近年、デジタルカメラ等で得られた画像データから、簡単に印画物を得るための印刷装置が普及している。
従来、これらの印刷装置のひとつであり、簡潔な構造で高画質な画像記録が得られる方法として、サーマルヘッドを用いる熱転写記録方式が用いられている。サーマルヘッドを用いた熱転写記録方式では、長尺状に構成されたフィルム状のリボンに予め染料が塗布されたインクリボンと印画媒体である記録用紙を狭持し、サーマルヘッドに接しながらインクリボン及び記録用紙を搬送し印刷が行われる構成が一般的である。サーマルヘッドには、ライン状に複数の発熱素子(抵抗素子)が配列されており、これらの発熱素子に選択的に通電することにより、印画媒体である記録用紙に、インクリボンに塗布され保持されている染料を転写し、記録用紙に印画が行われる。フルカラー印刷の場合、インクリボンに順に塗布されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の3色を順に重ねて0.4〜2.0ips(毎秒当たりのインチ)程度の一定の速度で印刷することによりフルカラーの印画物を生成する構成になっている。この様な熱転写式印刷装置では、印画後の画像の保護を目的に予めインクリボンに準備されたオーバーコート層を、印画後の画像上に引き続いて転写することにより、印画媒体上に形成された画像上に、オーバーコート層を形成することも行われている。
インクリボンは一般的にポリエステルなどの基材フィルム上に上記イエロー、マゼンダ、シアンの染料層及びアクリル系樹脂を主成分としたオーバーコート層が形成された構成となっている。染料層は色材である染料とバインダーと呼ばれる合成樹脂の混合材を適当な溶剤により融解させたインクを基材フィルム上に塗布し乾燥することにより形成されている。
インクリボンは、一端をインクリボンの幅よりも長い円筒状の軸へ固定された後に巻き回され、他端を他の円筒状の軸に固定され、両軸を回転可能且つ一定の距離に位置規制する外装ケースに内包されたインクカセットの形態で供給されることが多い。これは、ユーザが消耗品であるインクリボンを交換する際に作業を容易にする為であり、薄いフィルム状のインクリボンにダメージが与えられることを避ける為である。
前述した様な、デジタルカメラからの画像を簡単に印刷する為の印刷装置では、可搬性や扱いやすさの観点から小型化の要求が大きい。印刷装置全体を小型化する為、インクリボンの搬送経路を屈曲させスペース効率の高い経路とすることが一般的である。インクカセットはその筐体内にインクリボンの搬送路を形成し、前述した屈曲部を備えることもある。また、インクカセット筐体の一部は印刷装置に装着された状態において用紙搬送路の一部を兼ねる様に構成されることもある。このようにして、インクリボンの搬送経路やインクカセットの形状を工夫することにより印刷装置全体の大きさを小型化する様に構成される。
インクリボンは前述したように円筒状の軸に巻き回された状態でインクカセットの外装ケース内に回転自在に配置される。インクカセットは、輸送や使用途中に印刷装置から外された状態で持ち運ばれることなどにより、印刷装置に装着されていない状態で振動等の外力が加わる可能性がある。インクカセットの状態でこの様な振動などの外力が加わると、意図せずインクリボンが繰り出され弛みが生じてしまう。弛みが生じてしまうと、印刷装置への装着時にインクリボンが印刷装置の一部へ接触し、撚れや破れ等を生じさせてしまう。この為、印刷装置に装着されていないインクカセット単体の状態では、インクリボンを固定している軸が回転しない様にロックが掛る様に構成されることが一般的である。ロックは、印刷装置に装着する際に解除され印画時にインクリボンの繰り出し及び巻き取りが可能となる。
特許文献1には、インクリボンが巻きまわされた軸が回転しないようにロック部品がインクカセットに取り付けられている。具体的には、インクカセットに設けられた円柱状のボスにロック部品の穴をはめ込むことで保持している。
本発明の好ましい実施の形態を、図1及至図9を参照して、本詳細に説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置100および印刷装置100に用いられるインクカセット300の外観構成を示す図である。
図1に示すように、印刷装置100は、その側面に開閉可能に支持されたカセットカバー111−1を備える。そして、カセットカバー111−1内のシャ−シ110に設けられた開口部であるインク装着部110−1を介してインクカセット300を矢印A方向に着脱可能としている。インクカセット300には、昇華性インクが塗布されているインクリボン114が収納されており、印刷装置に配された動力によりインクリボン114が搬送され、印画に用いられる。インクカセット300の構造詳細については後述する。
印刷装置の本体ケース101の上部には、表示部102及び各種スイッチ及び釦で構成された操作部103が配されている。また、印刷装置100には不図示のUSB端子やSDカードコネクタ等のインターフェースを備えており、画像データの入ったSDカードを装着する事や、USBケーブルで外部メモリ機器と接続する事により画像データを受信出来るように構成されている。表示部102はLCD等の表示手段から構成され、印刷される画像データを表示したり、印刷に必要な設定データを入力するためのメニューを表示したりする。操作部103は、印刷装置の電源のON/OFFを指示する電源スイッチ104と、表示部102に表示された各種メニューを選択するための選択スイッチ105とを備える。更に、選択スイッチ105の近傍には、表示部102に表示されたカーソルを所望の位置に移動させるための上下左右スイッチ106と、印刷スイッチ107とが配されている。上下左右スイッチ106により所望の画像が選択されると、ユーザにより印刷スイッチ107が押下され、印刷装置100は印刷を開始する。
印刷装置100正面には開閉可能に軸支されたトレイカバー111−2が配され、トレイカバー111−2を開状態にする事で用紙トレイ112を装着可能としている。用紙トレイ112には、規定の尺にカットされた印画用紙113が予めユーザによりセットされており、印刷時には印刷装置100に配された給紙機構により、用紙トレイ112から一枚のみ引き出される。引き出された印画用紙113に、インクリボン114に塗布されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インクと、印画面を保護する為の無色透明のオーバーコート(OC)がサーマルヘッドにより転写され、フルカラー印画が行われる。トレイ上カバー112−1は用紙トレイ112に回動可能に支持されたカバーで在り、印刷装置100へ装着される場合は予めユーザにより開方向へ回動されている。トレイ上カバー112−1は印刷装置100へ装着されている状態では、印画終了後に印刷装置100から排出された印画用紙113を積載する機能を有している。
次に図2を用いてインクリボン114の構成について説明する。図2は本実施形態におけるインクリボン114の展開図である。インクリボン114はイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を並べたインクリボンであり、印画用紙113にそれぞれの色を重ねて印画する事によりフルカラーの画像を形成可能とする。イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を印刷しフルカラーの画像を形成した後、更に印画表面を保護する為、インクリボンには続けて無色透明のオーバーコート(OC)面が設けられている。イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を印画したフルカラー画像上全面に、オーバーコート(OC)の印画(転写)が行われる。各色の間には各色の先頭位置を検出する為の黒帯状の印刷で有るマーキング114−1が施されて居り、イエロー(Y)面の先頭を示すマーキングは他の色と区別する為マーキングが2本施されている。本実施形態における昇華式のインクリボンでは、厚さ2〜10数ミクロン程度のポリエチレンテフタレートフィルム等耐熱性の高いフィルムを基材としている。そして、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色について、染料とバインダー、可塑剤、粘結剤等を混合して作製された昇華性インクが、フィルム上に0.2〜5μm程度の厚さに塗布されている。無色透明のオーバーコート面はスチロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、バインダー等を0.5〜5μm程度の厚さに塗布し形成されている。また、インクが塗布された面の反対側の面には、摺動部との摩擦抵抗を小さくしインクリボンの走行を安定化させる為の潤滑材や、サーマルヘッド表面を研磨清掃する為の研磨剤などが塗布されている。
次に印刷装置100の印刷動作を、図3乃至図4を用いて説明する。図3は本実施形態に係る印刷装置100の動作を示す断面図であり、図4は本実施形態に係る印刷動作のフローチャートを示した図である。図3(a)は印画待機状態を示し、図3(b)は給紙状態を示し、図3(c)はインクリボン114の頭出し状態を示し、図3(d)は印画動作中の状態を示している。ユーザにより、インクカセット300及び印画用紙113をセットされた用紙トレイ112が印刷装置100に装着され、電源スイッチ104を押下されると、印刷装置は図3(a)の印画待機状態となる。不図示のSDカード等により供給された画像データが印刷装置に読み込まれ、表示部102に表示された後、選択スイッチ105や上下左右スイッチ106を用いて印刷する画像データが指定される。印刷装置100にはプラテンローラ203及びサーマルヘッド201が備えられており、サーマルヘッド201はサーマルヘッド回動軸202に回動可能に支持され、コイルバネ204にて図中時計回り方向へ付勢されている。印画待機状態においては、インクカセット300と挿抜時干渉しない様に、サーマルヘッド201はコイルバネ204の付勢力により図中時計回りに回動し、プラテンローラ203との距離を最大限広く取った位置に規制されている。
次いで印刷スイッチ107が押下されると、印刷装置100は印刷動作を開始する(S101)。印刷動作を開始すると、印刷装置100に備えられたサーマルヘッド201は、不図示の動力源によりコイルバネ204の付勢力に抗してサーマルヘッド回動軸202を中心に図中反時計回りに回動させる。そして、図3(b)に示す様に待機位置とプラテンローラ203とニップする印刷位置との間となる中間位置へ移動する(S102)。サーマルヘッド201の移動が完了すると、印刷装置100は給紙動作を開始する(S103)。給紙動作を開始すると、印刷装置100に備えられた加圧板205が不図示の動力により加圧板回動軸207を中心に図中時計回りに回動し、用紙トレイ112内に積載された印画用紙113を押し上げ給紙ローラ206へ押し付ける。給紙ローラ206は不図示の動力により図中反時計方向へ回転し、積載された印画用紙113を印刷装置100の内部へ向かって搬送する。印画用紙113は印刷装置100に備えられた分離板208に当接し、最上部に積載された一枚の印画用紙113のみを搬送する。続いて、搬送された印画用紙113は用紙検出センサ209に検出され、給紙動作不良の無い事が確認される。給紙動作不良の無い事が確認されると、用紙トレイ112内の用紙が誤って印刷装置100内に搬送される事が無いように、加圧板205は不図示の動力により図3(a)に示す、待機状態の位置へ回動する。引き続き給紙ローラ206により搬送された印画用紙113は、切換板回動軸210により回動可能に支持された切換板211を押す事により図中反時計方向へ回動させ、搬送ローラ212と搬送従動ローラ213のニップ間へ突入する。搬送ローラ212には印画用紙113の裏面に突き刺さる微小な突起が複数形成されており、印画用紙113を正確に搬送する事が可能となっている。また、搬送ローラ212は不図示のステッピングモータにより駆動され、正確な送り量の制御が可能となっている。印画用紙113は、搬送ローラ212及び搬送従動ローラ213により搬送が継続され、印画用紙113の後端が用紙検出センサ209を通過した後、所定量搬送され、印画開始位置にて停止する(S104)。給紙動作が完了し、印画用紙113が印画開始位置へ停止すると、インクリボン114のイエロー(Y)頭出し動作が成される(S105)。以下、リボン頭出し動作を説明する。
図3(c)に示した位置まで用紙が搬送され、印画開始位置への搬送が完了すると、インクカセット300に収納されているインクリボン114が巻き上げられる。インクカセット300内に配された巻取りボビン301の回転軸301−3の先端が印刷装置100に備えられた係合部と係合する。そして、不図示の動力により図中反時計回りに回動され、供給ボビン302に巻き回されているインクリボン114が巻取りボビン301に巻き取られていく。図2で示したように、インクリボン114の各色先頭には黒帯が設けられており、特にイエロー(Y)の先頭には黒帯が2本設けられている。印刷装置100には反射式光学センサであるインクリボンセンサ214が備えられており、インクリボン114に設けられた黒帯で反射光がさえぎられる事を検出する事によりインクリボンの搬送を停止し、頭出しを行っている。イエロー(Y)の頭出しの際には、二本の黒帯を検出可能か判断される(S106)。イエロー(Y)頭出し動作時に一本または規定時間内に黒帯が検出出来なかった場合はインクカセット300の異常としてエラーを表示部102に表示し(S107)、サーマルヘッド201を図3(a)に示された待機位置へ移動し(S127)印刷動作を終了する。
リボン頭出し動作時には、印画に掛る時間を短縮する為印画よりも早い速度でインクリボンが搬送される。即ち、供給ボビン302が回転する速度は大きくなり慣性は大きい物となる。前述したように、インクリボン114に設けられた黒帯を検知するとインクリボン114の搬送は停止されるが、供給ボビン302は自身の重量及び巻き回されたインクリボン114の重量による慣性により回転を継続しようとする。供給ボビン302の回転が継続してしまうと、不要なインクリボン114が繰り出される事になり、インクリボンジャム等の原因となってしまう。これを防止するため、供給ボビン302には微小な回転抵抗が発生するように摺動部が設けられている。供給ボビン302に設けられた微小な回転抵抗を発生する摺動部に関しての詳細は後述する。
イエロー(Y)の頭出しが完了すると、サーマルヘッド201はサーマルヘッド回動軸202を中心に更に図中反時計回りに回動し、インクリボン114と印画用紙113をプラテンローラ203との間に挟持する印画位置へ移動する(S108)。サーマルヘッド201が印画位置までの移動を完了すると、図3(d)に示される様に印刷用紙113及びインクリボン114はサーマルヘッド201とプラテンローラ203に挟持されたまま、図中矢印Bで示される印刷方向へ搬送される。印刷用紙113及びインクリボン114を搬送するとともに、インクリボン114に塗布されたインクがサーマルヘッド201により加熱されて印刷用紙113へ転写され、印画が行われる(S109)。印画動作中は前述の通りインクリボン114と印刷用紙113は同速度にて搬送される。このため、印刷装置100に備えられたインクリボン搬送機構には一定トルク以上の負荷が掛かるとスリップをする不図示のトルクリミッタ機構が組み込まれている。インクリボン114と印刷用紙113はサーマルヘッド201による加熱で印刷が成されると、一定の距離だけ密着状態を保持したまま搬送され、その後互いに離間する方向へ搬送される。即ち、印刷用紙113は搬送ローラ212により矢印Aの方向へ搬送され、インクリボン114はサーマルヘッド201に一体的に配された剥離板215に摺動しながらインクカセット300内に配されたガイド軸303に向かい搬送される。インクリボン114はサーマルヘッド201による印画のための加熱により印刷用紙113に貼りついているが、剥離板215の位置まで搬送され印刷用紙113より引き剥がされる事となる。印刷される画像が高階調である場合では、高濃度が求められる為より多くの染料を印刷用紙113に拡散移動すべく多くの熱量がサーマルヘッド201から与えられる。
インクリボン114は熱量が加えられると、前述したようにポリエチレンテフタレートフィルムで構成されている為収縮が起きる。特に高諧調領域を印画する場合、多くの熱量がインクリボン114に加えられ大きく収縮する。すると、供給ボビン302に巻き回されているインクリボンが収縮により引き出され、リボンの捩れや、弛み、シワ等の原因となる。捩れやシワが発生すると、色抜け等が発生し印画品質の低下を招いてしまう。この様な印画品質を低下させる事象を防止するためには、供給側のインクリボン114が収縮等の比較的微小な力の作用で容易に引き出されないように、供給側軸に適切な回転抵抗を生じさせる構成が有効である。前述したように、供給軸には微小な回転抵抗が生じる構成とされている。この様な回転抵抗を生じさせる構成はインクリボン114の頭出し動作停止時の緩み防止のみならずシワ耐性を向上させる機能も担っている。
剥離板215のサーマルヘッド201上に配された発熱体との距離は、インクリボン114上から印刷用紙113上に拡散移動した染料が充分冷却され定着する為に必要な値へ適正化されている。
印刷用紙113へのイエロー画像の印画領域への印画が完了すると、不図示の印刷装置100に備えられた動力が駆動し、サーマルヘッド201を回動させ図3(c)に示される位置に退避させる(S110)。その後、図3(c)に示される、位置まで印刷用紙113を印画動作とは逆方向に搬送させ印画開始位置へ移動させる(S111)。その後、イエロー(Y)印画動作同様にインクリボン114を、マーカー114−1Mを検出する事により印画開始位置まで搬送停止しマゼンダ(M)の印画を行う(S112〜116)。同様にマーカー114C及び114OCを検出しリボン頭出しを行い、シアン(C)及びオーバーコート(OC)の印画を行う(S117〜125)。OC迄の印画が終了すると、図3(d)中矢印Aで示される方向に印刷用紙113を更に搬送し、用紙後端が搬送ローラ212を抜けた後は給紙ローラ206の搬送力により印刷装置100の外である、用紙トレイ112上に排紙する(S126)。排紙が完了すると、サーマルヘッド201を不図示の動力により図3(a)に示された待機位置まで回動し、印刷を終了する(S127)。
以上により、イエロー、マゼンタ、シアン、オーバーコート層の順にインクが重ねられて転写される印画動作が完了する。
次に、図5乃至図7を参照してインクカセット300の構成詳細を説明する。
図5インクカセット300の展開図であり、図6はインクカセット300を組み立てる様子を示した斜視図であり、図7はインクカセット300を組み立てる様子を示した断面模式図である。
図5に示すように、インクリボン114は供給軸302に巻き回され、他端を巻取り軸301に貼り付けられた状態でカセットケース304に収納されている。カセットケース304はABS等の汎用成型材料やPC等のエンジニアリングプラスチックが用いられる。巻取り軸301、供給軸302は同じ形状の部品であり、ABSやPS等の汎用樹脂の高摺動材料を用いた射出成型品である。カセットケース304は略二つの半円筒を繋げた形状をしており、半円筒をそれぞれ供給側ケース305と巻取り側ケース306で覆い、略円筒形状を形成している。また、カセットケース304は側面を側壁304−3により覆われている。供給側ケース305及び巻取り側ケース306はそれぞれ供給側ケース係合爪305−1及び巻取り側ケース係合爪306−1にてカセットケース304に係合し一体化されている。また、供給側ケース305と巻取り側ケース306はカセットケース304同様の樹脂射出成型品である。供給軸302及び巻取り軸301はそれぞれカセットケース304と供給側ケース305及び巻取り側ケース306で構成された略円筒内に配置され、回転可能に支持されている。インクリボン114は、カセットケース304に回転可能に支持されたガイド軸303にて屈曲し、供給側ケース305及び巻取り側ケース306とカセットケース304間に設けられた開口部を通る様配置されている。ガイド軸303は強度の高い樹脂であるPBT−GF30%の射出成型にて製作され、インクリボン114と接触する大径部303−2と同軸に大径部303−2の両端に設けられた小径部303−1にて構成されている。巻き取り軸301及び供給軸302は、先端にフランジ301−1が設けられて居る。フランジ301−1には回転軸301−3と同心円状且つフランジ301−1に対し回転軸301−3の軸方向へ凸形状とした複数の突起301−2が設けられている。尚、巻き取り軸301と供給軸302は同形状の為、フランジ301−1及び突起301−2、回転軸301−3は同じ符号を用いて説明する。スライド部材307は樹脂射出成形品であり、カセットケース304に対して小さいため、非常に軽い。具体的には、1〜10g程度である。後述するが、スライド部材307は、巻き取り軸301と供給軸302の回転軸と平行な方向に移動可能に構成される移動部材である。スライド部材307には、巻き取りボビン側と供給ボビン側とに、規制部307−1を2か所有する。規制部307−1は後述するが、巻取り軸301及び供給軸302の突起301−2と係合し、巻取り軸301及び供給軸302の回転を規制することができる。
次に図6及び図7を用いてインクカセット300の組み立て方を説明する。図6(a)、図6(b)はカセットケース304にスライド部材307を組み込む様子を示した斜視図である。図6(c)はカセットケース304に巻取り軸301及び供給軸302を組み込む様子を示した斜視図であり、図6(d)はカセットケース304に供給側ケース305及び巻取り側ケース306を組み込む様子を示した斜視図である。また図6では、説明しやすいようにカセットケース304の側壁304−3を取り除いてある。
スライド部材307は図6(a)の位置から図6(b)に示す位置に図中矢印C方向に移動させ、カセットケース304に組み込むことができる。スライド部材307には係合穴307−2を有し、後述するカセットケース304に設けられた係合凸部304−1と係合することができる。304−2はブリッジ部であり、供給側と巻取り側の二つの半円筒をつなげている。
カセットケース304にスライド部材307を組み込む際のスライド部材307の位置について図7を用いて詳細に説明する。図7は、説明を簡略化するため説明に不要な形状は削除してある。
図7(a)はカセットケース304の上部からみた断面模式図である。図7(b)は、カセットケース304にスライド部材307を組み込んだ直後の様子を示した断面模式図であり、図7(c)は、カセットケース304にスライド部材307が保持されている様子を示した断面模式図である。図7(d)はカセットケース304に巻取り軸301及び供給軸302を組み込んだ様子を示した断面模式図である。
組立作業者は、スライド部材307を介してカセットケース304に設けられた樹脂バネ308を図7(a)の位置から図7(b)に示す位置に図中矢印D方向に撓ませながらカセットケース304に組み込む。このとき、スライド部材307は係合凸部304−1から矢印D方向に退避した位置にあるため、図6(b)の矢印Cの方向にスライド部材307を移動させるだけで組み込むことが可能である。
次に、スライド部材307が図6(b)に示す位置まで矢印Cの方向に組み込まれ、組立作業者がスライド部材307から手を離すと、スライド部材307は樹脂バネ308により矢印Eの方向に押される。前述した通り、スライド部材307は樹脂で構成されており重量が軽いため、矢印Eの方向に押し込まれ図7(c)に示す位置に移動する。このとき、スライド部材307はカセットケース304の樹脂バネ308とブリッジ部304−2に挟まれる。さらに、スライド部材307の係合穴307−2にカセットケース304の係合凸部304−1が係合することで、カセットケース304によりスライド部材307が保持される。そのため、組立作業者がスライド部材307から手を離した際に、カセットケース304からスライド部材307が容易に外れてしまうことがない。また、樹脂バネ308の付勢力は、スライド部材307の重量が軽いため非常に小さくすることができる。つまり、組立作業者がスライド部材307を組み込む際に、樹脂バネ308を矢印Dの方向に押し込む力も小さいため、組立作業性を低下させることはない。
次に、図6(c)に示すように巻取り軸301と供給軸302及びガイド軸303を矢印Cの方向に移動させカセットケース304に組み込む。このときの様子を図7(d)を用いて説明する。巻取り軸301と供給軸302をカセットケースに組み込むと、巻取り軸301と供給軸302のフランジ301−1によりスライド部材307が矢印Dの方向に押し込まれ、スライド部材307はブリッジ部304−2から離間する。このとき、スライド部材307は樹脂バネ308により矢印E方向に付勢されているため、図7(d)に示す位置よりスライド部材307が矢印E方向に移動することはない。スライド部材307の係合穴307−2とカセットケース304の係合凸部304−1は係合しているため、容易にスライド部材307がカセットケース304から外れることはない。さらに、巻取り軸301と供給軸302の突起301−2とスライド部材307の規制部307−1が係合するため、巻取り軸301と供給軸302の回転が規制される。
次に、図6(d)に示すように供給側ケース305及び巻取り側ケース306を矢印Cの方向に移動させカセットケース304に組み込むことでインクカセット300の組み立てが完了する。
次に図7乃至図9を用いてインクカセット300を印刷装置100へ装着するときの説明をする。図8はインクカセット300を印刷装置100へ装着するときの様子を示した斜視図である。説明しやすいようにカセットケース304の側壁304−3を取り除いてある。図8(a)は、インクカセット300を印刷装置100へ装着する途中、図8(b)は、インクカセット300を印刷装置100に装着したときを示している。図9は、インクカセット300を印刷装置100に装着した様子を示した断面模式図である。
図8(a)に示すようにインクカセット300を印刷装置100に装着する途中では、スライド部材307は樹脂バネ308により矢印Eの方向に付勢されている。そのため、図7(d)に示すように規制部307−1と突起301−2が係合し、巻取り軸301と供給軸302の回転が規制され、供給軸302に巻かれたインクリボン114が引き出されることはない。
インクカセット300が、ユーザにより印刷装置100に装着されて行くと、先ず巻き取り軸301と供給軸302先端に設けられた不図示の凹形状と印刷装置100に備えられた巻き取りボビン216及び供給ボビン217が係合する。巻き取りボビン216及び供給ボビン217は、それぞれ巻き取りボビンバネ216−1及び供給ボビンバネ217−1によりインクカセット300を図中矢印Bで示される方向とは逆の、印刷装置100より排出する方向へ付勢されている。
インクカセット300が更に挿入されて行くと、次にスライド部材307とシャシ110の一部である、当接面110−2が当接する。当接面110−2はインク装着部110−1の一部を兼ねている。スライド部材307が当接面110−2に当接し、更にインクカセット300を挿入すると図8(b)に示す装着位置になる。このとき、スライド部材307は図9に示すように、当接面110−2と当接し、矢印Dの方向に移動し、規制部307−1が巻取り軸301と供給軸302の突起301−2から離間する。そのため、巻取り軸301と供給軸302の回転規制が解除され、インクカセット300からインクリボン114を引き出すことが可能となり、前述した通り印刷装置100はインクリボン114を用いて印刷することができる。
本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。