JP6768465B2 - メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
これに従い、その材料となるメタ型全芳香族ポリアミド繊維に対する市場要求として、必要な機械強度を備えた状態で、より細い単糸繊度が求められているようになってきている。
また別の本発明は、上記の繊維を製造する方法であって、凝固浴におけるアミド系溶媒と水との質量組成比を50/50〜60/40、凝固浴の温度を5〜20℃、紡糸ドラフトを0.3〜0.9として凝固糸を得て、得られた凝固糸を延伸倍率4.0〜10.0倍で可塑延伸するメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法である。
このため、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性あるいは難燃性というメタ型全芳香族ポリアミド繊維が本来もつ性質に加えて、極細繊度であるため繊維製品の機能を高めることができ、高強度であるため繊維の劣化が進行しにくく、繊維製品の耐久性を向上することができる。また、繊維中に残存する溶媒量が極微量であり、熱寸法安定性に優れているため、高温下での加工および使用における繊維または繊維製品の着色または変色(特に黄変)、機能低下を抑制することができる。
したがって、本発明の繊維は、従来のメタ型全芳香族ポリアミド繊維では使用できなかった分野においても使用可能となり、その工業的価値は極めて大きい。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維>
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、以下の特定の物性を備える。本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性、構成、および、製造方法について以下に説明する。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、単糸繊度が極めて細いながらも、破断強度が一定の範囲にあり、かつ、繊維中に残存する溶媒の量が非常に少ない繊維である。このため、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、劣化が進行しにくいことから製品の耐久性を向上できるとともに、高温下での加工および使用にあっても、繊維または製品の着色または変色、機能低下を抑制することができる。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、通常、ポリマーをアミド系溶媒に溶解した紡糸原液から製造されるため、必然的に該繊維に溶媒が残存する。しかしながら、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、繊維中に残存する溶媒の量が、繊維質量に対して0.01〜0.1質量%である。0.01〜0.1質量%であることが必須であり、0.01〜0.08質量%であることがより好ましい。特に好ましくは、0.01〜0.06質量%である。
繊維質量に対して0.1質量%を超えて溶媒が繊維中に残存している場合には、200℃を超えるような高温雰囲気下での加工や使用の際に、黄変しやすくなり、また、著しく強度が低下したりするため好ましくない。
本発明において、メタ型全芳香族ポリアミド繊維中の残存溶媒量を0.1質量%以下にするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有さず緻密な凝固形態をとるような特定の凝固浴を用いて湿式紡糸する。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、破断強度が3.0〜4.5cN/dtexの範囲であることが必須であり、3.5〜4.5cN/dtexの範囲であることが好ましい。さらに3.7〜4.5cN/dtexの範囲であることはより好ましく、3.8〜4.5cN/dtexの範囲であることが最も好ましい。
破断強度が3.0cN/dtex未満である場合には、得られる製品の機械強度が低いために、製品用との使用に耐え難くなり好ましくない。一方、4.5cN/dtexを超える場合には、伸度が大幅に低下し、製品の取り扱いが困難になる等の問題が発生する。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維において、「破断強度」を上記範囲内にするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有さず緻密な凝固形態をとるような特定の凝固浴を用いて湿式紡糸するとともに、特定倍率の範囲内で可塑延伸を行う。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、単繊維の繊度(単糸繊度)が0.6〜1.0dtexの極細繊度の繊維である。単繊維の繊度が0.6dtex未満であると、例えばフィルターとして使用した場合に、水蒸気や酸性ガスによる繊維の劣化が進行しやすくなり耐久性が低下する。1.0dtexを超える場合には製品の厚みが大きくなり、使用できる用途が限定される。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度(単糸繊度)は、0.6〜0.9dtexの範囲であることが耐久性と嵩高性の点でさらに好ましく、0.7〜0.9dtexの範囲であることが最も好ましい。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、円形、楕円形、その他任意の形状であってよく、多数の紡糸孔を有する紡糸口金を用いた湿式紡糸により得られる断面形状であればよい。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、破断伸度が15%以上であることが好ましく、18%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。破断伸度が15%未満である場合には、後加工工程における工程通過性が低下するため好ましくない。
本発明において、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の「破断伸度」は、後記する製造方法における凝固工程において、スキンコアを有さず緻密な凝固形態をとるような特定の凝固浴を用いて湿式紡糸することにより制御することができる。15%以上とするためには、凝固浴におけるアミド系溶媒と水との質量組成比を50/50〜60/40とすればよい。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、乾熱下での最大収縮率が1.0〜10.0%である。そのため、最大収縮率が1〜10%、であることが必須であり、3〜9%、であることがより好ましい。特に好ましくは3〜8%である。
例えば極細繊維をフィルターとして使用した場合に、極細繊維であるためにフィルターの目開きは非常に細かい。最大収縮率が10%を超える場合は目詰まりや部分的に目開きが大きくなり効果を著しく損なう。一方、最大収縮率が1%未満はポリマーの性質から困難である。
(最大収縮率の測定方法)
熱機械分析装置(ブルカー・AXS社製 TMA4000SA)を用いて、以下の条件で測定し、最大収縮率を測定した。
サンプル量:2.4mg/50mm
測定長:10mm
測定温度:25〜500℃
昇温速度:100℃/分
繊維試料に与える負荷荷重:1.2cN
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を構成するメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。
メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モルである。
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、2,6−ジアミノクロロベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミドを構成するメタ型芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロロイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドそのもの、または、イソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
なお、本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミドの分子量は、繊維を形成し得る程度であれば特に限定されるものではない。一般に、十分な物性の繊維を得るには、濃硫酸中、ポリマー濃度100mg/100mL硫酸で30℃において測定した固有粘度(I.V.)が、1.0〜3.0の範囲のポリマーが適当であり、1.2〜2.0の範囲のポリマーが特に好ましい。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、例えば上記の製造方法によって得られた芳香族ポリアミドを用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、乾熱処理工程、熱延伸工程を経て製造される。
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取り扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミド等のメタ型全芳香族ポリアミドで、溶媒がNMP等のアミド系溶媒である場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させて凝固糸を得る。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1,000〜30,000個、紡糸孔径が0.04〜0.07mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
紡糸ドラフトが0.3未満の場合には、凝固糸の張力が低すぎるため隣接する単糸同士が接触してしまい、工程調子が不調となり、凝固糸を引き上げることが困難となる。一方、紡糸ドラフトが0.9を超える場合には、凝固液による液抵抗が大きくなるため均一な繊維構造を得ることができず、得られる繊維の結晶化度を高めることができず、破断強伸度、熱寸法安定性を得ることできない。 また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液の温度は、20〜90℃の範囲が適当である。
かかる紡糸・凝固工程により、凝固浴中で多孔質のメタ型全芳香族ポリアミドの凝固糸からなる繊維(トウ)が形成され、その後、凝固浴から空気中へ引き出される。
可塑延伸浴延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。
可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。例えば、アミド系溶媒の水溶液からなり、塩類が実質的に含まれない水溶液を用いることができ、工業的には、上記凝固浴に用いたものと同じ種類の溶媒を用いることが特に好ましい。すなわち、重合体溶液、凝固浴および可塑延伸浴に用いるアミド系溶媒は同種であることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の単独溶媒、または、NMPを含む2種以上からなる混合溶媒を用いることが特に好ましい。同種のアミド系溶媒を用いることによって、回収工程を統合・簡略化することができ、経済的に有益となる。
可塑延伸浴の温度は、20〜90℃の範囲が好ましい。温度が20〜90℃の範囲にある場合には、工程調子が良いため好ましい。上記温度は、さらに好ましくは20〜60℃である。
洗浄工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への侵入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
繊維中に溶媒が残っている場合には、高温下での繊維の着色または変色(特に黄変)を抑制することができず、また、物性低下や収縮、限界酸素指数(LOI)の低下等を生じさせる。このため、本発明の繊維に含まれる溶媒量は0.01〜0.1質量%とする必要があり、0.01〜0.08質量%とすることがより好ましい。特に好ましくは0.01〜0.06質量%の範囲である。
本発明の繊維を得るためには、上記洗浄工程を経た繊維に対して、好ましくは、乾熱処理工程を実施する。乾熱処理工程においては、上記洗浄工程により洗浄が実施された繊維を、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは100〜200℃の範囲で、乾熱処理する。ここで、乾熱処理は、特に限定されないが定張下が好ましい。
洗浄工程の後、乾燥熱処理工程を引き続いて施すと、ポリマーの流動性を適度に向上させ、配向が進む一方で結晶化を抑制し、繊維の緻密化を促進することができる。なお、上記の乾熱処理の温度は、熱板、加熱ローラー等の繊維加熱手段の設定温度をいう。
本発明においては、上記乾熱処理工程を経た繊維に対して、熱延伸工程を施す。熱延伸工程においては、310〜335℃で熱処理を加えながら、1.2〜1.8倍の延伸を実施することが好ましい。熱延伸工程における熱処理温度が335℃を超える高温の場合には、糸が着色し、また、激しく劣化して、破断強度が低下するばかりか、場合によっては破断することがある。一方、310℃を下回る温度では、熱延伸を1.2倍以上できないため、繊維の十分な結晶化を達成することができず、所望の繊維物性、すなわち破断強度等の力学特性および熱的特性を発現することが困難となる。
熱延伸工程における処理温度と得られる繊維の密度とには、密接な関係がある。特に良好な繊維密度の製品を得るためには、熱延伸工程における熱処理温度を、310〜335℃の範囲とすることが好ましい。また、熱延伸工程おける熱処理温度を310〜335℃の範囲とすることにより、最大収縮率1%〜10%となる繊維を得ることができる。
また、熱延伸工程における延伸倍率は、得られる繊維の強度および弾性率の発現に密接な関係がある。本発明の繊維を得るためには、通常、1.2〜1.8倍、好ましくは、1.2〜1.5倍の範囲に設定することが好ましく、当該範囲とすることで、良好な熱延伸性を保持しつつ、必要となる強度および弾性率を発現させることができる。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その耐熱性、耐炎性、嵩高性、力学特性を活かし、各種の用途に応用することができる。例えば、必要に応じて捲縮加工などが施され、適当な繊維長に切断され、紡績その他、用途に合わせた次工程に提供される。さらには、本発明の繊維単独あるいは他の繊維と組み合わせて、不織布としてフィルター等の各種工業材料として、あるいは、合成紙、複合材料の原料としても有効に使用することができる。
さらに、紡糸に用いる重合体溶液(紡糸原液)における重合体濃度(PN濃度)は、「全質量部」に対する「重合体の質量%」、すなわち[重合体/(重合体+溶媒+その他)]×100(%)である。
[固有粘度(IV)]
重合体溶液から芳香族ポリアミドポリマーを単離して乾燥した後、濃硫酸中、ポリマー濃度100mg/100mL硫酸で30℃において測定した。
[単糸繊度]
JIS L 1015に準じ、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛け繊度にて表記した。
[破断強度、破断伸度、初期弾性率]
引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS L 1015に基づき、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔:20mm
初荷重:0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度:20mm/分
[繊維中に残存する溶媒量(残存溶媒量)N(%)]
原繊維を約8.0g採取し、105℃で120分間乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M1)を秤量する。続いて、この繊維について、メタノール中で1.5時間、ソックスレー抽出器を用いて還流抽出を行い、繊維中に含まれるアミド系溶媒の抽出を行う。抽出を終えた繊維を取り出して、150℃で60分間真空乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M2)を秤量する。繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、得られるM1およびM2を用いて下記式により算出する。
N(%)=[(M1−M2)/M1]×100
[最大収縮率]
熱機械分析装置(ブルカー・AXS社製 TMA4000SA)を用いて、以下の条件で測定し、最大収縮率を測定した。
(測定条件)
サンプル量:2.4mg/50mm
測定長:10mm
測定温度:25℃〜500℃
昇温速度:100℃/分
繊維試料に与える負荷荷重:1.2cN
[色相値(L*−b*)]
得られた繊維、および、300℃の乾燥機中で10分間の熱処理を実施した後の繊維に対して、色相値の測定を行った。具体的には、カラー測色装置(マスベク社製、商品名:マクベスカラーアイ モデルCE−3100)を用いて、以下の測定条件で測定を実施し、色相値(L*−b*)の変化を求めた。色相値(L*−b*)は、数値が小さいほど黄変が著しいことを示す。なお、L*、b*は、JIS Z 8782(10度視野XYZ系による色の表示方法)に規定する三刺激値により求めることができる。
(測定条件)
視野:10度
光源:D65
波長:360〜740nm
[紡糸原液(紡糸用ドープ)調整工程]
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解させ、0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に撹拌しながら添加し、重合反応を行った。粘度変化が止まった後、40分撹拌を継続し、重合反応を完了させた。
次に、平均粒径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間撹拌して、透明なポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ、1.25であった。また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は、20質量%であった。
[紡糸工程]
得られたポリマー溶液を紡糸原液として、孔径0.05mm、孔数1,500の紡糸口金から、浴温度18℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、DMAc/水(量比)=55/45であり、紡糸ドラフトは0.6、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
[可塑延伸工程]
引き続き、温度40℃のDMAc/水=60/40の組成の可塑延伸浴中にて6.0倍の延伸倍率で延伸を行った。
[洗浄工程]
可塑延伸の後、20℃のDMAc/水=30/70の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)、60℃の温水浴(浸漬長5.4m)、さらに、80℃の温水浴(浸漬長7.2m)に順次通して十分に洗浄を行った。
[乾燥熱処理工程]
洗浄後の繊維について、引き続き、表面温度150℃の熱ローラーにて定張下で乾燥熱処理を行った。
[熱延伸工程]
引き続き、表面温度330℃の熱ローラーにて、熱処理を加えながら1.2倍に延伸する熱処理工程を実施し、最終的にポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[測定・評価]
得られた繊維(トウ)に対し、各種の測定評価を実施した。結果を表1に示す。
凝固液の組成をDMAc/水=60/40、紡糸ドラフト0.7とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
凝固液の組成をDMAc/水=40/60とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
紡糸ドラフトを1.0とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
単糸繊度を0.4dtexとなるようポリマー溶液の吐出量を変更し、孔径0.04mm、紡糸ドラフト0.8とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した固有粘度(IV)=1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末17.6重量部を−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)72.4重量部中に懸濁させ、スラリー状にした後、60℃まで上昇して溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。
このポリマー溶液を凝固浴の温度85℃、凝固液の組成をDMAc/水=10/90とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
単糸繊度を1.7dtexとなるようポリマー溶液の吐出量を変更し、孔径0.06mm、紡糸ドラフト0.9とした以外は、比較例4と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を製造した。得られた繊維についての各種測定結果を、表1に示す。
Claims (2)
- 残存溶媒量が繊維全体の質量に対して0.01〜0.1質量%であり、繊維の最大収縮率が1.0〜10.0%であり、破断強度が3.0〜4.5cN/dtexであり、単糸繊度が0.6〜1.0dtexである極細メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
- 請求項1記載のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を製造する方法であって、凝固浴におけるアミド系溶媒と水との質量組成比を50/50〜60/40、凝固浴の温度を5〜20℃、紡糸ドラフトを0.3〜0.9として凝固糸を得て、得られた凝固糸を延伸倍率4.0〜10.0倍で可塑延伸する極細メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
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