JP6770433B2 - リグニンベースの防水コーティング - Google Patents

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Description

本発明は、コーティング技術分野に関する。より詳細には、本発明は、基層上に防水コーティングを形成する方法、およびその方法において使用するための組成物に関する。
本明細書において背景技術を参照するが、そのような技術が豪国などにおいて常識を構成することを認めるものであるとは解釈すべきでない。
様々な基層上に防水コーティングを使用することは、広範囲の用途において一般に行われている。一例として、食品包装や輸送産業において使用される紙および板紙製品の防水がある。これらの用途においては、食品を水分の浸入から保護することが重要である。水分は、食品の品質に影響を与え、さらには腐らせるおそれがある。また、防水コーティングは、水分の多い環境においても包装の構造を良好に保つ。
厚紙および段ボール紙包装の既存の防水コーティングは、ろう製であることが多い。ろうは、水に対しては有効なバリアとなり得るが、リサイクルが困難である。その他に、様々な高分子疎水性成分とともに充填剤などを含む防水コーティングが知られている。これらの充填剤や他の薬品は、紙の基層を実際の防水剤の貼付に適した状態にさせるために一般に必要とされる。このためには、調製物において、個々の成分のすべてがそれぞれの効果を発揮するように、pHおよび温度条件が最適となるような、微妙なバランスを得ることが必要である。
これらの充填剤および他の調製剤は、性能が十分でないことが多いので、一般に、コーティング調製物は、効果を得るために必要とされる成分の数の点で複雑となる。また、これらの多機能成分が存在することによって、消費者に対するコストが増加する。
特許文献1は、溶媒の混合物中にて紙製品をリグニンスルホン酸/クラフトリグニン配合調製物を用いて処理して、強度および耐湿性(高湿環境における強度の保存として説明される)を向上させる組成物および方法を教示する。この処理は、調製物が紙に浸透して繊維を結合することに基づき、ここで必要に応じて糖を使用してリグニンが浸透することを助け、また必要に応じて加熱する。特許文献1は、防水バリア性を提供しないが、初期耐水性においてある程度の偶発的な向上が見られる。また、特許文献1は、十分な浸透を達成するために調製物のコーティング重量を非常に大きくする必要があり、また調製物中に溶解していない固形物の量が著しく大きく、望ましくない。
特許文献2は、酸化リグニンを生成し、次いでこれを木質繊維に対する結合剤として使用する。木質繊維は、ホットプレスを施されて最終のパーティクルボードを形成する。ある程度の耐水性があるとされるが、この処理は、主にリグニンを結合剤として使用するが、有用な防水バリアは得られない。また、これは、リグニンに対して不必要に複雑な前処理工程に基づく。
簡単、有効かつリサイクル可能な防水コーティングを紙または紙製品などの基層上に形成する方法を提供できれば有用である。
国際公開第2000/028141号 露国特許第2076125号明細書
本発明の目的は、上記短所または問題のうちの一つ以上を克服または改良するか、または少なくとも有用な代替物を提供する、基層のための防水コーティングを提供することである。
本発明の他の好適な目的は、以下の記載から明らかとなる。
本発明の第1の局面によると、基層上にコーティングを形成する方法であって、
(a)リグニンを溶媒中に少なくとも部分的に溶解させることによってリグニン溶液を生成する工程と、
(b)前記リグニン溶液を前記基層上にコーティングする工程と、
(c)前記リグニンでコーティングされた基層に対して、熱処理および酸処理からなる群から選択される処理を行う工程と
を含み、これによって、前記基層上に前記コーティングを形成する方法が提供される。
好ましくは、前記リグニンは、ソーダ、ソーダ−アントラキノン、オルガノソルブパルプ化リカー、クラフトブラックリカー、リグノセルロースまたは任意の植物由来のリグニン含有バイオマス材料から得られる。亜硫酸パルプ化の使用済みパルプ化液(レッドまたはブラウンリカー)から回収されたリグニンスルホン酸は、有用であり得るが、あまり好適ではない。また、パルプ化および分離処理由来のリグニンの化学的改変(例えば、リグニンスルホン酸からスルホン酸基を除去)により得られるリグニンベースの化合物を使用してもよい。
前記リグニン溶液は、主防水剤としてリグニンを含む。一実施形態において、前記リグニン溶液は、本質的に活性防水剤としてのリグニンからなる。一実施形態において、前記リグニン溶液は、唯一の防水剤としてリグニンを含む。
前記リグニン溶液は、主強度増加剤としてリグニンを含む。一実施形態において、前記リグニン溶液は、本質的に活性強度増加剤としてのリグニンからなる。一実施形態において、前記リグニン溶液は、唯一の強度増加剤としてリグニンを含む。
一実施形態において、前記リグニン溶液は、実質的に唯一の非溶媒成分としてリグニンを含む。
本発明の第2の局面は、主活性成分として、溶媒に少なくとも部分的に溶解されるリグニンを含む組成物である。
一実施形態において、前記リグニンは、実質的に完全に前記溶媒に溶解する。
前記組成物は、第1の局面について記載した通りであってもよい。好ましくは、前記溶媒は、アルカリ性溶液が生成されるような溶媒である。
一実施形態において、前記組成物は、本質的に活性成分としてのリグニンからなる。
さらなる実施形態において、前記組成物は、活性成分としてのリグニンからなる。
前記組成物は、第1の局面について記載したように、脱臭剤および/または可塑剤をさらに含んでもよい。
本発明の第3の局面によると、基層上にコーティングを形成するための第2の局面の前記組成物の使用が提供される。
前記使用は、前記第1の局面に関連してなされた各説明の通りであるが、これらの説明のそれぞれは、あたかも第3の局面について明示的になされたとみなすことができる。
本発明の第4の局面は、第1の局面の前記方法によって形成されたコーティングを含む基層である。
前記基層は、第1の局面について記載した通りであってもよい。
上記各項に記載の本発明の種々の特徴および実施形態は、他項に適宜準用される。したがって、一つの項に記載の特徴を他項に記載の特徴と適宜組み合わせてもよい。
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な記載により明らかとなる。
本発明を容易に理解し、実施し得るようにするために、以下に好適な実施形態を例として添付の図面を詳細して説明する。
図1は、本発明のリグニン組成物についての、アニーリング温度が防水コーティングに与える影響を表すグラフである。 図2は、本発明の脱臭化リグニン組成物についての、アニーリング温度が防水コーティングに与える影響を表すグラフである。 図3は、本発明のリグニン組成物についての、コーティング重量が防水コーティングに与える影響を表すグラフである。 図4は、アニーリング温度および時間の両方がコーティング品質に与える影響を表すグラフである。 図5は、異なるコーティング塗布量(ロッド1〜ロッド8)およびアニーリング条件(140、160および180℃)において、ライナーボード上にコーティングされたリグニンおよび20%のグリセロールを含む調製物から得られたCobb値を表すグラフである。 図6は、異なるコーティング塗布量およびアニーリング条件(160、180および220℃)において、ライナーボード上にコーティングされたリグニンおよび10%のグリセロールを含む調製物から得られたCobb値を表すグラフである。 図7は、異なるアニーリング時間を用いた場合の、ライナーボード上にコーティングされたリグニンおよび20%のグリセロールを含む調製物から得られたCobb値を表すグラフである。
本発明は、ある実施形態において、紙をリグニンの簡単な溶液でコーティングすることによって、非常に有効な防水および/または強化コーティングを紙の上に形成することができるという発見に、少なくとも部分的に、基づく。さらなる実施形態において、コーティングは、リグニンおよびグリセロールを用いて形成することができる。次いで、コーティングされたリグニンに熱アニーリング工程または酸処理工程のいずれかを施す。これら両工程の結果、乾燥時にリグニンコーティングが転換(transformation)し、商業的に有用なレベルの耐水性を示す、つやがあって光沢のあるコーティングを形成する。そのような有効な防水および/または強化コーティングがリグニンを主要なまたは単独の活性防水および強化剤として使用して達成され得ることは当該分野において予想されていなかった。
特に断りがなければ、本明細書中で使用されるすべての技術科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
本明細書にて使用される際の用語「リグニン」は、一般に水に不溶または難溶であり、アルカリ性水溶液には大部分が溶解でき、弱酸性溶液には少なくとも一部が溶解できる、リグニンに基づく化合物(リグニンベースの化合物)またはリグニンに基づくオリゴマー/ポリマーを指す。また、リグニンスルホン酸は、改変を伴いつつ、本処理に使用してもよいが、あまり好適ではない。酸化リグニンもあまり好適でない。
本明細書にて使用される際の用語「防水」または「防水化」は、「耐水性」と同義であり、リグニンコーティングが適用された基層の防水性または耐水性の向上を示すために使用される。これらの用語は、コーティングによってあらゆる条件下で水不浸透バリアが形成されることを要することに限定されるべきでない。
一実施形態において、用語「防水」または「防水化」は、適切な加熱または酸処理後のコーティングが、基層を液状の水に接触させた場合の工業規格Cobb30試験において、基層に水が浸入することを実質的に防止するバリアを形成することを示すために使用される。
本明細書にて使用される際の用語「活性防水剤」は、適切なコーティングおよび後コーティング処理工程後にバリアを形成して水が基層に浸入しにくくする活性を有する溶液、組成物または調製物の成分を指す。
本明細書にて使用される際の用語「強化」は、基層の物理的強度および/または弾力性が、本発明のコーティングを基層において形成および処理した後に、コーティング前の基層のそれら特性と比較して増加していることを指す。強度の増加は、所定の国際規格に応じて行われる、例えばリングクラッシュ試験などの標準の工業手段によって測定することができる。
本明細書にて使用される際の用語「本質的にからなる」は、この用語に係る要素または成分が溶液、組成物、調製物またはコーティングにおいて活性な主部を形成することを意味する。特に、この用語に係る要素または成分が活性防水化および/または強度増加剤のうちの重量について50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より多くを構成することを示すために使用される。一実施形態において、この用語は、用語に係る要素または成分が唯一の活性防水化および/または強度増加剤であり、脱臭剤または可塑剤などの他のいずれの構成要素または成分も活性防水化および/または強度増加成分でないことを意味するために使用される。最終コーティングの防水および/または強化能力が実質的にリグニンのみによって提供されることが好適である。
本明細書にて使用される際の用語「からなる」は、この用語に係る要素または成分が溶液、組成物、調製物またはコーティングにおける唯一の活性防水化および/または強度増加成分であることを意味する。微少量の他の非溶媒要素または成分が存在してもよい。
本発明の第1の局面において、基層上にコーティングを形成する方法であって、
(a)リグニンを溶媒中に少なくとも部分的に溶解させることによってリグニン溶液を生成する工程と、
(b)前記リグニン溶液を前記基層上にコーティングする工程と、
(c)前記リグニンでコーティングされた基層に対して、熱処理および酸処理からなる群から選択される処理を行う工程と
を含み、これによって、前記基層上に前記コーティングを形成する方法が提供される。
一実施形態において、前記コーティングは、防水コーティングである。
一実施形態において、前記コーティングは、耐水性コーティングである。
一実施形態において、前記コーティングは、強化コーティングである。
一実施形態において、前記基層は、リグノセルロース基層、リグノセルロース由来基層、セルロース基層およびセルロース由来基層からなる群から選択される。
前記基層は、紙または紙製品、木材または木材ベニヤ、綿または他の天然繊維織物、成形パルプおよび成形繊維材料、甘蔗搾穀由来材料、タピオカ由来材料、トウモロコシでん粉由来材料およびバイオマス複合材料からなる群から選択されるのが適切である。板紙などの様々な紙および紙製品は、本発明のリグニン組成物でコーティングすることができる。耐水特性または向上された物理的強度特性を有することを要求されるいずれの紙基層についても、本発明に応じてコーティングすることができる。そのような基層は、当業者に周知である。
前記基層は、非金属基層である。
前記基層は、コーティング前に形成された基層であることが好ましい。これは、基層の物理的構成要素がまだ互いに結合していない基層の製造または形成中にコーティングが塗布されないことを意味する。例えば、紙または成形木質繊維製品の場合、これは、コーティングが成形の前に繊維に組み込まれて結合剤として働くのではなく、完全に形成された基層に塗布されることを意味する。完全に形成された基層は、コーティングが塗布される製品またはシートを指す。この基層自体は、より大きな複合製品の一部として内蔵されてもよいことが理解される。このように、本コーティングは、形成された基層上に実質的に積層され、内部に浸透して防水性および/または強化性を著しく損なうことがない。形成された基層は、変換工程(converting operations)をまだ施されていないが形成された基層とみなされる紙基層などの基層を含む。
このように、一実施形態において、前記コーティング工程は、前記リグニン溶液を実質的に前記基層の外面のみにコーティングする工程である。前記コーティング工程は、前記形成された基層の内部部分となる前記基層のいずれの要素上においても行われない。一実施形態において、前記方法は、実質的に前記基層の外面のみに留まるコーティングを形成する方法である。理解しやすいように、また上記のように、前記コーティングが外面に積層された(著しくは内蔵されない)前記基層は、より大きな製品の内部部分となってもよいが、前記コーティングはなおも、それが実際にコーティングされた前記基層の表面に積層されるだけである。例えば、厚紙基層は、片面がコーティングされてもよく、次いでその厚紙基層が、少なくとも2つの外壁および内部溝付き層を有する段ボール厚紙製品の外壁として使用されてもよい。前記基層のコーティング面は、前記溝付き層に内向きに対向するように配置されてもよい。このように、前記基層自体は、より大きな製品の内向きに対向するコーティング層を有するが、本発明のコーティングは、基層そのものの内部には実質的には内蔵されない。
前記溶液は、弱酸性、中性またはアルカリ性溶液であってもよい。好ましくは、前記リグニン溶液は、アルカリ性リグニン溶液である。前記アルカリ性溶液は、アンモニア溶液、水酸化もしくは炭酸アルカリ金属溶液、または水酸化もしくは炭酸アルカリ土類金属溶液であってもよい。好適なアルカリ性溶液は、揮発性であって、それゆえに前記コーティングから容易に除去され、前記コーティングに干渉するおそれのある残留物が最小限しか残らないか、または一切残らないようなアルカリ性溶液である。
好ましくは、前記溶媒は、アンモニア水溶液である。アンモニアは、リグニンを溶解させてコーティングに適切な溶液を生成することに特に有効であることが実証されている。さらに、アンモニアは、揮発性であり、それゆえ乾燥の際に、問題となる残留物を残さない。しかし、適度な体積以下のリグニンを溶解させ、その後に容易に除去可能ないずれのアルカリ性溶液も適切であり得る。基層を損なうおそれがあるか、または防水化および/または強度増加コーティングに干渉するおそれのある塩残留物を蒸発時に残すようなアルカリは避けるべきである。
好ましくは、前記リグニンは、例えば酸性化などによってソーダ、ソーダ−アントラキノンまたはオルガノソルブパルプ化リカーから分離することによって得られる。また、前記リグニンは、公知の抽出方法によって、リグノセルロースまたは任意の植物由来のリグニン含有バイオマス材料から得ることができる。また、例えば酸性化などによってクラフトブラックリカーから分離によって得られたリグニンを使用してもよい。亜硫酸パルプ化の使用済みパルプ化液(レッドまたはブラウンリカー)から回収されたリグニンスルホン酸は、有用であり得るが、あまり好適ではない。また、パルプ化処理由来のリグニンの化学的改変(例えば、リグニンスルホン酸からスルホン酸基を除去)により得られるリグニンベースの化合物を使用してもよい。
一実施形態において、前記リグニンは、天然、非修飾または非誘導リグニンである。
一好適な実施形態において、前記リグニンは、ソーダパルプリグニンである。
一実施形態において、前記リグニンは、酸化リグニンでない。
一実施形態において、前記リグニンは、リグニンスルホン酸リグニンでない。
前記リグニン溶液は、主な防水および/または強化剤としてリグニンを含む。一実施形態において、前記リグニン溶液は、本質的に活性防水および/または強化剤としてのリグニンからなる。一実施形態において、前記リグニン溶液は、唯一の防水および/または強化剤としてリグニンを含む。
これは、本コーティング組成物と従来技術のコーティング組成物との間の決定的な差異である。ある従来技術のコーティング組成物は、その成分の一つとしてリグニンを使用する場合があるが、常に異なる種類の充填剤および防水剤などの他の活性剤と組わ合わせられる。実際、最も多いのは、これらの組成物中に存在するリグニンは、実際には、本来の防水性または強化性がゆえに組成物中に存在するのではなく、それ自体は充填剤として働いている。これに対して、本発明者らは、リグニンが唯一の活性防水および強化剤である組成物を使用することによって、非常に有効な防水バリアおよび/またはその結果の基層の物理的強度の増加を形成することができることを発見した。実際に、リグニン固有の臭気に対処するために必要とされ得る、必要に応じて用いられる脱臭処理、および必要に応じて用いられる非常に少量の可塑剤を除いて、リグニンは、組成物中に存在する唯一の成分であってもよい。
一実施形態において、前記リグニン溶液は、実質的に唯一の非溶媒成分としてリグニンを含む。これは、最も簡単な形態の本防水および/または強化組成物であり、ここでリグニンは、溶媒、好ましくはアンモニア溶液に溶解する。前記リグニン溶液は、一旦熱アニーリングまたはpH低下(酸処理)が適切に施されると、このリグニン溶液を有効なコーティングとするためのさらなる薬品または添加剤は一切必要とされない。
本発明の利点は、リグニンだけが活性防水および/または強化剤として使用され、ゆえにコーティング処理は、再生可能な資源に基づき、完全かつ容易にリサイクル可能である。
一実施形態において、前記リグニン溶液は、実質的に唯一の非溶媒成分としてリグニンを含む。
本発明の利点は、特に、アンモニア溶液を使用することで、前記リグニンが実質的に完全に溶解することである。特許文献1において、特にリグニン/溶媒比がより高い場合に、使用されるリグニンの溶解度が変動することに対処するために混合溶媒を使用することは、前記リグニンが部分的にだけ溶解し、前記リグニンの非常に大きな部分が粒子懸濁液として存在することを意味する。本リグニン溶液において、前記リグニンは、実質的に完全にまたは大半が溶解し、それにより乾燥されたコーティングにおいて仕上げが向上される。一実施形態において、前記リグニンは、前記溶媒において実質的に完全に溶解する。
一実施形態において、コーティングの前に、前記リグニン溶液の不溶固形物含有量は、重量について前記溶液の5%、4%、3%、2%、1.0%、0.5%、0.25%または0.1%未満である。
実施形態において、前記リグニン溶液に含まれるリグニンは、前記溶液の量のうちの重量%で、約16、17、18、19、20、21、22、23または24%を含む、10〜40%、10〜35%、10〜30%、10〜25%、15〜40%、15〜35%、15〜30%または15〜25%であってもよい。
一実施形態において、前記リグニン溶液は、糖および糖アルコールからなる群から選択される剤をさらに含んでもよい。前記糖は、単糖類、二糖類および多糖類からなる群から選択されてもよい。ショ糖は、二糖類の一好例であるが、当業者には広範囲のそのような糖類が知られている。一実施形態において、前記糖アルコールは、エチレングリコール、グリセロール、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトールおよびラクチトールからなる群から選択されるポリオールである。
一実施形態において、前記リグニン溶液は、C〜C12ポリオールをさらに含んでもよい。これは、C、C、C、CおよびCポリオールを含む、C〜C12、C〜C10、C〜C、C〜C、C〜C、C〜C12、C〜C10、C〜C、C〜Cポリオールを含む。
好適な実施形態において、前記ポリオールは、グリセロールである。ある重量%より多くの量のグリセロールを使用すると、驚くべきことに、熱処理工程において使用されるアニーリング温度を、リグニンだけを含む溶液を用いてコーティングした後に同じ防水バリアおよび/または強化効力を達成するために必要とされる温度に比べて著しく低下することが可能となることが分った。これは、直感に反する。なぜなら、ある用途では少量のグリセロールが可塑剤として使用され得るが、より大量のグリセロールを用いれば多くのヒドロキシル基の存在によって水吸収が実際に増加すると予想されるからである。また、より大量のグリセロールを用いれば、得られるコーティングは、触るとべとべととし、除去されやすく、したがって基層の物理的強度の増加を低減すると予想される。本発明者らは、これが正しくなく、グリセロールの追加は必須でないが、必要なアニーリング温度を低下し、向上された耐水性および/または強化コーティングを提供するという利点があることを発見した。
特定の理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、加熱の際に、前記グリセロールの一部がアンモニアと反応してアミドを形成すると主張する。これらのアミドは、グリセロール自体よりも揮発性が高く、紙の表面における温度に依存するが分解し得る。アミドの形成およびその後の分解は、紙の表面の温度を増加するように働く発熱反応である。また、アンモニアとの反応は、pHを低下させ、酸アニーリングおよびより高温度のアニーリングと同じようにガラス転移現象を起こす。
前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、前記リグニン溶液の量のうちの存在量は、重量%で、0.1〜30%、0.1〜25%および0.1〜20%を含む0.1〜35%であってもよい。一実施形態において、前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、その存在量は、1〜35%であり、この1〜35%は、1〜30%、1〜25%および1〜20%または5〜35%を含み、この5〜35%は、5〜30%、5〜25%および8〜20%または8〜35%を含み、この8〜35%は、8〜30%、8〜25%および8〜20%を含む。一実施形態において、前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、その存在量は、10〜30%、10〜25%および10〜20%を含む10〜35%である。一実施形態において、前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、その存在量は、15〜35%であり、この15〜35%は、15〜30%、15〜25%および15〜20%を含む。
一実施形態において、前記リグニン溶液は、実質的に唯一の非溶媒成分としてリグニン、グリセロールおよび可塑剤を含む。
前記可塑剤は、天然または合成ラテックス、ポリエーテル、グリコール、ジカルボン酸またはトリカルボン酸エステル、フタラート、クエン酸アルキルおよびアセチル化モノグリセリドからなる群から選択されてもよい。
前記可塑剤は、非グリセロール可塑剤でもよい。
前記可塑剤の前記リグニン溶液の量のうちの存在量は、重量%で、0.1〜10%であり、この0.1〜10%は、0.1〜8%、0.1〜7%、0.1〜6%、0.1〜5%、0.1〜4%、0.1〜3%を含み、好ましくは1.0〜5%、より好ましくは2〜4%、さらにより好ましくは約2.5、3.0および3.5%でもよい。前記可塑剤は、コーティングの物性の向上を補助し、耐水性および/または強化コーティングを達成するために必須ではなく、活性防水または強化成分自体ではない。
実施形態において、前記リグニン溶液は、コーティング時に、60〜4500mPa・sの粘性を有する。好ましくは、前記リグニン溶液のコーティング時の前記粘性は、約100〜4000mPa・s、より好ましくは約200〜3000mPa・s、さらにより好ましくは約300〜2000mPa・s、なおもさらにより好ましくは約350〜1500mPa・s、より好ましくはさらに約350〜約1200mPa・sである。
本発明者らは、コーティングの防水性および/または強化性は、溶液の粘性にあまり重大には依存せず、広範囲の粘性であっても有効な防水および/または強化コーティングを得ることができることを発見した。これは、特に熱アニーリング処理についてそうである。なぜなら、非常に希薄で低粘性な溶液でさえ、水分を失ってより濃縮された過飽和状態を介して遷移するからである。酸処理の場合は、より濃縮された溶液を使用することが好ましい。実用においては、広く使用される現在のコーティング機器は、350〜1200mPa・s範囲の粘性を有する溶液を用いると最適に動作するので、工業規格は、より高い粘性の溶液が好ましいと規定する。このため、これが好適な粘性範囲であるのは、単に動作適応性において利点が提供されるからである。
適切には、前記リグニン溶液のコーティング時のpHは、約5.0〜12.0または約6.5〜11.0、好ましくは約7.0〜9.5、より好ましくは約7.5〜9.0、さらにより好ましくは約8.0〜8.9であり、この約8.0〜8.9は、約8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7または8.8を含む。リグニンは、アルカリ性条件下で可溶であり、ゆえに略pH8.0〜12.0の範囲で動作するアンモニアなどの標準の塩基がリグニンを可溶化するためには理想的であり、本明細書中にて好適である。しかし、弱酸性または中性条件下ではあるリグニン形態を用いて部分溶解性を達成できる。前記リグニンのすべてが溶解するわけではなくてよい。このとき、最終コーティング中になんらかの粒状化が生じ得るが、特定の用途においては、このより低いpH範囲を使用してグリップに関連する利点(冷蔵または湿潤条件における箱の積重ねについての圧縮クリープ分析など)のための凸凹が増加されたコーティングを生成することが有用であり得ることが理解される。
前記コーティング工程は、ドローダウンコーティング、ロッドコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、マイヤーロッドコーティング、ローラーコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティングまたはエアナイフコーティングによって行ってもよい。スプレーおよびブラシの用途は、木材および木材ベニヤコーティングに対して特に適切であり得る。
好ましくは、前記コーティング工程は、紙製品製造産業において一般に行われるようにロッドコーティングによって行われる。
多くの市販溶液を用いたコーティングの技術分野において、広範囲のコーティング方法および関連の技術が周知である。本発明の利点は、前記コーティング組成物が産業において標準として受け入れられているコーティング技術を用いた使用に適切であり、既存のハードウエアに対して要求される変更は最小限であるか、または一切ない。
前記コーティングの重量は、約1〜35GSM(g/m)、2〜35GSMまたは5〜35GSMである。好ましくは、前記コーティングの重量は、約5〜30GSMまたは5〜25GSMである。一実施形態において、前記コーティング重量は、6〜35GSM、6〜30GSM、6〜25GSMまたは6〜20GSMである。さらなる実施形態において、前記コーティング重量は、8〜35GSM、8〜30GSM、8〜25GSMまたは8〜20GSMである。
比較的低いコーティング重量でも商業的に有用な耐水性および/または強化性を達成するのに十分であることは、本発明のさらなる利点であり、処理がうまく機能する、すなわちコーティングが実質的に基層のコーティングされた外面に留まり、基層に機能変化を生じさせる程度に基層材料自体に浸透することがない、ような方法の結果である。特許文献1の実施例において、コーティング重量は、38GSMから281GSMに増加し、ある場合には、処理された紙の重量が70%増加する。これは、異なる作用機構の結果である。すなわち、特許文献1は、強度において所望の向上を達成するためにその組成物を紙製品に実質的に浸透させることに基づいている。本方法は、20GSM未満という通常のコーティング重量を採用し、強度特性を増加させるための基層への浸透に依存しないし、実際にそれを実現してもいない。
一実施形態において、本方法により生じる前記基層の重量の増加は、0.1〜30%、0.1〜25%、0.1〜20%、0.1〜15%または0.1〜10%である。本方法を使用した場合に紙基層においてよく見られる重量は、5%〜10%である。
一実施形態において、前記コーティング工程は、大気圧を超える圧力である増圧下では行われない。前記コーティング工程は、好ましくは大気圧にて実施される。本発明の方法のさらなる利点は、硬化工程のために高い圧力を生成する必要がないことである。多くの従来技術の処理は、大量のエネルギーを消費する高圧力方法を採用するので、さらなる設備が必要となり、ゆえにコストが増加する。本方法は、標準の条件下に既存のコーティング技術を単純に使用して、簡単なリグニン溶液を基層に塗布する。
前記熱処理は、前記リグニンが前記必要な物理的転換を受けて前記防水コーティングを提供することを可能にする熱アニーリングである。
大半のリグニンおよび特に本処理において使用するための適切なリグニン源として上記されたものに対して、前記熱処理は、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃または220℃よりも高い温度からなる群から選択される温度に曝露することである。これらの下限のいずれかと組み合わせて適切な範囲を形成してもよい上限温度は、前記基層が熱により損なわれるか、または発火する温度である。一実施形態において、この上限温度は、230℃または240℃のいずれかであってもよい。
前記リグニン溶液が実質的に唯一の非溶媒成分としてリグニンを含むか、あるいは糖もしくは糖アルコール(グリセロールなど)および/または可塑剤を前記リグニン溶液のうちの10重量%未満含む一実施形態において、前記熱処理は、約160℃〜約230℃、好ましくは約170℃〜約230℃、より好ましくは約180℃〜225℃の温度で熱源に曝露することであってもよい。
前記リグニン溶液がリグニンを含み、さらに糖または糖アルコール(グリセロールなど)を前記リグニン溶液のうちの10重量%より多く、好ましくは15重量%より多く含む一実施形態において、前記熱処理は、約90℃〜約230℃、好ましくは約100℃〜約230℃、より好ましくは約110℃〜225℃の温度に曝露することであってもよい。
前記熱処理(または熱アニーリング)工程は、本方法を使用して防水および/または強化コーティングを得る一つの可能な方法であり、その他に酸処理工程がある。特定の理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、熱アニーリングおよび酸処理工程が、リグニンの形態がリグニン溶液において過飽和状態(ガラス状態)から結晶状態(基層上に光沢のある仕上げを提供する)へ転移させ、適切な温度への加熱またはpHの急激な低下のいずれかによってこれを達成できると主張する。このように、高温処理または酸処理の二つの異なる方法によって、リグニンの臨界的な転移について同一の結果が効果的に達成される。この転移が達成されなければ、コーティングは、有効な防水バリアとならず、および/または所望の向上された強度を提供することもない。例えば、著しい量のグリセロールを追加せずに、熱アニーリングをより低い温度で実施した場合の試験において、弱くこするだけで大量に除去される、粉末仕上げのコーティング紙が形成された。これは、有効な防水コーティングではなく、臨界的な転移温度(熱アニーリング方法について)に達しない場合に、基層上に存在するリグニンは、水に対して有効なバリアとなるような転換をすることができないことを示す。
リグニンを防水コーティングにおける成分として使用する従来技術の文献について、最低温度として130℃、好ましくは160℃以上(リグニンを含み、グリセロールをほとんどまたは全く含まないコーティングについて)または最低温度として80℃、好ましくは90℃(リグニンおよび上記のような著しい量のグリセロールを含むコーティングについて)が採用されず、適切な酸処理工程が行われない場合には、リグニンは、防水性に対して著しい程度の寄与を与えることができない。上記上限温度は、基層が損なわれる手前の耐えることができる温度によって定義される。
本発明の利点は、前記熱処理工程を、紙製造にて一般に使用されるような工業加熱設備において実施される場合に、数秒程度で完了できることである。一実施形態において、前記熱処理工程は、10分、6分、5分、4分、3分、2分、1分または30秒未満で完了する。
前記酸処理は、前記リグニンコーティングを4.0または3.5よりも低いpHを有する酸に接触させる工程を含んでもよい。好ましくは、前記pHは、約3.5以下であり、下限が0または1である。
前記酸は、無機酸(鉱酸)または有機酸であってもよい。好適には、前記酸は、揮発性酸である。これにより、前記基層上または前記コーティング内に残留物を残さずに前記酸を簡単に除去することが可能になる。弱酸が好適である。非常に好適には、前記酸は、酢酸などの揮発性弱酸である。一実施形態において、前記酸は、酢酸、ギ酸、リン酸およびクエン酸からなる群から選択されてもよい。前記酸は、希釈してもよいし、希釈せずに使用してもよい。希釈した場合、エタノール、酢酸エチル、グリセロールまたは水などの混和性溶媒を使用してもよい。溶媒の選択は、その後に前記コーティングを乾燥工程中に裸火に曝露すること、およびその結果生じる安全問題に依存する。この点について、グリセロールは、潜在する燃焼性を低減する利点を有する。
前記コーティングのための前記リグニン溶液が弱酸性溶液である場合、前記処理工程は、上記のように、酸処理ではなく、熱処理(熱アニーリング)工程であることが好適であり得る。
前記酸は、前記コーティング上に噴霧され、または他の方法で塗布され、前記リグニンにおける転移を生じさせ、有効な防水バリアを形成し、および/または増加された強度特性を提供する。特に、前記酸は、前記コーティングされた基層表面にわたって平滑な接触を生じる噴霧スプレーにて塗布して、酸の液溜まりまたは流出が見られないようにしてもよい。
前記処理が酸処理である場合、前記方法は、前記リグニンコーティングを乾燥させる工程をさらに含んでもよい。前記乾燥工程は、周囲条件下に行ってもよく、または加熱もしくは減圧を含んでもよい。この乾燥工程は、単に余分な水分を除去するためのものであり、熱アニーリングを引き起こす温度は、乾燥に要する温度ではない。
実施形態において、前記コーティングが乾燥した後、前記防水および/または強化コーティングは、防水化および/または強度増加のための主活性構成要素としてリグニンを含む。
前記乾燥されたコーティングは、重量について60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より多くのリグニンを含んでもよい。
好適な実施形態において、前記コーティングが乾燥した後、前記防水および/または強化コーティングは、本質的に活性防水化構成要素としてのリグニンからなる。
一実施形態において、前記リグニンコーティングが乾燥した後、前記防水および/または強化コーティングは、活性防水化構成要素としてのリグニンからなる。
上記のように、本発明に特有の利点は、リグニンをコーティングにおける活性防水化および/または強化成分として使用し、つまり、熱アニーリングまたは酸処理によってリグニンを転換させて防水および/または強化コーティングを形成するだけで、有効な防水および/または強化コーティングを基層上に形成できることである。
ある実施形態において、前記リグニン溶液は、脱臭剤を用いて処理してもよい。前記脱臭剤は、酸化剤または適切な吸収剤であってもよい。一実施形態において、前記脱臭剤は、活性炭、オゾン、過酸化水素、珪藻土、活性粘土、イオン交換樹脂またはシリカゲルからなる群から選択される。望ましくは、コーティングされている紙製品が食品用途に使用される場合は、活性炭などの脱臭剤を有してもよい。リグニンは、ここで記載されるようなコーティングにおいて適用される場合には、付随する臭気を有する。多くの用途において、これは問題とならないが、前記紙製品が食品と密着する場合は、前記臭気が食品にある程度移る可能性がある。そのような状況において、公知の脱臭剤を前記リグニン組成物に接触させたり、または公知の脱臭剤で前記リグニン組成物を前処理することは簡単なことである。このような活性炭の使用は、実験の項にて説明する。
前記リグニン溶液が脱臭剤を含む実施形態において、特に望ましくは、コーティングの前に可塑剤を前記溶液に追加してもよい。また、上記のように、可塑剤は、より高い量のグリセロールを前記リグニン溶液に含ませる(10%以上)実施形態において有用である。限定されないが、例えば、前記可塑剤は、天然または合成ラテックス、ポリエーテル、グリコール、ジカルボン酸またはトリカルボン酸エステル、フタラート、クエン酸アルキルおよびアセチル化モノグリセリドからなる群から選択されてもよい。他の市販の可塑剤が当該技術分野において周知である。活性炭などの脱臭剤を使用すると、前記リグニンコーティングの本来の可塑性が低減される可能性があることが分かった。この可塑性の損失を埋め合わすために必要なことは、ラテックスなどの可塑剤を少量だけ前記アルカリ性リグニン溶液に追加するだけである。前記可塑剤の代表的な量は、前記コーティング組成物のうちの0.1〜10%、この0.1〜10%は、0.1〜8%、0.1〜7%、0.1〜6%、0.1〜5%、0.1〜4%、0.1〜3%を含み、好ましくは1.0〜5%、より好ましくは2〜4%、ならびにさらにより好ましくは約2.5、3.0および3.5%である。ラテックスなどの大半の可塑剤に対して、1〜6%の範囲、好ましくは1.5〜5%、より好ましくは2〜4%、ならびにさらにより好ましくは約2.5、3.0および3.5%が適切である。前記必要とされる量は、前記使用される可塑剤の可塑性に依存し、簡単な試行により決定できる。この比較的少量の可塑剤が前記コーティングの防水性および/または強化性に対して著しい程度には実質的に寄与しないことを理解することが重要である。すなわち、前記可塑剤は、本組成物または方法の活性防水化および/または強化成分とは見なされない。
本発明の第2の局面は、溶媒に少なくとも部分的に溶解するリグニンを主活性成分として含む組成物である。
前記組成物は、第1の局面について記載した通りであってもよい。好ましくは、前記溶媒は、アルカリ性溶液である。
前記組成物のアルカリ性溶液、pH、リグニンタイプおよび源、ならびに他の局面は、第1の局面について記載した通りであってもよい。
前記組成物は、本質的に活性防水化および/または強化成分としてのリグニンからなる。これが意味するところは、前記リグニンが実質的に前記組成物によって与えられる防水および/または強化活性の要因であることである。
さらなる実施形態において、前記防水および/または強化組成物は、活性防水化および/または強化成分としてのリグニンからなる。
前記組成物は、第1の局面について記載したように、脱臭剤および/または可塑剤をさらに含んでもよいし、脱臭剤および/または可塑剤に接触させてもよい。
一実施形態において、前記溶媒は、アンモニア水溶液である。
一実施形態において、前記組成物は、約15重量%〜約40重量%のリグニンおよび約60重量%〜約85重量%のアンモニア溶液を含む。
この実施形態において、前記組成物は、好ましくは約25重量%〜約35重量%のリグニンおよび約65重量%〜約75重量%のアンモニア溶液を含む。
一実施形態において、前記組成物は、さらに糖および糖アルコールから選択される薬品を含む。具体的な例は、第1の局面について記載した通りであってもよい。
前記糖アルコールは、ポリオール、好ましくはグリセロールであってもよく、前記組成物のうちに存在する量は、重量%で、0.1〜30%、0.1〜25%および0.1〜20%を含む0.1〜35%であってもよい。一実施形態において、前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、その存在量は、1〜35%であり、この1〜35%は、1〜30%、1〜25%および1〜20%または5〜35%を含み、この5〜35%は、5〜30%、5〜25%および8〜20%または8〜35%を含み、この8〜35%は、8〜30%、8〜25%および8〜20%を含む。一実施形態において、前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、その存在量は、10〜30%、10〜25%および10〜20%を含む10〜35%である。一実施形態において、前記ポリオールは、好ましくはグリセロールであり、その存在量は、15〜30%、15〜25%および15〜20%を含む15〜35%である。
一実施形態において、前記組成物は、以下を全組成物のうちの重量%の量で含む。
(a)約10%〜約40%のリグニン
(b)約35%〜約80%のアンモニア溶液
(c)約5%〜約30%の糖または糖アルコール
好ましくは、(b)または(c)の任意の上記値と組み合わせて、前記リグニンの存在量は、約15%〜約35%、より好ましくは約18%〜約30%、さらにより好ましくは約20%〜約27%である。
適切には、(a)または(c)の任意の上記値と組み合わせて、前記アンモニア溶液の存在量は、約40%〜約70%、好ましくは約45%〜約65%、より好ましくは約50%〜約60%である。
好ましくは、(a)または(b)の任意の上記値と組み合わせて、前記糖または糖アルコールは、約10%〜約25%、より好ましくは約15%〜約25%である。
好ましくは、前記糖または糖アルコールは、第1の局面について記載した通りである。最も好ましくは、前記糖または糖アルコールは、グリセロールである。
一実施形態において、前記組成物は、第1の局面について記載したように、可塑剤をさらに含む。好ましくは、前記可塑剤は、ラテックスである。
一実施形態において、前記組成物は、前記可塑剤を含み、その量は、重量%で、約0.1%〜5%、好ましくは1.0%〜約4.0%であり、それぞれの範囲は、(a)、(b)および(c)についての上記範囲と組み合わせてもよい。
一実施形態において、前記組成物は、以下を全組成物のうちの重量%の量で含む。
(a)約18%〜約27%のリグニン
(b)約50%〜約67%のアンモニア溶液
(c)約10%〜約25%のグリセロール
(d)約0.1%〜約4%のラテックス
一実施形態において、前記組成物のpHは、約7.5〜9.5、好ましくは約8.0〜約9.0である。
一実施形態において、前記組成物は、オーブンで乾燥した場合の固形物含有量が約25〜45%DS、好ましくは約27〜40%DSである。
一実施形態において、前記組成物のブルックフィールド粘性は、約100〜500、好ましくは約150〜約400である。
本発明の第3の局面によれば、基層上にコーティングを形成するための第2の局面の前記組成物の使用が提供される。
前記基層は、第1の局面について記載した通りであってもよい。
そのようなコーティングは、耐水性および/または強化性に対して著しい程度に寄与しているのがリグニンだけであるという事実を踏まえると、以下の例において示すように、驚くほどの耐水性を有し、および/または前記基層に対して向上された強度特性を提供する。
前記使用は、前記第1の局面に関連してなされた各説明の通りであるが、これらの説明のそれぞれは、あたかも第3の局面について明示的になされたとみなすことができる。
本発明の第4の局面は、第1の局面の前記方法によって形成されたコーティングを含む基層である。
前記防水および/または強化コーティングは、第2の局面の前記組成物を使用してもよい。
前記基層は、第1の局面について記載した通りであってもよい。
実験
概要
二つの異なるリグニンベースの調製物を以下の実験において使用するために生成した。第1のリグニンベースの調製物は、単純なアンモニア性リグニン溶液(LBCv1.0)であり、第2のリグニンベースの調製物は、同様のアンモニア性リグニン溶液であるが、脱臭剤としての活性炭(LBCv1.1+AC)を用いて処理しておいた。
以下のプロトコルは、研究室内で、特定の目標粘性(約1000〜1200mPa・s)の調製物を開放容器中でバッチ式に生成する方法を説明する。これは、最初に開放ビーカーにおいて濃縮状態(2000mPa・sを超える粘性−限界点のオーバーシュート−より高い粘性およびより低いpH)となるように蒸発を行い、次いでアンモニアを加えて、目標pH(8.4〜5)まで調節することによって達成した。このように調製物を作成することによって、目標の粘性を常に達成できる。
この方法は、研究用としては適切であるが、より大きな規模では、調製物生成処理を合理化するために大きな攪拌/加熱リアクタおよび部分真空(12〜16mmHg)を使用することが好ましい場合もある(すなわち、密閉リアクタシステムにおいて部分真空(およびより低い温度)下に限界点まで蒸発させる)。この作業によって、アルカリ性リグニン溶液が広範囲の粘性(下は80mPa・sから上は4000mPa・sまで)にあっても、適切なアニーリング/酸処理を行えば有効なバリア膜を形成するように作用することが分かった。
LBCv1.0の調製
原料のままのリグニン(290g)を量り取り、アンモニア溶液(1Lの0.5MのNH)を、予想される最終体積の少なくとも二倍の容器(初期の発泡のための空間を見込む)に加えて、約300gのリグニン/kgの0.5MのNH溶液を生成する。羽根アタッチメントを使用したオーバーヘッド攪拌によって高速(約600rpm)で、調製物が均質になるまで混合する。攪拌速度を低減し(約200〜300rpm)、約24時間にわたり、周囲条件に曝された容器内で混合(マグネットまたはオーバーヘッド攪拌)、および80℃(加熱プレートを使用)で加熱する。24時間後に、調製物のpHを測定する。pHが7.2を超える場合は、攪拌を継続し、1〜2時間ごとに再度確認する。一旦pHが中性(約7.2)に近づくと、調製物は、濃厚になり始め、「タフィーのように」見え始める。この変化は、急速なことがある。
次いで、副次試料のブルックフィールド粘性(BrVis)を測定して、2000mPa・sを超えているかどうか確認する必要がある。BrVisが低すぎる場合は、BrVisが範囲(>2000mPa・s)内になるまで、攪拌を継続し、一時間ごとに副次試料を取る。一旦調製物が範囲内になれば、希釈していないNH(28〜30%)を用いてpHを約8.4〜5に調節する。BrVisがこのpHで1000〜1200mPa・sの範囲にあることを確認する(60rpm、スピンドル3)。これが最終調製物(LBCv1.0)であり、使用するまで密閉し、好ましくは冷蔵してもよい。使用する前に、pHが好適な範囲(pH8.4〜5)内にあることを確認し、必要ならば調節する(28%のNH)。最終BrVisが範囲(1000〜1200mPa・s)にあることを確認する。
なお、必要に応じてエアロゾル化されたエタノールまたは消泡剤を加えて発泡に対処してもよい。必要に応じて、上記のように、反応は、部分真空(約12〜16mmHg)にして攪拌中に生成される揮発性ガスを除去できる密閉容器内で行ってもよい。さらに、80℃で必要な攪拌時間は、部分真空を使用することによって2時間以下に著しく短縮できる。実験の結果、より広範囲のpH(すなわち、8.4〜8.5未満)およびより低い粘性(すなわち、1000〜1200cps未満)にあっても、適切なアニーリングを行う限り、有効な膜が形成され、良好な防水バリアが提供されることが分かった。
LBCv1.1+ACの調製
予想される最終調製物総体積の約1/3(または1/12まで下げてもよい)の活性炭(AC)を量り取り、重量を記録する(すなわち、1kgの調製物を生成する場合、333mLのACをパーコレーションカラムに入れ、乾燥重量(約165g)を記録する)。ACを沸騰したmilliQ HO(0.45μm濾過)を用いて洗浄し、細粒を別の容器に移す。ACからの流出液が透明になるまで繰り返す。milliQ HOを可能な限り多く排出させ、予め計量したパーコレーションカラムまたは同様の容器に移す。湿潤なACの重量を計算し、捕捉および結合したHOの量を決定する(例えば、最終の湿潤なAC重量が403gの場合、捕捉/結合AC HOは、約238gである)。捕捉/結合AC HO(例えば、403gの場合)を考慮して、アンモニア溶液(0.5MのNH)を生成し、それに応じて体積を低減する(例えば、597mLのmilliQ HO中33.8mL(28%のNH)、捕捉/結合HOを含む総体積は、0.5MのNHの目標モル濃度に対して1000mL)。
リグニン(290g)を量り取り、アンモニア溶液(上記のような597mLの0.5MのNH)を、予想される最終体積の少なくとも二倍の容器(初期の発泡を見込む)に加える。羽根アタッチメントを使用したオーバーヘッド攪拌によって高速(約500rpm)で、調製物が均質になるまで混合する。攪拌速度を低減する(約100〜200rpm)。リグニンアンモニア溶液をACパーコレーションカラムを介して循環させ、流出液を調製容器へ戻す。容器を大気圧に曝し、80℃(加熱プレートを使用)で加熱しながら、循環およびパドルアタッチメントを使用したオーバーヘッド攪拌を約3時間にわたり継続する。ACは、アルカリ性アンモニア溶液自体に加えてもよいが、上記のカラム方法を使用するのが好適である。
副次試料を取り出し、放置して周囲温度に冷却する。臭気が除去されたかどうかを調べるために鼻を用いた抜取り検査をし、通常の調製物と比較する。良好でなければ、ACカラム処理を継続し、30分間隔で抜取り検査を繰り返す。一旦良好となれば、熱から取り出し、処理を中止する。
調製物を、約20時間にわたり、周囲条件に曝された容器内で混合(マグネットまたはオーバーヘッド攪拌のいずれかを使用)し、80℃(加熱プレートを使用)で加熱する。24時間後に、調製物のpHを測定する。pHが7.2を超えている場合、攪拌を継続し、1〜2時間ごとに再度確認する。一旦pHが中性(約7.2)に近づくと、調製物は、濃厚になり始め、「タフィーのように」見え始める。この変化は、非常に急速なことがある。
副次試料のブルックフィールド粘性(BrVis)を測定して、2000mPa・sを超えているかどうか確認する。BrVisが低すぎる場合は、BrVisが範囲(>2000mPa・s)内になるまで、攪拌を継続し、一時間ごとに副次試料を取る。一旦調製物が範囲内になれば、周囲温度に冷却し、希釈していないNH(28%)を用いてpHを約8.4〜5に調節する。BrVisが1000〜1200mPa・sの範囲にあることを確認する(60rpm、スピンドル3)。これが最終調製物(LBCv1.1+AC)であり、使用するまで密閉し、好ましくは冷蔵する必要がある。使用する前に、pHが範囲(pH8.4〜5)内にあることを確認し、必要ならば調節する(28%のNH)。最後に、最終BrVisが範囲(1000〜1200mPa・s)にあることを確認する。
LBCv1.0調製物について上記したように、エアロゾル化されたエタノールまたは消泡剤を加えて発泡に対処してもよく、必要に応じて、反応は、部分真空(約12〜16mmHg)にして攪拌中に生成される揮発性ガスを除去できる密閉容器内で行ってもよい。一旦調製物が混合されると、真空をオフにし、調製物を約2〜6ベッド体積のGACカラムに通しながら、臭気が適切に除去されるまで、GACで処理した調製物の副次試料を取り、鼻で試験する。次いで、調製物が用意されるまで再度真空にする。やはり、実験の結果、より広範囲のpH(すなわち、8.4〜8.5未満)およびより低い粘性(すなわち、1000〜1200cps未満)にあっても、適切なアニーリングを行えば、良好な防水バリアを提供する有効なコーティングを形成されることが分かった。
熱アニーリング実験
クラフト205紙の光沢面上にドローダウンコーターによってコーティングされた上記標準(LBCv1.0)および脱臭化(LBCv1.1+AC)調製物(ともにpHが8.4〜5、BrVisが1000〜1200−ブルックフィールド粘度計1000〜1200cp)を使用した一連の温度アニーリングを行った。
LBCv1.0に対して、コーティング塗布は、アニーリング温度39℃(室温試料に対して予め調節したオーブンおよび最大熱処理)、次いで100℃〜220℃(10℃間隔)に対して、ドローダウンコーター上のロッド0+ロッド9であった。実験で使用したすべての紙は、コーティングの前に39℃で加熱することによって予め調整した。コーティングされた試料のオーブン内での時間は、ロッド0塗布後は90秒であり、二番目のコーティング塗布(ロッド9)後は5分であった。したがって、総アニーリング時間は、6分30秒であった。
LBCv1.1+ACに対して、コーティング塗布は、アニーリング温度160℃〜220℃(10℃間隔)に対して、ロッド0+ロッド9およびロッド0+ロッド6であった。上記と同様に、オーブン内での時間は、ロッド0に対して90秒であり、二番目の塗布(ロッド9およびロッド6)に対して5分であった。総アニーリング時間は、6分30秒であった。
これらの実験の結果を下記の表1に示し、図1(LBCv1.0)および図2(LBCv1.1+AC)にグラフを使って示す。結果における対照の測定値は、調製物でコーティングせずに熱処理された紙から得た。
表1:様々なアニーリング温度での通常(LBCv1.0)および脱臭(LBCv1.1+AC)調製物についてのCobb(30分)の比較
コーティング重量実験
ドローダウンコーターによってK205の光沢面に塗布された標準の調製物(LBCv1.0、pHが8.4〜5、BrVisが1000〜1200)を使用して、一連の完全なコーティング重量実験を行った。塗布は、ロッド0を220℃で90秒間フラッシュし、その後ロッド0〜ロッド9を220℃で5分間熱アニーリングした。したがって、総アニーリング時間は、6分30秒であった。また、ロッド0コーティングは、それ自体で行い(すなわち、その後のコーティングはなし)、220℃で5分間アニーリングした。これらの実験の結果を下記の表2に示し、図3にグラフを使って示す。
表2:標準の調製物(LBCv1.0、pHが8.4〜5、BrVisが1000〜1200)は、K205の光沢面に異なるコーティング重量(ロッド0、ロッド0+(ロッド0〜9))で塗布した。
活性炭および可塑剤についての実験
リグニン+活性炭組成物を使用して、可塑剤のコーティングに対する効果を評価した。可塑剤は、天然ラテックス(LaN)を使用し、以下の重量%で加えた(0.5、1.0および2%(w/w))。組成物は、ドローダウンコーティングによってK205の光沢面に、ロッド6を塗布し(5分)、その後ロッドcを塗布して(90秒)、コーティングし(同じものを2つずつ)、220℃でアニーリングした。一部選択した結果の概要を表3に含めた。
表3:天然ラテックス(LaN)を加えた場合の可塑剤実験におけるリグニン+GAC
酸処理実験
ドローダウンコーターによってロッド6塗布だけを行い、クラフト205紙の光沢面にコーティングされた、2%天然ラテックス(w/w)を有する脱臭化(LBCv1.1+AC)調製物を使用した酸処理を行った。
噴霧スプレーを使用して、氷酢酸をリグニンでコーティングされた基層に均一に塗布し、表面に液溜まりまたは流出がないように、表面全体に平滑な接触を得た。エタノールまたは酢酸エチルなどの様々な混和性揮発性溶媒で希釈された酢酸も良好に使用し得ることが分かった。水およびグリセロールも適切である。
酸を塗布した後、処理された基層を110℃で5分間オーブンで乾燥して、残留水分の除去を加速させた。換気フードなどの換気状態の良い場所に処理された試料を放置しても同様の効果が得られるが、より長い時間がかかることが観察された。
コーティングされた基層であって、表面が酸で処理されたもの(5分、100℃)と、酸で処理せずにコーティングを乾燥させたもの(5分、100℃)と、酸で処理せずにコーティングをアニーリングしたもの(5分、220℃)との比較を下記の表4に示す。結果における対照の測定値は、熱処理も酸処理もせず、さらに調製物でコーティングしていない紙から得た。
表4:酸処理実験におけるリグニン
酸によって処理された試料は、水に長時間(30分)接触させた後でも容易に転移しない表面を生成し、そのCobb値は、SuperVisyなどの工業規格と同等であった。Cobb(30分)分析によるSuperVisyの性能は、約87g/mである。この酸処理をさらに最適化すれば、Cobb値をさらに向上できると考えられる。
活性炭(AC)およびラテックスを有するリグニン調製物を使用したアニーリング
適切な粘性(BrVisが620〜820(mPa・s))で天然ラテックス可塑剤(+2%のLaN)を用いて処理した粒状活性炭(GAC)を有するリグニンの脱臭化調製物を使用して、完全アニーリング時間実験を行った。
試料をドローダウンコーティングによってK205光沢のあるライナーボードにコーティングした。具体的には、220、200および180℃の熱アニーリング条件下に5、4および2分間ロッド6を塗布した後、90秒間ロッドcを塗布した(それぞれの総処理時間は、6.5、5.5および3.5分であった)。一つのロッド6+ロッドC(5分、90秒−160度)およびロッド1+ロッド1(2分、90秒−160度)を「最悪ケース」の温度プロフィールの例として生成した。結果の概要を表5に含め、図4の表面プロットによってグラフとして表す。
表5:アニーリング実験におけるリグニン+GAC+LaN(2%)−Cobb(30分)データ概要
上記試行からの良好な結果としては、SuperVisyなどの工業代表値以下のバリアコーティングを達成する表面がある。Cobb(30分)分析によるSuperVisyの性能は、約87g/mである。本コーティングは、優れた防水コーティングであると考えられる、図4の緑色の範囲(Cobb(30分)が40〜65(g/m))内の比較の標準および値よりも良いこと分る。アニーリング温度が160℃を下回る場合のみ、値は、図4において商業的に望ましくないコーティングを表す赤色領域に示される値に達する。
非アルカリ性pHのリグニン溶液を用いる実験
0.4MのNH溶液を生成する10.00gのNH(30%)と413gのDI HOとを周囲リアクタ中へ混合した。総調製物が558.9g、最終の目標となる乾燥固形物(%DS)が22.66となるように135.1gのリグニンを配合した。記載した目標の乾燥固形物(%DS)は、開始時のリグニンの水分含有量を相殺したものである。この場合、使用したリグニン水分含有量は、6.3%であった。
試料は、pH7.1を示し、そのBrVis粘性が80〜100mPa・sであった。試料を2日間保管した。pHがさらに6.9に低下し(周囲)、小さなリグニン凝集物が形成されることが分かった。一部のリグニンは、おそらくその時点での弱酸性pHによって溶液から析出し、懸濁状態となったことが明らかであった。
性能に関し、pH6.9の調製物を、2つの同様の調製物試料(ただし、pHは、「上」の7.7および8.8に戻るように調節した)とともに、クラフトライナーボード(K205)にコーティングした。ここで、すべての試料は、コーティングの後に220℃でアニーリングした。結果を表6に示す。
すべてのコーティングは、見た目が良好な基層を生成したが、標準的な平滑なつやのある表面ではなく、より摩擦の大きな表面を有した。これは、おそらくリグニンが部分的に溶解した調製物を使用したからである。Cobb値は、pHが大きくなるにつれ向上され、有用な防水性が達成された。これは、アルカリ性リグニン溶液をコーティング組成物として使用するのが好ましいが、弱酸性リグニン溶液を開始時に使用したとしても有用な防水コーティングを得ることができることを示す。ただし、これは、その後の処理(この場合、熱処理)がリグニンの物理的形態の必要な転移を達成する場合に限る。
表6:様々なpH値のリグニンコーティング組成物を使用して形成されたコーティングに対するCobb値
より大きな規模での脱臭化調製物の調製
まず、活性炭カラムを以下のように調製する。
1.375kgの粒状活性炭を装填し、フランジ蓋を密閉する
2.上部通気口を開放しながら熱水(水&蒸気)を一杯になるまで充填する
3.上部通気口を閉じ、排液の気泡がなくなるまで熱水で抜く
4.フランジ蓋を取り除き、炭素の表面まで排水し(常に炭素が水に確実に覆われているようにする)、一晩放置する
カラムは、使用の前に予め加熱する必要がある。
次いで、アルカリ性リグニンコーティング溶液を以下のように調製する。
1.2.5トンの水(できれば脱イオン化(DI)または逆浸透(RO)処理されたもの−約pH5.5が必要)を周囲温度でリアクタに加える
2.100kgのアンモニア水(30%のアンモニアの場合)を周囲温度で攪拌しながら加える。真空をオンにし、コンデンサでリアクタに再循環(還流)させる
3.リアクタの加熱を開始し、1トンのリグニンを配合する。発泡を低減するために約10Lのエタノールが必要な場合がある
4.リアクタを閉じ、リグニンが溶解するまで85〜95℃に加熱する(還流条件を継続する)
5.リグニン溶液を活性炭カラムに循環させる
カラムは、炭素ベッドの乱れを最小にしつつ、上部バルブを開放して調製物で満たし、上部空間を満たすことができる。次いで、上部バルブを閉じ、最初の排水(カラムは空)を廃棄しながら流液操作を開始する。リグニン調製物が現れるにつれ(最初は色が変わらないが、カラムの出力が粘性において入口と同様である場合−これは、手袋をして調製物に触れ、親指と人差し指を引き離す際の抵抗を比較することで試験できる−この段階を補助することもできる)、排出を廃棄からリアクタに切り替える。4〜5反応体積(12000L〜15000L)分の調製物をカラムに再循環させる。次いで、上部バルブを開放し、カラム中の残液をリアクタ中へ排出する。
6.望ましい室温粘性に達するまで調製物の体積を部分真空下に低減する
上記実験方法は、可塑剤を含まない脱臭化調製物であって、コーティングの次段階への入力として適切であり、その後に熱処理または酸処理を行って防水コーティングを得る、脱臭化調製物を提供する。あるいは、工程6の後で上記組成物を適切な保管容器に移す際に、可塑剤を加えてもよい。この方法は、工業的な用途に必要な規模で調製物を生成するための実用的な方法である。
より低い温度および高グリセロール含有コーティング重量
ブルックフィールド粘性が180〜320(mPa・s)であり、pHが8.3〜5であり、オーブンで乾燥させた固形物が32〜34%DSである「低熱最適化調製物」(LBCv3.0(27)+PI(20P/3))(53.1%のHO、2.5%のアンモニア(25%)、3%のラテックス(61%DS)、20%のグリセロール、21.4%のリグニン、すべてw/w)をドローダウンコーターによってクラフトライナーボード(約185GSM)の光沢面にコーティングした。塗布は、単一コーティングのロッド1〜ロッド8であった。アニーリングオーブン内での時間は、温度140、160および180℃に対して5分であった。得られた基層のCobb値を以下の表7に示し、図5にグラフを使って示す。
表7:クラフト185(約GSM)ライナーボードの光沢面上にコーティングされた低熱最適化(LBCv3.0(27)+PI(20P/3))調製物についての、様々なアニーリング温度およびコーティング重量でのCobb(30分)の比較
より高い温度およびグリセロール量を低減したコーティング重量
ブルックフィールド粘性が380〜500(mPa・s)であり、pHが8.8〜9であり、オーブンで乾燥させた固形物が33〜34%DSである「高熱最適化調製物」(LBCv3.0(27)+PI(10/2))(60.4%のHO、2.9%のアンモニア(25%)、2%のラテックス(61%DS)、10%のグリセロール、24.7%のリグニン、すべてw/w)をドローダウンコーターによってクラフトライナーボード(約205GSM)の光沢面にコーティングした。塗布は、単一または二層コーティングのロッド1、ロッド1+ロッド1、ロッド6、ロッド6+ロッド1、ロッド6+ロッド6であった。アニーリングオーブン内での時間は、温度160、180および220℃に対して、すべてのロッド6塗布については5分、ロッド1については2分であった。得られた基層のCobb値を以下の表8に示し、図6にグラフを使って示す。
表8:クラフト205(約GSM)ライナーボードの光沢面上にコーティングされた高熱最適化(LBCv3.0(27)+PI(10/2))調製物についての、様々なアニーリング温度およびコーティング重量でのCobb(30分)の比較
90℃温度処理および延長アニーリング
ブルックフィールド粘性が180〜320(mPa・s)であり、pHが8.3〜5であり、オーブンで乾燥させた固形物が32〜34%DSである、上記一連のより低い温度およびコーティング重量アニーリングのために調製されたものと同じ低熱最適化調製物(LBCv3.0(27)+PI(20P/3))(53.1%のHO、2.5%のアンモニア(25%)、3%のラテックス(61%DS)、20%のグリセロール、21.4%のリグニン、すべてw/w)を使用する。クラフトライナーボード(約185GSM)の光沢面をドローダウンコーター(ロッド7)によって単一コーティング塗布でコーティングし、予め90℃に加熱されたオーブン内で3時間アニーリングした。アニーリングされたコーティング基層は、激しくこすった後でもコーティングの転移は一切なく、Cobb(30分)が72.7(g/m)であった。これに対し、同じように熱処理した同じ基層であるがコーティングされていない対照の基層は、防水バリア性能の増加を示したが、Cobb(30分)は、90.9であった。
アニーリング時間実験
ブルックフィールド粘性が600〜900(mPa・s)であり、pHが8.1〜8.9であり、オーブンで乾燥させた固形物が36〜40%DSである、時間試行最適化調製物(LBCv3.0(29)+PI(20P/3))(51.3%のHO、2.7%のアンモニア(25%)、3%のラテックス(61%DS)、20%のグリセロール、23.0%のリグニン、すべてw/w)。クラフトライナーボード(約185GSM)の光沢面をドローダウンコーター(ロッド6)によって単一コーティング塗布でコーティングし、予め180℃に加熱されたオーブン内で0、0.5、1、1.5、2、5、7および10分間アニーリングした。結果を表9および図7に示す。
使用した研究室規模のオーブンにおいては、基層のコーティングされた表面が目標のアニーリング条件(180℃)に到達するのに約3分が必要であった。また、時間を延長して試験しても性能の向上は限定的であったので、これは、アニーリング時間に関して、最適な性能点のようである。商用規模の加熱設備においては、基層表面が目標のアニーリング条件に到達するのに必要な時間ははるかに短く、通常は秒のオーダーであることが理解される。
表9:クラフト185(約GSM)ライナーボードの光沢面に様々なアニーリング時間でコーティングされた、最適化(LBCv3.0(29)+PI(20P/3))調製物についてのCobb(30分)の比較
低熱最適化調製物(LBCv3.0(27)+PI(20P/3))の調製
周囲リアクタ(ねじふた付きのエルレンマイヤー500mL)に132.75gのDI HOおよび6.28gのNH(25%)を加える。穏やかにかき混ぜて0.69MのNH溶液を生成する。さらに、7.5gのラテックス(61%DS)および50gのグリセロールを加える。リアクタを旋回水浴シェーカーに置き、設定温度90度で加熱(高温)および回転攪拌(低速)を開始する。250gの総調製物に対して、53.47gの篩(600μm)にかけた原料のままのリグニンPB1k(13)2.8%MSTR)を配合する。リグニンが均質に内部に存在する調製物となるまで、80度よりも高い温度で(約1〜2時間)継続する。熱いうちに篩(600μm)にかける。細粒は、非常に少ないか、全く存在しないはずである。
高熱最適化調製物(LBCv3.0(27)+PI(10/2))の調製
周囲リアクタ(ねじふた付きのエルレンマイヤー500mL)に151.07gのDI HOおよび7.24gのNH(25%)を加える。穏やかにかき混ぜて0.7MのNH溶液を生成する。さらに、5gのラテックスおよび25gのグリセロールを加える。リアクタを旋回水浴シェーカーに置き、設定温度90度で加熱(高温)および回転攪拌(低速)を開始する。250gの総調製物に対して、61.68gの篩(600μm)にかけた原料のままのリグニンPB1k(13)3.7%MSTR)を配合する。リグニンが均質に内部に存在する調製物となるまで、80度よりも高い温度で(約1〜2時間)継続する。熱いうちに篩(600μm)にかける。細粒は、非常に少ないか、全く存在しないはずである。
より低い温度でのアニーリングのための調製物(LBCv3.0(29)+PI(20P/3))
リアクタに、900kgの水(脱イオン化)および54kgのアンモニア水(25%のNH)を周囲温度で攪拌しながら加える。60kgの天然ラテックス(61%DS)を加え、攪拌を継続する。400kgのグリセロール(BP)を加え、攪拌を継続する。リアクタを50℃に加熱し始め、460kgの原料のままのリグニンPB1k(13)(2.8%MSTR)を加え始める。リアクタ壁の内部をさらに127kgの水(脱イオン化)で洗浄する。リアクタを閉じ、80℃より高い温度に加熱し、還流しながら少なくとも1時間攪拌する。最終調製物は、周囲温度(約23度)で、約36〜40%DSとなり、pHが約8.1〜8.9となり、ブルックフィールド粘性が600〜900cPとなるはずである。
20%および10%のグリセロールを使用した実験についての結果はそれぞれ、上記方法によって、良好に、グリセロールを使用して、必要なアニーリング温度を低下しつつ同様のCobb値を達成できることを示す。このように、グリセロールを使用することは本発明に必須ではないが、温度を低下することが必要なこと、および形成される防水膜の品質の点では、グリセロールが好適である。
このように、本発明は、リグニンだけを唯一の活性防水および/または強化剤として含む組成物に基づく、優れた品質の防水および/または強化コーティングを提供する。リグニンを転換させて、基層に対して驚くほど有効な防水性および/または強化性を提供する好適な状態にすることは、約160℃より高い温度での熱アニーリングまたは酸処理工程のいずれかによって達成される。そのような簡単な調製物は、取り扱いが容易であり、pHや粘性などの最適化について必要な操作が少なく、活性成分が簡単であり、リグニンが入手しやすいので費用対効果が非常に高い。
ここまで本発明の種々の実施形態を当業者に対する説明を目的として説明した。説明しつくしたわけではないし、本発明を一つの開示実施形態に限定する意図もない。したがって、いくつかの他の実施形態を具体的に説明したが、他の実施形態が当業者にとって明らかであり、比較的容易に開発される。したがって、本明細書は、本発明のあらゆる代替、変更、および変化を含むことを意図する。
添付の特許請求の範囲および本発明の上記説明は、文脈において表現言語または必要な含意によって他の意味を必要とする場合を除き、用語「備える」、「含む」、または「備え」、「含み」などのその変形は、包括的な意味として使用され、すなわち、記載の要素の存在を特定するが、本発明の一つ以上の実施形態において、さらなる要素の存在または追加を排除しない。

Claims (19)

  1. 形成された非金属基層の外面上にコーティングを形成する方法であって、
    (a)リグニンをアルカリ性溶液中に少なくとも部分的に溶解させることによってリグニン溶液を生成する工程であって、ここで、前記リグニンは、主活性防水および/または強化剤であり、亜硫酸パルプ化処理由来のリグニンスルホン酸のリグニンではない、工程と、
    (b)前記リグニン溶液を前記形成された非金属基層の外面上にコーティングする工程と、
    (c)前記リグニンでコーティングされた基層に対して、熱処理および酸処理からなる群から選択される処理を行う工程と
    を含み、前記リグニン溶液のコーティングにおけるpHは、7.0〜9.5であり、これによって、前記形成された非金属基層の外面上にコーティングを形成する方法。
  2. 形成された非金属基層の外面上にコーティングを形成する方法であって、
    (a)リグニンをアルカリ性溶液中に少なくとも部分的に溶解させることによってリグニン溶液を生成する工程であって、ここで、前記リグニンは、主活性防水および/または強化剤であり、亜硫酸パルプ化処理由来のリグニンスルホン酸のリグニンではない、工程と、
    (b)前記リグニン溶液を前記形成された非金属基層の外面上にコーティングする工程と、
    (c)前記リグニンでコーティングされた基層に対して、酸理を行う工程と
    を含み、前記酸処理は、前記リグニンコーティングをpHが4.0より低い酸に接触させる工程を含み、これによって、前記形成された非金属基層の外面上にコーティングを形成する方法。
  3. 前記基層は、リグノセルロース基層、リグノセルロース由来基層、セルロース基層およびセルロース由来基層からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記アルカリ性溶液は、アルカリ性水溶液である、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. 前記アルカリ性水溶液は、アンモニア溶液である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記リグニン溶液におけるリグニンの量は、重量%で、10〜40%である、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
  7. 前記リグニン溶液は、唯一の非溶媒成分としてリグニンを含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
  8. 前記リグニン溶液は、糖および/または糖アルコールをさらに含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
  9. 前記リグニン溶液における前記糖および/または糖アルコールの量は、重量%で、1〜30%である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記リグニン溶液は、可塑剤をさらに含む、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
  11. 前記リグニン溶液中に存在する前記可塑剤の量は、重量%で、1%〜5%である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記リグニン溶液は、唯一の非溶媒成分としてリグニン、グリセロールおよび前記可塑剤を含む、請求項10または請求項11に記載の方法。
  13. 前記コーティングの重量は、8〜35GSMである、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
  14. 前記コーティングにより前記非金属基層の重量が0.1〜20%増加する、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
  15. 前記熱処理は、80℃より高い温度に曝露する工程である、請求項1に記載の方法。
  16. 全組成物のうちの重量%の量で
    (a)35%〜80%のアンモニア溶液と、
    (b)主活性防水および/または強化剤として、前記アンモニア溶液に少なくとも部分的に溶解される10%〜40%のリグニンと、
    (c)5%〜30%のグリセロールと、
    (d)可塑剤と
    を含む組成物。
  17. 前記組成物は、全組成物のうちの重量%の量で
    (a)18%〜27%のリグニンと、
    (b)50%〜67%のアンモニア溶液と、
    (c)10%〜25%のグリセロールと、
    (d)0.1%〜4%のラテックスと
    を含む、請求項16に記載の組成物。
  18. 前記組成物のpHは、7.5〜9.5である、請求項17に記載の組成物。
  19. コーティングを形成された非金属基層の外面上に形成するための請求項16〜18の何れか一項に記載の組成物の使用。
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