JP6768490B2 - 冷菓用組成物、冷菓用ソース、及び冷菓、並びに冷菓用ソースの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、冷菓に固形のもち材料を用いる場合、特殊な設備や製法が必要であり、普及面で課題がある。また、冷菓用ソースタイプのもち様材料の場合、充填時の流動性やもちの食感や味について改良の余地がある。
また、特許文献1のように糖アルコールを配合すると、糖アルコール特有の化学臭が生じる場合があった。また、α化澱粉を配合すると、もち本来の食感や風味を実現できない場合があった。
しかし、果実のみで形成された果実系ソースは冷凍下では完全に凍結してしまい、冷凍下で喫食するには硬すぎるという課題があった。
通常冷菓に使用される果実系ソースは、果実(濃縮果汁含む)に砂糖や異性化糖、水あめなどの糖類を添加して凝固点を調節して製造される。このようにして製造されたソースは冷凍下で固まらないような設計になっているものの、味や風味を付与するのみで、冷凍後にもち様の食感を発揮する冷菓用ソースはなかった。
[1](A)もち粉、(B)マルトトリオース、及び水を含む冷菓用組成物であり、前記(A)もち粉と前記(B)マルトトリオースとの固形分換算の質量比((B)/(A))が1.50以上5.00以下であり、かつ、前記(B)マルトトリオースと前記冷菓用組成物に含まれる全糖質との固形分換算の質量比((B)/全糖質)が0.33以上1.00以下であり、さらに、前記冷菓用組成物のBrixが58.0%以上72.0%以下であることを特徴とする冷菓用組成物。
[2]さらに、(C)二糖類を含む、[1]に記載の冷菓用組成物。
[3]さらに、(D)単糖類を含む、[1]又は[2]に記載の冷菓用組成物。
[4]冷菓用ソースである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の冷菓用組成物。
[5]冷菓用ソースの食感を改善する冷菓用食感改善剤である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の冷菓用組成物。
[6][5]に記載の冷菓用組成物を、80質量%以上含む冷菓用ソース。
[7]野菜類、果実類、ナッツ類若しくは香辛料類の粉砕物、並びに、乳製品類、クリーム類、甘味類、嗜好飲料類、及び豆類からなる群より選択される1種以上の風味原料を含む、[6]に記載の冷菓用ソース。
[8][4]、[6]、[7]のいずれか1つに記載の冷菓用ソースを含む冷菓。
[9][5]に記載の冷菓用組成物と、風味原料とを、冷菓用組成物の含有量が80質量%以上となるように混合する工程を有する、冷菓用ソースの製造方法。
また、本発明によれば、特殊な設備や製法を使用することなく製造可能で、かつ食感や風味に優れた冷菓を提供することができる。
本発明の冷菓用組成物は、(A)もち粉、(B)マルトトリオース、及び水を含む。
以下、本発明の冷菓用組成物が含有する各成分について説明する。
もち粉とは、もち米を製粉して得られた米粉である。
もち米の産地としては、例えば、日本国内では北海道、佐賀県、新潟県、熊本県、岩手県等が挙げられ、日本国外ではタイ、アメリカ、中国等を挙げることができる。本発明で用いるもち米としては、もち米の品質の点から北海道産が好ましいが、それに限定されることはない。もち米の製粉方法としては、例えば、各種石臼を用いた石臼製粉、杵やスタンプミルを用いた胴搗き製粉、ロール製粉機を用いたロール製粉、気流粉砕機を用いた気流粉砕製粉、ハンマーミルを用いた高速回転打撃製粉等が挙げられる。中でも、石臼製粉は、各種石臼を用いた乾式製粉あるいは水挽き製粉(湿式製粉)に大別される。本発明で用いられるもち米の製粉方法としては、特に限定されないが、もち米粉の品質の点から上記のなかでも石臼製粉、特に水挽き製粉が好ましい。
もち粉を含有することにより、本発明の冷菓用組成物は冷凍時にもち弾性を有する。
本発明の冷菓用組成物は、糖質として(B)マルトトリオースを含む。
本発明の冷菓用組成物は、上記(B)マルトトリオースの他に、他の糖質成分を含有していてもよい。他の糖質成分としては、(C)二糖類や(D)単糖類を含むことが好ましい。
また、四糖類以上の糖質成分を含んでいてもよい。
(C)二糖類としては、マルトース、イソマルトース、ショ糖等が挙げられる。
(D)単糖類としては、ぶどう糖、果糖が挙げられる。
二糖類や単糖類を含むことにより、凝固点をより下げやすくすることができる。
マルトトリオースは、砂糖と比較して低甘味である。このため、冷菓用組成物中にマルトトリオースを多く配合しても、過度な甘みを奏することがなく、味を損なわずに、適度な硬さと弾力を持つもちとするために十分な凝固点に下げることができる。
また、単糖や二糖類は風味が砂糖と異なるため、もち様の弾性を付与できる量を配合すると違和感のある甘みを奏してしまう傾向にある。特に、単糖類の中でも砂糖以上の甘味を有する果糖に関しては配合し過ぎると過度の甘みを奏し、味が劣ってしまう。
(B)/全糖質は0.35以上1.00以下であることが好ましく、0.37以上0.60以下であることがより好ましい。
上記下限値以上とすることにより、冷菓用組成物を冷菓用ソースとした場合に、冷菓用ソースの風味を損なうことなく冷菓基材に充填する際の流動性を良好なものとすることができる。
(D)単糖類と、全糖質の固形分換算の質量比((D)/全糖質)は0.03以上0.50以下であることが好ましい。
本発明においては、(C)二糖類と(D)単糖類との固形分換算の合計質量と、全糖質の固形分換算の質量比([(C)+(D)]/全糖質)は0.25以上0.55以下であることが好ましい。
((B)/(A))は1.50以上3.50以下であることが好ましく、2.00以上3.00以下であることがより好ましい。
つまり、上記上限値以下とすることにより、冷菓用組成物の流動性が良好となり、冷菓用ソースを冷凍した際にもち風味と甘味質を良質なものとすることができる。
さらに、もち粉の質量が過大であると、硬すぎるもちとなってしまう。
つまり、上記下限値以上(即ち、マルトトリオースの質量が過少ではなく、もち粉の質量が過大ではない)とすることにより、冷菓用組成物を冷凍した際に適度な硬さと弾力を持つもちとするために十分な凝固点に下げることができる。
本発明の冷菓用組成物のBrixは、60.0%以上70.0%以下であることが好ましい。
Brixが上記上限値以下であることにより、冷菓基材に充填する際の流動性を良好なものとできる。
さらに、上記下限値以上とすることにより、冷菓用組成物を冷凍した際に適度な硬さと弾力を付与することができる。
より具体的には、ショ糖1gのみを溶質として含む水溶液100gをBrix屈折計で測定したときのその示度Brixが1%である。
つまり、質量分率30%のショ糖溶液(100gの溶液中に30gのショ糖(水は70g))では、Brixは30%となる。
なお、ショ糖以外の固形成分を含む溶液では、Brixは固形成分濃度の目安になるが、そのまま糖の量(質量分率)となるわけではない。
本発明においてBrixは、冷菓用組成物中に含まれる糊化した澱粉質及び糖質の総含有量の目安となる。このBrixは市販の糖度計(例えば、デジタル屈折計 商品名「RX−5000α」:アタゴ社製)を用いて測定することができる。
冷菓基材への充填時の温度として想定される20℃以上50℃以下の条件下で、粘度が100Pa・s以下であると、冷菓を製造する際に冷菓基材の溶けを最小限に抑え、充填性を良好なものとできる。さらには、既存のソース材料充填設備を利用することができる。
また、本発明において冷菓用組成物の粘度は、もち粉と糖質原料を混合した生地の加熱温度によって、調整することができる。
硬さの測定方法は、円筒容器に冷菓用組成物を入れ、急速冷凍機にて冷凍し、冷凍庫で保管した試料を、クリープメーターを用いて測定する。
本明細書において「凝集性」とは、食品の内部的結合力を表す指標であり、凝集性の値が大きいほど、内部結合力が大きいことを示し、もちのような弾力を発揮することを意味する。
凝集性の測定方法としては、円筒容器に冷菓用組成物を入れ、急速冷凍機にて冷凍し、冷凍庫で保管後、クリープメーターを用いて測定する。
本発明において、上記特定の範囲でBrixを大きくすると、冷菓用組成物の冷凍後の弾力を大きくするように調整ができ、上記特定の範囲でBrixを小さくすると、冷菓用組成物の冷凍後の凝集性を小さくするように調整することができる。
また、上記特定の範囲でもち粉の配合量を多くすると、冷菓用組成物の冷凍後の凝集性を大きくするように調整ができ、上記特定の範囲でもち粉の配合量を少なくすると、冷菓用組成物の冷凍後の凝集性を小さくするように調整することができる。
本発明の冷菓用組成物は、(A)もち粉と水を混合し、加熱して(A)もち粉を糊化した後、糖質原料を加えて所定のBrix濃度となるまで濃縮することにより製造できる。
マルトトリオースを糖質成分とする液状の糖質原料としては、例えば、群栄化学工業株式会社製ピュアトース(登録商標)Lが好ましい。ピュアトースLは、マルトトリオースが固形分全量に対して50質量%以上65質量%以下であり、単糖類成分としてグルコース、二糖類成分としてマルトース、四糖類以上の糖質を含む糖質原料である。
これらの他にも、マルトトリオースを糖質成分とする液状の糖質原料としては、ハイマルトース水飴、マルトース水飴、低DE水あめ等を用いることができる。
これらの糖質原料を、冷菓用組成物における糖質成分が上記特定の組成となるように配合する。
一例として、まずもち粉と水とを混合し、ダマがなくなるまで常温で混合した後、加熱しながら生地が糊化するまで混合する。この時の加熱温度と加熱時間は適宜調整すればよい。
そして、上記特定のBrixとなるまで加熱濃縮する。加熱濃縮の条件は、80℃〜85℃の温度で、上記特定のBrixとなるまで加熱すればよい。
本発明における冷菓用ソースとは、容器、冷菓基材上、又は冷菓基材中に充填されて冷凍されるものである。本発明の冷菓用ソースは、常温で流動性を有するため、製造時に冷菓基材上等に容易に充填できる。また、冷凍後の冷菓用ソースは、もち様の食感を有する。
本発明の冷菓用組成物は、冷菓用食感改善剤として用いることができる。本明細書において、「冷菓用食感改善剤」とは、風味付けのための風味材料等と配合されて、冷菓用ソースの食感を改善するものである。
本発明に用いられる風味原料は、冷菓用ソースに風味を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、野菜類、果実類、ナッツ類若しくは香辛料類の粉砕物、並びに、乳製品類、クリーム類、甘味類、嗜好飲料類、及び豆類からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
粉砕物は、乾燥物(以下、「パウダー」と記載する場合がある)、湿潤物(以下、「ペースト」と記載する場合がある)のいずれでもよい。
パウダー状の風味原料は、例えば市販のココアパウダーや抹茶パウダー等が挙げられる。
ペースト状の風味原料を用いる場合、その水分量は70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が特に好ましい。水分量が上記上限値以下であることにより、風味付冷菓子用ソースの凝固点を下げることができ、冷凍後に硬すぎず、適度な弾力性を付与できる。
果実類としては、いちご、ブルーベリー、マンゴー、ラズベリー、りんご、オレンジ、キウイフルーツ、パイナップル、バナナ、グレープフルーツ、もも、みかん、あんず、ゆず、ココナッツ、バニラ、チェリー等が挙げられる。
ナッツ類としては、ごま、くり、アーモンド、くるみ、ヘーゼルナッツ等が挙げられる。
香辛料類としては、シナモン、バジル、パセリ、ミント等が挙げられる。
乳製品類としては、チーズ、ヨーグルト、全粉乳、脱脂粉乳、加糖練乳、無糖練乳、牛乳等の乳類が挙げられる。
クリーム類としては、ホイップクリーム、キャラメルクリーム、カスタードクリーム、フレッシュクリーム、ピーナッツクリーム、チョコクリーム、バタークリーム、サワークリーム等が挙げられる。
甘味類としては、黒砂糖、和三盆糖、三温糖、はちみつ、メープルシロップ等が挙げられる。本発明において、風味付冷菓用ソースが風味原料として甘味類を含有する場合、該甘味類には、冷菓用組成物が必須成分として含有する前記(B)マルトトリオースは含まれないものとする。
豆類としては、きな粉、こしあん、つぶあん、豆乳等が挙げられる。
嗜好飲料類としては、ココア、コーヒー、抹茶、紅茶等が挙げられる。
また、風味原料として、色素類を混合してもよい。色素類としては、カラメル、ウコン、アナトー、カロテン等が挙げられる。
本発明の風味付冷菓用ソースの製造方法は、前記本発明の冷菓用組成物と、風味原料とを、冷菓用組成物の含有量が80質量%以上となるように混合する工程を有する。
冷菓用組成物と風味原料との混合方法は、特に限定されない。
一例として、ペースト状の風味原料を調製し、該風味原料に冷菓用組成物の含有量が80質量%以上となるように混合し、撹拌する方法が挙げられる。
本発明の冷菓は、上記冷菓用ソースを含む。冷菓用ソースは、容器内に直接充填してもよいし、冷菓基材に保持されていてもよい。
冷菓基材としては、氷菓基材、アイスクリーム基材、その他の冷菓基材を採用できる。また、氷菓基材とアイスクリーム基材とを混合したものを用いてもよい。
氷菓基材は、細片状の氷であり、例えばかき氷が挙げられる。該氷菓基材は、公知のシロップ等によって、味付けされていてもよい。
アイスクリーム基材とは、日本農林規格、食品衛生法に基づく乳及び乳製品の成分規格等に関する省令等に規定されるアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等のアイスクリーム類が挙げられる。
その他の冷菓基材としては、冷凍シュークリームの皮、冷凍ケーキ、冷凍パン等が挙げられる。
本発明の冷菓は、例えばもちとアイスクリームとを同時に喫食できる嗜好性に優れた冷菓である。
本発明によれば、もち粉とマルトトリオースとの固形分比、マルトトリオースと全糖質との固形分比及びBrixを上記特定の範囲とした冷菓用組成物を用いたことにより、製造時には流動性があるため製造容易であり、冷凍時にはもち状となり、食感と風味が良質な冷菓を提供することができる。
実施例で行った各試験方法及び測定方法は以下の通りである。
下記表1に示す各項目に関して、各試料を用いて4名のパネラーにより、硬さ、弾力、もち風味、甘味質について官能試験を実施した。さらに各パネラーが評価した結果を集計し、○、△、×のうち最も多かったものをその評価とした。同点の場合は、協議して評価を決めた。なお、官能評価に用いた試料は、冷菓用組成物を急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認した後、冷凍庫(−18℃)に保管していたものであり、評価時に冷凍庫から取り出し、即時に評価を行った。
原料として使用した糖質については、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類以上の糖類の組成比をHPLCにて測定した。糖組成の測定方法は以下の通りである。糖質原料を純水でBrix2.5〜5.0%に希釈し、0.45μmの細孔サイズのメンブレンフィルター(商品名「MILLEX(登録商標)−HP 0.45μm」:メルク社製)に通液させ、糖組成分析用サンプルとした。糖組成は、商品名「Alliance(登録商標)HPLCシステム」(日本ウォーターズ社製)を用いて分析した。
・測定条件
カラム:ULTRON PS80−N(島津ジーエルシー社製)
溶媒:純水
温度:60℃
流速:0.6ml/min
検出:RI(示差屈折率)
Brixは、冷菓用組成物(冷凍前)又は風味付冷菓用ソース(冷凍前)をデジタル屈折計 商品名「RX−5000α」:アタゴ社製)を用いて測定した。
実施例で得られた冷菓用組成物(冷凍前)又は風味付冷菓用ソース(冷凍前)をトールビーカーに200mL入れ、B型粘度計(東京計器社製)を使用して各温度(20℃、30℃、40℃、50℃)の粘度を測定した。
実施例、比較例で得られた冷凍前の冷菓用組成物又は冷菓用ソースをφ3.7×3.3cmのプラスチック製(材質:ポリスチレン)の円筒容器に30g入れ、急速冷凍機(HOSHIZAKI社製)にて−30℃に冷凍した。測定を行うまで−18℃の冷凍庫(HOSHIZAKI社製)にて保管し、測定試料とした。この測定試料について、クリープメーター(株式会社山電社製)によりテクスチャー解析を行い、求められる最大荷重[N]を試料の硬さとした。
測定条件は以下の通りである。
上記測定試料を冷凍庫から取り出し、即時測定に供した。円筒容器に入ったままの上記測定試料を、φ16mmの円筒プランジャーにて、圧縮速度1mm/secで押し当て、圧縮率20%となるまで圧縮した。その圧縮過程での最大荷重[N]を試料の硬さとした。
実施例、比較例で得られた冷凍前の冷菓用組成物又は冷菓用ソースをφ3.7×3.3cmのプラスチック製(材質:ポリスチレン)の円筒容器に30g入れ、急速冷凍機(HOSHIZAKI社製)にて−30℃に冷凍した。測定を行うまで−18℃の冷凍庫(HOSHIZAKI社製)にて保管し、測定試料とした。この測定試料についてクリープメーター(株式会社山電社製)によりテクスチャー解析を行い、この測定で求められる凝集性[−]を弾力を示す指標とした。
なお、テクスチャー特性の基本パラメータである凝集性[−]は、食品の内部的結合力を表す指標である。凝集性[−]は値が大きいほど、内部結合力が大きいことを示し、もちのような弾力のある食品ではその数値は高くなる傾向がある。
上記測定試料を冷凍庫から取り出し、即時測定に供した。
測定条件は下記の通りである。
円筒容器に入ったままの上記測定試料を、φ16mmの円筒プランジャーにて、圧縮速度1mm/secで押し当て、圧縮率20%となるまで圧縮し、1回目の圧縮曲線を取得した。その後、いったんプランジャーを測定試料から5mm離してから、再度、1回目と同じ条件で圧縮率20%まで測定試料を圧縮し、2回目の圧縮曲線を得た。
凝集性は2回目の圧縮曲線下の面積の1回目の圧縮曲線下の面積に対する比であり、0〜1までの単位のない数値として求めた。
風味付冷菓用ソースに用いた風味原料の水分量は、商品名「MOC63u」(島津製作所製)を用いて測定した。
・測定条件
測定サンプル量:1.0±0.5g
測定モード:AUTO
乾燥温度:140℃
水分率変化量:0.05%
実施例で用いた各糖質原料の糖組成を表2に、固形分量を表3に記載する。表2中、各数値は、全糖質(固形分換算後の全量)を100質量部としたときの各糖質の固形分換算の質量部である。表3の数値は、当該糖質原料を100質量部としたときの水分と糖質の固形分換算の質量部である。
≪対照区、実施例1、比較例1〜7≫
表4に示す各仕込量(質量部)でもち粉及び水を計量し、混練機を用いて常温でダマがなくなるまで混合した。
その後、加熱しながら混合し生地を糊化させ、次いで、加熱しながら各糖質原料を3回に分けて混ぜ合わせながら生地に投入した。
その後、表4に示すBrix(%)になるまで、80℃〜85℃で加熱濃縮し、冷菓用組成物を製造した。
該冷菓用組成物を、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、官能評価及び物性評価を行った。
尚、成分量は、糖質原料の仕込量と、各糖質成分の組成を用いて算出した。
対照区、実施例1及び比較例1〜7の各冷菓用組成物について、上記の方法により硬さ、弾力、もち風味及び甘味質を評価した。その結果を表4に記載する。
(B)/(A)の固形分比が3.5、かつ(B)/全糖質の固形分比が0.58であった実施例1は、硬さ、弾力、もち風味及び甘味質のいずれも良好であった。
これに対し、(B)/(A)の固形分比と(B)/全糖質の固形分比が本発明の範囲外である比較例1〜7は、硬さ、弾力、もち風味及び甘味質のいずれかが不良であった。
もち粉、各糖質原料及び水の配合量を表5に示す仕込み量としたこと以外は、実施例1と同様の方法で冷菓用組成物を製造した。
該冷菓用組成物を、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、官能評価及び物性評価を行った。
もち粉、各糖質原料及び水の配合量を表6に示す仕込み量としたこと以外は、実施例1と同様の方法で冷菓用組成物を製造した。
該冷菓用組成物を、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、官能評価及び物性評価を行った。
もち粉、各種糖質原料及び水の配合量を表7に示す仕込み量としたこと以外は、実施例1と同様の方法で冷菓用組成物を製造した。
該冷菓用組成物を、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、官能評価及び物性評価を行った。
もち粉、各種糖質原料及び水の配合量を表8に示す仕込み量としたこと以外は、実施例1と同様の方法で冷菓用組成物を製造した。
該冷菓用組成物を、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、官能評価及び物性評価を行った。
・いちごペーストの製造
冷凍いちご(いちご果実)を室温で解凍し、解凍後のいちごをハンドブレンダーでペースト状になるまで粉砕した。得られたペースト状のいちごを「いちご原液」とし、いちご原液のBrixを測定した。いちご原液をカスタードクッカーに移し、いちご原液のBrixを基準に、2倍濃縮いちごペースト、3倍濃縮いちごペースト、4倍濃縮いちごペースト、5倍濃縮いちごペーストを製造した。
カスタードクッカーの機械仕様と製造条件は下記の通りである。
機器:カスタードクッカー
メーカー:中井機械工業株式会社
回転レベル:20%
火力レベル:50%
設定温度:95℃
上記「いちごペーストの製造」において、いちごをブルーベリーに変更した以外は上記と同様の方法により、2.5倍濃縮ブルーベリーペーストを製造した。
氷冷を当てたボウルに生クリームを入れ、品温を10℃以下にした。その後、85質量部の生クリームに対し、6質量部のグラニュー糖、9質量部のピュアトースP(SS)(群栄化学工業株式会社製)を加えた。ボウルを卓上ミキサーにセットし、糖質が完全に溶解するまで、約100rpmで撹拌した。その後、撹拌速度を約200rpmまで上げ、ツノがたつまで撹拌した。
≪いちご風味冷菓用ソースの製造1≫
実施例13で得た冷菓用組成物と、表9に示す各いちごペーストとを表9に示す各配合で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例17〜21のいちご風味の冷菓用ソースを製造した。
下記表9中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
該冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認した後、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
・いちごペースト(原液) :93%
・いちごペースト(2倍濃縮):85%
・いちごペースト(3倍濃縮):78%
・いちごペースト(4倍濃縮):71%
・いちごペースト(5倍濃縮):65%
実施例17〜21の風味付冷菓用ソースは、硬さ[N]が14.8N以上18.5N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.47以上0.53以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、いちごペースト(5倍濃縮)とを下記表10に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例21〜22、比較例20〜22のいちご風味の冷菓用ソースを製造した。該冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
なお、表9中の実施例21と、表10中の実施例21は同一のデータである。
下記表10に示すいちごペースト(5倍濃縮)の水分量は65%である。
下記表10中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
いちごペーストに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例20〜22は、流動性はあるものの、硬さ、凝集性ともに好ましいものではなかった。
実施例21〜22の風味付冷菓用ソースは、硬さ[N]が14.8N以上23.3N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.46以上0.53以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、ブルーベリーペースト(2.5倍濃縮、水分量:63%)とを下記表11に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例23〜24のブルーベリー風味の冷菓用ソースを製造した。該冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
下記表11中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
ブルーベリーペーストに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例23〜25は、流動性はあるものの、硬さ、弾力ともに好ましいものではなかった。
実施例23〜24の冷菓用ソースは、硬さ[N]が7.8N以上11.3N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.47以上0.57以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、上記で得られたホイップクリーム(水分量:42%)とを下記表12に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例25〜26のホイップクリーム風味の冷菓用ソースを製造した。該風味付冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
下記表12中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
ホイップクリームに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例26〜28は、流動性はあるものの、硬さ、弾力ともに好ましいものではなかった。
実施例25〜26の風味付冷菓用ソースは、硬さ[N]が6.3N以上8.4N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.48以上0.56以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、市販のクリームチーズ(水分量:54%)とを下記表13に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例27〜28のクリームチーズ風味の冷菓用ソースを製造した。該風味付冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
下記表13中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
クリームチーズに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例29〜31は、流動性はあるものの、硬さ、弾力ともに好ましいものではなかった。
実施例27〜28の風味付冷菓用ソースは、硬さ[N]が15.0N以上18.4N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.43以上0.46以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、市販のココアパウダー(水分量:6%)とを下記表14に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例29〜30のココア風味の冷菓用ソースを製造した。該冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
下記表14中、冷菓用組成物を配合せず、10質量部のココアパウダーに、90質量部の純水を加えたものを「対照区」として記載する。
ココアパウダーに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例32〜34は、流動性もなく、硬さ、弾力ともに好ましいものではなかった。
実施例29〜30の冷菓用ソースは、硬さ[N]が17.1N以上22.1N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.58以上0.69以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、市販の黒糖シロップ(水分量:30%)とを下記表15に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例31〜32の黒糖風味の冷菓用ソースを製造した。該冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
下記表15中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
黒糖シロップに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例35〜37は、流動性はあるものの、硬さ、弾力ともに好ましいものではなかった。
実施例31〜32の黒糖風味冷菓用ソースは、硬さ[N]が5.4N以上8.7N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.55以上0.57以下であり、適度な弾力を有していた。
実施例13で得た冷菓用組成物と、市販のキャラメルクリーム(水分量:19%)とを下記表16に示す配合比で混合し、卓上ミキサーで混練して均一化させ、実施例33〜34のキャラメル風味の冷菓用ソースを製造した。該キャラメル風味の冷菓用ソースを、急速冷凍機にて冷凍し、−30℃になったことを確認したのち、冷凍庫(−18℃)で一晩保管後、物性を評価した。
下記表16中、冷菓用組成物を配合しないものを「対照区」として記載する。
キャラメルクリームに対して冷菓用組成物の配合量が70質量%以下の比較例38〜40は、流動性はあるものの、硬さ、弾力ともに好ましいものではなかった。
実施例33〜34の冷菓用ソースは、硬さ[N]が5.8N以上11.3N以下と適度な硬さであり、凝集性[−]も0.53以上0.54以下であり、適度な弾力を有していた。
Claims (9)
- (A)もち粉、(B)マルトトリオース、及び水を含む冷菓用組成物であり、
前記(A)もち粉と前記(B)マルトトリオースとの固形分換算の質量比((B)/(A))が1.50以上5.00以下であり、かつ、
前記(B)マルトトリオースと前記冷菓用組成物に含まれる全糖質との固形分換算の質量比((B)/全糖質)が0.33以上1.00以下であり、
さらに、前記冷菓用組成物のBrixが58.0%以上72.0%以下であることを特徴とする冷菓用組成物。 - さらに、(C)二糖類を含む、請求項1に記載の冷菓用組成物。
- さらに、(D)単糖類を含む、請求項1又は2に記載の冷菓用組成物。
- 冷菓用ソースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷菓用組成物。
- 冷菓用ソースの食感を改善する冷菓用食感改善剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷菓用組成物。
- 請求項5に記載の冷菓用組成物を、80質量%以上含む冷菓用ソース。
- 野菜類、果実類、ナッツ類若しくは香辛料類の粉砕物、並びに、乳製品類、クリーム類、甘味類、嗜好飲料類、及び豆類からなる群より選択される1種以上の風味原料を含む、請求項6に記載の冷菓用ソース。
- 請求項4、6、7のいずれか1項に記載の冷菓用ソースを含む冷菓。
- 請求項5に記載の冷菓用組成物と、風味原料とを、冷菓用組成物の含有量が80質量%以上となるように混合する工程を有する、冷菓用ソースの製造方法。
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