JP6767818B2 - 分散体及びプリント配線基板製造用基板 - Google Patents

分散体及びプリント配線基板製造用基板 Download PDF

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Description

本発明は分散体に関する。本発明は、本発明の分散体を用いて形成された膜を有するプリント配線基板製造用基板にもまた関する。
回路基板は、基板上に導電性の配線を施した構造を有する。このような回路基板を製造する従来の方法は、一般に、金属箔を貼り合せた基板上にフォトレジストを塗布すること、これを露光及び現像して所望の回路パターンのネガ状の形状を得ること、及びフォトレジストに被覆されていない部分の金属箔をケミカルエッチングにより除去してパターンを形成することを含む。回路基板の従来の製造方法は、高性能の導電性基板を製造することができる。しかしながら、回路基板の従来の製造方法は、工程数が多く、煩雑であるとともに、フォトレジスト材料を要する等の欠点がある。
これに対し、金属及び金属酸化物を含む粒子を分散させた分散体(以下、「導電性ペースト」ともいう)を用いて、基板上に所望の配線パターンを直接印刷することを含む方法が注目されている。このような、基板上に所望の配線パターンを直接印刷する方法は、工程数が少なく、フォトレジスト材料を用いる必要がない等、極めて生産性が高い。
しかしながら、一般的に用いられる導電性ペーストは、金属及び金属酸化物を含む粒子として銀微粒子を使用しており、銀は非常に高価であるため、直接印刷法による生産性向上がもたらすコストメリットが相殺されてしまう。また、銀はマイグレーションしやすいことが知られており、銀ペーストを用いた配線は信頼性が低い。
これらの問題に対して、銅微粒子を用いた導電性ペーストが多く検討されている。
例えば、特許文献1では、銅粉、非鉛ガラスフリット、酸化銅、樹脂バインダー及びチキソ剤を含む銅ペーストが開示されている。
特許文献2では、銅ナノ粒子とエチルセルロースとを含有する分散体が開示されている。粒子径100nm程度の銅ナノ粒子を用いることで、500℃で焼成することができる。
特開2012−54113号公報 特開2012−52240号公報
しかしながら、引用文献1に記載の方法では、粒径の大きい粒子を用いているため、焼成に900℃という高温が必要であった。また、引用文献2に記載の方法では、焼成温度が500℃であるものの、500℃では樹脂基材を用いることができないため、さらなる低温化の余地がある。また、銅ナノ粒子は酸化されやすく、酸化によってナノ粒子の分散性が悪化し凝集が進むため、分散体を長期間保管することができなかった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、低耐熱な樹脂基板上に低抵抗な配線を形成することができる分散体、及びこれを用いて形成された膜を有するプリント配線基板製造用基板を提供することである。
本発明者らは、前記課題を達成すべく鋭意研究し実験を重ねた。その結果、金属又は金属酸化物を含む粒子と、窒素を特定量含有する不揮発性有機物とを含有する分散体を使用することにより、前記課題が達成されることを見出し、これに基づいて本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
金属及び/又は金属酸化物を含む粒子と、
不揮発性有機物と
を含有する分散体であって、
上記粒子の一次粒子径が5nm以上100nm未満であり、
上記不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、上記不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上55質量%以下である、分散体。
〔2〕
上記窒素含有有機物は、硝酸エステル構造、ニトロ基、シアノ基、及び窒素を含む複素環構造から選択される少なくとも一つを有する、
項目1に記載の分散体。
〔3〕
上記窒素含有有機物が、アルドース構造を有する、
項目1又は2に記載の分散体。
〔4〕
上記粒子が酸化銅から構成される粒子を含む、
項目1に記載の分散体。
〔5〕
基材と、上記基材上に形成された膜とを有する、プリント配線基板製造用基板であって、上記膜は、
金属及び/又は金属酸化物を含む粒子と、
不揮発性有機物と
を含有し、
上記粒子の一次粒子径が5nm以上100nm未満であり、
上記不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、上記不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上55質量%以下である、プリント配線基板製造用基板。
本発明によれば、低耐熱な樹脂基板上に低抵抗な配線を形成することができる分散体、及びこれを用いて形成された膜を有するプリント配線基板製造用基板を得ることができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本願明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
《分散体》
本実施形態の分散体は、金属及び/又は金属酸化物を含む粒子と、不揮発性有機物とを含有し、上記粒子の一次粒子径が5nm以上100nm未満であり、上記不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上55質量%以下である。
[粒子]
本実施形態の分散体における粒子は、金属及び金属酸化物を含む粒子である。金属及び金属酸化物としては、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、錫、鉛、インジウム、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、ハフニウム、及びマグネシウム、並びにこれら金属の酸化物からなる群から選択される少なくとも一つであってよい。銅及び銅酸化物は、安価であり、焼成によって抵抗の低い配線を形成することができるため好ましい。銅及び銅酸化物を含む粒子の具体例としては、例えば、銅、酸化第一銅、酸化第二銅、及びその他の酸化数を持つ酸化銅等から構成される粒子であってよく、コア部が銅でありシェル部が酸化銅であるコア/シェル構造を有する粒子であってもよい。酸化銅としては、酸化第一銅及び酸化第二銅は、分散性に優れる傾向にあり、化学的に安定であるので好ましく、酸化第一銅は低温焼結し易い傾向にあるので特に好ましい。金属及び金属酸化物を含む粒子は、少量の不純物として金属塩若しくは金属錯体又はその双方を含んでもよい。金属及び金属酸化物を含む粒子は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
本実施形態の分散体に含まれる粒子の平均二次粒径は、特に制限されないが、好ましくは1,000nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは80nm以下である。粒子の平均二次粒径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは15nm以上、更に好ましくは20nm以上である。平均二次粒径とは、一次粒子が複数個集まって形成される凝集体(二次粒子)の平均粒径のことである。この平均二次粒径が1,000nm以下であると、低温で焼成しやすい傾向があるので好ましい。平均二次粒径が5nm以上であれば、分散体の長期保管安定性が向上するため好ましい。粒子の平均二次粒径は、例えば、大塚電子製、FPAR−1000を用いて、キュムラント法によって測定できる。
二次粒子を構成する一次粒子の平均一次粒径は、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、更に好ましくは20nm未満である。平均一次粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは5nm以上である。平均一次粒径が100nm以下の場合、後述する焼成温度を低くすることができる傾向にあり、さらに平均一次粒径が小さくなるほど焼成温度が低くなり好ましい。このような低温焼成が可能になる理由は、粒子の粒径が小さいほど、その表面エネルギーが大きくなって、融点が低下するためと考えられる。また、平均一次粒径が1nm以上であれば、良好な分散性を得ることができるため好ましい。平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
本実施形態の分散体における粒子の含有率は、分散体の全質量に対して、0.50質量%以上70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0〜60質量%、更に好ましくは5.0〜50質量%である。この含有率が70質量%以下であれば、粒子の凝集を抑制し易くなる傾向がある。含有率が0.50質量%以上であると、焼成して得られる導電膜が過度に薄くならず、導電性が良好となる傾向があるので好ましい。
本実施形態における粒子としては、市販品を用いてもよいし、合成物を用いてもよい。市販品としては、例えば、CIKナノテック製の平均一次粒径50nmの酸化第二銅粒子が挙げられる。
粒子の合成法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(1)ポリオール溶剤中に、水及び銅アセチルアセトナト錯体を加え、一旦有機銅化合物を加熱溶解させ、反応に必要な量の水を更に添加し、有機銅の還元温度に加熱して還元する方法。
(2)有機銅化合物(銅−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン錯体)を、ヘキサデシルアミン等の保護剤の存在下、不活性雰囲気中で、300℃程度の高温で加熱する方法。
(3)水溶液に溶解した銅塩をヒドラジンで還元する方法。
上記(1)の方法は、例えば、アンゲバンテ・ケミ・インターナショナル・エディション、40号、2巻、p.359、2001年に記載の条件で行うことができる。
上記(2)の方法は、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ・1999年、121巻、p.11595に記載の条件で行うことができる。
上記(3)の方法において、銅塩としては、二価の銅塩を好適に用いることができ、その例として、例えば、酢酸銅(II)、硝酸銅(II)、炭酸銅(II)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。ヒドラジンの使用量は、銅塩1モルに対して、0.2モル〜2モルとすることが好ましく、0.25モル〜1.5モルとすることがより好ましい。
銅塩を溶解した水溶液には、水溶性有機化合物を添加してもよい。該水溶液に水溶性有機化合物を添加することによって該水溶液の融点が下がるので、より低温における還元が可能となる。水溶性有機化合物としては、例えば、アルコール、水溶性高分子等を用いることができる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等を用いることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等を用いることができる。
上記(3)の方法における還元の際の温度は、例えば−20〜60℃とすることができ、−10〜30℃とすることが好ましい。この還元温度は、反応中一定でもよいし、途中で昇温又は降温してもよい。ヒドラジンの活性が高い反応初期は、10℃以下で還元することが好ましく、0℃以下で還元することがより好ましい。還元時間は、30分〜300分とすることが好ましく、90分〜200分とすることがより好ましい。還元の際の雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気であることが好ましい。
上記(1)〜(3)の方法の中でも、(3)の方法は操作が簡便で、且つ、粒径の小さい粒子が得られるので好ましい。
[不揮発性有機物]
本実施形態の分散体は、印刷適性向上と、長期保管安定性と、焼成低温化と、を目的として不揮発性有機物を含有する。
本実施形態における不揮発性有機物とは、単一化合物であってもよく、複数化合物の混合物であってもよい。ここで不揮発性有機物とは、基材上に分散体を塗布し、100℃で30分間乾燥させた後基材上に残る有機成分のことをいう。
本実施形態における不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、不揮発性有機物の窒素含有量は、6質量%以上55質量%以下である。不揮発性有機物の窒素含有量は、好ましくは7.5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは21質量%以下、より好ましくは13質量%以下である。窒素含有量が6質量%以上であれば粒子の分散性が向上し、7.5質量%以上であればより低温で有機物が分解するためより低温での焼成が可能となり、10質量%以上であれば焼成後の残渣が残りにくくなるため得られる導電性膜がより低抵抗化する。窒素含有量が55質量%以下であれば化学的安定性に優れ長期保管に優れ、50質量%以下であればより化学的安定性に優れ、より長期での保管が可能となる。本願明細書において、窒素含有量とは、不揮発性有機物中に含まれる窒素の質量%のことをいう。窒素含有量は、元素分析法によって測定することができる。
本実施形態における不揮発性有機物は、窒素を含む構造を有する有機物(本願明細書において「窒素含有有機物」ともいう。)を含む。窒素を含む構造としては、例えば、窒素を含む官能基、窒素を含む結合、窒素を含む複素環構造、及び窒素を含むその他構造が挙げられる。
窒素を含む官能基としては、具体的には、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアネート基、アジド基、及びイソシアノ基等が挙げられる。ニトロ基、シアノ基、及びアミノ基から選択される少なくとも1つの基を有する有機物は、粒子の分散性を向上させるため好ましい。特にニトロ基及び/又はシアノ基を有する有機物は、分解温度が低く低温で焼成できる傾向があるため好ましい。
窒素を含む結合としては、具体的には、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、イオン結合、水素結合、及び配位結合等が挙げられる。特にアミド結合及び/又はウレタン結合を有する有機物は、分解しやすく低温で焼成できる傾向があるため好ましい。
窒素を含む複素環構造としては、具体的には、エチレンイミン、アジリン、アザシクロブタン、アゼト、2−ピロリドン、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、ヘキサメチレンイミン、アザトロピリデン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、シンノリン、プテリジン、1,4−ベンゾジアゼピン、アクリジン、フェノキサジン、フェノチアジン、カルバゾール、フェナントロリン、ポルフィリン、クロリン、コリン、ベンゾ−c−シノリン、ピペラジン、キヌクリジン、アゼチジン−2−オン、及びトロパン等が挙げられる。
窒素を含むその他構造としては具体的には、エナミン、イミン、オキシム、ラクタム、ラクチム、アミジン、ニトロン、及び硝酸エステル等が挙げられる。ラクタム構造を有する有機物は粒子の分散性が向上するため好ましく、特にγ−ラクタム構造が好ましい。硝酸エステル構造を有する有機物は、分解しやすく焼成後の導電性膜が低抵抗化する傾向にあるため好ましい。
上記窒素を含む構造は、紫外−可視吸収スペクトル法、赤外吸収スペクトル法、ラマンスペクトル法、核磁気共鳴法、電子スピン共鳴法、質量分析法、及びX線解析法等により特定することができる。
本実施形態の不揮発性有機物は、窒素を含む構造以外に、例えば、以下に示す構造を有してもよい。すなわち、不揮発性有機物は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリスルフィド、シリコーン樹脂、アルドース、セルロース、アミロース、プルラン、デキストリン、グルカン、フルクタン、及びキチン等の構造を有することができる。不揮発性有機物は、これら構造の官能基を変性した構造を有してもよく、これら構造を修飾した構造を有してもよく、これら構造の共重合体の構造を有してもよい。ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、ポリアセタール構造、ポリブテン構造、及びポリスルフィド構造からなる群から選択される骨格を有する有機物は、分解し易く、焼成後に得られる導電性膜中に残渣を残し難いため好ましい。セルロース構造、アミロース構造、プルラン構造、デキストリン構造、グルカン構造、フルクタン構造、及びキチン構造からなる群から選択される構造を有する有機物は、粒子の分散性に優れる傾向にあるため好ましい。特にセルロース構造、及びプルラン構造を有する有機物は入手が容易であるため好適に利用できる。
本実施形態の不揮発性有機物のリン含有量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましい。不揮発性有機物のリン含有量が5質量%以下であれば、金属がリンにより腐食されにくく、導電性が低下しにくい。リン含有量が0.0001質量%以上であれば、不揮発性有機物と金属との親和性が向上し、粒子の分散性が向上する。
不揮発性有機物の重量平均分子量は、分散体の基材への適用方法によって適切に選ぶことが好ましい。分散体を反転印刷に用いる場合、不揮発性有機物の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1,000以上であることがさらに好ましく;40,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、5,000以下であることがさらに好ましい。分散体をスクリーン印刷に用いる場合、1,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、50,000以上であることがさらに好ましく、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることがさらに好ましい。分散体をオフセット印刷に用いる場合、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがよりこのましく、5,000以上であることがさらに好ましく、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、20,000以下であることがさらに好ましい。分散体を凸版印刷に用いる場合、500以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、3,000以上であることがさらに好ましく、1,000,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、10,000以下であることがさらに好ましい。
不揮発性有機物の重量平均分子量は、低分子量化合物については、各種の質量分析法(MS)により測定することができる。一方、高分子量化合物については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定できる。低分子量の目安としては分子量200未満であり、高分子量の目安としては分子量100以上である。
上記GPC測定条件は、有機物が親水性である場合、例えば以下のとおりである。
データ処理:東ソー社 EcoSEC−WS
ポンプ:Waters社 Acquity H
RI検出器:東ソー社 RI8020
オーブン:東ソー社 CO8020
カラム:TSKgel G3000PWXI+G2500PWXI(7.8mmID×30cm)
カラム温度:40℃
溶離液:pH=3.5リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
注入量:50μl
標準試料:ポリエチレンオキサイド(Aldrich社、PRODUCT No.02393)
有機物が疎水性である場合、例えば以下のとおりである。
データ処理:東ソー社 EcoSEC−WS
装置:東ソー社 EcoSEC
カラム:TSKgel SuperHZM−M(4.6mmID×15cm)+TSKgel SuperHZ2000(4.6mmID×15cm)
温度:40℃
溶離液:THF
流速:0.35ml/min
検出器:RI
標準資料:ポリスチレン(Agilent社 easy cal)
不揮発性有機物の添加量は、粒子100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。不揮発性有機物の添加量が0.1質量部以上であれば成膜性に優れ、5質量部以上であれば粒子の分散性に優れる傾向にあり、10質量部以上であれば印刷性に優れる傾向にある。50質量部以下であれば焼成によって導電性膜を得ることが容易である。
本実施形態において、不揮発性有機物は、窒素を含む構造を有する有機物(本願明細書において「窒素含有有機物」ともいう。)を含む。
窒素含有有機物は、硝酸エステル構造、ニトロ基、シアノ基、及び窒素を含む複素環構造から選択される少なくとも一つを有することが好ましい。窒素含有有機物は、アルドース構造を有することが好ましい。
本実施形態において、窒素含有有機物としては、具体的には、ニトロセルロース、ポリビニルピロリドン、及びシアノエチルプルランからなる群から選択される少なくとも一つの化合物を好適に用いることができる。特にニトロセルロースは粒子分散性と焼成後の導電性膜の低抵抗化に優れるため好ましい。ニトロセルロースの化学構造を下記に示す。
Figure 0006767818
ニトロセルロースの窒素含有量は6質量%以上が好ましく、9質量%以上がより好ましく、11質量%以上がさらに好ましく、13質量%以下であることが好ましく、12.5質量%以下であることがより好ましい。ニトロセルロースの窒素含有量が6質量%以上であれば、粒子の分散性が向上し、9質量%以上であれば低温で有機物が分解するため低温焼成が可能となり、11質量%以上であれば残渣が残りにくくなるため焼成後の導電性膜がより低抵抗化する。13質量%以下であれば安全に取り扱え、12.5質量%以下であれば溶媒に溶解しやすくなる。
窒素含有有機物の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく;1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、20,000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が500以上であれば粒子の分散性が向上し、1,000以上であれば長期保管安定性が向上し、2,000以上であればチキソ性を持つ傾向にあり印刷性が向上する。重量平均分子量が1,000,000以下であれば十分な溶解性を得ることができ、500,000以下であれば印刷可能な流動性を得ることができ、20,000以下であれば粒子との混練が容易になる。
不揮発性有機物中の窒素含有有機物の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。不揮発性有機物中の窒素含有有機物の割合が50質量%以上であれば、低温で焼成できる傾向にあるため好ましい。
本実施形態の分散体は、窒素含有有機物を含む不揮発性有機物を必須の成分として含有する。しかしながら、本実施形態の分散体は、これら以外にその他の成分をさらに含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、表面エネルギー調整剤、分散剤、可塑剤、及び溶媒等を挙げることができる。
[表面エネルギー調整剤]
本実施形態の分散体は、塗工性を向上させるため、表面エネルギー調整剤を含んでもよい。これにより、分散体を塗布する時、得られる塗布膜の平滑性が向上し、従ってより均一な導電性膜が得られる。
表面エネルギー調整剤の具体例としては、商品名として、例えば、Triton X−45、Triton X−100、Triton X、Triton A−20、Triton X−15、Triton X−114、Triton X−405、Tween #20、Tween #40、Tween #60、Tween #80、Tween #85、Pluronic F−68、Pluronic F−127、Span 20、Span 40、Span 60、Span 80、Span 83、Span 85等;AGCセイミケミカル製の「サーフロンS−211」、「サーフロンS−221」、「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」、「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、「サーフロンS−611」等;スリーエム製の「NovecFC−4430」、「NovecFC−4432」等;DIC製の「メガファックF−444」、「メガファックF−558」等が挙げられる。表面エネルギー調整剤の中でも含フッ素界面活性剤が特に好ましく、AGCセイミケミカル製の「サーフロンS−211」、「サーフロンS−221」、「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」、「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、及び「サーフロンS−611」;スリーエム製の「NovecFC−4430」及び「NovecFC−4432」;並びにDIC製の「メガファックF−444」及び「メガファックF−558」が好適に用いられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
本実施形態の分散体における表面エネルギー調整剤の含有量は、特に制限されないが、分散体の全質量に対して、好ましくは0.010質量%以上であり、より好ましくは0.10質量%である。表面エネルギー調整剤の含有量は、分散体の全質量に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。分散対が表面エネルギー調整剤を0.010質量%以上含有する場合、分散体を塗布する時に、得られる塗布膜の膜厚が均一となり、塗布ムラが生じ難い傾向がある。一方で、塗布膜を焼成して得られる導電性膜において、表面エネルギー調整剤由来の残渣を少なくし、良好な導電性を得る観点から、表面エネルギー調整剤の添加量は2.0質量%以下であることが好ましい。
[分散剤]
分散剤は、粒子の分散性を向上し、粒子が凝集沈降することを防止する機能を有する。したがって、分散剤は、分散体の保管安定性及び分散体を塗布した際の塗布膜の平滑性と膜厚均一性を向上させる。
分散剤としては、市販の種々の分散剤を用いることができる。溶媒が水及び高極性溶媒の場合の分散剤として、具体的には、ビックケミー社製のDISPERBYK−102、DISPERBYK−187、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191、DISPERBYK−193、DISPERBYK−194N、DISPERBYK−199、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2012、DISPERBYK−2013、DISPERBYK−2015、DISPERBYK−2055、DISPERBYK−2060、DISPERBYK−2061、及びDISPERBYK−2096等を挙げることができる。
溶媒が溶剤系の場合の分散剤として、具体的には、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPERBYK−118、DISPERBYK−140、DISPERBYK−145、DISPERBYK−168、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2022、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2055、DISPERBYK−2150、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2164、DISPERBYK−2200、BYK−405、BYK−607、BYK−9076、及びBYK−9077、並びに第一工業製薬社製のプライサーフM208F、及びプライサーフDBS等を挙げることができる。
溶媒を用いない場合の分散剤として、具体的には、DISPERBYK−102、DISPERBYK−106、DISPERBYK−109、DISPERBYK−111、DISPERBYK−145、DISPERBYK−180、DISPERBYK−2008、DISPERBYK−2013、DISPERBYK−2055、DISPERBYK−2096、DISPERBYK−2152、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2200、BYK−9076、BYK−9077、及びBYK−P105等を挙げることができる。
分散体における分散剤の含有量としては、分散体の全質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
また、分散剤の含有量は、粒子の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。粒子の全質量に対する分散剤の含有量が、0.1質量%以上であれば粒子の沈降を効果的に防止することができ、2質量%以上であれば良好な分散性を得ることができ、10質量%以上であれば良好な長期保管安定性を得ることができる。粒子の全質量に対する分散剤の含有量が、50質量%以下であれば塗布膜を焼成することで導電性膜を得ることが容易である。
[可塑剤]
可塑剤は、分散体の粘度や乾燥速度の調整を目的として添加することができる。したがって分散体の印刷性を向上させることができる。可塑剤としては、特に制限されないが、他の有機物との相溶性に優れるものが好ましい。可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル等の脂肪酸エステル、ポリエステル、エポキシ、及びスルホン酸アミド等を用いることができる。可塑剤としては、具体的には、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸オクチル、フタル酸ジ−2−メトキシエチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジアミル、酒石酸ジメチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、酒石酸ジオクチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−メトキシエチル、セバシン酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジオクチルエーテル、O−ベンゾイル安息香酸エチル、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、N−エチルトルエンスルホン酸アミド、トリアセチン、p−トルエンスルホン酸O−クレジル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、トリプロピオニン、ひまし油、水素化ひまし油、ポリエチレングリコール変性ひまし油、及びポリエチレングリコール等を挙げることができる。
分散体における可塑剤の含有量としては、不揮発性有機物の質量に対して1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、60質量%以下が好ましく40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
[溶媒]
本実施形態の分散体は、上記不揮発性有機物とは別に、粘度調製、及び塗工性向上等の観点から、溶媒を含有してもよい。
本実施形態の分散体における溶媒としては、該分散体の用途に応じて様々な溶媒を用いることができる。例えば、高い平滑性が要求される用途においては高沸点溶媒を用いることが好ましく、速乾性が要求される用途においては低沸点溶媒を用いることが好ましい。
低沸点溶媒の20℃における蒸気圧は、20Pa以上150hPa以下であることが好ましく、より好ましくは100Pa以上100hPa以下、更に好ましくは300Pa以上20hPa以下である。溶媒の揮発速度を高く維持しつつ、分散体における粒子の分散安定性を確保するために、該蒸気圧は150hPa以下であることが好ましい。一方で、分散体塗布膜にクラックが入らない程度の乾燥速度にするために、該蒸気圧は20Pa以上であることが好ましい。
低沸点溶媒としては、具体的には、例えば、水、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及びジアセトンアルコール等が挙げられる。印刷樹脂版又はブランケットを膨潤せず、長寿命化させることができるため、溶媒は親水性溶媒であることが好ましく、中でも、水と、炭素数10以下のモノアルコールとから構成される混合溶媒がより好ましい。炭素数10以下のモノアルコールの中でも、分散性、揮発性、及び粘性が特に適していることから、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される少なくとも一つが更に好ましい。これらのモノアルコールは、それぞれ単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。モノアルコールの炭素数が10以下であれば、粒子の分散性がより良好となる。
高沸点溶媒の20℃における蒸気圧は、0.010Pa以上20Pa未満であることが好ましく、より好ましくは0.05Pa以上16Pa未満、更に好ましくは0.1Pa以上14Pa未満である。レベリング効果によって分散体塗布膜の平滑性を維持するために、該蒸気圧は20Pa未満であることが好ましい。一方で、後述する焼成処理によって容易に除去することができ、得られる導電性膜中に除去しきれなかった溶媒残渣が混入してその導電性を悪化させることを抑制するためには、該蒸気圧は0.010Pa以上であることが好ましい。
高沸点溶媒としては、具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3メトキシ−3−メチルーブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ1,2−プロピレングリコール、及びグリセロール等が挙げられる。印刷樹脂版やブランケットが膨潤せず、長寿命化させることができるため、溶媒は親水性溶媒であることが好ましく、中でも炭素数10以下の多価アルコールがより好ましい。これらの多価アルコールは、それぞれ単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。多価アルコールの炭素数が10以下であれば、粒子の分散性がより良好となる。
上記低沸点溶媒と高沸点溶媒を混合して用いてもよい。
溶媒の使用量は、分散体の全質量に対して1質量%以上99質量%以下が好ましく、10質量%以上95質量%以下が好ましい。さらに好ましくは、塗布方法に応じて選択する。
例えば、本実施形態の分散体をインクジェット印刷に適用する場合、溶媒の含有量は、分散体の全質量に対して40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。溶媒の含有量が99質量%以下であることにより、塗布膜の膜厚が十分に厚くなり、焼成処理によって導電性の高い配線を形成することができる。溶媒の含有量が40質量%以上であることにより、分散剤の粘度をインクジェット印刷に適した範囲に調整することができ、更に80質量%以上とすることにより、インクジェット印刷機の印刷ヘッドの目詰まりが効果的に防止される。
本実施形態の分散体をスクリーン印刷に適用する場合、溶媒の含有量は分散体の全質量に対して1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の分散体を反転印刷に適用する場合、溶媒の含有量は分散体の全質量に対して40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
《分散体の製造方法》
分散体は、前述の粒子と、不揮発性有機物と、任意的に配合されるその他の成分とを、それぞれ所定の割合で混合し、分散処理することにより、調製することができる。上記分散処理は、例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、2本ロール法、アトライター、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル等の適宜の装置を用いて行うことができる。
本実施形態の分散体を調製する際、前述の粒子及び不揮発性有機物、並びに任意的に配合される溶媒、表面エネルギー調整剤、及びその他の成分の濃度を適宜に設定することによって、得られる分散体の粘度及び表面エネルギーを調整することができる。
本実施形態の分散体の25℃における粘度は、用途によって適切に選ぶことが好ましい。コーン・プレート型回転粘度計を用いて測定したずり速度が1×10−1−1〜1×10−1である領域において、分散体をスクリーン印刷に用いる場合、分散体の25℃における粘度は1cp以上であることが好ましく、10cp以上であることがより好ましく、100cp以上であることがさらに好ましく、1,000,000cp以下であることが好ましく、100,000cp以下であることがより好ましく、1,000cp以下であることがさらに好ましい。分散体をグラビアオフセット印刷に用いる場合、分散体の25℃における粘度1cp以上であることが好ましく、10cp以上であることがより好ましく、100cp以上であることがさらに好ましく、100,000cp以下であることが好ましく、10,000cp以下であることがより好ましく、1,000cp以下であることがさらに好ましい。分散体を反転印刷に用いる場合、分散体の25℃における粘度0.1cp以上であることが好ましく、1cp以上であることがより好ましく、5cp以上であることがさらに好ましく、1,000cp以下であることが好ましく、100cp以下であることがさらに好ましく、50cp以下であることがさらに好ましい。分散体を凸版印刷に用いる場合、分散体の25℃における粘度1cp以上であることが好ましく、10cp以上であることがより好ましく、100cp以上であることがさらに好ましく、100,000cp以下であることが好ましく、10,000cp以下であることがより好ましく、1,000cp以下であることがさらに好ましい。上記範囲の粘度であれば、印刷性がより良好となる。
本実施形態の分散体の25℃における表面自由エネルギーに特に制限はないが、好ましくは40mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、更に好ましくは30mN/m以下である。反転印刷において、分散体のブランケットに対する濡れ性の点から、分散体の25℃における表面自由エネルギーは40mN/m以下が好ましい。表面自由エネルギーは接触角計を用いて測定することができる。
《プリント配線基板製造用基板、及びその製造方法》
本実施形態のプリント配線基板製造用基板は、基材と、前記基材上に形成された膜(以下「塗布膜」ともいう。)とを有する。上記膜は、金属及び/又は金属酸化物を含む粒子と、不揮発性有機物とを含有し、上記粒子の一次粒子径が5nm以上100nm未満であり、上記不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、上記不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上55質量%以下である。本実施形態のプリント配線基板製造用基板は、例えば、本実施形態の分散体を基板上に塗布(印刷)し、乾燥させることにより製造することができる。本実施形態の分散を所望のパターンで印刷することによって、後の焼成処理によって所望の導電性パターンを有するプリント配線基板を製造することができる。
[基材]
基材としては、一般的なプリント基板の他に、樹脂基材、ガラス基材、シリコンウェハ、及び紙基材等が挙げられる。一般的なプリント基板としては、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン基板、アルミナ基板、及び低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板等が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、シクロオレフィンポリマー(COP)、及びシリコーン樹脂等から構成される基材を用いることができる。特に、PET及びPENは、低コストで入手可能であり、事業の観点から有意であり、好ましい。
基材の荷重たわみ温度は、300℃以下であることが好ましく、275℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。荷重たわみ温度が300℃以下の基材は、低コストで入手可能であり、事業の観点から有意であり、好ましい。
基材の厚さは、例えば1μm〜10mmとすることができ、好ましくは25μm〜250μmである。基材の厚さが250μm以下であれば、作製される電子デバイスを、軽量化、省スペース化、及びフレキシブル化できるため好ましい。
[基材の前処理]
塗布膜を形成する前に、基材を洗浄してもよい。基材の洗浄方法として、例えば、薬液を用いる湿式処理;コロナ放電、プラズマ、UV、オゾン等を用いる乾式処理等を用いることができる。
形成された塗布膜が溶媒を含有する場合には、塗布膜から、好ましくは溶媒を除去する。この溶媒の除去は、塗布後の膜を、例えば20〜150℃において、例えば1分〜2時間静置する方法によることができる。この場合の加熱方法としては、例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥等の手法を用いることができる。
[塗布膜形成方法]
本実施形態の分散体を用いて上記のような基材上に塗布膜を形成する方法は、特に制限されない。例えば、スクリーン印刷、スプレーコート、スピンコート、スリットコート、ダイコート、バーコート、ナイフコート、オフセット印刷、反転印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷等の方法を用いることができる。これらの方法のうち、より高精細のパターニングを行うことができるという観点から、反転印刷が好ましい。
(反転印刷)
本実施形態の分散体は、反転印刷によって基板上にパターン状の塗布膜を形成するために、特に好適に用いることができる。
反転印刷法においては、先ず、ブランケットの表面に均一な厚みの塗布膜を形成する。
ブランケットの表面は、通常、シリコーンゴムから構成されている。反転印刷においては、このシリコーンゴムに対して分散体が良好に付着し、均一な塗布膜が形成される必要がある。そのため、本実施形態の分散体の25℃における粘度を1cp以上10,000cp以下とし、25℃における表面自由エネルギーを40mN/m以下とすることが望ましい。
上記のようにして表面に均一な分散体塗膜が形成されたブランケットの表面を、次いで、凸版に接触させて押圧し、該凸版の凸部の表面にブランケット表面上に形成された塗布膜の一部を付着させて転移させる。これにより、ブランケットの表面に残った塗布膜には、所望の印刷パターンが形成される。
そして、この状態のブランケットを被印刷基材の表面に押圧し、該ブランケット上に残ったパターン状の塗布膜を転写することにより、被印刷基材上にパターン状の塗布膜を形成することができる。
[塗布膜の膜厚]
塗布膜の膜厚は、塗布方法に応じて選択することができる。
例えば、インクジェット印刷を使用する場合の塗布膜の膜厚は、溶媒除去後の値として、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
スクリーン印刷を使用する場合には、溶媒除去後の塗布膜厚値として、1〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
反転印刷を使用する場合には、溶媒除去後の塗布膜厚値として、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。
塗布膜の表面粗さ(Ra)としては、12nm以下であることが好ましく、7nm以下であることがより好ましく、4nm以下であることが更に好ましい。Raが12nm以下であれば、反転印刷時に塗布膜が除去版と密着し、十分な除去性が得られる傾向がある。Raが7nm以下であれば、得られる導電性膜においても平坦な膜表面が維持される傾向がある。Raが4nm以下であれば、焼成ムラが非常に小さく、均一な電気特性が得られる傾向がある。
上記のようにして形成された塗布膜が溶媒を含有する場合には、次いで該塗布膜から、好ましくは溶媒を除去する。この溶媒の除去は、塗布後の膜を、例えば20〜150℃において、例えば1分〜2時間静置する方法によることができる。この場合の加熱方法としては、例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥等の手法を用いることができる。
[塗布膜]
本実施形態の分散体を塗布することにより形成される塗布膜は、金属又は金属酸化物を含む粒子と、不揮発性有機物とを含み、塗布膜中の不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上である。
この膜は、塗布に使用した分散体が含有する成分のうち、溶媒以外の成分を、好ましくはその化学構造及び組成比を維持したまま含有する。従って、上記膜の構成成分については、分散体の構成成分として上述したものが好ましくはそのまま当てはまる。
本実施形態の塗布膜は、その機能を損なうことなく曲げ可能、すなわちフレキシブルであることが好ましい。曲げ可能な曲率半径としては、1,000mm以下であることが好ましく、500mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることが更に好ましい。1,000mm以下であれば人間の胴体に装着することが可能となり、500mm以下であれば人間の脚部に装着することが可能となり、100mm以下であれば人間の上肢に装着することが可能となる他、ロールトゥロールの製造方法を適用することが可能となる。曲率半径の下限値は、例えば、0.1mm以上とすることができる。
《プリント配線基板、及びその製造方法》
本実施形態の分散体によって形成された塗布膜を有するプリント配線基板製造用基板を焼成することによって、導電性膜を有する導電配線を形成することができる。
[焼成]
上記のようにして形成された塗布膜を、次いで加熱して焼成処理を施すことにより、上記基材上に導電性膜を形成することができる。
焼成方法としては、塗布膜中に含有される粒子が融着して、金属粒子の焼結膜を形成することができる方法であれば特に制限されない。
焼成は、例えば、焼成炉等の熱媒体を用いる方法によって行ってもよいし、プラズマ、紫外線、真空紫外線、電子線、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニール、レーザー等を用いて行ってもよい。これらのうち、プラズマ処理、フラッシュランプアニール処理、又は熱媒体との接触処理によって行われることが好ましい。
特に、フラッシュランプアニール処理及びプラズマ処理は、無機物は強く加熱するが有機物はあまり加熱しないという特徴を有している。そのためこれらの方法による加熱は、粒子のみを加熱し、基材には熱ダメージを与えない。従って、PET等の安価であるが耐熱性の乏しい樹脂を基材に用いることができ、好ましい。特にプラズマ処理は、無機物表面のみが加熱される傾向があり、伝熱による基材へのダメージも少ないため、より好ましい。
(加熱処理による導電性膜形成)
本実施の形態における加熱処理とは、具体的には、試料を高温の媒体と接触させることによって加熱する処理である。
高温の媒体に特に指定はないが、例えば、空気、不活性ガス、還元性ガス、液体、金属、セラミック、樹脂等を用いることができる。
媒体を加熱する熱源に特に指定はないが、例えば、遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター、抵抗加熱ヒーター、マイクロ波ヒーター、燃焼加熱ヒーター等を用いることができる。遠赤外線ヒーターとしては、例えば、ハロゲンヒーター、石英管ヒーター、カーボンヒーター、シーズヒーター、メタルヒーター等を用いることができる。近赤外線ヒーターとしては、例えば、ハロゲンヒーターを用いることができる。抵抗加熱ヒーターとしては、例えば、メタルヒーター、セラミックヒーターを用いることができる。メタルヒーターの発熱体としては、例えば、鉄−クロム−アルミ系合金、ニッケル−クロム系合金等の合金及び白金、モリブデン、タンタル、タングステン等の金属を用いることができる。セラミックヒーターの発熱体としては、例えば、炭化ケイ素、モリブデン−シリサイト、カーボン等を用いることができる。マイクロ波ヒーターとは、100kHzから10GHz程度の電磁波によって対象物を加熱する方式のヒーターである。燃焼加熱ヒーターとは、重油、ガス等の可燃物を燃焼した際の燃焼熱によって対象物を加熱する方式のヒーターである。
加熱処理温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。加熱処理温度が180℃以下であれば、PEN、PET等の耐熱性の低いが安価な汎用樹脂基板を用いることができる。また、加熱処理温度は、20度以上であることが好ましく、30度以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。20度以上であれば、熱振動によって粒子が塗布膜中を移動し、粒子同士が接触することで体積抵抗率を下げることができる。30℃以上であれば、塗布膜中の有機物の軟化により粒子の塗布膜中での移動が高速化し、さらに有機物が軟化すると、粒子と有機物の比重差によって粒子が沈降し、粒子の層と有機物の層に分離し、粒子間に絶縁性の有機物が入りにくくなるため、より体積抵抗率を下げることができる。50℃以上であれば、粒子同士の焼結が進行するためさらに体積抵抗を下げることができる。
加熱処理時間は、10秒以上であることが好ましく、1分以上であることがよりこの好ましく、10分以上であることがさらに好ましい。加熱処理時間が10秒以上であれば、粒子同士を接触させることによって焼成膜の抵抗を下げることができ、1分以上であれば粒子自体が低抵抗化するためより焼成膜の抵抗を下げることができ、10分以上であれば粒子同士の焼結が進むことでさらに焼成膜の抵抗を下げることができる。また、加熱焼成時間は4時間以下であることが、基材への熱ダメージ低減の観点から好ましい。
加熱処理の際の雰囲気には特に指定はないが、不活性雰囲気であることが好ましく、還元性雰囲気であることがより好ましい。雰囲気は、例えば、焼成炉内に適当なガスを流すことにより、制御することができる。不活性雰囲気は不活性ガスを流すことで形成することができる。不活性ガスとしては、具田的には、真空、窒素、アルゴン、ヘリウム等の希ガスを用いることができる。還元性雰囲気は還元性ガスを流すことで形成することができる。還元性ガスとしては、具体的には、水素、一酸化炭素、硫化水素、ホルムアルデヒド等を用いることができる。特に水素は毒性がないため好ましい。不活性ガスと還元性ガスを混合して還元性雰囲気を形成することもできる。例えば、不活性ガスと水素を混合する場合、水素含有量は0.1質量%以上4質量%以下が好ましい。0.1質量%より少量では十分な還元性が得られず、4質量%以下であれば可燃性を示さないため安全に使用できる。
(赤外線ランプアニールによる加熱)
赤外線ランプアニールとは、具体的には、試料に対して赤外線を照射することで直接試料を加熱する方法である。
赤外線源には特に指定はないが、例えば、ハロゲンヒーター、石英管ヒーター、カーボンヒーター、シーズヒーター、メタルヒーター等を用いることができる。
赤外線ランプアニールの際の雰囲気には特に指定はないが、不活性雰囲気であることが好ましく、還元性雰囲気であることがより好ましい。雰囲気は、例えば、焼成炉内に適当なガスを流すことにより、制御することができる。不活性雰囲気は不活性ガスを流すことで形成することができる。不活性ガスとしては、具田的には、真空、窒素、アルゴン、ヘリウム等の希ガスを用いることができる。還元性雰囲気は還元性ガスを流すことで形成することができる。還元性ガスとしては、具体的には、水素、一酸化炭素、硫化水素、ホルムアルデヒド等を用いることができる。特に水素は毒性がないため好ましい。不活性ガスと還元性ガスを混合して還元性雰囲気を形成することもできる。例えば、不活性ガスと水素を混合する場合、水素含有量は0.1質量%以上4質量%以下が好ましい。0.1質量%より少量では十分な還元性が得られず、4質量%以下であれば可燃性を示さないため安全に使用できる。
(プラズマ処理による加熱)
プラズマ処理とは、具体的には、試料を設置した空間にプラズマを発生させることにより、上記試料をプラズマに暴露させる処理である。
プラズマの発生方法に特に指定はないが、例えば、直流アーク放電、高周波電磁場、マイクロ波等を利用する方法を用いることができる。特に、マイクロ波を利用する方法は、低温でプラズマを発生することができるから、基材に与える熱ダメージが小さいため、好ましい。マイクロ波とは、具体的には、周波数が300MHz以上3THz以下の電磁波のことをいう。マイクロ波の中心周波数は、2GHz以上4GHz以下であることが好ましく、2.4GHz以上2.5GHz以下であることが更に好ましい。
マイクロ波プラズマを発生させる装置は、例えば、マイクロ波発振器、伝送回路、アンテナ、及び放電容器から構成される。これらに加え、必要に応じて磁場発生装置を、更に用いてもよい。この装置において、プラズマは、上記放電容器内に発生する。マイクロ波発振器としては、例えば、クライストロン、マグネトロン、ジャイロトロン等を用いることができる。伝送回路としては、例えば、矩形導波管、円形導波管、同軸線路等を用いることができる。伝送回路の途中に、パワーモニタ、及び反射電力を吸収するダミーロードを取り付けてもよい。装置の構造としては、例えば、上部に伝送線路を有し、下部に放電容器を有し、該伝送線路と該放電容器とが、石英窓を介して接続され、試料台が該放電容器下部に設置されていることが好ましい。
マイクロ波の出力に特に指定はないが、100W以上10kW以下の出力であることが好ましい。マイクロ波の出力は、処理中一定でもよいし、途中で変化させてもよい。
試料台の温度に特に指定はないが、30℃以上150℃以下であることが好ましい。この温度が150℃以下であれば、基材として、PET等の耐熱性の低い汎用樹脂基板を用いることができる。30℃以上であれば緻密な導電性膜が得られる。
プラズマ処理時の周囲雰囲気に特に指定はないが、還元性雰囲気であることが好ましい。周囲雰囲気は、例えば、放電容器内に適当なガスを流すことにより、制御することができる。ガスの流量に特に指定はないが、10SCCM以上1,000SCCM以下であることが好ましく、50SCCM以上5,600SCCM以下であることがより好ましく、100SCCM以上400SCCM以下であることが更に好ましい。特に、不活性ガスに少量の水素を混合して成る混合ガスを流すことによって還元性雰囲気を形成することが好ましい。この混合ガス中の不活性ガスとしては、例えば、窒素;ヘリウム、アルゴン等の希ガス等を用いることができる。混合ガス中の水素の含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上6質量%以下である。
放電容器内の圧力は、大気圧でもよいし、減圧されていてもよい。
プラズマ処理時間に特に指定はないが、10秒以上30分以下であることが好ましく、30秒以上10分以下がより好ましく、1分以上5分以下が更に好ましい。
(フラッシュランプアニール処理による加熱)
フラッシュランプアニール処理とは、試料に対して、エネルギー密度の高い光をパルス照射することにより、該試料を加熱する処理である。
フラッシュランプアニール処理に用いる光源としては、例えば、キセノンランプ、クリプトンランプ等を用いることができる。
光源の波長は、可視光領域であれば、透明樹脂基板へ熱ダメージを与えることなく塗布膜を焼成することができるため、好ましい。光源の波長は、カラーフィルタを介することにより、容易に制御することができる。
パルス当たりのエネルギーとしては、特に指定はないが、50J以上3,000J以下であることが好ましく、100J以上2,000J以下であることがより好ましく、150J以上1,500J以下であることが更に好ましい。
パルス時間には特に指定はないが、10μ秒以上100m秒以下であることが好ましく、50μ秒以上10m秒以下であることがより好ましく、100μ秒以上5m秒以下であることが更に好ましい。ここで、パルス時間とは、パルス光照射のためにランプに電力を投入した時刻から、パルス光消灯のためにランプへの電力供給を停止した時刻までの時間をいう。
試料に対し、複数回パルス光を照射してもよい。パルス間隔に特に指定はないが、10μ秒以上1秒以下であることが好ましい。ここで、パルス間隔とは、パルス光の照射のためにランプに電力を投入した時刻から、次のパルス光の照射のためにランプに電力を投入した時刻までの時間をいう。
試料台の温度に特に指定はないが、30℃以上150℃以下であることが好ましい。この温度が150℃以下であれば、基材として、PET等の耐熱性の低い汎用樹脂基板を用いることができる。30℃以上であれば、緻密な導電性膜が得られる。
フラッシュランプアニール処理時には、容器内にガスを流してもよい。この場合、ガス流によって試料が冷却されるため、基材の熱ダメージを低減することができる。
フラッシュランプアニール処理時の周囲雰囲気に特に指定はないが、還元性雰囲気であることが好ましい。この還元性雰囲気の具体例及びガス流量については、プラズマ処理時の還元性雰囲気について上記したところと同様である。
フラッシュランプアニール処理の後に、更に、加圧処理を行ってもよい。フラッシュランプアニール処理後に試料を加圧することによって、形成された導電性膜をより緻密にすることができるため、好ましい。加圧方法としては、例えば、ローラープレス、平板プレス等を用いることができる。特にローラープレスは大面積のプレスに向いているため、好ましい。
[本実施形態の分散体を用いたプリント配線基板の製造方法の利点]
本実施形態の分散体は、基材上に本実施形態の分散体を所望のパターンに直接描画してパターン状の塗布膜及び導電性膜を形成することができる。そのため、従来のフォトレジストを用いる手法と比較して、生産性を著しく向上させることができる。
更に、本実施形態の分散体を用いることにより、従来のフォトリソグラフィーでは作製が困難であった、直径7インチ以上の導電性膜積層体を容易に製造することができる。
[導電性膜]
上記方法によって得られた導電性膜の表面粗さ(Ra)は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。Raが20nm以下であれば、局所的に膜厚の薄い場所が少なく、断線による不良を低減することができる。Raが10nm以下であれば、該導電性膜上に他の膜又は素子を更に積層する際に、欠陥が生じ難い傾向がある。Raが5nm以下であれば、該導電性膜上に更に積層する他の材料の結晶性を向上させることができるから、例えば、薄膜トランジスタの電極の形成に好適に用いることができる。
本実施形態の導線性膜の抵抗率は、200μΩcm以下であることが好ましく、100μΩcm以下であることがより好ましく、30μΩcm以下であることが更に好ましい。
本実施形態の導電性膜は、その機能を損なうことなく曲げ可能、すなわちフレキシブルであることが好ましい。曲げ可能な曲率半径としては、1,000mm以下であることが好ましく、500mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることが更に好ましい。1,000mm以下であれば人間の胴体に装着することが可能となり、500mm以下であれば人間の脚部に装着することが可能であり、100mm以下であれば人間の上肢に装着することが可能となる他、ロールトゥロールの製造方法を適用することが可能となる。曲率半径の下限値は、例えば、0.1mm以上とすることができる。
《本実施形態の分散体の適用例》
本実施形態の分散体によれば、微細化されたパターンを有する平滑性の高い導電性膜を得ることができる。このような導電性膜は、例えば、プリント基板、フレキシブルプリント基板、電磁波シールドシート、半導体デバイス(薄膜トランジスタ、ダイオード、強誘電体メモリ等)、メタルメッシュ透明導電膜等に好適に利用することができる。
本実施形態の分散体を、メタルメッシュ透明導電膜に適用する場合について説明する。メタルメッシュ透明導電膜とは、透明基材上に、幅50μm以下の金属配線がメッシュ状に形成されたものをいう。このメタルメッシュ透明導電膜は、見かけ上透明でありながら表面が電気的に低抵抗であるという特徴を有している。幅50μm以下の構造体は視認が困難であるため、メタルメッシュ透明導電膜の金属配線は基材上に存在しないかのように見える。更に、金属配線の存在しない領域(開口部)は光を透過する。そのため、メタルメッシュ透明導電膜は透明体として視認される。
本実施形態の分散体は、このメタルメッシュ透明導電膜における配線を形成する材料として、好適に利用することができる。
本実施形態の分散体をメタルメッシュ透明導電膜の配線形成に適用する場合、メタルメッシュ透明導電膜の開口部の面積が該導電膜の表面全体の面積に占める割合は、50面積%以上であることが好ましく、80面積%以上であることがより好ましく、90面積%以上であることが更に好ましい。この割合が50面積%以上であれば、該メタルメッシュ透明導電膜は透明体として認識され;80面積%以上であれば、該メタルメッシュ透明導電膜をディスプレイに用いた際に、環境光の反射量が少なくなり、屋外でも画面を十分認識できるようになり;90面積%以上であれば、該メタルメッシュ透明導電膜をディスプレイに用いた際に、ギラツキを低減することができる。配線の幅は50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。この幅が50μm以下であれば、該メタルメッシュ透明導電膜が透明体として認識され;10μm以下であれば、タッチパネル用透明導電膜に用いるのに十分な光線透過率とメッシュ密度とを得ることができ;2μm以下であれば、メッシュ上に均一性の高い電界を形成することができる。
本実施形態の分散体は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、及び電子ペーパーのコモン電極;有機EL照明の光取り出し電極;等におけるメタルメッシュ透明導電膜の配線を形成するために、好適に利用できる。
次に、本実施形態の分散体を薄膜トランジスタに適用する場合について説明する。薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体、ソース電極、及びドレイン電極が積層されて成る電子デバイスである。本実施形態の分散体は、ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を形成する材料として、好適に利用することができる。ソース電極−ドレイン電極間距離(チャネル長)は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。チャネル長が小さいほど、薄膜トランジスタの動作周波数が向上する。
[比較例1]
水800g及び1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)400gから成る混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)80gを溶解し、ヒドラジン(和光純薬製)24gを加えて攪拌した後、遠心分離を用いて上澄みと沈殿物とに分離した。得られた沈殿物(1)2.8gに、PEG−SH800(商品名、アルドリッチ社製)0.4g及び溶媒としてn−エタノール(和光純薬製)6.6gを加え、ホモジナイザーを用いて分散することにより、銅(I)酸化物粒子を含有する比較例1の分散体を得た。
[比較例2、実施例5〜9、並びに参考例1〜4及び10
沈殿物(1)2.8gに加える有機物の種類及び量、並びに溶媒の種類及び量を、それぞれ表1に記載のとおりに変更した他は上記比較例と同様の操作により、銅(I)酸化物粒子をそれぞれ含有する比較例2、実施例5〜9、並びに参考例1〜4及び10の分散体を得た。
[測定及び評価方法]
(1)塗布膜の形成
上記で得られた分散体を用いて、以下に示す手順の反転印刷により、L/S=5μm/5μmパターンをPENフィルム(帝人デュポンフィルム社製)上に形成した。
ブランケットの離形面となるPDMS平滑面にバーコーターによりドライ膜厚約400nmになるように分散体を均一に塗布し、約1分間自然乾燥させて塗布膜を得た。その後、除去板を、ブランケット上の分散体塗布膜に押し付け、次いで離して、不要部分の塗布膜を除去した。続いて、PENフィルムをブランケット上に押し付けることにより、ブランケット上に形成されたパターンをPENフィルム上に転写し、プリント配線基板製造用基板を製造した。
(2)微細印刷性の評価
上記(1)で得たパターンの形状を、光学顕微鏡を用いて観察し、以下の基準により評価した。
L/S=5μm/5μmパターンが形成できていた場合:◎(微細印刷性良好)
L/S=5μm/5μmパターンがおおむね形成されているが、パターンのエッジが凸凹している場合:○
L/S=5μm/5μmパターンに、除去不良又は転写不良があった場合:×(微細印刷性不良)
(3)不揮発性有機物の窒素含有量の測定
上記(1)で得たプリント配線基板製造用基板上の塗布膜の有機成分を元素分析することにより、不揮発性有機物の窒素含有量(質量%)を測定した。
(4)導電性膜の形成
遠赤外線焼成炉を用い、焼成炉内にプロセスガス(水素3体積%、窒素97体積%)を流量5L/minで導入しながら、セラミックヒーターで、上記(1)で得たパターンを180℃に加熱した。加熱は10時間行った。
(5)導電性膜の体積抵抗率
上記(3)で得た導電性膜の体積抵抗率を、三菱化学製の低抵抗率計ロレスターGPを用いて測定した。
比較例1及び2、実施例5〜9、並びに参考例1〜4及び10の分散体の各種評価結果を、表1に合わせて示す。
なお、表中の名称はそれぞれ以下の化合物を指す。
PEG−SH800:数平均分子量800のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(アルドリッチ社製)
BYK−145:Disperbyk−145、顔料親和性基を有する高分子量共重合物のリン酸エステル塩(商品名、ビックケミー社製)
BYK−118:Disperbyk−118、高極性、各種顔料親和性基を有する直鎖ポリマー(商品名、ビックケミー社製)
PVP:ポリビニルピロリドン(アルドリッチ社製、製品番号PVP10−100G)
CEP:シアノエチルプルラン(信越化学工業社製、シアノレジンCR−S)
NC1:固形分70質量%のニトロセルロースのイソプロパノール膨潤品(稲畑産業社製、製品番号SL−1)
NC2:固形分70質量%のニトロセルロースのイソプロパノール膨潤品(稲畑産業社製、製品番号DLX8−13)
ひまし油:ひまし油(和光純薬工業社製、製品番号034−01586)
酒石酸ジブチル:L−(+)−酒石酸ジブチル(東京化成工業社製、製品番号T0005)
フタル酸ジアミル:フタル酸ジアミル(東京化成工業社製、製品番号P0291)
マレイン酸ジオクチル:マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)(東京化成工業社製、製品番号M0011)
エタノール:エタノール(和光純薬工業社製、製品番号057−00456)
2−ME:2−メトキシエタノール(和光純薬工業社製、製品番号058−01106)
Figure 0006767818
本発明に係る分散体は、塗布及び焼成処理によって微細な配線を得ることができる。そのため、該分散体は、プリント配線板、電子デバイス等の製造に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 酸化銅を含む粒子と、
    不揮発性有機物と
    を含有する分散体であって、
    前記粒子の一次粒子径が5nm以上100nm未満であり、
    前記不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、前記不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上55質量%以下であり、
    前記分散体は、前記不揮発性有機物の質量に対して1質量%以上60質量%以下の可塑剤を更に含む、分散体。
  2. 前記窒素含有有機物は、硝酸エステル構造、ニトロ基、シアノ基、及び窒素を含む複素環構造から選択される少なくとも一つを有する、請求項1に記載の分散体。
  3. 前記窒素含有有機物が、アルドース構造を有する、請求項1又は2に記載の分散体。
  4. 基材と、前記基材上に形成された膜とを有する、プリント配線基板製造用基板であって、前記膜は、
    酸化銅を含む粒子と、
    不揮発性有機物と
    を含有し、
    前記粒子の一次粒子径が5nm以上100nm未満であり、
    前記不揮発性有機物は窒素含有有機物を含有し、前記不揮発性有機物の窒素含有量が6質量%以上55質量%以下であり、
    前記膜は、前記不揮発性有機物の質量に対して1質量%以上60質量%以下の可塑剤を更に含む、プリント配線基板製造用基板。
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