JP6772774B2 - 遊星ローラ式変速モータ - Google Patents
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Description
図5に示すように、遊星ローラ式変速モータ70は、遊星ローラ式変速装置71と、モータ72とで構成されている。遊星ローラ式変速装置71は、互いに同軸に配置された固定輪73と太陽軸74との間に、複数の遊星ローラ75を配置し、太陽軸74が回転するときの遊星ローラ75の公転運動をキャリア76の回転として出力している(特許文献1)。
本発明の第1実施形態である遊星ローラ式変速モータ10について、図を用いて詳細に説明する。図1(a)は、第1実施形態の遊星ローラ式変速モータ10の軸方向断面における、フロント軸受79の組付部の要部拡大図である。図1(b)は、リア軸受80の組付部の要部拡大図である。第1実施形態では、モータ11のフロント軸受79を固定する部分の形状に特長がある。その他の形態は、従来構造と同等である。そこで、図5によって、共通する構造には同一の符号を付して、遊星ローラ式変速モータ10の構成を説明し、その後、図1(a)、(b)によって、フロント軸受79及びリア軸受80を固定する部分の形態について詳細に説明する。以下の説明では、図5の左側をフロント側といい、右側をリア側という。
フロントカバー14は、略円板形状で、アルミ合金鋼で製作されている。フロントカバー14の内周には転がり軸受81が組み込まれている。カップリングフランジ15は、有底の円筒形状で、アルミ合金鋼で製作されている。底部には軸方向に貫通するガイド孔16が同軸に設けられている。フロントカバー14とカップリングフランジ15は、遊星ローラ式変速装置71の固定輪73を挟んで、複数のボルト17によって同軸に締結されている。
太陽軸74は、中実の円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されている。外周は、研削加工によって真円形状に仕上げられている。太陽軸74は、遊星ローラ75より軸方向に突出しており、その軸端にカップリング19が固定されている。
キャリアプレート22は、円板形状で、高炭素鋼で製作されている。駆動ピン21は、中実の円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されており、外周は、研削加工によって仕上げられている。各駆動ピン21は、キャリアプレート22から軸方向に突出しており、それぞれ遊星ローラ75の内周に挿入されている。
出力軸23は、中実の円筒形状で、ステンレス鋼で製作されており、その外周は、研削加工によって仕上げられている。出力軸23は、キャリアプレート22から駆動ピン21と反対向きに軸方向に突出している。出力軸23は、転がり軸受81によって回転軸線mと同軸に回転支持されている。
ロータ82は、略円筒形状のコイル78と、その軸心に沿って圧入されたモータ主軸77とで構成される。モータ主軸77とコイル78との嵌め合い部では、モータ主軸77の外周にローレット加工が施されて複数の軸方向の溝が形成されている。当該溝によって、モータ主軸77とコイル78とが回転方向に固定されている。
カップリング19は、炭素鋼で円筒形状に製作されている。内周には、取付孔が軸線方向に形成されている。取付孔の軸方向の一方の側から太陽軸74が圧入により嵌め合わされている。軸方向の他方の側からモータ主軸77が挿入されており、止めねじで回転方向に固定されている。
フロント軸受79の外径寸法d1は、内周面29の内径寸法D1より小さく、凸部31の内径寸法D2より大きい。したがって、フロント軸受79を装着したときには、凸部31に対して締りばめの状態で組み付けられる。こうして、フロント軸受79は、内周面29との間にわずかなすきまsが形成された状態で、凸部31によって保持されている。
なお、凸部31は、周方向につながって環状に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。軸線を挟んで2カ所以上に形成されることによって、フロント軸受79を回転軸線mと同軸に保持することができる。また、第1実施形態では、凸部31が、内周面29のリア側に向けて開口する開口部の近傍に形成されているが、軸方向のいずれの位置に形成されていてもよい。
リア軸受80には、フロント軸受79と同等の大きさの深溝玉軸受が使用されている。
ここでは説明を簡単にするために、モータ主軸77が、軸方向の略中央でくの字状に曲がった状態を例にして説明する。なお、図2(a)(b)では、モータ主軸77の変形状態を誇張して示している。実際に変形した場合の真直度は、概ね数10μm程度である。
剛性とは、単位荷重あたりの変位量で表される値である。例えば、フロントハウジング25及びリアハウジング26を固定した状態で径方向の荷重を負荷したときの、モータ主軸77の単位荷重あたりの径方向の変位量として測定することができる。以下の説明では、径方向の剛性を単に「剛性」という。
フロント軸受79に作用するラジアル荷重は、フロント軸受79の位置(支持点B)における剛性と変位量との積で表される。支持点Bでは、剛性が小さいのでフロント軸受79に作用するラジアル荷重を小さくすることができる。
比較例のロータ82は、図2(b)に示したように、高い剛性を有する支持点A及びBで支持されるので、最も剛性が小さい支持点Cにおいて、径方向の変位が大きくなる。モータ主軸77の真直度が上記の図2(a)の場合と同等である場合には、比較例の支持点Cにおける径方向の変位量δ2は、第1実施形態の支持点Bにおける径方向の変位量δ1の概ね2倍の大きさとなる。
比較例では、モータ主軸77の軸端にある支持点Cの剛性が小さいので、ロータ82の支持状態は、軸方向の一方にある支持点A及びBで支持された、いわゆる片持ち状態である。このため、重量の大きいロータ82が振れ回ることとなり、支持点Cにおけるラジアル荷重が更に大きくなる。こうして、リア軸受80による支持点Cの剛性が低い場合には、クリープが生じやすく、モータ72の回転不良が生じてしまう。
また、第1実施形態では、ロータ82を軸方向の両端(支持点A及び支持点C)で支持しているので、フロント軸受79及びリア軸受80のいずれにおいても、重量の大きいロータ82の振れ回りによるラジアル荷重が増大することがない。
こうして、モータ主軸77の真直度が悪い場合であっても、ラジアル荷重の増大を抑制できるので、ロータ82を支持する転がり軸受79,80のクリープを防止することができる。これにより、モータ11の寿命を向上することができる。
本発明の第2実施形態の遊星ローラ式変速モータ40について説明する。図3は、フロント軸受組付部の要部拡大図である。第2実施形態では、第1実施形態に比べてフロントハウジング42の形態が相違する。その他の形態は、リア軸受80の組付部を含めて第1実施形態と同様である。
モータ11と遊星ローラ式変速装置71とを連結するときには、ボス27をカップリングフランジ15のガイド孔16に嵌め合わせることによって、互いに同軸に配置することができる。
フロントハウジング42をアルミダイカストで製造する場合には、環状凹部43を型で形成することができる。したがって、機械加工をする必要がないのでフロントハウジング42を安価に製造することができる。
このため、モータ主軸77の径方向の剛性は、フロント軸受79で支持されている側のほうが、リア軸受80で支持されている側より小さい。
本発明の第3実施形態の遊星ローラ式変速モータ50について説明する。図4は、フロント軸受組付部の要部拡大図である。第3実施形態では、第1実施形態に比べて、フロントハウジング54及びモータ主軸52の形態が相違する。その他の形態は、リア軸受80の組付部を含めて第1実施形態と同様である。
フロント軸受組付部には、円筒形状の内周面44が軸線方向に形成されている。内周面44の内径寸法D5は、フロント軸受79の外径寸法d1と同等かこれよりわずかに大きい寸法である。フロント軸受79の外輪とフロント軸受位置決め部28とで軸方向に挟まれた空間には、弾性体32が軸方向に圧縮された状態で組み付けられている。
小径軸部56は、フロント軸受79とおおむね軸方向に重なる位置に形成されている。
環状溝55のフロント側の端Poは、フロント軸受79よりフロント側にある。したがって、環状溝55よりフロント側では、モータ主軸52の外周とフロント軸受79とは接触していない。これによって、環状溝55よりフロント側では、モータ主軸52の外周とフロント軸受79との間に非接触部が形成されている。
環状溝55のリア側の端Piは、フロント軸受79の径方向内方にあり、環状溝55よりリア側では、モータ主軸52がフロント軸受79の内周に嵌め合わされている。これによって、環状溝55よりリア側では、モータ主軸52の外周とフロント軸受79との間に接触部が形成されている。フロント軸受79とモータ主軸52とが嵌め合わされている部分(接触部)の軸方向長さL2は、1mm程度であり、フロント軸受79の幅寸法Wに比べて大幅に小さい値である。
こうして、第3実施形態では、フロント軸受79と軸方向でおおむね重なる位置で、モータ主軸52の全周にわたって形成された環状溝55と、環状溝55よりフロント側に形成された非接触部と、環状溝55よりリア側に形成された接触部とによって、可変部が構成されている。
一方、リア軸受80では、リア軸受80の内周面30全体で支持されている(図1(b)参照)。このため、リア軸受80にモータ主軸52からラジアル荷重が作用したときには、概ねリア軸受80の幅寸法Wと等しい範囲で内周面30が圧縮変形する。
フロント軸受79では、モータ主軸52がフロント軸受79の内周面34と軸方向の一部で当接するだけであり、嵌め合い部の軸方向寸法L2がリア軸受80の幅寸法Wに比べて小さいので、単位荷重あたりの圧縮変形量は、リア軸受80よりフロント軸受79の方が大きい。すなわち、モータ主軸52の径方向の剛性は、フロント軸受79で支持されている側のほうが、リア軸受80で支持されている側より小さい。
フロント軸受79に作用するラジアル荷重は、フロント軸受79の位置(支持点B)における剛性と変位量との積で表される。支持点Bでは、剛性が小さいのでフロント軸受79に作用するラジアル荷重を小さくすることができる。
このため、モータ主軸52の真直度が悪い場合であっても、小径軸部56が変形することによって真直度が悪いことによる「こじり」を吸収できるので、支持点Bに生じるラジアル荷重を低減することができる。
(第2実施形態)40:遊星ローラ式変速モータ、42:フロントハウジング、43:環状凹部、44:内周面、45:撓み部、
(第3実施形態)50:遊星ローラ式変速モータ、52:モータ主軸、54:フロントハウジング、55:環状溝、56:小径軸部、
(従来技術)70:遊星ローラ式変速モータ、71:遊星ローラ式変速装置、72:モータ、73:固定輪、74:太陽軸、75:遊星ローラ、76:キャリア、77:モータ主軸、78:コイル、79:転がり軸受(フロント軸受)、80:転がり軸受(リア軸受)、81:転がり軸受(遊星出力)、82:ロータ、83:ステータ、14:フロントカバー、15:カップリングフランジ、19:カップリング、21:駆動ピン、22:キャリアプレート、23:出力軸
Claims (4)
- 遊星ローラ式変速装置とモータとを備えた遊星ローラ式変速モータであって、
前記遊星ローラ式変速装置は、太陽軸と、前記太陽軸の外方に同軸に配置された固定輪と、前記太陽軸及び前記固定輪と転がり接触する複数の遊星ローラとを有しており、
前記モータは、ステータと、前記ステータの軸方向両側に形成されたフロントハウジング及びリアハウジングと、軸心にモータ主軸が組み込まれており前記ステータの内側で前記ステータと同軸に回転するロータと、前記フロントハウジングに固定されて前記モータ主軸を回転支持するフロント軸受と、前記リアハウジングに固定されて前記モータ主軸を回転支持するリア軸受とを有しており、
前記太陽軸と、前記フロント軸受から突出した前記モータ主軸の端部とが互いに連結されており、
前記モータ主軸は、前記フロント軸受で支持されている側では、ラジアル荷重によって変形する可変部を介して径方向に支持されており、前記モータ主軸の径方向の剛性は、前記フロント軸受で支持されている側のほうが、前記リア軸受で支持されている側より小さいことを特徴とする遊星ローラ式変速モータ。 - 前記フロントハウジングは、前記フロント軸受が挿入される円筒形状の内周面を備えており、
前記内周面の内径寸法は、前記フロント軸受の外径寸法より大きく、
前記可変部は、前記内周面から径方向内方に突出し、前記フロント軸受の外周面と軸方向の一部で当接する凸部であることを特徴とする請求項1に記載する遊星ローラ式変速モータ。 - 前記フロントハウジングは、前記フロント軸受が挿入される円筒形状の内周面を備えており、
前記可変部は、前記フロントハウジングの前記内周面より径方向外方で環状に形成されるとともに軸方向の一方側に開口する環状凹部であることを特徴とする請求項1に記載する遊星ローラ式変速モータ。 - 前記フロント軸受は、前記モータ主軸の外周に嵌め合わされており、
前記可変部は、
前記フロント軸受と軸方向でおおむね重なる位置で、前記モータ主軸の外周の全周にわたって形成された環状溝と、
前記環状溝より前記太陽軸の側において、前記モータ主軸の外周と前記フロント軸受の内周とが互いに接触しない非接触部と、
前記環状溝より前記太陽軸の反対側において、前記モータ主軸の外周と前記フロント軸受の内周の軸方向の一部とが互いに嵌め合わされた接触部と、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載する遊星ローラ式変速モータ。
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