特許文献1に記載の相互栽培設備100では、ホウレンソウ水耕栽培室101内のホウレンソウの光合成により発生する酸素をキノコ類栽培室102内へ送り、キノコ類栽培室102内のキノコ類の酸素呼吸により発生する二酸化炭素をホウレンソウ水耕栽培室101内へ送り、空気を循環させることで、二酸化炭素の供給量を抑制し、ランニングコストの低減を図っている。
また、第1の気体温度調整装置105の室外機105Bが、キノコ類栽培室102内に配設されることで、その排熱を利用し、キノコ類栽培室102内の温度を上昇させ、ランニングコストの低減を図っている。
しかしながら、ホウレンソウ水耕栽培室101には、二酸化炭素供給管104を介して二酸化炭素を多く含む空気が送り込まれるが、二酸化炭素を多く含む空気がホウレンソウに対して偏って供給されることで、ホウレンソウの成長のばらつき、部分的な成長の阻害、更には、品質低下を招く恐れがある。つまり、ただ単に、ホウレンソウ水耕栽培室101に二酸化炭素を多く含む空気を送り込めば良い訳ではなく、全てのホウレンソウに対して出来る限り均一に二酸化炭素を多く含む空気を供給しなければならないという問題がある。
同様に、キノコ類栽培室102には、室外機105Bを介して冷房運転時の排熱が供給されるが、ただ単に、排熱により室内の一部が高温になれば良い訳ではなく、全てのキノコ類に対して出来る限り均一に所望の栽培条件に適した高温の空気を供給しなければならないという問題がある。
また、相互栽培設備100では、そもそもホウレンソウ水耕栽培室101とキノコ類栽培室102とは、個別の栽培室として形成されているため、ランニングコストの低減にも限界がある。
例えば、ホウレンソウ水耕栽培室101内には、第2の気体温度調整装置106が配設され、第2の気体温度調整装置106を冷房装置として稼働させ、室内温度をホウレンソウの栽培に適した温度まで低下させている。このとき、第2の気体温度調整装置106の室外機106Aは、ホウレンソウ水耕栽培室101の室外へと配設され、上記冷房運転にて発生する熱気は、相互栽培設備100の外部へと排出している。
同様に、キノコ類栽培室102内には、第3の気体温度調整装置107が配設され、第3の気体温度調整装置107を暖房装置として稼働させ、室内温度をキノコ類の栽培に適した温度まで上昇させている。このとき、第3の気体温度調整装置107の室外機107Aは、キノコ類栽培室102の室外へ配設され、上記暖房運転にて発生する冷気は、相互栽培設備100の外部へと排出している。
その結果、相互栽培設備100全体として見ると、ホウレンソウ水耕栽培室101内を冷却する際に発生する熱気を外部へ排出しながら、キノコ類栽培室102内を暖房することになり、栽培室の室温の制御面において、無駄な電気代が発生し、ランニングコストの低減にも限界がある。
更には、キノコ類栽培室102内には、加湿装置108が配設され、キノコ類の栽培条件に適するように、キノコ類栽培室102内を加湿している。このとき、例えば、ポンプから成る除湿水供給装置109、110を用いて、ホウレンソウ水耕栽培室101内にて発生した除湿水を利用している。
その結果、相互栽培設備100全体として見ると、ホウレンソウ水耕栽培室101内を除湿する一方、キノコ類栽培室102内を加湿することなり、非効率な湿度の制御を行うことになり、栽培室の湿度の制御面においても、無駄な電気代が発生し、ランニングコストの低減にも限界がある。
つまり、ホウレンソウ水耕栽培室101の栽培条件は、キノコ類栽培室102の栽培条件と異なるため、それぞれ個別の栽培室として最適の栽培条件に設定することで、栽培管理は容易となる。
しかしながら、植物プラントにおける事業の採算性を向上させるためには、栽培条件の管理は煩雑になる恐れはあるが、複数の植物を同一の栽培室にて栽培し、相互の栽培条件にて補完し合うことで、更なるランニングコストの低減を実現すると共に、1つの栽培室内にて複数の植物を生産する必要がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、葉物野菜とキノコ類とを同一の栽培室に同時に栽培し、電気代や水道代等のランニングコストの低減により事業採算性を向上させると共に、安全且つ高品質な葉物野菜及びキノコ類を栽培する複合栽培プラントを提供することにある。
本発明の複合栽培プラントでは、葉物野菜とキノコ類とを同一の栽培室に配置し、前記葉物野菜と前記キノコ類とを同時に栽培可能な複合栽培プラントにおいて、前記栽培室に、前記葉物野菜及び前記キノコ類を栽培する複数の栽培棚と、前記栽培室内を循環する循環空気を調整する気温湿度調整装置と、前記気温湿度調整装置から前記循環空気が送り込まれると共に、前記循環空気を混合するチャンバー機構と、前記チャンバー機構の開口部から流れ出る前記循環空気を前記栽培棚へと向かうように送風する送風機と、を備え、前記気温湿度調整装置は、前記栽培室の一端側の側面近傍に配設されると共に、前記チャンバー機構の前記開口部は、前記栽培室の前記一端側と対向する他端側の側面近傍に配設され、前記栽培棚は、その長手方向が前記他端側の側面から前記一端側の側面に向けて配設されると共に、隣り合う前記栽培棚の空間が、前記他端側の側面から前記一端側の側面に向けた前記循環空気の送風路として用いられることを特徴とする。
また、本発明の複合栽培プラントでは、前記栽培室に、更に、前記栽培室内の二酸化炭素濃度を計測する濃度センサと、前記栽培室内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記栽培室内の前記循環空気の一部を前記栽培室の外部へ排出する換気扇と、前記換気扇の稼動により外気を前記栽培室へと導入する外気吸入口と、前記栽培室内の前記二酸化炭素濃度を調整する二酸化炭素制御部と、を備え、前記二酸化炭素制御部は、前記濃度センサの計測値が所望の濃度範囲の上限値を超えた場合には、前記換気扇を稼働させ前記栽培室内の前記循環空気を排出すると共に、前記外気吸入口から前記外気を導入する一方、前記濃度センサの計測値が前記所望の濃度範囲の下限値を満たさない場合には、前記二酸化炭素供給装置を稼動させ、前記栽培室内へ前記二酸化炭素を供給することを特徴とする。
また、本発明の複合栽培プラントでは、前記換気扇及び前記外気吸入口は、どちらか一方が前記栽培室の前記一端側の側面に配設され、どちらか他方が前記栽培室の前記他端側の側面に配設されることを特徴とする。
また、本発明の複合栽培プラントでは、前記気温湿度調整装置は、再熱除湿装置と、前記再熱除湿装置よりも台数の多い冷房除湿装置と、を有し、前記再熱除湿装置及び前記冷房除湿装置では、前記循環空気の温度状態及び湿度状態に応じて、同時にまたは交互に稼働し、前記循環空気を前記チャンバー機構へと送り込むことを特徴とする。
また、本発明の複合栽培プラントでは、前記栽培室に、加湿装置は配設されることなく、前記葉物野菜の蒸散作用を用いて前記栽培室内を加湿することを特徴とする。
また、本発明の複合栽培プラントでは、前記キノコ類に噴霧するキノコ用養液を収納するキノコ用養液収納タンクと、前記キノコ用養液収納タンクと連結し、前記栽培棚の長手方向に渡り配設されるキノコ用供給管路と、前記キノコ用供給管路に複数設けられると共に、前記キノコ用供給管路内を流れる前記キノコ用養液を前記キノコ類へと噴霧するキノコ用ノズルと、前記キノコ用供給管路の下方に前記栽培棚の長手方向に渡り配設され、前記キノコ用ノズルから噴霧された前記キノコ用養液を回収するキノコ用回収樋と、前記キノコ用回収樋と連結し、回収した前記キノコ用養液を前記キノコ用養液収納タンクへと戻すキノコ用帰還管路と、を備え、前記キノコ類に噴霧された前記キノコ用養液は、前記キノコ用回収樋及び前記キノコ用帰還管路を介して前記キノコ用養液収納タンクへと戻ることを特徴とする。
また、本発明の複合栽培プラントでは、前記葉物野菜に噴霧する葉物用養液を収納する葉物用養液収納タンクと、前記葉物用養液収納タンクと連結し、前記栽培棚の長手方向に渡り配設される葉物用供給管路と、前記葉物用供給管路に複数設けられると共に、前記葉物用供給管路内を流れる前記葉物用養液を前記葉物野菜へと噴霧する葉物用ノズルと、前記栽培棚の長手方向に渡り配設され、前記葉物用ノズルから噴霧された前記葉物用養液を回収する葉物用回収樋と、前記葉物用回収樋と連結し、回収した前記葉物用養液を前記葉物用養液収納タンクへと戻す葉物用帰還管路と、を備え、前記葉物野菜に噴霧された前記葉物用養液は、前記葉物用回収樋及び前記葉物用帰還管路を介して前記葉物用養液収納タンクへと戻ることを特徴とする。
本発明の複合栽培プラントでは、栽培室内に葉物野菜及びキノコ類を栽培する複数の栽培棚と、栽培室内を循環する循環空気を吸い込む気温湿度調整装置と、気温湿度調整装置から循環空気が送風されるとチャンバー機構と、チャンバー機構の開口部から流れ出る循環空気を栽培棚へと向かうように送風する送風機と、を有している。この構造により、栽培室内を循環する循環空気を形成し、循環空気は、気温湿度調整装置から直接チャンバー機構内に送風され、混合された後に、栽培室内へと送り出される。そして、チャンバー機構から送り出される循環空気は、その温度や湿度等が出来る限り均一化されることで、栽培室内での栽培条件の片寄りを防止し、高品質な葉物野菜及びキノコ類を同時栽培することができる。その結果、1つの栽培室にて複数の植物を栽培し、収穫することができ、事業の採算性が向上される。
また、本発明の複合栽培プラントでは、栽培室内に、栽培室内の二酸化炭素濃度を計測する濃度センサと、栽培室内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、を有している。また、栽培室の側壁には、換気扇と、外気を栽培室へと導入する外気吸入口と、を有している。この構造により、濃度センサの計測値が所望の濃度範囲の上限値を超えた場合には、換気扇が稼働し、栽培室内の循環空気を排出すると共に、外気吸入口から外気を導入する。その一方、濃度センサの計測値が所望の濃度範囲の下限値を満たさない場合には、二酸化炭素供給装置を稼動させ、栽培室内へ前記二酸化炭素を供給する。そして、栽培室内の二酸化炭素濃度を出来る限り均一化させることで、高品質な葉物野菜を栽培することができる。また、キノコ類から発生する二酸化炭素を利用し、葉物野菜の光合成を促進することで、二酸化炭素の使用量を大幅に低減し、事業の採算性が向上される。
また、本発明の複合栽培プラントでは、換気扇及び外気吸入口は、どちらか一方が栽培室の一端側の側面に配設され、どちらか他方が栽培室の他端側の側面に配設されている。この構造により、二酸化炭素の濃度センサの計測値が所望の濃度範囲の上限値を超えた場合には、栽培室内の循環空気を排出し、外気を導入するが、循環空気の流れ方向に沿って外気を流すことで、循環空気の流れを乱すことを防止することができる。
また、本発明の複合栽培プラントでは、気温湿度調整装置は、再熱除湿装置と、再熱除湿装置よりも台数の多い冷房除湿装置と、を有し、再熱除湿装置及び冷房除湿装置では、循環空気の温度状態及び湿度状態に応じて、同時にまたは交互に稼働し、循環空気をチャンバー機構へと送風する。この構造により、再熱除湿装置及び冷房除湿装置が、適宜、稼働することで、電気代を大幅に低減し、ランニングコストも低減することができる。
また、本発明の複合栽培プラントでは、栽培室には、加湿装置は配設されることなく、葉物野菜の蒸散作用を用いて栽培室内を加湿する。この構造により、例えば、キノコ類は、同時栽培の葉物野菜の蒸散作用を利用することで、加湿装置の配設するイニシャルコストや加湿装置を稼働させるランニングコストを省略できると共に、葉物野菜用の照明を利用することで、専用の照明設備が不要となり、複合栽培プラントの事業採算性が向上される。
また、本発明の複合栽培プラントでは、栽培棚にて栽培されるキノコ類に対して噴霧される養液が、回収樋と、回収樋と連結する帰還管路を介して養液収納タンクへと回収される。この構造により、養液内に亜鉛等のミネラル分を含有させ、繰り返しその養液をキノコ類に噴霧することで、収穫後のキノコ類に上記亜鉛等のミネラル分を含有させることができる。
また、本発明の複合栽培プラントでは、栽培棚にて栽培される葉物野菜に対して噴霧される養液が、回収樋と、回収樋と連結する帰還管路を介して養液収納タンクへと回収される。この構造により、養液を回収し、循環させることで、水の使用量を大幅に低減し、ランニングコストを大幅に低減することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係る複合栽培プラントを図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の構成要素には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
図1は、本実施形態の複合栽培プラント10の概略構成を説明する配置図である。図2(A)及び図2(B)は、本実施形態の複合栽培プラント10のチャンバー機構16の概略構成及び循環空気の流れを説明する配置図である。図3(A)及び図3(B)は、本実施形態の複合栽培プラント10のチャンバー機構16の概略構成の変形例及び循環空気の流れを説明する配置図である。
図1に示す如く、複合栽培プラント10は、主に、葉物野菜とキノコ類とを同時栽培する栽培室11と、栽培室11内に複数配列される栽培棚12と、栽培棚12の葉物野菜へ供給する養液を循環させる第1の養液循環装置13と、栽培棚12のキノコ類へ供給する養液を循環させる第2の養液循環装置14と、栽培室11内に配設される気温湿度調整装置15と、気温湿度調整装置15から送風される循環空気を一体に混合するチャンバー機構16と、チャンバー機構16から流れ出た循環空気を送風する複数の送風機18と、栽培室11内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置19と、栽培室11内の二酸化炭素濃度を計測する濃度センサ20と、を有している。
尚、図示したように、紙面左右方向は、栽培室11の長手方向を示し、紙面前後方向は、栽培室11の短手方向を示している。また、図2(B)に示すように、紙面上下方向は、栽培室11の高さ方向を示している。以下の説明では、栽培室11内では、主に、その長手方向に向かって空気の流れをつくり、その空気をチャンバー機構16を介して繰り返し循環させることで、栽培室11内の温度、湿度、二酸化炭素濃度を出来る限りの均一化している。そして、栽培室11内を循環する空気のことを、循環空気と呼び説明する。
本実施形態では、葉物野菜として、レタスを栽培する場合について説明するが、この場合に限定するものではない。葉物野菜としては、例えば、ルッコラ、ホウレンソウ、チンゲン菜、小松菜、春菊、ミツバ、かいわれ等も栽培することができる。
また、本実施形態では、キノコ類としてきくらげを栽培する場合について説明するが、この場合に限定するものではない。キノコ類としては、例えば、ヒラタケ、マイタケ等も栽培することができる。
栽培室11は、実質、密閉型の1つの部屋であり、栽培室11内には、レタスやきくらげが配置された複数の栽培棚12が配列されている。そして、レタスは、主に、きくらげの酸素呼吸にて発生する二酸化炭素も用いて光合成を行う一方、きくらげは、主に、上記光合成により発生する酸素も用いて酸素呼吸を行う。詳細は後述するが、レタスの栽培量はきくらげの栽培量よりも多く、栽培室11内では、定期的に循環空気の二酸化炭素の濃度を計測し、二酸化炭素供給装置19等を用いて、栽培室11内の二酸化炭素濃度を調整している。
栽培棚12は、例えば、栽培室11の長手方向(紙面左右方向)に沿って略並行となるように、その短手方向(紙面前後方向)に前後して一定間隔にて5列配設されている。そして、隣り合う栽培棚12の列の間は、循環空気の送風路として用いられ、栽培室11内の循環空気の流れを阻害することが防止される。この構造により、循環空気が、栽培室11の一定の領域にて淀み難い配置を実現し、栽培室11内の全体、少なくとも、栽培棚12の配設領域における循環空気の流れを確保することで、栽培室11内の温度、湿度、二酸化炭素濃度の出来る限りの均一化を実現している。
第1の養液循環装置13は、レタスに供給する養液を循環させることで、養液に用いる水の使用量を低減すると共に、養液内のミネラル濃度の管理の簡素化を実現する装置である。
第1の養液循環装置13は、例えば、養液が貯蔵されるメインタンク13Aと、メインタンク13Aとポンプ(図示せず)を介して連結するミネラル溶液タンク13Bと、メインタンク13Aの養液をポンプ(図示せず)を介して栽培棚12へと送る供給管路13Cと、栽培棚12のレタスに養液を噴霧する複数のノズル部13D(図5(B)参照)と、ノズル部13Dから噴霧した養液を回収する回収樋13E(図5(B)参照)と、回収樋13Eと連結し、ポンプ(図示せず)を介して回収した養液をメインタンク13Aへと戻す帰還管路13Fと、第1の養液循環装置13を電子制御する制御部(図示せず)と、を有している。尚、メインタンク13A等は、栽培室11と隣室の機械室17に配設され、栽培室11と機械室17とは、側壁11Aにより区画されている。また、メインタンク13Aには、PH管理用のタンク(図示せず)も連結されると共に、取り扱うミネラル溶液の数に応じて、複数のミネラル溶液タンク13Bも連結されている。
制御部では、メインタンク13A内の養液量を計測し、メインタンク13A内の養液量が、所定の設定値よりも低下した際には、水道水をメインタンク13A内に追加する。一方、制御部では、ECセンサやPHセンサ等により、メインタンク13Aの養液内のミネラル濃度等を計測し、ミネラル溶液タンク13Bから、適宜、ミネラル溶液を補充し、ミネラル濃度が所定の設定値の範囲内となるように管理する。尚、メインタンク13Aの養液は、適宜、フィルター(図示せず)を用いて、養液内のゴミ等の不純物は除去されている。
また、制御部では、定期的に、メインタンク13A内の養液を供給管路13C及びノズル部13Dを介してレタスの根に向けて噴霧させるが、その噴霧した養液の残部は、回収樋13E及び帰還管路13Fを介して回収される。つまり、レタスに供給される養液を循環式とすることで、水道水の使用量を大幅に低減することができると共に、噴霧作業毎に、養液を最初から作製する必要がない。そして、メインタンク13Aでは、各種センサにより計測し、不足分の水やミネラル溶液をメインタンク13Aの養液へと補充すればよく、養液の管理が容易となる。
第2の養液循環装置14は、例えば、養液が貯蔵されるメインタンク14Aと、メインタンク14Aとポンプ(図示せず)を介して連結するミネラル溶液タンク14Bと、メインタンク14Aの養液をポンプ(図示せず)を介して栽培棚12へと送る供給管路14Cと、栽培棚12のきくらげに養液を噴霧する複数のノズル部14D(図5(C)参照)と、ノズル部14Dから噴霧した養液を回収する回収樋14E(図5(C)参照)と、回収樋14Eと連結し、ポンプ(図示せず)を介して回収した養液をメインタンク14Aへと戻す帰還管路14Fと、第2の養液循環装置14を電子制御する制御部(図示せず)と、を有している。尚、メインタンク14A等は、機械室17に配設されている。また、メインタンク14Aには、PH管理用のタンク(図示せず)も連結されると共に、取り扱うミネラル溶液の数に応じて、複数のミネラル溶液タンク14Bも連結されている。
第2の養液循環装置14も、第1の養液循環装置13と同じ機構であり、きくらげに供給される養液を循環式とすることで、水道水の使用量を大幅に低減すると共に、噴霧作業毎に、養液を最初から作製する必要がない。そして、メインタンク14Aでは、各種センサにより計測し、不足分の水とミネラル溶液とをメインタンク14Aの養液へと補充すればよく、養液の管理が容易となる。
本実施形態では、第2の養液循環装置14にて循環させる養液内に、ミネラル分として、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム等の少なくとも1つを含有させ、定期的にきくらげに噴霧している。そして、きくらげの栽培期間は、約1ヶ月程度であるが、その栽培期間中、上記養液を噴霧し続けることで、特に、亜鉛に関しては、収穫した生きくらげから3.99mg/100gが測定された。ここで、文部科学省の食品データベースの食品成分の基準値では、きのこ類(きくらげ類)の乾燥あらきくらげでは、亜鉛の含有量が、0.8mg/100gとなっている。この数値は、乾燥きくらげに対する数値であり、生きくらげの90%は水分からなっているので、この数値を生きくらげに換算すると、0.08mg/100gとなることからも、約50倍の亜鉛を含有させることに成功した。
気温湿度調整装置15として、栽培室11内に1台の再熱除湿装置15Aと、2台の冷房除湿装置15B、15Cとが配設されているが、それぞれの台数は、栽培室11の大きさや栽培する植物の種類等により任意の設計変更が可能である。再熱除湿装置15Aは、例えば、栽培室11内の湿度を45%から80%の範囲にて設定可能である。本実施形態では、栽培室11内にて栽培される植物の組み合わせ等が考慮され、栽培室11内の湿度は、例えば、80%に設定される。一方、冷房除湿装置15B、15Cも、栽培室11内にて栽培される植物の組み合わせ等が考慮され、栽培室11内の温度は、例えば、22度に設定される。尚、栽培室11内には、加湿装置は配設されることなく、レタスの蒸散作用を用いて栽培室11内を加湿することで、複合栽培プラント10のイニシャルコスト及びランニングコストを低減することができる。
チャンバー機構16は、一点鎖線にて示すように、栽培室11の天井側に配設され、例えば、チャンバー部16Aと、ダクト部16Bとを有し、透明のポリエチレン袋により形成されている。チャンバー部16Aは、気温湿度調整装置15を構成する各装置15A、15B、15Cの送風口と連結し、各装置15A、15B、15Cから送風された循環空気は、チャンバー部16A内へと送り込まれ、混合される。そして、循環空気の温度、湿度、二酸化炭素濃度は、チャンバー部16A内にて出来る限り均一化された状態となり、その後、循環空気は、ダクト部16Bを介して栽培室11内へと送り出される。この空調機構により、栽培室11内では、気温湿度調整装置15から、直接、栽培室11内へと調整された空気が送り出される場合と比較して、栽培室11内での温度、湿度及び二酸化炭素濃度の片寄りが大幅に低減される。
ダクト部16Bは、チャンバー部16Aと連通し、例えば、透明のポリエチレン袋により形成されている。ダクト部16Bは、一点鎖線にて示すように、栽培棚12上方の栽培室11の天井側に配設され、栽培室11の長手方向(紙面左右方向)に沿って2本配設されている。そして、ダクト部16Bの一端側はチャンバー部16Aと連通し、ダクト部16Bの他端側には開口部16Cが形成されている。循環空気は、ダクト部16Bを流れる間に更に混合され、その温度、湿度及び二酸化炭素濃度が出来る限り均一化される。
送風機18は、ダクト部16Bの開口部16C近傍及び栽培棚12の長手方向の中間部等に複数台配設され、循環空気の流れをサポートしている。詳細は後述するが、栽培室11の長手方向の一端側の側壁11A近傍には、気温湿度調整装置15が配設され、栽培室11の長手方向の他端側の側壁11B近傍には、複数台の送風機18が配設されている。そして、側壁11B近傍にて栽培室11内へと送り出された循環空気は、複数台の送風機18により側壁11A側へと送風され、気温湿度調整装置15にて吸い込まれる。つまり、栽培棚12の配設領域では、側壁11B側から側壁11A側へと循環空気が流れることで、栽培室11内での温度、湿度、二酸化炭素濃度の出来る限りの均一化が実現される。
二酸化炭素供給装置19が、栽培室11内に配設され、例えば、二酸化炭素を供給するボンベ(図示せず)と、ボンベに配設される電磁弁(図示せず)と、ボンベと連結し、二酸化炭素を栽培棚12近傍へと送る供給管路19Aと、電磁弁及び換気扇21(図2(B)参照)を電子制御する二酸化炭素制御部(図示せず)と、を有している。供給管路19Aは、例えば、透明のナイロンチューブから形成され、栽培棚12の側方であり、栽培棚12の長手方向に渡り配設されている。供給管路19Aには、複数の開口部(図示せず)が形成され、二酸化炭素は、上記開口部を介して栽培棚12に対して出来る限り均一に供給される。
詳細は後述するが、例えば、2列目の栽培棚12の2段目に栽培室11内の二酸化炭素濃度を計測する濃度センサ20が配設されている。そして、二酸化炭素制御部では、濃度センサ20による計測値に応じて、上記計測値が所望の設定値の下限値よりも低下した際には、上記ボンベから栽培室11内へ二酸化炭素を供給する一方、上記計測値が、所望の設定値の上限値よりも上昇した際には、換気扇21を稼働させ、栽培室11内を負圧とすることで、外気吸入口22(図2(B)参照)から外部空気を栽培室11内へ取り込み、栽培室11内の二酸化炭素濃度を調整する。
図2(A)に示す如く、気温湿度調整装置15を構成する再熱除湿装置15A及び冷房除湿装置15B、15Cは、栽培室11の長手方向(紙面左右方向)の一端側の側壁11A近傍に配設され、例えば、栽培室11の短手方向(紙面前後方向)の中央に再熱除湿装置15Aが配設され、その両側に冷房除湿装置15B、15Cが配設されている。そして、再熱除湿装置15A及び冷房除湿装置15B、15Cは、栽培室11内の循環空気を吸い込み、吸い込んだ循環空気を設定された条件の温度と湿度へと調整した後、チャンバー部16Aへと循環空気を送り出す。尚、循環空気内の二酸化炭素濃度は、気温湿度調整装置15では調整されず、その二酸化炭素濃度の状態にてチャンバー部16Aへと送風される。
図2(B)に示す如く、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cは、直接、循環空気を栽培室11内へと送り出すのではなく、チャンバー部16A内へと送り出すことで、栽培室11内の温度、湿度、二酸化炭素濃度が片寄ることを防止することができる。
具体的には、栽培室11は、広い1つの空間であり、特に、気温湿度調整装置15の周辺空間と、気温湿度調整装置15から離れた空間の温度と湿度とを出来る限り均一化することは難しい。気温湿度調整装置15では、栽培室11内を設定温度や設定湿度に保つために、設定温度よりも暖かい循環空気や冷たい循環空気、設定湿度よりも高い湿度の循環空気や低い湿度の循環空気を送り出す。そのため、気温湿度調整装置15の稼働開始時、再稼働開始時や真夏等の外気温の影響が大きい環境下等において、気温湿度調整装置15から直接空気を栽培室11へと送り出す空調機構では、その周辺空間において、所望の栽培条件へと調整し難くなる。その一方、上記問題を解決するための1つの空調機構としては、多くの台数の再熱除湿装置15A及び冷房除湿装置15B、15Cを配設し、稼働させることが考えられるが、この空調機構では、イニシャルコストやランニングコストの低減を図り難く、従来の課題である事業採算性の問題が解決できない恐れがある。
そこで、本実施形態では、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cから栽培室11内へ、直接、調整された循環空気を送り出す空調機構ではなく、先ずは、チャンバー部16A内にて、各装置15A、15B、15Cから送り込まれた循環空気を混合する。そして、混合された循環空気は、ダクト部16Bを介して更に混合されながら、気温湿度調整装置15の配設領域と反対側の側壁11B近傍まで送風される。その後、循環空気は、ダクト部16Bの開口部16Cから栽培室11内へと送り出された後、送風機18を介して、側壁11Bの上方側から斜め下方側へと向けて送風される。
その結果、矢印にて示すように、循環空気は、栽培棚12へと向けて送風され、各栽培棚12間の空間を送風路として利用し、紙面右回り方向に栽培室11内を循環する。図2(A)に示す如く、ダクト部16Bは、例えば、栽培室11の手前側から2列目と4列目の栽培棚12上方に配設され、ダクト部16Bの開口部16Cから送り出された循環空気は、開口部16C近傍に配設された複数台の送風機18により、栽培室11の全体に行き渡るように送風される。そして、各栽培棚12間の長手方向の中間部にも送風機18が配設され、循環空気を上記紙面右回り方向へと送風している。
循環空気は、栽培棚12の配設領域を抜けた後、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cから吸い込まれ、各装置15A、15B、15Cの設定条件に再調整された後に、チャンバー部16Aに向けて送風され、チャンバー部16A及びダクト部16B内にて混合される。つまり、チャンバー部16A等を介してその温度及び湿度が出来る限り均一化された循環空気が、栽培室11内へと送り込まれることで、栽培室11内での栽培条件の片寄りが発生し難くなる。そして、栽培室11内の全体にて、レタスやきくらげの成長不足の発生を抑止し、高品質のレタスやきくらげを栽培することができる。
ここで、外気温等の外部環境、栽培室11内のレタスの栽培量やきくらげの栽培量等により、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cの設定条件は、適宜、変更されるが、その一例として、以下の条件にて設定されている。再熱除湿装置15Aは、栽培室11内の湿度を調整する装置であり、例えば、湿度80%に設定され、栽培室11内の湿度を75%〜85%の範囲にて調整している。また、冷房除湿装置15B、15Cは、栽培室11内の温度を調整する装置であり、例えば、温度22度に設定され、栽培室11内の温度を21度〜24度の範囲にて調整している。
冬季等、外気温が栽培室11の設定温度よりも低い状況下では、栽培室11内の温度は、気温湿度調整装置15を使用しないと、設定温度である22度よりも低下するため、冷房除湿装置15B、15Cは、稼働しないか、あるいは、稼働頻度が低下した状態となる。一方、再熱除湿装置15Aは、湿度により設定され、栽培室11内では、レタスの蒸散作用により、除湿を行わないと、その湿度が100%に近い状況となるため、稼働頻度が増加した状態となる。そして、再熱除湿装置15Aは、栽培室11内の循環空気の湿度が80%となるように除湿をしながら、循環空気を、例えば、室温+13度程度に暖める。その結果、チャンバー部16A内には、再熱除湿装置15Aにより暖められた循環空気が送風されることで、栽培室11内の温度は、設定温度である22度に向けて調整される。
つまり、外気温が栽培室11の設定温度よりも低い状況下では、再熱除湿装置15Aが中心に稼働し、冷房除湿装置15B、15Cは稼働しないか、ほとんど稼働しない状態となる。その結果、各装置15A、15B、15Cが同時に稼働し、循環空気を暖めながら、冷やすという非効率な空調方法が大幅に低減することで、電気代を大幅に低減し、ランニングコストを大幅に低減することができる。尚、冷房除湿装置15B、15Cは、再熱除湿装置15Aにより、栽培室11内の温度が、設定温度である22度以上になった場合に稼働し、栽培室11内の温度及び湿度を調整する。
一方、夏季等、外気温が栽培室11の設定温度よりも高い状況下では、栽培室11内の温度は、気温湿度調整装置15を使用しないと、設定温度である22度よりも上昇するため、冷房除湿装置15B、15Cの稼働頻度が増加した状態となる。一方、再熱除湿装置15Aは、湿度により設定され、栽培室11内では、レタスの蒸散作用により加湿された状況となるが、冷房除湿装置15B、15Cでも除湿を行うため、その除湿状況に応じて、適宜、稼働するが、その稼働時間は大幅に低減される。
上述したように、再熱除湿装置15Aは、除湿の際に、循環空気を室温+13度程度に暖めるため、外気温が室温よりも高い状況下では、電気代の面からは出来る限り稼働しない方が良く、冷房除湿装置15B、15Cの台数を再熱除湿装置15Aの台数よりも多くし、栽培室11内の湿度調整を早めることで、出来る限り再熱除湿装置15Aが稼働しない状況とし、循環空気を冷やしながら、暖めるという、非効率な状況が発生しないように、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cの台数を設計している。
その結果、チャンバー部16A内へは、栽培室11内の湿度状況にもよるが、冷房除湿装置15B、15Cにより冷やされた循環空気がメインに供給され、栽培室11内の温度は、設定温度である22度に向けて調整される。つまり、外気温が栽培室11の設定温度よりも高い状況下では、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cが稼働するが、再熱除湿装置15Aの稼働時間を出来る限り低減させることで、電気代の低減を図り、ランニングコストを低減することができる。
次に、図3(A)及び図3(B)を用いて、図2(A)及び図2(B)を用いて説明したチャンバー機構16の変形例を説明する。尚、図3(A)及び図3(B)の説明では、図2(A)及び図2(B)の説明を適宜参照し、異なる構造を中心に説明する。
図3(A)に示す如く、チャンバー機構16は、更に、チャンバー部16Dを有する場合でも良い。つまり、栽培室11の長手方向の両側壁11A、11B近傍にチャンバー部16A、16Dを配設し、チャンバー部16A、16D同士を2本のダクト部16Bにて連通している。そして、チャンバー部16Dの下面には、例えば、栽培棚12の延長線上に5つの開口部16Eが形成されている。この構造により、チャンバー機構16を流れる循環空気は、栽培室11内に送り込まれる前に、再び、チャンバー部16Dにおいても混合される。その結果、チャンバー機構16から送り出される循環空気の温度、湿度及び二酸化炭素濃度は、出来る限り均一化される。
図3(B)に示す如く、チャンバー部16D内の循環空気は、5つの開口部16Eを介して栽培室11の下方に向けて送り出された後、送風機18を介して、側壁11B側から側壁11A側へと向けて送風される。そして、矢印にて示すように、循環空気は、栽培棚12へと向けて送風され、各栽培棚12間の空間を送風路として利用し、紙面右回り方向に栽培室11内を循環する。その結果、上述したように、栽培室11内での栽培条件の片寄りが解消され、栽培室11内全体にて、レタスやきくらげの成長不足の発生を抑止し、高品質のレタスやきくらげを栽培することができる。
図4(A)は、本実施形態の栽培室11内の照明に関する電気使用量を説明する説明図である。図4(B)は、本実施形態の栽培室11内の空調に関する電気使用量を説明する説明図である。尚、図4(A)及び図4(B)では、月ごとの電気使用量の平均値を示している。
先ず、栽培プラントの経緯として、本願発明者である宮下氏が、平成24年6月からレタス単独の栽培プラントを開始し、レタス単独の栽培を平成28年9月まで継続していた。このレタス単独の栽培プラントでは、栽培室11内に3台の冷房専用空調装置を配設し、各冷房専用空調装置から、直接、栽培室11内へ設定温度に調整された空気を送り出していた。また、レタスへ光を照射するため、Hf蛍光灯を使用することで、その発熱量により栽培室11内は暖められるため、各冷房専用空調装置により栽培室11内の温度を低下させることで対応可能であった。
平成28年9月からレタスときくらげを同一部屋にて同時栽培する複合栽培プラント10を開始し、栽培室11内の温度、湿度及び二酸化炭素濃度やランニングコストに関して、試行錯誤を重ねていた。その1つの改善策として、平成28年9月にHf蛍光灯からLED蛍光灯に変更することで、図3(A)の丸印23にて示すように、大幅な電気使用量の低減を実現した。しかしながら、その弊害として、LED蛍光灯からの発熱量も大幅に低減され、各冷房専用空調装置だけでは、栽培室11内の湿度を設定湿度に維持することが難しくなった。その結果、栽培室11内の湿度を設定範囲内に低減させるために、栽培室11内の温度を低下させるしかなく、栽培室11内の温度が22度より大幅に低下し、レタス及びきくらげの成長が鈍化し、収穫のサイクルが遅くなり、採算性が悪化する結果となった。尚、平成28年9月時点では、売上に対する電気料金比が、0.313であり、事業採算性の観点からは厳しい数字であった。
更に、レタスときくらげの同時栽培の試行錯誤を重ねる中にて、レタスの栽培条件ときくらげの栽培条件の重畳領域にて、栽培室11内の温度、湿度及び二酸化炭素濃度を管理することで、複合栽培プラント10での同時栽培を実現できることを発見した。しかしながら、上記栽培条件の重畳領域は、例えば、栽培室11内の温度を22度〜24度、湿度を75〜85%、二酸化炭素濃度を700±50PPMとする必要がある。そのため、栽培室11内を上記栽培条件の範囲にてコントロールするためには、特に、上記栽培条件の微調整が行える空調機構を構築すると共に、採算性の観点からも電気代等のランニングコストも低減させる必要があった。
そこで、平成29年11月から、図1及び図2を用いて説明したように、1台の再熱除湿装置15A及び2台の冷房除湿装置15B、15Cにより気温湿度調整装置15を構成すると共に、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cから栽培室11内へ、直接、調整された循環空気を送り出すのではなく、先ずは、チャンバー機構16内にて、各装置15A、15B、15Cからの循環空気を混合した後、その混合した空気を栽培室11内に循環させる空調機構を構築し、更なる試行錯誤を重ねている。
上記循環式の空調機構により、図2(A)及び図2(B)を用いて上述したように、外気温等の外部環境等に応じて、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cが、適宜、稼働することで、図3(B)の丸印24示すように、少なくとも冬場においては、空調に係る大幅な電気使用量の低減を実現した。尚、夏場での気温湿度調整装置15の稼働はこれからであるが、4月の外気温が室温を上回る日においても、電気使用量が大幅に上昇することは発生していない。
尚、図2(B)に示す如く、きくらげは、手前側から2列目及び3列目の栽培棚12の最下段である1段目の収納スペース12Aに配置されている。そして、きくらげを栽培する収納スペース12Aには、LED照明は配設されてなく、その上段のレタスを栽培する収納スペース12Aに配設されたLED照明の漏れた光を利用している。つまり、複合栽培プラント10では、きくらげ専用のLED照明を有してなく、この構造からも電気代のランニングコストを低減させることができる。
図5(A)及び図5(B)は、本実施形態の栽培室11内でのレタスの栽培状況を説明する説明図である。図5(C)は、本実施形態の栽培室11内でのきくらげの栽培状況を説明する説明図である。
先ず、本実施形態では、図2(A)に示す如く、栽培棚12は、栽培室11の長手方向(紙面左右方向)に延在して配設されると共に、栽培室11の短手方向(紙面前後方向)に前後して略並列に5列配設されている。そして、各栽培棚12は、上下方向に仕切板12Bにて区画され、例えば、5段の収納スペース12Aを有し、各収納スペース12A毎にレタスやきくらげが配置され、栽培されている。
図2(B)に示す如く、本実施形態では、レタスは、上記5列の栽培棚12の全てに配置され、きくらげは、手前側から2列目及び3列目の栽培棚12の最下段である1段目の収納スペース12Aに配置されている。つまり、レタスは、手前側から1列目、4列目、5列目の栽培棚12の5段全ての収納スペース12A及び手前側から2列目及び3列目の栽培棚12の2段目から5段目の収納スペース12Aに対して配置されている。
図5(A)に示す如く、レタスは、RSファーム(ラックスプレーファーム)という方法にて栽培され、外部から遮断された、実質、密閉空間である栽培室11内にて、完全無農薬栽培であり、環境汚染や自然災害、害虫の心配もなく栽培されている。そして、レタスは、複数のレタスを一定間隔にて配列できる栽培パネル31に仮植された後、栽培パネル31毎に収納スペース12Aへと配置される。
図5(B)に示す如く、レタスが配置される栽培棚12の収納スペース12Aでは、栽培パネル31の下方側には、レタスに供給する養液を回収する回収樋13Eが配設されている。回収樋13Eは、仕切板12B上面に配設され、その上方が開口すると共に、その断面が略コの字形状の箱状態であり、栽培棚12の栽培室11の長手方向に延在して配設されている。そして、回収樋13Eの上面開口領域は、栽培パネル31にて蓋をされた状態となり、回収樋13Eの底面の両端部には、一対の供給管路13Cが、回収樋13Eの延在方向に配設されている。上述したように、供給管路13Cには、一定間隔にてレタスの根に向けて養液を噴霧する複数のノズル部13Dが配設されている。
この構造により、栽培パネル31から回収樋13E内へと導出したレタスの根に対して養液を定期的に噴霧しながらレタスを栽培することで、一般的な水耕栽培と比較すると、使用する水の量を5分の1程度に低減することができ、ランニングコストを低減することができる。更に、上述したように、第1の養液循環装置13では、回収樋13E及び帰還管路13Fを介してメインタンク13Aへと養液を回収することで、養液の構成が崩れ難く、養液内のミネラル濃度の管理が容易となる。そして、ミネラル溶液の使用量も7分の1程度に低減することができ、ランニングコストを低減することができる。
図5(C)に示す如く、きくらげが配置される栽培棚12の収納スペース12Aでは、栽培棚12の長手方向に沿って、その両側に一対の供給管路14Cと、一対の回収樋14Eとが配設されている。きくらげは、菌床栽培により栽培され、栽培棚12の仕切板12Bの上面に菌床が収納された複数の袋体32が配設される。図示したように、袋体32は、栽培棚12の短手方向に一対配設され、回収樋14E側に位置する袋体32の一部が複数箇所開口されることで、その開口領域からきくらげが成長する。
供給管路14Cには、一定間隔にて袋体32の開口を有する側面に向けて養液を噴霧する複数のノズル部14Dが配設されている。そして、ノズル部14Dから袋体32の側面に向けて噴霧される養液量は、例えば、きくらげの成長段階に応じて、栽培棚12のライン毎にコントロールされている。図示したように、回収樋14Eは、栽培棚12の仕切板12B上面も覆うように配設され、ノズル部14Dからは、栽培棚12の内部に向けて斜め下方に養液が噴霧されることで、養液が、栽培室11の床面に垂れる落ち、床面を汚すことを大幅に低減している。更に、第2の養液循環装置14でも、回収樋14E及び帰還管路14Fを介してメインタンク14Aへと養液を回収することで、養液の構成が崩れ難く、養液内のミネラル濃度の管理が容易となる。そして、ミネラル溶液の使用量も大幅に低減することができ、ランニングコストを低減することができる。
最後に、きくらげは、酸素呼吸を行うため、循環空気内の酸素を吸込み、二酸化炭素を排出する。そのため、きくらげが配置された栽培室11の手前側から2列目及び3列目の栽培棚12の最下段の収納スペース12A周辺では、二酸化炭素濃度が高まる領域となる。その一方、レタスは、光合成により二酸化炭素を吸込み、酸素を排出する。しかしながら、レタスは、必要以上の二酸化炭素を吸い込むことで、成長障害を起こす恐れがある。そのため、きくらげの配置領域の下段にレタスの配置領域を設けると、きくらげから排出された二酸化炭素が、直接レタスへ供給されるため好ましい配置ではない。
そこで、本実施形態では、きくらげを栽培棚12の最下段に配設し、その配置領域から発生した二酸化炭素は、酸素との比重差により栽培室11の床面に向けて下降するようにしている。そして、図2(A)及び図2(B)を用いて上述したように、栽培室11内には、紙面右回りの循環空気の流れを発生させることで、きくらげから発生した二酸化炭素は、循環空気により、栽培棚12の配設領域を抜けた後、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cにより吸い込まれる。そして、気温湿度調整装置15の各装置15A、15B、15Cにて吸い込まれ循環空気内の二酸化炭素は、そのまま各装置15A、15B、15Cからチャンバー機構16に向けて送り出され、チャンバー機構16内にて混合される。
その結果、循環空気内の二酸化炭素濃度は、出来る限り均一化された後、栽培室11内へと送り込まれることで、栽培室11内での二酸化炭素濃度の片寄りの発生を防止することができる。つまり、レタスは、全ての栽培棚12にて栽培されるが、上記二酸化炭素濃度の片寄りを防止することで、二酸化炭素の低濃度によるレタスの成長の鈍化や二酸化炭素濃度の過剰供給による成長障害等を防止することができる。そして、複合栽培プラント10では、上述した狭い範囲内での栽培条件の微調整が可能となり、高品質なレタスやきくらげの栽培を実現すると共に、平成30年3月時点において、売上に対する電気料金比が、0.159となり、事業採算性の観点からも大幅に改善されている。
尚、図2(A)に示す如く、二酸化炭素濃度を計測する濃度センサ20は、2列目の栽培棚12の中央部の2段目の1か所に配設されている。上述したように、二酸化炭素供給装置19の二酸化炭素制御部では、濃度センサ20による計測値に応じて、上記計測値が所定の設定値の下限値よりも低下した際には、栽培室11内へ二酸化炭素を供給する。その一方、上記計測値が、所定の設定値の上限値よりも上昇した際には、換気扇21を稼働させ、循環空気の位置を排出し、外気吸入口22から外部空気を栽培室11内へ取り込むことで、栽培室11内の二酸化炭素濃度を調整する。そして、レタスの光合成により発生する二酸化炭素を利用することで、二酸化炭素供給装置19の稼働時間を低減し、二酸化炭素の使用量も大幅に低減し、ランニングコストを低減している。
尚、本実施形態では、栽培室11内の2列目及び3列目の栽培棚12の最下段にのみ、きくらげが配置され、栽培される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、2列目及び3列目の栽培棚12において、きくらげは、レタスよりも下段側に配列されていれば良く、きくらげの栽培量に応じて、栽培棚12の上側の2段にレタスを配設し、その下側の3段にきくらげを配置する場合でも良い。
また、外気吸入口22が、栽培室11の側壁11Aに設けられ、換気扇21が、栽培室11の側壁11Bに設けられる場合について説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、外気吸入口22が、栽培室11の側壁11Bに設けられ、換気扇21が、栽培室11の側壁11Aに設けられる等、栽培室11内の二酸化炭素濃度が調整出来れば、それらの設置箇所は任意の設計変更が可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。