本開示に係る眼科装置の一実施形態としての実施例1の眼科装置10を、図1から図4を用いて説明する。眼科装置10は、ベース11と駆動部12と架台13とヘッド部14と顔受け部15と操作レバー16と表示部17とを有する。眼科装置10では、ベース11に駆動部12を介して架台13が設けられ、駆動部12によりベース11に対して架台13が前後左右上下に移動可能とされる。ベース11には、被検者の顔を固定する顔受け部15が設けられる。架台13には、ヘッド部14が設けられる。操作レバー16は、架台13に設けられ、傾倒されるとヘッド部14の前後左右方向への移動操作となり、軸線を回転中心として回転されるとヘッド部14の上下方向への移動操作となる。操作レバー16では、頂部にボタンスイッチ16aが配置され、ボタンスイッチ16aを押下することで眼情報の取得が開始される。表示部17は、ヘッド部14に設けられ、一例として液晶表示装置(LCDモニタ)で構成してタッチパネル式の表示画面とされている。レバー16による操作は、表示部17のタッチパネルで同様に行えるものとしてもよい。眼科装置10では、上記した構成の他に、測定完了信号や測定者からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタや、測定結果を外部メモリやサーバーに出力する出力部が設けられる。
ヘッド部14には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部18が設けられる。制御部18は、図2に示すように、接続された記憶部19または内蔵する内部メモリ18aに記憶したプログラムに基づき、眼科装置10の動作を統括的に制御する。制御部18は、後述する眼情報取得部21における測定用の光学系の光源やアライメント用の光学系の光源およびセンサ類が接続され、適宜それらを制御する。制御部18は、眼情報取得部21における測定に必要な光学系の動作部が接続され、適宜それらを駆動(移動も含む)させる。制御部18は、駆動部12、操作レバー16および表示部17に接続され、操作レバー16や表示部17(そのタッチパネル)に為された操作や上記のプログラムに従い、眼情報取得部21で取得した画像や眼特性等の眼情報を表示部17に適宜表示させる。制御部18は、駆動部12や上記した各光源や各動作部を適宜制御する。
ヘッド部14には、被検眼の眼情報を取得する眼情報取得部21が設けられる。その眼情報は、被検眼の画像や、被検眼の眼底の画像や、被検眼の網膜の断層画像や、被検眼の角膜内皮画像や、被検眼の屈折力や、被検眼の角膜形状や、被検眼の眼圧等をいう。眼情報取得部21は、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置(OCT)、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独でまたは複数組み合わされて構成される。
眼情報取得部21は、固視投影系、観察系、アライメント検出系、測定系等の光学系が設けられて構成され、各光学系には適宜光源やセンサ、駆動部等が設けられる。固視投影系は、被検眼に固視視標を呈示して、被検眼の視軸を固定する。観察系は、被検眼の前眼部を撮影し、その画像(観察画像)を表示部17に表示させる。これにより、被検眼の状態の確認を可能とするとともに、画像中の基準点(瞳孔や虹彩など)や投影した視標像に基づく光軸に直交する方向(XY方向)のアライメント情報の取得を可能とする。アライメント検出系は、眼情報取得部21の光軸方向(Z方向(作動距離方向))のアライメント情報やXY方向のアライメント情報を取得する。そのアライメント情報は、眼情報取得部21の被検眼に対するアライメント(位置合わせ)に用いる情報である。測定系は、被検眼の眼特性を取得するための光束を被検眼に照射し、反射光を受光することで眼特性を取得する。
眼科装置10は、制御部18の制御下で、自動でアライメントを行って被検眼の眼情報を取得する設定取得処理(後述するステップS2からステップS4が相当する)を行うことが可能とされている。その設定取得処理は、予め定められたものであり、記憶部19または内部メモリ18aにプログラムとして記憶され、そのプログラムに従って制御部18が各部を動作させることにより実行される。この設定取得処理では、眼情報取得部21(そのアライメント検出系)および駆動部12が動作されて、上記のように被検眼に対する眼情報取得部21(ヘッド部14)のXYZ方向のアライメントが行われる。その後、設定取得処理では、適宜眼情報取得部21が駆動されて、被検眼の各種の眼情報が取得される。眼科装置10は、予め定められた設定取得処理では被検眼の各種の眼情報を取得できない場合、手動すなわち検者が操作レバー16や表示部17を操作することで、被検眼に対して眼情報取得部21をアライメントし、眼情報取得部21を駆動して被検眼の各種の眼情報を取得することができる(後述するステップS12およびステップS13が相当する)。
本開示に係る眼科装置10では、図2に示すように、制御部18に学習部31が接続されている。学習部31は、設定取得処理とは異なる眼情報取得部21や駆動部12の動作、すなわち手動での眼情報取得部21や駆動部12の動作(動作データ)に基づいて学習して新たな取得処理(学習取得処理)を生成する。学習部31は、いわゆる人工知能(AI(Artificial Intelligence))を用いて構成されていてもよい。その学習取得処理は、予め定められた設定取得処理では眼情報を取得できない状況の被検眼の眼情報を取得する方法(解決法)である。学習部31は、実施例1では動作データと状況データとを取得して蓄積し、それらに基づいて学習取得処理を生成する。これについて、以下で説明する。
状況データは、設定取得処理では眼情報を取得できない場合の被検眼の状況を示すものであり、一例として被検者(被検眼)の情報や観察系で取得される被検眼の観察画像(静止画および動画)やアライメント検出系から得られるデータ等があげられる。被検者(被検眼)の情報は、例えば、被検者の年齢や性別、被検眼の既往症等があり、操作レバー16や表示部17等を用いて入力したり、眼科装置10に接続した外部機器等から取得したりする。
動作データは、設定取得処理では眼情報を取得できない状況において手動で行われた眼情報取得部21や駆動部12の動作、すなわち検者が行った眼情報取得部21のアライメント動作(移動速度や移動の履歴等)や眼情報取得部21による眼情報の取得動作(焦点距離やゲインや露光量等)である。動作データは、その動作が為された際の状況データと関連付けられる。眼科装置10では、眼情報取得部21および駆動部12が、操作レバー16や表示部17への操作に従って制御部18の制御下で動作するので、このような動作データ(動作履歴)の取得が可能とされている。
学習部31は、各状況データおよび各動作データを取得し、それらに基づいて設定取得処理では眼情報を取得できなかった状況において検者が手動により被検眼の眼情報を取得した動作を適宜解析することで、以後の同じような状況の被検眼の眼情報を取得する方法である学習取得処理を生成する。学習部31は、一例として、各状況データの特徴点を求めることで、どのような状況であるかの判断を可能とする。この状況としては、例えば、被検眼において、眼球振盪(眼振)が生じていることや、瞬きが頻繁であることや、虹彩や角膜の疾患等により、アライメントが適切に行えないことがあげられる。これらは、被検眼の観察画像から求めることができる。また、小瞳孔眼や白内障眼などの場合、アライメントが適切に行えたにも拘らず、被検眼の眼情報を適切に取得できないことがある。この状況は、被検眼の観察画像や各種測定結果から求めることができる。
学習部31は、一度の状況データおよび動作データから学習取得処理を生成してもよいが、より好適には、複数の状況データの中から同じような状況を割り出し、その状況に対応する複数の動作データの特徴点を求めることで最適な動作としての学習取得処理を生成する。以下では、特定の状況に対する手動による動作と、それに基づく学習取得処理と、のいくつかの例について述べる。
小瞳孔の被検眼に対しては、瞳孔中心と角膜頂点との位置ズレがある場合、角膜頂点(角膜反射像)に対してアライメントを完了しても測定光束が被検眼虹彩でケラレて測定ができない場合がある。検者は、このような状況では、角膜反射指標像が得られた場合であっても、瞳孔を基準にアライメントを行うことで、眼情報を適切に取得したものとする。すると、学習部31は、被検眼が小瞳孔であるともに瞳孔の中心と角膜頂点の位置ズレがあると判断すると、アライメント基準を瞳孔中心に切り替える学習取得処理を生成する。この判断は、瞳孔径の閾値を設定するとともに位置ズレの閾値を設定し、取得した瞳孔径および位置ズレが閾値よりも小さいか否かを比較することで行うことができる。それらの閾値は、学習部31が学習により設定してもよく、検者が設定してもよい。
検者は、眼振が生じているまたは虹彩や角膜疾患のある状況では、タイミングをはかって眼情報を取得したり、角膜頂点に替えて瞳孔中心に合わせる等のように基準を変更してアライメントを行うことで眼情報を取得したり、したものとする。すると、学習部31は、眼振が生じているまたは虹彩や角膜疾患があると判断すると、タイミングをはかって眼情報を取得する学習取得処理や、基準を変更してアライメントを行って眼情報を取得する学習取得処理を生成する。
検者は、瞬きが頻繁である状況では、被検者に一度目を閉じてから開くように伝えてから、タイミングをはかって眼情報を取得したものとする。このとき、検者は、操作レバー16や表示部17への操作により、上記のように取得した旨を動作データとして蓄積させる。すると、学習部31は、瞬きが頻繁であると判断すると、タイミングをはかって眼情報を取得する学習取得処理を生成する。この動作は、例えば、音声等で合図を送ったときに目を開く旨を表示部17に表示させることで実行できる。
白内障眼などの場合、アライメントが完了した後に眼情報の取得を開始しても取得信号が得られない場合がある。これは、水晶体の混濁に遮られることで、測定光束が被検眼に入射できないことや、反射された測定光束が戻らないことが考えられる。検者は、このような状況では、水晶体の混濁位置を特定できる場合には混濁のない部分にアライメントをずらして取得を行い、水晶体の混濁位置を特定できない場合には取得信号が得られるようにアライメントを調整して取得を行ったものとする。ここで、混濁位置は、例えば、徹照法を行う機能を有する眼情報取得部21(眼科装置10)であれば徹照画像から特定することができる。すると、学習部31は、白内障眼であると判断するまたはアライメントが完了しても取得信号が得られないと判断すると、徹照画像に基づき混濁のない部分にアライメントをずらして眼情報を取得する学習取得処理や、は取得信号が得られるようにアライメントを調整して眼情報を取得する学習取得処理を生成する。
なお、それぞれの状況に対して手動で行う動作は、検者によって様々であり、上記した例に限定されない。また、設定取得処理では眼情報を取得できない状況は、上に列記した例の他にも沢山あり、上記した例に限定されない。そして、学習取得処理は、各状況データに対応する各動作データに基づいて生成されるものであればよく、上記したものは一例である。
制御部18は、学習部31が学習取得処理を生成すると、その学習取得処理(そのためのプログラム)を記憶部19または内部メモリ18aに記憶する。制御部18は、予め設定された設定取得処理を実行し、それでは眼情報を取得できない場合にその状況に対応する解決法としての学習取得処理を実行する。なお、記憶部19または内部メモリ18aに記憶された設定取得処理のためのプログラムを、生成された学習取得処理を含む新たな設定取得処理に更新するものでもよい。
次に、眼科装置10において、制御部18の制御下で被検眼の眼情報を取得する眼情報取得処理について、図3を用いて説明する。この眼情報取得処理は、内部メモリ18aまたは記憶部19に記憶されたプログラムに基づいて、制御部18が実行する。以下では、この図3のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この図3のフローチャートは、眼科装置10において眼情報の取得を開始する旨の操作が為されることにより開始される。
ステップS1では、眼情報の取得の対象となる被検眼の状況データの取得を開始して、ステップS2へ進む。
ステップS2では、設定取得処理に沿って被検眼に対する眼情報取得部21のアライメントを行い、ステップS3へ進む。
ステップS3では、適切にアライメントできたか否かを判断し、YESの場合はステップS4へ進み、NOの場合はステップS6へ進む。ステップS3では、NOの場合には、アライメントができなかったことを示すエラー表示を表示部17に表示させ、アライメント動作を停止する。
ステップS4では、設定取得処理に沿って眼情報取得部21を用いて被検眼の眼情報を取得して、ステップS5へ進む。
ステップS5では、適切に眼情報を取得できたか否かを判断し、YESの場合はステップS9へ進み、NOの場合はステップS6へ進む。ステップS5では、NOの場合には、眼情報が取得できなかったことを示すエラー表示を表示部17に表示させる。
ステップS6では、ここに至る状況データに対応する学習取得処理があるか否かを判断し、YESの場合はステップS7へ進み、NOの場合はステップS10へ進む。ステップS6では、ステップS3で適切にアライメントできなかった状況に適合する状況データ、またはステップS5で適切に眼情報を取得できなかった状況に適合する状況データに対応する学習取得処理があるか否かを判断する。また、ステップS6では、記憶部19または内部メモリ18aに学習取得処理が記憶されていない場合には、NOの場合であるとしてステップS10へ進む。
ステップS7では、状況データに対応する学習取得処理を実行し、ステップS8へ進む。
ステップS8では、適切に眼情報を取得できたか否かを判断し、YESの場合はステップS9へ進み、NOの場合はステップS10へ進む。ステップS8では、NOの場合には、学習取得処理でも眼情報が取得できなかったことを示すエラー表示を表示部17に表示させる。
ステップS9では、状況データの取得を終了して、この眼情報取得処理を終了する。ステップS9では、ステップS2からステップS8で眼情報取得部21による自動での被検眼の眼情報の取得が終了したので、ステップS1で開始した状況データの取得を終了する。この状況データは、取得の状況を示すものとして内部メモリ18aまたは記憶部19に記憶する。なお、この状況データは、学習取得処理の生成には用いないので記憶せずに破棄してもよい。
ステップS10では、手動での動作に移るか否かを判断し、YESの場合はステップS11へ進み、NOの場合はこの眼情報取得処理を終了する。ステップS10では、操作レバー16や表示部17等への操作により、手動での取得に移るか取得を終了するかを判断する。なお、ステップS2→S3の動作において、所定の時間が経過しても被検眼に対する眼情報取得部21(ヘッド部14)の位置が定まらない場合、操作レバー16や表示部17等に手動での取得に移ることや取得を終了することを示す操作がなされると、ステップS2の終了やステップS3での判断を待たずにステップS10での判断へと移行させてもよい。
ステップS11では、ステップS12以降で実行される手動での眼情報の取得を示す動作データの取得を開始して、ステップS12へ進む。
ステップS12では、手動での眼情報の取得を実行させて、ステップS13へ進む。
ステップS13では、手動での眼情報の取得が終了したか否かを判断し、YESの場合はステップS14へ進み、NOの場合はステップS12へ戻る。この取得が終了したか否かの判断は、例えば、操作レバー16や表示部17から、取得した眼情報(そのデータ)をプリントアウトや外部に送信させる操作の信号を受けたり、取得が終了した旨の操作の信号を受けたりすると、終了したものと判断し、それ以外の場合には終了していないものと判断する。
ステップS14では、状況データおよび動作データの取得を終了して、この眼情報取得処理を終了する。ステップS14では、手動での被検眼の眼情報の取得が終了したので、ステップS1で取得を開始した状況データと、ステップS11で取得を開始した動作データと、の取得を終了する。そして、ステップS14では、状況データと動作データとを関連付けて内部メモリ18aまたは記憶部19に記憶するとともに、それらを学習部31に送信する。
次に、眼科装置10において、学習部31が学習取得処理を生成する学習処理(学習方法)について、図4を用いて説明する。以下では、この図4のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この図4のフローチャートは、学習部31が動作データや状況データを取得することにより開始される。
ステップS21では、動作データや状況データを解析して、ステップS22へ進む。ステップS21では、取得した動作データや状況データを解析するもので、今回のフローチャートが開始されるよりも以前に取得した動作データや状況データがある場合には、それらを加味して解析する。
ステップS22では、学習取得処理の生成作業を行い、ステップS23へ進む。ステップS22では、どのような状況であるかを判断し、その判断した状況の被検眼の眼情報を取得する方法を示す学習取得処理を生成する。ステップS22では、動作データや状況データの内容や個数によっては学習取得処理を生成できる場合と生成できない場合とが生じ得る。
ステップS23では、学習取得処理を生成できたか否かを判断し、YESの場合はステップS24へ進み、NOの場合はこの学習処理を終了する。
ステップS24では、特殊眼に対する測定処理アルゴリズムの学習により生成された学習取得処理のためのプログラムを記憶させて、この学習処理を終了する。このステップS24では、学習部31が学習取得処理を生成した旨を制御部18に送信する。制御部18は、ステップS23で生成した学習取得処理を、記憶部19または内部メモリ18aに記憶させる。
次に、眼科装置10において、被検眼の眼情報を取得する際の上記した制御部18の眼情報取得処理および学習部31の学習処理の動作の一例を説明する。検者は、被検者の顔を顔受け部15で固定して、所望の眼情報の取得(図3のフローチャートに示す眼情報取得処理)を開始する。眼科装置10は、設定取得処理による自動での取得が可能な状況では、ステップS1→S2→S3→S4→S5→S9へと進んで眼情報を取得する。また、眼科装置10は、設定取得処理による自動での取得ができない状況では、ステップS1→S2→S3(→S4→S5)→S6へと進み、この状況に対応する学習取得処理が記憶されているか否かを判断する。ここで、学習取得処理が記憶されていない状況(学習取得処理で取得できない状況)では、ステップS6(→S7→S8)→S10へと進み、手動での取得に切り替えてステップS11に進む。そして、眼科装置10は、検者による手動での動作に応じて、ステップS12→S13を適宜繰り返して、手動での眼情報の取得が終了するとステップS14に進む。これにより、眼科装置10は、自動での取得ができない状況では、それを示す状況データと、それに対して手動で行われた動作データと、を制御部18から学習部31に送信する。
すると、学習部31は、図4のフローチャートに示す学習処理を実行して、ステップS21→S22へと進み、送信された状況データおよび動作データに基づいて学習取得処理の生成作業を行う。それが生成された場合には、ステップS22→S23→S24へと進み、制御部18が、その学習取得処理を記憶させる。
すると、制御部18は、これ以降は記憶した学習取得処理を行うことができるので、自動での取得が出来なかった上記した状況であると判断すると、ステップS1→S2→S3(→S4→S5)→S6へと進んだ後に、対応する学習取得処理が記憶されていることで、ステップS7→S8へと進み、検者が手動で行った動作と同様の動作を学習取得処理により自動で行うことで眼情報を取得する。
このように、眼科装置10は、設定取得処理による自動での取得ができない状況となる度にその状況データおよび動作データを蓄積し、それらに基づく学習取得処理の生成作業を行い、生成した学習取得処理を記憶させる。このため、眼科装置10は、設定取得処理による自動で取得ができなくて手動により取得を行った状況であっても、次に同じ状況(同様の特殊眼)となると学習取得処理により自動で取得することができる可能性が出てくる。そして、眼科装置10は、より多くの状況データおよび動作データを蓄積することで、学習取得処理により自動で被検眼の眼情報を取得できる状況を拡げることができる。
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置10は、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置10は、予め定められた設定取得処理を行う自動での取得ができずに、その設定取得処理とは異なる手動による取得を行った状況が生じると、その際の眼情報取得部21および駆動部12の動作を示す動作データに基づいて学習部31が特殊眼に対する測定処理アルゴリズムを学習して学習取得処理を生成する。そして、制御部18は、その生成した学習取得処理を記憶部19または内部メモリ18aに記憶させる。このため、眼科装置10は、設定取得処理では取得できなかった状況において手動で取得することで、次に同じ状況となると学習した特殊眼に対応する学習取得処理により自動で取得することができる可能性が出てくる。よって、眼科装置10は、自動で被検眼の眼情報を取得できる状況を拡げることができる。
また、眼科装置10は、手動で為された眼情報取得部21および駆動部12の動作での被検眼の眼情報の取得が成功した旨の信号を受けると、制御部18が学習部31に動作データを取得させる。このため、眼科装置10は、自動での被検眼の眼情報の取得が失敗した後に手動で被検眼の眼情報の取得が成功した状況における動作データのみを蓄積させるので、学習取得処理の生成に有用なデータのみを学習部31に取得させることができる。
さらに、眼科装置10は、学習部31が、設定取得処理では眼情報の取得が行えない状況を示す状況データを取得し、状況データに動作データを対応させて学習取得処理を生成する。眼科装置10は、制御部18が、特殊眼に対応して生成した学習取得処理に沿うことで、被検眼の状況に応じて眼情報取得部21および駆動部12の制御の態様を選択する。特に、実施例1の眼科装置10は、自動での取得を実行している際に、生成した学習取得処理として設定された状況となると、その状況の被検眼の眼情報を取得する方法(学習取得処理)を実行するので、自動取得に要する時間を短縮することができる。
眼科装置10は、予め設定された設定取得処理とは別に、生成した学習取得処理を記憶部19または内部メモリ18aに記憶させる。このため、眼科装置10は、学習部31による学習の状態に拘わらず共通の設定取得処理を行うことが基本であるので、保守や管理等を容易にできる。
眼科装置10は、被検眼の状況(状況データ)に前眼部の観察画像を含めている。このため、眼科装置10は、例えば被検眼が小瞳孔であって瞳孔中心と角膜頂点とのズレのある状況に対しても、自動で適切にアライメントして取得することができるようになる。
眼科装置10は、被検眼の状況(状況データ)に被検眼の眼特性を含めている。このため、眼科装置10は、例えば角膜や虹彩に疾患がある被検眼に対しても、自動で取得することができるようになる。
眼科装置10は、検者が手動で行った動作データに応じて学習取得処理を生成するので、この装置を使用している検者のやり方に合わせた動作とすることができ、検者の経験や考え方に合わせたもの(カスタマイズ)にできる。
眼科装置10は、自動での被検眼の眼情報の取得が失敗すると、制御部18が学習部31に動作データを取得させるため、自動での取得が失敗した状況における動作データのみを蓄積させるので、有用なデータのみを学習部31に取得させることができる。
眼科装置10は、自動での被検眼の眼情報の取得が失敗(その状況データ)に、設定取得処理に沿う処理を行ったときのみならず、学習取得処理に沿う処理を行ったときも含めているので、学習取得処理を深化させることができ、自動で被検眼の眼情報を取得できる状況をより拡げることができる。
したがって、本開示に係る眼科装置の一実施例としての眼科装置10では、自動で被検眼の眼情報を取得できる状況を拡げることができる。
以上、本開示の眼科装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1では、動作データおよび状況データに基づいて学習取得処理を生成しているが、動作データのみに基づいて学習取得処理を生成してもよく、実施例1の構成に限定されない。これは、例えば、検者が、状況に拘わらず予め定められた設定取得処理とは異なる動作を眼情報取得部21や駆動部12に対して行う場合、その動作を示すに動作データに基づいて学習取得処理を生成することがあげられる。
また、実施例1では、眼科装置10の内部で適宜学習取得処理を記憶するものとしている。しかしながら、眼科装置10は、ネットワーク等を経て他の眼科装置(10)の学習部(31)が生成した学習取得処理を記憶する構成としてもよい。このようにすると、他の眼科装置(10)を利用している様々な検者の取得方法をビッグデータとして共有することができ、眼科装置10を有する施設内に熟練者が少ない状況であっても自動で被検眼の眼情報を取得できる状況をより拡げることができる。
さらに、実施例1では、手動で為された眼情報取得部21および駆動部12の動作で眼情報の取得が成功した場合における動作データや状況データに基づいて学習取得処理を生成している。しかしながら、手動でも眼情報の取得が失敗した場合における動作データや状況データに基づいて学習取得処理を生成してもよい。この場合、例えば、設定取得処理による自動の取得でも手動の取得でも取得ができない状況の判断が可能となり、そのような状況である旨を表示部17等に表示させることで、取得ができない状況の被検眼に対して無駄に取得を試みることを防止できる。なお、手動でも眼情報の取得が失敗した場合であることの判断は、例えば、操作レバー16や表示部17から、取得の実行の途中で他方の被検眼に切り替える操作の信号を受けたり、リセットの操作の信号を受けたりすることで行うことができる。