℃、INAが−58℃、IOAが−58℃である。
C6−9アルキルアクリレートの使用量は、Acブロックを構成するモノマー単位のうち、例えば凡そ10重量%以上とすることができ、好ましくは凡そ20重量%以上、より好ましくは凡そ30重量%以上、さらに好ましくは凡そ40重量%以上である。Acブロックを構成するモノマー単位が1種または2種以上のC6−9アルキルアクリレートのみにより構成されていてもよい。また、アクリル系粘弾性体の凝集性等の観点から、Acブロックを構成するモノマー単位のうち、C6−9アルキルアクリレートの使用量を凡そ90重量%以下としてもよく、凡そ75重量%以下、さらには凡そ60重量%以下としてもよい。
一態様において、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12、典型的には6〜9)のアルキルアクリレートと、アルキル基の炭素原子数が2〜5(例えば3〜4、典型的には4)のアルキルアクリレートとを、20/80〜80/20(より好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40、例えば45/55〜55/45)の重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックをソフトセグメントBとして有するアクリル系ブロック共重合体を用いることができる。このようなアクリル系ブロック共重合体は、低温性能と凝集性とのバランスに優れたものとなり得る。例えば、2EHAとBAとを上記重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックをソフトセグメントBとして有するアクリル系ブロック共重合体を好ましく使用し得る。上記Acブロックが2EHAおよびBAのみから構成されていてもよい。
アクリル系ブロック共重合体に含まれるハードセグメントAとソフトセグメントBとの重量比は特に限定されない。ハードセグメントA/ソフトセグメントBの重量比(A/B)は、例えば4/96〜90/10の範囲とすることができ、通常は7/93〜70/30の範囲とすることが適当であり、10/90〜50/50(より好ましくは15/85〜40/60、例えば15/85〜25/75)の範囲とすることが好ましい。2以上のハードセグメントAを含むアクリル系ブロック共重合体では、それらのハードセグメントAの合計重量とソフトセグメントBとの重量比が上記範囲にあることが好ましい。2以上のソフトセグメントBを含むアクリル系ブロック共重合体についても同様である。ハードセグメントA(例えばMAcブロック)の割合が多くなると、低温での柔軟性が低下して低温(例えば0℃)における巻戻し力が高くなりやすく、巻戻し力の温度依存性が高くなる傾向にある。ソフトセグメントB(例えばAcブロック)の割合が多くなると、アクリル系粘弾性体の凝集力が低下しやすくなる傾向にある。
ここに開示されるアクリル系ブロック共重合体の好適例では、アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー単位に対応するモノマー原料が、アルキル基の炭素原子数が1〜3のアルキル(メタ)アクリレートmXと、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキル(メタ)アクリレートmYとを含む。mX/mYの重量比は、例えば4/96〜90/10であり得る。上記重量比が7/93〜70/30であるアクリル系ブロック共重合体が好ましく、10/90〜50/50であるものがより好ましく、15/85〜40/60であるものがさらに好ましく、15/85〜30/70(例えば15/85〜25/75)であるものが特に好ましい。mXの割合が多くなると、巻戻し力が抑制され、粘着テープロールからの粘着テープの引出し作業性(巻戻し作業性)が向上する傾向にある。上記mXとしては、アルキル基の炭素原子数が1〜3のアルキルメタクリレートが好ましく、例えばMMAが好ましい。mYの割合が多くなると、巻きほどけが抑制されやすくなる。mYとしては、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12、好ましくは6〜9)のアルキルアクリレートが好ましく、例えば2EHAが好ましい。
なお、アクリル系ブロック共重合体を構成するモノマー単位の組成は、NMR測定の結果に基づいて把握することができる。上記NMR測定は、具体的には、例えばNMR装置としてブルカー・バイオスピン(Bruker Biospin)社製の「AVAVCEIII−600(with Cryo Probe)」を使用して、下記の条件で行うことができる。例えば、モノマー原料に含まれる2EHAとMMAとの重量比は、1H NMRスペクトルの4.0ppm(2EHA1)と3.6ppm(MMA1)とのピーク積分強度比に基づいて算出することができる。
[NMR測定条件]
観測周波数:1H;600MHz
フリップ角:30°
測定溶媒:CDCl3
測定温度:300K
化学シフト基準:測定溶媒(CDCl3,1H:7.25ppm)
アクリル系ブロック共重合体のMwは特に限定されない。例えば、Mwが3×104〜30×104程度のアクリル系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。アクリル系ブロック共重合体のMwは、通常、3.5×104〜25×104程度の範囲が好ましく、4×104〜20×104(例えば4.5×104〜15×104)の範囲がより好ましい。アクリル系ブロック共重合体のMwを高くすることは、アクリル系粘弾性体の凝集性の向上や、清掃対象面上の異物捕捉性向上の観点から有利である。一方、アクリル系ブロック共重合体のMwを低くすることは、溶融粘度または溶液粘度を低下させる観点から有利である。アクリル系粘弾性材料の溶融粘度を低下させることは、該粘弾性材料のホットメルト塗工により第二層を形成する態様では特に有意義である。
なお、ここでいうアクリル系ブロック共重合体のMwは、当該共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶かして調製したサンプルにつきゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行って求められる、ポリスチレン換算の値をいう。上記GPC測定は、具体的には、例えばGPC測定装置として東ソー社製の「HLC−8120GPC」を使用して、下記の条件で行うことができる。他のポリマーおよび後述するオリゴマーのMwも同様に測定することができる。
[GPC測定条件]
・カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:THF
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
・サンプル濃度:約2.0g/L(THF溶液)
・サンプル注入量:20μL
ここに開示される技術におけるアクリル系ブロック共重合体には、アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーとしては、アルコキシ基やエポキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基、カルボキシ基、酸無水物基等の官能基を有するビニル化合物、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニル化合物、N−ビニルピロリドン等のビニル基含有複素環化合物等を例示することができる。あるいはまた、アクリロイル基にフッ化アルキル基が結合した構造のアルキルアクリレート、フッ化アルキルアクリレートおよびフッ化アルキルメタクリレートが挙げられる。上記その他モノマーは、例えば、アクリル系粘弾性材料の特性を調整する目的で使用され得る、その含有量は、アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー成分の凡そ20重量%以下(例えば凡そ10重量%以下、典型的には凡そ5重量%以下)とすることが適当である。好ましい一態様では、アクリル系ブロック共重合体が上記その他モノマーを実質的に含有しない。例えば、上記その他モノマーの含有量が全モノマー成分の1重量%未満(典型的には0〜0.5重量%)または検出限界以下であるアクリル系ブロック共重合体が好ましい。
このようなアクリル系ブロック共重合体は、公知の方法(例えば、特開2001−234146号公報、特開平11−323072号公報を参照)により容易に合成することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。上記市販品の例としては、クラレ社製の商品名「クラリティ」シリーズ(例えば、LA2140e,LA2250等の品番のもの)、カネカ社製の商品名「NABSTAR」等が挙げられる。アクリル系ブロック共重合体の合成方法としては、リビング重合法を利用する方法を好ましく採用することができる。リビング重合法によると、アクリル系重合体本来の耐候性を維持しつつ、リビング重合法独自の優れた構造制御により熱可塑性に優れたアクリル系ブロック共重合体を合成し得る。また、分子量分布を狭く制御し得ることから、低分子量成分の存在に起因する凝集性の不足を抑えて、巻きほどけ防止性に優れた第二層が実現され得る。
上記アクリル系ブロック共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、相対的にMwの高いアクリル系ブロック共重合体BHと、該アクリル系ブロック共重合体BHよりもMwの低いアクリル系ブロック共重合体BLとを適宜の重量比で用いることができる。例えば、Mwが5×104〜20×104(例えば7×104〜20×104)の範囲にあるBHと、Mwが3×104〜8×104の範囲であってかつ上記BHのMwよりも低いBLとの組合せが好ましい。BHとBLとの重量比(BH/BL)は特に限定されず、例えば5/95〜95/5の範囲とすることができ、10/90〜90/10であってもよく、40/60〜90/10であってもよく、55/45〜90/10であってもよい。アクリル系粘弾性材料がMwの異なる2種以上のアクリル系ブロック共重合体を含むことや、各アクリル系ブロック共重合体のMwおよび重量比は、例えば、上述したGPC測定を通じて把握することができる。
第二層を構成する粘弾性材料は、アクリル系ポリマーに加えて、低温特性の向上や粘着力の低減、あるいは取扱い性や生産性向上等の目的で、アクリル系以外のポリマーを任意成分として含有してもよい。かかるポリマー(以下、任意ポリマーともいう。)は、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、酢酸ビニル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー等であり得る。このような任意ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。アクリル系ポリマー100重量部当たりの任意ポリマーの含有量は、目的または事情に応じて設定すればよく、例えば凡そ100重量部以下とすることができ、凡そ70重量部以下でもよく、凡そ50重量部以下、凡そ30重量以下、凡そ10重量部以下、さらには凡そ5重量部以下でもよい。第二層を構成する粘弾性材料が任意ポリマーを実質的に含有しなくてもよい。例えば、アクリル系ポリマー100重量部当たりの任意ポリマーの含有量が1重量部未満(典型的には0〜0.5重量部)であってもよい。
(オリゴマー)
ここに開示される技術において、第二層を構成する粘弾性材料は、粘度調整(例えば溶融粘度の低下)、粘着テープロールにおける粘着特性の制御(例えば粘着力の低減)、使用感(例えば、清掃対象面上を転動させる際の手応え)の改善等の目的で、任意成分としてオリゴマーを含有してもよい。かかるオリゴマーのMwは、特に限定されないが、典型的には凡そ30000以下である。一態様において、オリゴマーのMwは、凡そ20000以下であってよく、凡そ10000以下(例えば凡そ5000以下)であってもよい。また、オリゴマーのMwは、凡そ300以上であってよく、凡そ500以上(例えば凡そ800以上)であってもよい。
オリゴマーとしては、特に限定されず、公知のアクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、アクリルウレタン系オリゴマー、シリコーンアクリル系オリゴマー、オルガノシロキサン系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリオレフィン系オリゴマー、ビニルエーテル系オリゴマー等を用いることができる。オリゴマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。使用するオリゴマーは、公知の方法により製造することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。
ベースポリマーとの相溶性の観点から、一態様において、アクリル系オリゴマーやアクリルウレタン系オリゴマー等の、アクリル系モノマーに由来する単量体単位を含むオリゴマーを好ましく採用し得る。かかるオリゴマーを構成するモノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には凡そ50重量%超であり、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ85重量%以上であり、凡そ90重量%以上でもよく、実質的に100重量%であってもよい。アクリル系オリゴマーは、アクリル系モノマーを主成分とするモノマー原料のランダム共重合体であり得る。
オリゴマーを用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、オリゴマーの使用量は、例えば、ベースポリマー100重量部当たり凡そ150重量部以下とすることができ、通常は凡そ100重量部以下(例えば凡そ80重量部以下)とすることが適当である。また、オリゴマーの使用量は、ベースポリマー100重量部当たり、例えば凡そ5重量部以上とすることができ、凡そ10重量部以上としてもよく、凡そ20重量部以上(例えば凡そ30重量部以上)としてもよい。他の一態様において、オリゴマーの使用量は、ベースポリマー100重量部当たり、例えば凡そ25重量部以下とすることができ、凡そ10重量部以下(例えば凡そ5重量部以下)としてもよい。ここに開示される技術は、第二層を構成するアクリル系粘弾性材料が実質的にオリゴマーを含有しない態様でも好ましく実施することができる。例えば、ベースポリマー100重量部当たりのオリゴマー含有量が1重量部未満(典型的には0〜0.5重量部)であってもよい。
(フィラー)
ここに開示される技術において、第二層を構成する粘弾性材料は、フィラーを含んでいてもよい。第二層にフィラーを含有させることにより、巻戻し力の温度依存性の低減、粘着力の抑制、投錨性の向上、粘着テープの手切れ性の向上等の効果が実現され得る。
使用されるフィラーの種類は、特に制限されない。例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。フィラー(典型的には粒子状フィラー)の構成材料は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩;酸化チタン、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛等の金属水酸化物および水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス;等の無機材料;銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等のポリマー;等であり得る。あるいは、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーの一部または全部として顔料を用いてもよい。上記顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれであってもよい。なお、第一層を構成する粘着剤も同様にフィラーを含む組成であり得る。
特に限定するものではないが、フィラーの平均粒径は、例えば凡そ100μm以下であってよく、凡そ50μm以下でもよく、凡そ30μm以下(例えば凡そ15μm以下)でもよい。第二層の形成容易性や表面平滑性の観点から、フィラーの平均粒径は、第二層の厚さに対して、その凡そ70%以下(典型的には凡そ50%以下、例えば凡そ30%以下)であることが好ましい。また、フィラーの分散性や取扱い性の観点から、平均粒径が凡そ0.01μm以上(典型的には凡そ0.1μm以上、例えば凡そ1μm以上)のフィラーを好ましく採用し得る。
第二層を構成する粘弾性材料がフィラーを含む構成において、該第二層におけるフィラーの重量分率(第二層の重量に占めるフィラーの重量の割合)は、特に限定されず、所望の効果が得られるように設定することができる。上記重量分率は、例えば凡そ0.1%以上(典型的には凡そ0.5%以上)とすることができ、凡そ1%以上としてもよく、凡そ3%以上としてもよく、凡そ5%以上としてもよく、凡そ10%以上としてもよい。ここに開示される技術の一態様において、第二層におけるフィラーの重量分率は、凡そ20%以上とすることができ、凡そ30%以上(例えば凡そ40%以上)としてもよい。また、第二層の形成容易性や形状維持性の観点から、フィラーの重量分率は、通常、凡そ75%以下が適当であり、凡そ60%以下(例えば凡そ50%以下)が好ましい。一態様において、フィラーの重量分率は、10%未満としてもよく、例えば5%未満としてもよい。なお、第二層に含まれる成分のうちフィラー以外の成分は、エラストマー成分(非硬質成分)として把握され得る。したがって、フィラーを含む第二層における上記エラストマー成分の重量分率R[%]は、100%から該第二層におけるフィラーの重量分率を減算した値として把握され得る。フィラーを含まない第二層では、エラストマー成分の重量分率R[%]は100%である。
(粘着付与剤)
第二層を構成する粘弾性材料には、必要に応じて粘着付与剤を含ませることができる。粘着付与剤は、粘着力の調節の他、粘弾性材料の熱可塑性の向上(例えば溶融粘度の低下)等に役立ち得る。粘着付与剤としては、粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)の分野において公知の粘着付与樹脂等を用いることができる。例えば、炭化水素系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、第一層を構成する粘着剤も同様に粘着付与剤を含む組成であり得る。
粘着付与剤の軟化点は特に限定されないが、溶融粘度を低下させる観点からは凡そ160℃以下が好ましく、凡そ140℃以下(例えば凡そ120℃以下)がより好ましい。また、第二層の低温特性(例えば、低温における柔軟性)の観点から、軟化点が凡そ100℃以下(例えば凡そ80℃以下)の粘着付与剤を用いてもよい。粘着付与剤の軟化点は、典型的には60℃以上である。粘着付与剤の軟化点は、JIS K 2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定される。
粘着付与剤を用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、凡そ1重量部以上とすることができ、凡そ5重量部以上(例えば凡そ10重量部以上)としてもよい。また、低温特性の低下を避ける観点から、粘着付与剤の使用量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ50重量部以下が適当であり、凡そ30重量部以下(例えば凡そ20重量部以下)が好ましい。第二層が粘着付与剤を実質的に含有しなくてもよい。
(可塑剤)
第二層を構成する粘弾性材料には、必要に応じて可塑剤を含有させることができる。可塑剤は、溶融粘度の低下、粘着力の抑制、低温特性の向上等に役立ち得る。可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;セバシン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;エポキシ化脂肪酸オクチルエステル等のエポキシ化脂肪酸アルキルエステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、それらのエチレンオキサイド付加物等の環状脂肪酸エステルおよびその誘導体;等が挙げられる。また、プロセスオイル等の軟化剤も可塑剤に包含される。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、第一層を構成する粘着剤も同様に可塑剤を含む組成であり得る。
可塑剤を用いる場合における使用量は、特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、凡そ1重量部以上とすることができ、凡そ5重量部以上(例えば凡そ10重量部以上)としてもよい。粘着テープの背面や清掃対象面への可塑剤の移行を防ぐ観点から、可塑剤の使用量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して凡そ100重量部以下が適当であり、凡そ50重量部以下(例えば凡そ30重量部以下)が好ましい。第二層が可塑剤を実質的に含有しなくてもよい。
(架橋剤)
第二層を構成する粘弾性材料は、必要に応じて架橋されていてもよい。架橋には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等の有機金属塩、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤等の、公知の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に限定されない。一態様において、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、凡そ0.01重量部以上(典型的には凡そ0.02重量部以上、例えば凡そ0.05重量部以上)以下とすることができ、また、凡そ10重量部以下(例えば凡そ5重量部以下)とすることができる。上記粘弾性材料は、また、特段の架橋手段を適用することなく、非架橋の第二層を構成していてもよい。このことは簡便性等の観点から好ましい。
(その他成分)
その他、ここに開示される技術における第二層には、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、染料等、アクリル系粘弾性材料(例えばアクリル系粘着剤)の分野において公知の各種添加成分を必要に応じて配合することができる。これら必須成分ではない添加成分の種類や配合量は、この種の材料における通常の種類および配合量と同様とすればよい。
(破断時伸び)
第二層を構成する粘弾性材料の破断時伸びは、好ましくは凡そ2000%以下、より好ましくは凡そ1000%以下(例えば凡そ500%以下)であり得る。破断時伸びが小さくなると、粘着テープの手切れ性が向上する傾向にある。また、第二層の柔軟性や耐久性の観点から、上記破断時伸びは、通常、凡そ30%以上が適当であり、凡そ50%以上(例えば凡そ100%以上)であることが好ましい。
上記粘弾性材料の破断時伸びは、JIS K 7311:1995に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(厚さ1mm、幅5mm、標線間隔10mm)を用いて、引張速度300mm/分の条件で上記破断時伸びを測定することができる。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。試験に際しては、粘着面にパウダーをまぶして、粘着剤のべたつきによる影響を除去しておくことが好ましい。後述の実施例についても同様の方法が採用される。破断時伸びは、例えば、第二層を構成する粘弾性材料の組成(該粘弾性材料に含まれる成分の種類の選択や量の設定等)により調整することができる。
(破断強度)
第二層を構成する粘弾性材料の破断強度は、特に限定されないが、通常は凡そ50N/10mm以下であることが適当であり、凡そ20N/10mm以下(例えば凡そ10N/10mm以下)であってもよい。破断強度が小さくなると、粘着テープの手切れ性は向上する傾向にある。また、第二層の耐久性等の観点から、上記破断強度は、通常、凡そ1N/10mm以上であることが適当であり、凡そ2N/10mm(例えば凡そ3N/10mm)であってもよい。
上記粘弾性材料の破断強度は、JIS K 7311:1995に記載の「引張強さ」の測定方法に準拠して測定され、測定対象である粘弾性材料の幅10mm当たりの値[N/10mm]として求められる。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(厚さ1mm、幅5mm、標線間隔10mm)を用いて、引張速度300mm/分の条件で上記破断強度を測定することができる。引張試験機その他については、基本的に上述の破断時伸びの場合と同様である。後述の実施例についても同様の方法が採用される。上記破断強度は、例えば、第二層を構成する粘弾性材料の組成(該粘弾性材料に含まれる成分の種類の選択や量の設定等)により調整することができる。
(AR値)
ここに開示される技術は、粘着テープの幅方向に沿う断面における第二層の断面積A[mm2]と、上記第二層におけるエラストマー成分の重量分率R[%]との積(すなわちA×Rの値。以下「AR値」ともいう。)が凡そ2.5以下である態様で好ましく実施され得る。このように構成することにより、粘着テープの手切れ性が向上し得る。例えば、粘着テープを切り取る際における第二層の糸引きを抑制し得る。上記糸引きは、典型的には、粘着テープの切取り予定箇所を跨いで延びる第二層を有する構成において、該粘着テープを切り取る際に、基材を分断しても上記第二層は分断されず、分断された基材の一方と他方との間で第二層が引き伸ばされることで発生する。かかる糸引きが顕著であると、切取り作業性が低下し、見栄えもよくないという不都合がある。また、新しい粘着面(切取り後の粘着テープロール表面に露出する粘着面)を構成する第二層が引き伸ばされることにより該粘着面の表面形状が乱れることもあり得る。AR値を制限することにより、上記第二層の糸引きが改善され得る。
上記第二層の断面積A[mm2]は、例えば凡そ0.001mm2以上とすることができ、通常は凡そ0.005mm2以上とすることが適当であり、凡そ0.007mm2以上としてもよく、凡そ0.01mm2以上としてもよい。一態様において、第二層の断面積A[mm2]は、凡そ0.015mm2以上であってもよく、凡そ0.02mm2以上であってもよい。また、第二層の断面積A[mm2]は、例えば凡そ5mm2以下とすることができ、通常は凡そ1mm2以下とすることが適当であり、凡そ0.5mm2以下としてもよく、凡そ0.1mm2以下としてもよく、凡そ0.05mm2以下としてもよい。一態様において、第二層の断面積A[mm2]は、凡そ0.03mm2以下(例えば凡そ0.02mm2以下)であってもよい。
ここで、第二層の断面積A[mm2]とは、粘着テープの幅方向に沿う断面に表れる上記第二層の面積を指す。第二層の断面積は、上記断面を例えば走査型電子顕微鏡で観察することにより把握され得る。また、例えば粘着テープの長手方向に延びる線状に形成された第二層において、単位長さの粘着テープに含まれる第二層の重量および該第二層の比重から第二層の断面積を求めてもよい。なお、AR値の算出におけるAは、第二層の断面積をmm2の単位で表したときの数値部分を指し、Aの数値自体は単位をもたない。また、AR値の算出におけるRは、第二層を構成する粘弾性材料におけるエラストマー成分の重量分率を%で表したときの数値部分を指し、Rの数値自体は単位をもたない。したがってAR値は無次元数である。
ここに開示される技術において、上記AR値は、好ましくは凡そ2.3以下、より好ましくは凡そ2.1以下であり、凡そ2.0以下(例えば凡そ1.7以下)であってもよい。AR値が小さくなると、第二層の糸引きがよりよく抑制される傾向にある。AR値の下限は特に制限されず、例えば凡そ0.1以上であり得る。第二層の形成容易性や形状維持性の観点から、AR値は、通常、凡そ0.3以上とすることが適当であり、凡そ0.5以上(例えば凡そ0.7以上)としてもよい。一態様において、AR値は、凡そ1.0以上(例えば凡そ1.2以上)であってもよい。AR値は、例えば、粘着テープの幅方向に沿う断面における第二層の幅および厚さ、該第二層におけるフィラーの使用量等により調節することができる。
(回転抵抗値)
ここに開示される粘着テープロールは、回転抵抗値が凡そ3N/150mm以上(例えば凡そ4N/150mm以上)であることが好ましく、また、上記回転抵抗値が凡そ12N/150mm以下(例えば凡そ15N/150mm以下)であることが好ましい。この程度の回転抵抗値を示す粘着テープロールは、良好な使用感が得られやすいので好ましい。例えば、清掃対象面上を転がす際に適度な手応えを与えることで、使用者が清掃効果を実感しやすくなる。また、回転抵抗値が高すぎないことにより、使用者の負担が軽減され、レール引きの発生も起こりにくくなる。回転抵抗値は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。より多様な清掃対象面(例えば、カーペット、ワックス加工されたフローリング面、ワックス加工なしのフローリング面等)に対して上記回転抵抗値を満たす粘着テープロールが好ましい。
<<第二実施形態>>
図5は、本発明の他の実施形態において粘着テープロールを構成する粘着テープを模式的に示す断面図である。この粘着テープ112は、基材120と、その第一面120A上に直接設けられた第一層131と、第一層131とは重複せずに第一面120A上に直接設けられた第二層132とを有する。第一層131は、上述した第一実施形態の第一層と同様の粘着剤(例えばゴム系粘着剤)により構成され得る。第二層132は、第一実施形態の第二層と同様の粘弾性材料(典型的にはアクリル系粘弾性材料、例えばアクリル系粘着剤)により構成され得る。
この実施形態において、粘着テープ112は、粘着テープ112の長手方向に直線状に延びる複数の第二層132を有し、それらの第二層132は、粘着テープ112の幅方向に間隔をあけて、互いにほぼ平行に(ストライプ状に)配置されている。また、この実施形態の粘着テープ112は、粘着テープ112の長手方向に直線状に延びる複数の第一層131を有する。各第一層131は、互いにほぼ平行に(ストライプ状に)、かつ隣接する第二層132層の間に配置されている。すなわち、第一層131と第二層132とは、粘着テープ112の幅方向に交互に配置されている。そして、第一層131が露出する第一領域131Aおよび第二層132が露出する第二領域132Aによって、全体として粘着性を示す粘着面135が形成されている。第二層の幅(図5に示すW2)は、上述した第一実施形態の第二層の幅と同程度の範囲から選択し得る。
第一層131の幅(図5に示すW1)は、例えば凡そ0.1mm以上とすることができ、凡そ0.3mm以上としてもよく、凡そ0.5mm以上としてもよい。また、第一層131の幅W1は、例えば凡そ50mm以下とすることができ、通常は凡そ20mm以下とすることが適当であり、凡そ10mm以下、凡そ5mm以下、凡そ1mm以下、さらには凡そ0.5mm以下としてもよい。W1を調節することにより、巻戻し力や使用時の手応えを調節することができる。なお、第一層131の形状が場所による幅の変動を伴う線状である場合は、所定長さの範囲における幅の平均値に対して上述した幅W1の数値を適用することができる。
特に限定するものではないが、第一層の幅W1は、例えば第二層の幅W2の0.5倍〜20倍(典型的には1倍〜10倍)程度とすることができ、通常は1倍〜5倍程度とすることが適当である。一態様において、W1をW2よりも大きくすることができる(すなわちW1>W2)。例えば、W1をW2の凡そ1.1倍以上としてもよく、凡そ1.3倍以上としてもよく、凡そ1.5倍以上としてもよい。
第一層131および第二層132は、第二層132の厚さT12が第一層131の厚さT11より大きくなるように形成することができる。第一層131と第二層132との厚さの差(T12−T11)は、例えば、第一実施形態における第一領域からの第二領域の突出高さT2と同程度の範囲から選択し得る。第一層131の厚さT11は、第一実施形態における第一層の厚さT1と同程度の範囲から選択し得る。第二層132の厚さT12は、第一実施形態における基材の第一面から第二領域までの高さHと同程度の範囲から選択し得る。
隣接する第一層131と第二層132とは、一部または全体が接触していてもよく、隙間Gを隔てて離れていてもよい。第一層131と第二層132との間に隙間Gを有することにより、一方の層の構成成分が他方の層に移行(拡散)することに起因する粘着テープ112の性能変化が抑制され得る。上記隙間Gを有することは、粘着テープ112およびこれを巻回してなる粘着テープロール110へのクッション性の付与にも役立ち得る。
また、上記隙間Gを有することにより、粘着面135の表面積が大きくなり、異物を捕捉する性能や捕捉した異物を保持する性能が向上し得る。隙間Gの幅は、例えば0.01mm以上とすることができ、0.05mm以上としてもよく、0.1mm以上としてもよい。また、隙間Gの幅は、例えば5mm以下とすることができ、1mm以下としてもよく、0.5mm以下としてもよい。
基材としては、第一実施形態の基材と同様、各種の樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。基材の第一面、第二面の一方または両方には、第一実施形態の説明において述べたように、必要に応じて表面処理が施されていてもよい。
基材またはその構成要素として用いられ得る樹脂フィルムの一好適例として、強度と柔軟性の観点から、ポリオレフィンフィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムは、α−オレフィンを主モノマー(モノマー成分のなかの主成分)とする重合体を主成分とするフィルムである。上記重合体の割合は、通常は50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90〜100重量%)である。ポリオレフィンの具体例としては、エチレンを主モノマーとするもの(PE)、プロピレンを主モノマーとするもの(PP)等が挙げられる。上記PEは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が3〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよく、エチレンとオレフィン以外のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のエチレン性不飽和モノマーから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよい。また、上記PPは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が2または4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよく、プロピレンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体であってもよい。ここに開示される基材は、上記のうち1種のポリオレフィンのみを含んでもよく、2種以上のポリオレフィンを含んでもよい。
上記ポリオレフィンフィルムは、強度向上の観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)を含み得る。この明細書においてHDPEとは、典型的には、密度が0.940g/cm3以上のポリエチレンを指す。基材におけるHDPEの含有割合は、強度(例えば引張強度)向上の観点から、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上(例えば30重量%以上、典型的には35重量%以上)であることがより好ましい。また、基材におけるHDPEの含有割合は、段差への追従性等を考慮して、通常は80重量%以下(例えば70重量%以下、典型的には60重量%以下)であり得る。
上記ポリオレフィンフィルムは、柔軟性向上の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み得る。この明細書においてLDPEとは、典型的には、密度が0.940g/cm3未満のポリエチレンを指す。ここに開示されるLDPEは、例えば、エチレンモノマーを高圧法により重合して得られるLDPE、エチレンと炭素原子数が3〜8のα−オレフィンモノマーとを低圧法により重合して得られるLDPE、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であって上記密度を有するもの、等であり得る。ここに開示される技術におけるLDPEの概念には、超低密度ポリエチレン(VLDPE)と称されるものや、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称されるものが包含され得る。LDPEは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術は、HDPEを含むポリオレフィンフィルム(典型的にはPEフィルム)を用いて構成された基材を備える態様で好ましく実施され得る。上記ポリオレフィンフィルムにおけるHDPEの含有割合は、強度(例えば引張強度)向上の観点から、10重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上(例えば50重量%以上)としてもよく、70重量%以上(例えば85重量%以上)としてもよい。実質的にHDPEからなるポリオレフィンフィルム(例えば、HDPEの含有割合が99〜100重量%であるポリオレフィンフィルム)を用いてもよい。あるいは、基材の柔軟性を考慮して、HDPEを95重量%以下(例えば90重量%以下、さらには75重量%以下)で含むポリオレフィンフィルムを用いてもよい。
ここに開示される技術は、HDPEとLDPEとを含むポリオレフィンフィルム(典型的にはポリエチレンフィルム)を用いて構成された基材を備える構成で好ましく実施され得る。このようなポリオレフィンフィルムを基材またはその構成要素として採用することにより、強度と柔軟性とを高度に両立することができる。上記ポリオレフィンフィルムにおけるHDPEとLDPEとの合計量は特に限定されないが、50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90〜100重量%)であることが好ましい。ここに開示される技術はまた、上記ポリオレフィンフィルムがHDPEおよびLDPE以外の材料を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。HDPEとLDPEとを併用する場合、基材におけるHDPEとLDPEとの重量比は特に限定されないが、通常は10:90〜90:10程度であり、好ましくは20:80〜80:20(例えば30:70〜70:30、典型的には35:65〜65:35)である。
上記ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィンに加えて、ポリオレフィン以外のポリマーを含んでもよい。ポリオレフィン以外のポリマーの好適例としては、基材を構成し得る樹脂フィルムとして例示した各種ポリマー材料のうちポリオレフィン以外のものが挙げられる。ポリオレフィン以外のポリマーを含有する場合におけるその含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して100重量部未満とすることが適当であり、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。ポリオレフィン以外のポリマーの含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、ポリオレフィンフィルムの99.5〜100重量%がポリオレフィンである態様で好ましく実施され得る。
基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%以下(例えば20重量%以下、典型的には10重量%以下)程度である。例えば、基材に顔料(例えば白色顔料)を含ませる場合、その含有割合は0.1〜10重量%(例えば1〜8重量%、典型的には1〜5重量%)程度とすることが適当である。
基材は、単層構造であってもよく、二以上の層が積層した複層構造であってもよい。例えば、HDPEを主ポリマー成分(重量基準でポリマー成分の50%超を占める成分)とするポリオレフィン層Hと、LLDPEおよびVLDPEの少なくとも一方を主ポリマー成分とするポリオレフィン層Lとが積層した複層(例えば二層)構造の基材であってもよい。ポリオレフィン層LにおけるLLDPEとVLDPEとの合計含有量は、典型的には60重量%以上であり、好ましくは75重量%以上であり、90重量%以上であってもよい。通常は、強度や手切れ性の観点から、ポリオレフィン層Hの厚さをポリオレフィン層Lの厚さよりも大きくすることが好ましい。ポリオレフィン層Lの一好適例として、VLDPEを主ポリマー成分(典型的には、ポリマー成分の50重量%超、好ましくは75重量%以上、例えば90重量%以上を占める成分)とするVLDPE層が挙げられる。
ポリオレフィン層Lは、基材の第二面を構成する層(背面層)であり得る。ここに開示される基材は、例えば図5に示すように、ポリオレフィン層Hからなる支持層122とポリオレフィン層Lからなる背面層124とが積層した複層構造の基材120であり得る。このように第二面がポリオレフィン層Lにより構成された基材には、該第二面の剥離処理を省略するかまたは剥離処理の程度を弱くしても適切な巻戻し力が得られやすいという利点がある。かかる利点を得るために好適なポリオレフィン層Lとして、VLDPE層が例示される。背面層の厚さは、例えば1μm〜200μm程度とすることができ、通常は2μm〜100μm(典型的には5μm〜50μm)程度が適当である。一態様において、背面層の厚さは、2μm〜20μm程度としてもよく、凡そ3μm〜15μm(例えば5μm〜10μm)程度としてもよい。なお、基材の第二面がポリオレフィン層Lにより構成される態様において、必要に応じて該ポリオレフィン層Lに適宜の表面処理(例えば剥離処理)を施すことは妨げられず、かかる態様もここに開示される技術に包含される。
ここに開示される技術において、基材またはその構成材料として用いられる樹脂フィルムは、バイオマス材料を用いて構成されていてもよい。ここでバイオマス材料とは、再生可能な有機資源由来の材料をいう。典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源(典型的には光合成を行う植物)に由来する材料のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する材料(化石資源系材料)は除かれる。バイオマス材料は、例えば、上記再生可能な有機資源そのものであってもよく、上記有機資源(典型的には生物構成物質)を化学的にまたは生物学的に合成することにより得られる材料であってもよい。例えば、上記バイオマス材料は、サトウキビやトウモロコシ等の植物から得られる材料であり得る。具体的には、上記バイオマス材料は、サトウキビから生成するエタノールや、トウモロコシから生成する糖類から得られる材料であり得る。例えば、上述したHDPEとして、バイオマス材料であるHDPE(バイオマスHDPE)を利用することができる。同様に、例えば上述したLDPE、LLDPE、PP等についても、それぞれバイオマス材料であるもの(例えば、バイオマスLDPE)を利用することができる。
ここに開示される技術において用いられる基材は、少なくとも一方の表面が凹凸を有していてもよい。このような凹凸表面を有する基材(例えば、ポリオレフィンフィルム等の樹脂フィルムを含んで構成された基材)を用いることにより、粘着テープまたは該粘着テープを巻回してなる粘着テープロールにクッション性を付与することができる。また、上記凹凸形状を利用して基材背面と粘着面との密着性を制御し、粘着テープロールの巻戻し力または巻戻し力比を調整することができる。
上記凹凸表面を有する基材は、少なくとも一方の表面に複数の凹部を有する基材であり得る。例えば、上記複数の凹部を基材の第二面(背面、すなわち粘着面に対向する面)に有する基材であり得る。上記複数の凹部は、基材の少なくとも一方の表面(例えば第二面)に、連続的または断続的な直線状に配列され得る。一態様において、上記複数の凹部の配列方向は、粘着テープの長手方向と交差する方向とすることができる。かかる構成の基材を備える粘着テープは、基材の凹部に沿って切断しやすく、素手による切断が容易である。上記凹部は、手切れ性の観点から、基材の長手方向に沿う一端から他端まで連なって配置されていることが好ましい。粘着テープの長手方向と凹部の配列方向とのなす角度は、例えば90±60度(すなわち、30度以上150度以下)とすることができ、好ましくは90±45度、より好ましくは90±30度、さらに好ましくは90±15度であり、90±5度としてもよい。好ましい一態様において、上記複数の凹部の配列方向は、粘着テープの長手方向と直交する方向(すなわち、上記角度が90度となる方向)であり得る。かかる態様の粘着テープは、幅方向への手切れ性に優れる。
図6を参照して、表面に凹凸を有する基材の好適例について説明する。図示するように、基材120の第二面(背面)120Bには複数の凹部126が形成されている。これら複数の凹部126は、上記表面において、直線状に連なって配置されている。図6の水平方向(X軸方向)は基材120の幅方向に対応しており、凹部126は基材120の幅方向(すなわち、長手方向と直交する方向)に沿って配列している。基材120の長手方向に対する複数の凹部126の配置としては、該長手方向に沿って配列する配置を好ましく採用し得る。すなわち、複数の凹部126は、基材の幅方向に沿う配列と、長手方向に沿う配列とによって、全体として格子状に配置されていてもよい。
上記基材の凹部における凹部底面の形状は、図6に示すような断面U字状であってもよく、断面V字状や断面矩形状であってもよく、これらの複合的または中間的な形状であってもよい。また、凹部の内面形状は、例えば、底面に向かって窄まる円錐状、四角錐台状、三角錐状、三角錐台状、円錐状、円錐台状等の錐形または錐形台状であってもよく、円柱状や多角柱状(例えば四角柱状、三角柱状)等の多角柱状であってもよく、球面状であってもよく、平坦な底面と球面状の側壁とを有する皿状であってもよく、これらの複合的または中間的な形状であってもよい。一態様において、凹部の内面形状を、少なくとも一部に曲面を含む形状とすることができる。かかる形状の凹部を有する基材は、粘着テープの手切れ性や長手方向における強度確保の点で有利となり得る。ここに開示される技術の一態様において、四角錐の角部および頂点が曲面化された内面形状を有する複数の凹部126を基材の第二面に有し、それらの凹部126が基材の幅方向および長手方向に沿って格子状に配置された構成を好ましく採用し得る。
上記凹部の深さD(最大深さ;図6において符号Dで示す長さ)は、手切れ性と強度とのバランスを考慮して、基材の厚さSに対するDの比(D/S)が0.2〜0.8(例えば0.2〜0.5)の範囲となるように設定することが好ましい。具体的には、上記凹部の深さDは、通常は10μm〜160μm(例えば20μm〜100μm)程度とすることが好ましい。また、凹部の幅(図6において符号W3で示す長さ)は、手切れ性と強度とのバランスを考慮して、50μm〜500μm(例えば70μm〜400μm、典型的には100μm〜300μm)程度であることが好ましい。さらに、上記複数の凹部の間隔(図6において符号Lで示す長さ。隣りあう凹部の間隔でもあり得る。)は、手切れ性と凹部形成性とのバランスを考慮して、100μm〜4000μm(例えば300〜3000μm、典型的には500μm〜2000μm)程度であることが好ましい。凹部の深さや幅、間隔は、電子顕微鏡観察により測定するとよい。
なお、図6には基材120の第二面120Bのみが凹凸を有する例を示しているが、これに限定されず、基材120の第一面120Aおよび第二面120Bの両方が凹凸を有していてもよく、基材120の第一面120Aのみが凹凸を有していてもよい。例えば、図6において、基材120の第一面120Aに、第二面120Bの凹部126の位置および形状を反映した凸部(図示せず)が形成されていてもよい。
また、上記実施形態においては、複数の凹部が直線状に連なって(連続して)配置されていたが、これに限定されない。例えば、複数の凹部が、波状、曲線状等の線状に連なって配置されていてもよい。手切れ性の観点からは直線状に連なる配置が好ましい。
上記基材の表面に凹部が形成されている場合、当該形成面における単位長さ(1cm)当たりの凹部の本数(複数の凹部が連続的または断続的に線状に連なって配置された列を1本とカウントする。)は、2〜20本/cm(例えば2〜15本/cm、典型的には5〜15本/cm)であることが好ましい。
表面に凹凸を有する基材の作製方法は特に限定されない。例えば、溶融製膜法(Tダイ法、インフレーション法)、溶液製膜法等の公知または慣用の方法で樹脂フィルム(ポリオレフィンフィルム等)を作製し、続いて溶融または軟化状態の樹脂フィルムに凹凸表面を有する成形ロール等を押し当てて該凹凸表面の形状を樹脂フィルムに転写する方法や、あらかじめ成形された樹脂フィルムに凹凸表面を有するロール等を押し当てて該凹凸表面の形状を転写する形成する方法等を採用し得る。基材作製方法の一好適例として、Tダイ(T型ダイ)から押し出した樹脂フィルム(好適にはポリオレフィンフィルム)を、表面に凹凸形状を施した冷却成形ロール(エンボスロール)の表面に接触させる方法が挙げられる。なお、あらかじめ成形された樹脂フィルムの表面に凹凸を形成する場合には、形成された凹凸の変形を防ぐ観点から、延伸処理が施されていない樹脂フィルムを用いることが好ましい。
<<第三実施形態>>
ここに開示される技術のいくつかの態様において、粘着テープロールを構成する粘着テープには、該粘着テープの粘着性が抑制されたレール引き防止部が設けられていてもよい。上記レール引き防止部は、粘着テープの巻回外周端からその内周側近傍の領域に配置することが効果的である。一態様において、粘着テープの巻回外周端からその内周側1/4周(好ましくは1/6周、より好ましくは1/8周)の範囲内にレール引き防止部を配置することができる。粘着テープロールのレール引き現象は、粘着テープの巻回外周端を起点として発生する。そこで、この巻回外周端付近において粘着テープの粘着性を抑制することにより、清掃対象面に対する粘着力と粘着テープ背面に対する粘着力(巻戻し力に関連し得る。)との関係を局所的に調節し、レール引きの発生を効果的に防止することができる。粘着テープロールを構成する粘着テープに切断予定箇所(例えば、図1に示す切れ目24)が設定されている場合、レール引き防止部は、各切断予定箇所(すなわち、該切断予定箇所で粘着テープを切断することによって巻回外周端となり得る箇所)からその内周側1/4周の範囲内にも配置され得る。ここに開示される技術によると、このように各切断予定箇所の内周側にレール引き防止部が設けられた構成においても、粘着テープロールの巻きほどけを効果的に防止することができる。
レール引き防止部は、粘着テープの長手方向と交差する方向(典型的には幅方向)に延びるように、連続的または断続的に形成されていることが好ましい。かかる形状のレール引き防止部によると、粘着性能の低下を抑えつつ、レール引き現象を効果的に防止することができる。一態様において、巻回外周端に沿ってその内周側にレール引き防止部を形成することができる。レール引き防止部は、巻回外周端の全長に亘って設けられていてもよく、全長のうち一部の長さに沿って、連続的にまたは断続的に設けられていてもよい。
レール引き防止部の構成は、粘着テープの粘着力を部分的に抑制し得る構成であればよく、特に限定されない。例えば図1に示す第一実施形態の粘着テープロールにおいて、図7に示すように、粘着テープの巻回外周端に接してその内周側の粘着面35に、非粘着性または低粘着性の外面を有するシート状の部材により構成されたリードテープ90を貼り付けることにより、レール引き防止部を形成することができる。この実施形態では、各切れ目に接してその巻回内周側にも同様のリードテープ90が配置されている。リードテープ90としては、特に限定されず、例えば各種の樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。リードテープ90の形状は、例えば図7に示すような帯状とすることができるが、これに限定されず、粘着テープの幅方向に延びる形状であればよい。
このようなリードテープ90を配置することにより、レール引きの防止に加えて、粘着面の更新時に粘着テープが巻回外周端から長手方向に裂ける事態を防止することができる。すなわち、髪の毛や糸くず等が粘着テープの巻回外周端を跨ぐように付着した状態の粘着テープロールから粘着テープの巻回外周端を剥がそうとすると、上記髪の毛や糸くず等が引っ掛かって上記巻回外周端から粘着テープが長手方向に裂けてしまうことがある。粘着テープの巻回外周端(および、粘着テープを切れ目から切断することにより巻回外周端となり得る箇所)の内周側にリードテープ90を配置することにより、該巻回外周端をリードテープ90で補強することができる。これにより、上記髪の毛や糸くず等が付着した状態の粘着テープロールからも粘着テープを剥がしやすくなり、粘着面の更新作業性が向上する。かかる観点から、一態様において、基材21よりも強度(引張強度、引裂き強度等)の高いリードテープ90を好ましく採用し得る。例えば、PETやPP等の樹脂フィルムからなるリードテープ90を用いることができる。リードテープ90を構成する樹脂フィルムは、埃が付着しにくいように帯電防止剤を含んでいてもよい。一態様において、リードテープ90としては、基材20とは異なる色に着色された部材を好ましく使用し得る。これにより、粘着テープ12の巻回外周端または切れ目24の位置を判別しやすくすることができる。
ここに開示される技術において、レール引き防止部を形成する方法は、上述するリードテープのように粘着面上に非粘着性または低粘着性の部材を配置する方法に限定されない。例えば、粘着面の所定箇所に非粘着性または低粘着性の粒子が付着することによってレール引き防止部が形成されていてもよい。かかる粒子は、粉末状または該粒子を適切な媒体に分散または溶解させた組成物の状態で粘着面に供給され得る。例えば、無色または有色の顔料を含む組成物(インクまたは塗料として把握される組成物であり得る。)を巻回外周端の内周側および各切れ目の内周側の領域(典型的には、粘着テープの幅方向に)に供給することにより、当該領域において粘着面の粘着力を低減または消去することでレール引き防止部を形成してもよい。上記組成物は、例えば、該組成物を公知の方法で塗工または印刷(インクジェット方式による印刷等)することにより上記領域に供給することができる。上記組成物の供給は、第一層および第二層を形成した後に行うことができる。あるいは、例えば第一層の形成後であって第二層を形成する前に上記組成物を供給してもよい。この場合も、第一層の粘着力が低減または消去されることによって粘着面全体としての粘着力が抑制され、レール引き防止効果が発揮され得る。
ここに開示される技術におけるレール引き防止部は、粘着テープの巻回外周端の内周側および各切れ目の内周側の所定領域(例えば、粘着テープの幅方向に延びる帯状領域)において基材の第一面上に第一層が配置されない領域であってもよい。かかる構成のレール引き防止部は、例えば、第一層形成用の粘着剤を基材の長尺方向に間欠的に塗工することによって形成することができる。あるいは、基材の第一面のレール引き防止部形成予定箇所にマスキングテープを貼り付けておき、その上から第一層形成用の粘着剤を連続的に塗工した後、上記マスキングテープを剥がすことによって(すなわち、マスキングテープ上に形成された第一層を該マスキングテープとともに除去することによって)レール引き防止部を形成してもよい。
レール引き防止部の幅は、例えば1mm以上とすることができ、通常は2mm以上(例えば3mm以上)とすることが適当である。レール引き防止部の幅を大きくすることにより、レール引き防止性能は向上する傾向にある。レール引き防止部の幅は、例えば50mm以下とすることができる。粘着性能の維持や巻きほどけ防止の観点から、通常はレール引き防止部の幅を30mm以下とすることが適当であり、15mm以下(例えば10mm以下)とすることが好ましい。また、レール引き防止部は、切断予定箇所の内周側に加えて、切断予定箇所の外周側にも設けられていてもよい。例えば、切断予定箇所を跨いで該切断予定箇所に沿って延びるようにレール引き防止部を設けてもよい。
<<第四実施形態>>
ここに開示される技術は、粘着テープロールにおいて発泡体シートを含む基材を用いる形態でも好適に実施され得る。基材またはその構成要素として発泡体シートを用いることにより、粘着テープおよび該粘着テープを巻回してなる粘着テープロールに良好なクッション性を付与することができる。発泡体シートを構成する材料の具体例としては、PE製発泡体、PP製発泡体等のポリオレフィン系樹脂発泡体;PET製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。発泡体としては、独立気泡型の発泡体が好ましい。
好ましい発泡体として、ポリオレフィン系樹脂発泡体が挙げられる。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料(すなわちポリオレフィン系樹脂)としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度PE(LDPE)、直鎖状低密度PE(LLDPE)、高密度PE(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度PE等のPE、PP、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なかでも、PE系樹脂の発泡体から実質的に構成されるPE系発泡体シートが好ましい。ここで、PE系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等の他、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。
上記発泡体シートの密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、通常は10〜200kg/m3であることが好ましく、より好ましくは10〜100kg/m3(典型的には15〜50kg/m3)である。密度を所定値以上とすることにより、発泡体シートの強度(ひいては粘着テープの強度)が向上し、取扱い性が向上する傾向にある。一方、密度を所定値以下とすることにより、クッション性が高まり、固形屑の捕捉性や脱落防止性が向上する傾向がある。なお、発泡体シートの密度(見掛け密度)は、JIS K 6767:1999に準拠する方法により測定することができる。
上記発泡体シート(例えばポリオレフィン系発泡体シート)の引張強さ(引張強度)は、特に限定されない。例えば、長手方向(MD)の引張強さが0.25〜2.5MPa(より好ましくは0.3〜2.0MPa、典型的には0.5〜1.5MPa)であることが好ましい。また、幅方向(TD)の引張強さが0.1〜1.8MPa(より好ましくは0.15〜1.2MPa、典型的には0.2〜0.6MPa)であることが好ましい。引張強さを上記の範囲内とすることにより、粘着テープの強度が向上し、より良好な取扱い性が得られる。発泡体シートの引張強さは、JIS K 6767:1999に準拠して測定される。
上記発泡体シート(例えばポリオレフィン系発泡体シート)の伸びは、特に限定されない。例えば、MD伸びが20〜400%(より好ましくは20〜300%、典型的には25〜100%)であることが好ましい。また、TD伸びが15〜300%(より好ましくは20〜200%、典型的には25〜100%)であることが好ましい。伸びが上記の範囲内であることにより、固形屑の捕捉性や粘着テープの強度がより良好となる傾向がある。発泡体シートの伸びは、JIS K 6767:1999に準拠して測定される。
上記発泡体シート(例えばポリオレフィン系発泡体シート)の引裂強度は、特に限定されない。例えば、MD引裂強度が15〜120N/m(より好ましくは15〜80N/m、典型的には20〜50N/m)であることが好ましい。また、TD引裂強度が6〜100N/m(より好ましくは8〜60N/m、典型的には10〜30N/m)であることが好ましい。引裂強度が上記の範囲内であることにより、例えば粘着クリーナー外表面の更新等の取扱い性が向上し、より良好な強度を有する傾向がある。発泡体シートの引裂強度は、JIS K 6767:1999に準拠して測定される。
上記発泡体シート(例えばポリオレフィン系発泡体シート)の圧縮永久歪は、特に限定されない。例えば、3.0〜15.0%(より好ましくは5.0〜15.0%、典型的には6.0〜12.0%)程度の圧縮永久歪を示す発泡体シートを支持基材として好ましく用いることができる。圧縮永久歪が上記の範囲内であることにより、固形屑の捕捉性や粘着テープの強度がより良好となる傾向がある。発泡体シートの圧縮永久歪は、JIS K 6767:1999に準拠して測定される。
基材の第二面(背面)には、厚さが1μm〜500μm(例えば5μm〜300μm、典型的には10μm〜200μm)程度の非極性樹脂等からなる離型層が形成されていることが好ましい。非極性樹脂としては、ポリエチレン(例えば、VLDPEやLLDPE)等のポリオレフィンを好ましく利用し得る。このような離型層に加えて、または該離型層に代えて、シリコーン系剥離剤の塗布等の表面処理(典型的には、巻戻し力が高くなりすぎることを防止する剥離処理)が施されていてもよい。
このような発泡体シートを用いた基材を備える粘着テープロールは、基材の材質以外の点では、上述した各実施形態に係る粘着テープロールと同様に構成され得る。ここに開示される技術は、例えば、第一実施形態における粘着テープロール10の基材としてポリオレフィン系発泡体シートを用いた形態で実施することができる。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 基材の第一面に粘着面を有する粘着テープを含む粘着クリーナーであって、
上記粘着テープは、上記粘着面を外側に向けて巻回された粘着テープロールを構成しており、
上記粘着テープは、上記基材の第一面に、粘着剤により構成された第一層と、粘弾性材料により構成された第二層とを備え、
上記粘着面は、上記第一層が露出する第一領域と、上記第二層が露出する第二領域とを含み、上記第二領域は上記第一領域よりも上記粘着テープロールの外側に突出しており、
上記粘着テープロールは、0℃における巻戻し力F0が30℃における巻戻し力F30の10倍以下である、粘着クリーナー。
(2) 上記第二層を構成する粘弾性材料はアクリル系粘弾性材料である、上記(1)に記載の粘着クリーナー。
(3) 上記第二層を構成する粘弾性材料はアクリル系粘着剤である、上記(1)または(2)に記載の粘着クリーナー。
(4) 上記第二領域は、上記粘着テープの幅方向に間隔をあけて複数形成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(5) 上記第二領域は、上記粘着テープの長手方向に延びる線状に形成されている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(6) 上記第二層は、上記粘着テープの長手方向に延びる線状に、上記粘着テープの幅方向に間隔をあけて複数配置されている、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(7) 上記第二層は、上記第一層の上に部分的に設けられている、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(8) 上記第二層は、上記基材の第一面に直接設けられている、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(9) 上記第二層の厚さは上記第一層の厚さより大きい、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(10) 上記基材は、紙、樹脂フィルム、発泡体シート、およびこれらの一または二以上を含む積層体から選択される、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(11) 上記基材の上記第二面には複数の凹部が形成されており、それら複数の凹部は、上記粘着テープの長手方向と交差する直線状に、連続的または断続的に連なって配置されている、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(12) 上記第二層は、アクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含む、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(13) 上記アクリル系ブロック共重合体は、ソフトセグメントとハードセグメントとを含み、上記ソフトセグメントはn−ブチルアクリレートに由来するモノマー単位を含む、上記(12)に記載の粘着クリーナー。
(14) 上記ソフトセグメントは、n−ブチルアクリレートに由来するモノマー単位と、2−エチルヘキシルアクリレートに由来するモノマー単位とを含む、上記(13)に記載の粘着クリーナー。
(15) 上記第二層はフィラーを含む、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(16) 上記第二層における上記フィラーの重量分率が凡そ10%以上凡そ50%以下である、上記(15)に記載の粘着クリーナー。
(17) 上記粘着テープの幅方向に沿う断面における上記第二層の断面積A[mm2]と、上記第二層におけるエラストマー成分の重量分率R[%]との積(AR値)が2.5以下である、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(18) 上記AR値が凡そ0.5以上凡そ2.3以下である、上記(17)に記載の粘着クリーナー。
(19) 上記粘着テープの幅方向に沿う断面における上記第二層の断面積が0.005mm2以上0.1mm2以下である、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(20) 上記第一層はゴム系粘着剤層である、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(21) 上記粘着テープは、該粘着テープの長手方向と交差する方向に延びる切れ目を有する、上記(1)〜(20)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(22) 上記粘着テープには、巻回外周端からその内周側1/4周の範囲内に、該粘着テープの粘着性が抑制されたレール引き防止部が設けられている、上記(1)〜(21)のいずれかに記載の粘着クリーナー。
(23) 上記レール引き防止部は、上記粘着面上に配置された非粘着性または低粘着性の外面を有するシート状の部材により構成されている、上記(22)に記載の粘着クリーナー。
(24) 上記レール引き防止部は、上記粘着面に非粘着性または低粘着性の粒子が付着することにより構成されている、上記(22)に記載の粘着クリーナー。
(25) 基材の第一面に粘着面を有する粘着テープが該粘着面を外側に向けて巻回されている粘着テープロールを含む粘着クリーナーであって、
上記粘着テープは、上記基材の第一面に、粘着剤により構成された第一層と、粘弾性材料により構成された第二層とを備え、
上記第二領域は、上記粘着テープの長手方向に延びる線状に形成されており、
上記粘着テープの幅方向に沿う断面における上記第二層の断面積A[mm2]と、上記第二層におけるエラストマー成分の重量分率R[%]との積(AR値)が2.5以下である、粘着クリーナー。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<粘着テープロールの作製>
(例1)
以下のようにして、ゴム系粘着剤により構成された第一層とアクリル系粘弾性材料により構成された第二層とを基材の第一面に有する粘着テープロールを作製した。
第一層形成用のゴム系粘着剤としては、ベースポリマーとしてのSIS100部と、粘着付与樹脂130部と、プロセスオイル100部とからなるSIS系粘着剤を使用した。SISとしては、日本ゼオン株式会社の商品名「クインタック3520」を使用した。粘着付与樹脂としては、東燃ゼネラル石油株式会社の商品名「T−REZ RC093」を使用した。プロセスオイルとしては、出光興産株式会社の商品名「ダイアナプロセスオイルNS90S」を使用した。
第二層形成用のアクリル系粘弾性材料(粘着剤)は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマー100部と、フィラーのマスターバッチ160部と、アクリル系オリゴマー50部と、青色顔料2.4部とを混練して調製した。上記アクリル系ポリマーとしては、公知のリビングアニオン重合法により合成されたアクリル系ブロック共重合体を使用した。このアクリル系ブロック共重合体は、ポリMMAブロック−ポリ2EHA/BAブロック−ポリMMAブロック(以下、「MMA−2EHA/BA−MMA」と表記することがある。)のトリブロック構造を有する。ポリ2EHA/BAブロックにおける2EHAとBAとの重量比(すなわち、重量基準の共重合比率)は約50/50であり、ポリ2EHA/BAブロックの重量に対するポリMMAブロックの重量(2つのポリMMAブロックの合計重量)の比(MMA/(2EHA+BA))は約18/82であった。このアクリル系ポリマーAのMwは10×104であり、Mnは8.4×104、Mw/Mnは1.21であった。上記フィラーのマスターバッチとしては、炭酸カルシウム粒子(フィラー)とポリエチレン樹脂とを8:2の重量比で含むものを使用した。上記アクリル系オリゴマーとしては、東亞合成株式会社の製品名「アルフォンUP−1000」(Mwが約3000の、無官能基タイプのアクリル系オリゴマー)を使用した。なお、このアクリル系粘弾性材料におけるエラストマー成分の重量分率R[%]は58%である。
押出しダイを備えた二軸押出機を用い、上記ゴム系粘着剤および上記アクリル系粘弾性材料を上記ダイから加熱溶融状態で押し出して基材の第一面に塗工することにより、図2に示す粘着テープ12と同様の断面構造を有する粘着テープを作製した。基材20としては、坪量40g、厚み50μm、幅160mmの純白紙の第二面(粘着面が形成される面とは反対側の面、すなわち背面)に厚み20μmのポリエチレンフィルムがラミネートされた基材を使用した。第一層31は、基材20の幅中央部に、幅150mmの帯状に形成した。第一層31の厚みT1は15μmとした。第一層31の上に、粘着テープ12の長手方向に沿って直線状に延びる第二層32を、ほぼ一定のピッチP(ここでは約2mm)で73本設けた。各第二層32の幅W2は0.37mmとした。これにより、基材20の第一面20Aに、第二層32が露出した第二領域32Aと、第一層31のうち第二層32で覆われていない部分である第一領域31Aとを含む、幅150mmの粘着面35を形成した。この粘着面35において、第一領域31Aからの第二領域32Aの突出高さT2は70μmであった。
上記構成の粘着テープを、粘着面が外側となるように巻き取って、本例に係る粘着テープロールを得た。
(例2)
例1において、第二層形成用のアクリル系粘弾性材料に代えて、ベースポリマーとしてのCEBC100部と、粘着付与樹脂50部と、プロセスオイル100部と、青色顔料2.4部とからなるCEBC系粘弾性材料(粘着剤)を使用した。CEBCとしては、JSR株式会社の製品名「ダイナロン6200P」を使用した。粘着付与樹脂としては、ヤスハラケミカル株式会社の製品名「クリアロンP−105」を使用した。プロセスオイルとしては、出光興産株式会社の製品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」を使用した。その他の点については例1と同様にして、本例に係る粘着テープロールを得た。上記CEBC系粘弾性材料におけるエラストマー成分の重量分率R[%]は99%である。
<測定および評価>
(巻戻し力測定)
各例に係る粘着テープロールについて、0℃、20℃および30℃における巻戻し力をそれぞれ測定した。測定は各測定温度につき5回行った(すなわちn=5)。また、0℃における巻戻し力F0および30℃における巻戻し力F30から巻戻し力比(F0/F30)を算出した。結果を表1に示す。
(巻戻し作業性)
各例に係る粘着テープロールを0℃の環境下に1時間以上保存した後、試験者が粘着テープの先端(巻回外周端)を手で掴んで約1000mm/分の速度で接線方向に引き出した。各例につき5回の試験(上記引き出し操作)を行い、このときの作業性から、以下の2段階で巻戻し作業性を評価した。評価結果を表1に示す。
E:粘着テープの破れや裂けは発生しなかった(巻戻し作業性に優れる)
P:粘着テープの破れまたは裂けが少なくとも1回発生した(巻戻し作業性に乏しい)
(巻きほどけ防止性)
各例に係る粘着テープロールを、巻回軸が鉛直方向となるように水平な試験台の上に立てて載置し、23℃、50%RHの条件で2時間保管した。その後、上記試験台上に立てて載置された粘着テープロールの上端側において、粘着テープの巻回外周端側がその内周の粘着テープロールから剥がれて(開いて)いるか否かを目視で観察し、以下の2段階で巻きほどけ防止性を評価した。評価結果を表1に示す。
E:粘着テープの剥がれが認められないか、粘着テープが剥がれた部分の長さが巻回外周端から1cm以内であった(巻きほどけ防止性に優れる)
P:粘着テープの巻回外周端から5cm以上の長さに亘って粘着テープの剥がれが発生した(巻きほどけ防止性に乏しい)
表1に示されるように、巻戻し力の温度依存性の少ない例1の粘着テープロールは、低温においても良好な巻戻し作業性を示し、かつ室温において良好な巻きほどけ防止性を示した。
(回転抵抗値測定)
カーペット(サンホリデー社のアクリル系カーペット、製品名HD1、パイル長さ6mm(ループ形状))、ワックス加工されたフローリング材(ダイケン社、ミラージFシリーズ)、ワックス加工されていないフローリング材(ダイケン社、LVAT−MW)の3種類の清掃対象面について、各例に係る粘着テープロールの回転抵抗値を測定した。
具体的には、図3,4に示す概略形状を有する治具50の回転部52に、上記条件で保存した後の粘着テープロール10を取り付けた。そして、23℃、50%RHの測定環境下にて、試験者が治具50のグリップ54を軽く持ち、治具50のシャフトと清掃対象面56とのなす角度θが55°となるようにして、約30m/分の速度で清掃対象面56上を転がした。このときグリップ54にかかる力(回転抵抗値)を、デジタルフォースゲージで測定した。
表2に示されるように、例1に係る粘着テープロールを用いた粘着クリーナーは、いずれの清掃対象面に対しても、使用感のよい適度な手応えを与えるものであった。また、例1に係る粘着テープロールは、例2に比べて清掃対象面の種類による回転抵抗値の違いが少なく、ワックス加工なしのフローリング面に対しても良好に適用し得るものであった。
(引張り試験)
各例において第二層の形成に使用した粘弾性材料について、該粘弾性材料の破断強度および破断時伸びを測定した。測定用の試験片は、加熱溶融状態の各粘弾性材料を剥離ライナー上で冷却して厚さ1mmのシート状に成形し、これを打ち抜いて作製した。結果を表3に示す。
(糸引き防止性)
各例に係る粘着テープについて、該粘着テープを切り取る際における第二層の糸引きの程度を評価した。具体的には、各例に係る粘着テープの幅方向の一端から鋏を入れて該幅方向に延びる約2cmの長さの切れ目を作製し、この切れ目の両側の粘着テープを手で掴んでほぼ長手方向(第二層が延びる方向)に引き離すように引っ張ることにより、粘着テープの一部を残部から破り取った。このとき、粘着テープが破断する際に第二層の糸引きが生じたかどうかを目視で観察し、顕著な糸引きが認められた場合には糸引き防止性「P」(糸引き防止性に乏しい)、目立った糸引きが認められなかった場合には糸引き防止性「E」(糸引き防止性に優れる)と評価した。結果を表3に示す。表3には、各例に係る粘着テープについて、第二層の断面積Aと、該第二層を構成する粘弾性材料におけるエラストマー成分の重量分率Rを併せて示している。
表3に示されるように、AR値が低い例1の粘着テープは、例2の粘着テープに比べて明らかに糸引き防止性に優れることが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。