JP7193433B2 - 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 - Google Patents
分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7193433B2 JP7193433B2 JP2019168677A JP2019168677A JP7193433B2 JP 7193433 B2 JP7193433 B2 JP 7193433B2 JP 2019168677 A JP2019168677 A JP 2019168677A JP 2019168677 A JP2019168677 A JP 2019168677A JP 7193433 B2 JP7193433 B2 JP 7193433B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mass
- dispersion
- component
- copper
- less
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Description
[1] 銅及び/又は酸化銅と、分散剤と、還元剤と、増粘剤とを含む分散体であって、
前記分散剤が、
1分子あたり水酸基を2つ以上有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第1成分と、
前記第1成分とは異なりかつポリオキシエチレン鎖を有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第2成分とを含む、分散体。
[2] 前記第2成分が、ポリエチレングリコールを含む、上記態様1に記載の分散体。
[3] 前記第1成分が、グリセリン及び/又はジエチレングリコールを含む、上記態様1又は2に記載の分散体。
[4] 前記増粘剤の含有量が、下記式(1):
0.00004≦(増粘剤質量/銅と酸化銅との合計質量)≦0.3 (1)
の範囲である、上記態様1~3のいずれかに記載の分散体。
[5] 前記増粘剤が、アルデヒド基を有する化合物である、上記態様1~4のいずれかに記載の分散体。
[6] 前記還元剤の含有量が、下記式(2):
0.0001≦(還元剤質量/銅と酸化銅との合計質量)≦0.1 (2)
の範囲である、上記態様1~5のいずれかに記載の分散体。
[7] 前記還元剤が、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含む、上記態様1~6のいずれかに記載の分散体。
[8] 銅及び/又は酸化銅、
1分子あたり水酸基を2つ以上有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第1成分と、前記第1成分とは異なりかつポリオキシエチレン鎖を有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第2成分とを含む分散剤、
還元剤、並びに
増粘剤、
を混合することを含む、分散体の製造方法。
[9] 上記態様1~7のいずれかに記載の分散体を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜にレーザ光を照射し、前記基板上に導電性パターンを形成する工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
[10] 上記態様1~7のいずれかに記載の分散体を、所望のパターンで基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成処理して、前記基板上に導電性パターンを形成する工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。
[11] 前記焼成処理が、還元性ガス含有雰囲気下及び温度150℃以上での熱処理である、上記態様10に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
[12] 前記塗布をスクリーン印刷によって行う、上記態様9~11のいずれかに記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
<第一の実施形態>
第一の実施形態は、銅及び/又は酸化銅と、分散剤と、還元剤と、増粘剤とを含む分散体を提供する。一態様において、分散体は、銅及び/又は酸化銅に加えて、銅及び/又は酸化銅以外の金属及び/又は金属酸化物(本開示で、非銅系金属成分ともいう。)とを含む。非銅系金属成分が金属単体である場合の当該金属としては金、銀、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、インジウム、ガリウム、及びゲルマニウムが挙げられ、これらは粒子の形態であってよい。非銅系金属成分が金属酸化物である場合の当該金属酸化物としては酸化金、酸化銀、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化モリブデン、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化クロム、酸化インジウム、酸化ガリウム、及び酸化ゲルマニウムが挙げられ、これらは粒子の形態であってよい。なお本開示では、銅、酸化銅及び非銅系金属成分を総称して、金属成分ということもある。
一態様において、分散体は、銅及び/又は酸化銅を含む。酸化銅は、大気雰囲気下で銅よりも安定である。この観点から、一態様においては酸化銅を単独で用いる(すなわち銅を用いない)ことが好ましい。一方、別の態様においては、クラック抑制等の観点から、銅を単独で、又は銅と酸化銅との両方を用いてよい。
酸化銅の粒子径は1nm以上、100nm以下であることが好ましい。分散安定性の観点から、粒子径は1nm以上であることが好ましく、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上である。また、粒子径が小さいほど焼結が進みやすく、分散体を用いて形成される導電性パターンの抵抗率を小さくできる観点から、粒子径は100nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。酸化銅の粒子径は、例えば後述する酸化銅粒子の製造方法における合成温度の調整によって上記の範囲に制御することができる。なお本開示の粒子径は、キュムラント法で測定される値である。
(1)ポリオール溶剤中に、水と銅アセチルアセトナト錯体を加え、いったん有機銅化合物を加熱溶解させ、次に、反応に必要な水を後添加し、さらに昇温して有機銅の還元温度で加熱還元する方法。
(2)有機銅化合物(銅-N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン錯体)を、ヘキサデシルアミン等の保護材存在下、不活性雰囲気中で、300℃程度の高温で加熱する方法。
(3)水溶液に溶解した銅塩をヒドラジンで還元する方法。
この中では(3)の方法は操作が簡便で、かつ、粒子径の小さい酸化第一銅が得られるので好ましい。
(1)塩化第二銅や硫酸銅の水溶液に水酸化ナトリウムを加えて水酸化銅を生成させた後、加熱する方法。
(2)硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅、水酸化銅等を空気中で600℃の温度に加熱して熱分解する方法。
この中で(1)の方法は粒子径が小さい酸化第二銅が得られるので好ましい。
本実施形態において、銅を用いることはクラック発生を抑制する観点で有利である。粒子径が0.1μm以上100μm以下の銅粒子は、クラック発生抑制の点で特に好ましい。銅粒子は酸化銅との組合せで用いられることが好ましい。その理由として、銅粒子は、酸化銅が還元されて生じる金属銅と同種金属であることから、銅食われ及び金属間化合物の形成が問題にならないこと、及び、最終的に得られる導電性パターンの電気導電性が良好であり、且つ、機械的強度が充分であることが挙げられる。
(1)電解によって製造する方法。
(2)水溶液中の銅化合物を還元抽出する方法。
(3)アトマイズ法で製造する方法。
この中で(1)の方法はコストの観点から安価であるため好ましい。
本実施形態において、分散体は分散剤を含む。分散剤は、1分子あたり水酸基を2つ以上有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第1成分と、該第1成分とは異なり、かつポリオキシエチレン鎖を有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第2成分とを含む。一態様において、分散剤は、第1成分及び第2成分に加えて、追加の分散剤を含んでよい。第1成分、第2成分及び追加の分散剤は、それぞれ、1種又は2種以上の化合物の組合せであってよい。
第1成分としての、1分子あたり水酸基を2つ以上有する化合物としては、ポリオール(例えば、テトラオール、トリオール、ジオール等)が挙げられる。1分子当たりの水酸基の数は、好ましくは2~4、より好ましくは2又は3、特に好ましくは2である。1分子あたり水酸基を2つ以上有する化合物の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~8、更に好ましくは2~6である。具体例としては、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール、ジグリセリンが挙げられる。一態様において、第1成分は、リン含有有機化合物(例えばホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルから選ばれる1種以上)を含む。
第2成分としての、ポリオキシエチレン鎖を有する化合物としては、ポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール等が挙げられる。ポリオキシエチレン鎖を有する化合物の数平均分子量は、100以上1000以下であることが好ましく、より好ましくは150以上600以下であり、さらに好ましくは200以上400以下である。なお本開示において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算で求められる値である。ポリオキシエチレン鎖を有する化合物の末端構造としては水素、水酸基、アルコキシ基、アミン基、及びチオール基が挙げられ、分散体の凝集抑制の観点から水酸基が好ましい。ポリオキシエチレン鎖を有する化合物は、分散体の凝集抑制の観点から、好ましくはポリエチレングリコールである。一態様において、第2成分は、リン含有有機化合物(例えばホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルから選ばれる1種以上)を含む。
分散剤は、第1成分及び第2成分に加えて、追加の分散剤を更に含んでよい。追加の分散剤として、例えば、第1成分及び第2成分に包含されない構造のリン含有有機化合物が挙げられる。リン含有有機化合物は酸化銅に吸着してもよく、この場合立体障害効果により凝集を抑制する。また、リン含有有機化合物は、絶縁領域において電気絶縁性を示す材料である。リン含有有機化合物は、単一分子であってよいし、複数種類の分子の混合物でもよい。
分散剤の第1成分、第2成分、及び追加の分散剤として用いる化合物の各々の酸価(mgKOH/g)は、20以上、130以下が好ましく、30以上、100以下がより好ましい。酸価が上記範囲に入ると分散安定性に優れる。特に平均粒子径が小さい酸化銅を用いる場合、上記範囲の酸価は有効である。例えば、上記範囲の酸化を有する追加の分散剤としては、ビックケミ―社製「DISPERBYK―102」(酸価101)、「DISPERBYK-140」(酸価73)、「DISPERBYK-142」(酸価46)、「DISPERBYK-145」(酸価76)、「DISPERBYK-118」(酸価36)、「DISPERBYK-180(酸価94)等が挙げられる。
本実施形態において、分散体は増粘剤を含む。本開示の増粘剤とは、非銅系金属成分を含まない分散体においては、0.003質量%以上3質量%以下の範囲のいずれかの濃度にて添加された際の分散体の粘度が増粘剤添加前の分散体の粘度の1.1倍以上になる化合物を意味し、非銅系金属成分を含む分散体においては、0.2質量%以上20質量%以下の範囲のいずれかの濃度にて添加された際の分散体の粘度が増粘剤添加前の粘度の1.1倍以上になる化合物を意味する。すなわち、増粘剤は、上記の各々の添加濃度範囲の全てにおいて粘度を1.1倍以上にすることを要するものではなく、上記範囲のいずれかで粘度が1.1倍となればよい。また上記は本開示の増粘剤に包含される化合物の定義の説明であって、本開示の分散体に含まれる増粘剤の量が、分散体の粘度を添加前の1.1倍以上にする量であることを必須とするものではない。本開示で、分散体の粘度は、コーンプレート型回転粘度計を用いて測定される値である。なお増粘剤は、前述の分散剤とは異なる化合物である。すなわち、前述の分散剤に包含される化合物は、増粘剤の上記定義を満たすものであっても増粘剤には包含されない。
一態様において、分散体は還元剤を含む。本開示で、還元剤とは、酸化銅を還元させることができる化合物を意味する。還元剤の具体例としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ナトリウム、カーボン、ヨウ化カリウム、シュウ酸、硫化鉄(II)、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、蟻酸、水素化ホウ酸ナトリウム、亜硫酸塩等が挙げられる。なお還元剤としては、増粘剤としての機能も有する化合物(例えば上記の蟻酸)を用いてもよい。このような化合物の量は、還元剤及び増粘剤の両者に算入される。焼成において、酸化銅、特に酸化第一銅の還元に良好に寄与し、より抵抗の低い銅膜を作製できる観点から、還元剤は、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物であることが最も好ましい。また、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を用いることにより、分散体の分散安定性を良好に維持でき、銅膜の抵抗を低くできる。
一態様において、分散体は、上述の構成成分(すなわち、金属成分、分散剤、還元剤、及び増粘剤)の他に分散媒(溶媒)をさらに含んでよい。なお上述の構成成分に包含される化合物は分散媒には包含されない。例えば、前述の分散剤、還元剤、及び増粘剤の例示の中には分散媒としても機能し得る化合物が含まれ得るが、分散剤、還元剤、及び増粘剤の各々に包含される化合物は分散媒には包含されない。したがって、一態様において、分散剤、還元剤及び/又は増粘剤として、分散媒としても機能する化合物を用いる場合、分散体は分散媒を含まないことができる。
分散体は、前述した各種成分に加えて、有機バインダ、酸化防止剤等の添加剤をさらに含んでもよく、また不純物としての金属、金属酸化物、金属塩及び/又は金属錯体の存在は排除されない。
本発明の第二の実施形態は、銅及び/又は酸化銅と、アルデヒド基を有する化合物と、分散剤と、還元剤とを含む分散体を提供する。銅及び/又は酸化銅、並びに還元剤の具体的態様は、第一の実施形態において前述したのと同様であってよい。
0.003≦(アルデヒド基を有する化合物の質量/銅と酸化銅との合計質量)≦2 (3)
の範囲であることが好ましい。上記質量比は、分散体の増粘効果を良好に得る観点から、0.003以上が好ましく、0.007以上がより好ましく、0.014以上がさらに好ましい。また、焼成処理後の導電膜の抵抗を低くするという観点から、2以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。
本発明の第三の実施形態は、金属成分として本開示の非銅系金属成分を用いかつ銅及び酸化銅は用いない分散体も提供する。一態様においては、このような分散体もまた本開示で言及する利点の1つ以上を発現し得る。
本発明の一態様は、上記の第一~第三の実施形態に関して前述した各成分を混合することを含む分散体の製造方法を提供する。一態様において、分散体の製造方法は、銅及び/又は酸化銅、1分子あたり水酸基を2つ以上有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第1成分と、該第1成分とは異なりかつポリオキシエチレン鎖を有する化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である第2成分とを含む分散剤、還元剤、並びに増粘剤、を混合することを含む。
本発明の一態様は、本開示の分散体を用いる、導電性パターン付構造体の製造方法を提供する。以下、当該方法の各構成を例示するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
本工程では、分散体を基板上の一部又は全部の領域に塗布して塗膜を形成する。分散体の塗布方法は特に制限されず、エアロゾル法、スクリーン印刷、凹版ダイレクト印刷、凹版オフセット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷法、及びディスペンサー描画法等を用いることができる。塗布法としては、ダイコート、スピンコート、スリットコート、バーコート、ナイフコート、スプレーコート、ディツプコート等の方法を用いることができる。印刷性の点において、本実施形態の分散体はスクリーン印刷に適していることから、スクリーン印刷による塗布が好適に用いられる。
本実施形態で用いられる基板は、塗膜を形成する表面を有するものであって、板形状を有していてもよく、立体物であってもよい。本開示で、基板とは、配線パターンを形成するための回路基板シートの基板材料、又は配線付き筐体の筐体材料等を意味する。筐体の一例としては、携帯電話端末、スマートフォン、スマートグラス、テレビ、パーソナルコンピュータ等の電気機器の筐体が挙げられる。また、筐体の他の例としては、自動車分野では、ダッシュボード、インストルメントパネル、ハンドル、シャーシ等が挙げられる。基板は、特に限定されず、無機材料若しくは有機材料又はこれらの組合せで構成されてよい。
本工程では、塗膜を焼成処理して、基板上に導電性パターンを形成する。導電性パターンの形成方法としては、
1)基板上にパターン状に形成された塗膜を焼成する方法、及び
2)基板上の全体に形成された塗膜に対してパターン状のレーザー描画をすることによって描画部分の塗膜を焼成し、所望のパターンを作製する方法、
が挙げられる。1)及び2)のいずれの方法においても、塗膜由来の導電性パターンが基板側に残るため、基板と導電性パターンとの良好な密着性を実現できる。一態様において、導電性パターンは配線であり、配線幅は0.5μm以上、10000μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上、1000μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上、500μm以下である。また一態様において、導電性パターンはメッシュ状(例えば格子状)に形成されていて良い。メッシュ状の導電性パターンは、光の透過率が高く、一態様においては透明であることができ好ましい。
2)の方法において、焼成処理としては、低抵抗化の観点から、還元性ガスを含む雰囲気下で150℃以上の熱処理行うことが好ましい。
焼成炉を用いて行う焼成方法では、酸化銅を還元して銅にし、銅を焼結させるために、例えば100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上の熱で塗膜を焼成する。
プラズマ焼成法は、焼成炉を用いる方法と比較し、より低い温度での処理が可能であり、耐熱性の低い樹脂フィルムを基材とする場合の焼成法として、よりよい方法の一つである。またプラズマ焼成法によれば、プラズマによってパターン表面の有機物、酸化膜等の除去が可能であるため、良好なハンダ付け性を確保できるという利点もある。具体的には、還元性ガス、又は還元性ガスと不活性ガスとの混合ガスをチャンバ内に流し、マイクロ波によりプラズマを発生させ、これにより生成する活性種を、還元又は焼結に必要な加熱源として、さらには分散剤等に含まれる有機物の分解に利用して、導電性パターンを得る。
光焼成法では、光源としてキセノン等の放電管を用いたフラッシュ光方式又はレーザ光方式が適用可能である。これらの方法は強度の大きい光を短時間露光し、基板上に塗布した分散体の温度を短時間で高温に上昇させ焼成する方法で、酸化銅の還元、銅粒子の焼結、これらの一体化、及び有機成分の分解を行い、導電膜を形成する方法である。焼成時間がごく短時間であるため基板へのダメージが少ない方法であり、耐熱性の低い樹脂フィルム基板への適用が可能である。光焼成法におけるレーザ照射によれば、塗膜へのレーザ照射によって、焼成とパターニングとを一度に行うことができる。
本開示の分散体を用いて作製された導電性パターン付構造体は、ハンダ付け性を悪化させる成分(特に分散剤及び分散媒)が、焼成処理の工程で分解しているため、導電性パターンに被接合体(例えば、電子部品等)をハンダ付けするとき、溶融ハンダがのりやすいという利点がある。さらに、典型的な態様において、本開示の分散体から形成される導電性パターンは空壁を有する。これにより、ハンダが導電性パターン中に浸入できるため、ハンダ密着性が良好であり好ましい。なお本開示で、ハンダとは、鉛と錫とを主成分とする合金、及び鉛を含まない鉛フリーハンダを包含する。例えば、グレインサイズが1μm以上、10μm以下の銅粒子を含む分散体を用いる場合、錫を含み、グレインサイズが1μm以上、5μm以下であるハンダを用いることが、密着性向上の点で特に好ましい。
ソルダペースト(ハンダ層)を塗布した後、その一部に、電子部品の被接合部を接触させた状態になるように電子部品を導電性基板上に載置する。その後、電子部品が載置された導電性基板を、リフロー炉に通して加熱して、導電性パターン領域の一部(ランド等)及び電子部品の被接合部をハンダ付けする。図1は、本実施形態に係るハンダ層が形成された導電性パターン付構造体の上面図である。
[ヒドラジン定量方法]
標準添加法によりヒドラジンの定量を行った。
蒸留水(共栄製薬株式会社製)1890g、1,2-プロピレングリコール(関東化学株式会社製)874gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(関東化学株式会社製)202gを溶かし、外部温調器によって液温を-5℃にした。得られた溶液にヒドラジン一水和物(東京化成工業株式会社製)59gを20分間かけて加え、窒素雰囲気下で30分間攪拌した後、外部温調器によって液温を25℃にし、90分間攪拌した。攪拌後、得られた分散液を遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物98gに、ジエチレングリコール(メルク社製)160g、メトキシポリエチレングリコール350(メルク社製)30gを加え、ホモジナイザーを用いて分散した。分散液にベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)9g加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)297gを得た。
実施例1と同様の操作によって得られた沈殿物98gに、グリセリン(関東化学株式会社製)160g、メトキシポリエチレングリコール350(メルク社製)30gを加え、ホモジナイザーを用いて分散した。分散液にベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)9g加え、ホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)297gを得た。
実施例1と同様の操作によって得られた沈殿物98gに、ジエチレングリコール(メルク社製)169g、メトキシポリエチレングリコール350(メルク社製)30gを加え、ホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)297gを得た。
実施例1と同様の操作によって得られた沈殿物98gに、エタノール(関東化学株式会社製)160g、メトキシポリエチレングリコール350(メルク社製)30gを加え、ホモジナイザーを用いて分散した。分散液にヒドロキシエチルセルロース(東京化成工業株式会社製)9g加え、ホモジナイザーを用いて分散し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)297gを得た。
酸化銅インクの分散安定性は、以下の通りに評価した。
A・・・沈殿が生じない期間が20日以上
B・・・沈殿が生じない期間が5日以上20日未満
C・・・沈殿が生じない期間が5日未満
酸化銅インクの粘度(単位;mPa・s)は、東機産業株式会社製のTV-33形粘度計・コーンプレートタイプを用いて測定した。実施例1、比較例1においては、ずり速度2×102s-1で測定を行った。実施例2においては、ずり速度1×102s-1で測定を行った。
酸化銅インクをポリイミドフィルム上にアプリケータを用いて90~120μm厚みの膜を作製し、IR炉で、窒素水素混合ガス(水素濃度2.4%)下、300℃で30分間加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。導電膜の体積抵抗率(単位;10-6Ω・cm)は、三菱化学製の低抵抗率計ロレスターGPを用いて測定した。酸化銅インクと塗膜の性能結果を表1及び2に示す。導電膜のハンダ付け試験を行った。
酸化銅インクを、紙基板上にスクリーン印刷法により、ラインパターンにて印刷し、スクリーン印刷の連続印刷性を評価した。連続印刷性は、紙基板上へのスクリーン印刷を連続して複数回行い、スクリーン印刷が連続的に行える印刷回数が5回以上である場合をAと、スクリーン印刷が連続的に行える印刷回数が5回未満である場合をBと、評価した。
ハンダ付け試験は、導電膜が形成された紙基板に、フラックス入り糸ハンダ(錫60質量%鉛40質量%)を、ハンダゴテを用いてハンダ付けし、ハンダ部分を目視で観察した。ハンダ付け性は、次の通り評価した。導電膜の表面がハンダで完全にぬれ、全くはじきの状態が確認できなかった場合、「A:ディウェッティングなし」と評価し、少しでもはじきが確認できた場合、「B:ディウェッティングあり」と評価した。
Claims (8)
- 酸化銅と、分散剤と、還元剤と、増粘剤とを含む分散体であって、
前記分散剤が、
グリセリン及び/又はジエチレングリコールである第1成分と、
ポリエチレングリコール及び/又はアルコキシポリエチレングリコールであり、分子量が200~400であり、且つ分解温度が50℃以上300℃以下である第2成分とを含み、
前記還元剤が、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含み、
前記増粘剤が、カルボキシメチルセルロース並びにそのアンモニウム塩及びナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、並びに、アルデヒド基を有する化合物、からなる群から選択され、
前記分散体において、
前記酸化銅の含有量が10質量%以上50質量%以下であり、
前記分散剤の含有量が30質量%以上85質量%以下であり、
前記第1成分の含有量が25質量%以上72質量%以下であり、
前記第2成分の含有量が5質量%以上13質量%以下であり、
前記第1成分と前記第2成分との質量比率(第1成分/第2成分)が3.0以上8.0以下であり、
粘度が100mPa・s以上5000mPa・s以下であり、
前記増粘剤の含有量が0.05質量%以上3質量%以下であり、
[還元剤質量]/[酸化銅質量]の比率が0.0001以上0.1以下である、分散体。 - 前記増粘剤の含有量が、下記式(1):
0.00004≦(増粘剤質量/酸化銅質量)≦0.3 (1)
の範囲である、請求項1に記載の分散体。 - 前記増粘剤が、アルデヒド基を有する化合物である、請求項1又は2に記載の分散体。
- 酸化銅と、分散剤と、還元剤と、増粘剤とを混合することを含む、分散体の製造方法であって、
前記分散剤が、
グリセリン及び/又はジエチレングリコールである第1成分と、
ポリエチレングリコール及び/又はアルコキシポリエチレングリコールであり、分子量が200~400であり、且つ分解温度が50℃以上300℃以下である第2成分とを含み、
前記還元剤が、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含み、
前記増粘剤が、カルボキシメチルセルロース並びにそのアンモニウム塩及びナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、並びに、アルデヒド基を有する化合物、からなる群から選択され、
前記分散体において、
前記酸化銅の含有量が10質量%以上50質量%以下であり、
前記分散剤の含有量が30質量%以上85質量%以下であり、
前記第1成分の含有量が25質量%以上72質量%以下であり、
前記第2成分の含有量が5質量%以上13質量%以下であり、
前記第1成分と前記第2成分との質量比率(第1成分/第2成分)が3.0以上8.0以下であり、
粘度が100mPa・s以上5000mPa・s以下であり、
前記増粘剤の含有量が0.05質量%以上3質量%以下であり、
[還元剤質量]/[酸化銅質量]の比率が0.0001以上0.1以下である、分散体の製造方法。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載の分散体を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜にレーザ光を照射し、前記基板上に導電性パターンを形成する工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載の分散体を、所望のパターンで基板上に塗布して、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成処理して、前記基板上に導電性パターンを形成する工程と、
を含む、導電性パターン付構造体の製造方法。 - 前記焼成処理が、還元性ガス含有雰囲気下及び温度150℃以上での熱処理である、請求項6に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
- 前記塗布をスクリーン印刷によって行う、請求項5~7のいずれか一項に記載の導電性パターン付構造体の製造方法。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019168677A JP7193433B2 (ja) | 2019-09-17 | 2019-09-17 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
JP2022039320A JP2022087105A (ja) | 2019-09-17 | 2022-03-14 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019168677A JP7193433B2 (ja) | 2019-09-17 | 2019-09-17 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022039320A Division JP2022087105A (ja) | 2019-09-17 | 2022-03-14 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021048012A JP2021048012A (ja) | 2021-03-25 |
JP7193433B2 true JP7193433B2 (ja) | 2022-12-20 |
Family
ID=74878614
Family Applications (2)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019168677A Active JP7193433B2 (ja) | 2019-09-17 | 2019-09-17 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
JP2022039320A Withdrawn JP2022087105A (ja) | 2019-09-17 | 2022-03-14 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
Family Applications After (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022039320A Withdrawn JP2022087105A (ja) | 2019-09-17 | 2022-03-14 | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (2) | JP7193433B2 (ja) |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003051562A1 (fr) | 2001-12-18 | 2003-06-26 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | Dispersion d'oxyde metallique |
-
2019
- 2019-09-17 JP JP2019168677A patent/JP7193433B2/ja active Active
-
2022
- 2022-03-14 JP JP2022039320A patent/JP2022087105A/ja not_active Withdrawn
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003051562A1 (fr) | 2001-12-18 | 2003-06-26 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | Dispersion d'oxyde metallique |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2021048012A (ja) | 2021-03-25 |
JP2022087105A (ja) | 2022-06-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7201755B2 (ja) | 分散体並びにこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法及び導電性パターン付構造体 | |
JP7403512B2 (ja) | 酸化銅インク及びこれを用いた導電性基板の製造方法、塗膜を含む製品及びこれを用いた製品の製造方法、導電性パターン付製品の製造方法、並びに、導電性パターン付製品 | |
JP7430483B2 (ja) | 導電性パターン領域付構造体及びその製造方法 | |
JP2022106695A (ja) | 分散体、塗膜を含む製品、導電性パターン付き構造体の製造方法、及び、導電性パターン付き構造体 | |
JP6847994B2 (ja) | 分散体の製造方法 | |
JP7208803B2 (ja) | 導電性パターン領域付構造体及びその製造方法 | |
JP7193433B2 (ja) | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 | |
JP7159262B2 (ja) | 分散体及びこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法 | |
JP7174618B2 (ja) | 錫又は酸化錫インク、塗膜を含む製品及び導電性基板の製造方法 | |
JP7477581B2 (ja) | 分散体並びにこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法及び導電性パターン付構造体 | |
JP7263124B2 (ja) | インクジェット用酸化銅インク及びこれを用いて導電性パターンを付与した導電性基板の製造方法 | |
US11328835B2 (en) | Dispersing element, method for manufacturing structure with conductive pattern using the same, and structure with conductive pattern |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20201216 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210819 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210928 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20211126 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20211214 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220314 |
|
C60 | Trial request (containing other claim documents, opposition documents) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60 Effective date: 20220314 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20220323 |
|
C21 | Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21 Effective date: 20220329 |
|
A912 | Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20220408 |
|
C211 | Notice of termination of reconsideration by examiners before appeal proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C211 Effective date: 20220412 |
|
C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22 Effective date: 20220830 |
|
C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C22 Effective date: 20220920 |
|
C13 | Notice of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C13 Effective date: 20221004 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20221019 |
|
C23 | Notice of termination of proceedings |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C23 Effective date: 20221101 |
|
C302 | Record of communication |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C302 Effective date: 20221101 |
|
C03 | Trial/appeal decision taken |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C03 Effective date: 20221206 |
|
C30A | Notification sent |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C3012 Effective date: 20221206 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20221208 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7193433 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |