JP6772774B2 - 遊星ローラ式変速モータ - Google Patents

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Description

本発明は、遊星ローラ式変速装置とモータを組み合わせた遊星ローラ式変速モータに関する。
印刷機や複写機などの用紙の送り機構では、印刷画像の品質を高めるために、回転速度を精密に制御する必要がある。このため、送り機構は、回転ムラの少ない遊星ローラ式変速モータによって駆動されている。
図5に示すように、遊星ローラ式変速モータ70は、遊星ローラ式変速装置71と、モータ72とで構成されている。遊星ローラ式変速装置71は、互いに同軸に配置された固定輪73と太陽軸74との間に、複数の遊星ローラ75を配置し、太陽軸74が回転するときの遊星ローラ75の公転運動をキャリア76の回転として出力している(特許文献1)。
特開2015−113931号公報
特許文献1の遊星ローラ式変速装置71では、モータ主軸77は、遊星ローラ式変速装置71の太陽軸74と連結されている。太陽軸74は、3個の遊星ローラ75によって径方向に予圧が付与された状態で回転支持されているので、径方向には高い剛性を有している。このため、遊星ローラ式変速モータ70では、モータ主軸77が、遊星ローラ式変速装置71と、コイル78の両側に設けられた2つの転がり軸受79,80で回転支持されることとなる。すなわち、モータ主軸77は、軸方向の3箇所で支持されるため、モータ主軸77が真直に形成され、かつ、遊星ローラ式変速装置71及び2つの転がり軸受79,80が完全に同軸に配置されている場合には問題がないが、加工誤差や組立時の変形等によって真直度が低下している場合には「こじり」が生じる。このため、いずれかの支持点で径方向に大きい荷重が生じる場合がある。
特許文献1の構造では、遊星ローラ式変速装置71の剛性が高いので、その他の支持点、すなわち、ロータ82を支持する転がり軸受79,80に径方向の大きい荷重が生じる。このため、転がり軸受79,80の外輪のクリープが発生し、嵌め合い部が摩耗してしまう。クリープとは転がり軸受の外輪とハウジングとの嵌め合い面で相対的な周方向のすべりが生じる現象をいう。この結果、転がり軸受79,80の径方向の位置がずれて、ロータ82とステータ83とが接触し、モータ72の回転不良が生じるという問題がある。
そこで、本発明は、遊星ローラ式変速装置とモータを組み合わせた遊星ローラ式変速モータにおいて、ロータを支持する転がり軸受のクリープを防止して、モータの寿命を向上することを目的としている。
本発明の一形態は、遊星ローラ式変速装置とモータとを備えた遊星ローラ式変速モータであって、前記遊星ローラ式変速装置は、太陽軸と、前記太陽軸の外方に同軸に配置された固定輪と、前記太陽軸及び前記固定輪と転がり接触する複数の遊星ローラとを有しており、前記モータは、ステータと、前記ステータの軸方向両側に形成されたフロントハウジング及びリアハウジングと、軸心にモータ主軸が組み込まれており前記ステータの内側で前記ステータと同軸に回転するロータと、前記フロントハウジングに固定されて前記モータ主軸を回転支持するフロント軸受と、前記リアハウジングに固定されて前記モータ主軸を回転支持するリア軸受とを有しており、前記太陽軸と、前記フロント軸受から突出した前記モータ主軸の端部とが互いに連結されており、前記モータ主軸は、前記フロント軸受で支持されている側では、ラジアル荷重によって変形する可変部を介して径方向に支持されており、前記モータ主軸の径方向の剛性は、前記フロント軸受で支持されている側のほうが、前記リア軸受で支持されている側より小さいことを特徴としている。
本発明によると、遊星ローラ式変速装置とモータを組み合わせた遊星ローラ式変速モータにおいて、ロータを支持する転がり軸受のクリープを防止して、モータの寿命を向上することができる。
図1(a)は、本発明の第1実施形態の軸方向断面におけるフロント軸受組付部の要部拡大図であり、図1(b)は、リア軸受組付部の要部拡大図でる。 本発明の効果を説明する説明図である。 本発明の第2実施形態の軸方向断面における要部拡大図である。 本発明の第3実施形態の軸方向断面における要部拡大図である。 従来の遊星ローラ式変速モータの軸方向断面図である。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態である遊星ローラ式変速モータ10について、図を用いて詳細に説明する。図1(a)は、第1実施形態の遊星ローラ式変速モータ10の軸方向断面における、フロント軸受79の組付部の要部拡大図である。図1(b)は、リア軸受80の組付部の要部拡大図である。第1実施形態では、モータ11のフロント軸受79を固定する部分の形状に特長がある。その他の形態は、従来構造と同等である。そこで、図5によって、共通する構造には同一の符号を付して、遊星ローラ式変速モータ10の構成を説明し、その後、図1(a)、(b)によって、フロント軸受79及びリア軸受80を固定する部分の形態について詳細に説明する。以下の説明では、図5の左側をフロント側といい、右側をリア側という。
図5に示したように、遊星ローラ式変速モータ10は、遊星ローラ式変速装置71と、モータ11とで構成されている。
遊星ローラ式変速装置71は、フロントカバー14と、カップリングフランジ15と、遊星ローラ機構84と、転がり軸受81を有している。
フロントカバー14は、略円板形状で、アルミ合金鋼で製作されている。フロントカバー14の内周には転がり軸受81が組み込まれている。カップリングフランジ15は、有底の円筒形状で、アルミ合金鋼で製作されている。底部には軸方向に貫通するガイド孔16が同軸に設けられている。フロントカバー14とカップリングフランジ15は、遊星ローラ式変速装置71の固定輪73を挟んで、複数のボルト17によって同軸に締結されている。
遊星ローラ機構84は、固定輪73と、太陽軸74と、3個の遊星ローラ75と、キャリア76とで構成される。
固定輪73は、リング状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されている。内周は、研削加工によって円筒形状に仕上げられている。
太陽軸74は、中実の円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されている。外周は、研削加工によって真円形状に仕上げられている。太陽軸74は、遊星ローラ75より軸方向に突出しており、その軸端にカップリング19が固定されている。
遊星ローラ75は、円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されている。外周面及び内周面は、互いに同軸の円筒面であって、外周面は研削加工によって仕上げられている。遊星ローラ75の外周面の直径寸法は、固定輪73の内周と太陽軸74の外周との間の径方向寸法よりわずかに大きい。これにより、遊星ローラ75は、固定輪73及び太陽軸74に対して所定の圧接力を持って転がり接触をしている。3個の遊星ローラ75は、周方向に等間隔に配置されている。
キャリア76は、3本の駆動ピン21と、これらの駆動ピン21を一体に保持する平板状のキャリアプレート22と、出力軸23とで構成されている。
キャリアプレート22は、円板形状で、高炭素鋼で製作されている。駆動ピン21は、中実の円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されており、外周は、研削加工によって仕上げられている。各駆動ピン21は、キャリアプレート22から軸方向に突出しており、それぞれ遊星ローラ75の内周に挿入されている。
出力軸23は、中実の円筒形状で、ステンレス鋼で製作されており、その外周は、研削加工によって仕上げられている。出力軸23は、キャリアプレート22から駆動ピン21と反対向きに軸方向に突出している。出力軸23は、転がり軸受81によって回転軸線mと同軸に回転支持されている。
モータ11は、フロントハウジング25及びリアハウジング26と、ステータ83と、ロータ82と、ロータ82を回転支持するフロント軸受79及びリア軸受80とを備えている。
ロータ82は、略円筒形状のコイル78と、その軸心に沿って圧入されたモータ主軸77とで構成される。モータ主軸77とコイル78との嵌め合い部では、モータ主軸77の外周にローレット加工が施されて複数の軸方向の溝が形成されている。当該溝によって、モータ主軸77とコイル78とが回転方向に固定されている。
モータ主軸77は、コイル78から軸方向両側にそれぞれ突出している。当該突出した部分の外周には研削加工が施されており、それぞれの外周には、フロント軸受79とリア軸受80が締りばめの状態で組み付けられている。フロント軸受79は、フロントハウジング25に組み付けられており、リア軸受80は、リアハウジング26に組み付けられている。フロントハウジング25とリアハウジング26は、それぞれステータ83の軸方向両側にねじ(図示を省略する)で固定されている。こうして、ロータ82は、ステータ83の径方向内方に同軸に嵌め合わされて、ステータ83と同軸に回転することができる。なお、モータ11の運転効率を高めるために、ステータ83とロータ82との径方向のすきまは概ね100μm以下に設定されている。
フロントハウジング25には、円筒形状で軸方向に突出したボス27が、回転軸線mと同軸に形成されている。ボス27のフロント側の軸方向端部が径方向内方に延在しており、フロント軸受位置決め部28が形成されている。モータ11と遊星ローラ式変速装置71とを連結するときには、ボス27をカップリングフランジ15のガイド孔16に嵌め合わせることによって、互いに同軸に配置することができる。このとき、太陽軸74とモータ主軸77とが、カップリング19で連結されている。
カップリング19は、炭素鋼で円筒形状に製作されている。内周には、取付孔が軸線方向に形成されている。取付孔の軸方向の一方の側から太陽軸74が圧入により嵌め合わされている。軸方向の他方の側からモータ主軸77が挿入されており、止めねじで回転方向に固定されている。
次に、図1によって、フロント軸受79とリア軸受80の組付状態について説明する。
フロントハウジング25の内周には、フロント軸受79を挿入するフロント軸受組付部が形成されている。フロント軸受組付部は、略円筒形状の凹部として形成されており、円筒形状の内周面29と、この内周面29のリア側に向けて開口する開口部の近傍に、径方向内方に突出する凸部31(可変部)が形成されている。
フロント軸受79の外径寸法d1は、内周面29の内径寸法D1より小さく、凸部31の内径寸法D2より大きい。したがって、フロント軸受79を装着したときには、凸部31に対して締りばめの状態で組み付けられる。こうして、フロント軸受79は、内周面29との間にわずかなすきまsが形成された状態で、凸部31によって保持されている。
なお、凸部31は、周方向につながって環状に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。軸線を挟んで2カ所以上に形成されることによって、フロント軸受79を回転軸線mと同軸に保持することができる。また、第1実施形態では、凸部31が、内周面29のリア側に向けて開口する開口部の近傍に形成されているが、軸方向のいずれの位置に形成されていてもよい。
第1実施形態では、フロント軸受79にはJIS6000と同等の大きさの深溝玉軸受が使用されている。凸部31の軸方向の幅寸法L1及び径方向の寸法Hは、いずれも1mm程度である。幅寸法L1は、フロント軸受79の幅寸法Wに比べて大幅に小さい値である。ただし、フロント軸受79の大きさ及び凸部31の寸法は一例であり、これに限定されるものではない。
また、フロント軸受79の外輪とフロント軸受位置決め部28とで軸方向に挟まれた空間には、弾性体32が軸方向に圧縮された状態で組み付けられている。弾性体32によって、フロント軸受79の外輪が軸方向に付勢される。これにより、フロント軸受79がすきまの無い状態で組み付けられる。弾性体32には、皿ばねや波板ばねなどが適宜使用される。
リアハウジング26の内周には、リア軸受組付部が形成されている。リア軸受組付部の内周面30は、軸線方向に形成された円筒面である。内周面30の内径寸法D3は、リア軸受80の外径寸法d2と同等かこれよりわずかに大きい寸法である。リアハウジング26では、軸方向のリア側の端部が径方向内方に延在しており、リア軸受位置決め部33が形成されている。リア軸受80の外輪とリア軸受位置決め部33とで軸方向に挟まれた空間には、フロント軸受組付部と同様に、弾性体32が軸方向に圧縮された状態で組み付けられている。
リア軸受80には、フロント軸受79と同等の大きさの深溝玉軸受が使用されている。
第1実施形態の作用効果について説明する。図2は、作用効果を説明するための説明図であって、モータ主軸77の真直度が悪い場合に、各支持点が径方向に変位する様子を示している。図2(a)は、第1実施形態の遊星ローラ式変速モータ10におけるモータ主軸77の支持状態を示しており、図2(b)は、比較例として、従来構造におけるモータ主軸77の支持状態を示している。
77はモータ主軸である。三角のマークは、軸方向の各位置において、モータ主軸77を径方向に支持する支持点を示している。Aはカップリング19の位置を示していて、遊星ローラ式変速装置71によって支持されることを示している。B,Cはそれぞれ、フロント軸受79、リア軸受80の位置を表している、図示を省略したが、支持点Bと支持点Cとの間にはコイル78が組み付けられている。
ここでは説明を簡単にするために、モータ主軸77が、軸方向の略中央でくの字状に曲がった状態を例にして説明する。なお、図2(a)(b)では、モータ主軸77の変形状態を誇張して示している。実際に変形した場合の真直度は、概ね数10μm程度である。
先にも述べたように、遊星ローラ式変速装置71では、太陽軸74が、3個の遊星ローラ75によって径方向に予圧が付与された状態で回転支持されているので、支持点Aにおける剛性は、支持点B,Cに比べて大きい値を有している。
第1実施形態では、フロント軸受79は、フロントハウジング25によって径方向に凸部31を介して支持されている(図2(a)参照)。フロント軸受79にラジアル荷重(回転軸線mに直交する方向の荷重である)が作用したときには、凸部31が圧縮変形する。フロント軸受79とフロント軸受組付部の内周面29との間のすきまsは、凸部31が圧縮変形した場合であっても、フロント軸受79の外周が内周面29と接触しない程度に設定されている。
一方、リア軸受80は、リアハウジング26の内周面30全体で径方向に支持されている。リア軸受80にラジアル荷重が作用したときには、リア軸受80の幅寸法Wと概ね等しい範囲で内周面30が圧縮変形する。
フロント軸受79では、凸部31の幅寸法L1がリア軸受80の幅寸法Wに比べて小さい。第1実施形態では、フロント軸受79の外周面とフロント軸受組付部とが軸方向の一部で当接するだけであるので、単位荷重あたりの圧縮変形量は、フロント軸受79の方が大きい。すなわち、モータ主軸77の径方向の剛性は、フロント軸受79で支持されている側のほうが、リア軸受80で支持されている側より小さい。
剛性とは、単位荷重あたりの変位量で表される値である。例えば、フロントハウジング25及びリアハウジング26を固定した状態で径方向の荷重を負荷したときの、モータ主軸77の単位荷重あたりの径方向の変位量として測定することができる。以下の説明では、径方向の剛性を単に「剛性」という。
このため、図2(a)に示したように、第1実施形態の場合には、モータ主軸77の径方向の変位量δ1は、剛性の高い支持点A及びCの位置では小さく、剛性が最も小さい支持点Bの位置で大きくなる。
フロント軸受79に作用するラジアル荷重は、フロント軸受79の位置(支持点B)における剛性と変位量との積で表される。支持点Bでは、剛性が小さいのでフロント軸受79に作用するラジアル荷重を小さくすることができる。
第1実施形態の効果を明らかにするために、比較例として、従来構造の遊星ローラ式変速モータ70(図5参照)において、リア軸受80で支持されている部位(支持点C)の剛性が、支持点Bの剛性より小さい場合(以下「比較例」という)の支持状態について、図2(b)によって説明する。
比較例のロータ82は、図2(b)に示したように、高い剛性を有する支持点A及びBで支持されるので、最も剛性が小さい支持点Cにおいて、径方向の変位が大きくなる。モータ主軸77の真直度が上記の図2(a)の場合と同等である場合には、比較例の支持点Cにおける径方向の変位量δ2は、第1実施形態の支持点Bにおける径方向の変位量δ1の概ね2倍の大きさとなる。
更に、支持点Bと支持点Cとの間には、重量の大きいコイル78が組み込まれている。
比較例では、モータ主軸77の軸端にある支持点Cの剛性が小さいので、ロータ82の支持状態は、軸方向の一方にある支持点A及びBで支持された、いわゆる片持ち状態である。このため、重量の大きいロータ82が振れ回ることとなり、支持点Cにおけるラジアル荷重が更に大きくなる。こうして、リア軸受80による支持点Cの剛性が低い場合には、クリープが生じやすく、モータ72の回転不良が生じてしまう。
これに対して、図2(a)に示したように、第1実施形態の遊星ローラ式変速モータ10では、ロータ82の軸方向の両端を、高い剛性を有する支持点A及び支持点Cで支持している。これによって、支持点Bの剛性を低くしてフロント軸受79に作用するラジアル荷重を小さくするとともに、軸方向の中央にある支持点Bにおける径方向の変位量δ1を小さくすることができる。こうして、更にフロント軸受79に作用するラジアル荷重を低減することができる。
また、第1実施形態では、ロータ82を軸方向の両端(支持点A及び支持点C)で支持しているので、フロント軸受79及びリア軸受80のいずれにおいても、重量の大きいロータ82の振れ回りによるラジアル荷重が増大することがない。
こうして、モータ主軸77の真直度が悪い場合であっても、ラジアル荷重の増大を抑制できるので、ロータ82を支持する転がり軸受79,80のクリープを防止することができる。これにより、モータ11の寿命を向上することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の遊星ローラ式変速モータ40について説明する。図3は、フロント軸受組付部の要部拡大図である。第2実施形態では、第1実施形態に比べてフロントハウジング42の形態が相違する。その他の形態は、リア軸受80の組付部を含めて第1実施形態と同様である。
フロントハウジング42の内周には、フロント軸受79を挿入するフロント軸受組付部が形成されている。フロント軸受組付部は、有底の円筒形状に形成されている。フロント軸受組付部の内周面44は、軸線方向に形成された円筒面である。内周面44の内径寸法D4は、フロント軸受79の外径寸法d1と同等かこれよりわずかに大きい寸法である。フロント軸受79には、JIS6000と同等の大きさの深溝玉軸受が使用されている。
フロントハウジング42には、円筒形状で軸方向に突出したボス27が、回転軸線mと同軸に形成されている。ボス27では、フロント側の軸方向端部が径方向内方に延在しており、フロント軸受位置決め部28が形成されている。フロント軸受79の外輪とフロント軸受位置決め部28とで軸方向に挟まれた空間には、弾性体32が軸方向に圧縮された状態で組み付けられている。
モータ11と遊星ローラ式変速装置71とを連結するときには、ボス27をカップリングフランジ15のガイド孔16に嵌め合わせることによって、互いに同軸に配置することができる。
ボス27には、フロント軸受組付部の内周面44より径方向外方に環状凹部43(可変部)が形成されている。環状凹部43は、内周面44と同軸の環状で、ボス27のフロント側端面から全周にわたって軸方向に所定の深さまで形成されている。こうして、環状凹部43はフロントハウジング42の軸方向の一方側に開口するとともに、軸方向の他方の側(環状凹部43の底である)には、径方向につながる撓み部45が形成されている。
フロントハウジング42をアルミダイカストで製造する場合には、環状凹部43を型で形成することができる。したがって、機械加工をする必要がないのでフロントハウジング42を安価に製造することができる。
第2実施形態では、フロント軸受79にラジアル荷重が作用したときには、撓み部45が変形することによって、フロント軸受79が径方向に変位することができる。また、第1実施形態と同様に、リア軸受80は、リアハウジング26の内周面30全体で支持されている。
このため、モータ主軸77の径方向の剛性は、フロント軸受79で支持されている側のほうが、リア軸受80で支持されている側より小さい。
したがって、第1実施形態の場合と同様に、真直度が悪いモータ主軸77が組み込まれたときには、モータ主軸77の径方向の変位は、剛性の高い支持点A及びCの位置では小さく、剛性が最も小さい支持点Bの位置で大きくなる(図2(a)参照)。フロント軸受79に作用するラジアル荷重は、フロント軸受79の位置(支持点B)における剛性と変位量との積で表される。支持点Bでは、剛性が小さいのでフロント軸受79に作用するラジアル荷重を小さくすることができる。
更に、ロータ82の軸方向の両端を、高い剛性を有する支持点A及び支持点Cで支持することによって、その中央にある支持点Bにおける径方向の変位量δ1を小さくすることができる。これによって、更にフロント軸受79に作用するラジアル荷重を低減することができる。
また、第1実施形態と同様に、ロータ82を軸方向の両端(支持点A及び支持点C)で支持しているので、フロント軸受79及びリア軸受80のいずれにおいても、ロータ82の振れ回りによるラジアル荷重が増大することがない。
こうして、第2実施形態の遊星ローラ式変速モータ40では、モータ主軸77の真直度が悪い場合であっても、ラジアル荷重の増大を抑制できるので、ロータ82を支持する転がり軸受79,80のクリープを防止することができる。更に、フロントハウジング42を安価に製造できるので、モータ11の製造コストを低減するとともに、モータ11の寿命を向上することができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の遊星ローラ式変速モータ50について説明する。図4は、フロント軸受組付部の要部拡大図である。第3実施形態では、第1実施形態に比べて、フロントハウジング54及びモータ主軸52の形態が相違する。その他の形態は、リア軸受80の組付部を含めて第1実施形態と同様である。
フロントハウジング54の内周には、フロント軸受79を挿入するフロント軸受組付部が形成されている。フロント軸受組付部は、有底の円筒形状に形成されている。フロント軸受組付部では、ボス27のフロント側の軸方向端部が径方向内方に延在しており、フロント軸受位置決め部28が形成されている。
フロント軸受組付部には、円筒形状の内周面44が軸線方向に形成されている。内周面44の内径寸法D5は、フロント軸受79の外径寸法d1と同等かこれよりわずかに大きい寸法である。フロント軸受79の外輪とフロント軸受位置決め部28とで軸方向に挟まれた空間には、弾性体32が軸方向に圧縮された状態で組み付けられている。
モータ主軸52には、小径軸部56が形成されることによって、全周にわたって環状溝55が形成されている。小径軸部56は、外周が回転軸線mと同軸の円筒形状であって、その外径寸法d3はモータ主軸52の外径寸法d0に比べて小径である。
小径軸部56は、フロント軸受79とおおむね軸方向に重なる位置に形成されている。
環状溝55のフロント側の端Poは、フロント軸受79よりフロント側にある。したがって、環状溝55よりフロント側では、モータ主軸52の外周とフロント軸受79とは接触していない。これによって、環状溝55よりフロント側では、モータ主軸52の外周とフロント軸受79との間に非接触部が形成されている。
環状溝55のリア側の端Piは、フロント軸受79の径方向内方にあり、環状溝55よりリア側では、モータ主軸52がフロント軸受79の内周に嵌め合わされている。これによって、環状溝55よりリア側では、モータ主軸52の外周とフロント軸受79との間に接触部が形成されている。フロント軸受79とモータ主軸52とが嵌め合わされている部分(接触部)の軸方向長さL2は、1mm程度であり、フロント軸受79の幅寸法Wに比べて大幅に小さい値である。
こうして、第3実施形態では、フロント軸受79と軸方向でおおむね重なる位置で、モータ主軸52の全周にわたって形成された環状溝55と、環状溝55よりフロント側に形成された非接触部と、環状溝55よりリア側に形成された接触部とによって、可変部が構成されている。
第3実施形態では、フロント軸受79にラジアル荷重が作用したときには、軸方向長さがL2の接触部で、フロント軸受79の内周とモータ主軸52の外周とがそれぞれ径方向に弾性変形する。
一方、リア軸受80では、リア軸受80の内周面30全体で支持されている(図1(b)参照)。このため、リア軸受80にモータ主軸52からラジアル荷重が作用したときには、概ねリア軸受80の幅寸法Wと等しい範囲で内周面30が圧縮変形する。
フロント軸受79では、モータ主軸52がフロント軸受79の内周面34と軸方向の一部で当接するだけであり、嵌め合い部の軸方向寸法L2がリア軸受80の幅寸法Wに比べて小さいので、単位荷重あたりの圧縮変形量は、リア軸受80よりフロント軸受79の方が大きい。すなわち、モータ主軸52の径方向の剛性は、フロント軸受79で支持されている側のほうが、リア軸受80で支持されている側より小さい。
このため、第1実施形態の場合と同様に、モータ主軸52の径方向の変位は、剛性の高い支持点A及びCの位置では小さく、剛性が最も小さい支持点Bの位置で大きくなる(図2(a)参照)。
フロント軸受79に作用するラジアル荷重は、フロント軸受79の位置(支持点B)における剛性と変位量との積で表される。支持点Bでは、剛性が小さいのでフロント軸受79に作用するラジアル荷重を小さくすることができる。
更に、ロータ82の軸方向の両端を、高い剛性を有する支持点A及び支持点Cで支持することによって、その中央にある支持点Bにおける径方向の変位量δ1を小さくすることができる。これによって、更にフロント軸受79に作用するラジアル荷重を低減することができる。
また、第3実施形態のモータ主軸52には、フロント軸受79より遊星ローラ式変速装置71の側に小径軸部56が設けられ、かつ、フロント軸受79のコイル78側では、モータ主軸52がフロント軸受79に嵌め合わされている。このため、フロント軸受79より遊星ローラ式変速装置71の側において、モータ主軸52の曲げ剛性が低減されている。
このため、モータ主軸52の真直度が悪い場合であっても、小径軸部56が変形することによって真直度が悪いことによる「こじり」を吸収できるので、支持点Bに生じるラジアル荷重を低減することができる。
更に、環状溝55をフロント軸受79の内側に形成することによって、小径軸部56がフロント軸受79とおおむね軸方向に重なる位置に形成されている。このため、モータ11の軸方向寸法の増大を抑制できるので、遊星ローラ式変速モータ50をコンパクトにすることができる。
こうして、第3実施形態の遊星ローラ式変速モータ50では、モータ主軸52の真直度が悪い場合であっても、ラジアル荷重の増大を更に抑制できるので、ロータ82を支持する転がり軸受79,80のクリープをさらに確実に防止することができる。これにより、モータ11の寿命を更に向上することができる。
(第1実施形態)10:遊星ローラ式変速モータ、11:モータ、25:フロントハウジング、26:リアハウジング、27:ボス、29:内周面(フロント)、30:内周面(リア)、31:凸部、32:弾性体、
(第2実施形態)40:遊星ローラ式変速モータ、42:フロントハウジング、43:環状凹部、44:内周面、45:撓み部、
(第3実施形態)50:遊星ローラ式変速モータ、52:モータ主軸、54:フロントハウジング、55:環状溝、56:小径軸部、
(従来技術)70:遊星ローラ式変速モータ、71:遊星ローラ式変速装置、72:モータ、73:固定輪、74:太陽軸、75:遊星ローラ、76:キャリア、77:モータ主軸、78:コイル、79:転がり軸受(フロント軸受)、80:転がり軸受(リア軸受)、81:転がり軸受(遊星出力)、82:ロータ、83:ステータ、14:フロントカバー、15:カップリングフランジ、19:カップリング、21:駆動ピン、22:キャリアプレート、23:出力軸

Claims (4)

  1. 遊星ローラ式変速装置とモータとを備えた遊星ローラ式変速モータであって、
    前記遊星ローラ式変速装置は、太陽軸と、前記太陽軸の外方に同軸に配置された固定輪と、前記太陽軸及び前記固定輪と転がり接触する複数の遊星ローラとを有しており、
    前記モータは、ステータと、前記ステータの軸方向両側に形成されたフロントハウジング及びリアハウジングと、軸心にモータ主軸が組み込まれており前記ステータの内側で前記ステータと同軸に回転するロータと、前記フロントハウジングに固定されて前記モータ主軸を回転支持するフロント軸受と、前記リアハウジングに固定されて前記モータ主軸を回転支持するリア軸受とを有しており、
    前記太陽軸と、前記フロント軸受から突出した前記モータ主軸の端部とが互いに連結されており、
    前記モータ主軸は、前記フロント軸受で支持されている側では、ラジアル荷重によって変形する可変部を介して径方向に支持されており、前記モータ主軸の径方向の剛性は、前記フロント軸受で支持されている側のほうが、前記リア軸受で支持されている側より小さいことを特徴とする遊星ローラ式変速モータ。
  2. 前記フロントハウジングは、前記フロント軸受が挿入される円筒形状の内周面を備えており、
    前記内周面の内径寸法は、前記フロント軸受の外径寸法より大きく、
    前記可変部は、前記内周面から径方向内方に突出し、前記フロント軸受の外周面と軸方向の一部で当接する凸部であることを特徴とする請求項1に記載する遊星ローラ式変速モータ。
  3. 前記フロントハウジングは、前記フロント軸受が挿入される円筒形状の内周面を備えており、
    前記可変部は、前記フロントハウジングの前記内周面より径方向外方で環状に形成されるとともに軸方向の一方側に開口する環状凹部であることを特徴とする請求項1に記載する遊星ローラ式変速モータ。
  4. 前記フロント軸受は、前記モータ主軸の外周に嵌め合わされており、
    前記可変部は、
    前記フロント軸受と軸方向でおおむね重なる位置で、前記モータ主軸の外周の全周にわたって形成された環状溝と、
    前記環状溝より前記太陽軸の側において、前記モータ主軸の外周と前記フロント軸受の内周とが互いに接触しない非接触部と、
    前記環状溝より前記太陽軸の反対側において、前記モータ主軸の外周と前記フロント軸受の内周の軸方向の一部とが互いに嵌め合わされた接触部と、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載する遊星ローラ式変速モータ。
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