以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
本発明の実施形態を説明する前に本発明が適用される一例としての操舵装置の構成、及び機電一体型の電動駆動装置としての電動パワーステアリング装置の構成について図1、図2を用いて簡単に説明する。
まず、自動車の前輪を操舵するための操舵装置について説明する。操舵装置1は図1に示すように構成されている。図示しないステアリングホイールに連結されたステアリングシャフト2の下端には図示しないピニオンが設けられ、このピニオンは車体左右方向へ長い図示しないラックと噛み合っている。このラックの両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド3が連結されており、ラックはラックハウジング4に覆われている。そして、ラックハウジング4とタイロッド3との間にはゴムブーツ5が設けられている。
ステアリングホイールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置6が設けられている。即ち、ステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ7が設けられ、トルクセンサ7の検出値に基づいてラックにギヤ10を介して操舵補助力を付与する電動モータ部8と、電動モータ部8に配置された電動モータを制御する電子制御装置(ECU)部9とが設けられている。電動パワーステアリング装置6の電動モータ部8は、出力軸側の外周部の3箇所が図示しないボルトを介してギヤ10に接続され、電動モータ8部の出力軸とは反対側に電子制御装置部9が設けられている。
図2に示すように、電動モータ部8はアルミニウム合金等から作られた筒部を有するモータハウジング11A及びこれに収納された図示しない電動モータとから構成され、電子制御装置部9は、モータハウジング11Aの軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミニウム合金等で作られたECUハウジング11B及びこれに収納された図示しない電子制御組立体から構成されている。
モータハウジング11AとECUハウジング11Bはその対向端面で固定ボルトによって一体的に固定されている。ECUハウジング11Bの内部に収納された電子制御組立体は、必要な電源を生成する電源回路部や、電動モータ部8の電動モータを駆動制御するMOSFETからなるパワースイッチング素子を有する電力変換回路部や、このパワースイッチング素子を制御する制御回路部からなり、パワースイッチング素子の出力端子と電動モータの入力端子とはバスバーを介して電気的に接続されている。ここで、電源回路部、電力変換回路部、及び制御回路部は、夫々異なった3枚の基板に分割して設けられている。
ECUハウジング11Bの端面にはコネクタ端子組立体を兼用する合成樹脂製の蓋体12が固定ボルト13(図3参照)によって固定されている。蓋体12には電力供給用のコネクタ端子形成部12A、検出センサ用のコネクタ端子形成部12B、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用のコネクタ端子形成部12Cを備えている。そして、ECUハウジング11Bに収納された電子制御組立体は、合成樹脂から作られた蓋体12の電力供給用のコネクタ端子形成部12Aを介して電源から電力が供給され、また検出センサ類から運転状態等の検出信号が検出センサ用のコネクタ形成端子部12Bを介して供給され、現在の電動パワーステアリング装置の制御状態信号が制御状態送出用のコネクタ端子形成部12Cを介して送出されている。
以上のような構成の電動パワーステアリング装置6においては、ステアリングホイールが操作されることによりステアリングシャフト2がいずれかの方向へ回動操作されると、このステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ7が検出し、この検出値に基づいて制御回路部が電動モータの駆動操作量を演算する。この演算した駆動操作量に基づいて電力変換回路部のパワースイッチング素子により電動モータが駆動され、電動モータの出力軸はステアリングシャフト2を操作方向と同じ方向へ駆動するように回動される。出力軸の回動は、図示しないピニオンからギヤ10を介して図示しないラックへ伝達され、自動車が操舵されるものである。これらの構成、動作は既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
そして、小型化の要求を満足するためには電源回路部や電力変換回路部を高密度実装することが有効である。このためにはコネクタ端子の実装面積も低減する必要がある。しかしながら、「L」字状のコネクタ端子を使用すると、載置した状態で載置安定性が悪いので、「リフロープロセス」でハンダ付けする場合は、ペースト状のハンダの粘着力だけでは自立させることは難しく、更にはハンダ付け行程でハンダが融けると、「L」字状のコネクタ端子が倒れる現象がある。このため、特別な雇を用いてコネクタ端子を自立させることが必要となり、生産性の向上が図れないという課題を生じる。
このような背景から、本実施形態では次のような構成の電動駆動装置(電動パワーステアリング装置)を提案するものである。
つまり、本実施形態においては、コネクタ端子を、配線端子と接続されるコネクタ接続片と、このコネクタ接続片と対面し、コネクタ接続片と釣り合いを保ちコネクタ端子を自立させる折り返し部を有するコネクタ釣り合い片と、コネクタ接続片とコネクタ釣り合い片の間を結ぶコネクタ接着片から構成し、コネクタ接着片を基板に塗布されたペースト状のハンダに載置してコネクタ端子を基板に接着、固定する構成とした。
これによれば、コネクタ釣り合い片に折り返し部を形成することで重量を重くしてコネクタ接続片との釣り合いを保つことができるので、コネクタ接着片を短くできる。これによって、実装面積が少なくてもコネクタ端子を自立させることができ、雇等の特別な治具を用いなくてもハンダ付けができるので生産性を高めることができるようになる。
以下、本発明の一実施形態になる電動パワーステアリング装置の構成について説明するが、以下の図面では図2に示す蓋体12の形状が相違する。しかしながら、その機能は同一である。
図3に電動パワーステアリング装置6の分解斜視図を示している。尚、モータハウジング11Aには通常は電動モータが収納されているものである。そして、上述したようにモータハウジング11AとECUハウジング11Bは別体のアルミニウム合金から作られているが、両ハウジングは同一のハウジングとしても良いものである。
電子制御装置部9は、モータハウジング11A内の電動モータの図示しない出力軸と反対側に結合されたECUハウジング11Bと、ECUハウジング11Bに3本の固定ボルト13によって結合された蓋体12とから構成されている。蓋体12は後述するように、コネクタ端子組立体を兼用するものであり、合成樹脂から射出成型によって形成されている。尚、この蓋体12には後述するように各種のコネクタ配線部が同時にインサートモールドによって埋設されている。
ECUハウジング11B及び蓋体12とから構成される収容空間には、電源回路部14が設けられ、ECUハウジング11Bとモータハウジング11Aの収納空間には電力変換回路部15、制御回路部16が配置されている。電源回路部14、電力変換回路部15、制御回路部16は電子制御組立体を構成するものである。
ECUハウジング11Bの内部にはアルミニウム、或いはアルミニウム合金等の金属から作られた放熱基体46が配置されている。この放熱基体46はECUハウジング11Bと一体的に形成されている。また、この放熱基体46の両面には片面実装によって電源回路部14及び電力変換回路部15を構成する電気部品が載置された金属基板17、18が固定されている。
上述した通り、金属基板17と金属基板18の間には所定の厚さを備えるアルミニウムやアルミニウム合金からなる放熱基体46が配置されており、この放熱基体46は後述するように放熱部材として機能するもので、ECUハウジング11Bと一体的に形成され、ECUハウジング11Bから外気に放熱できるように構成されている。ここで、金属基板17、18と放熱基体46は、熱的な接触を高めるため熱伝導性の良い放熱接着剤、放熱シート、放熱グリース等の放熱機能材が金属基板17、18と放熱基体46の間に介装されている。
蓋体12と放熱基体46の間には、電動モータを駆動するインバータ装置に使用される高圧直流電源と、マイクロコンピュータ等の制御回路に使用される低圧直流電源の生成を主たる機能とする電源回路部14が配置されている。
この電源回路部14は図4に示すように、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属からなる金属基板17の片面上に、コンデンサ19、コイル20、MOSFETよりなるスイッチング素子21、バッテリからの電源側配線端子が接続される電源側コネクタ端子22、電力変換回路部15に高圧電源を供給する高圧側配線端子が接続される高圧側コネクタ端子23、制御回路部16に低圧電源を供給する低圧配線端子が接続される低圧側コネクタ端子24等の電気部品が実装されている。
金属基板17は、アルミニウム基板の上に絶縁層を形成し、この絶縁層の上に銅箔からなる配線パターンを印刷して構成されており、この上に電気部品が載置されて夫々の電気部品が電気的に接続されるものである。電源回路部14は、コンデンサ19やコイル20、コネクタ端子22〜24等の比較的形状が大きい(=背が高い)電気部品が使用されている。
コネクタ端子22、23はプレスフィット型のコネクタであり、内側に向けて弾発性を備えており、このコネクタ端子22、23に配線端子を挿入するだけで、ハンダを用いずに簡単に相互の接続を確保できる。図4にある通り、コネクタ端子22、23は一枚の細長い金属板の両端を内側に折り込み、更にこの折り込んだ領域を2回折り込んで双方の端面が対向するようにして形成されている。
ここで、電源回路部14は比較的実装面積に余裕があり、コネクタ端子22、23の実装面積も十分取れるのでプレスフィット型のコネクタを使用することができる。このプレスフィット型コネクタは接着面が広く載置安定性が良いので、「リフロープロセス」のハンダ付けにおいても倒れの恐れが無いものである。
また、プレスフィット型のコネクタは対向する端面22A、23Aは弾性を備えており、この端面に押し込まれた配線端子は強く接触して、配線端子から与えられた押し込み力がコネクタ端子22、23を介して金属基板17に伝えられえるものである。本実施形態では、金属基板17は固定ねじによって放熱基体46に固定されておらず、コネクタ端子22、23に挿入された配線端子から付与される押し込み力によって金属基板17と放熱基体46が固定される構成になっている。
そして、放熱基体46の電源回路部14が位置する側と反対側には、電動モータの駆動を主たる機能とするインバータ制御を実行する電力変換回路部15が配置されている。この電力変換回路部15は放熱基体46を境にして電源回路部14の金属基板17に対向するように、電力変換回路部15の金属基板18を配置している。
この電力変換回路部15の金属基板18と電源回路部14の金属基板17との対向面は、実質的に同じ形状をしており、放熱基体46に熱が相互に伝わりやすいものとなっている。更に、金属基板17、18と放熱基体46の間には熱伝導性の良い放熱接着剤、放熱シート、放熱グリース等の放熱機能材が介装されている。
電力変換回路部15は図5に示すように、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属からなる金属基板18上に、複数のMOSFETからなるパワースイッチング素子25、及びこれの出力用の出力コネクタ端子26U、26V、26W、及びスイッチング素子25を制御するゲート、ドレイン、ソース等の入力信号の入力やスイッチング素子25の動作状況を制御回路部16にフィードバックするための信号コネクタ端子27A〜27D等が実装されている。また、電源回路部14から電力の供給を受けるインバータ側コネクタ端子28も設けられている。更に、スイッチング素子25は、電動モータを制御する6個のスイッチング素子25以外にフェールセーフ用の3個のスイッチング素子25も備えられている。
尚、出力用コネクタ端子26U、26V、26Wはプレスフィット型のコネクタであり、内側に向けて弾発性を備えており、この出力用コネクタ端子26U、26V、26Wに電動モータに接続されたバスバーのコネクタ端子を挿入するだけで、ハンダを用いずに簡単に相互の接続を確保できる。
一方、インバータ側コネクタ端子28付近は充分な実装面積が確保できなく、しかも、インバータ側コネクタ端子28は配線端子と重ね合せて接合されるため、従来では「L」字状のコネクタ端子を使用していた。尚、本実施形態になる電力変換回路部については、後述の図10〜図13を用いて詳細に説明する。
金属基板18は、アルミニウム基板の上に絶縁層を形成し、この絶縁層の上に銅箔からなる配線パターン及びレジスト膜を形成して構成されており、この上に電気部品が載置されて夫々の電気部品が電気的に接続されるものである。尚、図5は理解がしやすいように上述の電気部品を載置した側を示しているが、実際は図3にあるように、電気部品が下側になるように配置されるものである。
電力変換回路部15とモータハウジング11Aの間には、電力変換回路部15のスイッチング素子25のスイッチング制御等を主たる機能とする制御回路部16が配置されている。ECUハウジング11Bには、モータハウジング11A側に向けて樹脂基板取付ボス29が形成されており、この樹脂基板取付ボス29に制御回路部16の樹脂基板31が取付けボルトで固定されている。
制御回路部16は図6に示すように、合成樹脂等からなる樹脂基板31上に、スイッチング素子25等を制御するマイクロコンピュータ32等が実装されている。尚、樹脂基板31上には図3に示しているように、マイクロコンピュータ32の周辺回路等の電気部品が配置されているが、図6ではこれらを省略している。
樹脂基板31は電力変換回路部15とは所定の距離を置いて配置されており、この間の空間に電力変換回路部15の電気部品と制御回路部16の電気部品が配置されるものである。そして、制御回路部16と電力変換回路部15とは上述したコネクタ端子27A〜27Dによって接続されている。
図5に示すコネクタ端子27A〜27Dは、樹脂基板31と電力変換回路部15の間の所定距離を超える長さを有している。そして、コネクタ端子27Aは樹脂基板31の接続孔33Aに接続され、コネクタ端子27Bは接続孔33Bに接続され、コネクタ端子27Cは接続孔33Cに接続され、コネクタ端子27Dは接続孔33Dに接続されるようになっている。尚、制御基板31に形成した接続孔33Eは、後述する蓋体12の絶縁領域部に埋設した信号伝送用及び低圧電源供給用の制御側コネクタ端子が接続されるものである。
このように、蓋体12からモータハウジング11A側に向かって、電源回路部14、放熱基体46、電力変換回路部15、及び制御回路部16の順番で配置されている。このように電源回路部14から距離を置いて制御回路部16を配置することで、電源ノイズを除去した後に制御回路部16に安定した電源を提供することができるようになる。
図3に戻って、各コネクタ端子と接続される配線部が埋設された蓋体12は、ECUハウジング11Bの開口を覆うものであり、図2に示すものと同じように、軸方向の外表面に電力供給用の端子形成部12A、検出センサ用の端子形成部12B、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用の端子形成部12Cを備えている。尚、端子形成部12Bと端子形成部12Cを一体に形成しても差し支えないものである。そして、これらの端子形成部12A〜12Cを介して、図示しない電源から電源回路部14へ電力が供給されている。同様に検出センサの信号等が制御回路部16に入力されている。
次に蓋体12の構成を説明すると、図7に示されている通り、蓋体12は合成樹脂によって形成されており、この蓋体12は配線端子組立体を兼ねており、内部に各種配線部とその配線端子を備えている。
まず第1に、外部電源(=車載バッテリ)と接続された端子形成部12Aと電源回路部14を接続する電力供給用の配線部である電源側配線部が蓋体12に埋設され、先端の電源側配線端子34が蓋体12から露出している。この電源側配線端子34は蓋体12の側周面の内側に位置している。
電源側配線端子34は、電源回路部14の電源側コネクタ端子22に接続されるもので、電源側配線端子34をプレスフィット型の電源側コネクタ端子22に挿入するだけで、簡単に接続が完了するものである。電源側配線端子34はプレスフィット型の電源側コネクタ端子22に挿入されて、金属基板17を放熱基体46に強く押し付ける機能を備えている。
次に、電源回路部14と電力変換回路部15を接続する電力供給用の配線部である高圧側配線部が蓋体12に埋設されている。この高圧側配線部の両端は、高圧側配線端子35とインバータ側配線端子36として形成されて蓋体12から露出している。一方の高圧側配線端子35は電源回路部14の高圧側コネクタ端子23に接続され、他方のインバータ側配線端子36は電力変換回路部15のインバータ側コネクタ端子28に接続されるものである。
高圧側配線端子35は、電源回路部14の高圧側コネクタ23に接続されるもので、高圧側配線端子35をプレスフィット型の高圧側コネクタ端子23に挿入するだけで、ハンダを用いずに簡単に接続が完了するものである。この高圧側配線端子35はプレスフィット型の高圧側コネクタ23に挿入されて、金属基板17を放熱基体46に強く押し付ける機能を備えている。
また、インバータ側配線端子36は、電力変換回路部15のインバータ側コネクタ端子28に接続されるもので、インバータ側配線端子36とインバータ側コネクタ端子28とをTIG溶接することで接続が完了するものである。
この高圧側配線部は、高圧側配線端子35とインバータ側配線端子36の間で、その断面形状がインバータ側配線端子の方が長い「コ」の字状になっている。この長い部分は蓋体12を形成する合成樹脂に埋設されて高圧側絶縁領域部41とされており、この高圧側絶縁領域部41は、図8にあるように金属基板17、18及び放熱基体46に形成した挿通部43を挿通して、電力変換回路部15まで延びている。更に、高圧側配線部を構成する高圧側絶縁領域部41は金属基板17、18及び放熱基体46の外周側と蓋体12の側周面の内側の間に位置している。
次に、電源回路部14と制御回路部16を接続する電力供給用の配線部である低圧側配線部が蓋体12に埋設されている。この低圧側配線部の両端は、低圧側配線端子37と制御側配線端子38として形成されて蓋体12から露出している。一方の低圧側配線端子37は電源回路部14の低圧側コネクタ端子24に接続され、他方の制御側配線端子38は制御回路部16の接続孔33Eに接続される。
また、低圧側配線部に隣接して、検出センサ用のコネクタ端子形成部12B、制御状態送出用のコネクタ端子形成部12Cと接続された、信号伝送用の信号伝送配線部が蓋体12に埋設され、制御側配線端子39が蓋体12から露出している。
低圧側配線端子37は、電源回路部14の低圧側コネクタ端子24に接続されるもので、低圧側配線端子37をソケット型の低圧側コネクタ端子24に嵌合するだけで接続が完了するものである。また、制御側配線端子38及び信号伝送用の制御側配線端子39は、制御回路部16の接続孔33Eに接続されるもので、制御側配線端子38、39と接続孔33Eとをハンダによって接合することで接続が完了するものである。
次に図8、図9を用いてECUハウジング11Bに収納された電子制御組立体の構成の詳細について説明する。
図8は、図3に示すA−A面から蓋体12の方向を見た図であり、電力変換回路部15の平面が示されている。電力変換回路部15の詳細な構成は図5に示した通りであるので説明は省略する。尚、金属基板18とECUハウジング11Bの間には挿通部40、43が形成されている。
挿通部40は金属基板18の外周に形成した直線状の切欠きであり、この挿通部40を通って低圧側絶縁領域部42が制御回路部16側まで延びてきている。このように直線状の「切欠き」としたのは、低圧側絶縁領域部42を通る配線部の本数が多く、「切欠き」の面積を大きくして低圧側絶縁領域部42を挿通させるためである。もちろん、金属基板17及び放熱基体46にも、挿通部40と一致する挿通部が形成されていることは言うまでもない。
同様に、挿通部43は金属基板18の外周に形成した「切欠き」であり、この挿通部43を通って上述した高圧側絶縁領域部41が電力変換回路部15側に延びてきている。もちろん金属基板17及び放熱基体46にも、金属基板18に形成した挿通部43と一致する挿通部が形成されていることは言うまでもない。
次に図8のB−B面から見た電動パワーステアリング装置の断面を図9に基づき説明するが、この図9においては電動モータ部分を省略している。
図9において、蓋体12の内側底面部から制御回路部16側に向かって合成樹脂からなる高圧側絶縁領域部41が延びている。この高圧側絶縁領域部41は金属基板17の外周部に設けた挿通部44及び金属基板18の外周部に設けた挿通部43及び放熱基体46に設けた挿通部47を挿通して電力変換回路部15まで延びている。尚、金属基板17、18の挿通部43、44は金属基板17、18の外周面と蓋体12の側周面の間に形成されており、放熱基体46の挿通部47は放熱基体46の外周側の内部に形成した挿通孔である。
高圧側絶縁領域部41の内部には高圧側配線部45が埋設されており、この高圧側配線部45の一方には高圧側配線端子35が形成され、他方にはインバータ側配線端子36が形成されている。このように高圧側絶縁領域部41によって、高圧側配線部45とそれぞれの金属基板17、18及び放熱基体46の絶縁を確保している。
高圧側配線端子35とインバータ側配線端子36を含めた高圧側配線部45は「コ」の字状に形成されており、電源回路部14の高圧側コネクタ端子23と電力変換回路部15のインバータ側コネクタ端子28が逆向きに設けられているので、これらを相互に接続することができるようにしている。
したがって、蓋体12をECUハウジング11Bに固定する場合は、高圧側配線端子35をプレスフィット型の高圧側コネクタ端子23に差し込むことで接続し、インバータ側配線端子36をインバータ側コネクタ端子28にTIG溶接することで接続することができる。尚、この時には制御回路部16は設けられておらず、TIG溶接用トーチをインバータ側配線端子36とインバータ側コネクタ端子28まで近づけることが容易にできるようになっている。
さて、インバータ側コネクタ端子付近の領域は、挿通部が位置するという理由等で、充分な実装面積が確保できなく、従来では「L」字状のコネクタ端子を使用していた。この「L」字状のインバータ側コネクタ端子は接着面が短く、載置した状態で載置安定性が悪いものである。このため、「リフロープロセス」でハンダ付けする場合は、ペースト状のハンダの粘着力だけでは自立させることは難しく、ハンダ付け行程でハンダが融けると、「L」字状のコネクタ端子が倒れる課題を生じる。
特に、インバータ側配線端子36の平板部分とインバータ側コネクタ端子28の平板状のコネクタ接合片が重ね合せて接合されるため、インバータ側コネクタ端子28のコネクタ接合片は、インバータ側配線端子36の平板部分に近接するように配置されている。このため、コネクタ接合片は、電力変換回路部15の金属基板18の端面を超えてインバータ側配線端子36まで延びる構成となっている。したがって、コネクタ接合片に至る部分では、金属基板によって支えられていないため、容易にコネクタ端子が倒れる現象を生じる。
そこで、本実施形態では図10〜図13に示すようなインバータ側コネクタ端子を採用するものである。
図10には、インバータ側配線端子36と電力変換回路部15のインバータ側コネクタ端子28の接合部付近を示している。尚、図10では理解しやすいように一方のインバータ側コネクタ端子28の表示を省略している。
図10にあるように、金属基板18は、金属基体の上に絶縁膜が形成され、この絶縁膜状に配線パターン49及びレジスト膜48が形成され、更に配線パターン49上に各種電気、電子部品が実装されるものである。そして、金属基板18上には、電源側とグランド側に接続される2個のインバータ側コネクタ端子28が載置されている。(図面では1個のインバータ側コネクタ端子28は省略している。)このインバータ側コネクタ端子28は、細長い金属平板を折り曲げ加工して断面が、図12、図13にあるように略「U」字状に形成されているものであり、折り曲げられた各面は平面状に形成されている。
図10、図11にあるように、インバータ側コネクタ端子28は、金属基板18の端面18Eを超えてインバータ側配線端子36と接合されるコネクタ接合片28Cと、このコネクタ接合片28Cと対面し、コネクタ接合片28Cと釣り合いを保つようにしてインバータ側コネクタ端子28を自立させるコネクタ釣り合い片28Bと、コネクタ釣り合い片28Bから連続して形成され、金属基板18上の配線パターン49に接続されるコネクタ接着片28Aと、コネクタ接着片28Aから連続して形成され、金属基板18上のレジスト膜48から離間するように、金属基板18の端面18Eを超えてコネクタ接合片28Cに続くコネクタ離間片28Dから構成されている。
図10に示すように、金属基板18の表面にはレジスト膜48が形成されており、更に配線パターン49がこのレジスト膜48から露出している。配線パターン49の上にはインバータ側コネクタ端子28のコネクタ接着片28Aが載置されてハンダによって接着、固定されている。つまり、コネクタ接着片28Aを金属基板18上の配線パターン49(図10,11参照)に塗布されたペースト状のハンダに載置し、「リフロープロセス」によってインバータ側コネクタ端子28を金属基板18に接着、固定するようにしている。尚、コネクタ接着片28Aは平面状になっているので、自動マウンタ機構によってインバータ側コネクタ端子28を配線パターン49に載置する時の吸着面として使用することができる。
そして、インバータ側配線端子36の平板部分とインバータ側コネクタ端子28の平板状のコネクタ接合片28Cが重ね合せて接合されるため、インバータ側コネクタ端子28のコネクタ接合片28Cは、インバータ側配線端子36の平板部分に近接するように配置されている。このように、コネクタ接合片28Cは、インバータ側配線端子36の平板部分に近接して接続されるため、コネクタ接合片28Cは、電力変換回路部15の金属基板18の端面18Eを超えて長さgだけインバータ側配線端子36まで延びる構成となっている。
図11にあるように、コネクタ接着片28Aを境にして、コネクタ接合片28Cが、インバータ側配線端子36の平板部分に近接するように配置される。したがって、これに対向するコネクタ釣り合い片28Bに、以下に説明する折り返し部が形成されていないと、コネクタ釣り合い片28Bの形成位置は、コネクタ接着片28Aから同等の距離を必要とするようになる。このため、インバータ側コネクタ端子28のコネクタ接着片の長さが長くなって、金属基板18での実装のための占有面積が大きくなってしまう問題がある。
そこで、本実施形態では、コネクタ釣り合い片28Bには、金属製の細長い平板を折り返し領域点28B-Tで折り返して、第1コネクタ釣り合い片28B−1と、「折り返し部」である第2コネクタ釣り合い片28B−2とを形成している。つまり、コネクタ釣り合い片28Bに、第1コネクタ釣り合い片28B−1に対して180°の関係で折り返した第2コネクタ釣り合い片28B−2を形成し、コネクタ釣り合い片28Bの重量を大きくするものである。尚、本実施形態では1回折り曲げとすることで重量を略2倍にしている。
したがって、コネクタ釣り合い片28Bの重量が大きく(略2倍に)なり、コネクタ接着片28Aからコネクタ接合片28Cまでの距離に対して、コネクタ釣り合い片28Bまで短い距離(略1/2倍)で釣り合い効果を得ることができ、コネクタ端子28のコネクタ接着片28Aの長さを短くして、金属基板18への実装での占有面積を小さくすることができるようになる。
このように、本実施形態では、コネクタ接着片28Aの接着面49を境にして、コネクタ接合片28Cまでの距離と重量で決まるモーメントと、コネクタ釣り合い片28Bまでの距離と重量で決まるモーメントを近づける(望ましくは略同一)ことができるので、コネクタ接着片28Aの長さを短くでき、実装面積が少なくてもコネクタ端子を自立させることができ、雇等の特別な治具を用いなくてもハンダ付けができるので生産性を高めることができるようになる。尚、「折り返し部」である第2コネクタ釣り合い片28B−2の長さは、上述したモーメント釣り合いが取れる長さ(重量)に設定されている。
更に、本実施形態では、コネクタ接着片28Aとコネクタ接合片28Cの間は、コネクタ離間片28Dによって接続されている。このコネクタ離間片28Dは、コネクタ接着片28Aからコネクタ接合片28Cに向けて斜め上方向に延びており、金属基板18の端面18Eまでの間に存在するレジスト膜48とは接触せず、レジスト膜48から徐々に遠ざかる形状に形成されている。したがって、コネクタ離間片28Dとレジスト膜48の間には、断面が三角形状の離間空間Saが形成されることになる。
このような構成によって、インバータ側コネクタ端子28に高圧の電流が流れても、離間空間Saが存在することによって、コネクタ離間片28Dとレジスト膜48の間の絶縁性が向上するので、レジスト膜49が絶縁破壊することが抑制されるようになる。尚、コネクタ離間片28Dは、斜め上方向に向けて伸びる形状とされて離間空間Saが形成される構成とされているが、コネクタ接着片28Aから垂直に立ち上がり、コネクタ接合片28Cに向けて横方向に延びる形状にしても離間空間Saを形成することができる。
ここで、コネクタ接着片28Aの接着寸法は、従来の「L」字状のインバータ側コネクタ端子と実質的に同じ寸法に決められている。このため、実装面積が従来のままであっても充分実装できるものである。このように、図12、図13に示すような形状のコネクタ端子においては、コネクタ接合片28Cと、第1コネクタ釣り合い片28B−1及び「折り返し部」である第2コネクタ釣り合い片28B−2を備えるコネクタ釣り合い片28Bを形成しているため、載置安定性が優れており、コネクタ接着片の長さが短くても自立することが可能である。この場合、主にコネクタ接合片28Cとコネクタ釣り合い片28Bの総合的な重心の重力方向の延長線上に、コネクタ接着片28Aの接着面が位置する構成となっている。
そして、このコネクタ端子28は、図10にある通り金属基板18の所定の配線パターン49に載置されてハンダ付けされるものである。したがって、「リフロープロセス」でハンダ付けを行う場合において、インバータ側コネクタ端子28は載置安定性が良く、ハンダ付け行程でハンダが融けても、インバータ側コネクタ端子28が倒れることが無いものである。このため、特別な雇を用いてインバータ側コネクタ端子を自立させることが不要となり、生産性の向上が図れるようになる。
また、コネクタ接合片28Cは、電力変換回路部15の金属基板18の端面18Eを超えて長さ「g」だけインバータ側配線端子36まで延びる構成となっている。したがって、コネクタ接着片28Aを金属基板18側に投影させた時、長さ「g」だけ金属基板18の端面18Eから延びているため、コネクタ接合片28Cに至る部分では、金属基板18によって支えられていないため、容易にコネクタ端子が倒れる恐れがある。
これに対して、第1コネクタ釣り合い片28B−1及び「折り返し部」である第2コネクタ釣り合い片28B−2を備えるコネクタ釣り合い片28Bを形成しているため、コネクタ釣り合い片28Bの重量が大きく(略2倍に)なり、コネクタ端子28が倒れる現象を抑制することができる。
また、本実施形態になるインバータ側コネクタ端子28Nのコネクタ接着片28Aとコネクタ接合片28Cの間は、コネクタ接着片28Aからみて上側に傾斜したコネクタ離間片28Dが形成されている。このコネクタ離間片28Dは、絶縁破壊を抑制する離間空間Saを形成する機能の他に、コネクタ接合片28Cに余分な荷重が作用すると、撓むことによって応力を緩衝する機能を併せ備えている。
つまり、このコネクタ離間片28Dは、TIG溶接した時の応力を緩和する機能を備えているものである。インバータ側コネクタ端子28と高圧側配線端子36とは重ね合せて先端がTIG溶接される。そして、溶接後に互いの端子間で応力が発生するが、このコネクタ離間片28Dによって応力を緩和することができるようになる。
また、図11、図13から分かるように、コネクタ接合面28Cの両側面には、側面から外側に張り出した突出部50が形成され、これに合わせてインバータ側配線端子36にも突出部51が形成されている。図11にあるように、コネクタ接合片28Cとインバータ側配線端子36の平板部分の先端はTIG溶接によって溶接部Wが形成されるが、この時の溶接によって生じる溶融金属が金属基板18や高圧側配線部45側に流れ落ちる恐れがある。このため、突出部50、51を形成して、溶融金属が流れ落ちるのを堰き止め、溶融金属が金属基板18や高圧側配線部45側に流れ落ちる抑制するようにしている。
また、コネクタ接合面28Cの両側面には、側面から内側に凹んだ後退部52が形成されている。TIG溶接する時に、コネクタ接合片28Cとインバータ側配線端子36の平板部分を近接させる必要があるため、後退部52を形成して変形し易くしている。また、溶接後に互いの端子間で応力が発生するが、この後退部52によって応力を緩和することもできるようになる。
また、コネクタ接着片28Aの両側の中央付近には、側面から外側に張り出した突出部53が形成されている。コネクタ接着片28Aは配線パターン49にハンダ付けされるが、このハンダの状態(フィレットの状態等)を観察するため基板外観検査装置を使用する。そして、突出部53付近のハンダの状態を観察することで、接着不良等の不具合を検査できるものである。
更に、コネクタ釣り合い片28Bが新たに形成されることによって、金属基板18からの熱を放散しやすくなり、結果的に電力変換回路(インバータ回路)の熱を放散することに寄与する効果がある。