(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について、以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る基板処理装置1の概略を表す説明図である。図2は、基板処理装置1の内部構成を表す概略平面図である。尚、各図に於いては、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。図1及び図2に於いて、XY平面は水平面を表し、十Z方向は鉛直上向きを表す。
基板処理装置1は、例えば、各種の基板の処理に用いることができる。前記「基板」とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板をいう。本実施形態では、基板処理装置1を半導体基板(以下、「基板W」という。)の処理に用いる場合を例にして説明する。
また、基板Wとしては、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と記載する)が形成されているものを例にしている。ここで、パターンが形成されているパターン形成面(主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板の面を「下面」と称し、上方に向けられた基板の面を「上面」と称する。尚、以下に於いては上面を表面として説明する。
基板処理装置1は、基板Wに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理(リンス処理を含む。)、及び洗浄処理後の乾燥処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。尚、図1及び図2には、乾燥処理に用いる部位のみが示され、洗浄処理に用いる洗浄用のノズル等が図示されていないが、基板処理装置1は当該ノズル等を備えていてもよい。
<1−1 基板処理装置の構成>
先ず、基板処理装置1の構成について、図1及び図2に基づき説明する。
基板処理装置1は、基板Wを収容する容器であるチャンバ11と、基板Wを保持する基板保持手段51と、基板処理装置1の各部を制御する制御ユニット13と、基板保持手段51に保持される基板Wへ乾燥補助液としての処理液を供給する処理液供給手段(供給手段)21と、基板保持手段51に保持される基板WへIPA(イソプロピルアルコール)を供給するIPA供給手段31と、基板保持手段51に保持される基板Wヘ気体を供給する気体供給手段41(凝固手段、昇華手段)と、基板保持手段51に保持される基板Wへ供給され、基板Wの周録部外側へ排出されるIPAや乾燥補助液等を捕集する飛散防止カップ12と、基板処理装置1の各部の後述するアームをそれぞれ独立に旋回駆動させる旋回駆動部14と、チャンバ11の内部を減圧する減圧手段71とを少なくとも備える。また、基板処理装置1は基板搬入出手段、チャックピン開閉機構及び湿式洗浄手段を備える(何れも図示しない)。基板処理装置1の各部について、以下に説明する。
基板保持手段51は、回転駆動部52と、スピンベース53と、チャックピン54とを備える。スピンベース53は、基板Wよりも若干大きな平面サイズを有している。スピンベース53の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持する複数個のチャックピン54が立設されている。チャックピン54の設置数は特に限定されないが、円形状の基板Wを確実に保持するために、少なくとも3個以上設けることが好ましい。本実施形態では、スピンベース53の周縁部に沿って等間隔に3個配置する(図2参照)。それぞれのチャックピン54は、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持ピンと、基板支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持ピンとを備えている。
それぞれのチャックピン54は、基板保持ピンが基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持ピンが基板Wの外周端面から離れる解放状態との間で切り替え可能となっており、装置全体を制御する制御ユニット13からの動作指令に応じて状態切替が実行される。
より詳しくは、スピンベース53に対して基板Wを搬入出する際は、それぞれのチャックピン54を解放状態とし、基板Wに対して後述する洗浄処理から昇華処理までの基板処理を行う際には、それぞれのチャックピン54を押圧状態とする。チャックピン54を押圧状態とすると、チャックピン54は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース53から所定間隔を隔てて水平姿勢(XY面)に保持される。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向けた状態で水平に保持される。
この様に本実施形態では、スピンベース53とチャックピン54とで基板Wを保持しているが、基板保持方式はこれに限定されるものではない。例えば、基板Wの裏面Wbをスピンチャック等の吸着方式により保持するようにしてもよい。
スピンベース53は、回転駆動部52に連結される。回転駆動部52は、制御ユニット13の動作指令によりZ方向に沿った軸Alまわりに回転する。回転駆動部52は、公知のベルト、モータ及び回転軸により構成される。回転駆動部52が軸Alまわりに回転すると、これに伴いスピンベース53の上方でチャックピン54により保持される基板Wは、スピンベース53とともに軸Alまわりに回転する。
次に、処理液供給手段21(供給手段)について説明する。
処理液供給手段21は、基板Wのパターン形成面に乾燥補助液を供給するユニットであり、図1に示すように、ノズル22と、アーム23と、旋回軸24と、配管25a及び配管25bと、バルブ26a及びバルブ26bと、処理液貯留部27とを少なくとも備える。
処理液貯留部27は、図3(a)及び図3(b)に示すように、処理液貯留タンク271と、処理液貯留タンク271内の乾燥補助液を撹拌する撹拌部277と、処理液貯留タンク271を加圧して乾燥補助液を送出する加圧部274と、処理液貯留タンク271内の乾燥補助液を加熱する温度調整部272とを少なくとも備える。尚、図3(a)は処理液貯留部27の概略構成を示すブロック図であり、同図(b)は当該処理液貯留部27の具体的構成を示す説明図である。
撹拌部277は、処理液貯留タンク271内の乾燥補助液を撹拌する回転部279と、回転部279の回転を制御する撹拌制御部278を備える。撹拌制御部278は制御ユニット13と電気的に接続している。回転部279は、回転軸の先端(図5に於ける回転部279の下端)にプロペラ状の攪拌翼を備えており、制御ユニット13が撹拌制御部278へ動作指令を行い、回転部279が回転することで、攪拌翼が乾燥補助液を撹拌し、乾燥補助液中の乾燥補助物質等の濃度及び温度を均一化する。
また、処理液貯留タンク271内の乾燥補助液の濃度及び温度を均一にする方法としては、前述した方法に限られず、別途循環用のポンプを設けて乾燥補助液を循環する方法等、公知の方法を用いることができる。
加圧部274は、処理液貯留タンク271内を加圧する不活性ガスの供給源である窒素ガスタンク275、窒素ガスを加圧するポンプ276及び配管273により構成される。窒素ガスタンク275は配管273により処理液貯留タンク271と管路接続されており、また配管273にはポンプ276が介挿されている。
温度調整部272は制御ユニット13と電気的に接続しており、制御ユニット13の動作指令により処理液貯留タンク271に貯留されている乾燥補助液を加熱して温度調整を行うものである。温度調整は、乾燥補助液の液温が、当該乾燥補助液に含まれる乾燥補助物質の融点以上となるように行われればよい。これにより、乾燥補助物質の融解状態を維持することができる。尚、温度調整の上限としては、乾燥補助物質又はIPAの何れか低い方の沸点よりも低い温度であることが好ましい。これにより、沸点が低い方の構成成分が蒸発する結果、所望の組成の乾燥補助液を基板Wに供給できなくなるのを防止することができる。また、温度調整部272としては特に限定されず、例えば、抵抗加熱ヒータや、ペルチェ素子、温度調整した水を通した配管等、公知の温度調整機構を用いることができる。尚、本実施形態に於いて、温度調整部272は任意の構成である。例えば、基板処理装置1の設置環境が昇華性物質の融点よりも高温の環境にある場合には、当該昇華性物質の融解状態を維持することができるので、乾燥補助液の加熱は不要となる。その結果、温度調整部272を省略することができる。
図1に戻る。処理液貯留部27(より詳細には、処理液貯留タンク271)は、配管25bを介して、IPAが貯留されているIPAタンク37(詳細については、後述する。)と管路接続しており、配管25bの経路途中にはバルブ26bが介挿される。バルブ26bは制御ユニット13と電気的に接続されており、通常は閉栓されている。また、バルブ26bの開閉は、制御ユニット13の動作指令によって制御される。そして、制御ユニット13が処理液供給手段21へ動作指令を行い、バルブ26bを開栓すると、IPAタンク37からIPAが圧送され、配管25bを介して処理液貯留タンク271に供給される。これにより、処理液貯留タンク271内で、一定濃度のIPAを均一に含む処理液が調製される。
また、処理液貯留部27(より詳細には、処理液貯留タンク271)は、配管25aを介して、ノズル22と管路接続しており、配管25aの経路途中にはバルブ26aが介挿される。処理液貯留タンク271内には気圧センサ(図示しない)が設けられ、制御ユニット13と電気的に接続されている。制御ユニット13は、気圧センサが検出した値に基づいてポンプ276の動作を制御することにより、処理液貯留タンク271内の気圧を大気圧より高い所定の気圧に維持する。一方、バルブ26aも制御ユニット13と電気的に接続しており、通常は閉栓されている。また、バルブ26aの開閉も、制御ユニット13の動作指令によって制御される。そして、制御ユニット13が処理液供給手段21へ動作指令を行い、バルブ26aを開栓すると、加圧されている処理液貯留タンク271内から乾燥補助液が圧送され、配管25aを介してノズル22から吐出される。これにより、乾燥補助液を基板Wの表面Wfに供給することができる。尚、処理液貯留タンク271は、前述のとおり窒素ガスによる圧力を用いて乾燥補助液を圧送するため、気密に構成されることが好ましい。
ノズル22は、水平に延設されたアーム23の先端部に取り付けられており、スピンベース53の上方に配置される。アーム23の後端部は、Z方向に延設された旋回軸24により軸J1まわりに回転自在に支持され、旋回軸24はチャンバ11内に固設される。旋回軸24を介して、アーム23は旋回駆動部14と連結される。旋回駆動部14は、制御ユニット13と電気的に接続し、制御ユニット13からの動作指令によりアーム23を軸J1まわりに回動させる。アーム23の回動に伴って、ノズル22も移動する。
ノズル22は、図2に実線で示すように、通常は基板Wの周縁部より外側であって、飛散防止カップ12よりも外側の退避位置P1に配置される。アーム23が制御ユニット13の動作指令により回動すると、ノズル22は矢印AR1の経路に沿って移動し、基板Wの表面Wfの中央部(軸A1又はその近傍)の上方位置に配置される。
図1に戻る。次に、IPA供給手段31について説明する。IPA供給手段31は、基板WへIPA(イソプロピルアルコール)を供給するユニットであり、ノズル32と、ア−ム33と、旋回軸34と、配管35と、バルブ36と、IPAタンク37と、を備える。また、IPA供給手段31は、前述の通り、処理液貯留部27にもIPAを供給するユニットとして機能する。
IPAタンク37は、配管35を介して、ノズル32と管路接続しており、配管35の経路途中にはバルブ36が介挿される。IPAタンク37には、IPAが貯留されており、図示しないポンプによりIPAタンク37内のIPAが加圧され、配管35からノズル32方向へIPAが送られる。また、配管25bから処理液貯留部27方向へもIPAが送られる。
バルブ36は、制御ユニット13と電気的に接続しており、通常は、閉栓されている。バルブ36の開閉は、制御ユニット13の動作指令によって制御される。制御ユニット13の動作指令によりバルブ36が開栓すると、IPAが配管35を通って、ノズル32から基板Wの表面Wfに供給される。
ノズル32は、水平に延設されたアーム33の先端部に取り付けられて、スピンベース53の上方に配置される。アーム33の後端部は、Z方向に延設された旋回軸34により軸J2まわりに回転自在に支持され、旋回軸34はチャンバ11内に固設される。アーム33は、旋回軸34を介して旋回駆動部14に連結される。旋回駆動部14は、制御ユニット13と電気的に接続し、制御ユニット13からの動作指令によりアーム33を軸J2まわりに回動させる。アーム33の回動に伴って、ノズル32も移動する。
図2に実線で示すように、ノズル32は、通常は基板Wの周縁部より外側であって、飛散防止カップ12よりも外側の退避位置P2に配置される。アーム33が制御ユニット13の動作指令により回動すると、ノズル32は矢印AR2の経路に沿って移動し、基板Wの表面Wfの中央部(軸A1又はその近傍)の上方位置に配置される。
尚、本実施形態では、IPA供給手段31に於いてIPAを用いるが、本発明は、乾燥補助物質及び脱イオン水(DIW:Deionized Water)に対して溶解性を有する液体であればよく、IPAに限られない。本実施形態に於けるIPAの代替としては、メタノール、エタノール、アセトン、ベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ヘキサン、デカリン、テトラリン、酢酸、シクロヘキサノール、エーテル、又はハイドロフルオロエーテル(Hydro Fluoro Ether)等が挙げられる。但し、リンス液としてIPA以外の溶液を用いる場合であって、当該溶液を処理液の構成成分に用いない場合には、処理液貯留部27にIPAを供給するための他のIPA供給手段を別途設けるのが好ましい。この場合、他のIPA供給手段は、制御ユニット13による制御の下、他のIPA供給手段からIPAが処理液貯留部27に適時的に供給される様に構成される。
図1に戻る。次に、気体供給手段41について説明する。気体供給手段41は、基板Wへ気体を供給するユニットであり、ノズル42と、アーム43と、旋回軸44と、配管45と、バルブ46と、気体タンク47と、を備える。
図5は、気体タンク47の概略構成を示すブロック図である。気体タンク47は、気体を貯留する気体貯留部471と、気体貯留部471に貯留される気体の温度を調整する気体温度調整部472とを備える。気体温度調整部472は制御ユニット13と電気的に接続しており、制御ユニット13の動作指令により気体貯留部471に貯留されている気体を加熱又は冷却して温度調整を行うものである。温度調整は、気体貯留部471に貯留される気体が処理液の凝固点以下の温度になるように行われればよい。
気体温度調整部472としては特に限定されず、例えば、ペルチェ素子、温度調整した水を通した配管等、公知の温度調整機構を用いることができる。
図1に戻る。気体タンク47(より詳しくは、気体貯留部471)は、配管45を介して、ノズル42と管路接続しており、配管45の経路途中にはバルブ46が介挿される。図示しない加圧手段により気体タンク47内の気体が加圧され、配管45へ送られる。尚、加圧手段は、ポンプ等による加圧の他、気体を気体タンク47内に圧縮貯留することによっても実現できるため、いずれの加圧手段を用いてもよい。
バルブ46は、制御ユニット13と電気的に接続しており、通常は閉栓されている。バルブ46の開閉は、制御ユニット13の動作指令によって制御される。制御ユニット13の動作指令によりバルブ46が開栓すると、配管45を通って、ノズル42から気体が基板Wの表面Wfに供給される。
ノズル42は、水平に延設されたアーム43の先端部に取り付けられて、スピンベース53の上方に配置される。アーム43の後端部は、Z方向に延設された旋回軸44により軸J3まわりに回転自在に支持され、旋回軸44はチャンバ11内に固設される。旋回軸44を介して、アーム43は旋回駆動部14と連結される。旋回駆動部14は、制御ユニット13と電気的に接続し、制御ユニット13からの動作指令によりアーム43を軸J3まわりに回動させる。アーム43の回動に伴って、ノズル42も移動する。
図2に実線で示すように、ノズル42は、通常は基板Wの周縁部より外側であって、飛散防止カップ12よりも外側の退避位置P3に配置される。アーム43が制御ユニット13の動作指令により回動すると、ノズル42は矢印AR3の経路に沿って移動し、基板Wの表面Wfの中央部(軸A1又はその近傍)の上方位置に配置される。表面Wf中央部の上方位置にノズル42が配置される様子を、図2に於いて点線で示す。
気体貯留部471には、乾燥補助物質及びアルコールに対して少なくとも不活性な気体、より具体的には窒素ガスが貯留されている。また、貯留されている窒素ガスは、気体温度調整部472に於いて、処理液の凝固点以下の温度に調整されている。窒素ガスの温度は処理液の凝固点以下の温度であれば特に限定されないが、通常は、摂氏0度以上摂氏15度以下の範囲内に設定することができる。窒素ガスの温度を摂氏0度以上にすることにより、チャンバ11の内部に存在する水蒸気が凝固して基板Wの表面Wfに付着等するのを防止し、基板Wへ悪影響が生じるのを防止することができる。
また、第1実施形態で用いる窒素ガスは、その露点が摂氏0度以下の乾燥気体であることが好適である。前記窒素ガスを大気圧環境下で凝固体に吹き付けると、窒素ガス中に凝固体中の乾燥補助物質が昇華する。窒素ガスは凝固体に供給され続けるので、昇華により発生した気体状態の乾燥補助物質の窒素ガス中における分圧は、気体状態の乾燥補助物質の当該窒素ガスの温度に於ける飽和蒸気圧よりも低い状態に維持され、少なくとも凝固体表面においては、気体状態の乾燥補助物質がその飽和蒸気圧以下で存在する雰囲気下で満たされる。
また、本実施形態では、気体供給手段41により供給される気体として窒素ガスを用いるが、本発明の実施としては、乾燥補助物質及びアルコールに対して不活性な気体であれば、これに限られない。第1実施形態に於いて、窒素ガスの代替となる気体としては、アルゴンガス、ヘリウムガス又は空気(窒素ガス濃度80%、酸素ガス濃度20%の気体)が挙げられる。あるいは、これら複数種類の気体を混合した混合気体であってもよい。
図1に戻る。減圧手段71は、チャンバ11の内部を大気圧よりも低い環境に減圧する手段であり、排気ポンプ72と、配管73と、バルブ74とを備える。排気ポンプ72は配管73を介してチャンバ11と管路接続し、気体に圧力を加える公知のポンプである。排気ポンプ72は、制御ユニット13と電気的に接続しており、通常は停止状態である。排気ポンプ72の駆動は、制御ユニット13の動作指令によって制御される。また、配管73にはバルブ74が介挿される。バルブ74は、制御ユニット13と電気的に接続しており、通常は閉栓されている。バルブ74の開閉は、制御ユニット13の動作指令によって制御される。
制御ユニット13の動作指令により排気ポンプ72が駆動され、バルブ74が開栓されると、排気ポンプ72によって、チャンバ11の内部に存在する気体が配管73を介してチャンバ11の外側へ排気される。
飛散防止カップ12は、スピンベース53を取り囲むように設けられる。飛散防止カップ12は図示省略の昇降駆動機構に接続され、Z方向に昇降可能となっている。基板Wヘ乾燥補助液やIPAを供給する際には、飛散防止カップ12が昇降駆動機構によって図1に示すような所定位置に位置決めされ、チャックピン54により保持された基板Wを側方位置から取り囲む。これにより、基板Wやスピンベース53から飛散する乾燥補助液やIPA等の液体を捕集することができる。
図4は、制御ユニット13の構成を示す模式図である。制御ユニット13は、基板処理装置1の各部と電気的に接続しており(図1参照)、各部の動作を制御する。制御ユニット13は、演算処理部15と、メモリ17と、を有するコンピュータにより構成される。演算処理部15としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、メモリ17は、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータ等を記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、基板Wに応じた基板処理条件が、基板処理プログラム19(レンピとも呼ばれる)として予め格納されおり、CPUがその内容をRAMに読み出し、RAMに読み出された基板処理プログラム19の内容に従ってCPUが基板処理装置1の各部を制御する。
<1−2 乾燥補助液>
次に、本実施形態で用いる乾燥補助液について、以下に説明する。
本実施形態の乾燥補助液は、融解状態の乾燥補助物質(昇華性物質)と、当該融解状態の昇華性物質に対し相溶性を示すIPAとを少なくとも含む処理液であり、基板のパターン形成面に存在する液体を除去するための乾燥処理に於いて、当該乾燥処理を補助する機能を果たす。尚、本実施形態では、処理液にIPAを含む場合を例にして以下に説明するが、融解状態の昇華性物質に対し相溶性を示すアルコールであれば本発明はIPAに限定されない。
前記昇華性物質は、液体を経ずに固体から気体、又は気体から固体へと相転移する特性を有するものであり、具体的にはフッ化炭素化合物が用いられる。フッ化炭素化合物は、炭素化合物にフッ素基が置換基として結合した化合物である。
乾燥補助物質としてフッ化炭素化合物を用いることにより、当該フッ化炭素化合物を融解状態で含む乾燥補助液を基板上に供給した場合には、均一な層厚の膜状の凝固体を形成することが可能になる。また、フッ化炭素化合物の蒸気圧が、従来の乾燥補助物質であるDIW(蒸気圧2.3kPa:摂氏20度)やt−ブタノール(蒸気圧4.lkPa:摂氏20度)と比較して高いため、従来よりも速い昇華速度で凝固体の昇華を行うことができる。さらに、フッ化炭素化合物はOH基を有しておらず、例えば、t−ブタノールと比べ水に対し難溶性を示す。そのため、乾燥補助液を基板上に供給しても、残存する水との混合が生じず、凝固体の昇華後にパターン間に水分が残留することがない。これらの要因とその他の原因が複合的に作用して、本実施形態では、従来の基板乾燥と比べ、表面張力に起因したパターン倒壊の抑制を可能にしている。
本実施形態において、フッ化炭素化合物としては、下記化合物(A)〜(E)の少なくとも何れかであることが好ましい。これらの化合物は一種単独で、又は複数を併用して用いることができる。
化合物(A):炭素数3〜6のフルオロアルカン、又は当該フルオロアルカンに置換基が結合したもの
化合物(B):炭素数3〜6のフルオロシクロアルカン、又は当該フルオロシクロアルカンに置換基が結合したもの
化合物(C):炭素数10のフルオロビシクロアルカン、又は当該フルオロビシクロアルカンに置換基が結合したもの
化合物(D):フルオロテトラシアノキノジメタン、又は当該フルオロテトラシアノキノジメタンに置換基が結合したもの
化合物(E):フルオロシクロトリホスファゼン、又は当該フルオロシクロトリホスファゼンに置換基が結合したもの
[化合物(A)]
化合物(A)としては、下記一般式(1)で表される炭素数3〜6のフルオロアルカンが挙げられる。
より具体的には、炭素数3のフルオロアルカンとしては、例えば、CF3CF2CF3、CHF2CF2CF3、CH2FCF2CF3、CH3CF2CH3、CHF2CF2CH3、CH2FCF2CH3、CH2FCF2CH2F、CHF2CF2CHF2、CF3CHFCF3、CH2FCHFCF3、CHF2CHFCF3、CH2FCHFCH2F、CHF2CHFCHF2、CH3CHFCH3、CH2FCHFCH3、CHF2CHFCH3、CF3CH2CF3、CH2FCH2CF3、CHF2CH2CF3、CH2FCH2CH2F、CH2FCH2CHF2、CHF2CH2CHF2、CH3CH2CH2F、CH3CH2CHF2等が挙げられる。
また、炭素数4のフルオロアルカンとしては、例えば、CF3(CF2)2CF3、CF3(CF2)2CH2F、CF3CF2CH2CF3、CHF2(CF2)2CHF2、CHF2CHFCF2CHF2、CF3CH2CF2CHF2、CF3CHFCH2CF3、CHF2CHFCHFCHF2、CF3CH2CF2CH3、CF3CF2CH2CH3、CF3CHFCF2CH3、CHF2CH2CF2CH3等が挙げられる。
炭素数5のフルオロアルカンとしては、例えば、CF3(CF2)3CF3、CF3CF2CF2CHFCF3、CHF2(CF2)3CF3、CHF2(CF2)3CHF2、CF3CH(CF3)CH2CF3、CF3CHFCF2CH2CF3、CF3CF(CF3)CH2CHF2、CHF2CHFCF2CHFCHF2、CF3CH2CF2CH2CF3、CHF2(CF2)2CHFCH3、CHF2CH2CF2CH2CHF2、CF3(CH2)3CF3、CF3CHFCHFCF2CF3等が挙げられる。
炭素数6のフルオロアルカンとしては、例えば、CF3(CF2)4CF3、CF3(CF2)4CHF2、CF3(CF2)4CH2F、CF3CH(CF3)CHFCF2CF3、CHF2(CF2)4CHF2、CF3CF2CH2CH(CF3)CF3、CF3CF2(CH2)2CF2CF3、CF3CH2(CF2)2CH2CF3、CF3(CF2)3CH2CF3、CF3CH(CF3)(CH2)2CF3、CHF2CF2(CH2)2CF2CHF2、CF3(CF2)2(CH2)2CH3等が挙げられる。
また、化合物(A)としては、前記炭素数3〜6のフルオロアルカンに置換基が結合したものも挙げられる。前記置換基としては、フッ素基を除くハロゲン基(具体的には、塩素基、臭素基、ヨウ素基)、水酸基、酸素原子、アルキル基、カルボキシル基及びパーフルオロアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、飽和パーフルオロアルキル基、不飽和パーフルオロアルキル基が挙げられる。また、パーフルオロアルキル基は、直鎖構造又は分岐構造の何れであってもよい。前記パーフルオロアルキル基としては、より具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、パーフルオロ−n−アミル基、パーフルオロ−sec−アミル基、パーフルオロ−tert−アミル基、パーフルオロイソアミル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロネオヘキシル基、パーフルオロ−n−ヘプチル基、パーフルオロイソヘプチル基、パーフルオロネオヘプチル基、パーフルオロ−n−オクチル基、パーフルオロイソオクチル基、パーフルオロネオオクチル基、パーフルオロ−n−ノニル基、パーフルオロネオノニル基、パーフルオロイソノニル基、パーフルオロ−n−デシル基、パーフルオロイソデシル基、パーフルオロネオデシル基、パーフルオロ−sec−デシル基、パーフルオロ−tert−デシル基等が挙げられる。
[化合物(B)]
化合物(B)としては、下記一般式(2)で表される炭素数3〜6のフルオロシクロアルカンが挙げられる。
より具体的には、炭素数3〜6のフルオロシクロアルカンとしては、例えば、モノフルオロシクロヘキサン、ドデカフルオロシクロヘキサン、1,1,4−トリフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2−テトラフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,2,2,3,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,4,5−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,5−オクタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,5−オクタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,4,5,6−オクタフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,5−オクタフルオロシクロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,4,4,5,6−ノナフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4,5−ノナフルオロシクロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,5,6−ノナフルオロシクロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,5,5,6−デカフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,6−デカフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロシクロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,6−デカフルオロシクロシクロヘキサン、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。
また、化合物(B)としては、前記炭素数3〜6のフルオロシクロアルカンに置換基が結合したものも挙げられる。前記置換基としては、フッ素基を除くハロゲン基(具体的には、塩素基、臭素基、ヨウ素基)、水酸基、酸素原子、アルキル基、カルボキシル基及びパーフルオロアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記アルキル基及び前記パーフルオロアルキル基としては特に限定されず、前記化合物(A)に於いて述べたのと同様のものが挙げられる。
前記炭素数3〜6のフルオロシクロアルカンに置換基が結合した化合物(B)の具体例としては、例えば、1,2,2,3,3−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルシクロブタン、1,2,4,4−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルシクロブタン、2,2,3,3−7テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルシクロブタン、1,2,2−トリフルオロ−1−トリメチルシクロブタン、1,4,4,5,5−ペンタフルオロ−1,2,2,3,3−ペンタメチルシクロペンタン、1,2,5,5−テトラフル−1,2−ジメチルシクロペンタン、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフル−1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,1,2,2−テトラクロロ−3,3,4,4−テトラフルオロシクロブタン、2−フルオロシクロヘキサノール、4,4−ジフルオロシクロヘキサノン、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸、1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ウンデカフルオロ−1−(ノナフルオロブチル)シクロヘキサン、パーフルオロメチルシクロプロパン、パーフルオロジメチルシクロプロパン、パーフルオロトリメチルシクロプロパン、パーフルオロメチルシクロブタン、パーフルオロジメチルシクロブタン、パーフルオロトリメチルシクロブタン、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロジメチルシクロペンタン、パーフルオロトリメチルシクロペンタン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロトリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
[化合物(C)]
化合物(C)に於ける炭素数10のフルオロビシクロアルカンとしては、例えば、フルオロビシクロ[4.4.0]デカン、フルオロビシクロ[3.3.2]デカン、ペルフルオロビシクロ[4.4.0]デカン、ペルフルオロビシクロ[3.3.2]デカン等が挙げられる。
また、化合物(C)としては、前記炭素数10のフルオロビシクロアルカンに置換基が結合したものも挙げられる。前記置換基としては、フッ素基を除くハロゲン基(具体的には、塩素基、臭素基、ヨウ素基)、ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基、又はハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基を有するアルキル基が挙げられる。
前記ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、前記ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘプチル基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基を有するアルキル基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、前記ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基を有するアルキル基において、ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロシクロブチル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘプチル基等が挙げられる。ハロゲン原子を有してもよいシクロアルキル基を有するアルキル基の具体例としては、例えば、ジフルオロ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)メチル基等が挙げられる。
前記炭素数10のフルオロビシクロアルカンに置換基が結合した化合物(C)の具体例としては、例えば、2−[ジフルオロ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)メチル]−1,1,2,3,3,4,4,4a,5,5,6,6,7,7,8,8,8a−ヘプタデカフルオロデカヒドロナフタレン等が挙げられる。
[化合物(D)]
前記化合物(D)に於けるフルオロテトラシアノキノジメタンとしては、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン等が挙げられる。
また、化合物(D)としては、前記フルオロテトラシアノキノジメタンに、フッ素基を除くハロゲン基(具体的には、塩素基、臭素基、ヨウ素基)が少なくとも1つ結合したものも挙げられる。
[化合物(E)]
化合物(E)に於けるフルオロシクロトリホスファゼンとしては、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、オクタフルオロシクロテトラホスファゼン、デカフルオロシクロペンタホスファゼン、ドデカフルオロシクロヘキサホスファゼン等が挙げられる。
また、化合物(E)としては、前記フルオロシクロトリホスファゼンに置換基が結合したものも挙げられる。前記置換基としては、フッ素基を除くハロゲン基(塩素基、臭素基、ヨウ素基)、フェノキシ基、アルコキシ基(−OR基)等が挙げられる。前記アルコキシ基に於けるRとしては、例えば、アルキル基、フルオロアルキル基、芳香族基等が挙げられる。更に、前記Rとしては、メチル基、エチル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基、フェニル基等の芳香族基が挙げられる。
前記フルオロシクロトリホスファゼンに前記置換基が結合した化合物(E)としては、具体的には、例えば、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン、ドデカクロロシクロヘキサホスファゼン、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン等が挙げられる。
本実施形態の処理液に添加されているIPAは、融解状態にある昇華性物質に対し少なくとも相溶性を示す。また、IPAは、有機溶剤としての性質を示すため、処理液中に不純物としての有機物が存在する場合に、当該不純物を溶かすことにより結晶核として結晶粒が成長するのを抑制し、結晶粒界の発生及び成長を低減する結晶成長抑制剤としての機能を果たす。その結果、結晶粒界の発生及び成長によりパターンに応力が加わるのを防止することができる。
但し、本発明は、融解状態にある昇華性物質に対して相溶性を示し、かつ、結晶成長抑制剤としての機能を果たすものであれば、IPA以外のアルコールを用いることができる。IPA以外のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−アミルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、シクロペンタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
IPAの濃度は、処理液に対し、0.001体積%〜0.8体積%の範囲内であり、好ましくは0.01体積%〜5体積%の範囲内である。IPAの濃度を0.001体積%以上にすることにより、結晶粒界の発生及び成長に起因して応力がパターンに加わるのを防止し、パターンの倒壊を低減することができる。その一方、IPAの濃度を0.8体積%以下にすることにより、処理液自体の凝固点が低下し過ぎて、処理液の凝固が困難になるのを防止することができる。また、処理液を凝固体にした後は、当該凝固体自体の昇華性が低下するのを防止し、表面張力の作用に起因したパターン倒壊の増大を抑制することができる。尚、前記濃度の数値範囲はIPAに限定されず、その他のアルコールの場合についても同様である。
昇華性物質の含有量は、処理液の全質量に対し、60質量%〜99.999質量%の範囲内が好ましく、90質量%〜99.999質量%の範囲内がより好ましく、99.5質量%〜99.999質量%の範囲内が特に好ましい。昇華性物質の含有量を60質量%以上にすることにより、表面張力に起因したパターン倒壊の発生を防止することができる。その一方、昇華性物質の含有量を99.999質量%以下にすることにより、結晶粒界における倒壊の発生を抑制することができる。
処理液には、さらにIPA等のアルコール以外の有機溶媒が含まれていてもよい。その様な有機溶媒としては、融解状態の昇華性物質及びアルコールに対し相溶性を示し、かつ、昇華性物質やアルコールの特性を損なわないものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−アミルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、シクロペンタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
乾燥補助液の凝固点は摂氏0度〜摂氏80度の範囲内が好ましく、摂氏5度〜摂氏50度の範囲内がより好ましく、摂氏10度〜摂氏25度の範囲内が特に好ましい。前記凝固点を摂氏0度以上にすることにより、凝固体を形成するために処理液を凝固させるのが困難になるのを防止することができる。その一方、前記凝固点を摂氏80度以下にすることにより、処理液を融解させるのが困難になるのを防止することができる。
<1−3 基板処理方法>
次に、本実施形態の基板処理装置1を用いた基板処理方法について、図6及び図7に基づき、以下に説明する。図6は、第1実施形態に係る基板処理装置1の動作を示すフローチャートである。図7は、図6の各工程に於ける基板Wの様子を示す模式図である。尚、基板W上には、凹凸のパターンWpが前工程により形成されている。パターンWpは、凸部Wp1及び凹部Wp2を備えている。本実施形態に於いて、凸部Wp1は、100〜600nmの範囲の高さであり、10〜50nmの範囲の幅である。また、隣接する2個の凸部Wp1間に於ける最短距離(凹部Wp2の最短幅)は、10〜50nmの範囲である。凸部Wp1のアスペクト比、即ち高さを幅で除算した値(高さ/幅)は、10〜20である。
図7(a)から7(e)までの各図は、特に明示しないかぎり、大気圧環境下で処理される。ここで、大気圧環境とは標準大気圧(1気圧、1013hPa)を中心に、0.7気圧以上1.3気圧以下の環境のことを指す。特に、基板処理装置1が陽圧となるクリーンルーム内に配置される場合には、基板Wの表面Wfの環境は、1気圧よりも高くなる。
図6を参照する。まず、所定の基板Wに応じた基板処理プログラム19がオペレータにより実行指示される。その後、基板Wを基板処理装置1に搬入する準備として、制御ユニット13が動作指令を行い以下の動作をする。
即ち、回転駆動部52の回転を停止し、チャックピン54を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、バルブ26a、36、46、74を開栓し、ノズル22、32、42をそれぞれ退避位置Pl、P2、P3に位置決めする。そして、チャックピン54を図示しない開閉機構により開状態とする。
未処理の基板Wが、図示しない基板搬入出機構により基板処理装置1内に搬入され、チャックピン54上に載置されると、図示しない開閉機構によりチャックピン54を閉状態とする。
未処理の基板Wが基板保持手段51に保持された後、基板に対して、図示しない湿式洗浄手段により、洗浄工程S11を行う。洗浄工程S11には、基板Wの表面Wfに洗浄液を供給して洗浄した後、当該洗浄液を除去するためのリンス処理が含まれる。洗浄液としては特に限定されず、例えば、SC−1(アンモニア、過酸化水素水、及び水を含む液体)やSC−2(塩酸、過酸化水素水、及び水を含む液体)等が挙げられる。また、リンス液としては特に限定されず、例えば、DIW等が挙げられる。洗浄液及びリンス液の供給量は特に限定されず、洗浄する範囲等に応じて適宜設定することができる。また、洗浄時間についても特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
尚、本実施形態に於いては、湿式洗浄手段により、基板Wの表面WfにSC−1を供給して当該表面Wfを洗浄した後、更に表面WfにDIWを供給して、SC−1を除去する。
図7(a)は、洗浄工程S11の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図7(a)に示すように、パターンWpが形成された基板Wの表面Wfには、洗浄工程S11に於いて供給されたDIW(図中に「60」にて図示)が付着している。
図6に戻る。次に、DIW60が付着している基板Wの表面WfへIPAを供給するIPAリンス工程S12を行う。まず、制御ユニット13が回転駆動部52へ動作指令を行い、基板Wを軸A1まわりに一定速度で回転させる。
次に、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル32を基板Wの表面Wf中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット13がバルブ36へ動作指令を行い、バルブ36を開栓させる。これにより、IPAを、IPAタンク37から配管35及びノズル32を介して、基板Wの表面Wfに供給する。
基板Wの表面Wfに供給されたIPAは、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面Wf中央付近から基板Wの周線部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散する。これにより、基板Wの表面Wfに付着するDIWがIPAの供給によって除去され、基板Wの表面Wfの全面がIPAで覆われる。基板Wの回転速度は、IPAからなる膜の膜厚が、表面Wfの全面に於いて、凸部Wp1の高さよりも高くなる程度に設定されるのが好ましい。また、IPAの供給量は特に限定されず、適宜設定することができる。
IPAリンス工程S12の終了後、制御ユニット13がバルブ36へ動作指令を行い、バルブ36を閉栓する。また、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル32を退避位置P2に位置決めする。
図7(b)は、IPAリンス工程S12の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図7(b)に示すように、パターンWpが形成された基板Wの表面Wfには、IPAリンス工程S12に於いて供給されたIPA(図中に「61」にて図示)が、付着しており、DIW60はIPA61により置換されて基板Wの表面Wfから除去される。
図6に戻る。次に、IPA61が付着した基板Wの表面Wfに、融解状態にある乾燥補助物質及びIPAを含んだ乾燥補助液としての処理液を供給する処理液供給工程(供給工程)S13を行う。
先ず、制御ユニット13がバルブ26bへ動作指令を行い、バルブ26bを開栓させる。これにより、IPAタンク37から配管25bを介して、IPAが、処理液貯留部27に供給される。一方、制御ユニット13は撹拌制御部278へ動作指令を行い、撹拌制御部278が回転部279を回転させることで、攪拌翼が乾燥補助液を撹拌し、融解状態の乾燥補助物質及びIPAが均一に混合し、それらの濃度及び処理液の温度を均一化させる。これにより、本実施形態の処理液を調製する。尚、処理液の調製は、処理液供給工程S13で行われる場合のほか、処理液供給工程S13の直前など、予め適時的に行うことができる。
次に、制御ユニット13が回転駆動部52へ動作指令を行い、基板Wを軸Alまわりに一定速度で回転させる。このとき、基板Wの回転速度は、乾燥補助液からなる液膜の膜厚が、表面Wfの全面に於いて、凸部Wp1の高さよりも高くなる程度に設定されるのが好ましい。
続いて、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル22を基板Wの表面Wf中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット13がバルブ26aへ動作指令を行い、バルブ26aを開栓する。これにより、乾燥補助液を、処理液貯留タンク271から配管25a及びノズル22を介して、基板Wの表面Wfに供給する。
供給される乾燥補助液の液温に関し、その下限値は、少なくとも基板Wの表面Wfに供給された後において、乾燥補助物質の融点以上となる様に設定される。また、上限値は、乾燥補助物質又はIPAの何れか低い方の沸点よりも低くなるように設定される。例えば、乾燥補助物質として前記1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(融点摂氏20.5度、沸点摂氏82.5度)を用い、アルコールとしてIPA(融点摂氏−89度、沸点摂氏82.6度)を用いる場合には、摂氏35度以上摂氏82度以下の範囲で設定されることが好ましい。また、乾燥補助液の供給量は特に限定されず、適宜設定することができる。
この様に、乾燥補助液を、乾燥補助物質の融点以上の高温状態にして供給することにより、基板Wの表面Wfに乾燥補助液の液膜を形成させた後に凝固体を形成させることができる。その結果、層厚が均一で、膜状の凝固体が得られ、乾燥ムラの発生を低減することができる。尚、基板Wの温度及びチャンバ11内の雰囲気温度が、乾燥補助物質の融点以下の場合に、融点をわずかに上回る温度の乾燥補助液を基板Wに供給すると、乾燥補助液が基板Wに接触してから極めて短時間の内に凝固することがある。この様な場合、均一な層厚の凝固体を形成することができず、乾燥ムラの低減を図ることが困難になる。従って、基板Wの温度及びチャンバ11内の雰囲気温度が、乾燥補助物質の融点以下の場合には、乾燥補助液の液温は融点よりも十分に高温となるように温度調整することが好ましい。
尚、基板Wの表面Wfに供給する直前においては、乾燥補助液の液温は、乾燥補助物質の融点+摂氏10度以上であることが好ましい。これにより、乾燥補助液中に不純物としての有機物が存在する場合にも、当該有機物を溶かすことができ、結晶粒界の発生及び成長に起因したパターンの倒壊を一層低減することができる。
基板Wの表面Wfに供給された乾燥補助液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面Wf中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散する。これにより、基板Wの表面Wfに付着していたIPAが乾燥補助液の供給によって除去され、基板Wの表面Wfの全面が乾燥補助液で覆われる。処理液供給工程S13の終了後、制御ユニット13がバルブ26aへ動作指令を行い、バルブ26aを閉栓する。また、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル22を退避位置Plに位置決めする。
図7(c)は、処理液供給工程S13の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図7(c)に示すように、パターンWpが形成された基板Wの表面Wfには、処理液供給工程S13に於いて供給された乾燥補助液(図中に「62」にて図示)が付着しており、IPA61は乾燥補助液62により置換されて基板Wの表面Wfから除去される。
尚、基板Wの表面Wfに付着していたIPAを、当該IPAを含まない乾燥補助液の供給により除去する際に、実質的には、基板Wの表面Wfの全面がIPAを含む乾燥補助液で覆うことができると考えることもできる。しかしながら、このような方法の場合、基板Wの表面Wfの全面を覆う乾燥補助液のIPAの濃度を面内で均一な状態にすることは困難である。そのため、基板Wの表面Wfの面内で均一にパターンの倒壊の発生を防止することも困難になる。
図6に戻る。次に、基板Wの表面Wfに供給された乾燥補助液62を凝固させて、乾燥補助物質の凝固膜を形成する凝固工程S14を行う。まず、制御ユニット13が回転駆動部52へ動作指令を行い、基板Wを軸A1まわりに一定速度で回転させる。このとき、基板Wの回転速度は乾燥補助液62が表面Wfの全面で凸部Wplよりも高い所定厚さの膜厚を形成できる程度の速度に設定される。
続いて、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル42を基板Wの表面Wf中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット13がバルブ46へ動作指令を行い、バルブ46を開栓する。これにより、気体(本実施形態では、摂氏7度の窒素ガス)を、気体タンク47から配管45及びノズル42を介して、基板Wの表面Wfに向けて供給する。
基板Wの表面Wfに向けて供給された窒素ガスは、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面Wf中央付近から基板Wの周縁部方向に向かって流動し、乾燥補助液62に覆われた基板Wの表面Wfの全面に拡散する。これにより、基板Wの表面Wfに形成されている乾燥補助液62の液膜が、処理液の凝固点以下の低温に冷却されて凝固し、凝固体が形成される。
図7(d)は、凝固工程S14の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図7(d)に示すように、処理液供給工程S13に於いて供給された乾燥補助液62が、摂氏7度の窒素ガスの供給により冷却されて凝固し、乾燥補助物質及びIPAを含む凝固体(図中に「63」にて図示)が形成される。
図6に戻る。次に、基板Wの表面Wfに形成された凝固体63を昇華させて、基板Wの表面Wfから除去する昇華工程S15を行う。昇華工程S15に於いても、凝固工程S14から引続き、ノズル42からの気体(窒素ガス)の供給が継続される。
ここで、窒素ガスに於ける乾燥補助物質の蒸気の分圧は、当該窒素ガスの供給温度に於ける乾燥補助物質の飽和蒸気圧よりも低く設定される。従って、この様な窒素ガスを基板Wの表面Wfに供給され、凝固体63に接触すると、当該凝固体63から乾燥補助物質が窒素ガス中に昇華する。また、窒素ガスは乾燥補助物質の融点よりも低温であるため、凝固体63の融解を防止しつつ、凝固体63の昇華を行うことができる。しかも、IPAは乾燥補助液中に濃度が均一になる様に混合されているので、そのような乾燥補助液が凝固した凝固体63においてもIPAは均一に存在している。そのため、凝固体63が昇華する際には、IPAの塊としての凝固体が昇華することはない。これにより、IPAの昇華が、基板Wのパターンに表面張力を及ぼすのを防止することができ、パターンの倒壊の抑制が図られる。
これにより、固体状態の乾燥補助物質の昇華により、基板Wの表面Wf上に存在するIPA等の物質除去の際に、パターンWpに表面張力が作用するのを防止しパターン倒壊の発生を抑制しながら、基板Wの表面Wfを良好に乾燥することができる。
図7(e)は、昇華工程S15の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図7(e)に示すように、凝固工程S14に於いて形成された処理液の凝固体63が、摂氏7度の窒素ガスの供給により昇華されて表面Wfから除去され、基板Wの表面Wfの乾燥が完了する。
昇華工程S15の終了後、制御ユニット13がバルブ46へ動作指令を行い、バルブ46を閉栓する。また、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル42を退避位置P3に位置決めする。
以上により、一連の基板乾燥処理が終了する。上述のような基板乾燥処理の後、図示しない基板搬入出機構により、乾燥処理済みの基板Wがチャンバ11から搬出される。
以上のように、本実施形態では、融解した状態のフッ化炭素化合物からなる乾燥補助物質と、IPAが含まれる乾燥補助液を、IPAが付着した基板Wの表面Wfに供給して当該IPAを乾燥補助液に置換する。さらに、当該乾燥補助液を基板Wの表面Wfで凝固させて、乾燥補助物質及びIPAを含む凝固体を形成した後、当該凝固体を昇華させて、基板Wの表面Wfから除去することで、基板Wの乾燥処理を行う。
また、本実施形態では、凝固工程S14と昇華工程S15に於いて、共通の気体供給手段41を用いて、乾燥補助物質及びアルコールに対して不活性な気体である窒素ガスを、処理液の凝固点以下の温度で供給する。これにより、凝固工程S14の後、即座に昇華工程S15を開始することができ、基板処理装置1の各部を動作させることに伴う処理時間や、動作させる制御ユニット13の基板処理プログラム19のメモリ量を低減することができ、また処理に用いる部品数も少なくすることができるため装置コストを低減することができる効果がある。特に、本実施形態では減圧手段71を用いないため、減圧手段71を省略することができる。
(第2実施形態)
本発明に係る第2実施形態について、以下に説明する。
本実施形態は、第1実施形態と比較して、処理液が洗浄液及び/又はリンス液として用いられ、かつ、処理液の供給工程が洗浄・リンス工程として行われる点が異なる。この様な構成によって、本実施形態では、工程数の削減を図り、処理効率の向上を図ると共に、パターンの倒壊を抑制することができ、基板Wの表面を良好に乾燥することができる。
<2−1 基板処理装置の構成及び処理液>
第2実施形態に係る基板処理装置及び制御ユニットは、第1実施形態に係る基板処理装置1及び制御ユニット13と基本的に同一の構成を有するものを用いることができる(図1及び図2参照)。従って、その説明は同一符号を付して省略する。
本実施形態において、処理液供給手段21は、湿式洗浄手段及びリンス手段として用いられる。湿式洗浄手段及びリンス手段としての処理液供給手段21の構成は、第1実施形態の場合と同様であるので、その説明は省略する。但し、本実施形態では、IPAリンス工程が省略されるため、IPA供給手段31は、処理液貯留部27にIPAを供給するためにのみ用いられる。また、本実施形態で使用する処理液は、第1実施形態に係る処理液と同様であるため、その説明は省略する。
<2−2 基板処理方法>
次に、第1実施形態と同様の構成の基板処理装置1を用いた、第2実施形態に係る基板処理方法について説明する。
以下、図1、図2、図8及び図9を適宜参照して基板処理の工程を説明する。図8は、第2実施形態に係る基板処理装置1の動作を示すフローチャートである。図9は、図8の各工程に於ける基板Wの様子を示す模式図である。尚、第2実施形態に於いて、図8と、図9(c)及び9(d)に示す凝固工程S14及び昇華工程S15の各工程は、第1実施形態と同様であるため、それらの説明を省略する。
図8に示すように、未処理の基板Wが基板保持手段51に保持された後、基板Wに対して、洗浄・リンス工程S16を行う。本工程では、洗浄・リンス手段として処理液供給手段21を用いる。
先ず、制御ユニット13がバルブ26bへ動作指令を行い、バルブ26bを開栓させる。これにより、IPAタンク37から配管25bを介して、IPAが、処理液貯留部27に供給される。一方、制御ユニット13は撹拌制御部278へ動作指令を行い、撹拌制御部278が回転部279を回転させることで、攪拌翼が乾燥補助液を撹拌し、融解状態の乾燥補助物質及びIPAが均一に混合し、それらの濃度及び処理液の温度を均一化させる。これにより、本実施形態の処理液を調製する。尚、処理液の調製は、処理液供給工程S13で行われる場合のほか、処理液供給工程S13の直前など、予め適時的に行うことができる。
次に、制御ユニット13が回転駆動部52へ動作指令を行い、基板Wを軸Alまわりに一定速度で回転させる。このとき、基板Wの回転速度は、洗浄液としての処理液からなる液膜の膜厚が、表面Wfの全面に於いて、凸部Wp1の高さよりも高くなる程度に設定されるのが好ましい。
続いて、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル22を基板Wの表面Wf中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット13がバルブ26aへ動作指令を行い、バルブ26aを開栓する。これにより、洗浄液としての処理液を、処理液貯留タンク271から配管25a及びノズル22を介して、基板Wの表面Wfに供給する。
供給される洗浄液の液温(より詳細には、基板Wの表面Wfに供給された後の液温)は、昇華性物質の融点以上、かつ、昇華性物質又はアルコールの何れか低い方の沸点よりも低い温度範囲で設定される。また、洗浄液の供給量は特に限定されず、適宜設定することができる。
基板Wの温度及びチャンバ11内の雰囲気温度が、昇華性物質の融点以下の場合に、融点をわずかに上回る温度の洗浄液を基板Wに供給すると、洗浄液が基板Wに接触してから極めて短時間の内に凝固することがある。この様な場合、均一な層厚の凝固体を形成することができず、乾燥ムラの低減を図ることが困難になる。従って、基板Wの温度及びチャンバ11内の雰囲気温度が、昇華性物質の融点以下の場合には、洗浄液の液温は融点よりも十分に高温となるように温度調整することが好ましい。
基板Wの表面Wfに供給された洗浄液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面Wf中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散する。これにより、基板Wの表面Wfに付着していた付着物等が洗浄液の供給によって除去され、基板Wの表面Wfの全面が洗浄液で覆われる。洗浄の終了後、制御ユニット13がバルブ26aへ動作指令を行い、バルブ26aを閉栓する。また、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル22を退避位置Plに位置決めする。
図9(a)は、洗浄の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図9(a)に示すように、パターンWpが形成された基板Wの表面Wfには、洗浄に於いて供給された洗浄液(図中に「64」にて図示)が付着しており、付着物は洗浄液64により基板Wの表面Wfから除去される。
図8に戻る。さらに、洗浄・リンス工程S16においては、基板Wに対して、リンス手段によりリンスを行う。この処理で用いられるリンス液は処理液であり、リンス手段は処理液供給手段21である。
まず、制御ユニット13が回転駆動部52へ動作指令を行い、基板Wを軸A1まわりに一定速度で回転させる。次に、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル32を基板Wの表面Wf中央部へ位置決めする。そして、制御ユニット13がバルブ36へ動作指令を行い、バルブ36を開栓する。これにより、リンス液としての処理液を、処理液貯留タンク271から配管25a及びノズル22を介して、基板Wの表面Wfに供給する。
基板Wの表面Wfに供給されたリンス液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力により、基板Wの表面Wf中央付近から基板Wの周線部に向かって流動し、基板Wの表面Wfの全面に拡散する。これにより、基板Wの表面Wfに付着している洗浄液がリンス液の供給によって除去され、基板Wの表面Wfの全面がリンス液で覆われる。基板Wの回転速度は、リンス液からなる膜の膜厚が、表面Wfの全面に於いて、凸部Wp1の高さよりも高くなる程度に設定されるのが好ましい。また、リンス液の供給量は特に限定されず、適宜設定することができる。さらに、リンス液の液温は、前述の洗浄液の液温の場合と同様である。また、リンスの時間についても特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
洗浄・リンス工程S16の終了後、制御ユニット13がバルブ26aへ動作指令を行い、バルブ26aを開栓する。また、制御ユニット13が旋回駆動部14へ動作指令を行い、ノズル22を退避位置P1に位置決めする。
図9(b)は、洗浄・リンス工程S16におけるリンスの終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図9(b)に示すように、パターンWpが形成された基板Wの表面Wfには、リンス処理に於いて供給されたリンス液(図中に「65」にて図示)が、付着しており、洗浄液64はリンス液65により置換されて基板Wの表面Wfから除去される。
図8に戻る。次に、基板Wの表面Wfに供給されたリンス液65を凝固させて、昇華性物質の凝固膜を形成する凝固工程S14を行う。さらに、基板Wの表面Wfに形成された凝固体63を昇華させて、基板Wの表面Wfから除去する昇華工程S15を行う。
以上により、本実施形態における一連の基板乾燥処理が終了する。上述のような基板乾燥処理の後、図示しない基板搬入出機構により、乾燥処理済みの基板Wがチャンバ11から搬出される。
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態について、以下に説明する。本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と比較して、凝固工程S14及び昇華工程S15に於いて、窒素ガスの供給に代えて、チャンバ内部を減圧した点が異なる。この様な構成によっても、パターンの倒壊を抑制しつつ、基板Wの表面を良好に乾燥することができる。
<3−1 基板処理装置の全体構成及び乾燥補助液>
第3実施形態に係る基板処理装置及び制御ユニットは、第1実施形態に係る基板処理装置1及び制御ユニット13と基本的に同一の構成を有するものであるため(図1及び図2参照)、その説明は同一符号を付して省略する。また、本実施形態で使用する乾燥補助液も、第1実施形態に係る乾燥補助液と同様であるため、その説明は省略する。
<3−2 基板処理方法>
次に、第1実施形態と同様の構成の基板処理装置1を用いた、第3実施形態に係る基板処理方法について説明する。
以下、図1、図2、図6及び図10を適宜参照して基板処理の工程を説明する。図10は、図6の各工程に於ける基板Wの様子を示す模式図である。尚、第3実施形態に於いて、図6と、図10(a)から図10(c)までに示す洗浄工程S11、IPAリンス工程S12及び処理液供給工程S13の各工程は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
ここで、図10(a)は、第3実施形態に於ける洗浄工程S11の終了時点に於いてDIW60の液膜に表面Wfを覆われた基板Wの様子を示し、図10(b)は、第3実施形態に於けるIPAリンス工程S12の終了時点に於いてIPA61の液膜に表面Wfを覆われた基板Wの様子を示し、図10(c)は、第3実施形態に於ける処理液供給工程S13の終了時点に於いて、融解状態の乾燥補助物質(昇華性物質)とIPAを含む乾燥補助液62の液膜に表面Wfを覆われた基板Wの様子を示している。
また、図10(a)〜10(e)までの各図は、特に指示しないかざり、大気圧環境下で処理される。ここで、大気圧環境とは標準大気圧(1気圧、1013hPa)を中心に、0.7気圧以上1.3気圧以下の環境のことを指す。特に、基板処理装置1が陽圧となるクリーンルーム内に配置される場合には、基板Wの表面Wfの環境は、1気圧よりも高くなる。また、図10(d)及び図10(e)に図示する処理(詳細は後述する。)は、17Pa(17×10−5気圧)の減圧環境下で行われる。
図6を参照する。洗浄工程S11、IPAリンス工程S12及び処理液供給工程S13が実行された後、基板Wの表面Wfに供給された乾燥補助液62の液膜を凝固させて、乾燥補助物質及びIPAを含む凝固体を形成する凝固工程S14を行う。具体的には、まず、制御ユニット13が回転駆動部52へ動作指令を行い、基板Wを軸A1まわりに一定速度で回転させる。このとき、基板Wの回転速度は、乾燥補助液からなる液膜の膜厚が、表面Wfの全面に於いて、凸部Wp1の高さよりも高くなる程度に設定されるのが好ましい。
続いて、制御ユニット13が排気ポンプ72へ動作指令を行い、排気ポンプ72の駆動を開始する。そして制御ユニット13がバルブ74へ動作指令を行い、バルブ74を開栓する。これにより、チャンバ11内部の気体を、配管73を介してチャンバ11外部ヘ排気する。チャンバ11内部を配管73以外について密閉状態とすることで、チャンバ11の内部環境を大気圧から減圧される。
減圧は、大気圧(約1気圧、約1013hPa)から、17×10−5気圧(17Pa)程度にまで行われる。尚、本願発明の実施に於いては当該気圧に限られず、減圧後のチャンバ11内の気圧は、チャンバ11等の耐圧性等に応じて適宜設定されてよい。
チャンバ11内が減圧されると、減圧の程度に応じて、基板Wの表面Wfに供給された乾燥補助液62から乾燥補助物質及び/又はIPAの蒸発が生じる。このとき、乾燥補助液62から気化熱が奪われるため、当該乾燥補助液62が冷却され、凝固する。
図10(d)は、凝固工程S14の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図10(d)に示すように、処理液供給工程S13に於いて供給された乾燥補助液62が、チャンバ11内の減圧に起因する乾燥補助物質及び/又はIPAの蒸発により冷却されて凝固し、乾燥補助物質及びIPAの凝固体(図中に「63」にて図示)が形成される。
このとき、乾燥補助液62から乾燥補助物質及び/又はIPAが蒸発した分だけ、凝固体63の層厚は薄くなる。このため、本実施形態に於ける処理液供給工程S13では凝固工程S14に於ける乾燥補助物質の蒸発分を考慮した上で、乾燥補助液62が所定以上の厚さの液膜になるように、基板Wの回転速度等を調整するのが好ましい。
図6に戻る。次に、基板Wの表面Wfに形成された凝固体63を昇華させて、基板Wの表面Wfから除去する昇華工程S15を行う。昇華工程S15に於いても、凝固工程S14から引続き、減圧手段71によるチャンバ11内の減圧処理が継続される。
減圧処理により、チャンバ11内の環境を乾燥補助物質又はIPAの飽和蒸気圧の何れか低い方よりも低い圧力状態にする。従って、この様な減圧環境を維持すると、凝固体63から乾燥補助物質及びIPAの昇華が生じる。
凝固体63から乾燥補助物質及びIPAの昇華が生じる際にも、凝固体63から昇華熱として熱を奪うため、凝固体63は冷却される。従って、第3実施形態に於いて、昇華工程Sl5は、チャンバ11内の環境が乾燥補助物質の融点よりも僅かに高い温度(常温環境)である場合にも、凝固体63を別途冷却することなく凝固体63を乾燥補助物質の融点よりも低温状態に維持することができ、凝固体63の融解を防止しつつ、凝固体63の昇華を行うことができる。その結果、別途の冷却機構を設ける必要がなく、装置コストや処理コストを低減することができる。
前記のように、固体状態の乾燥補助物質の昇華により、基板Wの表面Wf上に存在するIPA等の物質除去の際に、パターンWpに表面張力が作用するのを防止しパターン倒壊の発生を抑制しながら、基板Wの表面Wfを良好に乾燥することができる。
図10(e)は、昇華工程S15の終了時点に於ける基板Wの様子を示している。図10(e)に示すように、凝固工程S14に於いて形成された乾燥補助物質及びIPAの凝固体63が、チャンバ11内が減圧環境とされることにより昇華されて表面Wfから除去され、基板Wの表面Wfの乾燥が完了する。
昇華工程S15の終了後、制御ユニット13がバルブ74へ動作指令を行い、バルブ74を開栓する。また、制御ユニット13が排気ポンプ72へ動作指令を行い、排気ポンプ72の動作を停止する。そして、制御ユニット13がバルブ46へ動作指令を行い、バルブ46を開栓することで、気体タンク47から配管45及びノズル42を介してチャンバ11内に気体(窒素ガス)を導入し、チャンバ11内を減圧環境から大気圧環境へ復帰させる。このとき、ノズル42は退避位置P3に位置してもよいし、基板Wの表面Wf中央部に位置してもよい。
尚、昇華工程S15の終了後、チャンバ11内を大気圧環境に復帰させる方法としては前記に限られず、各種の公知の手法が採用されてもよい。
以上により、一連の基板乾燥処理が終了する。上述のような基板乾燥処理の後、図示しない基板搬入出機構により、乾燥処理済みの基板Wがチャンバ11から搬出される。
以上のように、第3実施形態では、融解状態の乾燥補助物質及びIPAを含む乾燥補助液を、IPAが付着した基板Wの表面Wfに供給して置換する。その後、乾燥補助液を基板Wの表画Wfで凝固させて乾燥補助物質の凝固膜を形成した後、乾燥補助物質を昇華させて、基板Wの表面Wfから除去する。これにより、基板Wの乾燥処理を行う。
第3実施形態のように、減圧によって乾燥補助液の凝固及び昇華を行っても、パターンの倒壊を防止しつつ基板Wの良好な乾燥を行うことができる。
また、第3実施形態では、凝固工程S14と昇華工程S15に於いて、共通の減圧手段71を用いて、チャンバ11の内部を減圧した。これにより、凝固工程S14の後、即座に昇華工程S15を開始することができ、基板処理装置1の各部を動作させることに伴う処理時間や、動作させる制御ユニット13の基板処理プログラム19のメモリ量を低減することができ、また処理に用いる部品数も少なくすることができるため装置コストを低減することができる効果がある。特に、第3実施形態では低温の窒素ガスは用いないため、気体供給手段41に於ける温度調整部272を省いてもよいし、チャンバ11内を減圧環境から大気圧環境に復帰させる際に、気体供給手段41以外の手段を用いる場合には、気体供給手段41を省いてもよい。
(変形例)
以上の説明に於いては、本発明の好適な実施態様について説明した。しかし、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではなく、その他の様々な形態で実施可能である。以下に、その他の主な形態を例示する。
第1実施形態から第3実施形態では、1個のチャンバ11内に於いて、基板Wに対し各工程が実行された。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、各工程ごとにチャンバが用意されてもよい。
例えば、各実施形態において、凝固工程S14までを第1チャンバで実行し、基板Wの表面Wfに凝固膜が形成されたのち、第1チャンバから基板Wを搬出し、別の第2チャンバヘ凝固膜が形成された基板Wを搬入して、第2チャンバにて昇華工程S15を行ってもよい。
また、第1実施形態から第2実施形態では、凝固工程S14及び昇華工程S15に於いて、ともに気体供給手段41による気体の供給を実行した。また、第3実施形態では、凝固工程S14及び昇華工程S15に於いて、ともに減圧手段71によるチャンバ11内の減圧処理を実行した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、凝固工程S14に於いて気体供給手段41による気体の供給を実行して表面Wfに凝固体63を形成した後、昇華工程S15に於いて城圧手段71によるチャンバ11内の減圧処理を実行して凝固体63を昇華させてもよい。
第1実施形態から第3実施形態では、凝固工程S14に於いて、気体供給手段41により処理液の凝固点以下の低温の気体を供給して表面Wfに凝固体63を形成した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られない。
具体的には、図1のスピンベース53及びチャックピン54に代えて基板Wの裏面Wbの中央部と直接当接して基板Wを吸着保持するスピンチャックを備え、スピンチャックを公知の冷却機構(例えば、冷水配管を通す、ペルチェ素子を用いる、等)によって冷却することで基板Wを裏面Wbから冷却し、表面Wfの乾燥補助液62(第2実施形態の場合は、リンス液65)を凝固点以下の低い温度に冷却する構成としてもよい。
また、他には、図1のスピンベース53の中央部に貫通孔を設け、当該貫通孔を介して基板Wの裏面Wb側から基板Wへ処理液の凝固点以下の低い温度の液体又は気体の冷媒(例えば、摂氏7度の窒素ガスや、摂氏7度の冷水)を供給することで基板Wを裏面Wbから冷却し、表面Wfの乾燥補助液62(第2実施形態の場合は、リンス液65)を凝固点以下の低い温度に冷却する構成としてもよい。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(パターン付き基板)
モデルパターンが表面に形成されたシリコン基板を準備し、当該シリコン基板から、一辺が1cm角のクーポン(供試体)を切り出した。図11に、クーポンのモデルパターンが形成された面を表すSEM(Scanning Electron Microscope)画像を示す。モデルパターンとしては、円柱の直径が約30nm、アスペクト比が約20の円柱が配列されたパターンを採用した。図15中に、白色で示す部分が円柱部分(即ち、パターンの凸部)の頭部であり、黒色で示す部分がパターンの凹部である。図11に示すように、パターン形成面には、規則的に略等しい大きさの白丸が配列していることが確認されている。
(実施例1)
本実施例に於いては、前記シリコン基板から切り出したクーポンを用いて、以下に述べる手順にてその乾燥処理を行い、パターン倒壊の抑制効果を評価した。
先ず、クーポンをバイアル瓶に投入した後に、常温(摂氏23度)・常圧下で処理液を投入してクーポンのパターン形成面に、乾燥補助液(処理液)からなる液膜を形成した。処理液としては、融解状態で存在する1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(下記構造式参照)と、アルコールとしてのイソプロピルアルコール(IPA)からなるものを用いた。IPAの濃度は、乾燥補助液に対し0.1体積%とした。また、乾燥補助液の液温は摂氏23度とした。
尚、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの表面張力は25℃の環境下で19.6mN/mであり、蒸気圧は20℃の環境下で8.2kPa(62.0mmHg)である。また、融点及び凝固点は20.5℃であり、比重は25℃の環境下で1.58の物質である。更に、当該化合物は、例えばフッ素系ポリマーの溶解性に優れていることから、各種のコーティング剤の溶剤や、油膜汚れの洗浄剤として用いられるものである。また、IPAの表面張力は25℃の環境下で20.8mN/mであり、蒸気圧が20℃の環境下で4.4kPa(33.0mmHg)である。また、融点及び凝固点は−89.5℃であり、比重は25℃の環境下で0.78の物質である。
次に、バイアル瓶を、凍結チャンバ内に載置し、常圧下、摂氏0度の雰囲気中で乾燥補助液を凝固させて凝固体を形成させた。
さらに、凍結チャンバ内にバイアル瓶を載置し続け、これにより、凝固体の融解を防止しつつ、乾燥補助物質(昇華性物質)及びIPAを昇華させて、クーポンのパターン形成面から凝固体を除去した。
凝固体の除去を確認した後、凍結チャンバ内の温度を摂氏30度まで昇温させ、結露の防止を図った。その後、バイアル瓶を取り出し、パターン形成面におけるパターン倒壊の抑制効果を評価した。図12は、クーポンにおけるパターン形成面のSEM画像である。図13は、IPA濃度とパターンの倒壊率との関係を表すグラフである。乾燥処理前のクーポンのパターン形成面(図11参照)と比較して、パターンの倒壊は殆ど見られず、表示された領域に於ける倒壊率は1.41%であった(下記表1及び図13参照)。これにより、乾燥補助物質として融解状態の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとIPAを含む乾燥補助液を用いた場合には、パターンの倒壊を極めて良好に抑制することができ、昇華乾燥に有効であることが示された。
尚、前記倒壊率は、以下の式により算出した値である。
倒壊率(%)=(任意の領域に於ける倒壊した凸部の数)÷(当該領域に於ける凸部の総数)×100
(実施例2〜5)
実施例2〜5においては、乾燥補助液に対するIPA濃度を下記表1に示す通りに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、各実施例のクーポンのパターン形成面の乾燥処理を行った。結果を下記表1及び図17に示す。何れの実施例においてもパターン倒壊の発生は抑制されており、表示された領域に於ける倒壊率は下記表1及び図17に示す通りであった。これにより、乾燥補助物質として融解状態の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンと、一定範囲の濃度のIPAを含む乾燥補助液を用いた場合には、パターンの倒壊を極めて良好に抑制することができ、昇華乾燥に有効であることが示された。
(比較例1)
本比較例に於いては、乾燥補助液として、融解状態の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンのみからなるものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、クーポンのパターン形成面の乾燥処理を行った。図14は、クーポンにおけるパターン形成面のSEM画像である。乾燥処理前のクーポンのパターン形成面(図15参照)と比較して、多くの箇所で白丸が大きくなった部分が観察され、クラック状のパターンの倒壊が確認された。また、パターン倒壊率は、17.94%であった(下記表1及び図14参照)。
(比較例2)
比較例2においては、乾燥補助液に対するIPA濃度を下記表1に示す通りに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、本比較例のクーポンのパターン形成面の乾燥処理を行った。その結果、表示された領域に於ける倒壊率は23.67%であった(下記表1及び図17参照)。これにより、乾燥補助物質として融解状態の1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンと、IPAを含む乾燥補助液を用いた場合であっても、IPAの濃度が1体積%の場合には、パターンの倒壊が十分に低減できないことが確認された。
(結果)
表1及び図13に示すように、乾燥補助物質として、フッ化炭素化合物の一種である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを用い、かつ、濃度0.01体積%〜0.5体積%の範囲内でイソプロピルアルコールを含有させた実施例1〜5の場合には、IPAを含有させない比較例1の場合と比較して、パターンの倒壊の発生が良好に抑制されていることが確認された。
また、IPAを含有させた場合でも、その濃度を1体積%とした比較例2では、パターン倒壊の抑制効果が低下することが確認された。これは、IPAの濃度が高すぎたことにより、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンによる、表面張力に起因したパターン倒壊の低減効果が相対的に低下したためと考えられる。
以上より、乾燥補助物質としての融解状態にある1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンと、濃度が0.01体積%〜0.5体積%の範囲内のIPAを含む乾燥補助液を用いた場合には、表面張力及び結晶粒界の発生等に起因して生じるパターンの倒壊を極めて良好に抑制することができ、昇華乾燥に有効であることが示された。