JP6770307B2 - 複合微細構造体とその製造方法 - Google Patents

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本発明は、マイクロメートルサイズの金属部分と金属酸化物部分とから構成される複合微細構造体とその製造方法に関する。
電子素子や半導体素子の高性能化、高速化および高集積化等に伴い、微小機械部品や微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)等の微細構造体の形成技術に注目が集まっている。なかでも、レーザ積層造形法,熱溶解堆積法,インクジェット法等の直接描画技術は、マスクを用いたリソグラフィ技術とは異なり工程の簡素化が可能であることから、近年では、これらの直接描画技術を利用した微細構造体の製造技術の開発が進められている。しかしながら、これらの直接描画技術は感光性の樹脂材料への描画を対象としたものが殆どであり、金属材料からなる微細構造体の製造技術については未だ研究段階にある。
特開2013−247181号公報
J. Phys. Chem. C 2011, 115, 23664-23670 ACS Nano, 2014, 8(10), pp 9807-9814
例えば、特許文献1には、金属ナノ粒子を含むペーストを基材に塗布して塗膜を形成したのち、この塗膜にレーザ光を照射して金属ナノ粒子焼結体からなる焼結体を製造する方法が開示されている。しかしながらこの手法は、大気雰囲気下ではレーザによる基材の過熱が避けられず、例えば、不活性雰囲気下での加工が必要であるという欠点があった。
また、非特許文献1および2には、金属酸化物のナノ粒子を含むペーストを基材に塗布して塗膜を形成したのち、この塗膜にレーザ光を照射して金属酸化物を還元するとともに焼結させることで、微細な金属電極を製造する方法が開示されている。しかしながら、これらの手法では、金属酸化物ナノ粒子の還元および焼結と同時に生じる再酸化の現象を制御することができない。したがって、例えば、低抵抗な金属微細構造体をマイクロメートルサイズレベルで精度よく製造するのは困難であった。
このように、直接描画技術を利用した金属材料からなる微細構造体の製造技術に関しては実用化に至っていないのが実情であり、更なる改善が求められている。本発明はかかる事情に鑑み、直接描画技術を利用して、金属酸化物部分と当該金属酸化物が還元されてなる金属部分とから構成されるマイクロメートルサイズの複合微細構造体を提供することを目的としている。また他の側面において、このマイクロメートルサイズの複合微細構造体を製造するという新たな技術を提供することを目的としている。
ここに開示される技術により、金属部分と酸化物部分とを含む複合微細構造体の製造方法が提供される。かかる製造方法は、金属酸化物ナノ粒子およびレーザ光の照射により硬化するレーザ硬化性樹脂を含むナノ粒子含有液を用意すること、基材の表面に上記金属酸化物ナノ粒子含有液を供給すること、上記基材の表面に供給された上記金属酸化物ナノ粒子含有液に超短パルスレーザを照射すること、を含んでいる。そして上記超短パルスレーザの照射により、上記レーザ硬化性樹脂が硬化された樹脂部分と上記金属酸化物ナノ粒子とを含む金属酸化物部分と、上記金属酸化物ナノ粒子が還元されて互いに結合されてなる金属部分と、を含み、少なくとも一の寸法が100マイクロメートル以下であるマイクロメートルオーダーの複合微細構造体を形成することを特徴としている。
ここに開示される技術においては、本質的に、超短パルスレーザを用いることで、金属酸化物ナノ粒子の還元における熱的影響を制御し、金属酸化物ナノ粒子を含む金属酸化物部分と、これが還元された金属部分とを作り分けるようにしている。これにより、例えば一の材料および一の超短パルスレーザ発振装置から簡便に、多様な組成,構造,物性を備え得る金属部分と、金属酸化物部分との組み合わせにより構成される複合微細構造体を製造することができる。
本明細書において、「超短パルスレーザ」は、パルス幅がナノ(10−9)秒よりも小さいパルスレーザを意味し、典型的には、パルス幅が数百ピコ秒(10−10秒)以下程度、典型的には10−12秒以下程度、例えば10−14秒以下程度のパルスレーザであり得る。かかる超短パルスレーザとしては、いわゆるピコ秒レーザや、フェムト秒レーザ、アト秒レーザ等とよばれるものを包含することができる。
なお、この超短パルスレーザは、一般に、パルス幅が熱の移動よりも短い。つまり、熱が結晶格子を伝わり隣の原子にまで拡散するのに要する時間よりも、超短パルスレーザのパルス幅の方が小さい。したがって、レーザによりもたらされるエネルギーは、その殆どが拡散することなく原子に吸収されて反応に寄与しないことが予想されていた。ここに開示される技術は、かかるパルスレーザを利用して複合微細構造体の精密造形を可能としたものである。
また、「レーザ硬化性樹脂」は、レーザ光の照射により硬化する高分子有機化合物を広く一般に包含する。ここで高分子有機化合物の硬化は、レーザ光の照射により迅速に硬化反応(典型的には架橋,重合)が進行する高分子(感光性高分子)であってもよいし、レーザ光のエネルギーから変換された熱エネルギーに基づく発熱により硬化する高分子であってもよい。
ここに開示される複合微細構造体の製造方法の好ましい一態様において、上記金属酸化物ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)およびチタン(Ti)の酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴としている。これにより、さまざまな化学的、物理的、機械的、電気的、磁気的特性を備える複合微細構造体を簡便に製造することができる。
ここに開示される複合微細構造体の製造方法の好ましい一態様において、上記レーザ硬化性樹脂は、ポリビニルピロリドンを含むことを特徴としている。これにより、金属酸化物部分は、金属酸化物ナノ粒子をこれらのレーザ硬化性樹脂で固めた任意の形状とすることができる。
ここに開示される複合微細構造体の製造方法の好ましい一態様において、上記ナノ粒子含有液は、さらに、還元剤を含むことを特徴としている。ここで、還元剤は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ギ酸、過酸化水素水およびトルエンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好適である。これにより上記の複合微細構造体を効率良く製造することができる。
ここに開示される複合微細構造体の製造方法の好ましい一態様において、上記ナノ粒子含有液は、さらに、分散剤を含むことを特徴としている。ここで、分散剤は、ポリビニルピロリドンおよびシリコーン樹脂の少なくとも一方を含むことが好適である。これにより緻密で組織ムラの少ない複合微細構造体を製造することができる。
ここに開示される複合微細構造体の製造方法の好ましい一態様において、上記金属酸化物部分に含まれる金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部は、金属ナノ粒子の表面が酸化されてなるコアシェル構造を有することを特徴としている。これにより、例えば、金属酸化物部分に基づく物性を抑制するなどした、多様な構成の複合微細構造体を製造することができる。
ここに開示される技術は、他の側面において、複合微細構造体を提供する。この複合微細構造体は、金属酸化物ナノ粒子を含む金属酸化物部分と、上記金属酸化物ナノ粒子が還元され互いに結合されてなる金属部分と、を含んでおり、上記金属酸化物部分および上記金属部分の少なくとも一の寸法が100マイクロメートル以下であることを特徴としている。これにより、マイクロメートルオーダーのスケールで、互いに特性の異なる金属部分と金属酸化物部分とを含む複合微細構造体が提供される。
ここに開示される複合微細構造体において、金属部分は、好適には、金属酸化物ナノ粒の少なくとも一部が還元されて互いに直接結合されることで構成されている。また、上記金属酸化物部分および上記金属部分は一体化されている。
また、上記金属酸化物ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物を好ましく含むことができる。
ここに開示される複合微細構造体の好ましい一態様において、上記金属酸化物部分はさらにレーザ硬化性樹脂を含み、上記金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部は上記レーザ硬化性樹脂により互いに結合されていることを特徴としている。これにより、金属酸化物部分をより多様な特性を付与することができる。かかる金属酸化物部分を、第1金属酸化物部分という。
ここに開示される複合微細構造体の好ましい一態様では、上記金属酸化物部分において、上記金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部は互いに直接結合されていることを特徴としている。これにより、金属部分の機械的強度を高めることができる。かかる金属酸化物部分は、金属部分の再酸化により形成され、レーザ硬化性樹脂が消失されている。この金属酸化物部分を、第2金属酸化物部分という。
ここに開示される複合微細構造体の好ましい一態様では、上記第1金属酸化物部分と上記第2金属酸化物部分との合計に占める、上記第1金属酸化物部分の割合は50体積%以上である。これにより、金属部分の再酸化が抑制されて、金属部分と金属酸化物部分とがより明瞭に区別され得る複合微細構造体が実現される。
ここに開示される複合微細構造体の好ましい一態様において、上記金属酸化物部分に含まれる上記金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部は、当該金属酸化物ナノ粒子が還元された金属ナノ粒子の表面が酸化されてなるコアシェル構造を有することを特徴としている。これにより、金属酸化物部分をより多様な構成とすることができる。
以上の複合微細構造体は、金属部分および金属酸化物部分を構成する金属元素として様々な元素を考慮することができる。したがって、様々な物性を有する複合微細構造体が実現され得る。かかる複合微細構造体を含む物品としては、例えば、マイクロタービン部品、マイクロ配線、温度センサ等が好適な例として挙げられる。
一実施形態に係る複合微細構造体の製造方法のフロー図である。 一実施形態に係る複合微細構造体の製造方法における、(A)金属部分と(B)金属酸化物部分との形成について説明する図である。 金属酸化物のエリンガム図の一例である。 (a)は一実施形態に係るマイクロタービン本体のCAD図面であり、(b)は一実施形態に係るマイクロタービン本体の光学顕微鏡像である。 一実施形態に係るマイクロワイヤの(a)斜視図と(b)積層化断面図である。 一実施形態に係るマイクロワイヤの光学顕微鏡像である。 他の実施形態に係るマイクロワイヤの光学顕微鏡像である。 一実施形態に係る複合微細構造体の(a)描画パターンと(b)光学顕微鏡像である。 一実施形態に係る複合微細構造体の製造における超短パルスレーザのパルスエネルギーと複合微細構造体の線幅との関係を示す図である。 他の実施形態に係る複合微細構造体の製造における超短パルスレーザのパルスエネルギーと複合微細構造体の線幅との関係を示す図である。 (a)(b)は異なるレーザ条件で作製した複合微細構造体の光学顕微鏡像である。 一実施形態に係る複合微細構造体における線幅と電気抵抗との関係を示す図である。 一実施形態に係る複合微細構造体の製造における超短パルスレーザの走査速度とNi/NiO比との関係を示す図である。 一実施形態に係る複合微細構造体の製造における超短パルスレーザの走査速度と複合微細構造体の線幅との関係を示す図である。 図13(a)(b)は、一実施形態に係る複合微細構造体の描画パターンの形成を説明する図である。 図14は、一実施形態に係る(a)微細素子の構成を説明する図と、(b)複合微細構造体のSEM像である。 図15は、一実施形態に係る(a)Cu−rich組成および(b)Cu−rich組成の複合微細構造体の抵抗温度特性を示す図である。
以下、本発明の複合微細構造体の製造方法を主として説明しながら、本発明が提供する複合微細構造体についても併せて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(複合微細構造体の製造に用いる原料や装置等の一般的技術事項)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において、「A〜B」で表される数値範囲は、A以上B以下を示す。
図1は、ここに開示される複合微細構造体の製造方法のフロー図である。複合微細構造体は、後で詳しく説明するが、(A)金属部分と(B)金属酸化物部分とを含む構造体である。かかる製造方法は、本質的に下記の(S1)〜(S3)の工程を含んでいる。以下、各工程について説明する。
(S1)金属酸化物ナノ粒子含有液の用意。
(S2)金属酸化物ナノ粒子含有液の供給。
(S3)超短パルスレーザの照射。
[S1.金属酸化物ナノ粒子含有液の用意]
まず、工程S1では、複合微細構造体の製造に用いる金属酸化物ナノ粒子含有液を用意する。この金属酸化物ナノ粒子含有液は、複合微細構造体の構成材料の一部である金属酸化物ナノ粒子と、未硬化の状態のレーザ硬化性樹脂とを含んでいる。レーザ硬化性樹脂が液状である場合には、このレーザ硬化性樹脂を金属酸化物ナノ粒子の分散媒として利用してもよい。レーザ硬化性樹脂が適切な液状でなかったり、次の供給工程に適さない性状であったりする場合等には、上記金属酸化物ナノ粒子およびレーザ硬化性樹脂のほかに、これらを適切に分散し得る分散媒を含むことができる。
金属酸化物ナノ粒子は、複合微細構造体において金属酸化物部分に含まれる。これとともに、当該金属酸化物を構成する金属元素が、金属部分を構成する。この金属酸化物ナノ粒子は、少なくとも一部に当該金属酸化物を含むナノ粒子であり得る。また、複合微細構造体の金属部分は、金属酸化物ナノ粒子を構成する金属元素からなる金属であって、典型的には金属酸化物ナノ粒子が還元されてなる金属を含んでいる。したがって、金属酸化物部分と金属部分とでは、それらを主として構成する金属元素が共通して存在する。かかる点において、金属酸化物ナノ粒子の組成は所望の特性を備える複合微細構造体を得るために重要である。この金属酸化物ナノ粒子を構成する金属元素としては特に制限されず、各種の金属元素を考慮することができる。具体的には、例えば、ベリリウム(B),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi)等の半金属元素、マンガン(Mg),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba),亜鉛(Zn),アルミニウム(Al),ガドリニウム(Ga),インジウム(In),すず(Sn),鉛(Pb)等の典型元素、スカンジウム(Sc),イットリウム(Y),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン(W),マンガン(Mn),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),銀(Ag),金(Au)等の遷移金属元素等が挙げられる。
なお、例えば図3に示したエリンガム図において、上方(標準生成自由エネルギーがより大きい)に示される金属酸化物は比較的容易に還元し得るという点において好適な材料である。また、エリンガム図の下方(標準生成自由エネルギーがより小さい)に示される金属酸化物は、酸化物として安定であり、複合微細構造体の形状精度を安定させられるとの点においては好適な材料であり得る。ここで、本発明者らは、例えば、エリンガム図におけるAgOからTiOにまで亘る金属酸化物ナノ粒子を使用して、ここに開示される複合微細構造体の製造が可能であることを確認している。また、本発明においては、金属酸化物ナノ粒子の還元と再酸化とを高度に制御し得る。したがって、金属酸化物ナノ粒子を構成する金属元素としては、当該金属元素の本来有する特性に基づき所望の金属元素を選択することができる。
例えば、かかる金属元素としては、上記のうちでも、MEMS等において利用が求められているAu,Ag,Cu,Ni,FeおよびチタンTi等であることが好ましい。例えば、導線などとして使用されるマイクロワイヤを形成する用途では、電気伝導性が良好なAu,Ag,Cu等を金属元素として選択し、かかる金属元素の酸化物(すなわち、Au,Ag,AgO,AgO,CuO,CuO等)からなる金属酸化物ナノ粒子を用意すればよい。あるいは、これらの金属元素の酸化物(すなわち、Au,Ag,AgO,AgO,CuOおよびCuO)を少なくとも一部に含む金属酸化物ナノ粒子を用意すればよい。これらの金属元素は、いずれか1種が単独で金属酸化物を構成してもよいし、2種以上が組み合わされて金属元素酸化物を構成していてもよい。
また、金属酸化物ナノ粒子は、その全体が金属酸化物により構成されていても良いし、一部が金属酸化物により構成されていても良い。例えば、金属酸化物ナノ粒子は、少なくとも一部または全部に金属酸化物を含むナノ粒子であり得る。例えば、金属酸化物ナノ粒子は、表面の少なくとも一部または全部に金属酸化物を備えるナノ粒子であり得る。この場合、金属酸化物ナノ粒子はコアシェル構造を有するコアシェル粒子であってよい。コアシェル構造の金属酸化物ナノ粒子は、好ましくはシェル部分として金属酸化物を備え得る。コアシェル粒子のコア部分を構成する材料については特に制限されない。例えば、上記の金属酸化物、上記以外の金属酸化物、各種の金属、セラミックス、ガラス、有機高分子材料等であってよい。金属酸化物ナノ粒子の形状は特に制限されず、球形、ロッド状、板状、不定形状等の各種の形状であってよい。
金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は特に制限されず、例えば、100nm以下程度のものを用いることができる。しかしながら複合微細構造体をより緻密で寸法精度の高いものとするためには、金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径はより小さいことが好ましい。例えば、平均粒子径は、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下(例えば、2〜5nm程度)であることが特に好ましい。
なお、金属酸化物ナノ粒子の平均粒径は、動的光散乱法(DLS)に基づき測定される値を採用することができる。例えば、散乱光の周波数解析に基づく粒度分布において、累積50%に相当する粒径(メジアン径D50)により表すことができる。
また、金属酸化物ナノ粒子は、原料から調製して用いても良いし、例えば分散液等の状態で市販されている金属酸化物ナノ粒子を入手して用いても良い。かかる点においても、金属酸化物ナノ粒子含有液は、金属酸化物ナノ粒子を好適に分散させ得る分散媒を含むことができる。分散媒としては特に制限はなく、典型的には、各種の炭化水素;ハロゲン化炭化水素類;メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,ブタノール,イソブタノール,イソプロパノール等のアルコール類;ポリエチレングリコール等のグリコール類;フェノール類;エーテル類;アセトン,メチルエチルケトン等のケトン類;ポリアセタール等のアセタール類;エステル類;n−ブチルアミン等のアミン類;不飽和脂肪酸;イオン交換水,蒸留水,純水等の水;等が挙げられる。
レーザ硬化性樹脂としては、上記のとおり、レーザ光の照射により硬化し得る各種の樹脂を用いることができる。例えば、所定の波長のレーザ光の照射により重合反応を開始して硬化し得る感光性樹脂等であってもよいし、レーザ光の照射による発熱により重合反応を開始して硬化し得る熱硬化性樹脂等であってもよい。これらのレーザ硬化性樹脂は、必要に応じて、適切な重合開始剤を含んでいても良い。
感光性樹脂としては、レーザ光の照射による光吸収等に基づき架橋または重合を開始し、硬化する樹脂材料を広く制限なく包含し得る。このような感光性樹脂としては、重合可能なモノマーであって、直接光を吸収して重合を開始する樹脂であってもよいし、増感剤を含む重合可能なモノマーであって、吸収波長領域外の光を吸収して重合を開始する増感光重合系の樹脂であってもよい。このような感光性樹脂が無数に知られていることは当業者に公知の事実であるが、例えば、一例として、塩化ビニル,スチレン,メチルメタクリレートおよびこれらの誘導体等に代表される直接光重合系樹脂;エチレン,塩化ビニル,アセトン,ブタジエン,スチレン,トリフェニルポスフィン,メチルメタクリレートおよびこれらの誘導体等に代表される増感光重合系樹脂;等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、レーザ光の照射による光エネルギーから変換された熱エネルギーによる加熱に基づき重合を起こし、硬化し得る樹脂材料を広く制限なく包含し得る。具体的には、例えば、フェノール樹脂(PF),エポキシ樹脂(EP),メラミン樹脂(MF),尿素樹脂(ユリア樹脂、UF),不飽和ポリエステル樹脂(UP),アルキド樹脂,ポリウレタン(PUR),熱硬化性ポリイミド(PI)等が例示される。
以上のレーザ硬化性樹脂は、複合微細構造体においては、硬化後の硬化物として金属酸化物部分に含まれ得る。したがって、かかる金属酸化物部分に付与する所望の特性に応じて適切な熱硬化性樹脂を選択して用いることができる。例えば、複合微細構造体の金属酸化物部分に高い絶縁性が求められる場合は、レーザ硬化性樹脂として、ポリビニルフェノール等のフェノール樹脂や、熱硬化性ポリイミド等を用いることが好ましい。このレーザ硬化性樹脂は、金属酸化物ナノ粒子含有液に添加された状態において、例えば、低分子単量体の混合物の状態であっても良いし、ある程度まで重合が進行した高分子であってもよい。これらは、いずれか1種の樹脂(モノマーであり得る)を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて(ブレンドを含む)用いるようにしても良い。
また、レーザ硬化性樹脂は、超短パルスレーザの照射後の金属酸化物部分において、金属酸化物ナノ粒子同士を結合したり基材に結合させたりする役割を担い得る。金属酸化物ナノ粒子含有液中におけるレーザ硬化性樹脂の割合は特に制限されないものの、例えば、金属酸化物ナノ粒子を結合するに必要な量とすることができる。このようなレーザ硬化性樹脂の割合は、例えば、金属酸化物ナノ粒子100質量部に対して5〜30質量部とすることができ、5〜25質量部とすることが好ましく、10〜20質量部とすることがより好ましい。
また、金属酸化物ナノ粒子含有液は、必ずしもこれに限定されるものではないが、還元剤および/または分散剤等に代表される添加剤を含むことができる。
還元剤は、後述の超短パルスレーザの照射工程(S3)における金属酸化物ナノ粒子の還元反応を促進させる役割を担い、かかる還元反応を促進し得る各種の化合物を使用することができる。例えば、具体的には、エチレングリコール,ポリエチレングリコール等のグリコール類、アルデヒド,ギ酸,ギ酸エステル等のアルデヒド基を有する化合物、過酸化水素水、二酸化硫黄、トルエン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
還元剤の添加量は特に制限されない。例えば、具体的には、金属酸化物ナノ粒子100質量部に対して1〜250質量部とすることができ、5〜100質量部とすることが好ましく、20〜50質量部とすることがより好ましい。
分散剤としては、金属酸化物ナノ粒子の凝集を防ぐ作用を有する各種の化合物を特に制限なく用いることができる。例えば、アニオン性、カチオン性または非イオン性の分散剤等を用いることができる。具体的には、アニオン性分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩などのポリカルボン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩などのナフタレンスルホン酸系分散剤、アルキルスルホン酸系分散剤、ポリリン酸系分散剤などが挙げられる。カチオン性分散剤としては、例えば、ポリアルキレンポリアミン系分散剤、第四級アンモニウム系分散剤、アルキルポリアミン系分散剤などが挙げられる。非イオン性分散剤としては、例えば、アルキレンオキサイド系分散剤、多価アルコールエステル系分散剤、ポリビニルピロドン等のN−ビニルラクタム系分散剤、シクロペンタシロキサン,ジメチルポリシロキサン等のシリコーン樹脂系分散剤などが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
分散剤の添加量は特に制限されず、例えば、使用する金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径や表面性状等に応じて決定することができる。例えば、具体的には、金属酸化物ナノ粒子100質量部に対して、1〜30質量部とすることができ、1〜25質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがより好ましい。
なお、金属酸化物ナノ粒子含有液は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、上記の還元剤および分散剤以外の添加剤を含み得る。このような添加剤としては、例えば、一例として、粘度調整剤が挙げられる。金属酸化物ナノ粒子含有液の粘度を適切に調整することで、金属酸化物ナノ粒子の分散性を高め得るほか、次工程の基材上への金属酸化物ナノ粒子含有液の供給を好適に行うことができる。粘度調整剤としては特に制限されないが、非イオン性ポリマー、例えばポリエチレングリコールなどのポリエーテルが挙げられる。
以上の還元剤,分散剤およびその他の添加剤については、同一の化合物が2通り以上の添加剤として機能する場合があり得る。
以上の材料を均一に混合することで、金属酸化物ナノ粒子含有液を調製することができる。金属酸化物ナノ粒子含有液全体に占める金属酸化物ナノ粒子の割合(濃度)は特に制限されないが、例えば、5〜80質量%、好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは30〜60質量%程度を目安に調製することができる。各材料の混合には、ミキサー、超音波撹拌装置、せん断撹拌機、ホモジナイザー等の公知の各種の撹拌、混合、乳化のための装置を用いることができる。上記材料を撹拌する順序は特に限定されず、例えば一度に全ての材料を混合してもよく、複数回に分けて混合してもよい。例えば、分散媒を用いる系では、分散媒に金属酸化物ナノ粒子と分散剤を投入して撹拌した後、レーザ硬化性樹脂,還元剤等の添加剤を後で加えるようにしてもよい。
[S2.金属酸化物ナノ粒子含有液の供給]
工程S2では、上記で調製した金属酸化物ナノ粒子含有液を、基材の表面に供給する。
基材の材質および形状は制限されない。例えば、半導体材料、セラミック等の無機材料、ガラス等のアモルファス材料、金属材料、樹脂材料等からなる基材であってよい。また基材の表面は平滑面であっても良いし、湾曲面や、凹凸が付与された面等であっても良い。さらに、基材は湾曲等の変形可能(フレキシブル)に構成されていても良いし、形状が固定されていても良い。また、製造後の複合微細構造体と分離去可能な材料であっても良いし、製造後の複合微細構造体から除去可能な材料であっても良い。例えば、製造後の複合微細構造体が容易に分離できるように処理(易剥離化処理)が施されていても良い。
金属酸化物ナノ粒子含有液の基材への供給手法については特に制限されない。例えば、塗布法、スクリーン印刷法、キャスト法、ディップコーティング法、スピンコート法、電気泳動法、スプレー法、インクジェット法等の各種の手法を利用して供給することができる。これにより、基材上に金属酸化物ナノ粒子含有液からなる層状物を形成することができる。
なお、金属酸化物ナノ粒子含有液の供給は、一度に行うことに限られず、複数回行うこともできる。すなわち、例えば、金属酸化物ナノ粒子含有液を所望の厚みに供給(塗布)するために、金属酸化物ナノ粒子含有液の供給回数を一回または複数回で調整することができる。また、次工程の超短パルスレーザの照射工程(S3)と金属酸化物ナノ粒子含有液の供給工程(S2)とを交互に複数回繰り返し行うこともできる。例えば、金属酸化物ナノ粒子含有液の供給と超短パルスレーザの照射との照射を繰り返し行うことで、3次元的に複雑な構造の複合微細構造体を造形してゆくこともできる。
[S3.超短パルスレーザの照射]
工程S3では、上記で基材の表面に供給された前記金属酸化物ナノ粒子含有液に超短パルスレーザを照射する。超短パルスレーザは、パルス幅がナノ秒(10−9秒)よりも小さいパルスレーザを発振し得る各種のレーザ発振装置を用いて照射することができる。例えば、市販の超短パルスレーザ描画装置を用いることで簡便にレーザ照射を行うことができる。
ここに開示される技術においては、図2に示されるように、基材に供給された金属酸化物ナノ粒子含有液への超短パルスレーザの照射条件を調整することにより、(A)金属部分と、(B)金属酸化物部分と、を異なる構成のものとして形成する。超短パルスレーザが照射された後の金属酸化物ナノ粒子含有液には、(A)金属部分と、(B)金属酸化物部分との他に、(C)金属酸化物ナノ粒子含有液の未反応部分とが存在する。ここで、(C)未反応部分とは、レーザ硬化性樹脂が硬化しなかった金属酸化物ナノ粒子含有液の供給部分である。この(C)未反応部分を適切な溶媒で洗い流すなどして除去することで、(A)金属部分と(B)金属酸化物部分とからなる複合微細構造体を得ることができる。この洗浄に用いる溶媒には、例えば、上記金属酸化物ナノ粒子含有液に使用することのできる分散媒等を好適に用いることができる。あるいは、(C)未反応部分が形成されないよう、金属酸化物ナノ粒子含有液の全体で少なくともレーザ硬化性樹脂が硬化する条件で超短パルスレーザを照射し、複合微細構造体を製造してもよい。このようにして得られる複合微細構造体は、(A)金属部分と(B)金属酸化物部分とがマイクロメートルオーダーの寸法で極めて精度よく形成されたものであり得る。
ここで、(B)金属酸化物部分とは、金属酸化物ナノ粒子を含む部分である。より典型的には、(B)金属酸化物部分は、金属酸化物ナノ粒子含有液に含まれるレーザ硬化性樹脂が硬化された樹脂部分と、金属酸化物ナノ粒子と、を含んでいる。具体的には、レーザ硬化性樹脂は、超短パルスレーザの照射により硬化されて樹脂部分となり、隣り合う金属酸化物ナノ粒子同士を結合したり、金属酸化物ナノ粒子を基材に結合したりする。したがって、例えば、所望の領域にレーザ硬化性樹脂を硬化し得る条件の超短パルスレーザを照射することで、当該照射領域と対応した形状の金属酸化物部分を形成することができる。かかる(B)金属酸化物部分は、その割合にもよるが、主として当該金属酸化物に基づいた物性を備え得る。
また、(A)金属部分とは、金属酸化物ナノ粒子が還元されて金属ナノ粒子になるとともに、かかる金属ナノ粒子が互いに結合されることで構成された部分である。金属酸化物ナノ粒子の還元と結合とは、同時に進行しても良いし、いずれか一方が先に進行しても良い。なお、金属酸化物ナノ粒子の還元が生じるようなレーザ照射条件においては、上記の(B)金属酸化物部分にみられる樹脂部分は分解されて消失され得る。したがって、本質的に、この(A)金属部分にはレーザ硬化性樹脂やその他の添加剤等の有機化合物は含まれないと考えることができる。かかる(A)金属部分は、本質的に、当該金属に基づいた物性を備えることができる。
なお、(A)金属部分は、典型的には、金属酸化物ナノ粒子の還元が始まった後に、金属化されたナノ粒子同士が結合することで形成される。金属酸化物ナノ粒子の還元は、当該金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属酸化物の全部が還元されることで実現されてもよいし、一部が還元されることで実現されてもよい。換言すると、金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属酸化物は、全部が当該金属酸化物を構成する金属元素の単体に金属化されていてもよいし、一部が金属化されていてもよい。そして、(A)金属部分は、金属酸化物ナノ粒子のうちの少なくとも一部の金属化された金属からなる部位(以下、単に「金属化部位」という。)同士が直接結合することで形成されている。したがって、(A)金属部分は、金属酸化物を構成していた金属のみから構成されていても良いし、未還元の金属酸化物や、当該金属酸化物の変性物を含んでいても良い。たとえば、金属酸化物ナノ粒子の全体が金属酸化物からなる場合であって、その金属酸化物の全体が還元されたときは、(A)金属部分は、当該金属酸化物を構成していた金属からなる金属ナノ粒子の結合物として形成される。
(A)金属部分は、金属酸化物ナノ粒子がレーザ照射により還元されて形成されるため、レーザ走査面に少なくとも金属化部位を備えている。レーザ走査面は、典型的には、露出面であり得るが、複合微細構造体が3次元的に造形された形状を有する場合は、構造体の内部にレーザ走査面が含まれ得る。また、(A)金属化部位は、少なくとも一部が金属化されていることで、いわゆる金属光沢が認められる。金属光沢は、(A)金属化部位が未還元の金属酸化物を含む場合においても認められ得る。したがって、複合微細構造体の全体を観察したとき、未還元状態の(B)金属酸化物部分と比較して、(A)金属化部位には金属光沢が認められる点において、(B)金属酸化物部分と区別することができる。例えば、(A)金属化部位は、(B)金属酸化物部分よりも光の反射率が高い部位として把握することができる。
金属酸化物を構成する金属種や金属酸化物ナノ粒子の形態にもよるため一概には言えないが、(A)金属部分は、金属酸化物からなる部位と当該酸化物を構成する金属からなる金属化部位との合計のうち、10質量%以上を金属化部位が占めることで構成されていることが好ましい。(A)金属部分における金属化部位の割合は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、例えば50質量%以上であることがより好ましい。
(A)金属部分において、還元された金属酸化物ナノ粒子は、粒子表面の少なくとも一部が溶融したのち固化して隣り合う金属ナノ粒子同士が互いに結合していても良い。還元された金属酸化物ナノ粒子は、一部が溶融しても良いし、全部が溶融しても良い。あるいは、還元された隣り合う金属酸化物ナノ粒子同士が溶融することなく焼結により互いに結合していても良い。なお、金属酸化物ナノ粒子の表面が溶融した場合は、(A)金属部分が基材に対しても強固に結合され得る。
なお、ここに開示される複合微細構造体は、必ずしもこれに限定されないが、(B)金属酸化物部分において、(B’)本質的に樹脂部分を含まず、金属酸化物を含んでいる部分(便宜的に、第2金属酸化物部分という)が存在し得る。すなわち、この(B’)第2金属酸化物部分においては、超短パルスレーザの照射により上記の(B)金属酸化物部分にみられる樹脂部分が消失されたと考えることができる。このとき、(B’)第2金属酸化物部分は、原料として使用した金属酸化物ナノ粒子のそのまま(未反応のまま)存在しているのではなく、典型的には、上記の(A)金属部分が再度酸化されることで形成されたものであり得る。つまり、(B)金属酸化物部分でありながら、この(B’)第2金属酸化物部分において金属酸化物ナノ粒子は互いに直接結合されている。あるいは、金属酸化物ナノ粒子が溶融されて一体化されていながら、その少なくともレーザ走査面(露出部等であり得る。)は金属酸化物から構成されている。このような(B’)第2金属酸化物部分は、(A)金属部分の全部が再酸化された形態であってよい。なお、(A)金属部分の一部のみが再酸化された形態については、なお(A)金属部分と見なすことができるからである。
後述するが、ここに開示される技術によると、(A)金属部分の再酸化を好適に抑制して、複合微細構造体を作製することができる。したがって、複合微細構造体において、第1金属酸化物部分と第2金属酸化物部分との合計に占める、第1金属酸化物部分の割合は50体積%以上とすることができ、60体積%以上がより好ましく、70体積%以上が特に好ましい。再酸化が進むと、金属部分は完全に溶融して発泡し、超短パルスレーザによる微細加工の効果が得られ難い。かかる観点からも第1金属酸化物部分の割合が多いことが好ましい。換言すると第2金属酸化物部分の割合は少ないことが好ましい。
なお、用意した金属酸化物ナノ粒子の金属元素が2価以上で酸化物を構成している場合には、当該金属酸化物と金属(ゼロ価)との間で異なる価数の酸化物(以下、低次の金属酸化物という)を形成し得る。つまり、元の金属酸化物が還元されて、新たな低次の金属酸化物が形成される場合がある。この低次の金属酸化物は、(A)金属部分に含まれていてもよいし、(B)金属酸化物部分に含まれていてもよい。そこで、ここに開示される複合微細構造体は、必ずしもこれに限定されないが、(B)金属酸化物部分において、(B”)元の金属酸化物とは異なる低次の金属酸化物からなる金属酸化物部分(便宜的に、第3金属酸化物部分という。)を含み得る。この(B”)第3金属酸化物部分は、本質的に当該低次の金属酸化物に基づいた物性を備えることができる。
以上の複合微細構造体において、(A)金属部分および(B)〜(B”)金属酸化物部分は、それぞれ複合微細構造体中に任意に配置していてよく、1つの複合微細構造体中に単数または複数の(A)金属部分および(B)〜(B”)金属酸化物部分が含まれ得る。
また、ここに開示される技術によると金属酸化物ナノ粒子の還元の程度を詳細に制御し得ることから、(B)金属酸化物部分、(B’)第2金属酸化物部分および(B”)第3金属酸化物部分を分けて説明した。しかしながら、(B)金属酸化物部分と(B’)第2金属酸化物部分とは、いずれも同じ金属酸化物に基づく物性を備え得ることから、必ずしも明瞭に区別する必要はない。例えば、複合微細構造体の用途等に応じて必要な場合に区別すればよい。また、(B”)第3金属酸化物部分についても、例えば、複合微細構造体の用途等に応じて(B)金属酸化物部分と区別しても良いし、区別しなくても良い。以下、必要な場合を除き、金属酸化物部分(B)〜(B”)を区別することなく説明を行う。
以上の(A)金属部分と(B)金属酸化物部分とは、例えば、超短パルスレーザ照射条件を一部変化させることで作り分けることができる。換言すると、同一の材料と、同一の超短パルスレーザ描画装置とを用いながら、かかる装置から発振される超短パルスレーザの照射条件を調整することで、(A)金属部分と(B)金属酸化物部分との作り分けを可能としている。
なお、超短パルスレーザは、パルス幅が1ナノ秒よりも小さいレーザである。金属や金属酸化物等においては、熱が固体を構成する格子(結晶格子)を伝わって隣の原子にまで拡散するのにおおよそ1ピコ秒程度の時間を要するといわれている。より具体的には、かかる熱の移動は、伝導電子などが他の原子と衝突してから、次の衝突までに要する平均時間である平均自由時間(緩和時間、衝突緩和時間等ともいう)により見積もることができ、対象とする物質および加熱温度により異なる。そして一般的な金属については数ピコ秒程度であることが知られている。なお、この平均自由時間は、例えば、電子−フォノンカップリングパラメータ等から算出することができる。したがって、レーザのパルス幅が熱の移動よりも短いとき、レーザによりもたらされるエネルギーはその殆どが拡散することなく原子に吸収され得る。そしてレーザの照射が終了した後、次のレーザが照射されるまでの間に、原子に吸収されたエネルギーに基づいて格子が加熱され、冷却される。あるいは、吸収されたエネルギーが多い場合には、格子が帯熱したり熱伝導が起り得る。
ここに開示される技術においては、超短パルスレーザを用いることにより、金属酸化物ナノ粒子に熱の移動(平均自由時間)よりも短い期間ずつパルスエネルギーを供給する。また、1パルスのレーザにより供給されるパルスエネルギーを詳細に制御し得る。したがって、例えば、熱拡散を抑制しながら金属酸化物ナノ粒子の加熱を行うことができる。これにより、ナノ粒子を構成している金属酸化物の組成に応じて適切な量のパルスエネルギーを、超短パルスレーザにより供給することで、上記の(A)金属部分を形成する反応と、(B)金属酸化物部分を形成するための反応を、局所的にかつ選択的に生じさせることができる。そして(A)金属部分および(B)金属酸化物部分以外の部分を、(C)未反応部分として残存させることができる。
(B)金属酸化物部分を形成するためには、(B)金属酸化物部分を形成したい箇所にレーザ硬化性樹脂が硬化する条件で超短パルスレーザを照射する。例えば、レーザ硬化性樹脂が光硬化性樹脂の場合、当該樹脂が重合を開始し得るような波長のレーザを照射すればよい。また、例えば、レーザ硬化性樹脂が熱硬化性樹脂の場合、当該樹脂が重合を開始し得るような温度以上に熱硬化性樹脂が加熱されるよう、金属酸化物ナノ粒子にパルスエネルギーを供給すればよい。あるいは、パルスエネルギーを供給されて発熱した別の金属酸化物ナノ粒子から熱硬化性樹脂に伝わった熱が、当該樹脂が重合を開始し得るような温度以上となるように、別の金属酸化物ナノ粒子にパルスエネルギーを供給すればよい。かかるパルスエネルギー量は、上記のとおり、金属酸化物ナノ粒子の組成や体積、環境温度や、熱硬化性樹脂の物性等を基に算出することができる。
(A)金属部分を形成するためには、(A)金属部分を形成したい箇所に含まれる金属酸化物ナノ粒子を、当該金属酸化物が還元され得る条件で、超短パルスレーザを照射すればよい。金属酸化物の還元機構については特に限定されない。例えば、具体的には、当該金属酸化物が熱還元され得る温度以上に加熱できる条件で、金属酸化物ナノ粒子に超短パルスレーザを照射すればよい。金属酸化物の熱還元は、例えば、下記の一般式(1)および(2)で示すことができる。そしてこの熱還元に要するエネルギー量は、金属酸化物ナノ粒子の組成や体積、その標準生成自由エネルギー、環境温度等を基に算出することができる。このように熱還元される金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子自体の温度上昇により焼結し得る。また、熱還元が生じ得る温度において、レーザ硬化性樹脂は概ね加熱により焼失され得る。これにより、還元された金属ナノ粒子が焼結してなる(A)金属部分が形成される。
(金属酸化物がCuOで、還元剤としてEGを使用した場合)
2HO(CHOH → 2CO+HO↑ …(1)
2CO + CuO
→ C + 2H +2e + CuO
→ Cu + HO …(2)
なお、金属酸化物ナノ粒子に、還元に要するよりも多いエネルギーが供給されたとき、金属酸化物ナノ粒子は金属ナノ粒子へと還元されたのち、例えば表面の一部または全体が溶融され得る。このようなときには、還元された金属ナノ粒子が溶融されたのち固化してなる(A)金属部分が形成される。
このような金属ナノ粒子の溶融が生じるような場合は、加熱溶融された金属ナノ粒子から、周囲へと熱伝導が生じ得る。かかる熱伝導により、(A)金属部分の周辺に、金属酸化物ナノ粒子は熱還元されないものの、熱硬化性樹脂が硬化する領域が形成され得る。これにより、(B)金属酸化物部分を形成することができる。
一方で、(B)金属酸化物部分は、金属酸化物ナノ粒子は還元(例えば熱還元)されないものの、熱硬化性樹脂が硬化する程度の温度にまで金属酸化物ナノ粒子を加熱することによっても形成することができる。かかる反応に要するエネルギー量は、使用する熱硬化性樹脂の物性(硬化温度)や金属酸化物ナノ粒子の組成や体積等に基づき算出することができる。
そして、金属酸化物ナノ粒子がより低次の酸化物を形成し得るとき、金属酸化物ナノ粒子が金属(ゼロ価)にまでは還元(例えば熱還元)されないものの、当該低次の金属酸化物にまで熱還元されるよう金属酸化物ナノ粒子を加熱することができる。これにより、(B”)第3金属酸化物部分を形成することができる。かかる(B”)第3金属酸化物部の形成に必要なパルスエネルギー量は、元の金属酸化物および低次の金属酸化物の組成や標準生成自由エネルギー、体積、環境温度等を基に算出することができる。
他方で、(B’)第2金属酸化物部分は、金属酸化物ナノ粒子に、還元に要するよりも十分に過剰なエネルギーを供給したときに、形成され得る。すなわち、一旦還元された金属ナノ粒子は、過剰なエネルギーにより酸化され易い状態におかれ、再度金属酸化物へと酸化され得る。これにより、(A)金属部分が再酸化されてなる(B’)第2金属酸化物部分が形成される。
なお、超短パルスレーザを用いる場合であっても、さらに過剰のエネルギーを供給すると、金属酸化物ナノ粒子は急激に加熱溶融されて突沸状態となり得る。かかる突沸部分は冷却されると第2金属酸化物部分と見なせるが、突沸により寸法精度が大きく乱れ得る。このような状態は、ここに開示される複合微細構造体において好ましくない形態であり得る。したがって、金属酸化物ナノ粒子が急激に加熱溶融される程度の過剰なパルスエネルギーを供給することは好ましくないと言える。
なお、たとえ金属酸化物ナノ粒子含有液に超短パルスレーザが照射されても、上記のレーザ硬化型樹脂の硬化反応や、金属酸化物ナノ粒子の還元反応が引き起こされない限り、当該照射領域は(C)未反応のままである。すなわち、超短パルスレーザはパルス幅が極めて短いため、硬化反応や還元反応が生じ得ない程度のエネルギーは格子に吸収された後に冷却されるなどして反応に寄与しない。したがって、使用する超短パルスレーザ発振装置から発振されるレーザの強度分布を考慮して、上記の超短パルスレーザの照射条件を調整することができる。これにより、(A)金属部分、(B)〜(B”)金属酸化物部分が任意に組み合わされてなる複合微細構造体が実現される。
超短パルスレーザの照射条件の制御により、以上のとおり金属酸化物ナノ粒子に供給するべきパルスエネルギー量を基に様々に調整することができる。複合微細構造体の好適な製造を可能とする超短パルスレーザの照射条件を一概に規定することは困難であるが、おおよその目安として、例えば、レーザ発振条件を、波長350〜1560nm,パルス幅10fs〜300ps,繰返し周波数10kHz〜100MHz,最大パルスエネルギー0.2〜1.2nJ、フルーエンス1.5〜15000J/m、走査速度30〜1500μm/s程度の範囲で調整することが好適な例として示される。
なお、下記の実施形態において、対象とする金属酸化物ナノ粒子ごとに、(A)金属部分、(B)〜(B”)金属酸化物部分および(C)未反応部分とを形成し得る条件の一例を示している。当業者であれば、かかる開示を基に、(A)金属部分、(B)〜(B”)金属酸化物部分および(C)未反応部分を造り分ける超短パルスレーザの照射条件を適宜決定することができる。
なお、(A)金属部分、(B)〜(B”)金属酸化物部分および(C)未反応部分を形成し得る条件は、必ずしも計算に基づき求める必要はない。例えば、実際に超短パルスレーザの照射条件を変化させて複合微細構造体を作製し、形成された構造体の組織を観察することで、所望の組織が得られる条件を把握することができる。例えば、当該複合微細構造体に含まれる金属部分および金属酸化物部分の割合を電子顕微鏡観察により調べることで、簡便に確認することもできる。また、例えば、超短パルスレーザの照射条件を変化させて作製した複数の複合微細構造体について、X線回折分析の手法等を利用し、金属部分と金属酸化物部分との割合を調べるようにしてもよい。この場合、例えば、金属酸化物に帰属される回折ピーク強度IMOに対する金属に帰属される回折ピーク強度Iの比(IMO/I)をマッピングすることで、効率的に金属部分を形成できる超短パルスレーザ照射条件や、金属酸化物部分を形成できる超短パルスレーザ照射条件等を確認することができる。
さらに、発明者らの詳細な検討によると、膜状に供給された金属酸化物ナノ粒子含有液に所定の好適条件で超短パルスレーザを線状に(例えば一方向に)走査すると、図13(a)に示すような線状の複合微細構造体が形成される。この走査方向を「主走査方向」と呼ぶ。この複合微細構造体は、金属酸化物ナノ粒子含有液の未反応部分zのなかに、金属光沢を伴って固化した部分x(以下、光沢部分xという。)と、光沢は無いが固化した2つの部分y(以下、結合部分yという。)とが、主走査方向に沿った線状に形成されることで構成されている。図13中、走査線は二点鎖線で示されている。これら光沢部分xおよび結合結部分yは、典型的には、走査線を中心として両側に対称に形成される。また、レーザ照射条件が同じである場合、光沢部分xの幅および結合部分yの線幅はそれぞれ概ね一定となる。
ここで、未反応部分zは上記の(C)未反応部分に一致する。光沢部分xは、走査線を中心とした一筋のライン状に形成され、超短パルスレーザの直接照射およびそれに伴う発熱により還元され、溶融されるとともに固化または焼結した部分と考えられる。この、光沢部分xは、上記の(A)金属部分に一致するものと考えられる。一般に金属酸化物よりも金属の方が焼結温度が低くなる。したがって、還元された(A)金属部分は焼結が進行しやすい。結合部分yは、線状の金属光沢部分xを走査方向に直交する方向で挟むように、金属光沢部分xの両端に沿って隣接して形成される。この結合部分yは、超短パルスレーザの発熱による伝熱(熱影響)によって硬化した樹脂部分により結合されることで形成された部分と考えられる。したがって、この結合部分yは、上記の(B)金属酸化物部分に一致するものと考えられる。また、金属光沢部分xの両端に形成される2つの結合部分yは、基本的には、同じ幅である。
ここで、図13(b)に示すように、走査線を、主走査方向に直交する副走査方向に所定幅だけずらして、主走査方向に超短パルスレーザを走査する。このとき、レーザ照射条件を先と同一にし、かつ、1回目と2回目とで(1)光沢部分xが重なるように超短パルスレーザを走査する。すると、光沢部分xが2重に重なった部分は概ね再酸化された金属酸化物部分として構成され得る。すなわち、金属部分の形成が抑制される。また、(2)光沢部分xと結合部分yとが重なるように超短パルスレーザを走査すると、光沢部分xと結合部分yとが重なった部分も、概ね再酸化された金属酸化物部分から構成される傾向がある。すなわち、この場合も金属部分の形成が抑制される。そして、1回目と2回目とで(3)結合部分yのみが重なるように超短パルスレーザを走査すると、結合部分yが重なって形成された部分は、概ね還元された金属部分から構成される傾向がある。すなわち、この場合、金属部分を好適に形成することができる。一方、(4)結合部分yが重ならず密に並列するように超短パルスレーザを走査すると、図13(a)に示した複合微細構造体が並んだ構成となる。以上のことから、超短パルスレーザの副走査線方向でのピッチを、(光沢部分xの幅+1つの結合部分yの幅)とすることで、結合部分yのみに超短パルスレーザが2回ずつ照射されるように、超短パルスレーザを走査することができる。そしてこれにより、金属部分が連続した面状に形成され得る。このような特長から、予め所定の超短パルスレーザの照射条件で形成(固化)される光沢部分xおよび結合部分yの寸法を調べておくことで、所望の形態の複合微細構造体を効率よく形成することができる。
超短パルスレーザは、上記のとおり、被照射物における熱拡散が抑制されていることから、熱拡散の影響を最小限にとどめて(A)金属部分と(B)金属酸化物部分とを造形することができる。かかる寸法精度は、金属酸化物ナノ粒子の物性(組成、粒径等)にもよるが、マイクロメートルオーダーで制御することができる。例えば、通常、複合微細構造体における金属酸化物部分および金属部分の少なくともいずれかの部位の寸法を、100マイクロメートル以下で制御しながら容易に造形することが可能である。したがって、ここに開示される複合微細構造体は、金属酸化物部分および金属部分の少なくともいずれかの部位の寸法が100マイクロメートル以下で制御されたものとして実現され得る。より好適には、例えば、複合微細構造体少なくとも一の寸法(例えば、線幅)を、50μm以下、好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下、例えば1〜8μm程度に形成することができる。例えば、平面形状が100μm×100μm以上であっても、厚みが1〜8μm程度のシート状に形成することができる。かかるマイクロメートルオーダーのシート状物には、例えば、その平面内に任意の形状の中空部を設けることもできる。たとえば、公知の感光性樹脂の加工を対象としたフェムト秒レーザの発振が可能な精密レーザ描画装置(レーザ加工装置,三次元レーザ積層造形装置等)を用いることで、ここに開示される複合微細構造体を好適に製造することができる。
なお、後述の実施形態にも示されるように、複合微細構造体における金属酸化物部分および金属部分が連続的に形成された場合には、金属酸化物部分および金属部分の寸法は100マイクロメートルを超過するものとなり得る。なお、この「連続的」とは、例えば幅が100マイクロメートル以下の金属酸化物部分および/または金属部分がレーザ走査方向に沿って(すなわち1次元で)丈長に形成される態様に限定されない。例えば、幅が100マイクロメートル以下の金属酸化物部分および/または金属部分が、2次元的にあるいは3次元的に連続的に積層、結合されて形成される態様を包含する。しかしながら、その寸法精度は上記のとおりの100マイクロメートル以下のレベルで実現され得る点において、ここに開示される複合微細構造体は有用であり得る。
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はかかる例によって限定されるものではない。
(実施形態1)
本実施形態では、マイクロ流体デバイスに使用することができるマイクロタービンを作製した。図4(a)は、このマイクロタービン本体の構成を説明する斜視図である。このマイクロタービン本体(ヘリカルコイル)の図は、例えば、CAD等により3次元的な形状を示す3Dデータとして作成することができる。また、例えば、この3DデータはCAD等により、所定の断面方向にスライスしたスライスデータに変換することができる。このスライスデータは、例えば、STL形式である。かかるスライスデータに基づき精密レーザ描画装置を走査することで、マイクロタービン本体の断面形状に対応したレーザ描画を行うことができる。なお、この図4(a)では、タービン本体の形状を解りやすく示すために、タービンの回転の軸となる軸部は省略して示している。実際には、このマイクロタービンの本体に、中心の貫通孔に嵌りあう直径を有する円柱状の軸部が組み合わせられる。ここで、例えば図示したマイクロタービン本体を磁性材料で構成し、軸部を非磁性材料で構成することで、電磁誘導式発電用のマイクロタービンを構築することができる。
そこで、金属酸化物ナノ粒子として、非磁性材料であるNiOナノ粒子(平均粒径50nm)を用い、図4(a)に示す歯車形状のマイクロタービン本体と軸部(図示せず)とからなる複合微細構造体の作製を試みた。分散媒兼還元剤としてはエチレングリコール(Ethylene glycol;EG)を、レーザ硬化性樹脂としては熱硬化性のポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone;PVP)を用いた。そしてこれらを、NiOナノ粒子:EG:PVPの割合が質量比で46.9:42.9:10.2となるように配合し、超音波撹拌機にて混合することでベース溶液を調製した。このベース溶液をガラス基板上にスピンコート法により約9μmの膜厚で均一に塗布し、このベース溶液塗膜上に、所望のマイクロタービン構造に対応するよう、超短パルスレーザをパターンで照射した。超短パルスレーザの照射には、フェムト秒レーザ描画システム(ナノスクライブ有限会社製,Photonic Professional GT)を用いた。
本実施形態において、(A)マイクロタービン本体は、NiOナノ粒子と熱硬化性樹脂とのペースト状のベース溶液に超短パルスレーザを照射することにより、NiOナノ粒子をNiへと還元させたのち結合(焼結や溶着等を含む)させて作製する。また、(B)マイクロタービンの軸部は、上記のNiOナノ粒子と熱硬化性樹脂とのペースト状(未硬化)のベース溶液に超短パルスレーザを照射することにより、NiOナノ粒子はそのままで、熱硬化性樹脂を硬化させることで作製する。
(A)マイクロタービン本体を形成するための超短パルスレーザの照射条件は、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光するとともに、走査速度1300μm/s、パルスエネルギー0.24nJとした。
(B)マイクロタービンの軸部を形成するための超短パルスレーザの照射条件は、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光するとともに、走査速度1300μm/s、パルスエネルギー0.06nJとした。
なお、かかる超短パルスレーザの照射は、図4(a)に示したようなCADデータを基に、上記のフェムト秒レーザ描画システムを用いて直接描画した。すなわち、先ずはマイクロタービン本体の形状を塗りつぶすように上記条件(A)でレーザを走査し、図4(b)に示したようにCuナノ粒子の焼結体からなるマイクロタービン本体を構築した。マイクロタービン本体は、金属Niを含む相により構成され、周縁にはNiO粒子と熱硬化性樹脂とを主として含む相が存在することが確認された。引き続き、マイクロタービン本体の中心の孔部に上記条件(B)にてレーザを走査し、軸部を形成した。軸部は、NiO粒子と熱硬化性樹脂とを主として含む相により構成されていることが確認された。マイクロタービン本体と軸部とは一体化させた。これにより、マイクロタービン本体と軸部とからなる複合微細構造体を好適に製造できることが確認された。このマイクロタービン本体(ヘリカルコイル)の直径は300μm、厚みは約8μmである。また、軸部の断面の直径は約80μmであり、軸方向の長さは約40μmである。
(実施形態2)
本実施形態では、3次元マイクロワイヤを作製した。図5Aは、この3次元マイクロワイヤの構造を説明する(a)斜視図と、積層造形法を利用してこの3次元マイクロワイヤを製造する際の積層パターンを説明する(b)断面模式図である。図5Aに示すように、本実施形態では、金属製のマイクロワイヤを、当該金属の酸化物ナノ粒子とレーザ硬化性樹脂との混合硬化物でコーティングした3次元マイクロワイヤを作製する。
まず、金属酸化物ナノ粒子としては平均粒径が50μmのCuOナノ粒子を、分散媒兼還元剤としてエチレングリコール(EG)を、レーザ硬化性樹脂としてポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。そしてこれらを、CuOナノ粒子:EG:PVPの割合が質量比で60:27:13となるように配合し、超音波撹拌機にて混合することでベース溶液を調製した。このベース溶液をガラス基板上にスピンコート法により約8μmの膜厚で均一に塗布し、このベース溶液塗膜上に、所望の3Dワイヤ構造に対応する積層パターンとなるよう、超短パルスレーザをパターンで照射した。
本実施形態において、(A)マイクロワイヤ部分は、金属酸化物ナノ粒子とレーザ硬化性樹脂とのペースト状(未硬化)の混合物に超短パルスレーザを照射することにより、金属酸化物ナノ粒子を還元および結合(焼結や溶着等を含む)させて作製する。また、(B)コーティング部分は、金属酸化物ナノ粒子とレーザ硬化性樹脂とのペースト状の混合物に超短パルスレーザを照射することにより、金属酸化物ナノ粒子はそのままで、レーザ硬化性樹脂を硬化させることで作製する。
(A)マイクロワイヤ部分を形成するための超短パルスレーザの照射条件は、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光するとともに、走査速度1000μm/s、パルスエネルギー1.2nJとした。
(B)コーティング部分を形成するための超短パルスレーザの照射条件は、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光するとともに、走査速度50μm/s、パルスエネルギー0.1nJとした。
なお、かかる超短パルスレーザの照射は積層造形法を利用して実施した。すなわち、図5A(b)に示したように、マイクロワイヤの3次元形状を断層化し、一番下の層から順に、(A)金属部分(マイクロワイヤ部分)と、(B)金属酸化物部分(コーティング部分)とに対応するように、両部分を形成するのに適切な条件の超短パルスレーザをそれぞれ局所的に照射した。また、一層分を形成するごとに、上記のベース溶液の塗布と、超短パルスレーザの照射とを、繰り返し行うようにした。このようにして最下層から最上層まで(A)金属部分と、(B)金属酸化物部分とを厚み方向で重ねながら順次形成したのち、レーザ未照射部のペースト状混合物を除去することで、3次元マイクロワイヤを得た。図5Bおよび図5Cに、本実施形態にて作製した3Dマイクロワイヤの走査型電子顕微鏡像を示した。このように、ここに開示される製造方法により、マイクロワイヤ部分とコーティング部分からなる複合微細構造体を好適に製造できることが確認された。
(実施形態3)
以下、各例において(A)金属部分と(B)金属酸化物部分との形成について詳細に検討することで、(A)金属部分と(B)金属酸化物部分との作り分けの手法について説明する。
(例1)
金属酸化物ナノ粒子として、平均粒子径が50nm以下の酸化銅(CuO)ナノ粒子を用意した。分散媒および還元剤としてエチレングリコール(EG)を、レーザ硬化性樹脂として熱硬化性ポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。そしてこれらを、CuOナノ粒子:EG:PVPの割合が質量比で60:27:13となるように配合し、超音波撹拌機にて混合することでベース溶液を調製した。
このベース溶液をガラス基板上にスピンコート法により約8μmの膜厚で均一に供給した。次いで、フェムト秒レーザ描画システム(ナノスクライブ有限会社製,Photonic Professional GT)を用いて、ベース溶液上に超短パルスレーザを微細なパターンで照射した。超短パルスレーザは、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光するとともに、500〜1000μm/sの走査速度でパルスエネルギーを変化させて、所定の描画パターンにてベース溶液に照射した。超短パルスレーザを照射後のガラス基板は、EGで洗い流すことで、未反応のベース溶液を除去した。
レーザ照射後のガラス基板を、光学顕微鏡にて観察した。図6に、(a)レーザ描画パターンと、(b)レーザ照射後のガラス基板のSEM像とをそれぞれ示した。なお、図6(a)のレーザ描画パターンにおける横方向の走査線の間隔は100μmである。図6(b)に示されるように、レーザ照射後のベース溶液では、(a)レーザ描画パターンに対応した細線パターンが直接描画されていることが確認できた。そこで、細線パターン部分の組成をX線回折(X-Ray Diffraction:XRD)分析にて確認した。その結果、Cu,CuO(酸化銅(I))およびCuO(酸化銅(II))に帰属される回折ピークが確認された。このことから、CuOナノ粒子が、超短パルスレーザの照射によりCuOまたはCuに還元されて細線パターンを構築していることがわかった。またこの還元は、CuOナノ粒子同士およびCuOナノ粒子のガラス基板への固着を伴うものであり、CuOナノ粒子が熱還元により還元されると同時に焼結あるいは溶融(部分溶融を含む)して基板上に細線パターンを構成したと考えられた。なお、具体的なデータは示していないが、この細線パターンをより詳細に観察すると、細線の幅方向の中心に金属光沢を伴う光沢部分xが観察され、その両脇に金属光沢の無い結合部分yが観察された。したがって、この細線は、ここに開示される複合微細構造体であることが確認された。
形成された細線パターンの線幅を測定し、パルスエネルギーと線幅との関係を図7に示した。このパルスエネルギーは、1パルスあたりの出力エネルギーを意味している。図7に示されるように、パルスエネルギーが大きいほど、また走査速度が遅いほど、線幅が太くなる傾向が見られた。本例における最小線幅は10μm、最大線幅は28μmであることが確認された。すなわち、超短パルスレーザの照射エネルギーによってCuOナノ粒子が直接加熱されるとともに、熱拡散等によってレーザの直接照射領域よりも広い領域のCuOナノ粒子も加熱されたものと予想された。
以上のことから、CuOナノ粒子に超短パルスレーザを照射することで、熱的過程により細線状の微細構造を形成できることがわかった。
(例2)
次に、上記例1における超短パルスレーザのスポット径を1μmから23μmに拡大するとともに、走査速度を20〜100μm/sと遅くし、その他の条件は例1と同様にして、CuOナノ粒子のベース溶液を用いた細線パターンの直接描画を行った。そして、形成された細線パターンの線幅を測定し、パルスエネルギーと線幅との関係を図8に示した。また、図9に、(a)パルスエネルギーが0.36nJで走査速度が100μm/sの場合に形成された微細構造体と、(b)パルスエネルギーが1.2nJで走査速度が20μm/sの場合に形成された微細構造体とについての観察像を示した。
図8に示されるように、例1の場合と同様、全体としてはパルスエネルギーが大きいほど、また走査速度が遅いほど、線幅が太くなる傾向が見られた。しかしながら、本例における最小線幅は5μm、最大線幅は45μmであった。
すなわち、本例では、例1よりも走査速度を遅くしたにもかかわらず、パルスエネルギーが0.36nJと少なく、走査速度が50および100μm/sの場合については線幅が約5μmと、例1のいずれのサンプルよりも細くなることが確認された。なお、図9(a)からもわかるように、パルスエネルギーが0.36nJの場合の線幅である5〜10μmとの値は、照射した超短パルスレーザのスポット径よりも小さく、レーザスポットのほぼ中心付近(走査線上)に微細構造体が形成されている。そして超短パルスレーザが複数回照射される部位であっても、レーザスポットの周縁部には微細構造体は形成されていない。すなわち、本例のレーザ照射条件では、レーザの照射スポット内でのレーザ光の強度分布とレーザ走査速度とにより調整されるCuOナノ粒子への投入エネルギーが、パターン形成が可能か否かの閾値(境目)を含んでいることを示している。
このことから、以下のことがわかった。すなわち、フェムト秒レーザを用いる場合、走査速度が遅すぎると従来のナノ秒レーザ等を用いた場合と同様に、CuOナノ粒子はレーザエネルギーを過剰に吸収し、発熱および熱拡散することで、熱還元されたり溶融されたりする現象が生じ得る。しかしながら、例えば、フェムト秒レーザを用い走査速度を速くして、照射領域に十分な強度のレーザを平均自由時間よりも短い超短時間(すなわち必要最小限量)だけ照射し、熱影響を極力排除することによって、所定のレーザ強度およびエネルギーの照射領域のみの加熱が可能となるものと考えられる。このことは、熱還元に必要な最小の量を閾値として、レーザ強度およびレーザ照射時間(走査速度を含み得る)等を制御することで、周辺への熱影響を抑制して所望の一のCuOナノ粒子のみを加熱および熱還元できることを意味すると言える。
なお、パルスエネルギーが0.96nJおよび1.2nJと多くなると線幅も広くなり、走査速度が20μm/sと遅い場合は例1のいずれのサンプルよりも太い線幅となることがわかった。このとき、例えば図9(b)に示すように、CuOナノ粒子は溶融したかのようにもみられ、線幅に大きなばらつきが生じてしまっていた。
以上のことから、超短パルスレーザによる大気中の金属酸化物(ここではCuO)ナノ粒子の還元において、寸法が5μm程度の微細構造を形成できることがわかった。また、この寸法は、レーザの投入エネルギーを、例えば描画速度やレーザ出力で調整することで調整可能であり、高効率に金属酸化物の還元および描画が可能となることが確認できた。
(例3)
そこで、走査速度とパルスエネルギーとを様々に変化させ、その他の条件は上記の例1と同様(スポット径は1μm)にして、CuOナノ粒子の還元による細線パターンからなる微細構造体の形成を試みた。そして微細構造体が形成できた場合には、XRDによりかかる微細構造の組成を調べた。その結果を、下記の表1に示した。
なお、表1中の表記は、以下を意味する。
「×」は、CuOナノ粒子による微細構造が形成されず、EGにより洗い流されてしまったことを示す。
「CuO」は、XRD回折ピークがほぼCuOに帰属されたことを示す。すなわち、この条件では主として(B)金属酸化物部分が形成されることを示す。
「CuO-rich」は、XRD回折ピークがほぼCuOに帰属されたものの、CuOに帰属されるピークも検出されたことを示す。すなわち、この条件では主として(B)金属酸化物部分であって、(B”)第3金属酸化物部分が形成されることを示す。
「Cu-rich」は、XRD回折ピークがほぼCuOに帰属されたものの、Cuに帰属されるピークも検出されたことを示す。すなわち、この条件では主として(A)金属部分が形成されるが、この金属部分はCuOを主体とする相であることを示す。
「Cu-rich」は、XRD回折ピークがほぼCuに帰属されたものの、CuOに帰属されるピークも検出されたことを示す。すなわち、この条件では主として(A)金属部分が形成され、金属化がより適切に行われたことを示す。
「CuO+Cu」は、XRD回折ピークにおいてCuOとCuとに帰属されるピークがほぼ同程度の割合であったことを示す。すなわち、この条件では主として(A)金属部分が形成されることを示す。
「CuO-rich(溶融)」は、XRD回折ピークは上記「CuO-rich」と同じであるが、ナノ粒子が溶融して線幅の管理が困難であったことを示す。すなわち、この条件では主として(B)金属酸化物部分であって、(B’)第2金属酸化物部分が形成されることを示す。
表1に示されるように、パルスエネルギーが0.01nJのときは、全ての走査速度において微細構造の形成ができず、CuOナノ粒子はEGによる洗浄で流されてしまった。これに対し、パルスエネルギーが0.01nJを超えた範囲では、概ね全ての走査速度において微細構造の形成が可能であることが確認された。また、微細構造が形成された場合であっても、走査速度とパルスエネルギーとの調整により、かかる微細構造の組成とその割合の制御が可能であることも確認された。すなわち、金属酸化物(ここではCuO)と、その還元物との割合を制御して微細構造体を形成できることがわかった。このとき、全体として、比較的パルスエネルギーを高くし、走査速度を速くすることで、金属酸化物の還元を促進し得、還元率の高い微細構造体が得られやすいことがわかった。
ここで、パルスエネルギーが0.05nJのサンプルでは、走査速度が遅くなるほど金属酸化物ナノ粒子の還元が進む傾向にあるのに対し、パルスエネルギーが0.1〜1.2nJのサンプルでは、走査速度が速くなるほど金属酸化物が還元された状態となった。また、パルスエネルギーが1.2nJで走査速度が20μm/sの場合は、CuOナノ粒子が完全に溶融してしまい、所望の線幅の微細構造の形成は困難であった(例えば、図9(b)参照)。これらのことから、パルスエネルギーが0.1〜1.2nJのサンプルでは、金属酸化物ナノ粒子に投入されるパルスエネルギーが高強度であるため、走査速度が遅い場合には非金属である金属酸化物(CuO)から半導体または金属(CuO,Cu)へと一旦還元された金属ナノ粒子が、再び金属酸化物または半導体(CuO,CuO)へと再酸化されているものと予想できた。したがって、金属酸化物の還元は単に投入エネルギーの総量に依存するものではなく、かかる再酸化を考慮して、パルスエネルギーおよび走査速度を選択することで、金属酸化物と還元物との割合をより確実に制御し得ることが確認できた。また、例えば上記のようにパルスエネルギーおよび走査速度を制御することで、微細構造体において、金属部分(この場合、主としてCuで構成されている部分)と金属酸化物部分(この場合、主としてCuOおよび/またはCuOで構成されている部分)とを局所的に作り分けることができる。
なお、表1の「Cu-rich」、「Cu-rich」、「CuO+Cu」で表される条件は、ここでいう技術における(A)金属部分が形成される。しかしながら、例えば「Cu-rich」で示される条件では、(A)金属部分であっても、半導体であるCuOを主体とする相が形成される。この点、ここに開示される(A)金属部分は、例えば、金属再酸化部分とも理解される(A’)第2金属部分(例えば半導体主体部分)等として把握することもできる。
また、上記のレーザ照射条件において、主として(A)金属部分が形成される条件で形成された微細構造体は、付随的にその周縁に(B)金属酸化物部分が形成される。したがって、かかるレーザ照射条件は、当該条件のみでここに開示される複合微細構造体を製造することができる。一方、主として(B)金属酸化物部分が形成される条件で形成された微細構造体は、例えば、同じ個所に2回レーザを照射された部分について(A)金属部分が形成され得る。したがって、主として(B)金属酸化物部分が形成されるレーザ照射条件については、(1)繰り返しのレーザ照射を行ったり、(2)主として金属部分が形成されるレーザ照射条件による造形と組み合わせたりすることで、ここに開示される複合微細構造体を製造することができる。
上記表1に示された走査速度およびパルスエネルギーの組み合わせは超短パルスレーザの設定条件の一例である。当業者であれば、表中に複合微細構造物が製造されたことを示す走査速度およびパルスエネルギーを組み合わせた条件を臨界値として、当該条件を含むレーザ照射条件において、複合微細構造物の製造が可能であることを理解することができる。また、同様に、当業者は、表中に、「CuO」、「CuO-rich」、「Cu-rich」、「Cu-rich」、「CuO+Cu」、「CuO-rich(溶融)」で示される相を含む構造物(複合微細構造物)が製造されたことを示す走査速度およびパルスエネルギーを組み合わせた条件を臨界値として、当該条件を含むレーザ照射条件において、各構造物(複合微細構造物)の製造が可能であることを理解することができる。後述の表2および表3についても、同様であることが理解される。
(例4−1)
上記例1において、パルスエネルギーを1.2nJ、スポット径を1μm、走査速度を500μm/sと1000μm/sとの2通りとし、その他の条件は例1と同様にして、細線パターンの組み合わせからなる微細構造体を作製した。かかる条件によると、それぞれ、主としてCu−richまたはCu−richからなる組成の微細構造体を作製することができる。またこのとき、それぞれの組成について、細線を隙間なく描画してゆくことで、長さ100μm×幅160〜600μmの3通りの寸法の帯状の微細構造体を形成した。この複合微細構造体は、主として(A)金属部分として分類される相から構成され、幅方向の両端部に(B)金属酸化物部分を備えている。
このようにして形成した微細構造体の長さ方向の両端に抵抗測定用の電極を設置し、2点法による電気抵抗を測定した。その結果を図10に示した。
図10に示されるように、微細構造体の電気抵抗は幅が広くなるほど低くなった。そしてその抵抗値は、Cu−richの構造物で11〜54Ω、Cu−richの構造物で0.22〜8.9MΩであり、組成により微細構造体の電気抵抗の制御が可能なことが確認された。なお、微細構造体の厚みを膜厚の8μmに等しいと仮定すると、かかる構造物の抵抗率はCu−richについて最少528μΩmとの値が得られた。この抵抗率は、形成された微細構造体が比較的ポーラスであることから高めの値を示していると考えられ、CuOナノ粒子の濃度や供給方法等を改善することで抵抗率も低減できると考えられる。
(例4−2)
次に、150μm×150μmの正方形状の複合微細構造体を2通りの条件で形成し、それらの複合微細構造体の抵抗温度特性を評価した。具体的には、図14(a)に示すように、ガラス基板上にリソグラフィ法によりCu薄膜を形成して、電極間距離が100μmの2つのCu電極を作製した。そして、2つのCu電極に架かるように、150μm×150μmの描画パターンを下記の条件(1),(2)に示すレーザ照射条件にてそれぞれ描画し、複合微細構造体(1),(2)を形成した。なお、条件(1)は金属部分であるCu−rich組成を主体とする複合微細構造物が形成される条件である。このCu−rich組成では、Cuが50%以上含まれる相が主体となる。また、条件(2)は金属部分(例えば半導体主体部分等として把握される。)であるCu−rich組成を主体とする複合微細構造物が形成される条件である。Cu−rich組成は、CuOが50%以上含まれる相が主体となる。いずれの複合微細構造体においても、正方形状の(A)金属部分の周縁には、(B)金属酸化物部分が付随的に形成されていた。参考のため、条件(2)にて形成した複合微小構造体のSEM観察像を、図14(b)に示した。そして複合微細構造体(1),(2)のCu電極にPtリード線を接続することで、評価用の微小素子(1),(2)を作製した。
条件(1);パルスエネルギー:1.2nJ、
スポット径:1μm
走査速度:500μm/s
条件(2);パルスエネルギー:1.2nJ、
スポット径:1μm
走査速度:1000μm/s
この微小素子をホットプレート上に載置し、複合微細構造体の温度を30℃〜70℃の範囲で変化させながら電流を流すことで、複合微細構造体の抵抗温度特性を調べた。その結果を図15(a)(b)に示した。
図15(a)に示すように、この例で得られたCu−rich組成の複合微細構造体(1)の抵抗温度係数は約1.0×10-3/℃であった。この値はCuの抵抗温度係数(理論値)には一致しないものの、金属材料にみられる正の抵抗温度係数を示すことが確認された。このことから、この複合微細構造体(2)は、例えば、配線,電極等の導電性部材等として利用し得ることがわかった。一方、図15(b)に示すように、Cu−rich組成の複合微細構造体(2)の抵抗温度係数は約−15×10-3/℃であり、ここに開示される技術においては「金属部分」として分類されるが、半導体材料にみられる大きな負の抵抗温度係数を示すことが確認された。このことから、この複合微細構造体(2)は、例えば、30℃〜70℃程度の低温領域で高感度な温度センサとして利用し得ることがわかった。なお、図14(a)(b)に示す微小素子(2)において、本例でリソグラフィ技術により作製したCu電極部分を、条件(1)によるレーザ照射により形成し得ることは当業者に理解され得る。このことから、温度センサのより大部分を、ここに開示される複合微細構造体により簡便に製造し得ることがわかった。またこのような複合微細構造体は、加速度センサ、流量センサ、応力センサ等としても利用し得ることは当業者であれば理解できる。
以上のことから、ここに開示される技術によると、(A)金属部分を主とする複合微細構造体であっても、その組成を、物性の異なるCu−rich組成とCu−rich組成とに、ナノメートルオーダーの寸法でより確実に作り分けすることができることが確認できた。また、それぞれの組成の備える物性を活かすことで、多様な機能を備える複合微細構造体を作製できることもわかった。
(例5)
次いで、CuOナノ粒子に代えて、平均粒径が50nmのNiOナノ粒子を用い、微細構造体の形成を試みた。分散媒および還元剤としてEGを、レーザ硬化性樹脂としてPVPを用いた。そしてこれらを、NiOナノ粒子:EG:PVPの割合が質量比で46.9:42.9:10.2となるように配合し、超音波撹拌機にて混合することでベース溶液を調製した。このベース溶液をガラス基板上にスピンコート法により約9μmの膜厚で均一に塗布し、このベース溶液塗膜上に超短パルスレーザを微細なパターンで照射した。超短パルスレーザは、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光するとともに、100〜1500μm/sの走査速度でパルスエネルギーを下記の表2に示す6通りに変化させて、所定の描画パターンにて照射した。超短パルスレーザを照射後のガラス基板は、EGで洗い流すことで、未反応のベース溶液を除去した。
これにより、NiOナノ粒子の還元による細線パターンからなる微細構造体の形成を試みた。そして微細構造体が形成できた場合には、XRDによりかかる微細構造の組成を調べた。その結果を、表2に示した。
なお、表2中の表記は、以下を意味する。
「×」は、NiOナノ粒子による微細構造が形成されず、EGにより洗い流されてしまったことを示す。
「NiO」は、XRD回折ピークがほぼNiOに帰属されたことを示す。すなわち、この条件では主として(B)金属酸化物部分が形成されることを示す。
「NiO+Ni」は、XRD回折ピークにおいてNiOとNiとに帰属されるピークがほぼ同程度の割合であったことを示す。すなわち、この条件では主として(A)金属部分が形成されることを示す。
「NiO−rich(溶融)」は、XRD回折ピークがほぼNiOに帰属されたものの、Niに帰属されるピークも検出され、さらにナノ粒子が溶融して線幅の管理が困難であったことを示す。すなわち、この条件では主として(A)金属部分ではあるが、再酸化部分を含む金属部分が形成されることを示す。
表2に示されるように、パルスエネルギーが0.01nJのときは、全ての走査速度において微細構造の形成ができず、NiOナノ粒子はEGによる洗浄で流されてしまった。また、パルスエネルギーが1.2nJの場合はNiOナノ粒子が完全に溶融してしまい、所望の線幅での微細構造の形成は困難であった。そしてパルスエネルギーが0.01nJを超えて1.2nJよりも低い範囲では、概ね全ての走査速度において微細構造の形成が可能であることが確認された。
また、微細構造が形成された場合には、走査速度とパルスエネルギーとの調整により、かかる微細構造の組成とその割合の制御が可能であることも確認された。すなわち、金属酸化物(ここではNiO)と、その還元物(Ni)との割合を制御して微細構造体を形成できることがわかった。
そこで、パルスエネルギーが0.24nJのときの走査速度をより細かく変化させ、走査速度と微細構造の組成との関係を調べた。走査速度は、主として(A)金属部分である「NiO+Ni」組成が確実に得られる200μm/S以上で変化させた。その結果を図11に示した。図11の縦軸は、形成された微細構造体のXRDパターンにおける、NiO(200)面からの回折ピークに対するNi(111)面からの回折ピークの回折強度比INi(111)/INiO(200)を示しており、この値が高くなるほどより多くのNiOがNiへと還元されていることを示す。
図11から明らかなように、この例では、走査速度が1300μm/s近傍において微細構造体に占めるNiの割合が最も多く、この1300μm/sよりも速くても遅くても、走査速度が1300μm/sから離れるにつれてNiの割合が減少することがわかった。これまでの例1〜4での結果を踏まえると、この例では、走査速度が1300μm/sよりも速い場合に超短パルスレーザからNiOナノ粒子に供給されるパルスエネルギーが十分ではなく、Niに還元されない未還元の状態のNiOが微細構造体中に残されたと考えられた。また、走査速度が1300μm/sよりも遅い場合には、超短パルスレーザからNiOナノ粒子に供給されるパルスエネルギーがNiOの熱還元に必要な量よりも多く、過剰なエネルギーによって還元されたNiが再度NiOに酸化されたと考えられた。
このことから、表2において、パルスエネルギーが0.06nJの場合のNiOは未酸化の状態であることが予想され、パルスエネルギーが0.48nJ以上の場合のNiOは、走査速度が遅い場合に再酸化されたNiOであり、走査速度が速い場合に未酸化のNiOである可能性が考えられる。
また、XRD分析の結果同じNiOと同定されても、未還元の状態のNiOは十分に加熱されていないことから、その周囲にPVPが存在して微細構造体の構築に寄与していると考えられる。一方の、再酸化された状態のNiOは十分に加熱された状態であるため、出発材料のNiOナノ粒子が互いに溶着または焼結し、ベース溶液に含まれていたPVPは消失されていると考えられる。
また、主として(A)金属部分からなる微細構造であっても、レーザ照射条件を制御することで、(A)金属部分における組成を詳細に制御し得ることが確認できた。なお、上記のレーザ照射条件において、主として(A)金属部分が形成される条件で形成された微細構造体は、付随的にその周縁に(B)金属酸化物部分が形成される。したがって、かかるレーザ照射条件は、当該条件のみでここに開示される複合微細構造体を製造することができる。一方、主として(B)金属酸化物部分が形成される条件で形成された微細構造体は、例えば、同じ個所に2回レーザを照射された部分について(A)金属部分が形成され得る。したがって、主として(B)金属酸化物部分が形成されるレーザ照射条件については、(1)繰り返しのレーザ照射を行ったり、(2)主として金属部分が形成されるレーザ照射条件による造形と組み合わせたりすることで、ここに開示される複合微細構造体を製造することができる。以上のことから、マイクロメートルオーダーで精密に、Ni(磁性材料)およびNiO(非磁性材料)からなる構造部材を造形できることがわかる。かかる造形物は、例えば、マイクロメートルオーダーの非磁性アクチュエータ等として好ましく実現される。
(例6)
例5のパルスエネルギーが0.24nJの場合に加えて、パルスエネルギーが0.48nJの場合についても走査速度をより細かく変化させ、その他の条件は上記の例5と同様にして、NiOナノ粒子の還元による細線パターンからなる微細構造体の形成を試みた。そして形成された微細構造体の線幅を測定し、その結果を図12に示した。
図12に示されるように、NiOナノ粒子の還元に際して、パルスエネルギーが0.24nJおよび0.48nJの場合は、走査速度に大きく依存することなく線幅が安定して細くなることがわかった。例えば、走査速度が100μm/sと500μm/sとではNiOナノ粒子に照射される超短パルスレーザ量が全く異なるのに対し、線幅は約15μm程度以下を維持しており、細い線幅の微細構造体が安定して得られることがわかった。これは、一回のパルスレーザで供給されたエネルギーが少ないためにNiOナノ粒子の加熱量も抑制されており、次のパルスレーザが照射されたときには一旦加熱されたNiOナノ粒子が冷却されて、温度の集積および雪崩的な蓄熱が起らないためであると推察される。
本例では、特に、パルスエネルギーが0.24nJであれば、走査速度が1500μm/sであっても100μm/sの場合と線幅に顕著な違いが見られないことがわかった。一方の0.48nJでは、走査速度が300μm/s程度以下では過剰なエネルギーが供給されて線幅が広がる傾向が見られるが、400μm/s以上では走査速度に依らずに線幅が安定して保たれることがわかった。また、このように線幅が安定しているとき、その線幅はパルスエネルギーが多い方が太いと考えられる。
(例7)
さらに、金属酸化物ナノ粒子として、平均粒径が20nmのTiOナノ粒子を用い、微細構造体の形成を試みた。分散媒および還元剤としてEGを、レーザ硬化性樹脂としてPVPを用いた。そしてこれらを、TiOナノ粒子:EG:PVPの割合が質量比で30:63.5:6.5となるように配合し、超音波撹拌機にて混合することでベース溶液を調製した。このベース溶液をガラス基板上にスピンコート法により約7μmの膜厚で均一に塗布し、このベース溶液塗膜上に超短パルスレーザを微細なパターンで照射した。超短パルスレーザは、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光した。なお、超短パルスレーザは、パルスエネルギーを1.0nJ、1.1nJまたは1.2nJとし、走査速度を30μm/sとして、所定の描画パターンにて照射した。また、パルスエネルギーを1.1nJとしたときについては、走査速度を20および40μm/sと変化させた条件でも、微細構造体の形成を行った。超短パルスレーザを照射後のガラス基板は、EGで洗い流すことで、未反応のベース溶液を除去した。
その結果、パルスエネルギーを1.0nJ、1.1nJおよび1.2nJとした全ての場合について、基板上に構造体が形成されたことが確認された。このときの最小線幅は20μmであり、最大線幅は40μmであった。
なお、形成された微細構造体の組成をXRD分析により確認したところ、パルスエネルギーを1.0nJ,走査速度30μm/sとして得られた構造体の組成はTiOの単相からなり、TiOナノ粒子の還元は行われておらず、レーザ硬化性樹脂であるPVPが硬化して構造体が形成されたものであることがわかった。すなわち、ここに開示される、金属部分と金属酸化物部分とを含む微細構造体は形成されていなかった。一方、パルスエネルギーを1.1nJおよび1.2nJとして得られた構造体の組成はTiOとTiOとが含まれており、少なくとも一部のTiOナノ粒子がTiOに還元され互いに結合して微細構造体を形成していることがわかった。すなわち、還元部分と非還元部分とからなる微細複合構造体が製造されたといえる。TiOは、金属酸化物の中でも標準生成自由エネルギーが小さく、還元され難い性質を有する。したがって、比較的遅い走査速度で安定して還元を生じさせることができ、線幅の細い微細構造体を安定して形成できることが確認された。
(例8)
さらに、金属酸化物ナノ粒子として、CuがコアでCuOがシェルのCu/CuOコアシェルナノ粒子(Ionic Liquids Technologies Gmbh社製,粒径<50nm)を用い、微細構造体の形成を試みた。分散媒および還元剤としてEGを、レーザ硬化性樹脂としてPVPを用いた。そしてこれらを、コアシェルナノ粒子:EG:PVPの割合が質量比で60:27:13となるように配合し、超音波撹拌機にて混合することでベース溶液を調製した。このベース溶液をガラス基板上にスピンコート法により約7μmの膜厚で均一に塗布し、このベース溶液塗膜上に超短パルスレーザを微細なパターンで照射した。超短パルスレーザは、大気中、波長780nm,パルス幅120fs,繰返し周波数80MHzの条件にて発振したレーザを、開口数0.75の対物レンズを用いてスポット径1μmに集光した。なお、超短パルスレーザは、パルスエネルギーを0.01nJ、0.05nJ、0.6nJまたは1.2nJの4通りとし、走査速度を50〜2000μm/sの6通りとして、所定の描画パターンにて照射することで、微細構造体の形成を行った。超短パルスレーザを照射後のガラス基板は、EGで洗い流すことで、未反応のベース溶液を除去した。
その結果、全てのパルスエネルギー条件および走査速度条件について、基板上に微細構造体が形成されたことが確認された。このときの最小線幅は10μmであり、最大線幅は60μmであった。形成された微細構造体の組成をXRD分析により確認し、その結果を、表3に示した。なお、表3中の表記は、以下を意味する。
「有」は、XRD回折ピークにおいてCuOに帰属されるピークが検出された条件であることを示す。なお、具体的に示していないが、「有」で示された条件は、Cuに帰属されるピークが検出されたものと、検出されなかったものとを含む。Cuに帰属されるピークが検出されなかったのは、走査速度が50μm/sでパルスエネルギーが1.2nJの条件である。
「無」は、XRD回折ピークにおいてCuOに帰属されるピークが検出されなかったことを示す。
表3と、例3の表1との比較より、本例ではコアシェルナノ粒子を用いていることから、より小さいパルスエネルギーで金属酸化物部分の形成が可能であることがわかった。また、パルスエネルギーを0.6nJ以上、走査速度を1000μm/s以上とした場合に、シェル部分のCuOの還元がほぼ完全に行われ、ほぼ全てがCu粒子からなる(すなわちCuOが殆ど含まれない)微小構造体が得られることがわかった。しかしながら、パルスエネルギーを1.2nJ以上、走査速度を2000μm/s以上とした場合は、コアシェルナノ粒子に供給されるエネルギーが減少するため、CuOシェル部分が残存し得ることが確認できた。なお、表1において「無」で示される領域の照射条件で超短パルスレーザを照射して形成された微細構造体は、レーザ照射による熱影響部分の周縁部に、CuOシェル部分が残存したコアシェル粒子が極わずかに存在することが確認できた。すなわち、複合微小構造体であることが確認できた。
この複合微小構造体においては、コアシェル構造のコア部分がCuであることに加え、シェル部分の殆どがCuに還元されている。換言すると、複合微細構造体の殆どの部分においてCuOが検出されず、Cuのみから構成されている。したがって、ここに開示される技術を利用することにより、電気伝導性に極めて優れた複合微細構造体を得られることが確認できた。また、コアシェルナノ粒子を利用しても複合微細構造体を形成できることが確認された。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。

Claims (18)

  1. 金属酸化物ナノ粒子を含む金属酸化物部分と、
    前記金属酸化物ナノ粒子が還元された金属が互いに直接結合されてなる金属部分と、
    有しており該金属酸化物部分と該金属部分とは、互いに異なる領域を構成しており、
    前記金属酸化物部分はレーザ硬化性樹脂を含み、
    前記金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部が前記レーザ硬化性樹脂により互いに結合されている第1金属酸化物部分を含み、
    前記金属酸化物部分および前記金属部分が一体化されている、複合微細構造体。
  2. 前記金属酸化物ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1種の金属元素 の酸化物を含む、請求項1に記載の複合微細構造体。
  3. 前記金属酸化物部分および前記金属部分の少なくともいずれかの平面における幅もしくは厚みの寸法が100マイクロメートル以下である、請求項1または2に記載の複合微細構造体。
  4. 前記金属酸化物部分は、
    前記金属酸化物ナノ粒子の少なくとも一部は互いに直接結合されている第2金属酸化物部分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合微細構造体。
  5. 前記第1金属酸化物部分と前記第2金属酸化物部分との合計に占める、前記第1金属酸 化物部分の割合は50体積%以上である、請求項4に記載の複合微細構造体。
  6. 前記金属酸化物ナノ粒子は、少なくとも一部に金属酸化物を含むナノ粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合微細構造体。
  7. 前記金属酸化物ナノ粒子は、コア粒子の表面の少なくとも一部に金属酸化物からなるシェルを含むコアシェルナノ粒子である、請求項6に記載の複合微細構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合微細構造体を含むマイクロタービン部品であって、
    歯車形状のマイクロタービン本体と、前記マイクロタービン本体の回転軸となる軸部と、を備え、
    前記マイクロタービン本体は、ニッケルを含む前記金属部分により構成されるとともに、
    前記軸部は、酸化ニッケルを含む前記金属酸化物部分により構成されている、マイクロタービン部品。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合微細構造体を含むマイクロ配線であって、
    断面径が100マイクロメートル以下で線状のマイクロワイヤ部分と、前記マイクロワイヤ部分の表面を被覆するコーティング部分と、を備え、
    前記マイクロワイヤ部分は、銅を含む前記金属部分により構成されるとともに、
    前記コーティング部分は、酸化銅を含む前記金属酸化物部分により構成されている、マイクロ配線。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合微細構造体を含む温度センサであって、
    センサ部分と、前記センサ部分の周縁に形成される縁部と、を備え、
    前記センサ部分は、銅および酸化銅(I)を含む前記金属部分により構成されるとともに、
    前記縁部は、酸化銅(II)を含む前記金属酸化物部分により構成されている、温度センサ。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合微細構造体を含む物品。
  12. 金属酸化物ナノ粒子およびレーザ光の照射により硬化するレーザ硬化性樹脂を含む金属 酸化物ナノ粒子含有液を用意すること、
    基材の表面に前記金属酸化物ナノ粒子含有液を供給すること、
    前記基材の表面に供給された前記金属酸化物ナノ粒子含有液に超短パルスレーザを照射すること、を含み、
    前記超短パルスレーザの照射により、
    前記レーザ硬化性樹脂が硬化された樹脂部分と前記金属酸化物ナノ粒子とを含む金属 酸化物部分と、
    前記金属酸化物ナノ粒子が還元されて互いに結合されてなる金属部分と、
    を形成し、
    ここで、前記金属酸化物部分の形成において前記金属酸化物ナノ粒子に供給されるパルスエネルギー量と、前記金属部分の形成において前記金属酸化物ナノ粒子に供給されるパルスエネルギー量とが相互に異なるように調整して、前記パルスレーザ照射によって前記金属部分と前記金属酸化物部分とを造り分けることを特徴とする、複合微細構造体の製造 方法。
  13. 前記金属酸化物ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)およびチタン(Ti)の酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記レーザ硬化性樹脂は、ポリビニルピロリドンを含む、請求項12または13に記載の製造方法。
  15. 前記金属酸化物ナノ粒子含有液は、さらに、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ギ酸、過酸化水素水およびトルエンからなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記金属酸化物ナノ粒子含有液は、さらに、ポリビニルピロリドンおよびシリコーン樹脂の少なくとも一方の分散剤を含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記金属酸化物ナノ粒子は、少なくとも一部に金属酸化物を含むナノ粒子である、請求項12〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 前記金属酸化物ナノ粒子は、コア粒子の表面の少なくとも一部に金属酸化物からなるシェルを含むコアシェルナノ粒子である、請求項17に記載の製造方法。
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