[1]実施例
図1は実施例の作業支援システム1の全体構成を表す。作業支援システム1は、複数の作業者が工程の共通している作業をそれぞれ行う場合に、それらの作業の記録を蓄積し、蓄積した作業記録に基づいて作業の質の向上を支援するための支援情報を出力する。作業支援システム1は、言うなれば、作業記録の蓄積及び支援情報の出力を繰り返すことで作業員の作業を見守るシステムである。
作業支援システム1は、本実施例では、病院や臨床検査会社などで、患者から採取された検体を検査して、患者の症状の原因になっている微生物である病原体を検出し、その病原体に有効な薬剤及び効かない薬剤を見つけるまでの検査作業を支援する。この検査作業は、主に臨床医等の医師や臨床検査技師などの作業者によって行われる。
検体とは、患者の感染部位から採取される検査の材料であり、上手く採取された検体には患者が保有している病原体が含まれる。検出対象の病原体(微生物)は、主として細菌であるが、真菌及びウィルス(ウィルスは細胞内の異常染色領域である封入体を検出することで間接的に検出される)も含まれる。検体には、喀痰、血液、髄液、胸水、腹水、膿汁、体液、胃粘膜生検、ドレイン排液及び浸出液等の他、カテーテルに付着する体組織や体液なども含まれる。本実施例では、そのうちの喀痰が検体として用いられる。喀痰とは、口から吐き出された粘液(いわゆる痰)であり、気管支等の呼吸器系から分泌された粘液や唾液などが含まれる。
作業支援システム1は、作業支援サーバ装置10と、作業端末20とを備える。作業支援サーバ装置10及び作業端末20はLAN(Local Area Network)等の通信回線で接続されており、両装置間のデータ交換が可能となっている。作業端末20は、前述した検査作業を行う作業者をユーザとして、それらのユーザによって利用される端末である。作業端末20は、作業者の作業を支援する情報(作業内容の指示情報など)を表示したり、作業者による作業の結果を入力する操作を受け付けたりする。
作業支援サーバ装置10は、上述した検査作業を支援する。検査作業には、例えば、検体の採取工程と、検体の保存工程と、検体の肉眼的観察工程と、検体の第1品質管理工程と、検体の塗抹・染色工程と、検体の拡大観察工程と、検体の第2品質管理工程と、検体の交換工程と、検体の分離塗抹工程と、検体の培養工程と、微生物の釣菌工程と、菌液作成工程と、微生物の検出工程と、薬剤感受性試験工程という14個の作業工程が含まれる。
検体の採取工程は、患者から検体を採取する工程であり、検体の保存工程は、採取した検体を保存する工程である。ここまでの工程は、患者と接する時間が長い看護師等が行うことが多く、これ以降の工程は、上述した医師及び臨床検査技師等が行うことが多い。検体の肉眼的観察工程は、検体の性状を肉眼で観察し、M&J分類(Miller&Jones分類:混在する膿性部分の量によって喀痰をM1、M2、P1、P2、P3の5段階で評価する指標)の所見を示す工程である。
検体の第1品質管理工程は、M&J分類の所見に基づいて検体が検査対象として適当であるか否かを判断する工程である。検体の塗抹・染色工程は、検体をスライドグラスに塗抹して例えばグラム染色で染色する工程である。検体の拡大観察工程は、グラム染色された検体を顕微鏡で拡大し、Geckler分類(白血球数と扁平上皮数により検体をグループ1〜6の6段階で評価する指標)の所見を示す工程である。検体の第2品質管理工程は、Geckler分類の所見に基づいて検体が検査対象として適当であるか否かを判断する工程である。
検体の交換工程は、検体の第1品質管理工程及び検体の第2品質管理工程で適当でないと判断された検体を他の検体に交換する工程である。検体の分離塗抹工程は、白金耳等の器具を用いて検体を培地に分離塗抹する(検体に含まれる微生物が1匹ずつ分離するように塗抹する)工程である。検体の培養工程は、分離塗抹した微生物を培養し、コロニーを形成させる工程である。微生物の釣菌工程は、形成された微生物のコロニーの一部を、白金線等の器具を用いて釣菌する工程である。
菌液作成工程は、微生物を含む液体(菌液)を作成する工程である。微生物の検出工程は、菌液に含まれている微生物を検出する工程であり、機械を用いて行う方法と、用手法(いわゆる手作業。例えば試験管培地に菌液を接種して観測する方法)とがある。薬剤感受性試験工程は、菌液に含まれている微生物の薬剤感受性を調べる工程である。この工程も、機械も用いて行う方法と、用手法(例えば厚さ4〜5mmの寒天に菌液を薄く塗り、抗菌薬を染み込ませたディスクを置いて阻止円の直径を測る方法)とがある。
上記の検査作業においては、微生物の検出工程において患者の症状から想定される病原体が検出され、且つ、薬剤感受性試験工程における感受性試験の結果が病原体において想定される結果の範囲に収まっている場合に、検出菌に対して有効な薬剤の確証が得られるので、良い検査結果が得られたことになる。反対に、患者の症状から想定される病原体が検出されなかったり、感受性試験の結果が上記範囲に収まっていなかったりしたら、検出菌に対して有効な薬剤の確証が得られないので、悪い検査結果に終わったことになる。
後者の場合、患者の感染部位の検体が正しく採取できてないか、検体は正しく得られたがそれに含まれる病原体の菌液が上手く作成できていないといった何らかの問題があったと考えられる。どの作業工程に問題があったかを明らかにするためには、各作業工程における作業内容を記録しておくことが重要である。作業支援システム1においては、上記の各工程の作業を行う作業者が、自分が行った作業内容を記録する操作を作業端末20に行うことで、作業支援サーバ装置10が、その作業者が行った作業の記録を蓄積する。
作業内容を記録する操作とは、例えば所見を示すコメントを入力する操作や、検体の画像(目視(肉眼的観察)の画像、顕微鏡で100倍や1000倍などに拡大した画像等)を撮影して画像データを送信する操作、作業時の環境情報(温度や湿度など)、作業日時、作業者を識別する情報(例えばユーザID(Identification))及び作業工程を識別する情報(例えば作業工程ID)等を入力又は選択する操作などである。
検査作業の工程には、作業者が対象物を見て特定の基準に則って判断を下す判断作業工程が含まれている。例えば検体の肉眼的観察工程及び検体の拡大観察工程では、作業者は検体という対象物を見て、M&J分類及びGeckler分類という基準に則って判断を下す。これらの作業工程においては、作業者の判断を支援するため、検体の見本画像(見本となる検体を写した画像。支援情報の1つ)と、その見本画像に写っている検体についての判断結果とを対応付けた情報を上述した支援情報として表示させる作業が行われる。
ただし、見本画像であればどれでも作業の参考になるわけではなく、判断対象の検体に合った見本画像を表示させなければならない。従って、検体に合った見本画像を表示させる操作方法を知ることができれば、作業品質を向上させる役に立つ。そのため、本実施例では、見本画像を表示させる操作が行われた画面の遷移を記録するための操作も、作業内容を記録する操作として行われる。
なお、各工程の作業記録は、必ずしもその工程の作業中に記録しなければならないわけではない。例えば記録用紙に作業内容を記載したり画像を撮影したりしておき、後の工程でまとめて作業内容を記録する操作を行ってもよい。また、作業者と、作業内容の記録者とが異なっていてもよい。ただし、その場合は、記録者は、作業者が誰であったかが分かるように記録しておく必要がある。
作業支援サーバ装置10は、蓄積した作業の記録を作業者が参照したい場合に、作業者から要求された記録を出力する。作業者は、例えば作業において判断に迷うことがあった場合に、作業の記録を参照することで、判断の参考にすることができる。また、作業支援サーバ装置10は、或る作業者が行った作業と、他の作業者が行った作業との相違点を表す相違点情報(支援情報の1つ)を出力する。検査作業においては、上記のとおり工程が共通しているが、各工程における詳細な作業の実施方法は作業者によって異なる場合がある。
その場合に、前述した良い検査結果が得られやすいベテランが行った作業と良い検査結果があまり得られない新米が行った作業との相違点情報が出力されることで、両作業者の作業の記録全てを見比べる場合に比べて、良い検査結果を得るために特にどの作業に注意すればよいかを簡単に知ることができる。このように、作業支援サーバ装置10は、蓄積した作業の記録に基づく支援情報を出力することで、作業者の検査作業を支援する。
図2は作業支援サーバ装置10及び作業端末20のハードウェア構成を表す。作業支援サーバ装置10及び作業端末20は、いずれも、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14と、入力装置15と、出力装置16と、バス17という各装置を備えるコンピュータである。
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備え、プログラムを実行することで各部の動作を制御する。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記録手段である。RAMはプロセッサ11がプログラムを実行する際にワークエリアとして用いられる。ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)及びフラッシュメモリ等の記憶手段である。ストレージ13は、自装置に内蔵のものに限らず、外付けのものであってもよいし、メモリーキーのように持ち運び可能なものであってもよい。ストレージ13及びメモリ12のROMは、プロセッサ11が制御に用いるデータ及びプログラム等を記憶している。
通信装置14は、コンピュータ間の通信を行うための通信手段である。この通信は、有線通信及び無線通信のいずれで行われてもよい。入力装置15は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン及びセンサ等)である。出力装置16は、外部への出力を実施する出力デバイス(ディスプレイ及びスピーカー等)である。なお、入力装置15及び出力装置16は、一体となった構成(例えば、タッチスクリーン)であってもよい。図2に表す各装置は、情報を通信するためのバス17を介して互いにアクセス可能となっている。
作業支援サーバ装置10及び作業端末20の各プロセッサ11がプログラムを実行することで以下に述べる機能が実現される。
図3は作業支援システム1において実現される機能構成を表す。作業支援サーバ装置10は、作業記録蓄積部101と、指定記録取得部111と、指定記録出力部112と、見本画像記憶部121と、見本画像取得部122と、見本画像出力部123と、指定作業者記録取得部131と、相違点抽出部132と、相違点情報生成部133と、相違点情報出力部134とを備える。
作業端末20は、作業画面表示制御部200と、作業関連操作受付部201と、作業記録データ生成部202と、記録指定操作受付部211と、指定記録要求部212と、指定記録表示制御部213と、見本画像表示操作受付部221と、見本画像要求部222と、見本画像表示制御部223と、作業者指定操作受付部231と、相違点情報要求部232と、相違点情報表示制御部233とを備える。
作業端末20の作業関連操作受付部201は、作業者が作業端末20に対して行った上記作業工程における作業関連操作(作業に関連する操作)を受け付ける。作業記録データ生成部202は、作業関連操作受付部201により作業関連操作が受け付けられると、その作業の記録を示す作業記録データを生成する。作業記録データ生成部202は、例えば、上述した所見を示すコメント、検体画像(検体をデジカメ等で撮影した画像)、環境情報、作業日時、作業者のユーザID及び作業工程ID等を示すデータを作業記録データとして生成する。
作業記録データ生成部202は、例えば、コメントや環境情報、作業日時を示す文字列を入力し又は選択する操作が作業関連操作として行われると、それらの文字列を示すテキストデータに、ログインの際に入力された作業者のユーザIDと、入力又は選択された作業工程IDとを対応付けたデータを作業記録データとして生成する。また、作業記録データ生成部202は、検体画像のファイル名及びそのファイルの保存先のパス名を指定する操作が作業関連操作として行われると、そのファイル名の画像データを取得して、その画像データに上記と同様にユーザID及び作業工程IDを対応付けたデータを作業記録データとして生成する。
作業記録データ生成部202は、上記の作業関連操作が行われる度に作業記録データを生成する。作業端末20には、作業支援サーバ装置10の宛先情報(IP(Internet Protocol)アドレス等)が予め記憶されており、作業記録データ生成部202は、作業記録データを生成する度に、生成した作業記録データを記憶されている宛先、すなわち作業支援サーバ装置10に送信する。
作業支援サーバ装置10の作業記録蓄積部101は、上記のとおり送信されてきた作業記録データを受信すると、受信した作業記録データが示す作業記録、すなわち複数の工程からなる作業の記録を蓄積する。具体的には、作業記録蓄積部101は、受信した作業記録データが示す各情報を互いに対応付けて記憶することで、作業記録を蓄積する。
図4は蓄積された作業記録の一例を表す。作業記録蓄積部101は、ユーザIDと、作業日時と、作業工程IDと、作業内容を示すデータとを対応付けて、作業記録として記憶している。図4の例では、「ID001」というユーザIDの作業者及び「ID002」というユーザIDの作業者の作業記録が蓄積されている。なお、この例では各作業者について1つの作業記録しか蓄積されていないが、当然ながら、各作業者について複数の作業記録が蓄積される場合もある。
作業支援システム1においては、検体の採取工程=W01、検体の保存工程=W02、検体の肉眼的観察工程=W03、検体の第1品質管理工程=W04、検体の塗抹・染色工程=W05、検体の拡大観察工程=W06、検体の第2品質管理工程=W07、検体の交換工程=W08、検体の分離塗抹工程=W09、検体の培養工程=W10、微生物の釣菌工程=W11、菌液作成工程=W12、微生物の検出工程=W13、薬剤感受性試験工程=W14という作業工程IDがそれぞれ割り当てられている。
「ID001」というユーザIDには、「Time1−01」、「Time1−02」、「Time1−03」、・・・、「Time1−14」という作業日時(実際には日付及び時刻の情報だが、ここでは簡単に「01」から「14」までの通し番号で表している。つまり、この例では14個の作業工程における作業日時が記録されている)と、「W03」、「W04」、「W07」、・・・、「W14」という作業工程IDと、各作業工程における作業内容を示すデータ(テキストデータ、画像データ、動画データ)のファイル名とが対応付けられている。
テキストデータは、コメント、作業環境、作業日時、ユーザID及び作業工程ID等を示す。画像データは、検体、スライドグラス、シャーレ及びコロニー等を撮影した画像を示す。動画データは、前述した見本画像を表示させる作業が行われた際の作業画面の遷移をキャプチャした動画(デスクトップキャプチャや動画キャプチャなどと呼ばれる)を示す。
また、「ID002」というユーザIDには、「Time2−01」、「Time2−02」、「Time2−03」、・・・、「Time2−11」という作業日時(この例では10個の作業工程における作業日時が記録されている)と、「W03」、「W04」、「W05」、・・・、「W14」という作業工程IDと、各作業工程における作業内容を示すデータ(テキストデータ、画像データ、動画データ)のファイル名とが対応付けられている。
ユーザIDが「ID001」の作業者は、検体の第1品質管理工程(W04)において検体が検査対象として適当ではないと判断して検体の交換工程(W08)を行っている。そのため、W03及びW04の作業工程を2回行っており、合計で14個の作業工程を行っている。一方、ユーザIDが「ID002」の作業者は、検体の第1品質管理工程(W04)及び検体の第2品質管理工程(W07)において検体が検査対象として適当である判断したため、W03〜W07、W09〜W14の11個の作業工程を行っている。このように、蓄積された作業記録は、作業者がどのように作業を行ったかということを表している。
作業支援システム1のユーザは、自分が閲覧したい作業の記録を指定することで、指定した記録を作業端末20に表示させることができる。作業端末20の記録指定操作受付部211は、作業記録蓄積部101に蓄積されている作業の記録のうちのいずれかを指定する指定操作を受け付ける。
図5は指定操作を受け付ける画面の一例を表す。図5の例では、作業端末20が備えるディスプレイに、作業者を指定する指定欄A1と、作業時期を指定する指定欄A2と、作業工程を指定する指定欄A3と、指定する作業記録を確定させる確定ボタンB1とを含む作業記録の指定画面が表示されている。図5の例では、「医師A」という作業者が「9月」に行った「検体の肉眼的観察工程」の作業記録が指定されている。
医師Aは図4に表す「ID001」をユーザIDとする作業者であり、図4に表す医師Aの作業記録は9月に行われた作業の記録であるものとする。なお、この例では作業者、作業工程及び作業時期が1つずつ指定されているが、複数の作業者、作業工程及び作業時期が指定できるようになっていてもよい。また、作業時期はこの例よりも細かい時期(例えば週や日付、時刻で表される時期)が指定されてもよい。記録指定操作受付部211は、受け付けた操作により指定された作業者、作業工程及び作業時期を指定記録要求部212に供給する。
指定記録要求部212は、記録指定操作受付部211が受け付けた操作により指定された作業記録(以下「指定記録」という)を作業支援サーバ装置10に要求する。指定記録要求部212は、供給された作業者、作業工程及び作業時期の作業記録を指定記録として要求することを示す要求データを作業支援サーバ装置10に送信することで、指定記録を要求する。
作業支援サーバ装置10の指定記録取得部111は、指定記録要求部212から要求された作業記録(指定記録)を取得する。指定記録取得部111は、送信されてきた要求データを受け取ると、その要求データが示す作業者のユーザID及び作業工程の作業工程IDと、その要求データが示す作業時期に含まれる作業日時とを含む作業記録を読み出すことで、要求された指定記録を取得する。
この例では、指定記録取得部111は、図4に表す「ID001」、「Time1−01」、「W03」、「xxx1−01.txt」というテキストデータ、「xxx1−01.jpg」という画像データ及び「xxx1−01.mpg」という動画データを、要求された指定記録として取得する。指定記録取得部111は、取得した指定記録を指定記録出力部112に供給する。
指定記録出力部112は、指定記録取得部111により取得された指定記録を、要求元の作業端末20に対して出力する。指定記録出力部112は、供給された指定記録を示す作業記録データを要求元の作業端末20に送信することで、指定記録を要求元に出力する。作業端末20の指定記録表示制御部213は、送信されてきた作業記録データを受信することで、指定記録出力部112から出力されてきた指定記録を受け取る。指定記録表示制御部213は、受け取った指定記録を自装置の表示手段に表示させる。
図6は表示された指定記録の一例を表す。図6の例では、指定記録表示制御部213が、指定された作業者の表示欄C1、作業時期の表示欄C2及び作業工程の表示欄C3と、記録されている作業内容を示す画像D1及び文字列D2とを指定記録として自装置のディスプレイに表示させている。
指定記録表示制御部213は、表示欄C1〜C3に、図5の例で指定された作業者、作業時期及び作業工程を表示させている。また、指定記録表示制御部213は、検体(喀痰)を示す画像(図4の「xxx1−01.jpg」が示す画像)を画像D1として、この検体のM&J分類の所見(この例ではP2と判断した場合の所見)を示す文字列(図4の「xxx1−01.txt」が示すテキスト)を文字列D2として表示させている。
また、指定記録表示制御部213は、作業画面再生ボタンB2を表示させている。この作業画面再生ボタンB2を押す操作をユーザが行った場合、指定記録表示制御部213は、図4の「xxx1−01.mpg」という動画データを用いて作業者が作業を行う際に表示させていた作業画面の遷移を示す動画を再生する。
図7は再生された動画の場面の一例を表す。図7の例では、指定記録表示制御部213が、指定された検体の肉眼的観察工程の作業画面を表示させている。この作業画面には、検体の採取工程で採取されて検体の保存工程で保存されていた検体の画像(この例では図6に表す喀痰の画像D1)と、この工程における作業内容を指示する作業指示画像E1と、M&J分類においてP2に分類される喀痰の見本画像F1と、「P2の見本画像」という文字列J1と、M2に分類される喀痰の見本画像F2と、「M2の見本画像」という文字列J2と、これらを踏まえて作業者がM&J分類の所見を入力する入力欄G1とが含まれている。
本実施例では、作業指示画像E1、文字列J1、J2、見本画像F1及びF2は最初からは表示されておらず、作業者が操作して表示させているものとする。そのため、再生された動画では、作業指示画像E1、文字列J1、J2、見本画像F1及びF2を表示させる操作や、作業指示画像及び見本画像を切り替える操作などが表されることになる。これらの操作及びこれらの操作により表示される画面について以下に説明する。
作業支援サーバ装置10の見本画像記憶部121は、検体の見本画像を記憶する。見本画像記憶部121は、例えば、作業記録蓄積部101に蓄積されている作業記録に含まれる検体の画像を取得して、見本画像として記憶する。見本画像記憶部121は、喀痰の目視の画像を見本画像として記憶する際には、その喀痰のM&J分類の評価結果(M1、M2、P1、P2、P3のいずれか)を対応付けて記憶する。
見本画像記憶部121は、例えば、蓄積されている作業記録に含まれている評価結果、すなわち作業者が検体の肉眼的観察工程において判断したM&J分類の評価結果を見本画像に対応付けて記憶する。なお、外部装置や可搬の記憶メディアにM&J分類の評価結果に対応付けられた喀痰の画像が記憶されている場合には、見本画像記憶部121は、それらの画像及び評価結果を取得して、互いに対応付けられた見本画像及び評価結果として記憶してもよい。
作業端末20の作業画面表示制御部200は、作業者が各工程の作業を行う際に用いる情報を含む画面であり、且つ、作業者の操作を受け付けるための画面である作業画面を表示手段に表示させる。
図8は表示される作業画面の遷移の一例を表す。図8(a)では、作業画面表示制御部200が、作業工程を選択するための作業メニュー画面を表示させている。この作業メニュー画面は、ユーザがログインの操作を行うことで表示される。そのため、作業画面表示制御部200は、ログインされたユーザ(この例では医師A)の名前を使って、「医師Aさん、作業工程を指定してください。」というこの画面で行うべき操作を指示する指示画像H1を表示させている。
また、作業画面表示制御部200は、作業メニュー画面において、作業工程を指定する指定欄A4と、確定ボタンB3とを表示させている。図8の例では、指定欄A4において「検体の肉眼的観察工程」という作業工程が指定されている。この状態で作業者が確定ボタンB3を押す操作を行うと、作業画面表示制御部200は、図8(b)に表すように検体の肉眼的観察工程の作業画面を表示させる。この作業画面では、作業画面表示制御部200は、「検体の画像を読み込んでください。」という指示画像H2を表示している。
また、作業画面表示制御部200は、検体の画像データを指定する指定欄A5と、確定ボタンB4とを表示させている。図8の例では、指定欄A5において「・・・jpg」というファイル名の画像データが指定されている。この状態で作業者が確定ボタンB4を押す操作を行うと、作業画面表示制御部200は、図8(c)に表すように指定された検体(この例では喀痰)の画像D1を表示させる。作業画面表示制御部200は、画像D1とともに、「M&J分類を行ってください。」という指示画像H3と、M&J分類の所見の入力欄G2と、「?」という記号を含むヘルプボタンB5とを表示させている。
作業者が画像D1だけでは判断が難しい場合にヘルプボタンB5を押す操作を行うと、作業画面表示制御部200は、図8(d)に表すようにM&J分類の作業を支援する支援情報を表示させるための作業画面を表示させる。この例では、作業画面表示制御部200は、「表示させたい作業支援情報を選択してください。」という指示画像H4と、作業指示画像選択ボタンB6と、見本画像選択ボタンB7と、確定ボタンB8とを表示させている。見本画像選択ボタンB7には、M&J分類の評価結果である「M1」、「M2」、「P1」、「P2」、「P3」を示すボタンも含まれている。
作業者は、支援情報を表示させるため、作業指示画像選択ボタンB6及び見本画像選択ボタンB7のうち表示させたい支援情報のボタンを選択する操作と、確定ボタンB8を押す操作とを行う。図8(d)では、作業者が選択したボタン(作業指示画像選択ボタンB6及び「M2」、「P2」が選択された見本画像選択ボタンB7)が太枠で表されている。この場合、M&J分類で「M2」及び「P2」と評価された見本画像が選択されていることになる。
作業端末20の見本画像表示操作受付部221は、このうちの見本画像選択ボタンB7を選択する操作及び確定ボタンB8を押す操作を、作業者が選択した見本画像を表示させる操作として受け付ける。見本画像表示操作受付部221は、この操作を受け付けると、選択された評価結果(この例では「M2」及び「P2」)を見本画像要求部222に通知する。
見本画像要求部222は、見本画像表示操作受付部221が受け付けた操作により表示させることになった見本画像を作業支援サーバ装置10に要求する。見本画像要求部222は、通知された評価結果に対応付けられた見本画像(つまりM&J分類でその評価結果のとおりに評価された見本画像)を要求することを示す要求データを作業支援サーバ装置10に送信することで、上記の表示させることになった見本画像を要求する。
作業支援サーバ装置10の見本画像取得部122は、見本画像要求部222から要求された見本画像を取得する。見本画像取得部122は、上記要求データを受信すると、その要求データが示すM&J分類の評価結果に対応付けて記憶されている見本画像を見本画像記憶部121から読み出して取得する。見本画像取得部122は、取得した見本画像を見本画像出力部123に供給する。
見本画像出力部123は、見本画像取得部122により取得された見本画像を、その見本について過去に判断された結果に対応付けて、その見本画像の要求元である作業端末20に対して出力する。見本画像出力部123は、供給された見本画像とそれに対応付けられていたM&J分類の評価結果とを対応付けて示す見本画像データを要求元の作業端末20に送信することでこの出力を行う。
このように、見本画像出力部123は、検体の肉眼的観察工程のような判断作業工程(対象物を見て特定の基準に則って判断を下す作業工程)において用いられた対象物の見本を写した画像を、その見本について過去に判断された結果に対応付けて出力する。見本画像出力部123本発明の「第2出力部」の一例である。
作業端末20の見本画像表示制御部223は、送信されてきた見本画像データを受信することで、見本画像出力部123から出力されてきた見本画像を受け取り、受け取った見本画像を表示手段に表示させる。一方、作業画面表示制御部200は、作業指示画像選択ボタンB6が選択されていたので、検体の肉眼的観察工程の作業を説明する作業指示画像を取得して、検体の画像及び判断結果の入力欄とともに表示させる。この作業指示画像は、例えば作業端末20の記憶手段に記憶されているが、外部装置(例えば作業支援サーバ装置10)に記憶されていてもよい。
作業画面表示制御部200が検体の画像、判断結果の入力欄及び作業指示画像を表示させ、見本画像表示制御部223が見本画像を表示させた作業画面の一例が、図7に表す作業画面である。見本画像表示制御部223は、検体の見本画像F1及びF2を、それらの検体について作成された所見(この例では「P2」及び「M2」というM&J分類の評価結果を表す文字列J1及びJ2)に対応付けて表示させている。
以上のとおり見本画像及び判断結果の出力及び表示が行われることで、作業者は、見本の検体によりどのような判断がされたかを知ることができ、作業の対象となっている検体に似た見本と同じように判断したり、その検体と似ていない見本とは異なるように判断したりというように、見本を参考にして判断することができる。その結果、見本画像及び判断結果の出力及び表示が行われない場合に比べて、判断作業工程における作業品質の向上を支援することができる。
なお、上記の例では、作業者は、画面に表示された検体の画像を見ながらM&J分類の判断を行っているが、当然ながら、検体の実物も同時に見ながらこの判断を行ってもよいし、検体の実物だけを見ながらこの判断を行ってもよい。その場合、図7及び図8に表す検体の画像は表示されていなくてもよい。ただ、検体を撮影した画像を作業記録として作業端末20に取り込むのであれば、作業時にも図7に表すように検体の画像と見本画像とを並べて表示することで、実物と見本画像とを見比べる場合に比べて、見本画像との比較を容易にすることができる。
また、作業支援システム1においては、別々のユーザが同じ工程において行った作業の相違点を表す相違点情報を表示させることができる。この相違点情報を作業端末20に表示させるための機能について説明する。作業端末20の作業者指定操作受付部231は、例えば作業者を指定するための指定画面において、互いの作業の相違点を表したい2人の作業者及び作業工程を指定するユーザによる操作を受け付ける。
図9は作業者の指定画面の一例を表す。図9の例では、作業画面表示制御部200が、2人の作業者のうちの第1作業者を指定する指定欄A11と、第2作業者を指定する指定欄A12と、作業工程を指定する指定欄A13と、指定する作業者及び作業工程を確定させる確定ボタンB14とを含む作業者の指定画面を表示させている。第1作業者は本発明の「第1ユーザ」の一例であり、第2作業者は本発明の「第2ユーザ」の一例である。
図9の例では、「医師A」が第1作業者として、「臨床検査技師B」が第2作業者として指定されるとともに、「検体の肉眼的観察工程」という作業工程が指定されている。臨床検査技師Bは図4に表す「ID002」をユーザIDとする作業者であるものとする。作業者指定操作受付部231は、受け付けた操作により指定された第1作業者及び第2作業者のユーザID及び同じく指定された作業工程を示す作業工程IDを相違点情報要求部232に供給する。
相違点情報要求部232は、作業者指定操作受付部231が受け付けた操作により指定された作業工程において、同じく指定された第1作業者が行った作業とその作業工程において第2作業者が行った作業との相違点を表す相違点情報を作業支援サーバ装置10に要求する。相違点情報要求部232は、供給された2つのユーザID及び作業工程IDと、それらのIDが示す指定された第1作業者及び第2作業者の指定された作業工程での作業の相違点を示す相違点情報を要求することとを示す要求データを作業支援サーバ装置10に送信することでこの要求を行う。
作業支援サーバ装置10の指定作業者記録取得部131は、作業者指定操作受付部231が受け付けた操作により指定された第1作業者及び第2作業者の作業記録を取得する。指定作業者記録取得部131は本発明の「取得部」の一例である。指定作業者記録取得部131は、送信されてきた要求データを受け取ると、その要求データが示す第1作業者及び第2作業者のユーザID及びその要求データが示す作業工程の作業工程IDを含む作業記録(図4に表すユーザID、作業日時、作業工程ID及び作業内容を示すデータ)を読み出して、第1作業者及び第2作業者の作業記録として取得する。指定記録取得部111は、取得した作業記録を相違点抽出部132に供給する。
相違点抽出部132は、指定作業者記録取得部131によって取得された第1作業者の作業記録及び第2作業者の作業記録に基づいて、共通の作業工程において第1作業者が行った作業とその作業工程において第2作業者が行った作業との相違点を抽出する。相違点抽出部132は、検体の肉眼的観察工程であれば、例えば、表示させた見本画像に関する違いを相違点として抽出する。見本画像に関する違いとは、例えば、表示させた見本画像の数の違いや表示させた見本画像のM&J分類の違い、見本画像を表示させた時間の長さの違いなどである。
相違点抽出部132は、例えば、作業記録データのうち動画データに含まれる作業画面を一定の間隔で(例えば1秒毎の作業画面を)抜き出し、抜き出した作業画面を解析してその作業画面に含まれている見本画像を切り出す(見本画像だけを示す画像データを生成する)。相違点抽出部132は、切り出した見本画像と、見本画像記憶部121に蓄積されている見本画像とをマッチングして、作業画面に含まれている見本画像を特定する。
相違点抽出部132は、抜き出した作業画面毎に見本画像を特定することで、第1作業者及び第2作業者が表示させた見本画像と、その表示時間(表示されていた時間)を特定する。相違点抽出部132は、第1作業者及び第2作業者の作業記録についてそれぞれ特定した見本画像及び表示時間とを比べて、異なっているものを作業の相違点として抽出する。
なお、相違点の抽出方法は上記方法に限らない。例えば、作業記録データ生成部202が、自装置に表示された見本画像を識別する情報(見本画像のファイル名など)と、見本画像の表示時間とを示す作業記録データを生成し、作業記録蓄積部101がそれらの情報(見本画像の識別情報及び表示時間)を含む作業記録を蓄積する。相違点抽出部132は、指定記録取得部111から供給された第1作業者の作業記録に含まれている情報によって識別される見本画像と、その作業記録に含まれている表示時間とを、第2作業者について同様に供給された見本画像及び表示時間と比較し、相違点を抽出する。
作業支援システム1においては、想定されている作業の相違点に対してそれらを識別する識別情報が割り当てられているものとする。例えば、検体の肉眼的観察工程においては、見本画像に関する違いが3種類(上述した数、分類、表示時間の違い)想定されており、作業工程IDの「W03」に見本画像に関する違いを示す「MIHON1」、「MIHON2」、「MIHON3」を繋げたものが相違点IDとして割り当てられている。
例えば「W03−MIHON1」は、検体の肉眼的観察工程において作業者が表示させた見本画像の数の違いが相違点であることを示す相違点IDである。相違点抽出部132は、上記のとおり抽出した相違点(例えば見本画像の数、M&J分類の評価結果、表示時間)と、その相違点を示す相違点IDと、その相違点を抽出した第1作業者及び第2作業者の作業記録とを相違点情報生成部133に供給する。
相違点情報生成部133は、相違点抽出部132によって抽出された相違点、すなわち、共通の工程において第1作業者が行った作業とその工程において第2作業者が行った作業との相違点を示す相違点情報を生成する。相違点情報生成部133は本発明の「情報生成部」の一例である。相違点情報生成部133は、相違点抽出部132から供給された相違点、相違点ID及び作業記録を示すデータを生成することで、相違点情報を生成する。相違点情報生成部133は、生成した相違点情報を相違点情報出力部134に供給する。
相違点情報出力部134は、相違点情報生成部133によって生成された相違点情報を出力する。相違点情報出力部134は本発明の「第1出力部」の一例である。相違点情報出力部134は、相違点情報生成部133から供給された相違点情報を示す相違点情報データを、相違点情報の要求元である作業端末20に送信することで、この出力を行う。
作業端末20の相違点情報表示制御部233は、送信されてきた相違点情報データを受信することで、相違点情報出力部134から出力されてきた相違点情報を受け取る。相違点情報表示制御部233は、受け取った相違点情報を自装置の表示手段に表示させる。
図10は表示された相違点情報の一例を表す。図10の例では、相違点情報表示制御部233が、指定された第1作業者の表示欄C4、第2作業者の表示欄C5及び作業工程の表示欄C6を自装置のディスプレイに表示させている。
また、相違点情報表示制御部233は、第1作業者の見本画像関連情報K1と、第2作業者の見本画像関連情報K2とを相違点情報として自装置のディスプレイに表示させている。見本画像関連情報とは、上述した見本画像の数、M&J分類、表示時間のことである。見本画像関連情報K1は、第1作業者がそれぞれ「M2、P1、P2」と評価された2つずつの見本画像を3分間表示させ、見本画像関連情報K2は、第2作業者が「P1」と評価された2つの見本画像を2分間表示させたことを表している。
仮にユーザ自身が第1作業者及び第2作業者の作業記録の全体を表示させて比較し、それらの相違点を抽出しようとすると、相違している項目の情報だけでなく相違していない項目の情報も見なければならない。それに比べて、本実施例のように作業支援サーバ装置10から相違点情報が出力されるようになっていると、相違していない項目の情報を見る手間が省けるので、工程が共通する作業を複数の作業者がそれぞれ行った場合にそれらの作業の違いを把握しやすくすることができる。
この例では、例えば第1作業者である医師Aはベテランであり上述した良い検査結果が得られる確率が高く、第2作業者である臨床検査技師Bは新人であり良い検査結果が得られる確率が低いものとする。その理由としては、臨床検査技師Bは医師Aに比べて、M&J分類の評価結果が正確でない可能性が考えられる。そして、臨床検査技師Bは医師Aに比べて、検体の肉眼的観察工程において表示させる見本画像の数、その見本画像のM&J分類の数及び表示時間のいずれもが少ないことが、そのように誤った判断をしている理由の1つになっていると考えられる。
よって、臨床検査技師BがM&J分類をより適切に判断できるようにして、より良い検査結果を得るためには、第1作業者である医師Aとの作業の相違点を少なくすること、すなわち、検体の肉眼的観察工程において、3通りのM&J分類に評価された見本画像を表示させるようにすること(これにより自然と見本画像の数も多くなり、表示時間も長くなると考えられる)が有効だということが、この相違点情報から導き出せる。
このように、本実施例によれば、良い結果が得られた作業記録と悪い結果に終わった作業記録との相違点情報を出力させることで、相違点情報が出力されない場合に比べて、良い結果を得るためにどのように作業内容を改善すればよいかということを導きやすくなり、その結果、工程が共通する作業を複数の作業者がそれぞれ行った場合に、相違点情報が出力されないときに比べて、それらの作業の品質の向上を支援することができる。
作業支援システム1が備える各装置(作業支援サーバ装置10及び作業端末20)は、上記の構成に基づいて、作業記録を蓄積する蓄積処理と、相違点情報を出力する出力処理とを行う。
図11は蓄積処理における各装置の動作手順の一例を表す。この動作手順は、作業者が作業端末20を操作して作業を行うことを契機に開始される。まず、作業端末20(作業関連操作受付部201)が、作業者が行った作業関連操作を受け付ける(ステップS11)。
次に、作業端末20(作業記録データ生成部202)が、作業関連操作が受け付けられた作業についての作業記録データを生成し(ステップS12)、生成した作業記録データを作業支援サーバ装置10に送信する(ステップS13)。作業支援サーバ装置10(作業記録蓄積部101)は、受信した作業記録データが示す各情報を互いに対応付けて記憶し、作業記録を蓄積する(ステップS14)。作業支援サーバ装置10及び作業端末20は、作業者が作業を行う度にこの動作手順を行う。
図12は出力処理における各装置の動作手順の一例を表す。この動作手順は、作業者が図9に表す作業者の指定画面を表示させる操作を行うことを契機に開始される。まず、作業端末20(作業者指定操作受付部231)が、2人の作業者及び作業工程を指定する操作を受け付ける(ステップS21)。次に、作業端末20(相違点情報要求部232)が、指定された2人の作業者の作業の相違点を示す相違点情報を作業支援サーバ装置10に要求する(ステップS22)。
作業支援サーバ装置10(指定作業者記録取得部131)は、要求された相違点情報の生成に用いる情報、すなわち、指定された2人の作業者(第1作業者及び第2作業者)の指定された作業工程の作業記録を取得する(ステップS23)。次に、作業支援サーバ装置10(相違点抽出部132)は、取得された作業記録から、共通の作業工程(指定された作業工程)において第1作業者が行った作業とその作業工程において第2作業者が行った作業との相違点を抽出する(ステップS24)。
続いて、作業支援サーバ装置10(相違点情報生成部133)は、抽出された相違点を示す相違点情報を生成する(ステップS25)。そして、作業支援サーバ装置10(相違点情報出力部134)は、生成された相違点情報を要求元の作業端末20に対して出力する(ステップS26)。作業端末20(相違点情報表示制御部233)は、出力されてきた相違点情報(例えば図10に表す相違点情報)を自装置の表示手段に表示させる(ステップS27)。
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず以下のように変形させてもよい。また、上述した実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせて実施してもよい。
[2−1]仮想の作業者
実施例では、実際に作業を行った作業者の作業記録が蓄積されたが、実際には存在しない仮想の作業者の作業記録が蓄積されてもよい。仮想の作業者の作業記録とは、例えば、各作業者の作業記録のうち、模範的な作業を記録したものを集めて生成された作業記録のことである。
図13は本変形例の作業支援システム1aにおいて実現される機能構成を表す。作業支援システム1aは、作業支援サーバ装置10と、作業端末20aとを備える。作業端末20aは、図3に表す各部に加えて、作業選択操作受付部241と、仮想作業記録データ生成部242とを備える。作業選択操作受付部241は、共通の作業工程の作業を行った複数のユーザのうちからいずれかを選択する操作を受け付ける。この操作は、作業画面表示制御部200が表示させた作業記録選択画面において行われる。
図14は表示された作業記録選択画面の一例を表す。図14の例では、作業画面表示制御部200が、「各作業工程の作業記録を選択してください。」という指示画像H9と、検査作業の各作業工程について、「第1作業者」、「第2作業者」及び「第3作業者」からいずれかの作業者の作業記録を選択するための選択欄A21(14(作業工程数)×3(作業者数)=42のマス目を有する欄。図14の例ではそのうちの一部が表示されている)と、確定ボタンB15とを表示させている。第1作業者、第2作業者及び第3作業者はこの例における複数のユーザである。
これらの複数の作業者は、作業記録が蓄積されている全ての作業者であってもよいし、そこから選ばれた作業者であってもよい。後者の場合、作業端末20aを操作するユーザが複数の作業者を選択してもよいし、特定の条件を満たす作業者を作業端末20a又は作業支援サーバ装置10が選択してもよい。特定の条件とは、例えば作業記録の蓄積数が多い方からN(Nは2以上の自然数)人という条件や、全ての作業工程を決まった回数以上行ったことがある作業者という条件などである。
この例では、各マス目に表示されている「○」が選択された作業者を表し、「×」が選択されなかった作業者を表し、「−」は該当する作業工程の作業を行ったことがない作業者であること(つまりこのマス目は「○」にできない)を表している。選択欄A21の各マス目を選択する操作(例えばダブルクリック又はダブルタップする操作)を行うと、この操作を記録指定操作受付部211が蓄積されている作業の記録のうちのいずれかを指定する指定操作として受け付け、該当する作業者の該当する作業工程の作業記録が指定記録表示制御部213によって表示される。
ユーザは、各作業者について表示された作業記録を比較し、例えば各作業工程において最も模範的と思われる作業についての作業記録を選択する。ここでいう模範的な作業とは、例えばその作業工程において良好な結果(望ましいとされる結果)が得られた作業や、効率よく短時間で終えられた作業、結果の良好さと作業時間とのバランスが最も良かった作業などである。
ユーザが各作業工程についていずれかの作業記録を選択する操作を行い、確定ボタンB15を押す操作を行うと、作業選択操作受付部241は、それらの操作を上記の選択操作として受け付ける。作業選択操作受付部241は、この操作によって選択された作業記録を特定するためのデータとして、該当する作業者及び作業工程を対応付けた作業記録特定データを仮想作業記録データ生成部242に供給する。
仮想作業記録データ生成部242は、共通の作業工程の作業を行った複数のユーザのその作業工程の作業の記録から選択された記録を、仮想の作業者による共通の作業工程の作業の記録として生成する。仮想作業記録データ生成部242は、供給された作業記録特定データが表す作業者及び作業工程を、指定された作業者及び指定された作業工程であるものとして指定記録要求部212に供給する。指定記録要求部212は、供給された作業者及び作業工程の作業記録を作業支援サーバ装置10に要求する。指定記録取得部111はこうして要求された指定記録を取得し、指定記録出力部112は、取得された指定記録を要求元に出力する。
仮想作業記録データ生成部242は、出力されてきた指定記録を受け取り、受け取った指定記録を、仮想の作業者に割り当てられたユーザID(例えば「ID000」)に対応付けた作業記録データを、仮想作業記録データとして生成する。仮想作業記録データ生成部242は、生成した仮想作業記録データを作業支援サーバ装置10に送信する。作業記録蓄積部101は、受信した仮想作業記録データに基づき、仮想の作業者の作業記録を蓄積する。
図15は本変形例の作業者の指定画面の一例を表す。図15の例では、作業画面表示制御部200が、仮想の作業者を第1作業者として指定する指定欄A11と、医師Cを第2作業者として指定する指定欄A12と、釣菌工程を作業工程として指定する指定欄A13とを表示させている。この状態で確定ボタンB14を押す操作が行われると、相違点情報要求部232が相違点情報を作業支援サーバ装置10に要求する。
作業支援サーバ装置10の指定作業者記録取得部131は、指定された第1作業者の作業記録である仮想の作業者による作業の記録、すなわち、共通の作業工程の作業を行った複数のユーザの作業の記録から上記のとおり選択された記録を取得する。また、指定作業者記録取得部131は、第2作業者の作業記録、すなわち、指定された第2作業者である医師Cの作業記録を取得する。
その後、相違点抽出部132が共通の作業工程において第1作業者及び第2作業者が行った作業の相違点を抽出することで、相違点情報生成部133が、指定作業者記録取得部131により取得された仮想の作業者による作業の記録と指定されたユーザの作業の記録とに基づいて、共通の作業工程における仮想の作業者による作業と指定されたユーザの作業との相違点を表す相違点情報を生成する。こうして生成された相違点情報を相違点情報出力部134が出力し、相違点情報表示制御部233が表示させる。
図16は本変形例で表示された相違点情報の一例を表す。図16の例では、相違点情報表示制御部233が、第1作業者である「仮想の作業者」を表示する表示欄C4、第2作業者である「医師C」を表示する表示欄C5及び指定された作業工程の「微生物の釣菌工程」を表示する表示欄C6を表示させている。また、相違点情報表示制御部233は、第1作業者の釣菌関連情報K3と、第2作業者の釣菌関連情報K4とを相違点情報として表示させている。
釣菌関連情報とは、釣菌工程で分離培養したコロニーの一部における微生物の量を左右する要素の情報であり、例えば培養期間、培養温度及び釣菌位置である。図16の例では、培養期間及び培養温度が、釣菌関連情報K3では「X1日」及び「Y1度」であり、釣菌関連情報K4では「X2日」及び「Y2度」である。また、釣菌位置としては、それぞれ釣菌後のコロニーを撮影した画像を示す画像データのファイル名が表されている。このファイル名を選択するユーザが操作を行うと、相違点情報表示制御部233は、撮影された釣菌後のコロニーの画像を表示させる。この画像により、作業者がどのコロニーのどの位置を分離したかが分かるようになっている。
本変形例では、仮想の作業者の作業記録と指定された作業者の作業記録との相違点情報が出力される。この仮想の作業者の作業記録としては、複数の作業者の作業記録の中から最も模範的な作業記録を選択することができるので、仮想の作業者の作業記録が用いられない場合に比べて、相違点情報に基づいて作業品質を向上させる作業をより効率よく行うことができる。
[2−2]模範作業記録の選択
前述した模範的な作業記録を選択する機能が実現されてもよい。
図17は本変形例の作業支援システム1bにおいて実現される機能構成を表す。図17では、説明に関係ない一部の機能について図示を省略している。作業支援システム1bは、作業支援サーバ装置10bと、作業端末20とを備える。作業支援サーバ装置10bは、図3に表す各部に加えて、作業結果評価部151と、模範作業記録データ生成部152とを備える。
作業結果評価部151は、作業記録蓄積部101に蓄積されている作業記録が示す作業結果のうち、作業者が上述した共通の作業工程において行った作業の結果を評価する。作業結果評価部151は本発明の「評価部」の一例である。作業結果評価部151は、例えば、各作業者が検査作業を行った場合に良い作業結果が得られる確率を算出し、算出した確率によって表される評価(確率が高いほど高い評価を表す)を、全ての作業工程における作業記録の評価とする。
その場合、作業結果評価部151は、例えば、微生物の検出工程の作業結果と、この作業結果が得られ且つ検査作業全体の作業結果が良好な場合に薬剤感受性試験工程で得られるはずの作業結果とを対応付けた作業結果テーブルを用いて評価を行う。
図18は作業結果テーブルの一例を表す。図18の例では、「微生物α」という微生物の検出工程の作業結果に対して、「第1薬剤=s、第2薬剤=s/i、第3薬剤=r、・・・」という薬剤感受性試験工程の作業結果が対応付けられている。
また、「微生物β」という微生物の検出工程の作業結果に対して、「第1薬剤=r、第2薬剤=s、第3薬剤=s、・・・」という薬剤感受性試験工程の作業結果が対応付けられている。作業結果評価部151は、或る作業者について読み出した作業記録が示す微生物の検出工程の作業結果にこの作業結果テーブルで対応付けられている薬剤感受性試験工程の作業結果が得られていれば、この作業者について良い作業結果を1回カウントし、そうでなければ、この作業者について悪い作業結果を1回カウントする。
作業結果評価部151は、各作業者について、良い作業結果の件数と悪い作業結果の件数とをカウントし、作業結果の全件数に対する良い作業結果の件数の割合を算出する。作業結果評価部151は、こうして各作業者の作業結果を評価すると、その評価結果を模範作業記録データ生成部152に供給する。
模範作業記録データ生成部152は、上述した共通の作業工程の作業を行った複数のユーザの作業の記録のうち、作業結果評価部151による評価が他のユーザに比べて高かったユーザの作業の記録を示すデータを、仮想の作業者による模範となる作業の記録を示す作業記録データとして生成する。模範作業記録データ生成部152は、例えば、作業結果評価部151から供給された評価結果、すなわち良い作業結果を得られる確率が最も高かった作業者の作業記録データ(この例では全ての作業工程の作業記録を示すデータ)を生成し、生成した作業記録データを作業記録蓄積部101に蓄積させる。
作業者指定操作受付部231が受け付けた操作により仮想の作業者が指定されると、指定作業者記録取得部131は、上記のとおり蓄積された仮想の作業者の作業記録データ、すなわち、他のユーザに比べて評価が高かったユーザの作業の記録を示すデータを取得する。その結果、図16の例のように、仮想の作業者の作業記録と指定された作業者の作業記録との相違点情報が出力される。作業記録を人間が評価すると、評価する人間によって評価の高さがばらつきやすい。それに比べると、本変形例では、作業結果評価部151が作業記録を評価するので、評価の一貫性を高めることができる。
なお、作業結果評価部151による評価方法は上記のものに限らない。作業結果評価部151は、例えば各作業工程において理想の作業結果を示す理想結果情報を用いて、各作業者の各作業工程の作業記録と理想結果情報とを比較して、それらの差異の程度によって評価を行ってもよい。理想結果情報は、例えば、環境情報や作業日時のように数値で表される結果であれば、その数値の範囲を示す情報であり、コメントで表される結果であれば、そのコメントに含まれるべき語句を示す情報である。
作業結果評価部151は、理想結果情報が示す範囲に作業結果の数値が含まれていない件数や理想結果情報が示す語句のうち作業結果に含まれていない語句の件数の合計を算出し、算出した件数が少ないほど理想の作業結果との差異が小さいものとして、高く評価する。これにより、作業工程によってその作業を得意とする作業者が異なっている場合でも、各作業工程において最も模範となるべき作業者による作業記録を高く評価することができる。
[2−3]見本動画
実施例では、支援情報として見本画像が表示されたが、それに限らず、見本動画が支援情報として表示されてもよい。検査作業には、材料から作業で用いる対象物を得る取得作業工程が含まれる。例えば検体の分離塗抹工程及び検体の培養工程は、検体という材料からコロニーという対象物を得る工程であり、微生物の釣菌工程及び菌液作成工程は、コロニーという材料から菌液という対象物を得る工程である。
図19は本変形例の作業支援システム1cにおいて実現される機能構成を表す。図19では、説明に関係ない一部の機能について図示を省略している。作業支援システム1cは、作業支援サーバ装置10cと、作業端末20cとを備える。作業支援サーバ装置10cは、図3に表す各部に加えて、見本動画記憶部161と、見本動画取得部162と、見本動画出力部163とを備える。作業端末20cは、図3に表す各部に加えて、見本動画表示操作受付部251と、見本動画要求部252と、見本動画表示制御部253とを備える。
本変形例では、作業関連操作として、上記の取得作業工程において材料から対象物を得る作業を撮影する操作が行われ、作業記録データ生成部202が、撮影された作業を写した動画を含む作業記録データを生成する。見本動画記憶部161は、作業記録蓄積部101に蓄積されている作業記録に含まれる作業の動画を取得して、取得作業工程における前述の作業の見本を写した見本動画として記憶する。
見本動画表示操作受付部251は、作業者が選択した見本動画を表示させる操作を受け付ける。見本動画要求部252は、この操作により表示させることになった見本動画を作業支援サーバ装置10cに要求する。見本動画取得部162は、要求された見本動画を取得する。見本動画出力部163は、取得された見本動画を、その見本動画に写っている見本の作業で得られた対象物に関して過去に判断された結果に対応付けて、要求元の作業端末20cに対して出力する。見本動画出力部163は本発明の「第3出力部」の一例である。
対象物に関して過去に判断された結果とは、例えば、対象物がコロニーであれば、優良なコロニーが数多く得られた又はコロニーの取得に失敗した等の判断結果であり、対象物が菌液であれば、微生物の濃度が最適な菌液が得られた又は微生物の濃度が適当でない(濃すぎる又は薄すぎる)菌液になった等の判断結果である。これらの判断結果が作業記録として作業記録蓄積部101に蓄積されていれば、見本動画記憶部161は、見本動画を記憶する際に、その見本動画に対応付けてそれらの判断結果を記憶する。
見本動画表示制御部253は、作業支援サーバ装置10cから出力されてきた見本動画を、それに対応付けられた判断結果とともに表示させる。これにより、作業者は、見本の作業によりどのような結果が得られたかを知ることができる。そのため、表示された作業を真似すべきなのか、反対に真似しないようにすべきなのかという点を意識しながら見本の作業の動画を見ることができるから、上記の見本動画及び判断結果の出力が行われない場合に比べて、取得作業工程における作業品質の向上を支援することができる。
[2−4]コメント作成の支援
検査作業には、検体の第1品質管理工程及び検体の第2品質管理工程等のコメントを作成するコメント作成工程が含まれている。作業支援システムは、これらのコメント作成工程におけるコメントの作成作業を支援してもよい。
図20は本変形例の作業支援システム1dにおいて実現される機能構成を表す。図20では、説明に関係ない一部の機能について図示を省略している。作業支援システム1dは、作業支援サーバ装置10dと、作業端末20とを備える。作業支援サーバ装置10dは、図3に表す各部に加えて、コメント雛形記憶部171と、コメント雛形出力部172とを備える。コメント雛形記憶部171は、コメント作成工程において作成されるコメントの雛形(支援情報の1つ)を記憶する。コメント雛形記憶部171は本発明の「雛形記憶部」の一例である。
コメント雛形記憶部171は、例えば、作業支援システム1dを構築、運用又は管理する担当者が作成したコメントの雛形を記憶する。なお、コメント雛形記憶部171は、他にも、作業記録蓄積部101に蓄積されている作業記録に含まれるコメントのうち、前述の担当者が雛形として適当なものだと判断して選択したものを作業記録蓄積部101から読み出して記憶してもよい。また、コメント雛形記憶部171は、そうして読み出したコメントをさらに担当者が雛形として用いるために表現を汎用的に修正したものをコメントの雛形として記憶してもよい。
本変形例の作業画面表示制御部200は、前述したコメント作成工程において作業画面を表示させる場合、作業支援サーバ装置10dに対して、そのコメント作成工程におけるコメントの雛形を要求する。コメント雛形出力部172は、この要求を受け取ると、要求されたコメント作成工程におけるコメントの雛形をコメント雛形記憶部171から読み出して、要求元の作業端末20に対して出力する。コメント雛形出力部172は本発明の「第4出力部」の一例である。作業画面表示制御部200は、出力されてきた雛形を自装置の表示手段に表示させる。
図21は表示されたコメントの雛形の一例を表す。図21の例では、作業画面表示制御部200は、検体の肉眼的観察工程の作業画面において、判断結果のコメントの入力欄G5の下に、複数の雛形(雛形L1、L2、L3、L4)を表示させている。雛形L1は、見本画像と比較するまでもなく検体として適当だと判断した場合のコメントを表し、雛形L2は、見本画像と比較するまでもなく検体として適当ではないと判断した場合のコメントを表している。
雛形L3は、見本画像と比較した結果検体として適当だと判断した場合のコメントを表し、雛形L4は、見本画像と比較した結果検体として適当ではないと判断した場合のコメントを表している。なお、図21の例では、見本画像も表示されている。この場合に、作業画面表示制御部200は、見本画像と比較することを前提としたコメントの雛形L3、L4だけを表示させてもよい。反対に、見本画像が表示されていない場合には、作業画面表示制御部200は、見本画像と比較しないで行われるコメントの雛形L1、L2だけを表示させてもよい。
つまり、作業画面表示制御部200は、見本画像が表示されている場合には作業において見本画像を参考にして作成されるコメントの雛形を表示させ、見本画像が表示されていない場合には見本画像を参考にしないで作成されるコメントの雛形を表示させてもよい。これにより、表示される雛形が使用される可能性がより高い雛形だけに絞り込まれるので、両方の雛形を常に表示させる場合に比べて、作業者が雛形を選択しやすくなる。
この作業画面で雛形のいずれかを選択する操作を作業者が行うと、作業関連操作受付部201が、その操作を、作業関連操作として受け付け、作業画面表示制御部200が、選択されたコメントの雛形をコメントの入力欄G5に表示させる。こうして入力欄G5に表示されたコメントの雛形を作業者が編集してもよい。その場合、作業関連操作受付部201は、表示されたコメントの雛形を編集する操作をコメント作成工程の作業として受け付ける。
本変形例では、コメントの雛形が表示されることで、作業者が現在の作業工程においてどのようなことをコメントすればよいのかを知ることができる。また、複数の雛形が表示されることで、コメントのパターンが複数ある場合(例えば見本画像があるパターンとないパターン)にそれらのパターンを作業者が知ることができる。また、作業記録に含まれるコメント、すなわち作業者が過去に実際に作成したコメントを元に作成された雛形が用いられることで、例えばその作業が行われる施設の環境やその環境の時期による変化、地域の特性など、その作業に対して影響を与える固有の事情を考慮したコメントの仕方を作業者が知ることができる。
[2−5]作業の記録
作業支援システムにおいて蓄積される作業の記録は上述したものに限らない。例えば、検体の採取工程においては、検体が採取された患者、採取者、採取日時及び採取方法等が記録され、検体の保存工程においては、保存方法(冷蔵、室温及び孵卵器等)及び保存期間等が記録される。検体の塗抹・染色工程においては、検体の受け取りから塗抹・染色までに経過した期間及び染色方法等が記録され、検体の培養工程においては、培地の種類、量及び内包物の濃度等が記録される。
また、微生物の検出工程においては、微生物の検出方法(機械又は用手法)、検出した微生物の名称及び微生物の画像の倍率等が記録される。いずれの記録も、例えば、微生物検出の作業が問題なく(ミスなく)行われたか否かという点を後から確認する際に用いられる。具体的には、患者の容態から何らかの病原菌が検出される可能性が高い状況で微生物が検出されなかった場合に、作業の記録を検証して微生物が検出できなかった要因がなかったか否かを調査するというように用いられる。
また、全ての作業が記録されていない場合として、例えば検体の採取工程の記録(検体の採取方法や採取日時など)が蓄積されていない場合がある。その場合でも、それ以降の作業工程の作業記録を検証し、そこに問題がなければ検体の採取工程に問題があったことが推測されるので、検体の採取工程の作業を行った作業者にヒアリングするなどして問題を突き止めるというように作業記録を活用することができる。
また、上述した相違点情報を出力することで、良い作業結果がより高い確率で得られるように作業の品質を向上させること(作業者の教育も含む)もできるし、作業者毎の作業の違いを少なくすること(作業の標準化)もできる。このように、作業品質の向上や標準化などに貢献するのであれば、どのような作業の記録が用いられてもよい。
[2−6]複数の工程からなる作業
作業支援システムが支援する作業は、上述した検査作業に限らない。例えば感染症の対策状況を調査する環境ラウンドに関する作業であってもよいし、院内の装置及び備品を管理する作業や院内の清掃作業などであってもよい。また、医療に関する作業に限らず、一般のオフィスや工場、倉庫などで行われる作業であってもよい。いずれの場合も、複数の工程からなる作業であり、且つ、共通の作業工程を複数の作業者がそれぞれ行う場合がある作業であれば、作業支援システムはどのような作業を支援してもよい。
[2−7]各部を実現する装置
図3等に表す各部を実現する装置は、それらの図に表された装置に限らない。例えば作業支援サーバ装置10及び作業端末20が備える各部を1台の装置が実現してもよい。また、作業支援サーバ装置10が備える各部を2以上の装置がそれぞれ実現してもよいし、作業端末20が備える各部を2以上の装置がそれぞれ実現してもよい。要するに、作業支援システム全体としてこれらの機能が実現されていれば、作業支援システムが何台の装置を備えていてもよい。
[2−8]支援情報の出力先
上記の各例では、相違点情報出力部134、見本画像出力部123、見本動画出力部163及びコメント雛形出力部172という各出力部による支援情報(相違点情報、見本画像、見本動画及びコメント雛形)の出力先はいずれも作業端末であったが、これに限らない。例えば、作業者が用いている電子メールアドレスやSNS(Social Networking Service)のアカウントが出力先であってもよい。また、作業支援サーバ装置に接続されているディスプレイ等の表示手段が出力先であってもよい。ただしこの場合は、その表示手段を作業者が閲覧可能であることが条件となる。このように、作業者が閲覧可能となっているのであれば、支援情報の出力先はどこであってもよい。
[2−9]発明のカテゴリ
本発明は、作業支援サーバ装置及び作業端末のような情報処理装置の他、それらの情報処理装置を備える情報処理システムとしても捉えられる。また、本発明は、各装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、各装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。