以下、本発明の実施形態について、図1乃至図19に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「送風部3の方向」とは、送風部3による送風方向のことを指す。また、「送風部3を回転(又は回動)させる」とは、送付部3の方向を変えることであり、「送風部3の軸流ファン35を回転させる」ことと区別する。更に、左回りを順回転又は順方向、右回りを逆回転又は逆方向と定義する。1は本発明の送風装置としての扇風機である。この扇風機1は、短円柱状の基部2と、この基部2の上部に設けられた送風部3とを有して構成される。そして、この送風部3は、前記基部2の中心から垂直に立設された支柱4と、この支柱4の上端に設けられた傾斜L字状の腕部5と、この腕部5の上端に設けられた送風部本体6を有して構成される。
前記基部2は、図示しないフレームと、このフレームの外側に支持されたケーシング7とを有する。そして、前記フレームには、上ベアリング8及び下ベアリング9が支持される。また、これら両ベアリング8,9によって取付軸10が支持される。更に、この取付軸10には、従動ギア11が支持される。なお、この従動ギア11は、前記上ベアリング8と下ベアリング9の間に位置する。また、前記従動ギア11の下方には、前記送風部3がどの方向を向いているかを検知するための位置検知手段12が設けられる。そして、前記取付軸10の側方には、ステッピングモータからなる首振りモータ13が設けられる。即ち、前記首振りモータ13は、供給される電流のパルス数によって回転が制御される。前記首振りモータ13の回転軸14には、駆動ギア15が支持される。そして、この駆動ギア15は、前記従動ギア11と噛み合う。従って、前記首振りモータ13の回転は、前記駆動ギア15と従動ギア11からなる動力伝達機構によって前記取付軸10に伝達される。なお、前記首振りモータ13及び駆動ギア15は、上下方向において、前記上ベアリング8と下ベアリング9の間に位置する。従って、前記首振りモータ13、前記駆動ギア15と従動ギア11からなる動力伝達機構、前記取付軸10、及び前記上ベアリング8と下ベアリング9がコンパクトに配置されるので、基部を小型化することができる。その一方で、前記上ベアリング8と下ベアリング9の間隔を、前記基部2の寸法範囲内で最大限大きくすることができるので、前記取付軸10、ひいては前記送風部3を、安定して軸支することができる。更に、前記取付軸10の下方には、電源供給用のスリップリング16が設けられる。このスリップリング16の可動側は、前記取付軸10に接続され、この取付軸10と一緒に回転又は回動可能である。一方、前記スリップリング16の固定側は、前記フレームに固定される。なお、17は制御部が実装された制御回路である。また、前記取付軸10の上端部には、前記支柱4が同軸状に固定される。
前記位置検知手段12について詳述する。この位置検知手段12は、図5及び図6に示すように、前記取付軸10に固定された回動体18と、前記基部のフレームに固定されたセンサ19,20を有して構成される。即ち、前記回動体18は、前記取付軸10、ひいては、この取付軸10に固定された前記送風部3と共に回転又は往復回動するよう構成されている。前記回動体18は、一対の円板状の第一遮蔽板21,第二遮蔽板22と、これらの遮蔽板21,22同士を接続する短円筒部23を有して、全体としてボビン状に構成される。そして、前記各遮蔽板21,22には、複数(本例においては8つ)のスリット24,25が、それぞれ設けられる。なお、これらのスリット24,25は、ランダムに設けられている訳ではなく、所定角度間隔(本例では22.5度刻みで16箇所)に設けられた検知箇所のうち、半数に前記スリット24,25が形成される。従って、前記第一遮蔽板21において、一のスリット24と他のスリット24との成す角度は、所定角度(22.5度)の倍数である。前記第二遮蔽板22においても同様である。一方、前記センサ19,20は、それぞれフォトインタラプタと呼ばれる形式のものである。即ち、発光部及び受光部(何れも図示せず)からなるものである。そして、発光部が発した光を、前記スリット24,25を通して受光部で受けることで、前記センサ19,20はオン信号を発する。一方、発光部が発した光が前記各遮蔽板21,22によって遮られて受光部で受けることができなければ、前記センサ19,20はオン信号を発さない。換言すると、この状態はオフ状態である。即ち、前記回動体18の遮蔽板21,22において、前記スリット24,25が形成された位置がオン部、前記スリット24,25に対し所定角度の倍数(22.5n度:nは整数)隔てた位置においてスリット24,25が形成されていない位置がオフ部となる。
前記基部2の上面には、前記支柱4を囲むように、中央から外周に向かって、リモコン受光窓26、調節手段27、及び指定手段28が同心状に設けられる。なお、前記リモコン受光窓26内には、複数の受光素子(図示せず)が設けられる。このため、図示しないリモコンから発せられた赤外線信号は、前記支柱4に妨げられることなく、受光素子によって受光される。また、前記調節手段27は、電源スイッチ27a及び風量表示部27bを兼ねる。この風量表示部27bは、その内部に複数(本例の場合、24個)の表示素子としての表示LED27cが環状に配列されている。更に、前記指定手段28は、範囲表示部28bを兼ねる。この範囲表示部28bは、その内部に複数(本例の場合、3個ずつ16組)の表示LED28cが環状に配列されている。なお、前記調節手段27及び指定手段28は、その上を指で押したり長さ方向になぞったりすることで操作されるものである。前記調節手段27及び指定手段28は、前記基部2の全周に渡って円環状に設けられる。これによって、あらゆる方向から直感的に風量を調節したり送風方向範囲を指定したりすることができる。また、前記指定手段28が前記基部2の上面に設けられることで、指定範囲が一覧できるので、送風範囲をより分かりやすく指定することができる。更に、前記指定手段28によって指定された方向範囲は、前記範囲表示部28bによって表示される。このため、どの方向範囲が指定されたかが分かりやすいので、送風範方向囲をより分かりやすく指定することができる。
前記調節手段27及び指定手段28について詳述する。前記調節手段27は、前記基部2内に設けられた図示しない円環状のスイッチ素子と、このスイッチ素子を操作するための円環状の操作体27dを有する。同様に、前記指定手段28も、前記基部2内に設けられた図示しない円環状のスイッチ素子と、このスイッチ素子を操作するための円環状の操作体28dを有する。なお、これらの操作体27d,28dは透光性を有しており、前記基部2のケーシング7内に設けられた表示LED27c,28cの光を導光して外部に放出するように構成される。そして、前記調節手段27は、前記表示LED27cに対応させて、ソフトウェア上、周方向に24のセグメントに分割される。即ち、前記調節手段27において、1セグメントは15度の範囲となる。一方、前記指定手段28は、図7に示すように、前記表示LED28cに対応させて、ソフトウェア上、16のセグメント(S
0〜S
15)に分割される。即ち、前記指定手段28において、1セグメントは22.5度の範囲となる。これは、表に表すと以下の通りとなる。
なお、前記位置検知手段12の回動体18に設けられたスリット24,25及びこれらのスリットが設けられていない箇所、即ちオン部とオフ部は、前記各セグメントS
0〜S
15に対応して設けられる。これらのセグメントS
0〜S
15とオン部及びオフ部の対応関係は、下表の通りである。
前記各遮蔽板21,22のスリット24,25は、一のセグメントと、隣接するセグメントの組み合わせが一意に決まるように設けられる。例えば、S0からS1にかけて前記送風部3が順回転すると、前記第一センサ19の出力は「OFF−OFF」となり、前記第二センサ20の出力は「ON−ON」となる。このように、前記第一センサ19が「OFF−OFF」と出力し、前記第二センサ20が「ON−ON」と出力する組み合わせとなる場所は、順回転の場合、他にはない。従って、順回転時に前記第一センサ19が二度目に「OFF」を、前記第二センサ20が二度目に「ON」を出力した時点で、現在、対応するセグメントがS1であることが特定される。同様に、前記第一センサ19が「OFF−OFF」と出力し、前記第二センサ20が「ON−OFF」と出力した場合、各センサ19,20が二度目に出力した時点で、現在、対応するセグメントがS2であることが特定される。なお、前記送風部3が逆回転する場合も同様であり、一のセグメントと、隣接するセグメントの組み合わせは一意に決まる。そして、二つの前記センサ19,20による二度の検知結果は、換言すれば4桁の二進数、即ち十進数の「0〜15」であり、16分割された前記セグメントS0〜S15に1対1で対応させることができる。なお、セグメントの分割数が16を超えた場合、4桁の二進数では表せなくなるので、3セグメント分動かすか、又はセンサ数を増やすことで対応できる。なお、上記表の二進数表示は、前記第一センサ19の第一検知結果、第二検知結果、前記第二センサ20の第一検知結果、第二検知結果の順に並べたものである。このように、少ないセンサ19,20で且つ最小限の前記送風部3の回動によって、前記送風部3の現在の方向を特定することができる。
前記支柱4は、中空円筒状に形成される。また、この支柱4の下端部は、前記取付軸10の上端部に、この取付軸10と同軸状に固定される。前記腕部5は、後退部29と、湾曲部30と、起立部31とを有して構成される。前記後退部29は、後方斜め上に伸びて形成される。また、前記起立部31は、前方斜め上に伸びて形成される。なお、前記湾曲部30及び起立部31は、左右一対設けられる。そして、前記支柱4と腕部5の内部には、図示しない電気配線が通される。また、前記腕部5の起立部31の上端部には、前記送風部本体6が設けられる。この送風部本体6は、ヒンジ部32と、モータケーシング33と、ファンモータ34と、軸流ファン35と、ガード36とを有して構成される。前記ヒンジ部32は、図示しない揺動機構を有し、前記腕部5に対し手動によるチルト動作が可能となるように設けられる。そして、本例では、このヒンジ部32によって、前記送風部本体6は、仰角45度から俯角12度迄の範囲でチルト動作が可能である。また、前記モータケーシング33は、前記ヒンジ部32の前側に設けられる。また、前記ファンモータ34は、前記モータケーシング33の前方に突出する回転軸34aを除いた全体が、前記モータケーシング33内に設けられる。また、前記軸流ファン35は、前記ファンモータ34によって回転させられるように構成される。更に、前記ガード36は、前記ファン35の周囲を囲むように設けられる。
なお、前記モータケーシング33の前側には、小径部37が形成されており、この小径部37内に、前記ファンモータ34の前部が位置する。また、前記軸流ファン35の中央部には、短円筒状のハブ38が設けられる。このハブ38の内径は、前記小径部37の外径よりもやや大きく形成される。このため、前記回転軸34aに前記軸流ファン35を取り付けると、前記小径部37は前記ハブ38の内部に入る。従って、前記ファンモータ34の一部は、前記軸流ファン35のハブ38内に位置する。そして、前記ヒンジ部32とモータケーシング33は、前記ガード36の後部を挟むように配置される。従って、前記ファンモータ34は、前記ガード36内に位置する。更に、このガード36、ひいてはこのガード36内に配置された前記軸流ファン35の前後方向中心は、図2に示すように送風方向が水平となる状態において、中心軸線A上に位置する。そして、前述したように、前記ファンモータ34の一部が前記ハブ38内に位置すると共に、前記ファンモータ34全体が前記ガード内に位置し、前記ガード36の後方に設けられた前記ヒンジ部32の突出寸法も最小限にすることができることで、前記送風部本体6を前後に薄くすることができるばかりでなく、前記送風部本体6の重心位置が中心軸線Aに近い位置となる。更に、前記支柱4の中心軸線Aから前記腕部5の湾曲部30の後端までの距離Zは、前記中心軸線Aから前記ガード36の左右端部までの距離Xよりも小さい。このため、前記送風部3全体としての重心の中心軸線Aからのズレを最小限に抑えることができるばかりでなく、ガードが支柱の前方にある一般的な構造の扇風機や、ガードを左右から軸支する扇風機の構造に比べて、前記送風部本体6の回転半径を小さくして、前記送風部3を安定して回転又は往復回動させることができる。また、前記基部2の半径Rは、前述の距離Xよりも小さい。従って、前記送風部3を回転させたとき、平面視で前記ガード36の左右両端が描く軌跡の内側に、図示しない電源コードを除く前記扇風機1の全ての要素が位置する。
次に、本実施形態の作用について説明する。まず、使用者が、図示しない電源プラグを交流電源に接続すると、図8に示すように、前記風量表示部27bの表示素子である表示LED27cが暗点滅する。同時に、前記制御回路17が前記首振りモータ13を作動させて前記送風部3を順方向に回動させ、前記位置検知手段12によって、前記送風部3が向いている方向を特定する。即ち、前記第一センサ19が「OFF−OFF」と出力し、前記第二センサ20が「ON−ON」と出力した場合、前記各センサ19,20が二度目に出力した時点で、前記送風部3が方向D1を向いていることが特定される。同様に、前記第一センサ19が「OFF−OFF」と出力し、前記第二センサ20が「ON−OFF」と出力した場合、各センサ19,20が二度目に出力した時点で、前記送風部3が方向D2を向いていることが特定される。そして、前記制御回路17は、前記送風部3の方向を特定した時点で、前記首振りモータ13の駆動を停止すると共に、前記送風部3の現在の方向を記憶する。
なお、このような前記送風部3の方向を特定するための動作は、電源をオンにした際に行うようにしてもよい。また、前記送風部3の方向を特定するために前記送風部3を2セグメント分順方向に回動させた後、この送風部3をその位置に留めるようにしても、2セグメント分逆方向に回動させて戻すようにしてもよい。
次に、前記電源スイッチ27aを兼ねる調節手段27に触れて軽く押すことで、前記扇風機1は電源がオンになる。なお、前記電源スイッチ27a兼調節手段27は、円環状の前記操作体27dのどこを押してもよい。そして、前記扇風機1の電源がオンになると、前記制御回路17は、前記風量表示部27bの暗点滅を終了させ、初期設定値の風量表示で前記表示LED27cを点灯させると共に、前記ファンモータ24に電流を供給することで、前記軸流ファン35を回転させ、風を発生させる。なお、本例の場合、設定風量は10段階であり、設定風量の初期値は5である。また、設定風量は、前記表示LED27cの点灯数によって表現される。点灯する表示LED27cの数は、下表の通りである。
即ち、最小風量時には、図13に示すように、前記風量表示部27bの表示LED27cの点灯数は4である。一方、最大風量時には、図14に示すように、前記風量表示部27bの表示LED27cの点灯数は22である。これらの表示LED27cは円環状に配列されているので、これらの表示LED27cの点灯数は、即ち円弧の長さとなる。そして、点灯する前記表示LED27cは、風量が変更されない限り、数を保ったまま、即ち弧の長さを保ったまま、順方向に回転する。例えば、風量が初期設定値の場合、点灯する表示LED27cは12である。そして、これらの点灯している表示LED27cのうち、順方向後端の表示LED27cが消灯すると同時に、順方向前端の表示LED27cの先に隣接する表示LED27cが点灯する。これを繰り返すことで、図9から図12に示すように、前記風量表示部27bの発光表示は順方向に回転する。
このような表示がされることで、前記風量表示部27bは、あらゆる方向へ同じように風量を表示することができる。即ち、従来の表示部が固定された構造では、ある方向からしか風量表示を見ることができないか、又は見づらいものとなっていた。しかしながら、本発明の構造では、所定の時間で表示が一周するので、前記扇風機1の前後左右の区別なく、あらゆる方向から前記風量表示部27bの表示を見ることができる。
前記制御回路17から前記ファンモータ34への電力供給は、前記スリップリング16と、前記支柱4及び腕部5の内部に通された図示しないリード線を介して行われる。このように、前記基部3の制御回路17から前記送風部3のファンモータ34への電力供給が、前記スリップリング16を介して行われることで、前記送風部3が前記基部2に対して360度を遙かに超えて回転しても、前記制御回路17から前記ファンモータ34に電力を安全に供給し続けることができる。
なお、図示しない前記リモコンには、チャイルドロックボタンが設けられている。このチャイルドロックボタンを押すと、前記風量表示部27bの回転表示が停止する。なお、前記電源スイッチ27aを特殊操作、例えば三度押しすることでも、チャイルドロック状態とすることができる。そして、チャイルドロック状態では、前記扇風機1の本体による操作は、チャイルドロック解除のための特殊操作を除いて、前記前記電源スイッチ27a兼調節手段27の操作による電源オフのみが可能となる。なお、チャイルドロック状態の解除は、リモコンのチャイルドロックボタン、或いは前記電源スイッチ27aの特殊操作により行われる。
風量の調節は、前記調節手段27の操作により行われる。具体的に述べると、指で前記調節手段27の操作体27dをなぞる距離と方向によって、前記制御回路17が前記ファンモータ34を制御する。更に詳述すると、前記調節手段27の24セグメントのうち、最初に触れた2セグメントにおいて、前記制御回路17は、指が順方向になぞられたのか逆方向になぞられたのかを判断する。即ち、最初に触れたセグメントと、次に触れたセグメントが、順方向の位置関係か逆方向の位置関係かを判断する。前記操作体27dが順方向になぞられたと判断された場合、前記制御回路17は、風量を増加させるように前記ファンモータ34を制御する。逆に、前記操作体27dが逆方向になぞられたと判断された場合、前記制御回路17は、風量を減少させるように前記ファンモータ34を制御する。そして、最初の方向判定後に、何セグメント分なぞられたかを検知する。本例の場合、1セグメント分の指の移動につき、風量設定を1段階分変化させる。なお、本例の場合、方向検知のために触れた2セグメント目を、風量設定の1段階分とする。例えば、最小風量状態から最大風量状態まで変化させる場合について述べる。この場合、風量を9段階増加させることになる。この際、使用者は、前記操作体27dを10セグメント分、角度にして150度、指でなぞる。内訳は、指でなぞる方向を検知するため及び風量の最初の1段階増加のために2セグメント使用され、残りの8段階の風量増加のために8セグメント使用される。なお、10セグメント(150度)を超えて指でなぞっても、前記制御回路17は、11セグメント以降を無視する。また、例えば、現在風量が5段階目であり、最大風量まで増加させる場合も、前記制御回路17は、6セグメント(90度)を超えた分を無視する。風量を減少させるように操作する場合も、同様である。
風量調節のために前記操作体27dを指でなぞる場合、始点は円環状の前記操作体27dのどこであってもよい。即ち、単純に、指でなぞる方向となぞる距離さえ判断されれば、風量を調節することができる。従って、前記扇風機1のどの方向からでも、同じように且つ直感的に風量を調節することができる。また、本例においては、前記操作体27dを指でなぞる方向となぞる距離によって、風量を調節できるようにしたが、前記操作体27dを指でなぞる方向となぞる回数によって、風量を調節できるようにしてもよい。
前記送風部3の方向を変更する場合について説明する。前記送風部3の向いている方向は、前記指定手段28によって直接指定する方法と、前記送風部3の回転又は回動の途中で回転又は回動を停止させる方法とで、D0からD15の何れかを選択することができる。そして、それらの何れの方法で指定した場合でも、前記送風部3の向いている方向は特定される。前者の方法では、前記指定手段28によって直接指定されるので、明白である。後者の方法では、前記送風部3がステッピングモータである前記首振りモータ13によって駆動されるので、特定することができる。即ち、前記送風部3を1セグメント分の角度動かすために前記首振りモータ13に供給する必要があるパルス数Nと、基準位置から現在位置まで送風部を回転又は回動させた際に要したパルス数(但し、順方向に回転又は回動させた場合のパルス数をプラス、逆方向に回転又は回動させた場合のパルス数をマイナスとする)から、特定することができる。例えば、前記送風部3が首振り範囲の端部に対応する方向D3を向いている状態から、順方向に3Nのパルスが前記首振りモータ13に供給された後、前記送風部3の回動を停止させると、この送風部3が向いている方向は、最初の方向D3(セグメントS3)に対し、順方向に3セグメント分動かした位置であるセグメントS6の対応方向D6であることが特定される。前記送風部3の方向が変更されると、この送風部3の現在方向の情報が、前記制御回路17の図示しないマイクロコンピュータの記憶部に記憶される。このようにして、前記送風部3が向いている方向がD0からD15の何れであるかが特定され、記憶される。なお、前記送風部3の方向は、前記首振りモータ13に供給される電流のパルス数で制御されるが、前記位置検知手段12によって補正される。このように、前記位置検知手段12によって補正されることで、前記送風部3の回転又は回動を正確に制御することができる。
前記送風部3の方向を前記指定手段28によって直接指定する方法について、更に詳述する。前記送風部3が回転又は回動していない状態で、使用者は、円環状の前記指定手段28の操作体28dにおける任意の位置に触れ、軽く押す。上述したように、前記指定手段28のセグメントが直接指定されるので、目的位置となるセグメントは特定される。また、現在の前記送風部3の方向が、図示しないマイクロコンピュータの記憶部に記憶されているので、現在位置となるセグメントも特定される。そして、前記制御回路17は、前記中心軸線Aを中心とした出発セグメントと目的セグメントのなす角度が、順回転と逆回転のどちらで小さくなるかを算出し、角度が小さくなる回りで前記首振りモータ13を駆動することで、前記送風部3を回動させる。例えば、図15に示すように、現在の前記送風部3の方向D0に対応する出発セグメントがS0であり、目的セグメントとしてS7を指定した場合、前記送風部3を逆方向に202.5度回転させるのではなく、順方向に157.5度回転させる。なお、目的セグメントが出発セグメントの正反対である場合、どちらの方向に前記送風部3を回動させても構わないが、本例では、最後に回転又は回動を停止させた時の前記送風部3の回転又は回動方向を記憶させ、この方向を採用する。
このように、前記送風部3の方向を指定したときに、出発セグメントと目的セグメントの関係から、順方向回動と逆方向回動のどちらの角度が小さくなるかを算出して、角度が小さくなる回り、即ち出発セグメントと目的セグメントの角度距離が小さくなる回りで前記送風部3を回転させることで、短時間で前記送風部3を所望の方向に向けることができるばかりでなく、前記送風部3を回動させる際の無駄な電力を削減することができる。
なお、前記送風部3を指定された方向まで回動させる際の回動角速度は、後述する送風時の回転角速度又は回動角速度よりも速い。しかしながら、前述したように、前記送風部3全体としての重心の中心軸線Aからのズレが最小限に抑えられているばかりでなく、前記支柱3を固定した前記取付軸10が、上下に距離を隔てて設けられた一対の前記ベアリング8,9によって軸支されることで、前記送風部3をふらつかせずに安定して滑らかに回動させることができる。
前記送風部3を回転又は回動させながら送風する場合について説明する。使用者が前記指定手段28を指でなぞることで、前記送風部3による送風範囲を指定することができる。例えば、図16に示すように、使用者が前記指定手段28のうち、S1からS4までを指でなぞって送風範囲を指定すれば、指定されたセグメントS1〜S4の表示LED28cが点灯し、方向D1から方向D4までに該当する67.5度の範囲が一つの指定範囲F1となる。このように、前記支柱4を中心として円環状に形成された前記指定手段28の操作体28dを指でなぞることで、直感的に送風範囲を指定することができる。範囲指定時に、前記送風部3の方向が前記指定範囲F1の範囲内にあれば、前記制御回路17は、前記送風部3を、そのまま方向D1からD4の間で往復回動させる。一方、範囲指定時に、前記送風部3の方向が前記指定範囲F1の範囲外にあれば、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D1又はD4となるまで前記送風部3を回動させた後、方向D1からD4の間で往復回動させる。前記送風部3の最初の方向から方向D1又はD4まで回動させる際の前記送風部3の回動角速度は、方向D1からD4の間で往復回動させる際の前記送風部3の回動角速度よりも速い。このように、15セグメント分以下の指定範囲F1が一つだけ指定されている場合、前記制御回路17は前記送風部3を往復回動させる。なお、図17に示すように、一つの指定範囲F1が16セグメント分(即ち全周)に渡って指定されている場合、前記制御回路17は前記送風部3を順方向に回転させる。
また、送風範囲は、複数指定することもできる。例えば、図18に示すように、前記指定手段28のセグメントS1からS4までを指でなぞって指定範囲F1を指定した後、指定手段28のセグメントS7からS9までを指でなぞって指定範囲F2を指定することができる。この場合、指定されたセグメントS1〜S4の表示LED28cの他に、指定されたセグメントS7〜S9の表示LED28cが点灯する。この際、指定範囲F1とF2の間に、それぞれ非指定範囲B1,B2が生ずる。この場合、セグメントS4の方向D4からセグメントS7の方向D7までが非指定範囲B1、セグメントS9の方向D9からセグメントS1の方向D4までが非指定範囲B2となる。
そして、指定された送風範囲の条件によって、前記制御回路17は前記送風部3を回転又は回動させる。具体的には、指定範囲が複数で、且つ非指定範囲のうち最も大きな角度を有する非指定範囲Bmaxの角度を360度から引いた値が180度よりも大きな場合、前記制御回路17は前記送風部3を回転させる。一方、指定範囲が複数で、且つ非指定範囲のうち最も大きな角度を有する非指定範囲Bmaxの角度を360度から引いた値が180度以下の場合、前記制御回路17は前記送風部3を往復回動させる。図18の場合、非指定範囲B
1とB
2を比較すると、B
1が67.5度、B
2が180度であることから、B
2=Bmaxであり、360度から180度を引いた値が180度となるので、前記制御回路17は前記送風部3を往復回動させる。一方、図19に示すように、S
0からS
4までをF
1、S
7からS
10までをF
2として指定した場合、B
1が67.5度、B
2が135度であることから、B
2=Bmaxであり、360度から135度を引いた値が225度となるので、前記制御回路17は前記送風部3を回転させる。整理すると、表のようになる。
図18の場合、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D1から方向D4になるまで、前記送風部3を低速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。次に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D4から方向D7になるまで、前記送風部3を高速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。次に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D7から方向D9になるまで、前記送風部3が低速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。次に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D9から方向D7になるまで、前記送風部3が低速で逆方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。次に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D7から方向D4になるまで、前記送風部3が高速で逆方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。更に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D4から方向D1になるまで、前記送風部3が低速で逆方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。これらの一連の動作を繰り返すことで、前記送風部3は、非指定範囲B1での高速回動を挟んで、方向D1から方向D9の範囲で往復回動する。なお、このように前記送風部3が往復回動する間、前記軸流ファン35は、指定範囲F1,F2及び非指定範囲B1の区別なく、回転(即ち送風)し続ける。
一方、図19の場合、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D0から方向D4になるまで、前記送風部3を低速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。次に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D4から方向D7になるまで、前記送風部3を高速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。次に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D7から方向D10になるまで、前記送風部3が低速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。更に、前記制御回路17は、前記送風部3の方向が方向D10から方向D0になるまで、前記送風部3が高速で順方向に回動させるように、前記首振りモータ13を駆動する。これらの一連の動作を繰り返すことで、前記送風部3は、非指定範囲B1及びB2での高速回動を挟んで、順方向に回転する。なお、このように前記送風部3が回転する間、前記軸流ファン35は、指定範囲F1,F2及び非指定範囲B1,B2の区別なく、回転(即ち送風)し続ける。
なお、指定範囲を複数指定する場合、前記送風部3を一方向に回転させるか往復回動させるかによらず、非指定範囲における前記送風部3の回転角速度又は回動角速度は、指定範囲における回転角速度又は回動角速度よりも速い。具体的には、非指定範囲における回転角速度又は回動角速度は、指定範囲における回転角速度又は回動角速度の倍である。このように、非指定範囲における前記送風部3の回転角速度又は回動角速度を指定範囲における前記送風部3の回転角速度又は回動角速度よりも速くすることで、前記送風部3が風を送りたい範囲以外を向いている時間を短くし、風を送りたい範囲に重点的に風を送ることができる。
指定範囲の条件によって、前記送風部3を回転させるか往復回動させるかを切り換える理由は、以下の通りである。即ち、180度より広い範囲に風を送る場合、或いは全周が指定範囲となっている場合は、部屋の中心に設置して部屋全体に風を送ることが考えられる。このような場合、所定の方向に等時間隔で風が送られるよう、前記制御回路17は、前記送風部3を回転させる。一方、180度以下の範囲に風を送る場合は、前記扇風機3が壁に近接した位置に置かれていることが考えられる。このような場合、壁に風を送るのは無駄になるので、前記制御回路17は、前記送風部3を往復回動させる。また、指定範囲が一つで且つ180度より大きな場合、非指定範囲Bには風を送りたくないという使用者の意図が見られる。何故なら、指定範囲が複数の場合、前記送風部3は短時間であっても必ず非指定範囲に送風するからである。従って、この場合、指定範囲のみで送風が行われるよう、前記制御回路17は前記送風部3を往復回動させる。
指定範囲は解除することができる。例えば、図18において、指定範囲F
2に該当するセグメントS
7〜S
9を長押しすることで、指定範囲F
2は解除され、指定範囲F
1のみが指定された図17の状態となる。この際、長押しするセグメントは、S
7,S
8,S
9のどれでもよい。なお、前記送風部3の方向が指定範囲F
1内にあれば、前記制御回路17は前記送風部3をそのまま指定範囲F
1内で往復回動させる。一方、前記送風部3の方向が指定範囲F
1外にあれば、前記制御回路17は前記送風部3を高速で指定範囲F
1まで回動させた後、指定範囲F
1内で往復回動させる。なお、指定範囲を解除することで、前記制御回路17は、前記送風部3を下表の通り動作させる。
なお、前述したように、前記送風部3全体としての重心の中心軸線Aからのズレが最小限に抑えられているばかりでなく、前記支柱3を固定した前記取付軸10が、上下に距離を隔てて設けられた一対の前記ベアリング8,9によって垂直に軸支されることで、前記送風部3をふらつかせずに安定して滑らかに回転又は往復回動させることができる。
なお、前記指定手段28の操作体28dをなぞる方向と、前記送風部3を回転させる方向を一致させることができる。即ち、使用者が前記指定手段28を指で順方向になぞって送風範囲を指定することで、前記制御回路17は、前記送風部3を順方向に回転させることができる。一方、使用者が前記指定手段28を指で逆方向になぞって送風範囲を指定することで、前記制御回路17は、前記送風部3を逆方向に回転させることができる。このようにすることで、使用者は、前記送風部3の回転方向を直感的に且つ容易に選択することができる。
また、上述した通り、ステッピングモータである前記首振りモータ13へ供給された電流のパルス数と前記位置検知手段12により、前記送風部3が向いている方向は特定される。そして、特定された方向に基づいて、前記送風部3が向いている方向を、前記範囲表示部28bに表示することができる。なお、前記範囲表示部28bで表示させる表示LED28cは、1セグメント分(3個)まとめてであっても、一つずつであってもよい。前記送風部3の方向を表示する方法は、幾つか考えられる。一つは、前記送風部3が向いている方向に該当するセグメントの表示LED28cを点滅させることである。一つは、指定範囲においては、点灯している表示LED28cのうち、前記送風部3が向いている方向に該当するセグメントの表示LED28cを消灯させ、非指定範囲においては、消灯している表示LED28cのうち、前記送風部3が向いている方向に該当するセグメントの表示LED28cを点灯させることである。一つは、前記範囲表示部28bの表示LED28cを多色LEDとし、指定範囲を表示する色とは異なる色で、前記送風部3が向いている方向に該当するセグメントの表示LED28cを点灯させることである。このように、前記送風部3が向いている方向が分かるように、前記範囲表示部28bの表示LED28cを点灯させたり点滅させたりすることで、リモコン等を用いて離れた位置から前記送風部3の方向を決める際に、位置の目安となるので、容易に前記送風部3の方向を決めることができる。
前記ファン35を停止させる場合は、前記電源スイッチ27aを兼ねる前記調節手段27に触れて、なぞることなく1秒間押し続ける。これによって、前記ファン35が停止し、前記扇風機1の電源がオフになる。なお、前記扇風機1の電源をオフにする直前の設定、即ち、前記送風部3の方向又は指定範囲及び風量は、前記制御回路17のマイクロコンピュータの記憶部に記憶されており、図示しない電源プラグを抜いたり停電したりしない限り維持される。そして、再び前記電源スイッチ27aを兼ねる前記調節手段27に触れて押すことで、再び前記扇風機1の電源がオンになる。この際、前記制御回路17のマイクロコンピュータの記憶部に記憶された設定に基づいて、前記制御回路17は前記ファンモータ34及び首振りモータ13を駆動する。
以上のように本発明の送風装置としての扇風機1は、基部2と、この基部2に対して回転又は往復回動可能に設けられると共に軸流ファン35及びファンモータ34が設けられた送風部3と、前記基部2に対し前記送風部3を回転又は往復回動させる首振りモータ13とを有する扇風機1において、前記扇風機1が、前記ファンモータ34が内部に設けられるモータケーシング33と、このモータケーシング33の後方に位置して揺動機構を有するヒンジ部32と、前記ファン35の周囲を囲むガード36とを有し、前記ファンモータ34全体が前記ガード36内に位置し、前記首振りモータ13が前記基部2内に設けられ、前記首振りモータ13によって、前記送風部3が前記基部2に対し360度を超えて回転可能であり、前記基部2内に、前記送風部3に連結される回転軸としての取付軸10が垂直に設けられると共に、この取付軸10が、上下に距離を隔てて設けられた複数のベアリング8,9によって前記基部2に対し回動可能に支持され、送風方向が水平となる状態において、前記軸流ファン35が前記取付軸10と同軸状となる支柱4の中心軸線A上に位置することで、前記送風部3をふらつかせずに安定して滑らかに回動させることができる。
また、本発明の送風装置としての扇風機1は、複数の前記ベアリング8,9の間に、前記首振りモータ13及びこの首振りモータ13の回転を前記取付軸10に伝達する動力伝達機構としての駆動ギア15及び従動ギア11が設けられることで、前記基部2を小型化することができるばかりでなく、前記ベアリング8,9の間隔を大きくして、より安定して前記送風部3を軸支することができる。
また、本発明の送風装置としての扇風機1は、可動側が前記取付軸10に取り付けられると共に固定側が前記基部2に取り付けられるスリップリング16を設けたことで、前記送風部3が前記基部2に対して360度を遙かに超えて回転しても、前記ファンモータ34に電力を安全に供給し続けることができる。
また、本発明の送風装置としての扇風機1は、前記軸流ファン35のハブ38内に前記ファンモータ34の少なくとも一部が挿入されることで、前記送風部3の送風部本体6を前後に薄くすることができるばかりでなく、この送風部本体6の重心位置を中心軸線Aに近い位置とすることができるので、前記送風部3を安定して回転又は往復回動させることができる。
また、本発明の送風装置としての扇風機1は、前記ファンモータ34が前記軸流ファン35の外側を覆うガード36よりも内側に位置することで、前記送風部3の送風部本体6を前後に薄くすることができるばかりでなく、この送風部本体6の重心位置を中心軸線Aに近い位置とすることができるので、前記送風部3を安定して回転又は往復回動させることができる。
更に、本発明の送風装置としての扇風機1は、前記ファンモータ34の後方に前記軸流ファン35を俯仰可能に軸支するヒンジ部32が設けられ、このヒンジ部32が、前記送風部3の下端部である支柱4の外面よりも後方に突出した腕部5に接続されると共に、前記送風部3の回転中心となる中心軸線Aから前記腕部5の後端までの距離Zが、前記中心軸線Aから前記ガード36の左右端部までの距離Xよりも小さいことで、前記送風部3が回転又は往復回動した際の回転半径を小さくして、前記送風部3を安定して回転又は往復回動させることができる。
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、送風装置を軸流ファン型の扇風機としたが、サーキュレータ等の送風機、或いは図20に示すような、クロスフローファンを用いた送風部3aを有するタワー型の扇風機1aであってもよい。