JP6775419B2 - 末梢神経障害の予防又は改善用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、セリン及びn−3系脂肪酸を有効成分として含有する、末梢神経障害の予防又は改善用の組成物に関する。
痛みは、「神経障害性」、「侵害受容性」及び「心因性」に分類され、これら3つが独立に又は複合的に働き、痛みを引き起こす。「神経障害性」の痛みは、慢性化しやすく、急性的な痛み(例、怪我、火傷等)の多い「侵害受容性」の痛みとは異なる特徴を持つ。体組織損傷に続いて起こる急性的な痛みは、体組織損傷に対する警報として働き、一定期間で体組織を修復へと導く。一方で、慢性的な痛みは、防御的な生物学的機能として働かず、数か月から数年以上続くとされている(非特許文献1)。
痛みに関する大規模調査によると、慢性的な痛みを、日本成人の約23%が有しており、その7割が痛みを適切に緩和されていない(非特許文献2)。痛みに伴う心理的な不安及び憂鬱は、活動量の制限に大きな影響を与えるため、痛みを取り除くことが生活の質の改善につながる。
末梢神経障害による痛みは、末梢の神経伝達系のいずれかの部分の一次的損傷又は機能異常によって引き起こされる痛みである。この神経傷害の要因は、主に、末梢神経、神経叢又は神経周囲軟組織への外傷又は傷害等である。また、末梢神経障害による痛みは、中枢性の体性感覚経路(例、脊髄、脳幹、視床又は皮質における上行体性感覚経路)への傷害でも起こる。末梢神経障害による痛みは、例えば、神経変性疾患、骨変性疾患、代謝異常疾患、がん、感染、炎症、外科的手術後、外傷、放射線治療、抗がん剤による治療等のいずれによっても誘発される。
高齢者の筋力低下、加齢、肥満等のきっかけにより膝関節の機能が低下して、膝軟骨や半月板のかみ合わせが緩んだり、変形や断裂を引き起こしたりする。このような膝軟骨や半月板のかみ合わせの緩み、変形及び断裂は、膝関節のクッションの役割を果たす膝軟骨や半月板が、長期に渡る活動により少しずつ擦り減り変形することで起こる場合と、関節リウマチや膝の怪我等の病気や怪我等で起こる場合とがある。これらの多くにおいて、炎症による関節液の過剰滞留があり、痛みを伴う。また、高齢者の筋力低下、加齢、肥満等のきっかけによる機能低下は、膝と同じように軟骨を有する腰にも起こり得、腰部のかみ合わせの緩み、変形又は断裂を引き起こし、慢性的な痛みを伴うことが多い。
がん患者においては、がんによる末梢神経や脊髄の圧迫、組織浸潤、又は、化学療法のそのものの作用による末梢神経障害等によって、耐え難い痺れ感、疼き感等が長期間持続する。特に、化学療法による痛みによって化学療法の中止を余儀なくされることが多く、化学療法による痛みは、がん治療に大きな障害となっている(非特許文献3)。
末梢神経障害の特徴として、健常な人では感じない刺激で痛みを感じる、感覚過敏応答(アロデニア)がある。この発症の分子的メカニズムは完全に明らかにされてはいないが、種々の末梢神経障害に共通して、過剰興奮や持続的な自発興奮等の異常応答が感覚ニューロンで起こる。
末梢神経障害性の痛みに対し、モルヒネ等のオピオイド系中枢性鎮痛薬;ステロイド;非ステロイド性消炎鎮痛薬;ビタミン剤等による対処療法が行われているが、副作用が強く、十分な効果も得られない(非特許文献1)。そのため、副作用が少なく、且つ効果的に末梢神経障害性の痛みを軽減できる方法が求められている。
セリンは非必須アミノ酸の1種であり、プリン、ピリミジン等の核酸の生合成、システインの生合成に関与する。また、セリンは、鶏の胚細胞における後根神経節の神経突起の伸長促進、ラット胎児細胞由来の海馬ニューロン及びラット胎児由来の小脳プルキンエニューロンの生存や発育に関与するとの報告がなされている(非特許文献4、5、6)。しかし、これらの報告すべてが、神経細胞発生の初期の過程でのin vitro評価であって、神経細胞が形成された後に、末梢神経障害が起こった状況とは大きく異なる。
また、特許文献1では、L−セリンが抗がん剤又は糖尿病のモデル動物における末梢神経障害性の痛みに対して、軽減効果を示すとの報告がなされている。抗がん剤や糖尿病は、末梢神経細胞や神経軸索に対し、直接的に影響を及ぼす。しかし、膝関節炎による末梢神経障害性の痛みは、膝の感覚器に局所的に作用する痛みであり、抗がん剤や糖尿病によるものとは、痛みの性質が異なる。この膝関節炎による末梢神経障害性の痛みについては、特許文献1において検討されていない。さらに、特許文献1において検討されている、抗がん剤や糖尿病による末梢神経障害の痛みに対するL−セリンの軽減効果は、L−セリンの最大濃度においても、部分的であった。
他方、n−3系脂肪酸のうち、エイコサペンタエン酸は、高トリグリセリド血症改善剤として臨床上、既に使用されているが、痛みの軽減に関する臨床報告は明確になってない。動物モデルを使用した試験においても、エイコサペンタエン酸を食事に添加して摂取させた場合に、末梢神経の機械的な刺激に対して軽減効果を明確に示す報告はない。
上記のように、現状においては、セリン及びn−3系脂肪酸を含有し、末梢神経障害性の痛みを予防又は改善する機能を持つ、医療用製剤、食品又はサプリメントは提供されていない。
国際公開第2011/111355号
神経治療学第27巻第4号、p591-622 (2010) 臨床整形外科、vol.47, No.2, p127-134 (2012) Folia Pharmacol. Jpn., 136, p275-279 (2010) J. Neurosci. Methods, 61, p159-167 (1995) Neurosci. Res. 30, p195-199 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, p11528-11533 (2000)
本発明が解決しようとする課題は、末梢神経障害の予防又は改善効果を有する新規組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく種々検討した結果、セリンとn−3系脂肪酸とを配合することにより、末梢神経障害を予防又は改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有する、末梢神経障害の予防又は改善用組成物。
[2]n−3系脂肪酸が、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる1種以上を含む、[1]記載の組成物。
[3]セリンの量が、アミノ酸の総量に対して50重量%以上である、[1]又は[2]記載の組成物。
[4](1)スレオニンを実質的に含まない、又は(2)スレオニンに対するセリンの重量比が、2.60以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]n−3系脂肪酸の量が、脂質の総量に対して20重量%以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]1回摂取量当たりの単位包装形態であり、且つ、セリンを1単位中0.1g以上含有し、n−3系脂肪酸を1単位中0.03g以上含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害、変形性膝関節症による末梢神経障害、背骨部神経障害、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害及びギラン・バレー症候群からなる群より選ばれるいずれか1種である、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害又は変形性膝関節症による末梢神経障害である、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[9]セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有する、末梢神経障害による活動量低下の予防又は改善用組成物。
[10]医薬である、[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有する組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、末梢神経障害の予防又は改善方法。
[12]n−3系脂肪酸が、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる1種以上を含む、[11]記載の方法。
[13]組成物中のセリンの量が、組成物中のアミノ酸の総量に対して50重量%以上である、[11]又は[12]記載の方法。
[14](1)組成物がスレオニンを実質的に含まない、又は(2)組成物中のスレオニンに対するセリンの重量比が、2.60以上である、[11]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]組成物中のn−3系脂肪酸の量が、組成物中の脂質の総量に対して20重量%以上である、[11]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]組成物が1回摂取量当たりの単位包装形態であり、且つ、セリンを1単位中0.1g以上含有し、n−3系脂肪酸を1単位中0.03g以上含有する、[11]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害、変形性膝関節症による末梢神経障害、背骨部神経障害、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害及びギラン・バレー症候群からなる群より選ばれるいずれか1種である、[11]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害又は変形性膝関節症による末梢神経障害である、[11]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[19]セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有する組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、末梢神経障害による活動量低下の予防又は改善方法。
[20]末梢神経障害の予防又は改善における使用のための、セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有する組成物。
[21]n−3系脂肪酸が、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸からなる群より選ばれる1種以上を含む、[20]記載の組成物。
[22]セリンの量が、アミノ酸の総量に対して50重量%以上である、[20]又は[21]記載の組成物。
[23](1)スレオニンを実質的に含まない、又は(2)スレオニンに対するセリンの重量比が、2.60以上である、[20]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[24]n−3系脂肪酸の量が、脂質の総量に対して20重量%以上である、[20]〜[23]のいずれかに記載の組成物。
[25]1回摂取量当たりの単位包装形態であり、且つ、セリンを1単位中0.1g以上含有し、n−3系脂肪酸を1単位中0.03g以上含有する、[20]〜[24]のいずれかに記載の組成物。
[26]末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害、変形性膝関節症による末梢神経障害、背骨部神経障害、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害及びギラン・バレー症候群からなる群より選ばれるいずれか1種である、[20]〜[25]のいずれかに記載の組成物。
[27]末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害又は変形性膝関節症による末梢神経障害である、[20]〜[25]のいずれかに記載の組成物。
[28]末梢神経障害による活動量低下の予防又は改善における使用のための、セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有する組成物。
[29]医薬である、[20]〜[28]のいずれかに記載の組成物。
本発明によれば、末梢神経障害の予防又は改善用組成物を提供し得る。当該組成物は、特に、末梢神経障害の痛みを軽減する効果を奏し、抗がん剤投与による末梢神経障害、変形性膝関節症による末梢神経障害、背骨部神経障害(例、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性脊椎症等)、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害及びギラン・バレー症候群等に有用である。また、当該組成物は、末梢神経障害による活動量低下を予防又は改善できる。さらに、当該組成物は、安全性が確立しているセリン及びn−3系脂肪酸を有効成分とすることから、長期にわたり安全に摂取でき、摂取する者のQOLを高めることができる。
試験例1における、抗がん剤の投与開始から22日後のVon Frey試験の結果である。*は1B群と比べて有意差(p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例1における、抗がん剤の投与開始から28日後のVon Frey試験の結果である。*は1B群と比べて有意差(p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例2における、膝関節炎誘発剤の投与から7日後の右足に対するVon Frey試験の結果である。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例2における、膝関節炎誘発剤の投与から7日後の左足に対するVon Frey試験の結果である。*は2B群と比べて有意差(p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例2における、膝関節炎誘発剤の投与から14日後の右足に対するVon Frey試験の結果である。*は2B群と比べて有意差(p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例2における、膝関節炎誘発剤の投与から14日後の左足に対するVon Frey試験の結果である。*は2B群と比べて有意差(p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例2における、右足及び左足のヒフク筋重量の測定結果である。縦軸(Gastrocnemius muscle(g))は、ヒフク筋の重量(g)を示す。 試験例2における、右足のヒフク筋重量と左足のヒフク筋重量との比(右足/左足)である。*は2B群と比べて有意差(p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Gastrocnemius muscle ratio.)は、右足のヒフク筋重量と左足のヒフク筋重量との比(右足/左足)を示す。 試験例3における、膝関節炎誘発剤の投与から21日後の右足に対するVon Frey試験の結果である。**及び*は3B群と比べて有意差(**:p<0.01、*:p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例4における、膝関節炎誘発剤の投与から14日後の右足に対するVon Frey試験の結果である。**及び*は4B群と比べて有意差(**:p<0.01、*:p<0.05、non−paired t−test)があることを示す。縦軸(Overall response(%))は、フィラメントを押し当てた回数に対する痛み応答の回数の割合(%)を示す。 試験例5における、5A群〜5C群の行動量の測定結果である。縦軸(AUC(10Counts×min))は、ラットがケージ内の赤外線センサーを通過した回数の累積を示す。
本発明の末梢神経障害の予防又は改善用組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも称する)は、セリンを含むアミノ酸及びn−3系脂肪酸を含む脂質を含有することを主たる特徴とする。
本明細書において、末梢神経障害の「予防」とは、末梢神経障害の諸症状(例、過敏性の痛み、感覚異常等)を示していない個体において、該症状の顕在化を防ぐこと(再発防止も含む)を意味する。また、末梢神経障害の「改善」とは、末梢神経障害の諸症状を示している個体において、該症状を軽減すること、或いは該症状の悪化を防ぐこと又は遅延させることを意味する。
[セリンを含むアミノ酸]
本発明において用いられるアミノ酸はセリンを必須として含む。当該セリンの形態は特に制限されず、遊離体、ペプチドの構成アミノ酸及びタンパク質の構成アミノ酸のいずれの形態であってよい。遊離のセリンを用いる場合、塩及びこれらの溶媒和物のいずれの形態であってもよく、また、これらの混合物であってもよい。
セリンの塩の例としては、酸付加塩や塩基との塩等を挙げることができ、生理学的に許容し得る塩が好ましい。
セリンの生理学的に許容し得る塩を形成する酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等の有機酸が挙げられる。
セリンの生理学的に許容し得る塩を形成する塩基としては、例えば、金属(例、ナトリウム、カリウム、カルシウム等)の水酸化物又は炭酸化物、アンモニア等の無機塩基;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
これらの塩は、1種単独の塩又は2種以上の塩の組み合わせのいずれでもよい。
本発明において用いられる遊離体のセリンは、L−体、D−体及びDL−体のいずれであってもよいが、L−体が好ましい。
セリンの製造方法は特に制限されず、自体公知の方法(例、タンパク質加水分解法、化学合成法、酵素法、発酵法等)で製造できる。また、市販品を用いてもよい。またセリンは、当該セリン残基を含むアミノ酸配列を有する、動物又は植物由来の天然タンパク質を酵素的に加水分解することによっても得ることができる。
本発明の組成物は、セリンに加えて、セリン以外のアミノ酸(例、スレオニン、グリシン等)を含み得る。これらのアミノ酸の形態は特に制限されず、遊離体及びその塩、あるいは2以上のアミノ酸をペプチド結合させたペプチドの形態であってよい。また、タンパク質の形態であってもよく、当該タンパク質としては、例えば、動物性タンパク質(例、カゼイン、酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、ホエータンパク質、乳清ホエータンパク質、魚肉タンパク質、卵タンパク質、及びこれらの加水分解物等)及び植物性タンパク質(例、大豆タンパク質、小麦タンパク質、とうもろこしタンパク質、及びこれらの加水分解物等)等が挙げられる。本発明の組成物に用いられるアミノ酸は、L−体、D−体及びDL−体のいずれであってもよい。
本発明の組成物におけるセリンの量は、アミノ酸の総量に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上である。ここで、本発明の組成物におけるセリンの量は、本発明の組成物に含まれる全ての形態のセリンの重量の総和として算出される。セリンの形態が、遊離体以外、例えば塩、あるいはペプチド及びタンパク質の構成アミノ酸等である場合、当該セリンの重量は、遊離体の重量に換算する。また「アミノ酸の総量」とは、本発明の組成物に含まれる全ての形態のアミノ酸(例、遊離アミノ酸及びその塩、ペプチド、タンパク質等)の重量の総和として算出される。アミノ酸の形態が、遊離体以外、例えば塩、あるいはペプチド及びタンパク質等である場合、当該アミノ酸の重量は、遊離体の重量に換算する。
本発明の組成物におけるセリンの量の上限は特に制限されないが、アミノ酸の総量に対して、通常100重量%であり、好ましくは95重量%である。
本発明において用いられるアミノ酸がスレオニンを含む場合、スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)は、特定の値以上であることが好ましい。スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)が、特定の値以上であることによって、本発明の組成物は所望の効果(例、末梢神経障害の痛みの軽減効果等)を十分に発揮することができる。
具体的には、スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)は、好ましくは2.60以上であり、より好ましくは5.20以上であり、特に好ましくは10.40以上である。
ここで、スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)とは、本発明の組成物におけるセリンの量を、本発明におけるスレオニンの量で除した値である。本発明の組成物におけるスレオニンの量は、本発明の組成物に含まれる全ての形態のスレオニンの重量の総和として算出される。スレオニンの形態が、遊離体以外、例えば塩、あるいはペプチド及びタンパク質の構成アミノ酸等である場合、当該スレオニンの重量は、遊離体の重量に換算する。
下表1に、天然の食品素材の食品可食部100gに含まれるセリンとスレオニンの重量比(セリン/スレオニン)を示す(「日本食品標準成分準拠アミノ酸成分表 2010」(文部科学省科学技術学術審議会資源調査分科会)に基づいて算出)。当該表1に示されるように、天然の食品素材では、スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)が2.60以上である食品は実現できない。そのような食品を得るためには、天然の食品素材に、例えば遊離体のセリン等を添加する必要がある。
スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)の上限は特に制限されず、スレオニンの量は少ないほど好ましく、本発明の組成物はスレオニンを実質的に含まないことが最も好ましい。セリンに対するスレオニンの重量比(スレオニン/セリン、即ち、本発明の組成物におけるスレオニンの量を、本発明におけるセリンの量で除した値)は、好ましくは0.38以下であり、より好ましくは0.20以下であり、特に好ましくは0.10以下であり、最も好ましくは0である。ここで、スレオニンを「実質的に含まない」とは、(a)スレオニンを全く含まない場合、又は(b)本発明の組成物の効果に影響を与えない量(例えば、アミノ酸の総量に対して1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下)のスレオニンを含む場合のいずれかであることを意味する。
また、食事等から摂取されるスレオニン(例えば、タンパク質に含まれるスレオニン等)であっても、本発明の組成物の効果に影響する可能性があるため、本発明の組成物の摂取とスレオニンの摂取(例、食事等)とは、少なくとも1時間以上(好ましくは2時間以上)離れていることが好ましい。
本発明の組成物に含まれるアミノ酸の総量は、組成物全体に対して、通常1〜90重量%であり、好ましくは5〜85重量%である。
[n−3系脂肪酸を含む脂質]
本発明の組成物において用いられる脂質は、n−3系脂肪酸を必須として含む。本明細書における「n−3系脂肪酸」とは、炭化水素鎖の末端のメチル基から3番目に二重結合を有する不飽和脂肪酸を意味し、具体的には、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、α−リノレン酸及びドコサペンタエン酸等が例示される。本発明の組成物において用いられるn−3系脂肪酸は、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びドコサペンタエン酸が好ましく、エイコサペンタエン酸が特に好ましい。これらのn−3系脂肪酸は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書中、エイコサペンタエン酸は「EPA」と略記される場合がある。
n−3系脂肪酸は、魚油、シソ油、アマニ油等の油脂類に豊富に含まれており、これらの油脂類から抽出、精製したものを用いることができる。また、自体公知の方法(例、化学合成法、発酵法等)により製造したものを用いることもできる。食品用に上市されている市販品を用いることもできる。また、n−3系脂肪酸を豊富に含む油脂類をそのまま用いることもできる。
本発明の組成物が含有する脂質は、n−3系脂肪酸に加え、それ以外の脂質を含んでもよい。該脂質としては、例えば、綿実油、ひまわり油、落花生油、なたね油、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、こめ油、コーン油、ごま油、カカオバター等の食用植物油;牛脂、豚脂、魚油、バター、バターオイル等の食用動物油;ショートニング等の加工油脂;ヤシ油、パーム油、パーム核油等の中鎖脂肪酸油等が挙げられる。これらの脂質は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
n−3系脂肪酸の量は、本発明の組成物が含有する脂質の総量に対して、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上であり、特に好ましくは30重量%以上である。
n−3系脂肪酸の量の上限は特に制限されない。
n−3系脂肪酸がエイコサペンタエン酸を含有する場合、n−3系脂肪酸の総量に対するエイコサペンタエン酸の含有量は、通常5〜100重量%であり、油の摂取量を少しでも抑える観点から、好ましくは10〜100重量%であり、より好ましくは50〜100重量%である。
本発明の組成物に含まれる脂質の総量は、組成物全体に対して、通常1〜90重量%であり、好ましくは5〜85重量%である。
本発明の組成物は、医薬等として提供することができる。医薬として提供する場合、投与対象としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)等が挙げられ、好ましくはヒトである。
本発明の組成物を医薬として提供する場合、その剤形は特に制限されず、経口医薬又は非経口医薬のいずれでもよい。経口医薬としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、エリキシル剤、シロップ剤、マイクロカプセル剤、ドリンク剤、乳剤、懸濁液剤等が挙げられ、非経口医薬としては、例えば、皮膚外用剤(例、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、液剤、ローション剤、パック剤、入浴剤等)、注射剤等が挙げられる。現在市販されている鎮痛薬(オピオイド系中枢性鎮痛薬;ステロイド;非ステロイド性消炎鎮痛薬など)とも、併せて用いることが可能である。
本発明の組成物の有効成分であるセリン及びn−3系脂肪酸は、それぞれ単独で又は組み合わせて、複数(2以上)の組成物中に含有させることができる。複数の組成物は、例えば、2以上の医薬の組合せ等であってよい。
セリン及びn−3系脂肪酸を複数の組成物中に含有させる場合、アミノ酸の総量に対するセリンの量、脂質の総量に対するn−3系脂肪酸の量、n−3系脂肪酸の総量に対するエイコサペンタエン酸の含有量等は、複数の組成物に含まれる各成分の合計量から算出される。
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない限り、医薬等の分野において慣用の担体を、必要に応じて含有してもよい。
本発明の組成物が経口医薬等である場合、含有してもよい担体としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン、高分子ポリビニルピロリドン等の結合剤;セルロース及びその誘導体(例、微晶性セルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等の賦形剤;コーンスターチ、前ゼラチン化デンプン、アルギン酸、デキストリン等の膨化剤;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;微粒二酸化ケイ素、メチルセルロース等の流動性改善剤;グリセリン脂肪酸エステル、タルク、ポリエチレングリコール6000等の滑沢剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゼラチン等の増粘剤;ショ糖、乳糖、アスパルテーム等の甘味剤;ペパーミントフレーバー、ワニラフレーバー、チェリーフレーバー、オレンジフレーバー等の香味剤;モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル等の乳化剤;クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゼラチン等の増粘剤;アスパルテーム、カンゾウエキス、サッカリン等の嬌味剤;エリソルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル等の抗酸化剤;安息香酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の防腐剤;ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カルミン、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号等の着色剤;油脂;ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、各種ポリフェノール、ヒロドキシチオソール、抗酸化アミノ酸等の抗酸化剤;シェラック、砂糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリアセチン等の被覆剤;メチルパラベン、プロピルパラベン等の防腐剤;各種ビタミン類;各種アミノ酸類等が挙げられる。
本発明の組成物が非経口医薬等である場合、含有してもよい担体としては、例えば、ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の高級脂肪酸エステル;スクワラン、ラノリン、セタノール等の高級アルコール類;シリコーン油、動植物油脂等の油脂性基剤;エタノール等の低級アルコール類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;α−モノグリセリルエーテル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸金属塩、硫酸マグネシウム等の乳化又は乳化安定剤;芳香剤;防腐剤;色素;増粘剤;酸化防止剤;紫外線防御剤;創傷治癒剤;抗炎症剤;保湿剤;水等が挙げられる。
本発明の組成物は、1回摂取量当たりの単位包装形態とすることができる。本明細書において「1回摂取量当たりの単位包装形態」とは、1回摂取量を1単位として、当該1単位又は2単位以上が包装された形態を意味する。当該包装には、医薬等の包装に通常使用される包材及び包装方法、充填方法(例、分包包装、スティック包装等)が使用できる。
本明細書において「1回摂取量」とは、例えば、本発明の組成物が医薬である場合は、1回に投与される組成物の量である。当該1回摂取量は、摂取する者の年齢、体重、性別等に応じて適宜調節できる。
本発明の組成物の1回摂取量は、組成物の形態、剤形、摂取対象等に応じて適宜設定すればよく特に制限されないが、一般の成人(体重60kg)の場合、0.2〜12.0gが好ましく、より好ましくは0.3〜10.0gであり、特に好ましくは0.5〜8.0gである。本発明の組成物の1回摂取量が上記の範囲内である場合、通常の食事にあまり影響を与えず、持続的な摂取が期待できる。
本発明の組成物は、1回摂取量当たりの単位包装形態である場合、セリンを1単位中0.1g以上(より好ましくは0.2g以上、特に好ましくは0.3g以上)含有することが好ましい。また、当該場合におけるセリンの含有量は、1単位中10.0g以下(より好ましく8.0g以下、特に好ましくは5.0g以下)が好ましい。当該含有量が、1単位中0.1g未満である場合、セリンは、体内のタンパク質の構成成分又はエネルギー源として利用されてしまうため、所望の効果が期待できない傾向にある。また、当該含有量が1単位中10.0gを超える場合、単一のアミノ酸を多量に摂取することになり、アミノ酸バランスの観点からあまり好ましくない。
本発明の組成物が1回摂取量当たりの単位包装形態である場合、スレオニンの含有量は、1単位中0.15g以下(より好ましくは0.1g以下、更に好ましくは0.05g以下、特に好ましくは0.025g以下)であることが好ましい。
本発明の組成物は、1回摂取量当たりの単位包装形態である場合、n−3系脂肪酸を1単位中0.03g以上(より好ましくは0.04g以上、特に好ましくは0.05g以上)含有することが好ましい。また、当該場合におけるn−3系脂肪酸の含有量は、1単位中6.00g以下(より好ましく4.50g以下、特に好ましくは3.00g以下)が好ましい。当該含有量が、1単位中0.03g未満である場合、所望の効果が明確に期待できない傾向にある。また、当該含有量が、1単位中6.00gを超える場合、風味の観点からあまり好ましくない。
本発明の組成物は、n−3系脂肪酸がエイコサペンタエン酸を含有し、且つ、1回摂取量当たりの単位包装形態である場合、エイコサペンタエン酸を、1単位中、好ましくは20〜4000mg、より好ましくは30〜3000mg、特に好ましくは40〜2000mg含有する。
セリンの1日当たりの摂取量は、摂取する者の年齢、性別、体重、食事の状況等に応じて適宜設定し得るが、一般の成人(体重60kg)の場合、通常0.1〜10.0gであり、好ましくは0.2〜8.0gであり、より好ましくは0.3〜5.0gである。
また、n−3系脂肪酸は、日本では、過去の脂質摂取状況に基づき、一般の成人(体重60kg)の場合、1日当たり2g以上摂取することが推奨されている。
エイコサペンタエン酸は、日本では、過去の脂質摂取状況に基づき、一般の成人(体重60kg)の場合、ドコサヘキサエン酸と併せて、1日当たり1g以上摂取することが推奨されている。
本発明の組成物は、セリン、n−3系脂肪酸及びエイコサペンタエン酸の1日当たりの摂取量が、それぞれ上記の範囲内となるように、1日1回〜数回(好ましくは1日1〜3回)摂取されることが好ましい。
本発明の組成物をヒト以外の動物に適用する場合、上記の1回摂取量、1単位中の含有量、1日当たりの摂取量等は、上記の一般の成人における量に基づき、さらに動物の体重又は大きさ、あるいは投与時の動物の体調や感受性等に応じて適宜加減すればよい。
また、本発明の組成物をヒトに適用する場合、本発明の組成物の各成分(セリン等)の用量は、ヒト以外の動物の実験結果に基づいて決定してよい。例えば、ラットを用いた実験の結果からヒトへの用量を推定する場合は、ラットの体重当たりの摂取量とヒトの体重当たりの摂取量とは等しいと仮定できる。従って、例えば後述の実施例において、ラットにL−セリンを10.5mg/体重kgの量で摂取させることが記載されているが、該記載に基づき一般の成人(体重60kg)のL−セリンの摂取量を算出する場合、630mgとなる。同様に、ラットにL−スレオニンを2.0mg/体重kgの量で摂取させるという記載に基づき、一般の成人(体重60kg)のL−スレオニンの摂取量を算出する場合、120mgとなる。
本発明の組成物は、製剤技術分野等において自体公知の方法(例えば、第十六改正日本薬局方に記載の方法等)により製造できる。
本発明の組成物は、末梢神経障害の予防又は改善に有用である。特に、末梢神経障害の過敏性の痛みの軽減に有用である。また、末梢神経障害による活動量低下の予防又は改善にも有用である。
本発明の組成物は、抗がん剤による末梢神経障害の予防又は改善に有用である。抗がん剤による末梢神経障害は、抗がん剤ががんを攻撃するに伴って、患者の体に発生する。その全身における持続的な痛みによって、抗がん剤の治療を中止せざるを得ない場合がある。本発明の組成物は、抗がん剤による末梢神経障害の痛みを軽減し得るため、抗がん剤の治療継続等に有用である。
抗がん剤は、末梢神経障害を引き起こし得る抗がん剤であれば特に制限されないが、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン系抗がん剤;オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン等の白金錯体系抗がん剤;ビンクリスチン等のビンカアルカロイド系抗がん剤;イホスファミド等のアルキル化剤系抗がん剤;メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン等の代謝拮抗性抗がん剤;ドキソルビシン、ブレオマイシン等の抗生物質系抗がん剤等が挙げられる。
本発明の組成物は、変形性膝関節症による末梢神経障害の予防又は改善に有用である。また、本発明の組成物は、廃用性症候群の予防又は改善に有用である。変形性膝関節症は、高齢の女性において高頻度に発生し、ロコモティブシンドロームの代表例である。変形性膝関節症は、ステージが進行するにつれて強い痛みを伴うため、患者(例、高齢者等)の活動量を低減させ、足腰の筋肉を衰えさせる。その結果、より一層膝への負担がかかるようになって、膝関節症が更に悪化し、廃用症候群を発症するという、負のスパイラルに陥る。また、高齢者の外出機会の減少は、鬱症、痴ほう症、自立した生活の継続等にも影響する。本発明の組成物は、膝関節の痛みを軽減し得るため、前述の負のスパイラルからの脱出等に有用である。
末梢神経障害の痛みは、四肢等における感覚器の信号を伝える感覚ニューロンの異常によって起こる。感覚ニューロンの細胞体は脊髄後根神経節に存在し、神経線維を四肢等の末端と脊髄内部とに伸ばすことにより、刺激の信号を伝えている。感覚ニューロンに異常が生じた場合、脊髄後根神経節や脊髄内部の情報が統合される部位等において、過剰脱分極等の異常が起こり、その結果、体の様々な部分で過敏性の痛みが生じる。このような末梢神経障害の過敏性の痛みを生じる疾患としては、例えば、背骨部神経障害(例、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性脊椎症等)、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害、ギラン・バレー症候群等が挙げられる。本発明の組成物は、これらの末梢神経障害の痛みに対し、好ましく用いられる。
片側の手足のみに痛みの発生が偏った場合、痛みが発生した方の手足は運動量が低下する傾向にあり、一方、他方の手足は、低下した運動量を補おうとするため、運動量が増加する傾向にある。その結果、左右の手足の筋肉バランスが崩れ、身体能力が低下することがある。このような筋肉バランスの変化、身体能力の低下は、上記の変形性膝関節症による末梢神経障害の痛みだけでなく、スポーツ、リウマチ、痛風による手足の関節痛等によっても起こり得る。本発明の組成物は、このような筋肉バランスの変化、身体能力の低下に対し、好ましく用いられる。
本発明は、本発明の組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、末梢神経障害の予防又は改善方法、並びに、本発明の組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、末梢神経障害による活動量低下の予防又は改善方法も提供する。
これらの方法は、医療行為を除くものであってよい。ここで「医療行為」とは、医師又は歯科医師によって、あるいは、医師又は歯科医師の指導監督の下で行われる、ヒトを治療、手術又は診断する行為をいう。
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]顆粒状粉体栄養組成物1
表2に示す各成分を、小型のハイスピードミキサー(NSK−150S、岡田精工株式会社製)中で5分間混合した。その後、該混合物に蒸留水および99.5%アルコールを2〜5重量%加え、さらに該ミキサーで5分間混練を行い、湿潤混練物を得た。次に該湿潤混練物を1.0mmφのスクリーンの付いた押出し造粒機を用いて造粒し、得られた成形物を常圧70℃で2時間乾燥した後、整粒して1.05gの顆粒をアルミ製の袋に充填した。このようにして得られた顆粒状粉体栄養組成物1は、24℃の条件下で1年保管した後においても全成分は安定に存在した。また、この顆粒状粉体栄養組成物1は、温水に溶解し栄養剤に混合してしても、使用することができ、イオン飲料とすることもできた。更に香辛料、食塩などの塩類、グルタミン酸ナトリウム、核酸などと混ぜ合わせ、様々な食品に添加できた。
[実施例2]顆粒状粉体栄養組成物2
実施例1において、ハイスピードミキサーの代わりに乳鉢を用いて混練を行い、また押出し造粒機として横型押出し機(有限会社梅谷鉄工所製)を用いた以外は実施例1と同様にして、顆粒状粉体栄養組成物2を得た。
[実施例3]液状組成物カプセル充填品
表3に示す各成分を混合し、総重量が343.747mgになるように、植物性被膜のソフトカプセルに充填し、アルミ製の袋に詰めた。このようにして得られた液状組成物(実施例2−1、2−2)は、24℃、湿度78%の条件下で1年保存した後においても、全ての成分が安定に存在した。
[試験例1]抗がん剤により過敏性の痛みを誘発させたラットにおける、本発明の組成物の、過敏性の痛みの軽減効果についての評価
本発明の組成物の、抗がん剤による過敏性の痛みの軽減効果を、以下の実験により検討した。
6週齢の雄性SDラットを、体重を基に5群(1A群〜1E群、N=6)に群分けし、1A群以外の4群には抗がん剤(Oxaliplatin 5mg/体重kg)を5日間腹腔内投与し、1A群には生理食塩水を5日間腹腔内投与した。また、腹腔内投与の開始と同時に28日間、下記の評価液を毎日1回、明期開始後4〜5時間の時間帯に、経口摂取させた。1D群、1E群に投与したエイコサペンタエン酸には、300mg/体重kgに相当する魚油(n−3系脂肪酸として429mg/体重kg相当量)を用いた。
[1A群〜1E群の評価液]
1A群:蒸留水
1B群:蒸留水
1C群:L−セリン 10.5mg/体重kg
1D群:エイコサペンタエン酸 300mg/体重kg相当量
1E群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 300mg/体重kg相当量
抗がん剤の投与開始から22日後及び28日後にVon Frey試験を実施した。Von Frey試験は、太さの異なるフィラメント(刺激強度:4g、8g、15g)を、それぞれ一定速度で足裏の中央部に直角に押し当てた際の、足を引き込む反応(痛み応答)の有無を観察することによって行った。各フィラメントは、左右の足に対しそれぞれ5回ずつ、計10回押し当てた。押し当てる間隔は、5分間とした。各刺激強度において、フィラメントを押し当てた回数(10回)に対する痛み応答の回数の割合(%)を算出した。
抗がん剤の投与開始から22日後の試験結果を図1に、抗がん剤の投与開始から28日後の試験結果を図2に示す。
図1及び図2の試験結果から明らかなように、抗がん剤の投与開始から22日後及び28日後のいずれにおいても、1B群の痛み応答の回数は、1A群に比べて増加したことから、抗がん剤により過敏性の痛みが誘発されたことが確認された。
セリンを単独投与した群(1C群)では、いずれの刺激強度においても、1B群に比べて、痛み応答の回数が僅かに減少し、過敏性の痛みの軽減効果が認められたが、その程度は有意ではなかった。
エイコサペンタエン酸を単独投与した群(1D群)では、いずれの刺激強度においても、1B群と比べて、痛み応答の回数に変化は殆ど見られなかった。
セリンとエイコサペンタエン酸とを併用投与した群(1E群)では、1B群に比べて、痛み応答の回数が顕著に減少し、有意な過敏性の痛みの軽減効果が認められた。
上記の試験結果から、セリンとn−3系脂肪酸との併用投与により、抗がん剤による過敏性の痛みを、効率良く軽減できると考えられた。
[試験例2]膝関節炎誘発剤(Zymosan)により過敏性の痛みを誘発させたラットにおける、本発明の組成物の、過敏性の痛みの軽減効果についての評価
本発明の組成物の、膝関節炎における過敏性の痛みの軽減効果を、以下の実験により検討した。
8週齢の雄性SDラットを、体重を基に5群(2A群〜2E群、N=7)に群分けし、2A群以外の4群には膝関節炎誘発剤(Zymosan)を右膝軟骨部に2mg投与した。また、右膝への膝関節炎誘発剤の投与から21日間、下記の評価液を毎日1回、明期開始後4〜5時間の時間帯に、経口摂取させた。2D群、2E群に投与したエイコサペンタエン酸には、300mg/体重kgに相当する魚油(n−3系脂肪酸として429mg/体重kg相当量)を用いた。
[2A群〜2E群の評価液]
2A群:蒸留水
2B群:蒸留水
2C群:L−セリン 10.5mg/体重kg
2D群:エイコサペンタエン酸 300mg/体重kg相当量
2E群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 300mg/体重kg相当量
膝関節炎誘発剤の投与から7日後及び14日後に、Von Frey試験を実施した。Von Frey試験は、太さの異なるフィラメント(刺激強度:4g、8g、15g)を、それぞれ一定速度で足裏の中央部に直角に押し当てた際の、足を引き込む反応(痛み応答)の有無を観察することによって行った。各フィラメントは、左右の足に対しそれぞれ5回ずつ押し当てた。押し当てる間隔は、5分間とした。各刺激強度において、フィラメントを押し当てた回数(5回)に対する痛み応答の回数の割合(%)を算出した。
膝関節炎誘発剤の投与から7日後の右足に対する試験結果を図3に、左足に対する試験結果を図4に示す。また、膝関節炎誘発剤の投与から14日後の右足に対する試験結果を図5に、左足に対する試験結果を図6に示す。
評価液の摂取終了後(膝関節炎誘発剤の投与から21日後)に、17時間絶食し、各群の体重、右足及び左足のヒフク筋重量、肝臓重量及び副睾丸周囲脂肪重量を測定した。右足及び左足のヒフク筋重量の測定結果を図7に示す。また、右足のヒフク筋重量と左足のヒフク筋重量との比(右足/左足)を図8に示す。
図3〜6の試験結果から明らかなように、評価液の投与開始から7日後及び14日後(即ち、膝関節炎誘発剤の投与から7日後及び14日後)において、2B群の痛み応答の回数は、膝関節炎誘発剤を投与した右足だけでなく、左足でも、2A群に比べて有意に増加した。
L−セリンを単独投与した群(2C群)では、いずれの刺激強度においても、2B群に比べて、痛み応答の回数が僅かに減少し、過敏性の痛みの軽減効果が認められたが、その程度は有意ではなかった。
エイコサペンタエン酸を単独投与した群(2D群)では、いずれの刺激強度においても、2B群と比べて、痛み応答の回数に変化は殆ど見られなかった。
L−セリンとエイコサペンタエン酸とを併用投与した群(2E群)では、2B群に比べて、痛み応答の回数が顕著に減少した。特に、膝関節炎誘発剤の投与から14日後は、刺激強度8g及び15gにおいて、両足ともに、痛み応答の回数の有意な減少又は減少傾向が認められた。
図7の測定結果から明らかなように、膝関節炎誘発剤を投与した群(2B群〜2E群)の右足のヒフク筋重量は、膝関節炎誘発剤を投与しなかった群(2A群)に比べ、低下傾向が認められた。2C群〜2E群の右足のヒフク筋重量を比較すると、2E群が最も高く、次いで2D群が高く、2C群が最も低かった。また、膝関節炎誘発剤を投与した群は右足をひきずるため、それらの群の左足のヒフク筋重量は、膝関節炎誘発剤を投与しなかった群に比べ、増加傾向が認められた。右足のヒフク筋重量と左足のヒフク筋重量との差は、2B群が最も大きく、1割以上の差が認められた。2C群〜2E群の両足のヒフク筋重の差を比較すると、2C群が最も大きく、次いで2D群が大きく、2E群が最も小さかった。特に2E群では、右足のヒフク筋と左足のヒフク筋とのバランスが有意に回復していることが確認された。
体重、肝臓重量及び副睾丸周囲脂肪重量については、各群間に有意な差は認められなかった。
上記の試験結果から、セリンとn−3系脂肪酸との併用投与による、抗がん剤による過敏性の痛みの軽減作用及び膝関節炎における過敏性の痛みの軽減作用は、いずれも各成分の単独の効果ではなく、セリンとn−3系脂肪酸とが併用されたことによる相乗効果であると考えられた。このように、セリンとn−3系脂肪酸とを併用することの有用性がラットを含む哺乳類で示された。
[試験例3]過敏性の痛みを誘発させたラットにおける、本発明の組成物による過敏性の痛みの軽減効果に対するスレオニンの影響についての評価
本発明の組成物による過敏性の痛みの軽減効果への、スレオニン添加の影響を、以下の実験により検討した。
8週齢の雄性SDラットを、体重を基に6群(3A群〜3F群、N=6)に群分けし、3A群以外の5群には膝関節炎誘発剤(Zymosan)を右膝軟骨部に2mg投与した。また、右膝への膝関節炎誘発剤の投与の翌日から、下記の評価液を毎日1回、明期開始後4〜5時間の時間帯に、経口摂取させた。3C群〜3F群に投与したエイコサペンタエン酸には、100mg/体重kgに相当する魚油(n−3系脂肪酸として143mg/体重kg相当量)を用いた。また以下の通り、3C群〜3F群は、L−セリンの投与量を10mg/体重kgに固定し、L−スレオニンの投与量を0.8〜8.1mg/体重kgに変化させた。
[3A群〜3F群の評価液]
3A群:蒸留水
3B群:蒸留水
3C群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 100mg/体重kg相当量+L−スレオニン 8.1mg/体重kg(L−セリン/L−スレオニン=1.30)
3D群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 100mg/体重kg相当量+L−スレオニン 4.1mg/体重kg(L−セリン/L−スレオニン=2.56)
3E群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 100mg/体重kg相当量+L−スレオニン 2.0mg/体重kg(L−セリン/L−スレオニン=5.25)
3F群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 100mg/体重kg相当量+L−スレオニン 0.8mg/体重kg(L−セリン/L−スレオニン=13.13)
膝関節炎誘発剤の投与から21日後に、Von Frey試験を実施した。Von Frey試験は、太さの異なるフィラメント(刺激強度:4g、8g、15g)を、それぞれ一定速度で足裏の中央部に直角に押し当てた際の、足を引き込む反応(痛み応答)の有無を観察することによって行った。各フィラメントは、右足に対しそれぞれ5回ずつ押し当てた。押し当てる間隔は、5分間とした。各刺激強度において、フィラメントを押し当てた回数(5回)に対する痛み応答の回数の割合(%)を算出した。
膝関節炎誘発剤の投与から21日後の右足に対する試験結果を図9に示す。
図9に示すように、膝関節炎誘発剤を投与した3B群の痛み応答回数は、3A群に比べて有意な増加を認めた。
L−スレオニンの投与量を変化させた3C〜3F群のうち、3C群及び3D群では、3B群に比べて、いずれの刺激強度においても、痛み応答回数の有意な低下は認められなかったが、3E群及び3F群では、多くの刺激強度において有意な低下が認められた。即ち、L−スレオニンに対するL−セリンの重量比(L−セリン/L−スレオニン)が、2.56以下では、過敏性の痛みの軽減効果が認められず、一方、よりL−セリンの比率の高い5.25以上では当該軽減効果が認められた。
上記の試験結果から、本発明の組成物がスレオニンを含有する場合、過敏性の痛みの軽減効果を十分に発揮するには、スレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)が、2.56を超えることが好ましいことが明らかとなった。
[試験例4]過敏性の痛みを誘発させたラットにおける、本発明の組成物による過敏性の痛みの軽減効果に対する食事の影響の評価
本発明の組成物による過敏性の痛みの軽減効果への、食事の影響を、以下の実験により検討した。
8週齢の雄性SDラットを、体重を基に5群(4A群〜4E群、N=6)に群分けし、4A群以外の4群には膝関節炎誘発剤(Zymosan)を右膝軟骨部に2mg投与した。また、右膝への膝関節炎誘発剤の投与の翌日から、下記の評価液を毎日1回、下記の投与時間帯に、経口摂取させた。4C群〜4E群に摂取させたL−セリンの量は10mg/体重kgであり、またEPA(エイコサペンタエン酸)には、100mg/体重kgに相当する魚油(n−3系脂肪酸として143mg/体重kg相当量)を用いた。各群の食事は毎日、暗期開始と同時に行われ、また1回の食事により摂取されるスレオニンの量は、遊離体換算で、313mg/体重kgである。また、1回の食事により摂取されるセリンの量は、遊離体換算値で489mg/体重kgであり、当該食事のスレオニンに対するセリンの重量比(セリン/スレオニン)は1.56となる。
[4A群〜4F群の評価液および投与時間帯]
4A群:蒸留水/明期開始から9時間後の時点で投与
4B群:蒸留水/明期開始から9時間後の時点で投与
4C群:L−セリン+EPA/明期開始から9時間後の時点で投与
4D群:L−セリン+EPA/食事の直前に投与
4E群:L−セリン+EPA/食事から1時間後の時点で投与
膝関節炎誘発剤の投与から14日後に、Von Frey試験を実施した。Von Frey試験は、試験例3と同様の手順で行った。
膝関節炎誘発剤の投与から14日後の右足に対する試験結果を図10に示す。
図10に示すように、膝関節炎誘発剤を投与した4B群の痛み応答回数は、4A群に比べて有意な増加を認めた。
直前の食事から3時間以上離れた時間帯である明期開始から9時間後の時点に、L−セリン及びEPAを投与した4C群では、4B群に比べて、痛み応答回数の有意な低下又は低下傾向が認められた。一方、食事の直前に投与した4D群では、4B群に比べ有意な低下が認められず、4C群に比べて痛み応答回数が増加した。更に、食事から1時間後の時点で投与した4E群は、4B群に比べて、痛み応答回数の有意な低下又は低下傾向が認められたものの、4C群と比べた場合には、刺激強度8gと15gにおいて、痛み応答回数が増加した。
上記の試験結果から、本発明の組成物による過敏性の痛みの軽減作用を十分に発揮するには、本発明の組成物の投与は食事から少なくとも1時間以上離れていることが好ましく、食事からより長時間離れているほど好ましいことが推察された。
[試験例5]過敏性の痛みを誘発させたラットにおける、本発明の組成物の行動量に対する影響
本発明の組成物の行動量に対する影響を、以下の実験により検討した。
8週齢の雄性SDラットを、体重を基に3群(5A群〜5C群、N=6)に群分けし、5A群以外の2群には膝関節炎誘発剤(Zymosan)を右膝軟骨部に2mg投与した。また、右膝への膝関節炎誘発剤の投与の翌日から、下記の評価液を毎日1回、明期開始後4〜5時間の時間帯に、経口摂取させた。5C群に投与したエイコサペンタエン酸には、100mg/体重kgに相当する魚油(n−3系脂肪酸として143mg/体重kg相当量)を用いた。
[5A群〜5C群の評価液]
5A群:蒸留水
5B群:蒸留水
5C群:L−セリン 10.5mg/体重kg+エイコサペンタエン酸 100mg/体重kg相当量
膝関節炎誘発剤の投与から7日後及び14日後に、赤外線センサーを用いた行動量測定装置(SUPERMEX、室町機械株式会社製)によって、終日行動量を測定した。当該7日後及び14日後の暗期(12時間)における行動量の測定結果を図11に示す。
図11に示すように、膝関節炎誘発剤の投与から7日後及び14日後の両日ともに、5B群の行動量は、5A群に比べ低値であることが認められた。5C群では、膝関節炎誘発剤の投与から7日後において、行動量の低下が、5B群における低下の約50%程度に抑えられ、また14日後の行動量は5A群と同じ値まで回復したことが認められた。
上記の試験結果から、本発明の組成物は、過敏性の痛みを軽減し、更に低下した行動量を回復させることも明らかとなった。
本発明によれば、末梢神経障害の予防又は改善用組成物を提供し得る。当該組成物は、特に、末梢神経障害の痛みを軽減する効果を奏し、抗がん剤投与による末梢神経障害、変形性膝関節症による末梢神経障害、背骨部神経障害(例、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性脊椎症等)、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害及びギラン・バレー症候群等に有用である。また、当該組成物は、末梢神経障害による活動量低下を予防又は改善できる。さらに、当該組成物は、安全性が確立しているL−セリン及びn−3系脂肪酸を有効成分とすることから、長期にわたり安全に摂取でき、摂取する者のQOLを高めることができる。
本出願は、日本で出願された特願2014-088051(出願日:2014年4月22日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (11)

  1. セリンを含むアミノ酸及びエイコサペンタエン酸を含む脂質を含有する、末梢神経障害における過敏性の痛みの予防又は改善用組成物。
  2. セリンの量が、アミノ酸の総量に対して50重量%以上である、請求項1記載の組成物。
  3. (1)スレオニンを実質的に含まない、又は(2)スレオニンに対するセリンの重量比が、2.60以上である、請求項1又は2記載の組成物。
  4. エイコサペンタエン酸の量が、脂質の総量に対して20重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 1回摂取量当たりの単位包装形態であり、且つ、セリンを1単位中0.1g以上含有し、エイコサペンタエン酸を1単位中0.03g以上含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害、変形性膝関節症による末梢神経障害、背骨部神経障害、末梢神経幹の機械的圧迫による末梢神経障害、糖尿病性末梢神経障害、腎疾患尿毒性末梢神経障害、帯状疱疹による末梢神経障害及びギラン・バレー症候群からなる群より選ばれるいずれか1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 末梢神経障害が、抗がん剤による末梢神経障害又は変形性膝関節症による末梢神経障害である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  8. セリンを含むアミノ酸及びエイコサペンタエン酸を含む脂質を含有する、末梢神経障害における過敏性の痛みによる活動量低下の予防又は改善用組成物。
  9. 医薬である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. セリンを含むアミノ酸及びエイコサペンタエン酸を含む脂質を含有する組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、末梢神経障害における過敏性の痛みの予防又は改善方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
  11. 末梢神経障害における過敏性の痛みの予防又は改善における使用のための、セリンを含むアミノ酸及びエイコサペンタエン酸を含む脂質を含有する組成物。
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