以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。
ここに開示される抗菌処理用粘着クリーナーの使用対象となる物品は特に制限されない。滑らかな表面(典型的には、滑らかで平坦な表面)を有する物品が好ましい。そのような物品の例として、ショーウインドウガラス、ガラステーブル、ショーケース、鏡、水槽、各種ディスプレイ(埋め込み型または据え置き型、あるいはポータブルなテレビやPCのディスプレイ等)、タッチパネル方式の表示部/入力部を備える各種の機器(現金自動預け払い機(ATM)、カーナビゲーションシステムの操作端末、案内板等の、据え置き型またはポータブルな機器)等が挙げられる。これらが有する滑らかな表面(例えば、透明なガラス面)に付着した有機質汚れは見苦しいため、見つけられ次第、迅速に除去されることが望ましい。また、上記表面には手指で触れたり顔を近づけたりすることがあり得るため、抗菌性を付与することで清潔感や安心感を与えることができる。したがって、ここに開示される抗菌処理用粘着クリーナーの好ましい使用対象となり得る。
また、ここに開示される抗菌処理用粘着クリーナーの使用対象となる物品の好適例として、種々のポータブル機器が挙げられる。ここでポータブル機器とは携帯可能な機器をいい、特定の機器に限定されない。外面の少なくとも一部に滑らかな表面(典型的には、滑らかで平坦な表面)を有するポータブル機器が好ましい。そのようなポータブル機器として、例えば、ノート型PC等のポータブルPC、電子ブック等のタブレット型情報端末、スマートフォンその他の携帯電話機、携帯ゲーム機、電子手帳等のPDA(携帯情報端末)、デジタルカメラ、デジタルフォトフレーム、手鏡等が挙げられる。これらは日常的に携帯して使用されるものであるため、埃や、特に手垢、化粧品、皮脂といったような有機質汚れが付着しやすい。また、これらのポータブル機器のなかには、滑らかな表面(典型的にはガラス製または合成樹脂製の表面)が液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示面となっているものがあり、上記表示面に有機質汚れが付着すると表示面に表示された情報が見にくくなり使い勝手がよくない。さらに、有機質汚れの付着の程度によっては不潔な印象を与えかねない。このような表示面を有するポータブル機器は、ここに開示される抗菌処理用粘着クリーナーの好ましい使用対象となり得る。
また、タッチパネル方式の表示部/入力部を有する機器は、使用者が表示面を指で直接触れるため、上述の有機質汚れがより付着しやすい。また、このように指で直接触れるものであることから、抗菌性を付与することで、使用者に清潔感や安心感を与えることができる。そのため、ここに開示される抗菌処理用粘着クリーナーの好ましい使用対象となり得る。そのなかでも電子ブック等のタブレット型情報端末は、表示面が比較的大きいため、上記抗菌処理用粘着クリーナーの特に好ましい使用対象として把握される。
ここに開示される抗菌処理用粘着クリーナーの他の好ましい使用対象として、スマートフォンその他の携帯電話機が挙げられる。携帯電話機は、該携帯電話機を耳元や口元に近づけて通話する際等に顔に接触し、顔の皮脂や化粧品等の有機質汚れが付着しやすい。また、顔に接触または近接して使用され得る機器であるため、表面の有機質汚れを取り除き、かつ抗菌性を付与することによって使用者に清潔感や安心感を与える意義が大きい。したがって、上記抗菌処理用粘着クリーナーの特に好ましい使用対象として把握される。
以下、一実施形態に係る抗菌処理用粘着クリーナーについて図面を参照しながら説明する。図1,2に示すように、抗菌処理用粘着クリーナー(以下、単にクリーナーともいう。)10は、円筒状の保持部材(巻芯)20と、保持部材20の外周面に保持された粘着シートロール30とを備える。これら保持部材20と粘着シートロール30とは一体となって円筒状の転動部材として構成されている。保持部材の材質は特に限定されず、ポリオレフィン系その他の合成樹脂製や紙製のものを好ましく使用することができる。
クリーナー10は、保持部材20を転動自在に支持する棒状の把持部材40をさらに備える。具体的には、保持部材20には、その円筒の中心軸となる位置に中心孔(図示せず)が形成されており、この中心孔に把持部材40の端部(一端)を挿通することによって、保持部材20は転動自在に把持部材40に取り付けられている。また、把持部材40の他端には取っ手42が取り付けられている。把持部材、取っ手の材質は特に限定されず、例えば金属製、合成樹脂製のものを採用することができる。
クリーナー10の粘着シートロール30は、汚れ捕捉部となる粘着シート31を巻回することによって形成されている。具体的には、粘着シート(汚れ捕捉部)31は、図3に示すように、長尺シート状(帯状)の支持基材36と、該支持基材36の一方の面36Aに配置された粘着剤層32とを備える片面粘着シート31として構成されている。片面粘着シート31は、その粘着剤層32が外側となるように巻回されることによって粘着シートロール30として形成されている。
上記のような構成を有するクリーナー10の使用態様について説明する。図4に示すように、クリーナー10は、ポータブル機器1の表示部2に付着した有機質汚れを取り除き、かつ表示部2の表面を抗菌処理するために使用される。ポータブル機器1の表示部2は、滑らかで平坦な表面を有している。作業者は、上記ポータブル機器1の表示部2にクリーナー10を配置し、取っ手42を把持してクリーナー10に所定の外力を加える。すると、当該外力は把持部材40から保持部材20に伝わり、保持部材20の外周面に配置されている粘着シートロール30の粘着剤層32(汚れ捕捉部のうち、上記滑らかな表面に接触する部分)は転動しながら表示部2上を移動する。図4では、粘着シートロール30は、表示部2上において矢印方向に移動する。このとき、粘着剤層32が表示部2に存在する埃や塵、そして特に有機質汚れ(例えば、皮脂を含む手垢や指紋等の皮脂汚れ)を捕捉する。これにより、粘着シートロール30(より具体的には粘着シート(汚れ捕捉部)31)の転動方向に沿って表示部2のクリーニング(汚れ取り)が簡易にかつ確実に行われる。また、上記のように粘着剤層32を表示部2に接触させる汚れ除去作業において、粘着剤層32中の抗菌成分(典型的には有機抗菌剤)の少なくとも一部が粘着剤層32の表面から表示部2の表面に移動し、表示部2からクリーナー10を離した後も表示部2の表面に残留する。この表示部2に残留する抗菌成分によって抗菌性が発揮され得る。ここに開示されるクリーナーによると、このように、有機質汚れの除去作業を利用してクリーニング対象面に抗菌成分を付与(塗付)し、該クリーニング対象面を抗菌処理することができる。
なお、この実施形態におけるポータブル機器は、表示部全体がアルミノケイ酸ガラス等の強化ガラスで構成されているタブレット型情報端末であるが、これに限定されないことは上述のとおりである。
円筒状の粘着シートロールのサイズは特に限定されないが、使用対象がタブレット型情報端末等のポータブル機器の場合、その直径(未使用時の直径(外径)をいう。以下同じ。)は4mm以上(より好ましくは10mm以上、例えば15mm以上、典型的には20mm以上)が好ましい。また、操作性や携帯性の観点から、上記直径は50mm以下(例えば35mm以下、典型的には30mm以下)であることが好ましい。
また、粘着シートロールを構成する粘着シートには、該ロールのほぼ一周に相当する長さ毎に切断用の切れ目(図示せず)が設けられていることが好ましい。この切れ目は、クリーナーを何度か使用した後に、クリーニング(汚れ除去)性能やクリーニング対象面に抗菌性を付与する性能が低下した粘着剤層表面(汚れ捕捉部の外表面)を更新することを効率的に行うための切断手段である。上記切れ目は、例えば、長孔や波形のスリットを並べたもの、ミシン目等の間欠スリット等であり得る。上記切れ目は粘着シートを幅方向(長手方向と直交する方向)に横断するように設けられることが好ましい。なお、汚れ捕捉部の外表面(外周面)の更新は上記切断手段に限られない。例えば、ミシン目等の間欠スリットを粘着シートロールのシート巻き取り方向と交差する方向(典型的には上記幅方向に対して30°〜60°の角度で交わる方向)に螺旋状に形成しておいてもよい。あるいはまた、ミシン目等の間欠スリットに代えて、粘着シートロールを構成する粘着シートに所定間隔でスリット(連続した切れ目)を入れておいてもよい。この形態では、粘着シートロールを構成する粘着シートは、予めロール巻き取り方向に所定間隔で完全に切断されているので、上記所定間隔ごとに粘着シートロールの外表面を剥ぎ取ることができ、容易に当該外表面を更新することができる。
上記クリーナー10は、従来公知の手法を適宜採用することにより作製することができる。例えばクリーナー10の粘着シートロール30は、従来のロール形状クリーナーと同様の手法で作製することができる。すなわち、従来公知の種々のコーティング手段により長尺なシート状の支持基材36の表面36A上に粘着剤組成物を塗付し、必要に応じて乾燥処理等を行うことによって粘着剤層32を形成する。なお、ホットメルト型粘着剤(熱可塑性粘着剤)の場合、上記粘着剤組成物として加熱溶融状態の粘着剤を塗付し、その粘着剤を典型的には室温付近まで放冷することにより粘着剤層を形成することができる。したがって上記乾燥処理を省略することが可能である。そして、粘着剤層32が外周面となるように粘着シート31を保持部材20に巻回することによって、ロール状の粘着シートロール30を形成する。さらに、保持部材20に把持部材40の端部を転動自在に取り付けることによりクリーナー10は構築される。把持部材40の保持部材20への取付け構造自体は従来のロール形状クリーナーと同様の構造とすることができ、本発明を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
なお、粘着クリーナーは上記実施形態のものに限定されない。粘着クリーナーは、例えば汚れ捕捉部のみから構成されたものであってもよい。そのような粘着クリーナーとしては、例えば球形状や円柱状、円筒状、六面体状(例えば直方体状)、シート状等の汚れ捕捉部のみから構成されているクリーナーが挙げられる。
また、上記実施形態では、汚れ捕捉部は支持基材と粘着剤層とから構成されていたが、これに限定されない。例えば、汚れ捕捉部は、粘着剤(基材レス粘着剤)のみから形成されたものであってもよい。汚れ捕捉部が支持基材を有する場合、該支持基材の形状等は特に限定されない。例えば、汚れ捕捉部は、球形状の支持基材の外表面に粘着剤層が形成されたものであってもよい。
さらに、上記実施形態では、把持部材は保持部材を転動自在に支持するものであったが、これに限定されない。例えば、把持部材は、上記汚れ捕捉部に直接的または間接的に接続(連結または着脱可能に接続)されるものであり得る。そのような粘着クリーナーとしては、例えば棒状の把持部材の一端に円柱状や直方体状の粘着体が固定されたものが挙げられる。あるいはまた、把持部材が平面部を有し、該平面部の片面に汚れ捕捉部が固定されたものであってもよい。
ここに開示されるクリーナーに具備される粘着剤は、クリーニング対象面に接触することによって有機質汚れを捕捉し、かつ該クリーニング対象面に抗菌性を付与し得るものであればよく、その組成や形態は特に限定されない。例えば、水溶性粘着剤組成物、水分散型粘着剤組成物等の水性粘着剤組成物、あるいは溶剤型粘着剤組成物等の形態の粘着剤組成物から形成された粘着剤であり得る。また、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型粘着剤組成物やホットメルト型粘着剤組成物から形成された無溶剤型粘着剤も好ましく用いられ得る。ヒトの皮脂汚れを除去する目的には、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤や、無溶剤型粘着剤を好ましく使用し得る。生産性や粘着剤組成物の取扱い性の観点からは、ホットメルト型粘着剤が好ましい。
上記粘着剤は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(例えば天然ゴム系粘着剤)、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等であり得る。粘着力その他の粘着性能の調節しやすさやコスト等の観点から、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。ここでアクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、すなわち50重量%を超えて含まれる成分)とする粘着剤をいう。ゴム系その他の粘着剤についても同様の意味である。ここに開示されるクリーナーは、典型的には、同一の粘着剤によって、クリーニング対象面から有機質汚れを除去する機能と該クリーニング対象面に抗菌性を付与する性能との両方が発揮されるように構成され得る。
<ベースポリマー>
ここに開示される技術は、上記粘着剤がアクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤である態様で好ましく実施され得る。上記アクリル系ポリマーは、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から合成することができる。ここで主モノマーとは、全モノマー成分の50重量%超を占めるモノマー成分を指す。なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタアクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
上記モノマー原料が2種以上のモノマーを含む場合、上記アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体やグラフト共重合体等であってもよい。製造容易性や取扱い性の観点から好ましいアクリル系ポリマーとして、ランダム共重合体およびブロック共重合体が挙げられる。アクリル系ポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[アクリル系ランダム共重合体]
好ましい一態様に係るアクリル系ポリマーは、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から合成されたアクリル系ランダム共重合体を含む。上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(1):
CH2=CR1COOR2 (1);
で表される化合物を好適に用いることができる。ここで、上記一般式(1)中のR1は水素原子またはメチル基である。また、R2は炭素原子数1〜20のアルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、C1−14(例えばC1−10)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。上記アルキル基は、鎖状(直鎖状および分岐状を包含する意味である)であってもよく、環状構造を含んでいてもよい。
上記C1−20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機質汚れ(例えば皮脂汚れ)の除去性の観点から、上記モノマー原料は、C4−14の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むことが好ましい。C6−12の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むことにより、より良好な有機質汚れ除去性が実現される傾向にある。そのようなアルキル(メタ)アクリレートの好適例として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、イソオクチルアクリレート(IOA)、イソノニルアクリレート(INA)およびラウリルメタクリレート等が挙げられる。なかでも2EHA、IOAおよびINAが好ましく、2EHAが特に好ましい。
アクリル系ランダム共重合体を構成する全モノマー成分に占める主モノマーの割合は、60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。全モノマー成分に占める主モノマーの割合の上限は特に限定されないが、粘着性能(粘着力、凝集力など)の調整を容易とする観点から、通常は99重量%以下(例えば98重量%以下、典型的には95重量%以下)とすることが好ましい。アクリル系ランダム共重合体は、実質的に主モノマーのみを重合したものであってもよい。
上記アクリル系ランダム共重合体を重合するために用いられるモノマー原料は、粘着性能の調整等を目的として、主モノマーに加えて、該主モノマーと共重合可能な副モノマー(オリゴマーであり得る。)をさらに含んでもよい。そのような副モノマーとしては、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。上記官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、粘着性能(粘着力、凝集力等)を調節しやすくする目的で添加され得る。そのような官能基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシ基(水酸基)含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基(グリシジル基)含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマーが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル系ポリマーに架橋点を好適に導入することができ、また、粘着剤の架橋密度を調節しやすいことから、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基等の官能基含有モノマーが好ましく、カルボキシ基含有モノマーまたはヒドロキシ基含有モノマーがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
酸無水物基含有モノマーとしては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等の上記エチレン性不飽和ジカルボン酸等の酸無水物等が挙げられる。
ヒドロキシ基(水酸基)含有モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基(グリシジル基)含有モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
アルコキシ基含有モノマーとしては、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
上述のような官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを重合するための全モノマー成分中に上記官能基含有モノマー(好適にはカルボキシ基含有モノマー)が1〜10重量%(例えば2〜8重量%、典型的には3〜7重量%)配合されていることが好ましい。
また副モノマーとして、アクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。
モノマー原料からアクリル系ポリマー(アクリル系ランダム共重合体)を合成する方法は特に限定されず、従来公知の溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の一般的な重合方法を適宜採用することができる。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤(例えば、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ)等が例示される。重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類やモノマーの種類(モノマー混合物の組成)等に応じて適宜選択できる。重合開始剤の使用量は、通常、全モノマー成分100重量部に対して、例えば0.005〜1重量部程度の範囲から選択することが適当である。重合温度は、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
アクリル系ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。例えば、Mwが概ね30万〜100万程度のアクリル系ランダム共重合体をベースポリマーとして好適に使用することができる。好ましい一態様において、上記粘着剤は、Mwが上記範囲にあるアクリル系ランダム共重合体をベースポリマーとして含む溶剤型粘着剤組成物から形成されたものであり得る。
[アクリル系ブロック共重合体]
好ましい他の一態様に係るアクリル系ポリマーは、1分子中にハードセグメント(A)(以下「Aブロック」ともいう。)とソフトセグメント(B)(以下「Bブロック」ともいう。)とを有するアクリル系ブロック共重合体を含む。上記ハードセグメント(A)とは、アクリル系ブロック共重合体の構造のうち、該アクリル系共重合体におけるソフトセグメント(B)との関係で、相対的に硬いブロックを指す。また、上記ソフトセグメント(B)とは、上記アクリル系ブロック共重合体の構造のうち、上記ハードセグメント(A)との関係で、相対的に柔らかいブロックを指す。
上記アクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性ポリマー(典型的には熱可塑性エラストマー)の性質を示すものであり得る。ここに開示される粘着剤は、上記アクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含むことにより、ホットメルト形式での塗工に適した粘着剤(ホットメルト型粘着剤)であり得る。ホットメルト型粘着剤は、一般的な有機溶剤型のアクリル系粘着剤に比べて有機溶剤の使用量を低減し得るため、環境負荷軽減等の観点から好ましい。
ここで、アクリル系ブロック共重合体とは、該共重合体を構成するモノマー単位(構成モノマー成分)として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下「アクリル系モノマー」ともいう。)に由来するモノマー単位を含む、ブロック構造の重合体をいう。すなわち、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むブロック共重合体をいう。例えば、全モノマー単位の50重量%以上がアクリル系モノマーに由来するモノマー単位であるアクリル系ブロック共重合体が好ましい。このようなアクリル系ブロック共重合体は、例えば、アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含むモノマー原料から好ましく合成することができる。
上記アクリル系ブロック共重合体としては、少なくとも1つのアクリレートブロック(以下、Acブロックともいう。)と、少なくとも1つのメタクリレートブロック(以下、MAcブロックともいう。)とを備えるものを好ましく用いることができる。例えば、AcブロックとMAcブロックとが交互に配置された構造のブロック共重合体が好ましい。1分子のポリマーに含まれるAcブロックとMAcブロックとの合計ブロック数は、例えば平均2.5〜5程度(例えば2.7〜3.3程度、典型的には3程度)であり得る。
上記Acブロックは、典型的には、アルキルアクリレートを主モノマーとすることが好ましい。すなわち、該Acブロックを構成する全モノマー単位のうち50重量%以上がアルキルアクリレートに由来するモノマー単位であることが好ましい。上記モノマー単位の75重量%以上(例えば90重量%以上)がアルキルアクリレート由来であってもよい。好ましい一態様では、上記アクリル系ブロック共重合体に含まれるAcブロックが、実質的に1種または2種以上(典型的には1種)のアルキルアクリレートからなる重合体である。あるいは、Acブロックは、アルキルアクリレートと他のモノマー(例えばアルキルメタクリレート等)との共重合体であってもよい。
Acブロックを構成するアルキルアクリレートの例としては、アルキル基の炭素原子数が1〜20(好ましくは4〜14、例えば6〜12)のアルキルアクリレートが挙げられる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート(BA)、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート(IOA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート(INA)、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましい一態様では、Acブロックを構成するモノマーのうち50重量%以上が、アルキル基の炭素原子数が4〜14のアルキルアクリレートである。アルキル基の炭素原子数が4〜14のアルキルアクリレートの割合が75重量%以上であってもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)であってもよい。例えば、Acブロックを構成するモノマー単位が実質的にBA単独である構成、2EHA単独である構成、BAおよび2EHAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。BAと2EHAとの重量比は特に限定されず、例えば10/90〜90/10、好ましくは80/20〜20/80、より好ましくは30/70〜70/30、例えば60/40〜40/60であり得る。
上記MAcブロックは、典型的には、アルキルメタクリレートを主モノマーとすることが好ましい。上記MAcを構成する全モノマー単位のうち75重量%以上(例えば90重量%以上)がアルキルメタクリレート由来であってもよい。好ましい一態様では、上記アクリル系ブロック共重合体に含まれるMAcブロックが、実質的に1種または2種以上(典型的には1種)のアルキルメタクリレートからなる重合体である。あるいは、MAcブロックは、アルキルメタクリレートと他のモノマー(例えばアルキルアクリレート)との共重合体であってもよい。
MAcブロックを構成するアルキルメタクリレートとしては、アルキル基の炭素原子数が1〜20(好ましくは1〜14)のアルキルメタクリレートが挙げられる。その具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましい一態様では、MAcブロックを構成するモノマーのうち50重量%以上が、アルキル基の炭素原子数が1〜4(好ましくは1〜3)のアルキルメタクリレートである。アルキル基の炭素原子数が1〜4のアルキルメタクリレートの割合が75重量%以上であってもよく、実質的に100重量%(例えば、99重量%を超えて100重量%以下)であってもよい。なかでも好ましいアルキルメタクリレートとして、メチルメタクリレート(MMA)およびエチルメタクリレート(EMA)が挙げられる。例えば、上記モノマー単位が実質的にMMA単独である構成、EMA単独である構成、MMAおよびEMAの2種からなる構成等を好ましく採用し得る。
上記アクリル系ブロック共重合体は、AB型、ABA型、ABAB型、ABABA型等のように、凝集力や弾性に優れた硬い構造のポリマーからなるAブロック(ハードセグメント(A))と、粘性に優れた柔らかい構造のポリマーからなるBブロック(ソフトセグメント(B))とが交互に配置されるように共重合されたものであり得る。このような構造のアクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤は、凝集力や弾性と粘性とを高度に両立させた粘着剤層を形成し得る。また、かかる組成の粘着剤は、ホットメルト型粘着剤として好ましく使用することができる。分子の両端にAブロックが配された構造のアクリル系ブロック共重合体(ABA型、ABABA型等)を好ましく採用し得る。かかる構造のアクリル系ブロック共重合体は、凝集性と熱可塑性とのバランスの良いものとなりやすいので好ましい。なお、溶融粘度低減等の観点から、星形構造や分岐構造に比べて、直鎖構造のアクリル系ブロック共重合体が有利である。
なお、アクリル系ブロック共重合体が2以上のAブロックを有する場合において、それらのAブロックのモノマー組成、分子量(重合度)、構造等は、互いに同一であってもよく異なってもよい。アクリル系ブロック共重合体が2以上のBブロックを有する場合における該Bブロックについても同様である。
上記Aブロックとしては、上述のようなMAcブロックを好ましく採用し得る。上記Bブロックとしては、上述のようなAcブロックを好ましく採用し得る。好ましい一態様では、アクリル系ブロック共重合体が、MAcブロック−Acブロック−MAcブロック(ABA型)構造のトリブロック共重合体である。例えば、このようなトリブロック共重合体であって、2つのMAcブロックが実質的に同一のモノマー組成を有するものを好ましく採用し得る。
ここに開示される技術におけるアクリル系ブロック共重合体としては、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキルアクリレートを含むAcブロックをソフトセグメント(B)として有するものが好ましい。上記Acブロックを構成するモノマー単位のうち、アルキル基の炭素原子数が6以上のアルキルアクリレートの占める割合は、例えば10重量%以上とすることができ、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
好ましい一態様において、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキルアクリレートを主モノマーとするAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体を用いることができる。すなわち、上記Acブロックを構成するモノマー単位のうち50重量%以上が、アルキル基の炭素原子数が6以上のアルキルアクリレートの1種または2種以上によって占められていることが好ましい。上記Acブロックを構成するモノマー単位のうち、アルキル基の炭素原子数が6以上のアルキルアクリレートの占める割合は、例えば55重量%以上とすることができ、60重量%以上であってもよく、好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。例えば、Acブロックを構成するモノマー単位が2EHA単独であるAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体が好ましい。
なお、アルキル基の炭素原子数が6以上のアルキルアクリレートの好適例としては、2−エチルへキシルアクリレート(2EHA)、n−オクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート等が例示される。
アルキル基の炭素原子数が6以上のアルキルアクリレートを含むAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体は、有機質汚れの捕捉性に優れたものとなり得る。したがって、例えば後述する指紋除去性評価において、より高い指紋除去性能が実現され得る。
また、アルキル基の炭素原子数が6以上のアルキルアクリレートを含むAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体は、可塑剤との相溶性に優れたものとなり得る。このことは、該共重合体と可塑剤とを含む組成の粘着剤において、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点から好ましい。また、より多くの可塑剤を適切に含有させることができるので、可塑剤の配合量の設定自由度が高く、粘着力を調整しやすいという利点がある。
好ましい他の一態様において、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12、典型的には6〜9)のアルキルアクリレートとアルキル基の炭素原子数が2〜5(例えば3〜4、典型的には4)のアルキルアクリレートとを20/80〜80/20(より好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40、例えば45/55〜55/45)の重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体を用いることができる。このようなアクリル系ブロック共重合体は、有機質汚れの除去性と凝集性とのバランスに優れたものとなり得る。例えば、2EHAとBAとを上記の重量比で含むモノマー単位から構成されたAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体を好ましく使用し得る。上記モノマー単位は、2EHAおよびBAのみからなるモノマー単位であり得る。
アクリル系ブロック共重合体に含まれるハードセグメント(A)とソフトセグメント(B)との重量比は特に限定されない。例えば、ハードセグメント(A)/ソフトセグメント(B)の重量比(A/B)を4/96〜90/10の範囲とすることができ、通常は7/93〜70/30の範囲とすることが適当であり、10/90〜50/50(より好ましくは15/85〜40/60、例えば15/85〜25/75)の範囲とすることが好ましい。2以上のハードセグメント(A)を含むアクリル系ブロック共重合体では、それらのハードセグメント(A)の合計重量とソフトセグメント(B)との重量比が上記範囲にあることが好ましい。2以上のソフトセグメント(B)を含むアクリル系ブロック共重合体についても同様である。ハードセグメント(A)(例えばMAcブロック)の割合が多いと粘着力が低下し、軽剥離性が得られやすい傾向がある。ソフトセグメント(B)(例えばAcブロック)の割合が多いと、有機質汚れの捕捉性能が向上する傾向がある。
ここに開示されるアクリル系ブロック共重合体の好適例では、アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー単位に対応するモノマー原料が、アルキル基の炭素原子数が1〜3のアルキル(メタ)アクリレート(X)と、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキル(メタ)アクリレート(Y)とを含む。アルキル(メタ)アクリレート(X)/アルキル(メタ)アクリレート(Y)の重量比(X/Y)は、例えば4/96〜90/10であり得る。上記重量比が7/93〜70/30であるアクリル系ブロック共重合体が好ましく、10/90〜50/50であるものがより好ましく、15/85〜40/60であるものがさらに好ましく、15/85〜30/70(例えば15/85〜25/75)であるものが特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレート(X)の割合が多いと、粘着力が低下し、軽剥離性が得られやすい傾向がある。アルキル(メタ)アクリレート(Y)の割合が多いと、有機質汚れの捕捉性能が向上する傾向がある。アルキル(メタ)アクリレート(X)としては、アルキル基の炭素原子数が1〜3のアルキルメタクリレートが好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレート(Y)としては、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキルアクリレートが好ましい。
ここに開示されるアクリル系ブロック共重合体の他の好適例として、該アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー単位に対応するモノマー原料がメチルメタクリレート(MMA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を含み、それらの含有量の重量比(MMA/2EHA)が4/96〜90/10であるものが挙げられる。上記重量比が7/93〜70/30であるアクリル系ブロック共重合体が好ましく、10/90〜60/40であるものがより好ましく、20/80〜50/50であるものがさらに好ましく、25/75〜40/60(例えば25/75〜35/65)であるものが特に好ましい。MMAの割合が多いと、粘着力が低下し、軽剥離性が得られやすい傾向がある。2EHAの割合が多いと、有機質汚れの捕捉性能が向上する傾向がある。
なお、アクリル系ブロック共重合体を構成するモノマー単位の組成は、NMR測定の結果に基づいて把握することができる。上記NMR測定は、具体的には、例えばNMR装置としてブルカー・バイオスピン(Bruker Biospin)社製の「AVAVCEIII−600(with Cryo Probe)」を使用して、下記の条件で行うことができる。例えば、モノマー原料に含まれる2EHAとMMAとの重量比は、1H NMRスペクトルの4.0ppm(2EHA1)と3.6ppm(MMA1)とのピーク積分強度比に基づいて算出することができる。
[NMR測定条件]
観測周波数:1H;600MHz
フリップ角:30°
測定溶媒:CDCl3
測定温度:300K
化学シフト基準:測定溶媒(CDCl3,1H:7.25ppm)
ここに開示される技術において、アクリル系ブロック共重合体のMwは特に限定されない。例えば、Mwが3×104〜30×104程度のアクリル系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。アクリル系ブロック共重合体のMwは、通常、3.5×104〜25×104程度の範囲が好ましく、4×104〜20×104(例えば4.5×104〜15×104)の範囲がより好ましい。アクリル系ブロック共重合体のMwを高くすることは、粘着特性(例えば凝集性)の向上や有機質汚れの捕捉性向上の観点から有利である。また、アクリル系ブロック共重合体のMwが高くなると、適切に含有させ得る可塑剤の量が多くなる傾向にある。一方、アクリル系ブロック共重合体のMwを低くすることは、粘着剤の粘度(例えば溶融粘度)を低下させる観点から有利である。粘着剤の溶融粘度を低下させることは、ホットメルト型の粘着剤では特に有意義である。
なお、ここでいうアクリル系ブロック共重合体のMwは、当該共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶かして調製したサンプルにつきゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行って求められる、ポリスチレン換算の値をいう。上記GPC測定は、具体的には、例えばGPC測定装置として東ソー社製の「HLC−8120GPC」を使用して、下記の条件で行うことができる。
[GPC測定条件]
・カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:THF
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
・サンプル濃度:約2.0g/L(THF溶液)
・サンプル注入量:20μL
ここに開示される技術におけるアクリル系ブロック共重合体には、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他モノマーとしては、アルコキシ基やエポキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基、カルボキシ基、酸無水物基等の官能基を有するビニル化合物、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニル化合物、N−ビニルピロリドン等のビニル基含有複素環化合物等を例示することができる。あるいはまた、アクリロイル基にフッ化アルキル基が結合した構造のアルキルアクリレート、フッ化アルキルアクリレートおよびフッ化アルキルメタクリレートが挙げられる。上記その他モノマーは、例えば、粘着剤層の特性(粘着特性、成形性等)を調整する目的で使用され得る、その含有量は、アクリル系ブロック共重合体を構成する全モノマー成分の20重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には5重量%以下)とすることが適当である。好ましい一態様では、アクリル系ブロック共重合体が上記その他モノマーを実質的に含有しない。例えば、上記その他モノマーの含有量が全モノマー成分の1重量%未満(典型的には0〜0.5重量%)または検出限界以下であるアクリル系ブロック共重合体が好ましい。
このようなアクリル系ブロック共重合体は、公知の方法(例えば、特開2001−234146号公報、特開平11−323072号公報を参照)により容易に合成することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。上記市販品の例としては、クラレ社製の商品名「クラリティ」シリーズ(例えば、LA2140e,LA2250等の品番のもの)、カネカ社製の商品名「NABSTAR」等が挙げられる。アクリル系ブロック共重合体の合成方法としては、リビング重合法を利用する方法を好ましく採用することができる。リビング重合法によると、アクリル系重合体本来の耐候性を維持しつつ、リビング重合法独自の優れた構造制御により熱可塑性に優れたアクリル系ブロック共重合体を合成し得る。また、分子量分布を狭く制御し得ることから、低分子量成分の存在に起因する凝集性の不足を抑えて、軽剥離性に優れた粘着剤(ひいては粘着シート(汚れ捕捉部))が実現され得る。
ここに開示される技術において、上記アクリル系ブロック共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、相対的にMwの高いアクリル系ブロック共重合体(H)と、該アクリル系ブロック共重合体(H)よりもMwの低いアクリル系ブロック共重合体(L)とを適宜の重量比で用いることができる。このことによって、粘着剤の粘度(溶融粘度)の上昇を抑えつつ、有機質汚れの捕捉性を効果的に向上させることができる。アクリル系ブロック共重合体(H)とアクリル系ブロック共重合体(L)とを併用することの効果をよりよく発揮させる観点から、通常は、アクリル系ブロック共重合体(H)/アクリル系ブロック共重合体(L)の重量比(H/L)が5/95〜95/5(好ましくは10/90〜90/10)となる範囲で用いることが好ましい。
このように組み合わせて使用するアクリル系ブロック共重合体の個々のMwは、それぞれ3×104〜30×104の範囲にあることが好ましい。例えば、Mwが5×104〜20×104(例えば7×104〜20×104)の範囲にあるアクリル系ブロック共重合体(H)と、Mwが3×104〜8×104の範囲であってかつアクリル系ブロック共重合体(H)のMwよりも低いアクリル系ブロック共重合体(L)との組合せが好ましい。より好ましい組合せとして、Mwが6×104〜15×104(例えば7×104〜15×104)の範囲にあるアクリル系ブロック共重合体(H)と、Mwが4×104〜6×104の範囲であってかつアクリル系ブロック共重合体(H)のMwよりも低いアクリル系ブロック共重合体(L)との組合せが例示される。これらのアクリル系ブロック共重合体の重量比(H/L)は、例えば40/60〜90/10とすることができる。好ましい一態様において、上記重量比(H/L)を45/65〜90/10とすることができ、55/45〜90/10としてもよく、さらに65/35〜85/15(例えば75/25〜85/15)としてもよい。
なお、Mwの異なる2種以上のアクリル系ブロック共重合体を含むことや、各共重合体のMwおよび重量比は、例えば、上述したGPC測定を通じて把握することができる。
<抗菌剤>
ここに開示される技術における粘着剤は、上述のようなベースポリマーに加えて、さらに抗菌剤を含む。抗菌剤の種類は特に限定されず、該抗菌剤を含む粘着剤をクリーニング対象面に接触させることで該クリーニング対象面に抗菌性を付与する機能を発揮し得る各種の抗菌剤を用いることができる。有機抗菌剤および無機抗菌剤のいずれも使用可能であり、有機抗菌剤と無機抗菌剤とを組み合わせて用いてもよい。
無機抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛、錫、鉛、金等の公知の無機抗菌剤を、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。必要に応じてこれら無機抗菌剤の担体としてゼオライト、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、シリカゲル、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ポリシロキサン化合物、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、イオン交換体、酸化亜鉛等を使用することができる。
有機抗菌剤の例としては、公知の合成有機抗菌剤および天然有機抗菌剤が挙げられる。合成有機抗菌剤の例としては、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメイト系、界面活性剤系、有機金属系等の合成有機抗菌剤が挙げられる。天然有機抗菌剤の例としては、ヒノキチオール、ヨモギエキス、アロエエキス、シソの葉エキス、ニンニクエキス、ドクダミ、カンゾウ、ツバキ科植物抽出物、カラシ抽出物、ワサビ抽出物、竹抽出物等の天然有機抗菌剤が挙げられる。有機抗菌剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される技術は、上記粘着剤が少なくとも有機抗菌剤を含む態様で好ましく実施され得る。概して有機抗菌剤は、無機抗菌剤に比べて粘着剤の内部で移動しやすい傾向にある。したがって、粘着剤が抗菌剤として少なくとも有機抗菌剤を含むことは、クリーナーからクリーニング対象面への抗菌成分の移行性や、該クリーナーの抗菌性付与効果の持続性の観点から有利となり得る。上記粘着剤は、上記抗菌剤として有機抗菌剤のみを含有する粘着剤であってもよい。
ここに開示される技術の一態様において、上記粘着剤に含有させる抗菌剤として、界面活性剤系の有機抗菌剤を好ましく用いることができる。界面活性剤系の有機抗菌剤の例には、有機抗菌剤として機能し得るカチオン性界面活性剤および両性界面活性剤(例えば、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン、ナトリウムアルキルジアミノエチルグリシン等)が含まれる。ここに開示される技術は、上記有機抗菌剤としてカチオン性界面活性剤を使用する態様で好ましく実施され得る。例えば、下記一般式(2)で表される化合物(第4級アンモニウム塩)を好ましく使用し得る。
ここで、上記一般式(2)中のR11〜R14は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18の炭化水素基から選択される。例えば、R11が炭素原子数8〜18のアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、R12が炭素原子数1〜18のアルキル基であり、R13およびR14が炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましい。R11〜R14は、同一であってもよく、異なってもよい。
上記一般式(2)中のX−は対イオンであり、有機アニオンであってもよく無機アニオンであってもよい。有機アニオンの例としては、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が挙げられる。無機アニオンの例としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲン化物イオンのほか、ヒドロキシイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例として、ジデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。上記一般式(2)におけるX−が2価のアニオンであり、その対イオンとして2つの第4級アンモニウムカチオンを含む化合物を有機抗菌剤として用いてもよい。そのような化合物の一例として、ジデシルジメチルアンモニウムアジペートが挙げられる。また、例えばヘキサデシルピリジニウムクロライド等のように、上記一般式(2)で表される化合物以外のカチオン性有機抗菌剤(典型的には、第4級アンモニウム塩型有機抗菌剤)を用いてもよい。ここに開示される技術は、有機抗菌剤としてジデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩を用いる態様で好ましく実施され得る。
特に限定するものではないが、クリーニング対象面に移行した後の抗菌効果の持続性の観点から、揮発性の低い抗菌剤(典型的には有機抗菌剤)を好ましく採用し得る。抗菌剤が配合されたホットメルト型の粘着剤組成物または揮発性媒体中に粘着成分を含む形態の粘着剤組成物(溶剤型粘着剤組成物、水分散型粘着剤組成物等)を用いて粘着剤を形成する場合には、抗菌剤として揮発性の低いものを選択することが特に有意義である。
特に限定するものではないが、抗菌剤(典型的には有機抗菌剤)としては、分解開始温度が150℃以上(より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上、例えば230℃以上)のものを好ましく採用し得る。上記分解開始温度は、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより把握することができる。抗菌剤が配合されたホットメルト型の粘着剤組成物または揮発性媒体中に粘着成分を含む形態の粘着剤組成物(溶剤型粘着剤組成物、水分散型粘着剤組成物等)を用いて粘着剤を形成する場合には、このように耐熱性(熱安定性)の高い抗菌剤を選択することが特に有意義である。
粘着剤における抗菌剤の含有量は特に限定されない。抗菌剤の含有量は、粘着剤を物品表面(例えば、平滑なガラス表面)に接触させることによって(典型的には、上記物品表面の面方向に粘着剤を擦りつけるような態様での接触ではなく、該粘着剤を表記物品表面に軽く圧着する態様または該表面上に転動させる態様での接触によって)該表面に抗菌性を付与し得るように設定することができる。換言すると、抗菌剤の含有量は、上記接触によって、物品表面(クリーニング対象面)に抗菌性を付与するに足る量の抗菌剤が粘着剤から上記物品表面に移行するように(転写されるように)設定することができる。上記接触により物品表面に付与される抗菌性の程度は、例えば、後述する実施例に記載の抗菌活性値(R)により評価することができる。粘着剤における抗菌剤の含有量は、黄色ブドウ球菌および大腸菌の少なくとも一方(好ましくは両方)についてRが1.0以上(より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上)となる抗菌性をクリーニング対象面に付与し得るように設定することが好ましい。
特に限定するものではないが、粘着剤における抗菌剤の含有量(濃度)は、該粘着剤の0.5重量%以上とすることができ、通常は1重量%以上(典型的には1重量%超)とすることが適当であり、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5重量%以上(典型的には5重量%超)である。抗菌剤の濃度が高くなると、より高い抗菌性がクリーニング対象面に付与される傾向にある。また、粘着剤の内部から該粘着剤の表面に補給され得る抗菌剤の量が多くなるので、クリーニング対象面に抗菌性を付与する機能の持続性(例えば、繰り返し使用に対する抗菌性付与機能の維持性)も高くなる傾向にある。ここに開示される技術は、粘着剤における抗菌剤の濃度が8重量%以上(さらには10重量%以上、例えば10重量%超)である態様でも好適に実施することができる。粘着剤における抗菌剤の濃度の上限は、特に限定されない。原料コストや製造容易性等の観点から、通常は、抗菌剤の濃度を50重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下とすることが好ましく、20重量%以下とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤における抗菌剤の濃度が15重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には10重量%未満)である態様でも好適に実施することができる。
ここに開示されるクリーナーは、粘着剤以外の構成部材(好ましくは合成樹脂製の部材)または付属品の構成材料に抗菌剤を配合することにより、該構成部材または付属品自体が抗菌性を示すように構成されていてもよい。例えば、図1に示す構成において、保持部材(巻芯)20、支持基材36、取っ手42等の部材の構成材料に抗菌剤を含有させることができる。上記付属品の例としては、クリーナーの不使用時に粘着シートロール30を収納し得るように構成されたケースが挙げられる。このような構成部材や付属品に用いられる抗菌剤は、上述のような公知の有機抗菌剤および無機抗菌剤から適切なものを選択することができる。抗菌剤の使用量は、上記構成部材または付属品が適切な抗菌性を示すように設定することができる。例えば、JIS Z 2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」に基づく抗菌性試験において、黄色ブドウ球菌および大腸菌の少なくとも一方(好ましくは両方)について抗菌活性値(R)が0.5以上(より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは2.0以上、特に好ましくは3.0以上)となる抗菌性を付与し得るように設定することが好ましい。なお、ここに開示される粘着剤は、通常、該粘着剤自体が抗菌性(典型的には、上記粘着剤を接触させることによりクリーニング対象面に付与し得る抗菌性よりも高レベルの抗菌性)を示す。
<可塑剤>
ここに開示される技術における粘着剤は、可塑剤を含むことが好ましい。粘着剤に可塑剤を含有させることにより軽剥離性が向上する。また、粘着剤の溶融粘度が低下するため塗工性が向上する。さらに、可塑剤の含有によって粘着剤表面における有機質汚れの捕捉性が向上するという側面もある。このことによって、例えば、より高い皮脂汚れ除去性が実現され得る。
また、粘着剤に可塑剤を含ませることにより、粘着剤表面で捕捉された有機質汚れが粘着剤(例えば粘着剤層)の内部に吸収拡散されるので、繰り返し使用により汚れ捕捉能力が低下したものであっても、比較的短時間(例えば数分、あるいは数時間)のうちに汚れ捕捉能力が回復するという特有の作用(汚れ捕捉能力回復作用)が実現され得る。
上記汚れ捕捉能力回復作用について図5を参照しながら説明する。図5に模式的に示すように、汚れ捕捉部(粘着シート)31の粘着剤層32をポータブル機器等の物品1の表面2に接触させると、粘着剤層32は上記表面2に付着した有機質汚れ50を捕捉する。そして、粘着剤層32は有機質汚れ50を捕捉するのみならず、層内に移行させる性質を有する。そのため、粘着剤層32の表面に付着している有機質汚れ50は経時的に粘着剤層32内に移行し、粘着剤層32の表面に存在する有機質汚れ50は減少し、最終的に粘着剤層32の表面には、有機質汚れ50がほとんど存在しない状態となる。つまり、粘着クリーナーを使用する前の状態に戻ることとなる。したがって、上記の「回復作用」とは、粘着剤が有機質汚れを捕捉して汚れ捕捉能力が一時的に低下した場合において、所定時間(例えば数分、好ましくは数時間)を経ることで、汚れ捕捉能力が復活し、粘着剤(例えば粘着剤層)が再び汚れを捕捉することが可能となる作用のことをいい、汚れ捕捉能力の回復に要する時間が短いことを包含する。
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル;トリメリット酸トリオクチル等のトリメリット酸エステル;セバシン酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油;エポキシ化脂肪酸オクチルエステル等のエポキシ化脂肪酸アルキルエステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、それらのエチレンオキサイド付加物等の環状脂肪酸エステルおよびその誘導体;等が挙げられる。また、プロセスオイル等の軟化剤も可塑剤に包含される。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち好ましい可塑剤として、アジピン酸エステル、エポキシ化植物油およびエポキシ化脂肪酸アルキルエステルが例示される。なかでもアジピン酸エステルが好ましい。
このような可塑剤は、例えばアクリル系粘着剤に含有されて、該粘着剤の粘着力を低下させる効果と、有機質汚れの捕捉性を向上させる効果とを高レベルで発揮し得る。ベースポリマーがアクリル系ブロック共重合体であるアクリル系粘着剤に上記可塑剤を含有させることにより、上記の効果がよりよく発揮され得る。アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキルアクリレートを含むAcブロックをソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤に上記可塑剤を含有させることが特に好ましい。
可塑剤の配合量は特に限定されない。軽剥離性の付与、汚れ捕捉性の向上等の観点から、ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)100重量部に対する可塑剤の配合量は、例えば1重量部以上とすることが適当である。上記配合量は、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、15重量部以上がさらに好ましく、20重量部以上が特に好ましい。
ここで、一般に可塑剤は低分子量であって、含有量が多くなると粘着剤の表面にブリードアウトしやすくなる傾向にある。したがって、粘着剤中の抗菌成分をクリーニング対象面に移行させて該対象面に抗菌性を付与する目的からは、粘着剤における可塑剤含有量は多いほうが有利であるとも考えられる。しかし本発明者は、鋭意検討の結果、粘着剤が可塑剤を含むことによって、クリーニング対象面に抗菌性(特に、大腸菌に対する抗菌性)を付与する効果がむしろ妨げられ得ることを見出した(後述する実施例参照)。したがって、可塑剤による軽剥離性の付与や汚れ捕捉性の向上等の効果と、抗菌剤によるクリーニング対象面への抗菌性付与効果とを高レベルで両立させるためには、抗菌剤を含まない組成の粘着剤とは異なる思想に基づく検討を行う必要がある。
ここに開示される粘着剤における可塑剤の含有量は、抗菌剤の効果を適切に発揮する観点から、ベースポリマー100重量部に対して、100重量部以下とすることが好ましく、80重量部以下とすることがより好ましく、60重量部以下とすることがさらに好ましい。例えば、アルキル基の炭素原子数が6以上(例えば6〜12)のアルキルアクリレートを含むAcブロック(例えば、該アルキルアクリレートを主モノマーとするAcブロック)をソフトセグメント(B)として有するアクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤において、該ベースポリマー100重量部に対する可塑剤の配合量を5〜100重量部(好ましくは10〜70重量部、より好ましくは20〜60重量部、例えば20〜50重量部)とすることができる。好ましい一態様において、上記可塑剤の含有量を40重量部以下としてもよい。
粘着剤が可塑剤を含む場合、該粘着剤における抗菌剤の含有量(重量基準の含有量;Wa)は、可塑剤の含有量(重量基準の含有量;Wp)との関係を考慮して設定することが好ましい。特に限定するものではないが、抗菌剤および可塑剤の含有量は、Wa/Wpが0.05以上となるように設定することができ、通常は0.10以上とすることが適当であり、0.15以上とすることが好ましく、0.20以上(例えば0.25以上)とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、Wa/Wpが0.30以上である態様でも好ましく実施され得る。Wa/Wpの値が大きくなると、より高い抗菌性がクリーニング対象面に付与される傾向にある。Wa/Wpの上限は特に限定されない。通常は、Wa/Wpを1.0以下とすることが適当であり、0.80以下(例えば0.70以下)とすることが好ましい。
特に限定するものではないが、有機質汚れの除去性、軽剥離性およびクリーニング対象面に抗菌性を付与する性能をバランスよく実現する観点から、粘着剤に含まれる抗菌剤と可塑剤との合計量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば10〜120重量部とすることができ、通常は15〜100重量部とすることが適当であり、20〜80重量部とすることが好ましい。
<粘着付与剤>
ここに開示される技術における粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤を含ませることができる。粘着付与剤を配合することは、粘着剤の熱可塑性の向上(例えば、溶融粘度の低下)に役立ち得る。粘着付与剤としては、アクリル系粘着剤の分野において公知の粘着付与樹脂等を用いることができる。例えば、炭化水素系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(キシレン樹脂等)、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体等のテルペン系樹脂;これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性等)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、水素添加テルペンフェノール系樹脂等);等が挙げられる。ロジン系粘着付与樹脂の例としては、ガムロジン、ウッドロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。フェノール系の粘着付与樹脂の例としては、レゾール型またはノボラック型のアルキルフェノール樹脂が挙げられる。これらのうち好ましい粘着付与剤として、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂およびアルキルフェノール樹脂が挙げられる。
粘着付与剤の軟化点は特に限定されないが、溶融粘度を低下させる観点からは160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。また、粘着力の過度な上昇を避ける観点から、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。粘着付与剤の軟化点は、JIS K 2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定される。
粘着付与剤の配合量は特に限定されない。粘着力の過度な上昇を避ける観点から、粘着付与剤の配合量は、例えば、ベースポリマー(例えば、アクリル系ブロック共重合体)100重量部に対して50重量部以下とすることができ、通常は40重量部以下が適当であり、30重量部以下が好ましい。あるいは、このような粘着付与剤を実質的に含有しない粘着剤であってもよい。また、粘着付与剤の配合による効果(例えば、溶融粘度を低下させる効果)をよりよく発揮する観点からは、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の配合量を、例えば1重量部以上とすることが適当であり、5重量部以上とすることが好ましく、10重量部以上(例えば12重量部以上)とすることがより好ましい。ベースポリマー100重量部に対する粘着付与剤の配合量を15重量部以上としてもよい。
<その他の成分>
ここに開示される技術における粘着剤は、ベースポリマーに加えて、粘着剤の粘度の調整(例えば溶融粘度の低下)や粘着特性の制御(例えば粘着力の低減)等の目的で、ベースポリマー以外のポリマーまたはオリゴマー(以下、任意ポリマーともいう。)を必要に応じて含有してもよい。例えば、アクリル系ブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤において、上記任意ポリマーとして、Mwが500〜10000程度(典型的には800〜5000程度)のアクリル系ランダム共重合体を使用してもよい。
上記任意ポリマーの配合量は特に限定されない。通常は、粘着剤に含まれるポリマー成分全体の30重量%以下とすることが適当であり、10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましい。好ましい一態様において、粘着剤は、ベースポリマー以外のポリマーを実質的に含有しないものであり得る。ベースポリマー以外のポリマーの含有量が、該ベースポリマー100重量部当たり1重量部未満(典型的には0〜0.5重量部)であってもよい。
上記粘着剤は、必要に応じて架橋されていてもよい。例えば、アクリル系ランダム共重合体をベースポリマーとする粘着剤において、該粘着剤が架橋されていることが好ましい。架橋には公知の架橋剤を使用することができる。かかる架橋剤の好適例として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム等の有機金属塩、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。オキサゾリン系架橋剤やアジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤等を用いてもよい。架橋剤は、1種を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、カルボキシ基と好適に架橋することができ、また良好な操作性(典型的には軽剥離性)が得られやすく、さらに耐酸性にも優れることから、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましく、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤との併用が特に好ましい。
架橋剤の使用量は特に限定されない。軽剥離性の観点からは、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対し、0.01〜10重量部(例えば0.05〜5重量部、典型的には0.1〜5重量部)程度とすることができる。エポキシ系架橋剤(CE)とイソシアネート系架橋剤(CI)とを併用する場合、その重量比(CE/CI)は、0.01〜1(例えば0.05〜0.5、典型的には0.1〜0.4)とすることが好ましい。
ここに開示される技術における粘着剤には、その他にも、連鎖移動剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等)等、粘着剤の分野において公知の各種添加成分を必要に応じて配合することができる。これら必須成分ではない添加成分の種類や配合量は、この種の粘着剤における通常の種類および配合量と同様とすればよい。
ここに開示される粘着剤を支持基材上に配置された粘着剤層として形成する場合、その形成方法は特に限定されない。例えば、加熱溶融状態の粘着剤(熱可塑性粘着剤)を、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の従来公知の塗付手段を用いて支持基材に直接付与し、その粘着剤を室温程度まで放冷することにより粘着剤層を形成する方法(ホットメルト塗工)を好ましく適用することができる。この場合、上記粘着剤は、典型的には有機溶媒を実質的に含まない粘着剤(すなわち無溶剤型粘着剤)の形態で基材に付与される。上記粘着剤は、支持基材に付与された後に適宜の手段により架橋させることができる。また、特段の架橋手段を適用することなく、非架橋の粘着剤(すなわち、熱可塑性の粘着剤)として用いられてもよい。このことは簡便性等の観点から好ましい。
なお、粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形状に限定されない。粘着剤層は、例えば、点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されていてもよい。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤は、180℃における溶融粘度が200Pa・s以下であることが適当であり、100Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下(典型的には20Pa・s以下、例えば10Pa・s以下)であることがより好ましい。このような粘着剤は、ホットメルト塗工に適する。180℃における溶融粘度の下限は特に制限されないが、塗工性と粘着性能とのバランスを考慮して、通常は0.1Pa・s以上とすることが適当であり、1Pa・s以上であることが好ましく、例えば5Pa・s以上とすることが好ましい。
ここで、上記溶融粘度は以下の溶融粘度測定方法により測定することができる。
[溶融粘度測定方法]
測定機:米国ブルックフィールド社製、プログラマブル粘度計(DV−II+Pro)
測定条件:測定温度180℃、回転数2.5rpm、スピンドルSC4−27
測定手順:粘着剤約14gをサンプルチャンバーに入れ、180℃に加熱して溶融させる。その溶融した粘着剤中にスピンドルを沈めて回転させ、回転開始から30分後の溶融粘度を読み取る。
また、ここに開示される粘着剤は、水性粘着剤組成物や溶剤型粘着剤組成物の形態で支持基材に塗付(典型的には常温で塗付)され、その塗付物を乾燥させることで粘着剤層として形成されたものであってもよい。溶剤型粘着剤組成物には、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、エチルアルコール等の一般的な有機溶媒を利用し得る。有機溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に限定するものではないが、上記粘着剤組成物は、固形分(不揮発分)を30〜70重量%程度の割合で含むものであり得る。粘着剤層は、粘着剤組成物を支持基材に直接塗付する代わりに、剥離性を有する表面(剥離面)に塗付して乾燥させることで該剥離面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を支持基材の非剥離性表面に貼り合わせることで該支持基材上に配置されてもよい。
粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。汚れ捕捉性能を充分に発揮させる観点や、クリーニング対象面に抗菌性を付与する機能の持続性を高める観点、あるいは汚れ捕捉能力の回復性を向上させる観点から、粘着剤層の厚さは凡そ10μm以上(例えば20μm以上、好ましくは30μm以上、典型的には40μm以上)とすることが好ましい。また、軽量化、小型化等を重視する場合には、上記粘着剤層の厚さは300μm以下(例えば100μm以下、好ましくは70μm以下、典型的には60μm以下)とすることが好ましい。なお、粘着剤層は、支持基材の一方の表面の全範囲に亘って形成されていてもよく、あるいは例えば、支持基材の幅方向の両端に沿って、粘着剤層が形成されていない非粘着部(ドライエッジ)を有してもよい。
ここに開示される汚れ捕捉部が例えば上記実施形態のように支持基材を備えるものである場合、支持基材として、種々の合成樹脂、不織布、あるいは紙で構成される材料を用いることができる。支持基材の材質は、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等であってもよい。
合成樹脂の例としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート(PET)製の支持基材を好適に使用することができる。また、紙としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が例示される。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリオレフィンシート(例えば発泡ポリエチレンシート)、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。支持基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されてもよい。
また、汚れ捕捉部として、支持基材の片面に粘着剤層が形成された片面粘着シートを採用する場合、上記支持基材の背面(粘着剤層非形成面)には、シリコーン系剥離剤の塗付等、粘着シートロールの巻戻し力を適切な範囲に調節するための表面処理(典型的には、巻戻し力が高くなりすぎることを防止する剥離処理)が施されていることが好ましい。
上記支持基材の厚さは、目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。一般的には、上記厚さを凡そ20μm以上(例えば30μm以上、典型的には35μm以上)とすることが好ましく、200μm以下(より好ましくは100μm以下、典型的には70μm以下、例えば50μm以下)程度とすることが適当である。
上記汚れ捕捉部(例えば粘着シート)は、クリーニング対象面に接触する部分(例えば粘着剤層側表面)が例えば2N/25mm以下(典型的には1N/25mm以下)の粘着力を示すものであり得る。上記粘着力が1N/25mm未満であることが好ましい。このことは、汚れ捕捉部が軽剥離性であることを意味する。このような軽剥離性の汚れ捕捉部を有するクリーナーは、上記表面上で汚れ取り作業を行う際に要する力が小さくて済むため、汚れ除去作業性に優れる。より具体的には、物品の表面(クリーニング対象面)上にてクリーナーをよりスムーズに移動させることができる。また、例えば汚れ取り作業後に上記表面からクリーナーを離しやすいといった利点を有する。さらに、上記物品の表面(例えばタブレット型情報端末の表示面)が剥離可能な保護フィルム(例えばシリコーン系やポリエステル系等の合成樹脂製の保護フィルム)で覆われている場合であっても、上記の軽剥離性により、上記クリーナーを用いて上記保護フィルムで覆われた物品の表面(すなわち、上記保護フィルムの表面)のクリーニングを行う際に該保護フィルムが物品から剥がれにくい。したがって、上記保護フィルムが物品表面を覆った状態を保ちながらのクリーニングを行いやすいという利点がある。この場合、クリーニング対象面は保護フィルム表面となるが、このような表面もここでいう「物品の表面」の概念に包含される。
上記粘着力は、汚れ除去作業性の観点から、上述のように1N/25mm未満であることが好ましく、0.80N/25mm以下であることがより好ましく、0.60N/25mm以下であることがさらに好ましい。また、保護フィルム表面のクリーニングを行う際の操作性等の観点からは、上記粘着力が0.50N/25mm以下であることが適当であり、0.30N/25mm以下であることが好ましく、0.20N/25mm以下であることがより好ましい。上記粘着力が0.10N/25mm未満であってもよい。
また、上記粘着力は、汚れ捕捉性の観点から、通常は0.001N/25mm以上(典型的には0.005N/25mm以上)とすることが適当であり、0.008N/25mm以上とすることが好ましく、0.01N/25mm以上とすることがより好ましい。上記粘着力が0.03N/25mm以上であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、上記粘着力が0.01〜0.02N/25mmである態様で好ましく実施され得る。
上記粘着力は、例えば、粘着剤のベースポリマーの組成や、粘着剤の架橋の有無および架橋密度、可塑剤の使用の有無および使用量、粘着剤層の形成パターン等により調節することができる。
ここで、上記粘着力とは、ステンレス鋼(SUS)板を被着体として、以下の180°剥離試験に基づいて測定される180°引き剥がし粘着力を指す。
[180°剥離試験]
(1)試験板(被着体)としては、SUS304鋼板を耐水研磨紙で磨いたものを用いる。試験板の寸法は、厚さ2mm以上、幅約50mm、長さ約125mmとし、♯360の耐水研磨紙を用いて上記試験板を全長にわたって長さ方向に均一に研磨する。
(2)粘着力を測定する前には、上記耐水研磨紙で磨いた試験板を洗浄する。洗浄の手順としては、試薬用のトルエンをウェスに染込ませて試験板の表面を拭いた後、さらに乾いたウェスを用いて上記試験板の表面を乾燥するまでよく拭く。このような洗浄操作を、目視によって試験板の表面が清浄になったと認められるまで3回以上繰り返して行う。
(3)洗浄後の試験板(SUS板)は、温度23±2℃、相対湿度(RH)50±5%の雰囲気中に5分以上放置した後、粘着力の測定に使用する。
(4)汚れ捕捉部(典型的には粘着シート)を長方形シート状にカットした試験片を用意する。試験片は、長さ100〜300mm程度とすることが好ましく、幅は15〜30mm程度とすることが好ましい。幅が25mmでない場合、実際の幅と25mmとの比から180°引き剥がし粘着力[N/25mm]を算出(換算)すればよい。試験片の厚さは特に限定されない。
(5)得られた試験片の粘着面(例えば粘着剤層側表面)を上記試験板(SUS板)に、2kgのローラーを一往復させて貼り付ける。試験片が両面粘着シート等のように両面に粘着性を有する形態である場合、測定面とは反対側の表面に厚さ25μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けて裏打ちすることが好ましい。
(6)これを23℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、引張試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、23℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度1000mm/分の条件にて、上記SUS板に対する180°引き剥がし粘着力(対SUS180°引き剥がし粘着力)[N/25mm]を測定する。引張試験機は特に限定されず、従来公知の引張試験機を用いることができる。例えば、島津製作所社製の「テンシロン」を用いて測定することができる。
特に限定するものではないが、ここに開示される汚れ捕捉部(例えば粘着シート)は、クリーニング対象面に接触する部分(例えば粘着面)が、ガラス板に対する180°引き剥がし粘着力が1N/25mm未満(より好ましくは0.80N/25mm以下、さらに好ましくは0.60N/25mm以下)であるものであり得る。このような軽剥離性の汚れ捕捉部を有するクリーナーは汚れ除去作業性に優れる。上記粘着力は、0.50N/25mm以下であることが適当であり、0.30N/25mm以下であることが好ましく、0.20N/25mm以下であることがより好ましく、0.10N/25mm未満であることが特に好ましい。また、上記粘着力は、汚れ捕捉性の観点から、通常は0.001N/25mm以上(典型的には0.005N/25mm以上)とすることが適当であり、0.01N/25mm以上とすることが好ましく、0.02N/25mm以上とすることがより好ましく、0.03N/25mm以上とすることがさらに好ましい。上記ガラス板に対する180°引き剥がし粘着力(対ガラス180°引き剥がし粘着力)の測定は、被着体としてガラス板(例えば、市販のフロート板ガラス)を用いる他は上記対SUS180°引き剥がし粘着力の測定と同様にして行えばよい。
特に限定するものではないが、ここに開示される汚れ捕捉部(例えば粘着シート)は、クリーニング対象面に接触する部分(例えば粘着面)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに対する180°引き剥がし粘着力が1N/25mm未満(より好ましくは0.80N/25mm以下、さらに好ましくは0.60N/25mm以下)であるものであり得る。このような軽剥離性の汚れ捕捉部を有するクリーナーは汚れ除去作業性に優れる。保護フィルム表面のクリーニングを行う際の操作性等の観点から、上記粘着力は、0.50N/25mm以下であることが適当であり、0.30N/25mm以下であることが好ましく、0.20N/25mm以下であることがより好ましく、0.10N/25mm未満であることが特に好ましい。また、上記粘着力は、汚れ捕捉性の観点から、通常は0.001N/25mm以上(典型的には0.005N/25mm以上)とすることが適当であり、0.01N/25mm以上とすることが好ましく、0.02N/25mm以上とすることがより好ましく、0.03N/25mm以上とすることがさらに好ましい。上記PETフィルムに対する180°引き剥がし粘着力(対PET180°引き剥がし粘着力)の測定は、被着体としてPETフィルムを用いる他は上記対SUS180°引き剥がし粘着力の測定と同様にして行えばよい。
また、ここに開示されるクリーナーが粘着シートロールを有する場合、粘着シートロールは、レール引き現象を抑止するように構成されていることが好ましい。ここでレール引き現象とは、クリーニング対象面上で上記シートロールを該シートロールの逆巻回方向(典型的には、巻回された片面粘着シートが剥がされていく方向)に転動(回転)させたときに、当該粘着シートがロール外周面の端部を起点としてクリーニング対象面に帯状に付着していく現象をいう。レール引き現象の発生が抑止されることによって、クリーニング対象面上において上記ロールをストレスなくスムーズに転動させることができ、使い勝手がよい。また、レール引き現象の発生による粘着シートの無駄使い(すなわち上記クリーニング対象面への意図しない粘着シートの貼り付きによる当該シートの浪費)を防止することができる。
例えば、上記粘着シートは、クリーニング対象面(例えばアルミノケイ酸ガラス等のガラスや合成樹脂からなる表面)上におけるレール引き現象の発生が抑止されるように、粘着力(例えば上記180°剥離試験に基づく測定値)と巻戻し力とが調和されていることが好ましい。ここで巻戻し力とは、粘着シートを粘着シートロールから引き出すために要する力(すなわち、巻戻しに対する抵抗力)をいう。上記巻戻し力は、粘着シートの裏面(典型的には支持基材の背面)に対する粘着力としても把握され得る。例えば、粘着力に比べて巻戻し力が低すぎる設定であると、粘着シートロールをクリーニング対象面上で転がす際に巻戻し力が粘着シート(典型的には粘着剤層)と上記クリーニング対象面との間の粘着力に負けてレール引き現象を生じさせる虞がある。他方、巻戻し力が高すぎる場合には、粘着シートがスムーズに引き出されない傾向がある。
巻戻し力は、次のようにして評価することができる。すなわち、粘着シートロールを所定の引張試験機にセットし、温度23℃、RH50%の環境下において、巻回された粘着シートの外周側先端を試験機のチャックに装着して300mm/分の速度で引っ張ることによって粘着シートロールを接線方向に巻き戻し、このときの巻戻し力を、例えば粘着シートの粘着剤層の幅(例えば150mm)あたりの値[N/150mm]に換算することにより求めることができる。例えば巻戻し力が0.5〜2.5N/150mm程度のものが好ましい。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
[アクリル系ポリマー]
以下の例では、公知のリビングアニオン重合法により合成された以下のアクリル系ポリマーA,Bを使用した。
(アクリル系ポリマーA)
アクリル系ポリマーAとしては、ポリMMAブロック−ポリ2EHA/BAブロック−ポリMMAブロック(以下、「MMA−2EHA/BA−MMA」と表記することがある。)のトリブロック構造を有し、ポリ2EHA/BAブロックにおける2EHAとBAとの重量比(すなわち、重量基準の共重合比率)が50/50であり、ポリ2EHA/BAブロックの重量に対するポリMMAブロックの重量(2つのポリMMAブロックの合計重量)の比(MMA/(2EHA+BA))が18/82であるアクリル系ブロック共重合体を使用した。このアクリル系ポリマーAのMwは10×104であり、Mnは8.4×104、Mw/Mnは1.21であった。
(アクリル系ポリマーB)
アクリル系ポリマーBとしては、MMA−2EHA/BA−MMAのトリブロック構造を有し、ポリ2EHA/BAブロックにおける2EHAとBAとの重量比が50/50であり、ポリ2EHA/BAブロックの重量に対するポリMMAブロックの重量(2つのポリMMAブロックの合計重量)の比(MMA/(2EHA+BA))が19/81であるアクリル系ブロック共重合体を使用した。このアクリル系ポリマーBのMwは5×104であり、Mnは4.4×104、Mw/Mnは1.13であった。
実験例1
<例1>
アクリル系ポリマー100部、粘着付与剤15部および可塑剤50部をトルエンと混合して、固形分約50%の溶剤型アクリル系粘着剤組成物を調製した。上記アクリル系ポリマーとしては、上述したアクリル系ポリマーAとアクリル系ポリマーBとを80:20の重量比で使用した。上記粘着付与剤としては、ヤスハラケミカル株式会社製「UH−115」(水素添加テルペンフェノール樹脂)を使用した。上記可塑剤としては、DIC株式会社製の商品名「モノサイザーW−242」(アジピン酸ジイソノニル)を使用した。上記粘着剤組成物を厚さ38μmのPET製のシート状支持基材(幅:約8cm)の表面に塗付し、100℃で2分間乾燥させることにより、厚さ約50μmの粘着剤層が上記支持基材の片面に形成された粘着シートを作製した。得られた粘着シートを合成樹脂製の円筒状保持部材(直径20mm)の外周に巻きつけて粘着シートロールを形成した。そして、上記保持部材を把持部材の先端に転動(回転)自在に装着することにより、図1,2に模式的に示すような構成のクリーナーを作製した。
なお、この例1および以下の例2〜10における粘着剤は、いずれも、アクリル系ポリマーA:アクリル系ポリマーB:粘着付与剤を80:20:15の重量比で含む。
<例2>
アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーAとアクリル系ポリマーBとの合計量)100部あたり1.7部の抗菌剤を配合した他は例1と同様にして、上記抗菌剤を1.0%の濃度で含む粘着剤層が上記支持基材の片面に形成された粘着シートを作製した。抗菌剤としては、ジデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩([(CH3)2N(C10H21)2]+ CF3SO3 −、三洋化成株式会社製、商品名「ネオジャーミDFS」)を使用した。この粘着シートを用いた他は例1と同様にして、例2に係るクリーナーを作製した。なお、例2に係るクリーナーの粘着剤層を構成する粘着剤は、表1に示すように、可塑剤50部に対して抗菌剤1.7部を含有することから、可塑剤の含有量Wpに対する抗菌剤の含有量Waの比(Wa/Wp)は0.034と算出される。他の例についても同様にしてそれぞれWa/Wpを算出することができる。
<例3,4>
粘着剤中における濃度が5.0%および10.0%になるように、アクリル系ポリマー100部に対する抗菌剤の使用量をそれぞれ変更した。その他の点については例2と同様にして、例3,4に係るクリーナーを作製した。
<例5,6>
可塑剤を使用せず、かつ粘着剤中における濃度が5.0%および10.0%になるように、アクリル系ポリマー100部に対する抗菌剤の使用量を調節した。その他の点については例3,4とそれぞれ同様にして、例5,6に係るクリーナーを作製した。
例1〜6で得られたクリーナーにつき、以下の試験を行った。
[抗菌付与性]
各例に係る粘着シートを50mm×50mmの正方形に切り取り、滅菌シャーレに貼りつけた。貼付けから1時間後に粘着シートを上記滅菌シャーレから剥がした。そして、上記滅菌シャーレのうち上記粘着シートが貼り付けられていた部分を試験面として、該滅菌シャーレをJIS Z 2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」に基づく抗菌性試験に供し、以下の式により抗菌活性値(R)を算出した。
なお、ここでいう「無加工試験片」は、例1に係る粘着シートを貼り付けて1時間後に剥がした後の滅菌シャーレ表面に対応し、「抗菌加工試験片」は、例2〜6に係る粘着シートを貼り付けて1時間後に剥がした後の滅菌シャーレ表面に対応する。また、初期菌濃度は、黄色ブドウ球菌については3.2×104(cfu/mL)、大腸菌については6.1×105(cfu/mL)であった。
得られた結果を、Rが2.0以上の場合は◎(抗菌性良好)、Rが1.0以上2.0未満の場合は○(有意な抗菌性あり)、Rが1.0未満の場合は×(抗菌性僅か、あるいは抗菌性なし)として表1に示す。
[指紋除去性]
表示面(アルミノケイ酸ガラス製の平滑な表面)に保護フィルムが貼り付けられたスマートフォン(docomo NEXT series「Xperia(商標) Z SO−02E」;Sony Mobile Communications AB社製品)を用意した。保護フィルムとしては、上記スマートフォン用のジャケット(ハードコーティング・グラデーション・シェルジャケット、レイ・アウト社製品)に付属の保護フィルムを使用した。上記保護フィルムの表面の汚れを不織布製のウェスで念入りに拭き取った。
次いで、試験者の顔面(頬)に付着している皮脂成分を手指(人差し指)にこすり付け、その手指を上記保護フィルムの表面に2秒間じっと押し付けることにより、当該手指に付いている皮脂成分からなる有機質汚れ(指紋)を上記保護フィルムに転写した。
そして、上記指紋が付いた上記保護フィルムの表面を各例に係るクリーナーでクリーニングした。具体的には、各例に係るクリーナーの粘着シートロールを上記保護フィルムの表面に沿う1方向に5回転がした。転がし速度は約0.5m/秒とし、転がす際の作業者の押圧力は約700gとした。粘着シートロールを1回転がす毎に保護フィルムの表面を目視で観察し、その時点での指紋の除去性を以下の5段階で評価した。
5点:指紋の跡が完全に消失した。
4点:指紋の跡が概ね消失した。
3点:指紋の跡が一部消失した。
2点:指紋の跡が薄くなったが消失はしなかった。
1点:指紋の跡の濃さに変化は認められなかった。
3名の試験者A(女性、24歳)、B(男性、26歳)、C(男性、24歳)の皮脂について上記試験を行った。各試験者について上記粘着シートロールを5回転がす間の指紋除去性の合計点を算出し(例えば、試験者Aについて1回目から5回目までの指紋除去性の評価結果がそれぞれ1点、1点、2点、3点、4点であった場合、合計点は11点となる。)、さらに試験者A,B,Cの合計点を合算したものを各例に係るクリーナーの指紋除去性の評価値とした。そして、例1に係るクリーナーの評価値と他の例に係るクリーナーの評価値とを対比した(評価値が大きいほど指紋除去性が良い傾向にあるといえる。)。その結果を、例1との評価値の差が1以内であった場合には「○」(指紋除去性良)、例1よりも評価値が2以上大きい場合には「◎」(指紋除去性優)、例1よりも評価値が2以上小さい場合には「×」(指紋除去性不良)として表1に示す。
[粘着力]
上述した180°剥離試験に基づいて、各例に係る粘着シートの180°引き剥がし粘着力を測定した。より具体的には、各例に係る粘着シートを200mm×25mmの帯状にカットして試験片を用意した。上記試験片の粘着面(粘着剤層の表面)をステンレス鋼(SUS304)板に、2kgのローラーを一往復させて貼り付けた。これを23℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、引張試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、23℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度1000mm/分の条件にて、対SUS180°引き剥がし粘着力[N/25mm]を測定した。測定は、島津製作所社製の「テンシロン」を用いて行った。結果を表1に示す。
表1に示されるように、例3,4に係るクリーナーは、いずれも、例1と同等以上の指紋除去性(すなわち有機質汚れ除去性)を示し、かつ少なくとも黄色ブドウ球菌について良好な抗菌付与性を示した。例4に係るクリーナーは、黄色ブドウ球菌および大腸菌のいずれについても良好な抗菌付与性を示した。また、例3,4のクリーナーは、いずれも軽剥離であり、汚れ除去作業性が良好であった。
例3と例5との対比から、同じ抗菌剤濃度において可塑剤を含まない組成とすることにより、粘着剤の抗菌付与性が向上したことがわかる。また、大腸菌に対する抗菌付与性に関し、例6の抗菌活性値(R)の数値は例4のRの数値よりも大きかった。すなわち、例4と例6の対比によっても、可塑剤を含まない組成とすることによる抗菌付与性能の向上が認められた。例2,4の組成において可塑剤を除くと指紋除去性が低下した(例5,6)。例5に係る粘着剤は、粘着力も高めであった。なお、例2と同じ濃度で同じ抗菌剤を含み、ただし可塑剤を含まない組成の粘着剤組成物を用いて同様に作製した粘着シートの粘着力は、7.9N/25mmという高い値であった。
実験例2
<例7,8>
アクリル系ポリマー100部あたりの可塑剤の使用量を30部に変更した。また、粘着剤中における濃度が5.0%および7.5%になるように、アクリル系ポリマー100部に対する抗菌剤の使用量をそれぞれ変更した。その他の点については例2と同様にして、例7,8に係るクリーナーを作製した。
<例9,10>
粘着剤中における濃度が7.5%および15.0%になるように、アクリル系ポリマー100部に対する抗菌剤の使用量をそれぞれ変更した。その他の点については例2と同様にして、例9,10に係るクリーナーを作製した。
例7〜10で得られたクリーナーにつき、実験例1と同様にして抗菌付与性、指紋除去性および粘着力を評価した。ただし、抗菌付与性の評価においては、粘着シートを貼り付けた後、すぐに粘着シートを剥がした後の滅菌シャーレ表面を試験面とした。抗菌活性値(R)の算出における無加工試験片としては、例1に係る粘着シートを貼り付けた後、すぐに剥がした後の滅菌シャーレ表面を使用した。初期菌濃度は、黄色ブドウ球菌については1.1×105(cfu/mL)、大腸菌については1.4×105(cfu/mL)であった。結果を表2に示す。
表2に示されるように、例7〜10のクリーナーは、いずれも例1と同等以上の指紋除去性(すなわち有機質汚れ除去性)を示し、かつ黄色ブドウ球菌および大腸菌のいずれについても有意な抗菌付与性を示した。また、例7〜10のクリーナーはいずれも軽剥離であり、汚れ除去作業性が良好であった。例7,8,10のクリーナーは、より良好な抗菌付与性を示した。例8と例9との対比から、同じ抗菌剤濃度(7.5%)において可塑剤の使用量を減らすことにより、粘着剤の抗菌付与性が向上したことがわかる。
なお、例1〜10に係る粘着剤自体の抗菌性を評価するため、各例に係る粘着シートを50mm×50mmの正方形に切り取ったものを試験片として(粘着剤層の表面を試験面とした。)、同様に抗菌性試験を行った。そして、例1の粘着シートを無加工試験片とし、例2〜10の粘着シートを抗菌加工試験片として、それぞれ粘着剤の抗菌活性値(R)を算出した。その結果、例2〜10に係る粘着剤は、いずれもRが3.0以上であり、良好な抗菌性を示した。すなわち、粘着剤自体に抗菌性を付与する場合には、クリーニング対象面に抗菌性を付与する場合とは異なり、可塑剤の有無やその含有量による抗菌性の違いは認められなかった。これらの結果は、可塑剤と抗菌剤とを含む粘着剤を接触させることによりクリーニング対象面に抗菌性を付与する粘着剤(すなわち、抗菌付与性を有する粘着剤)では、該粘着剤自体に抗菌性を付与する場合とは異なる思想に基づく検討が必要であることを裏付けるものである。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。