以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂膜は、熱可塑性樹脂を含む複数の第1の熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂を含む複数の第2の熱可塑性樹脂層とを備える。本発明に係る熱可塑性樹脂膜は、上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層とが、厚み方向に積層された多層構造を有する。上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計は5層以上である。
本発明に係る熱可塑性樹脂膜では、上記第1の熱可塑性樹脂層に特定の材料を用いている。上記第1の熱可塑性樹脂に含まれる全材料は、上記第1の熱可塑性樹脂に含まれる全材料を押出成形して平均厚みが380μmである単層の第1の樹脂膜を得たときに、上記第1の樹脂膜の引張破断伸度が350%以上の値を示す材料である。
本発明に係る熱可塑性樹脂膜では、第2の熱可塑性樹脂として、特定の熱可塑性樹脂を用いている。上記第2の熱可塑性樹脂は、上記第2の熱可塑性樹脂を押出成形して平均厚みが380μmである単層の第2の樹脂膜を得たときに、上記第2の樹脂膜の引張弾性率が1GPa以上の値を示す熱可塑性樹脂である。
さらに、上記第2の熱可塑性樹脂層は、上記第2の熱可塑性樹脂に加えて、他の特定の熱可塑性樹脂を含む。上記第2の熱可塑性樹脂層は、カルボキシル基を有する第3の熱可塑性樹脂を含む。
本発明では、上述した構成が備えられているので、引裂吸収エネルギー、引張弾性率及び層間接着性を高めることができる。また、本発明では、防犯性能及び耐貫通性を高めることができる。さらに、本発明では、合わせガラスとしたときに、層内部での発泡、板ずれを解消することができる。また、発泡材料として熱可塑性樹脂膜を用いるために、気泡を含む発泡層を形成しようとしたときに、発泡性を制御することができる。
上記第1の熱可塑性樹脂に含まれる全材料を押出成形して平均厚みが380μmである単層の第1の樹脂膜を得る。上記第1の樹脂膜の1層での引張破断伸度は350%以上であり、好ましくは400%以上である。上記第1の樹脂膜の引張破断伸度が大きいほど、熱可塑性樹脂膜が破断しにくくなる。熱可塑性樹脂膜をより一層破断し難くする観点からは、上記第1の樹脂膜の1層での引張破断伸度は好ましくは490%以上である。
上記第2の熱可塑性樹脂を押出成形して平均厚みが380μmである単層の第2の樹脂膜を得る。上記第2の熱可塑性樹脂層の引張破断伸度は好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは6%以下である。上記第2の熱可塑性樹脂層の引張破断伸度が小さいほど、樹脂膜にひずみが生じた際に、樹脂膜の内部で多数の破断が生じ、多くのエネルギーを吸収することができる。ただし、小さすぎると一回の破断ごとの吸収エネルギーが小さくなるため、上記第2の熱可塑性樹脂層の引張破断伸度は好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。
上記第3の熱可塑性樹脂を押出成形して平均厚みが380μmである単層の第3の樹脂膜を得る。上記第3の樹脂膜の引張破断伸度は好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは250%以上、特に好ましくは300%以上、最も好ましくは350%以上である。上記第3の樹脂膜の引張破断伸度が大きいほど、熱可塑性樹脂膜が破断しにくくなる。
上記第1の樹脂膜の1層での引張破断伸度は、以下の手順に従って測定される。
上記第1の熱可塑性樹脂層に含まれる全材料を、押出機を用いて単層で押出し、平均厚みが380μmである単層の樹脂膜を得る。第1の樹脂膜に関しては、好ましくは押出成形時に、170℃に加熱する。上記第1の熱可塑性樹脂に含まれる全材料は、第1の熱可塑性樹脂層が第1の熱可塑性樹脂のみを含む場合には第1の熱可塑性樹脂のみを意味し、第1の熱可塑性樹脂層が第1の熱可塑性樹脂と他の成分とを含む場合には第1の熱可塑性樹脂と他の成分とを含む全材料を意味する。好ましくは押出成形時に、ギアポンプを介してTダイに熱可塑性樹脂を供給する。鋭利なカミソリを使用し、得られる単層の樹脂膜の幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意する。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠した方法で、23℃で引張破断伸度を測定する。
上記第2の樹脂膜の1層での引張破断伸度は、以下の手順に従って測定される。
上記第2の熱可塑性樹脂を、押出機を用いて単層で押出し、平均厚みが380μmである単層の樹脂膜を得る。なお、第2の熱可塑性樹脂層は第3の熱可塑性樹脂を含むので、押出成形に用いる上記第2の熱可塑樹脂は、第2の熱可塑性樹脂に含まれる全材料とは異なる。第2の樹脂膜及び第3の樹脂膜に関しては、好ましくは押出成形時に、200℃に加熱する。好ましくは押出成形時に、ギアポンプを介してTダイに熱可塑性樹脂を供給する。鋭利なカミソリを使用し、得られる単層の樹脂膜の幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意する。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠した方法で、23℃で引張破断伸度を測定する。同様の手順により、第2の熱可塑性樹脂のかわりに第3の熱可塑性樹脂を用いて、上記第3の樹脂膜の1層での引張破断伸度も測定される。
上記第1の樹脂膜の1層での引張弾性率は、好ましくは30MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。上記第1の熱可塑性樹脂層の引張弾性率が上記上限以下であると、第2の熱可塑性樹脂層の破断と同時に第1の熱可塑性樹脂層が破断し難くなり、結果として樹脂膜がより一層破断し難くなる。上記第1の熱可塑性樹脂層の1層での引張弾性率は、好ましくは0.1MPa以上である。
上記第2の樹脂膜の1層での引張弾性率は1GPa以上であり、好ましくは1.3GPa以上である。
上記第3の樹脂膜の1層での引張弾性率は好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上、更に好ましくは60MPa以上である。
上記第1の樹脂膜の1層での引張弾性率は、以下の手順に従って測定される。
上記第1の熱可塑性樹脂層に含まれる全材料を、押出機を用いて単層で押出し、平均厚みが380μmである単層の樹脂膜を得る。鋭利なカミソリを使用し、得られる単層の樹脂膜の幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意する。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠する方法で、23℃で引張弾性率を測定する。
上記第2の樹脂膜の1層での引張弾性率は、以下の手順に従って測定される。
上記第2の熱可塑性樹脂を、押出機を用いて単層で押出し、平均厚みが380μmである単層の樹脂膜を得る。鋭利なカミソリを使用し、得られる単層の樹脂膜の幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意する。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠する方法で、23℃で引張弾性率を測定する。同様の手順により、第2の熱可塑性樹脂のかわりに第3の熱可塑性樹脂を用いて、上記第3の樹脂膜の1層での引張弾性率も測定される。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱可塑性樹脂膜を示す模式的な断面図である。
図1に示す樹脂膜1は、熱可塑性樹脂膜である。樹脂膜1は、複数の熱可塑性樹脂層11を有する。樹脂膜1は、複数の第1の熱可塑性樹脂層11Aと、複数の第2の熱可塑性樹脂層11Bとを有する。第1の熱可塑性樹脂層11Aと、第2の熱可塑性樹脂層11Bとは、樹脂膜1の厚み方向に積層されている。本実施形態では、第1の熱可塑性樹脂層11Aと、第2の熱可塑性樹脂層11Bとは、樹脂膜1の厚み方向に交互に積層されている。樹脂膜1は、多層構造を有する。
第1の熱可塑性樹脂層11Aは上述した第1の熱可塑性樹脂を含む。第2の熱可塑性樹脂層11Bは上述した第2の熱可塑性樹脂と上述した第3の熱可塑性樹脂とを含む。第1の熱可塑性樹脂層11Aと第2の熱可塑性樹脂層11Bとの厚み方向の積層数の合計は5層以上である。
樹脂膜1では、第2の熱可塑性樹脂層11Bにおいて、第2の熱可塑性樹脂11Ba中で、第3の熱可塑性樹脂11Bbが点在している。第2の熱可塑性樹脂層11Bは、第2の熱可塑性樹脂11Baが海部であり、第3の熱可塑性樹脂11Bbが島部である海島構造を有する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る熱可塑性樹脂膜を示す模式的な断面図である。
図2に示す樹脂膜1Aは、熱可塑性樹脂膜である。樹脂膜1Aは、複数の熱可塑性樹脂層12を有する。樹脂膜1Aは、複数の第1の熱可塑性樹脂層12Aと、複数の第2の熱可塑性樹脂層12Bとを有する。第1の熱可塑性樹脂層12Aと、第2の熱可塑性樹脂層12Bとは、樹脂膜1Aの厚み方向に積層されている。
樹脂膜1Aは、樹脂膜1と、第2の熱可塑性樹脂層12Bにおける第2の熱可塑性樹脂及び第3の熱可塑性樹脂の存在状態が異なる。樹脂膜1Aでは、第2の熱可塑性樹脂層12Bにおいて、第2の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂とは均一に混合されており、均一混合物を含む。
第2の熱可塑性樹脂の引張破断伸度は、第1の熱可塑性樹脂の引張破断伸度よりも小さいことが好ましい。第2の熱可塑性樹脂の引張破断伸度が、第1の熱可塑性樹脂の引張破断伸度よりも小さい場合に、熱可塑性樹脂膜において、外力による歪みが生じた際に、引張破断伸度が大きい第1の熱可塑性樹脂層よりも、引張破断伸度が小さい第2の熱可塑性樹脂層の方が熱可塑性樹脂膜の内部で優先的に破断する。歪みが大きくなるにつれ、第2の熱可塑性樹脂層が次々と樹脂膜の内部で破壊されるため、これによりエネルギーを消費させることができる。すなわち、外力が加わった際、熱可塑性樹脂膜が多くのエネルギーを吸収することができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂膜において、第2の熱可塑性樹脂に混錬された第3の熱可塑性樹脂が、第1の熱可塑性樹脂層に対して第2の熱可塑性樹脂層の接着力を高く発現させるため、層間接着力を高めることができる。この結果、例えば合わせガラスとした際の板ずれや発泡を抑えることができる。
耐引裂性をより一層高める観点からは、上記第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚み(T1)の、上記第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚み(T2)に対する比(T1/T2)が、1を超えることが好ましい。耐引裂性を更に一層高める観点からは、上記比(T1/T2)が、1.5倍以上であることがより好ましい。上記比(T1/T2)は、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは7以下である。第1の熱可塑性樹脂層の厚みが大きくなるほど、熱可塑性樹脂膜の破断伸度は大きくなるが、歪みが生じた際の第2の熱可塑性樹脂層の破断によるエネルギーの吸収が小さくなる。
上記第3の熱可塑性樹脂のカルボキシル基は、上記第1の熱可塑性樹脂とより一層高い接着性を示すための結合を形成することが好ましい。接着性を示すための結合の形態として、化学結合やイオン結合がある。引裂強度をより一層高める観点、並びに好適な接着強度を発現させる観点からは、上記第1の熱可塑性樹脂が水酸基又はカルボキシル基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、上記第1の熱可塑性樹脂と上記第3の熱可塑性樹脂とは水素結合可能であることが好ましい。
上記第1の熱可塑性樹脂と上記第3の熱可塑性樹脂の界面接着力をより一層高める観点からは、上記第3の熱可塑性樹脂は、アミノ基、アミド基又は水酸基を有することが好ましく、アミド基又は水酸基を有することがより好ましく、水酸基を有することが更に好ましい。
上記第2の熱可塑性樹脂層において、上記第2の熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記第3の熱可塑性樹脂の含有量は好ましくは20重量部以上、より好ましくは40重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは60重量部以下である。上記第3の熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、層間接着性がより一層高くなる。上記第3の熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、第3の熱可塑性樹脂同士の結合が抑えられ、層間接着性がより一層高くなる。
上記第1の熱可塑性樹脂層の層数は好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上、更に好ましくは5層以上である。上記第2の熱可塑性樹脂層の層数は好ましくは2層以上、より好ましくは3層以上、更に好ましくは5層以上である。
本発明に係る熱可塑性樹脂膜では、上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層との厚み方向の積層数の合計が5層以上であり、好ましくは10層以上、特に好ましくは160層以上である。上記積層数の合計は、特に限定されないが、例えば実用面から100000層以下である。
上記熱可塑性樹脂膜は、上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層と上記第1の熱可塑性樹脂層と上記第2の熱可塑性樹脂層がこの順で積層された部分を有することが好ましく、この部分を複数有することが好ましい。
第1の熱可塑性樹脂層(A)と第2の熱可塑性樹脂層(B)とは、A/B/A/B・・・のようにそれぞれ交互に積層されていてもよく、A/B/A/A/B/A/・・・やA/B/B/A/B/B/・・・のように、同じ熱可塑性樹脂層が重なっていてもよい。また、上記第1の熱可塑性樹脂層及び上記第2の熱可塑性樹脂層以外の他の樹脂層を積層してもよい。合わせガラスにする際の貼り合わせの簡便さから、熱可塑性樹脂層における一方側の表面層は、上記第1の熱可塑性樹脂層であることが好ましく、他方側の表面層は上記第1の熱可塑性樹脂層であることが好ましい。上記第1の熱可塑性樹脂層のうちの1つ又は2つは、熱可塑性樹脂膜において、最表面に位置していることが好ましい。
上記第2の熱可塑性樹脂層のそれぞれの1層の厚みは好ましくは11μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記第2の熱可塑性樹脂層のそれぞれの1層の厚みが上記上限以下であると、第2の熱可塑性樹脂層が破断する際に第1の熱可塑性樹脂層がより一層破断し難くなり、樹脂膜がより一層破断し難くなる。上記第2の熱可塑性樹脂層のそれぞれの1層の厚みは、好ましくは0.01μm以上である。
上記熱可塑性樹脂膜は、延伸されていてもよい。延伸温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは64℃以上、好ましくは90℃未満、より好ましくは70℃未満、更に好ましくは66℃未満である。延伸温度が上記下限以上であると、樹脂の弾性による収縮が生じ難くなり、分子配向が効果的に発現する。延伸温度が上記上限以下又は上記上限未満であると、樹脂が流れるように変形し難くなり、分子配向が効果的に発現する。延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上である。
上記の熱可塑性樹脂膜が合わせガラス用中間膜である場合に、中間膜の引裂強度を高めることで、該中間膜を備えた合わせガラスの耐貫通性が上昇する。よって、同等の耐貫通性能を維持したままで、従来のガラス板より薄いガラス板を、合わせガラスを得るために用いることが可能となり、合わせガラスの軽量化を図ることができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂膜は、表面に他の熱可塑性樹脂膜が積層されて、複合膜として用いられてもよい。
上記の熱可塑性樹脂膜の表面は、エンボス加工されていてもよい。エンボス加工する方法としては、エンボスロール法及びリップエンボス法等が挙げられる。中でも定量的に一定の凹凸模様が形成されるようにエンボス加工を行うことができることから、エンボスロール法が好ましい。
合わせガラス部材との接着性をより一層高くし、合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、上記エンボス加工された樹脂膜の外側の表面の十点平均粗さRzは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上記十点平均粗さRzは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
以下、本発明に係る樹脂膜に含まれる各成分の詳細を説明する。
(熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂)
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、AS樹脂ポリカーボネート、ポリエステル、ABS樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸セルロース、MS樹脂、MBS樹脂、及びSB樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
引張強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよく良好にする観点からは、上記第1の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂であることがより好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は水酸基を有することが好ましい。
上記第2の熱可塑性樹脂は、引張破断伸度を考慮して適宜選ばれる。上記第2の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂とは異なる熱可塑性樹脂であることが好ましい。上記第2の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸セルロース、MS樹脂、MBS樹脂、及びSB樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
上記第3の熱可塑性樹脂は第1の熱可塑性樹脂層に対する第2の熱可塑性樹脂層の接着性を高めるためにカルボキシル基を有する。上記第3の熱可塑性樹脂は、上記第2の熱可塑性樹脂との相溶性や屈折率差を考慮して適宜選ぶことができる。上記第3の熱可塑性樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などのポリ酢酸樹脂、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのポリアミノ酸樹脂、ポリアルギン酸などの側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、ポリ乳酸やそれらを含む共重合体等が挙げられる。さらに、上記第3の熱可塑性樹脂としては具体的には、例えば、アクリル酸−マレイン酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体などのオレフィン−マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸共重合体などのオレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂等が挙げられる。
引張強度、接着力、耐貫通性及び遮音性をバランスよくより一層良好にする観点からは、上記第1の熱可塑性樹脂層は、ポリビニルアセタール樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことがより好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。PVAのけん化度は、一般に、70〜99.9モル%の範囲内である。
上記ポリビニルアセタール樹脂を得るためのPVAの重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1700を超え、特に好ましくは2000以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、より一層好ましくは3000以下、更に好ましくは3000未満、特に好ましくは2800以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂は、重合度が上記下限以上及び上記上限以下であるPVAをアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。上記重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記重合度が上記上限以下であると、樹脂膜の成形が容易になる。
PVAの重合度は平均重合度を示す。該平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
樹脂膜に含まれる上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の使用により、上記第3の熱可塑性樹脂の使用による接着性、並びに合わせガラス部材としたときのガラスに対する樹脂膜の接着力がより一層適度に発現する。さらに、樹脂膜の耐候性等がより一層高くなる。
(可塑剤)
ポリビニルアセタール樹脂を含む熱可塑性樹脂層は、可塑剤を含むことが好ましい。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル可塑剤、並びに有機リン酸エステル可塑剤及び有機亜リン酸エステル可塑剤などの有機リン酸エステル可塑剤等が挙げられる。有機酸エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基であることが好ましく、炭素数6〜10の有機基であることがより好ましい。
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエートであることが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートであることがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートであることが更に好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層において、上記ポリビニルアセタール樹脂に対する可塑剤の添加量は、PVAの平均重合度、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度及びアセチル化度等によって適宜調整することができ、特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは35重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは43重量部以下、特に好ましくは38重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
(他の成分)
上記の樹脂膜における各層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。
(熱可塑性樹脂膜の製造方法)
上記の熱可塑性樹脂膜の製造方法としては、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、押出コーティング法、多層溶融押出成形法、ホットメルトラミネーション法及びヒートラミネーション法等が挙げられる。
製造が容易であり、かつ引張強度が優れた熱可塑性樹脂膜が得られるため、上記の樹脂膜は、多層溶融押出成形法により得られていることが好ましい。上記多層溶融押出成形法としては、例えば、マルチマニホールド法及びフィードブロック法等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
第1の熱可塑性樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、アセタール化度69mol%、アセチル化度1mol%、水酸基の含有率30mol%、積水化学工業社製)を用意した。可塑剤として、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を用意した。
第2の熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂(MF001、ビカット軟化温度89℃(JIS K7206)、メルトフローレート14.0g/10min(JIS K7210、230℃、37.3N)、三菱レイヨン社製)を用意した。アクリル樹脂は、温度75℃で6時間乾燥させて用いた。
第3の熱可塑性樹脂としてエチレン−メタクリル酸共重合体(ニュクレル;N0908C、ビカット軟化温度82℃(JIS K7206)、メルトフローレート8g/10min(JIS K7210、190℃、2.16Kg)、三井・デュポン ポリケミカル社製)を用意した。
170℃に加熱された押出機1に、上記第1の熱可塑性樹脂100重量部と可塑剤35重量部とを上記第1の熱可塑性樹脂層を形成するための全材料として供給し、200℃に加熱された押出機2に上記第2の熱可塑性樹脂100重量部と上記第3の熱可塑性樹脂20重量部をドライブレンドさせ、上記第2の熱可塑性樹脂層を形成するための全材料として供給した。このとき、時間当たりの押出量は、押出機1と押出機2との重量比が6:1となるようにした。それぞれギアポンプを介して、押出機1から押出される溶融樹脂と押出機2から押出される溶融樹脂とが交互に積層され、合わせて40層積層されるフィードブロックにて合流させて、40層の積層体21を得た(図3参照)。その後、スクエアミキサーに、積層体21を供給して、80層の積層体22を得た(図4〜6参照)。その後、2つ目のスクエアミキサーに供給して160層の積層体を得た。
なお、スクエアミキサーは、断面形状が長方形である流路を通過した熱可塑性樹脂を、分岐流路により2分割し、それらを積み重ねて合流させて層数を2倍にすることが可能な流路を有する筒体である。スクエアミキサーでは、図3に示す40層の積層体21を、図4に示すように中央で2分割するように、矢印X1の方向に流路を圧縮することで、層数が40層であり、かつ厚みが1/2である2つの圧縮物を得ることができる。次に、図5に示すように矢印X2の方向に流路を拡大することで、図6に示すように層数が2倍の80層である積層体22を得ることができる。同様の操作を繰り返して、160層の積層体を得ることができる。
このようにして得られた160層の積層体をTダイに供給して、シート状に成形した後、引取ロールで引き取り、平均厚み380μmの160層の熱可塑性樹脂膜を得た。評価に用いる際は、厚み380μmの部分を選択してサンプリングを行った。
(実施例2)
上記第2の熱可塑性樹脂層を形成するための全材料中の、上記第3の熱可塑性樹脂の含有量を、20重量部から30重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(実施例3)
上記第2の熱可塑性樹脂層を形成するための全材料中の、上記第3の熱可塑性樹脂の含有量を、20重量部から40重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(実施例4)
上記第2の熱可塑性樹脂層を形成するための全材料中の、上記第3の熱可塑性樹脂の含有量を、20重量部から60重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(実施例5)
押出機1と押出機2との押出量の重量比を1:1にしたこと以外は、実施例2と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(実施例6)
押出機1と押出機2との押出量の重量比を1:1にしたこと以外は、実施例3と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(実施例7)
押出機1と押出機2との押出量の重量比を1:1にしたこと以外は、実施例4と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(比較例1)
第2の熱可塑性樹脂層を形成するために第3の熱可塑性樹脂を用いずに、押出機2に、第2の熱可塑性樹脂100重量部のみを供給したこと以外は、実施例1と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(比較例2)
押出機1と押出機2との押出量の重量比を1:1にしたこと以外は、比較例1と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(比較例3)
第2の熱可塑性樹脂層を形成するために第2の熱可塑性樹脂を用いずに、押出機2に、第3の熱可塑性樹脂100重量部のみを供給したこと以外は、実施例1と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(比較例4)
押出機1と押出機2との押出量の重量比を1:1にしたこと以外は、比較例3と同様にして、160層の熱可塑性樹脂膜を得た。
(評価)
(1)単層の樹脂膜の作製(引張弾性率及び引張破断伸度測定用)
170℃に加熱された押出機に、第1の熱可塑性樹脂であるポリビニルブチラール樹脂と可塑剤(3GO)とを実施例及び比較例の各配合量で供給し、ギアポンプを介してTダイに供給し、シート状に成形した後、引取ロールで引き取り、平均厚みが380μmである単層の第1の樹脂膜(第1の熱可塑性樹脂層に対応する)を得た。評価に用いる際は、厚み380μmの部分を選択してサンプリングを行った。
第2の熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂(MF001)を温度75℃で6時間乾燥させた。200℃に加熱された押出機に、第2の熱可塑性樹脂を供給し、ギアポンプを介してTダイに供給し、シート状に成形した後、引取ロールで引き取り、厚みが380μmである単層の第2の樹脂膜を得た。評価に用いる際は、厚み380μmの部分を選択してサンプリングを行った。
200℃に加熱された押出機に、第3の熱可塑性樹脂であるエチレン−メタクリル酸共重合体(ニュクレル;N0908C)を供給し、ギアポンプを介してTダイに供給し、シート状に成形した後、引取ロールで引き取り、平均厚みが380μmである単層の第3の樹脂膜を得た。評価に用いる際は、厚み380μmの部分を選択してサンプリングを行った。
(2)第1の樹脂膜、第2の樹脂膜及び第3の樹脂膜の引張弾性率
鋭利なカミソリを使用し、幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意した。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠した方法で、23℃で引張弾性率を測定した。単層の第1の樹脂膜の引張弾性率は10MPaであった。単層の第2の樹脂膜の引張弾性率は1.3GPaであった。単層の第3の樹脂膜の引張弾性率は72.4MPaであった。
(3)第1の樹脂膜、第2の樹脂膜及び第3の樹脂膜の引張破断伸度
鋭利なカミソリを使用し、幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意した。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠した方法で、23℃で引張破断伸度を測定した。
単層の第1の樹脂膜の引張破断伸度は490%であった。単層の第2の樹脂膜の引張破断伸度は6%であった。単層の第3の樹脂膜の引張破断伸度は268%であった。
(4)熱可塑性樹脂膜の厚み
熱可塑性樹脂膜の厚み(第1の熱可塑性樹脂層と第2の熱可塑性樹脂層との全体の厚み)を、新潟精機社製マイクロメータMCD130−25を用いて、JIS K 7127:1999に準拠した方法で測定した。
(5)熱可塑性樹脂膜の層比
熱可塑性樹脂膜の中央部を鋭利なカミソリで切った断面の幅方向の中央部において、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−2000を用いて各層の厚みを測定した。全ての第1の熱可塑性樹脂層の合計の厚み(T1)の、全ての第2の熱可塑性樹脂層の合計の厚み(T2)に対する比(T1/T2)を求めた。
(6)熱可塑性樹脂膜の引裂吸収エネルギー
試験片として、熱可塑性樹脂膜を用意した。引裂試験において、試験片を破断させるために要したエネルギー、すなわち試験片が変形し、破断するまでの間に試験片が吸収したエネルギーを引裂吸収エネルギーと定義する。ダンベル社製スーパーダンベルカッターを用いて、JIS K7128−3:1998準拠した試験片形状の試験片を用意した。オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、JIS K7128−3:1998に準拠した方法で、引裂試験により得られた荷重−伸び線図の曲線の下側の面積を求めることで、引裂吸収エネルギーを測定した。このとき、試験片の厚みは380μmであった。
(7)熱可塑性樹脂膜の引張せん断接着力
170℃に加熱された押出機に、第1の熱可塑性樹脂であるポリビニルブチラールと可塑剤(3GO)とを実施例及び比較例の各配合量で供給し、ギアポンプを介してTダイに供給し、シート状に成形した後、引取ロールで引き取り、平均厚みが380μmである単層の樹脂膜A(第1の熱可塑性樹脂層に対応する)を用意した。
第2の熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂(MF001)と第3の熱可塑性樹脂であるエチレン−メタクリル酸共重合体とを実施例及び比較例の各配合量でドライブレンドし、東洋精機社製ラボプラストミル R−100を用いて混錬し、混錬物を神藤金属工業所社製の単動圧縮成形機「NSF−37」を用いて加熱プレス後、神藤金属工業所社製単動圧縮成形機「NF−37」を用いて冷却プレスし、平均厚みが380μmである単層の樹脂膜B(第2の熱可塑性樹脂層に対応する)を用意した。
上記樹脂膜Aと上記樹脂膜Bとを、日清紡社製の真空ラミネータ「1222S」を用いて、90℃、100KPaの温度圧力条件で予備圧着を行った。その後、協真エンジニアリング社製のヒンジ型オートクレーブHP−5050を用いて、140℃、1.3MPaの温度圧力条件で本圧着を行い、試験片を得た。
本圧着された2層の試験片に関しては、鋭利なカミソリを使用し、1層の樹脂膜あたり幅25mm、長さ100mmの短冊状とし、重ね長さは12.5mm±0.25mmとしてJIS K6850:1999に準拠した形状にサンプリングした。JIS G4305:2010に規定するSUS304鋼板を当て板として、積水化学工業社製のダブルタックテープ #5782を用いて、試験片を貼り付け、23℃、50%RHで24時間保管した。オリエンテック社製の万能試験機「UTC−500」を用いて、引張速度を50mm/minで剥離試験を5回行い、引張せん断接着力の5回の平均値を求めた。
(8)熱可塑性樹脂膜の引張弾性率
鋭利なカミソリを使用し、幅10mm、長さ150mmの短冊状にサンプリングした試験片を用意した。この試験片について、オリエンテック社製万能試験機RTC−1310Aを用いて、ASTM D 882:2012に準拠した方法で、23℃で引張弾性率を測定した。
評価結果を表1に記載する。下記の表1において、「PVB」は、ポリビニルブチラール樹脂を示し、「PMMA」はポリメチルメタクリレート樹脂を示し、「ニュクレル」はエチレンーメタクリル酸共重合体を示す。