《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係るヒートポンプの制御方法(以下、「第1方法」と称される場合がある。)について説明する。
〈ヒートポンプの構成〉
(1)全体構成
第1方法が適用されるヒートポンプを使用する空気調和装置の構成の一例を図1に示す。空気調和装置100は、室外機200及び室内機300を含み、これらの間には配管330及び340を介して熱媒体が循環される。室外機200は、吸入ヘッダ213及び吐出ヘッダ214を介して並列に配設された2台の圧縮機211及び212を含む圧縮部210、オイルセパレータ230、四方弁240、熱交換器250及び電子膨張弁251、並びにアキュムレータ260を含む。即ち、このヒートポンプの圧縮部210は、並列に配設された2台の圧縮機211及び212と、循環経路からこれらの圧縮機へと吸入される熱媒体が流れる流路である吸入配管(吸入ヘッダ213)と、これらの圧縮機から吐出される熱媒体が循環経路へと流れる流路である吐出配管(吐出ヘッダ214)と、を含む圧縮系統である並列圧縮系統として構成されている。尚、圧縮機211及び212の構成は特に限定されないが、本例においては、2台の圧縮機211及び212は何れもスクロールコンプレッサである。
更に、これらの構成要素の間に熱媒体を循環させるための配管の所定の箇所には、バッファ221、ストレーナ222、223及び224、フィルタドライヤ225、オイルバイパス調整弁270、高圧スイッチ(SW)281、及び高圧センサ282が設けられている。加えて、室外の温度を検出する室外温度センサ283が設けられている。
一方、室内機300は、電子膨張弁310及び熱交換器320を含む。更に、空気調和の対象となる室内の温度を検出する室内温度センサ284が設けられている。そして、ヒートポンプ用電子制御装置(HP−ECU)110は、例えば室内温度センサ284によって検出される空気調和の対象となる室内の温度、室外温度センサ283によって検出される室外の温度、稼働している室内機の台数(室内機の運転台数)及び室内機の設置場所等、ヒートポンプの運転状況及び/又は環境条件に応じて、圧縮機211及び212の運転を制御する。
更に、室外機200は、オイルセパレータ230と吐出側(下流側)とアキュムレータ260の吸入側(上流側)とを連通する熱媒体の通路と、当該通路を遮断及び開放するホットガスバイパス弁290と、を含む。ホットガスバイパス弁290により当該通路が開放されていると、圧縮機211及び212から吐出された熱媒体は、熱交換器250を迂回して、圧縮機211及び212へと戻る。ホットガスバイパス弁290によって当該通路を開放することにより、圧縮機211及び212の吐出側から吸入側への熱媒体の循環に必要とされる仕事量を大幅に削減して、圧縮機211及び212の仕事率を低下させることができる。
加えて、圧縮機211及び212は、それぞれの中間圧縮室から吸入ポートへと熱媒体を戻す通路と、当該通路を遮断及び開放する容量電磁弁291及び292と、をそれぞれ含む。容量電磁弁291及び292によって当該通路を開放することにより、圧縮機211及び212の中間圧縮室から下流側における仕事量を大幅に削減して、圧縮機211及び212の仕事率を低下させることができる。
空気調和装置100における熱媒体の流れ方向は、図中に示した実線の矢印(冷房時)及び破線の矢印(暖房時)によって表されるように、空気調和装置100の運転モード(冷房モード及び暖房モード)によって異なる。これにより、冷房時には、室外機200の熱交換器250は凝縮器として機能し、室内機300の熱交換器320は蒸発器として機能する。一方、暖房時には、室外機200の熱交換器250は蒸発器として機能し、室内機300の熱交換器320は凝縮器として機能する。しかしながら、圧縮機211及び212からオイルセパレータ230を介して四方弁240までの循環経路(吐出側経路)並びに四方弁240からアキュムレータ260及びストレーナ224を介して圧縮機211及び212までの循環経路(吸入側経路)においては、図中の矢印によって示すように、運転モードに拘わらず、熱媒体の流れ方向は常に同じである。
(2)エンジンによる圧縮機の駆動機構
ところで、図1においては、圧縮機211及び212を駆動する駆動源としてのエンジン400及びエンジン400の作動を制御するエンジン用電子制御装置(ENG−ECU)410は省略されている。そこで、これらにつき、図2を参照しながら以下に説明する。
前述したように、ヒートポンプ用電子制御装置(HP−ECU)110は、例えば室内温度センサ284によって検出される空気調和の対象となる室内の温度、室外温度センサ283によって検出される室外の温度、稼働している室内機の台数(室内機の運転台数)及び室内機の設置場所等、ヒートポンプの運転状況及び/又は環境条件に応じて、圧縮機211及び212の運転を制御する。
圧縮機211及び212は、エンジン400によってベルト駆動される。本例においては、図2に示すように、1本のベルトによって2台の圧縮機211及び212の両方がエンジン400によって駆動されるように駆動機構が構成されている。また、2台の圧縮機211及び212は、それぞれクラッチ(図示せず)を備えている。これらのクラッチにより、エンジン400から圧縮機へと駆動力が伝達される状態である伝達状態と、エンジン400から圧縮機へと駆動力が伝達されない状態である遮断状態とを、それぞれの圧縮機において独立に切り替えることができる。
上記駆動機構により、ヒートポンプの運転状況及び/又は環境条件に応じて、圧縮機211及び212の両方を運転するか或いは圧縮機211及び212の何れか一方のみを運転するかを切り替えることができる。また、当然のことながら、エンジン400を停止することにより、圧縮機211及び212の両方を停止させて、当該ヒートポンプにおける並列圧縮系統である圧縮部210を停止状態とすることができる。
但し、駆動機構は、2台の圧縮機211及び212のそれぞれがエンジン400によって個別にベルト駆動されるように構成されていてもよい。また、駆動機構は、これらの複数の圧縮機のうちの一部の圧縮機のみがクラッチを備えるように構成されていてもよい。例えば、駆動機構は、2台の圧縮機211及び212のうち、一方の圧縮機211はクラッチを備えておらず、他方の圧縮機212のみがクラッチを備えているように構成されていてもよい。この場合、2台の圧縮機211及び212のうち、一方の圧縮機211は常に伝達状態にあり、他方の圧縮機212についてのみ伝達状態と遮断状態とをクラッチによって切り替えることができる。
エンジン用電子制御装置(ENG−ECU)410は、上記のようにしてヒートポンプの運転状況及び/又は環境条件に応じて定められる圧縮機211及び212の運転条件(例えば回転速度等)並びに運転台数等に応じて、例えばエンジン400の回転速度及びトルク等を制御する。
即ち、ヒートポンプ用電子制御装置(HP−ECU)110及びエンジン用電子制御装置(ENG−ECU)410は、本発明方法が適用されるヒートポンプが備える制御装置を構成する。但し、制御装置の構成は特に限定されず、本例に示したように複数のECUに分割されていてもよく、或いは一つのECUによって全ての機能を達成するように構成されていてもよい。
〈ヒートポンプの制御〉
(1)従来技術に係るヒートポンプの制御方法
本発明の第1実施形態に係るヒートポンプの制御方法(第1方法)によって達成される効果についての理解を容易にすることを目的として、第1方法の詳細について説明する前に、従来技術に係るヒートポンプの制御方法について説明する。
上述したように、空気調和装置100が使用するヒートポンプは、並列に配設された複数(2台)の圧縮機を含む圧縮系統である並列圧縮系統を1つ有する。このような並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替える(即ち、並列圧縮系統を起動させる)場合、一般的な従来技術に係るヒートポンプの制御方法においては、先ず1台の圧縮機のみが起動され、ヒートポンプの負荷に応じて定まる熱媒体の目標循環量に基づいて当該圧縮機の回転速度が制御される。目標循環量が予め定められた閾値を超える場合は、残る1台の圧縮機もまた起動され、目標循環量に基づいて、これら2台の圧縮機の回転速度が制御される。
上記のように、従来技術に係るヒートポンプの制御方法においては、並列圧縮系統を起動させる場合であっても、先ずは1台の圧縮機のみが起動されるのが一般的である。このとき、例えば、ヒートポンプが停止している間に循環経路の何れかの箇所に滞留した過剰な潤滑油及び/又は液化媒体等の液体が当該1台の圧縮機に流入する。その結果、液圧縮に起因する過大な負荷が当該1台の圧縮機に偏って蓄積され、例えば圧縮機構の損壊等、当該圧縮機の故障に繋がる虞がある。
(2)本発明の第1実施形態に係るヒートポンプの制御方法(第1方法)
上記に対し、第1方法においては、空気調和装置100が使用するヒートポンプが有する並列圧縮系統(圧縮部210)の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えるとき、ヒートポンプの負荷に応じて定まる熱媒体の目標循環量の如何に拘わらず2台の圧縮機211及び212が同時に起動される。本例においては、エンジン400からの駆動力の伝達及び遮断を切り替えるクラッチを備える圧縮機212については伝達状態とした状態において、制御装置によりエンジン400が起動され、2台の圧縮機211及び212が同時に起動される。その結果、これら2台の圧縮機211及び212が何れも稼働している期間である並行稼働期間が設けられる。
具体的には、第1方法が適用されるヒートポンプが備える制御装置を構成するECU(HP−ECU110及び/又はENG−ECU410)は、図3のフローチャートに示すルーチンによって表されるアルゴリズムを実行することにより、第1方法を実行する。当該ルーチンは、上記ECUを構成するCPUが、上記ECUを構成するROMに格納されたプログラムに従って種々の演算処理を実行することにより、所定の短い周期にて実行される。
当該ルーチンが開始されると、ステップS31において、CPUは、ヒートポンプの負荷に応じて定まる熱媒体の目標循環量に基づき、圧縮系統を新たに起動する(即ち、停止状態にある圧縮系統を稼働状態へと切り替える)必要があるか否かを判定する。圧縮系統を新たに起動する必要がある状況にない場合、上記ステップS31においてCPUは「No」と判定し、当該ルーチンを一旦終了する。
一方、圧縮系統を新たに起動する必要がある状況にある場合、上記ステップS31においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS32に進み、起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統であるか否かを判定する。起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統である場合、上記ステップS32においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS33に進み、当該並列圧縮系統に含まれる複数の圧縮機のうちの2台以上の圧縮機を同時に起動させ、上述した並行稼働期間を開始する。その後、CPUは次のステップS34に進み、例えばヒートポンプの負荷に応じて圧縮機の稼働台数を変更する等して、当該並列圧縮系統に含まれる圧縮機を通常通り稼働させ、当該ルーチンを一旦終了する。
一方、起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統ではない場合、上記ステップS32においてCPUは「No」と判定し、次のステップS34に進み、当該圧縮系統に含まれる圧縮機を通常通り稼働させ、当該ルーチンを一旦終了する。
尚、図1に示したように、本例におけるヒートポンプが有する並列圧縮系統は2台の圧縮機211及び212を含む。従って、上述したステップS33においては2台の圧縮機が同時に起動された。しかしながら、並列圧縮系統が3台以上の圧縮機を含む場合は、同時に起動させる圧縮機の台数は2台とは限らない。この場合、液圧縮に起因して圧縮機に掛かる負荷を分散させるという観点からは、できるだけ多くの圧縮機を同時に稼働させることが望ましい。しかしながら、同時に起動させる圧縮機の台数は、例えばその時点におけるヒートポンプの負荷及び圧縮機の駆動源の駆動性能等に応じて、適宜定めることができる。
また、本例におけるヒートポンプは並列圧縮系統を1つだけ有しているので、上記ステップS32においてCPUは「Yes」と判定する。しかしながら、例えば圧縮機を1台のみ備える圧縮系統(単発圧縮系統)及び直列に配設された複数の圧縮機を備える圧縮系統(直列圧縮系統)等、並列圧縮系統ではない圧縮系統(非圧縮系統)と並列圧縮系統とを有するヒートポンプにおいては、上記のように、起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統ではない場合が生じ得る。起動しようとする圧縮系統がこのような非並列圧縮系統である場合は、上記のように当該圧縮系統に含まれる圧縮機が通常通り起動される。具体的には、単発圧縮系統の場合は1台の圧縮機が、直列圧縮系統の場合は一連の圧縮機が、それぞれ起動される。
本例においては、上記により、ヒートポンプが停止している間に循環経路の何れかの箇所に滞留した過剰な潤滑油及び/又は液化媒体等の液体は、これら2台の圧縮機211及び212に分散して流入する。その結果、液圧縮に起因する過大な負荷が何れか一方の圧縮機に偏って蓄積されることが回避され、例えば圧縮機構の損壊等、当該圧縮機の故障に繋がる問題が低減される。
即ち、第1方法によれば、少なくとも1つの並列圧縮系統を有するヒートポンプにおいて当該並列圧縮系統が起動される場合において、ヒートポンプにおいて停止又は休止している圧縮系統を構成する圧縮機の起動時に過剰な液体が当該圧縮機に流入して液圧縮に起因する過大な負荷が圧縮機に掛かる問題を低減することができる。
尚、本例においては、図2に示したように、2台の圧縮機211及び212のうち一方の圧縮機211は常に伝達状態にあり、他方の圧縮機212についてのみ伝達状態と遮断状態とをクラッチ(図示せず)によって切り替えることができるように構成されている。しかしながら、例えば、2台の圧縮機211及び212の両方がクラッチを備えていてもよい。即ち、並列圧縮系統に含まれる全ての圧縮機がクラッチを備えていてもよい。この場合、複数の圧縮機を同時に起動させる手順としては、本例のように同時に起動させるべき複数の圧縮機のクラッチを繋いで伝達状態とした状態において駆動源(例えば、エンジン及びモータ等の動力装置)を起動させてもよく、或いは、駆動源を稼働させた状態において複数の圧縮機のクラッチを同時に繋いで伝達状態としてもよい。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係るヒートポンプの制御方法(以下、「第2方法」と称される場合がある。)について説明する。
〈ヒートポンプの構成〉
本例において第2方法が適用されるヒートポンプの構成は、上述した第1方法が適用されるヒートポンプの構成と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
〈ヒートポンプの制御〉
第2方法においても、第1方法と同様に、ヒートポンプが有する並列圧縮系統(圧縮部210)の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えるとき、ヒートポンプの負荷に応じて定まる熱媒体の目標循環量の如何に拘わらず2台の圧縮機211及び212が同時に起動される。その結果、これら2台の圧縮機211及び212が何れも稼働している期間である並行稼働期間が設けられる。
更に、第2方法においては、並行稼働期間が所定の期間に亘って継続される。具体的には、少なくとも並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替える時点から所定の時間が経過する時点までの期間において、並行稼働期間が継続される。
具体的には、第2方法が適用されるヒートポンプが備える制御装置を構成するECU(HP−ECU110及び/又はENG−ECU410)は、図4のフローチャートに示すルーチンによって表されるアルゴリズムを実行することにより、第2方法を実行する。当該ルーチンもまた、上記ECUを構成するCPUが、上記ECUを構成するROMに格納されたプログラムに従って種々の演算処理を実行することにより、所定の短い周期にて実行される。
図4のフローチャートに示すルーチンは、ステップS33とステップS34との間にステップS41が追加されている点を除き、図3のフローチャートに示したルーチンと同様である。従って、本例においては、ステップS41に着目して説明する。
第1方法について上述したように、起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統である場合、ステップS32においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS33に進み、当該並列圧縮系統に含まれる複数の圧縮機のうちの2台以上の圧縮機を同時に起動させ、上述した並行稼働期間が開始される。第2方法においては、CPUは次のステップS41に進み、並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えた時点(即ち、並行稼働期間が開始された時点)から所定の時間が経過したか否かを判定する。
並行稼働期間が開始された時点から所定の時間が未だ経過していない場合、上記ステップS41においてCPUは「No」と判定し、所定の時間が経過するまで待機する。こうして並行稼働期間が開始された時点から所定の時間が経過すると、上記ステップS41においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS34に進み、例えばヒートポンプの負荷に応じて圧縮機の稼働台数を変更する等して、当該並列圧縮系統に含まれる圧縮機を通常通り稼働させ、当該ルーチンを一旦終了する。
尚、上記「所定の時間」は、例えば、並列圧縮系統が停止している間に例えば当該圧縮系統に含まれる吸入配管及び吐出配管等を始めとする循環経路の何れかの箇所に滞留する可能性のある潤滑油及び/又は液化媒体等の液体の全てを上記のようにして同時に起動される複数の圧縮機によって吸入及び吐出することができる期間以上の時間である。このような時間は、例えば循環経路に滞留し得る液体の量及び並行稼働期間における圧縮機の運転状態(例えば稼働台数及び回転速度等)等に基づいて適宜定めることができる。
上記により、ヒートポンプが停止している間に循環経路の何れかの箇所に滞留した過剰な潤滑油及び/又は液化媒体等の液体を並行稼働期間中に稼働される複数の圧縮機によって確実に吸入及び吐出して熱媒体の循環経路に放出することができる。その結果、循環経路の何れかの箇所に液体が累積的に滞留することを防止することができる。
即ち、第2方法によれば、ヒートポンプにおいて停止又は休止している圧縮系統を構成する圧縮機の起動時に過剰な液体が当該圧縮機に流入して液圧縮に起因する過大な負荷が圧縮機に掛かる問題をより確実に低減することができる。
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係るヒートポンプの制御方法(以下、「第3方法」と称される場合がある。)について説明する。
〈ヒートポンプの構成〉
本例において第3方法が適用されるヒートポンプの構成は、並列圧縮系統である圧縮部210を複数系統(本例においては2系統)備え、且つ、これらが熱媒体の循環経路に対して並列に配設されている点を除き、上述した第1方法及び第2方法が適用されるヒートポンプの構成と同様である。従って、本例において第3方法が適用されるヒートポンプの構成についての図示及び詳細な説明は省略する(関連する実施例については詳しく後述する)。
〈ヒートポンプの制御〉
上述した第1方法及び第2方法によれば、ヒートポンプが有する並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えるとき、並列圧縮系統に含まれる複数の圧縮機のうちの2台以上の圧縮機を同時に起動させる。この際、液圧縮に起因して圧縮機に掛かる負荷を分散させるという観点からは、できるだけ多くの圧縮機を同時に稼働させることが望ましい。従って、本例において第3方法が適用されるヒートポンプのように並列に配設された複数系統の並列圧縮系統を備えるヒートポンプにおいては、これら複数系統の並列圧縮系統のうち、できるだけ多くの並列圧縮系統を同時に稼働させることが望ましい。
しかしながら、同時に起動させる圧縮機の台数が増えるほど、それらの駆動源(例えば、エンジン及びモータ等の動力装置)に掛かる負荷も大きくなり、例えば駆動源の停止(例えば、エンジンのストール等)及び運転状況の不安定化(例えば、回転速度の変動等)等の問題を招く虞が増大する。特に、複数の圧縮機を含む並列圧縮系統を複数系統同時に起動させる場合、駆動源に掛かる負荷はより大きくなり、上記のような問題が発生する場合がある。
そこで、第3方法は、複数の並列圧縮系統を有するヒートポンプにおいて2つ以上の並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替える(即ち、起動させる)場合、これらの並列圧縮系統を起動させるタイミングをずらす。換言すれば、これら2つ以上の並列圧縮系統のうち、少なくとも1つの並列圧縮系統の並行稼働期間を、他の並列圧縮系統の並行稼働期間とは異なる時点において開始する。
具体的には、第3方法が適用されるヒートポンプが備える制御装置を構成するECU(HP−ECU110及び/又はENG−ECU410)は、図5のフローチャートに示すルーチンによって表されるアルゴリズムを実行することにより、第3方法を実行する。当該ルーチンもまた、上記ECUを構成するCPUが、上記ECUを構成するROMに格納されたプログラムに従って種々の演算処理を実行することにより、所定の短い周期にて実行される。
図5のフローチャートに示すルーチンは、ステップS32とステップS33との間にステップS51が、ステップS51から分岐したフローにおいてステップS51とステップS34との間にステップS52が、それぞれ追加されている点を除き、図3のフローチャートに示したルーチンと同様である。従って、本例においては、ステップS51及びステップS52に着目して説明する。
第1方法について上述したように、ステップS31において、CPUは、ヒートポンプの負荷に応じて定まる熱媒体の目標循環量に基づき、圧縮系統を新たに起動する必要があるか否かを判定する。圧縮系統を新たに起動する必要がある状況にない場合、上記ステップS31においてCPUは「No」と判定し、当該ルーチンを一旦終了する。
一方、圧縮系統を新たに起動する必要がある状況にある場合、上記ステップS31においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS32に進み、起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統であるか否かを判定する。起動しようとする圧縮系統が並列圧縮系統である場合、上記ステップS32においてCPUは「Yes」と判定する。そして、第3方法においては、CPUは次のステップS51に進み、起動しようとする並列圧縮系統が1つのみか否かを判定する。
起動しようとする並列圧縮系統が1つのみである場合、ステップS51においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS33に進み、当該並列圧縮系統に含まれる複数の圧縮機のうちの2台以上の圧縮機を同時に起動させ、上述した並行稼働期間が開始される。これ以降のフローは、図3のフローチャートに示したルーチンと同様である。
一方、起動しようとする並列圧縮系統が1つのみではない(複数系統である)場合、ステップS51においてCPUは「No」と判定し、次のステップS52に進み、これら複数の並列圧縮系統を起動させるタイミングをずらす。即ち、これら複数の並列圧縮系統のうち、少なくとも1つの並列圧縮系統の並行稼働期間を、他の並列圧縮系統の並行稼働期間とは異なる時点において開始する。換言すれば、これら複数の並列圧縮系統のうち、少なくとも1つの並列圧縮系統に含まれる2台以上の圧縮機を同時に起動させ、これとは異なる時点において他の並列圧縮系統に含まれる2台以上の圧縮機を同時に起動させる。尚、複数の並列圧縮系統を起動させる場合に駆動源に掛かる負荷が過大となることを防止する観点からは、これら複数の並列圧縮系統の全ての並列圧縮系統の起動時期をずらすことが望ましい。
ステップS52において上記のように起動時期をずらして複数の並列圧縮系統を起動させた後、CPUは次のステップS34に進み、例えばヒートポンプの負荷に応じて圧縮機の稼働台数を変更する等して、当該並列圧縮系統に含まれる圧縮機を通常通り稼働させ、当該ルーチンを一旦終了する。
上記により、複数の並列圧縮系統を有するヒートポンプにおいて2つ以上の並列圧縮系統を起動させる場合において、これら2つ以上の並列圧縮系統が同時には起動されない。その結果、2つ以上の並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えるときに圧縮機の駆動源(例えば、エンジン及びモータ等の動力装置)に過大な負荷が掛かることを低減することができる。
尚、第3方法においても、上述した第2方法と同様に、各々の並列圧縮系統の並行稼働期間の後にステップS41を追加して、各々の並列圧縮系統の並行稼働期間を所定の時間に亘って継続させるようにしてもよい。
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係るヒートポンプの制御方法(以下、「第4方法」と称される場合がある。)について説明する。
〈ヒートポンプの構成〉
本例において第4方法が適用されるヒートポンプの構成は、上述した第3方法が適用されるヒートポンプの構成と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
〈ヒートポンプの制御〉
上述した第3方法によれば、複数の並列圧縮系統を有するヒートポンプにおいて2つ以上の並列圧縮系統を起動させる場合において、これら2つ以上の並列圧縮系統のうち、少なくとも1つの並列圧縮系統の並行稼働期間が、他の並列圧縮系統の並行稼働期間とは異なる時点において開始される。これにより、これら2つ以上の並列圧縮系統を起動させるときに圧縮機の駆動源に掛かる負荷を低減することができる。
しかしながら、上述した第3方法によれば、これら2つ以上の並列圧縮系統のうち、先に起動される並列圧縮系統の並行稼働期間が終了する前に、次に並行稼働期間が開始される並列圧縮系統が起動される可能性がある。このように先に起動される並列圧縮系統の並行稼働期間と次に起動される並列圧縮系統の並行稼働期間とが重複する期間においては、圧縮機の駆動源に掛かる負荷が過大となり、例えば駆動源の停止(例えば、エンジンのストール等)及び運転状況の不安定化(例えば、回転速度の変動等)を招く虞が高い。従って、2つ以上の並列圧縮系統を起動させるときに圧縮機の駆動源に掛かる負荷を低減するという観点からは、これら2つ以上の並列圧縮系統の並行稼働期間が互いに重複しないようにすることが望ましい。
そこで、第4方法においては、ヒートポンプが有する複数の並列圧縮系統のうち2つ以上の並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替える場合、これら2つ以上の並列圧縮系統のうち、先に並行稼働期間を開始する並列圧縮系統の運転状態が停止状態へと戻された後に、次に並行稼働期間を開始する並列圧縮系統の並行稼働期間が開始される。
具体的には、第4方法が適用されるヒートポンプが備える制御装置を構成するECU(HP−ECU110及び/又はENG−ECU410)は、図6のフローチャートに示すルーチンによって表されるアルゴリズムを実行することにより、第4方法を実行する。当該ルーチンもまた、上記ECUを構成するCPUが、上記ECUを構成するROMに格納されたプログラムに従って種々の演算処理を実行することにより、所定の短い周期にて実行される。
図6のフローチャートに示すルーチンは、ステップS61乃至ステップS64によってステップS52が置き換えられている点を除き、図5のフローチャートに示したルーチンと同様である。従って、本例においては、ステップS61乃至ステップS64に着目して説明する。
第3方法について上述したように、CPUはステップS51において、起動しようとする並列圧縮系統が1つのみか否かを判定する。起動しようとする並列圧縮系統が1つのみである場合、ステップS51においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS33に進み、当該並列圧縮系統に含まれる複数の圧縮機のうちの2台以上の圧縮機を同時に起動させ、上述した並行稼働期間が開始される。これ以降のフローは、図3のフローチャートに示したルーチンと同様である。
一方、起動しようとする並列圧縮系統が1つのみではない(複数系統である)場合、ステップS51においてCPUは「No」と判定する。そして、第4方法においては、CPUは次のステップS61に進み、起動しようとする2つ以上の並列圧縮系統のうちの最も先に起動すべき並列圧縮系統を起動させる(即ち、当該並列圧縮系統に含まれる2台以上の圧縮機を同時に起動させる)。次に、CPUはステップS62に進み、当該並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えた時点(即ち、当該並列圧縮系統の並行稼働期間が開始された時点)から所定の時間が経過したか否かを判定する。
上記「所定の時間」は、複数の並列圧縮系統を備えるヒートポンプにおいて2つ以上の並列圧縮系統を起動させることにより液圧縮に起因して圧縮機に掛かる負荷を分散させる効果が損なわれない範疇において適宜定めることができる。また、上記「所定の時間」は、対象となる並列圧縮系統が停止している間に例えば当該圧縮系統に含まれる吸入配管及び吐出配管等を始めとする循環経路の何れかの箇所に滞留する可能性のある潤滑油及び/又は液化媒体等の液体の全てを同時に起動される複数の圧縮機によって吸入及び吐出することができる期間以上の時間とすることが望ましい。このような時間は、例えば循環経路に滞留し得る液体の量及び当該並行稼働期間における圧縮機の運転状態(例えば稼働台数及び回転速度等)等に基づいて適宜定めることができる。
並行稼働期間が開始された時点から所定の時間が未だ経過していない場合、上記ステップS62においてCPUは「No」と判定し、所定の時間が経過するまで待機する。こうして並行稼働期間が開始された時点から所定の時間が経過すると、上記ステップS62においてCPUは「Yes」と判定し、次のステップS63に進み、当該並列圧縮系統の運転状態を稼働状態から停止状態へと戻す(即ち、当該並列圧縮系統に含まれる圧縮機を停止させて並行稼働期間を終了する)。
そして、CPUは次のステップS64に進み、起動しようとする2つ以上の並列圧縮系統の全ての起動が完了されたか否か(並行稼働期間が設けられたか否か)を判定する。起動しようとする2つ以上の並列圧縮系統のうち未だ起動されていない並列圧縮系統が残っている場合、CPUはステップS64において「No」と判定し、上述したステップS61に戻り、次の並列圧縮系統を起動する。
一方、起動しようとする2つ以上の並列圧縮系統の全ての起動が完了されて未だ起動されていない並列圧縮系統が残っていない場合、CPUはステップS64において「Yes」と判定し、次のステップS34に進み、例えばヒートポンプの負荷に応じて、並列圧縮系統の稼働系統数を変更したり、それぞれの並列圧縮系統に含まれる圧縮機の稼働台数を変更したりして、当該ヒートポンプが有する複数の並列圧縮系統に含まれる複数の圧縮機を通常通り稼働させ、当該ルーチンを一旦終了する。
上記のように、第4方法によれば、複数の並列圧縮系統を有するヒートポンプにおいて2つ以上の並列圧縮系統を起動させる場合において、これら2つ以上の並列圧縮系統の並行稼働期間が互いに重複しないように制御される。その結果、2つ以上の並列圧縮系統の運転状態を停止状態から稼働状態へと切り替えるときに圧縮機の駆動源(例えば、エンジン及びモータ等の動力装置)に過大な負荷が掛かることをより確実に低減することができる。
尚、第4方法においても、上述した第2方法と同様に、ステップS33における並列圧縮系統の並行稼働期間の後にステップS41を追加して、当該並列圧縮系統の並行稼働期間を所定の時間に亘って継続させるようにしてもよい。
本発明の実施例1に係るヒートポンプの制御方法(以降、「実施例方法1」と称される場合がある。)につき、図面を参照しながら、以下に説明する。実施例方法1が適用されるヒートポンプの構成は、前述した図1に示したヒートポンプの構成と基本的には同様である。
但し、図7に示すように、当該ヒートポンプの圧縮部210は熱媒体の循環経路に対して並列に配設された2つの圧縮系統210A及び210Bを有する。圧縮系統210Aにおいては2台の圧縮機211A及び212Aが、圧縮系統210Bにおいては2台の圧縮機211B及び212Bが、それぞれ並列に配設されている。即ち、当該ヒートポンプにおいては、2つの並列圧縮系統210A及び210Bが熱媒体の循環経路に対して並列に配設されている。図中、白抜きの矢印は熱媒体の流れを、黒塗りの矢印は潤滑油(冷凍機油)の流れを、それぞれ示している。
本例において、4台の圧縮機211A及び212A並びに211B及び212Bは、図示しない駆動源(例えば、エンジン及びモータ等の動力装置)からの駆動力が伝達される状態である伝達状態と、駆動力が伝達されない状態である遮断状態と、を切り替えるクラッチ(図示せず)を備えている。
例えば当該ヒートポンプを使用する空気調和機に運転開始の指令があると、上記駆動源が起動される。実施例方法1においては、先ず、並列圧縮系統210Aに含まれる2台の圧縮機211A及び212Aのクラッチが同時に接続されて、圧縮機211A及び212Aの運転が開始される(起動される)。そして、圧縮機211A及び212Aの両方が稼働している期間(並行稼働期間)が所定の時間に亘って継続された後、クラッチが切断されて、圧縮機211A及び212Aの運転が一旦終了される(停止される)。
次に、並列圧縮系統210Bに含まれる2台の圧縮機211B及び212Bのクラッチが同時に接続されて、圧縮機211B及び212Bの運転が開始される(起動される)。そして、圧縮機211B及び212Bの両方が稼働している期間(並行稼働期間)が所定の時間に亘って継続された後、クラッチが切断されて、圧縮機211B及び212Bの運転が一旦停止される(並行稼働期間が終了される)。
上記運転が終了したら、当該ヒートポンプを使用する空気調和機の負荷(空調負荷)に応じて必要な台数の圧縮機を稼働させることにより、空気調和機が適切に運転される。
以上のような運転により、当該ヒートポンプを使用する空気調和機が停止している間に例えば並列圧縮系統210A及び210Bに含まれる吸入配管及び吐出配管等の循環経路の何れかの箇所に潤滑油及び/又は液化媒体等の液体が滞留していても、この液体は並列圧縮系統210A及び210Bに含まれる4台の圧縮機211A、212A、211B及び212Bに分散して流入する。その結果、当該空気調和機の起動時に、この液体が何れか一方の圧縮系統に含まれる単一の圧縮機に流入して、液圧縮に起因する過大な負荷が当該圧縮機に掛かる問題が低減される。
尚、上記説明においては先に起動される並列圧縮系統(本例においては並列圧縮系統210A)に含まれる圧縮機(211A及び212A)のクラッチを駆動源が起動された後に接続した。しかしながら、先に起動される並列圧縮系統に含まれる圧縮機のクラッチを駆動源が起動される前に接続してもよい。
また、上記説明においては、並列圧縮系統210Aの並行稼働期間を終了した後に並列圧縮系統210Bの並行稼働期間を開始した。これにより、4台の圧縮機211A、212A、211B及び212Bが同時に起動されることが回避され、当該ヒートポンプを使用する空気調和機の起動時に圧縮機の駆動源に掛かる負荷を低減している。しかしながら、圧縮機の駆動源の運転性能が高く、これら4台の圧縮機を同時に起動しても例えば駆動源の停止(例えば、エンジンのストール等)及び運転状況の不安定化(例えば、回転速度の変動等)等の問題を招く可能性が十分に低い場合は、並列圧縮系統210A及び並列圧縮系統210Bを同時に起動させてもよい。この場合もまた、圧縮機のクラッチの接続及び駆動源の起動の何れを先に実行してもよい。
更に、上記説明においては2つの圧縮系統のそれぞれに2台の圧縮機が含まれる構成について例示したが、当然のことながら、実施例方法1が適用されるヒートポンプにおける圧縮系統及び圧縮機の数は上記説明に限定されない。
次に、本発明の実施例2に係るヒートポンプの制御方法(以降、「実施例方法2」と称される場合がある。)につき、図面を参照しながら、以下に説明する。実施例方法2が適用されるヒートポンプの構成は、上述した実施例方法1において図1及び図7を参照しながら説明したヒートポンプの構成と同様である。
但し、実施例1においては何れの圧縮機も稼働していない停止状態にあるヒートポンプを起動させる場合について説明したが、実施例2においては既に一部の圧縮機が稼働している部分運転状態にあるヒートポンプにおいて休止している圧縮系統を起動させる場合について説明する。
具体的には、例えば空調負荷が小さく、図7に示した4台の圧縮機のうち並列圧縮系統210Aに含まれる圧縮機211Aのみが稼働している状態において空調負荷の増大に対応して圧縮機の稼働台数を増やす場合の運転方法について説明する。この場合、既に稼働している並列圧縮系統210Aに含まれるもう1台の圧縮機212Aのクラッチを接続して当該圧縮機を起動させてもよい。
しかしながら、例えば2系統の圧縮系統及び4台の圧縮機の稼働頻度の均等化及び熱媒体の循環経路における液体の滞留防止等を目的として、もう一方の並列圧縮系統210Bに含まれる圧縮機211Bを起動させる場合が想定される。この場合、例えば、当該ヒートポンプの部分運転中に休止していた並列圧縮系統210Bの吸入配管及び吐出配管等の循環経路の何れかの箇所に潤滑油及び/又は液化媒体等の液体が滞留している可能性がある。
そこで、実施例方法2においては、並列圧縮系統210Bに含まれる圧縮機211Bを起動させるときに、圧縮機211B及び圧縮機212Bの両方のクラッチが接続され、並列圧縮系統210Bに含まれる全ての(本例においては2台の)圧縮機が同時に起動される。そして、圧縮機211B及び212Bの両方が稼働している期間(並行稼働期間)が所定の時間に亘って継続された後、クラッチが切断されて、圧縮機211B及び212Bの運転が一旦停止される(並行稼働期間が終了される)。
上記運転が終了したら、圧縮機212Bのクラッチが切断され、並列圧縮系統210Aに含まれる圧縮機211Aと並列圧縮系統210Bに含まれる圧縮機211Bとからなる2台の圧縮機の運転により、空気調和機が適切に運転される。
以上のような運転により、部分運転状態にあるヒートポンプにおいて休止している圧縮系統を起動させる場合においても、当該休止している並列圧縮系統に含まれる吸入配管及び吐出配管等の循環経路の何れかの箇所に滞留している可能性のある潤滑油及び/又は液化媒体等の液体が特定の圧縮機に流入して、液圧縮に起因する過大な負荷が当該圧縮機に掛かる問題が低減される。
尚、上記説明においても2つの圧縮系統のそれぞれに2台の圧縮機が含まれる構成について例示したが、当然のことながら、実施例方法2が適用されるヒートポンプにおける圧縮系統及び圧縮機の数もまた上記説明に限定されない。
次に、本発明の実施例3に係るヒートポンプの制御方法(以降、「実施例方法3」と称される場合がある。)につき、図面を参照しながら、以下に説明する。実施例方法3が適用されるヒートポンプの構成もまた、前述した図1に示したヒートポンプの構成と基本的には同様である。
図8に示すように、当該ヒートポンプの圧縮部210は熱媒体の循環経路に対して並列に配設された2台の圧縮機211及び212を備える。即ち、当該ヒートポンプにおいては、1つの並列圧縮系統(圧縮部210)が熱媒体の循環経路の途中に配設されている。図8においても、図中、白抜きの矢印は熱媒体の流れを、黒塗りの矢印は潤滑油(冷凍機油)の流れを、それぞれ示している。
また、本例においても、2台の圧縮機211及び212は、図示しない駆動源(例えば、エンジン及びモータ等の動力装置)からの駆動力が伝達される状態である伝達状態と、駆動力が伝達されない状態である遮断状態と、を切り替えるクラッチ(図示せず)を備えている。
例えば当該ヒートポンプを使用する空気調和機に運転開始の指令があると、上記駆動源が起動される。実施例方法3においては、空調負荷の如何に拘わらず、並列圧縮系統(圧縮部210)に含まれる2台の圧縮機211及び212の両方のクラッチが同時に接続されて、圧縮機211及び212の運転が開始される(起動される)。そして、圧縮機211及び212の両方が稼働している期間(並行稼働期間)が所定の時間に亘って継続された後、当該ヒートポンプを使用する空気調和機の負荷(空調負荷)に応じて必要な台数の圧縮機を稼働させることにより、空気調和機が適切に運転される。
具体的には、空調負荷が小さく、必要とされる熱媒体の目標循環量を1台の圧縮機によって達成することが可能である場合は、2台の圧縮機211及び212の何れか一方のクラッチが切断され、残る1台の圧縮機のみを稼働させて空気調和機が運転される。一方、空調負荷が大きく、必要とされる熱媒体の目標循環量を1台の圧縮機によって達成することが不可能又は困難である場合は、2台の圧縮機211及び212の両方のクラッチを接続したまま維持し、2台の圧縮機の両方を稼働させて空気調和機が運転される。
以上のような運転により、実施例方法3によれば、上述した実施例方法1と同様に、当該ヒートポンプを使用する空気調和機が停止している間に例えば並列圧縮系統(圧縮部210)に含まれる吸入配管及び吐出配管等の循環経路の何れかの箇所に潤滑油及び/又は液化媒体等の液体が滞留していても、この液体は2台の圧縮機211及び212に分散して流入する。その結果、当該空気調和機の起動時に、この液体が何れか一方の圧縮系統に含まれる単一の圧縮機に流入して、液圧縮に起因する過大な負荷が当該圧縮機に掛かる問題が低減される。
尚、上記説明においては並列圧縮系統(圧縮部210)に含まれる2台の圧縮機(211及び212)のクラッチを駆動源が起動された後に接続した。しかしながら、並列圧縮系統に含まれる圧縮機のクラッチを駆動源が起動される前に接続してもよい。
更に、上記説明においては1つの圧縮系統に2台の圧縮機が含まれる構成について例示したが、当然のことながら、実施例方法3が適用されるヒートポンプにおける圧縮系統に含まれる圧縮機の数は上記説明に限定されない。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。