JP6766532B2 - 高強度熱間鍛造非調質鋼部品 - Google Patents
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Description
(1)本発明の一態様に係る高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、化学成分が、単位質量%で、C:0.50〜0.65%、Si:0.60〜1.20%、Mn:0.60〜1.00%、P:0.040〜0.060%、S:0.060〜0.100%、Cr:0.05〜0.20%、V:0.25〜0.40%、N:0.0020〜0.0080%、Bi:0.0001〜0.0050%を含有し、さらにSb:0.0001〜0.0050%、Sn:0.0001〜0.0050%、Te:0.0001〜0.0050%及びPb:0.0001〜0.0050%からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Bi+Sb+Sn+Te+Pbが0.0002〜0.0050%であり、鋼組織がフェライト・パーライトであり、そのうちフェライト組織の面積率が20面積%以上であることを特徴とする。
(2)本発明において、さらに、前記化学成分が、単位質量%で、Ti:0.10%以下及びNb:0.05%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することができる。
(3)本発明において、さらに、前記化学成分が、単位質量%で、Ca:0.005%以下、Zr:0.005%以下及びMg:0.005%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有することができる。
この例の破断分離型コンロッド1は、図1に示すように、上下に分割されたロッド付半円弧状のアッパ側半割体2と、半円弧状のロア側半割体3とから構成されている。
アッパ側半割体2の半円弧部2Aの両端側にはそれぞれ、ロア側半割体3に固定するためのねじ溝を有するねじ孔5が形成されている。ロア側半割体3の半円弧部3Aの両端側にはそれぞれ、アッパ側半割体2に固定するための挿通孔6が形成されている。
破断分離型コンロッド1は、一例として、化学成分が、単位質量%で、C:0.50〜0.65%、Si:0.60〜1.20%、Mn:0.60〜1.00%、P:0.040〜0.060%、S:0.060〜0.100%、Cr:0.05〜0.20%、V:0.25〜0.40%、N:0.0020〜0.0080%、Bi:0.0001〜0.0050%を含有し、さらにSb:0.0001〜0.0050%、Sn:0.0001〜0.0050%、Te:0.0001〜0.0050%及びPb:0.0001〜0.0050%からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、鋼組織がフェライト・パーライトであり、そのうちフェライト組織の面積率が20面積%以上である鋼からなる。この組成の鋼を熱間鍛造して空冷し、非調質鋼とすることで上述の目的組成の高強度熱間鍛造非調質鋼製品が得られる。
先ず本実施形態に係る高強度熱間鍛造非調質鋼部品の成分組成の限定理由について説明する。
Cは、高強度熱間鍛造非調質鋼部品の引張強さを確保する効果を有する。必要な強度を得るには、C含有量の下限を0.50%にする必要がある。なお、C含有量を0.50%以上とした場合、通常であれば鋼の金属組織(鋼組織)に含まれるフェライト量が20面積%未満となり、鋼の降伏比が低くなる。しかし、本実施形態に係る鋼は、後述されるように所定範囲内のMn、S、およびBiを含むことによりMn硫化物が微細分散されているので、C含有量を0.50%以上としながらフェライト量を20面積%以上とすることができる。C含有量の好ましい下限は、0.52%、0.55%、または0.58%である。
Siは、固溶強化によってフェライトを強化し、鋼の延性及び靭性を低下させる。鋼の延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし破断分離性を向上させる。この効果を得るためには、Si含有量の下限を0.60%にする必要がある。一方、Siを過剰に含有すると破断面の欠けが発生する頻度が上昇するので、Si含有量の上限を1.20%とする。Si含有量の好ましい下限は、0.70%、0.80%、または0.85%である。Si含有量の好ましい上限は、1.00%、0.95%、または0.90%である。
Mnは、固溶強化によってフェライトを強化し、鋼の延性及び靭性を低下させる。鋼の延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、破断分離性を向上させる。また、Mnは、Sと結合してMn硫化物を形成する。このMn硫化物は、熱間鍛造による部品成形後の冷却過程においてフェライト変態の核となり、フェライト量を増大させる効果がある。一方、Mnを過剰に含有する場合、フェライトが硬くなりすぎて、破断時の欠けが発生する頻度が増加する。これらに鑑みて、Mn含有量の範囲は、0.60〜1.00%である。Mn含有量の好ましい下限は、0.70%、0.80%、または0.85%である。Mn含有量の好ましい上限は、0.95%、0.92%、または0.90%である。
Pは、フェライト及びパーライトの延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、鋼の破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、破断分離性を向上させる効果を有する。ただし、Pは上述の効果を生じさせると同時に、結晶粒界の脆化を引き起こし破断面の欠けを発生しやすくする効果も顕著に生じさせる。以上を考慮すれば、P含有量の範囲は、0.040〜0.060%である。P含有量の好ましい下限は、0.042%、0.045%、または0.048%である。P含有量の好ましい上限は、0.055%、0.053%、または0.050%である。
Sは、Mnと結合してMn硫化物を形成する。このMn硫化物は、熱間鍛造による部品成形後の冷却過程においてフェライト変態の核となり、フェライト量を増大させる効果がある。その効果を得るためには、S含有量の下限を0.060%にする必要がある。他方、Sを過剰に含有させると、破断分割時の破断面近傍の塑性変形量が増大し、破断分離性が低下する場合が発生することがある。これに加えて、Sを過剰に含有させると、破断面の欠けを助長することがある。以上から、S含有量の範囲を、0.060〜0.100%とする。S含有量の好ましい下限は、0.070%、0.072%、または0.075%である。S含有量の好ましい上限は、0.095%、0.090%、または0.085%である。
この意味から、微細なMn硫化物の平均アスペクト比は、1.1〜1.4程度の範囲であることが望ましい。
Crは、Mnと同様に固溶強化によってフェライトを強化し、延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし、破断分離性を向上させる。しかし、Crを過剰に含有すると、パーライトのラメラー間隔が小さくなり、かえってパーライトの延性及び靭性が高くなる。そのため、Crを過剰に含有すると、破断時の破断面近傍の塑性変形量が大きくなり、破断分離性が低下する。さらに、Crを過剰に含有すると、ベイナイト組織が生成しやすくなり、降伏比の低下による降伏強さの低下や破断分離性の顕著な低下が見られる。従って、Cr含有量の範囲を0.05〜0.20%とする。上述の効果に鑑みた場合、Cr含有量の好ましい上限は、0.17%、0.15%、または0.13%である。また、Cr含有量の好ましい下限は、0.07%、0.08%、または0.10%である。
Vは、熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物または炭窒化物を形成してフェライトを強化し、鋼の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくして、熱間鍛造部品の破断分離性を良好にする。また、Vは、炭化物または炭窒化物の析出強化により熱間鍛造部品の降伏比を高めるという効果がある。これらの効果を得るためには、V含有量の下限を0.25%にする必要がある。V含有量の下限は、好ましくは0.27%、または0.30%である。一方、Vを過剰に含有してもその効果は飽和するので、V含有量の上限は、0.40%である。V含有量の上限は、好ましくは0.35%、0.33%、または0.31%である。
Nは、熱間鍛造後の冷却時に主にV窒化物またはV炭窒化物を形成してフェライトの変態核として働くことによって、フェライト変態を促進する。これにより、Nには、熱間鍛造部品の破断分離性を大幅に損なうベイナイト組織の生成を抑制する効果がある。この効果を得るには、N含有量の下限を0.0020%とする。Nを過剰に含有すると熱間延性が低下し、熱間加工時に割れまたは疵が発生しやすくなる場合があるので、N含有量の上限を0.0080%とする。N含有量の下限値を0.0040%、0.0042%、または0.0045%としてもよい。N含有量の上限値を0.0075%、0.0070%、または0.0060%としてもよい。
Biは、本実施形態に係る高強度熱間鍛造非調質鋼部品において重要な元素である。微量のBiを含有することによって、鋼の凝固組織の微細化に伴い、Mn硫化物が微細分散する。Mn硫化物の微細分散化効果を得るには、Bi含有量を0.0001%以上にする必要がある。しかし、Bi含有量が0.0050%を超えると、BiがMn硫化物上に析出し、フェライト変態の核としての効果を失う。これらのことから、本発明では、Bi含有量を、0.0001%〜0.0050%とする。
本実施形態に係る高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、上記の成分に加えて、Sb、Sn、Te及びPbからなる群から選択される1種または2種以上をそれぞれ、0.0001〜0.0050%の範囲内で含有することが特徴である。これらの元素は、鋼の凝固組織の微細化に伴い、Mn硫化物が微細分散する。Mn硫化物の微細分散化効果を得るには、これらの元素の含有量を0.0001%以上にする必要がある。しかし、これらの元素を過剰に含有すると、これらの元素がMn硫化物上に析出し、フェライト変態の核として効果を失うため、これらの元素の含有量の上限を0.0050%とする。上述の効果を鑑みた場合、Bi、Sb、Sn及びPbの合計含有量の上限は、0.0050%であることが好ましい。Bi、Sb、SnおよびPbの合計含有量の上限は、0.0030%であることがより好ましい。
Ti及びNbは、熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物または炭窒化物を形成して、析出強化によりフェライトを強化し、鋼の延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし破断分離性を向上させる効果がある。従って、上述の効果を得るためにTi含有量の下限を0.05%としてもよく、Nb含有量の下限を0.01%としてもよい。しかし、これら元素を過剰に含有するとその効果が飽和するので、Ti含有量の上限を0.10%とし、Nb含有量の上限を0.05%とする。
Ca、Zr及びMgは、いずれも酸化物を形成し、Mn硫化物の晶出核となりMn硫化物を均一微細分散する効果がある。従って、Ca、Zr及びMgそれぞれの下限値を0.001%としてもよい。一方、いずれの元素も含有量が0.005%を超えると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難となる。これらのことから、Ca、Zr及びMgそれぞれの含有量の上限を0.005%とする。
通常のフェライト・パーライト組織の鋼は、C含有量が増すほど降伏比が低下する。C含有量増大に伴う引張強さの上昇幅に対して、C含有量増大に伴う降伏強さの上昇幅は小さいからである。これは、C含有量が少ないフェライト主体のフェライト・パーライト組織では降伏点現象(不連続降伏)が生じるのに対して、C含有量が多いパーライト主体のフェライト・パーライト組織では、降伏が弾性変形から塑性変形への遷移がなめらかである連続降伏となるためである。
ただし、2面積%未満の範囲内であれば、ベイナイト、マルテンサイト等のフェライト及びパーライト以外の組織の含有は許容される。また、フェライト組織の量は多い方が好ましいので、鋼全体に対するフェライト組織の面積率の上限値は特に限定されないが、本実施形態に係る高強度熱間鍛造非調質鋼部品の化学成分の範囲内では、フェライト組織の面積率の上限値は約50面積%となることが通常である。鋼全体に対するフェライト組織の面積率の上限を35面積%、30面積%、または28面積%としてもよい。
鋳造条件は特に限定されず、通常の条件とすればよい。
熱間圧延条件も特に限定されず、通常の条件とすればよい。
次に、熱間圧延によって直径が45mmの棒鋼形状とした。表2の下線部分は本発明の範囲外の例であることを示す。
これに対して、表2において、比較例APは、フェライト・パーライト組織中のフェライト組織の面積率が20面積%未満のため、降伏比が低く、降伏強さが低い。
比較例AQは、C含有量が少ないため、必要な降伏強さが得られない。
比較例ARは、C含有量が多く、比較例AS及びATは、Mn含有量が少なく、比較例AUは、S含有量が少ないため、フェライト・パーライト組織中のフェライト組織の面積率が20面積%未満である。このため、降伏比が低く、必要な降伏強さが得られない。
比較例AVは、Cr含有量が多く、比較例BMは、N含有量が少ないため、ベイナイト組織が発生する。このため、降伏比が低く、必要な降伏強さが得られない。
比較例AXは、Bi、Sb、Sn、Te及びPbを含有していないため、Bi、Sb、Sn、Te及びPbによるMn硫化物の微細分散効果がなく、フェライト・パーライト組織中のフェライト組織の面積率が20面積%未満となる。このため、降伏比が低く、必要な降伏強さが得られない。
比較例AYは、Biの含有量が多く、かえってBiによるMn硫化物微細分散化効果が低減しフェライト・パーライト組織中のフェライト組織の面積率が20面積%未満となる。このため、降伏比が低く、必要な降伏強さが得られない。
比較例AZ〜BLは、Biに加えて、Sb、Sn、Te、Pbのいずれかの含有量が多く、かえってBi、Sb、Sn、Te、PbによるMn硫化物微細分散化効果が低減しフェライト・パーライト組織中のフェライト組織の面積率が20面積%未満となる。このため、降伏比が低く、必要な降伏強さが得られない。
Claims (3)
- 化学成分が、単位質量%で、
C:0.50〜0.65%、
Si:0.60〜1.20%、
Mn:0.60〜1.00%、
P:0.040〜0.060%、
S:0.060〜0.100%、
Cr:0.05〜0.20%、
V:0.25〜0.40%、
N:0.0020〜0.0080%、
Bi:0.0001〜0.0050%を含有し、さらに
Sb:0.0001〜0.0050%、
Sn:0.0001〜0.0050%、
Te:0.0001〜0.0050%及び
Pb:0.0001〜0.0050%
からなる群から選択される1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
Bi+Sb+Sn+Te+Pbが0.0002〜0.0050%であり、
鋼組織がフェライト・パーライトであり、そのうちフェライト組織の面積率が20面積%以上であることを特徴とする高強度熱間鍛造非調質鋼部品。 - さらに、前記化学成分が、単位質量%で、
Ti:0.10%以下及び
Nb:0.05%以下
からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度熱間鍛造非調質鋼部品。 - さらに、前記化学成分が、単位質量%で、
Ca:0.005%以下、
Zr:0.005%以下及び
Mg:0.005%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度熱間鍛造非調質鋼部品。
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