以下、各実施形態について、各図を参照して説明する。以下に言及する上流側と下流側とは、トウバンド60の搬送方向Pの上流側と下流側とを順に指す。
(第1実施形態)
[吸収性物品製造装置]
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品製造装置1(以下、単に製造装置1と称する。)の全体図である。製造装置1の近傍には、梱包容器50が配置される。梱包容器50には、トウバンド60がベール状に折り畳まれ、且つ圧縮されて梱包されている。図1の梱包容器50は、断面構造を示している。
トウバンド60に含まれる繊維70(図5参照)は、本実施形態では、セルロースアセテートトウの長繊維であるが、これ以外の繊維であってもよい。一例として、製造装置1では、トウバンド60は、幅方向が水平に保たれながら、搬送方向Pに搬送される。
製造装置1は、第1製造部2と第2製造部3とを備える。第1製造部2は、第1拡幅装置4、ガイド5、第2拡幅装置6、第1開繊ロール対7、第2開繊ロール対8、添着装置9、気体開繊装置10、添加装置11、及び搬送ロール対12を有する。
第1拡幅装置4は、梱包容器50の内部から繰り上げられたトウバンド60を、幅方向に拡幅する。ガイド5は、第1拡幅装置4を通過したトウバンド60を、第2拡幅装置6に向けてガイドする。第2拡幅装置6は、ガイド5を通過したトウバンド60を、更に幅方向に拡幅する。一例として、第1拡幅装置4と第2拡幅装置6とは、同様の構成を有する。第1拡幅装置4と第2拡幅装置6とは、バンディングジェット装置とも称する。
第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とは、気体開繊装置10よりも上流側において、トウバンド60の複数本の繊維70を周面に接触させて開繊する。第2開繊ロール対8は、第1開繊ロール対7よりも下流側に配置されている。第1開繊ロール対7は、互いの周面を対向させて配置された一対のロール13、14を有する。第2開繊ロール対8は、互いの周面を対向させて配置された一対のロール15、16を有する。第2開繊ロール対8は、第1開繊ロール対7の周速度よりも早い周速度で回転する。
第2拡幅装置6を通過したトウバンド60は、一対のロール13、14の間と、一対のロール15、16の間とに挿通される。トウバンド60は、ロール13〜16の周面と接触しながら、第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とにより搬送方向Pに張力を与えられ、嵩高く開繊される。
一対のロール13、14の一方のロールと、一対のロール15、16の一方のロールとの周面には、トウバンド60を幅方向に開繊するための溝部をロール軸周りに螺旋状に形成してもよい。
添着装置9は、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(本実施形態では第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、トウバンド60の複数本の繊維70を結合させるバインダ66を、トウバンド60に添着する。本実施形態では、添着装置9は、複数対の開繊ロール対7、8のうち、最も下流側の第2開繊ロール対8と、気体開繊装置10との間において、バインダ66をトウバンド60に添着する。
添着装置9は、筐体23、噴霧部24、ガイド部25、及び排出部26を有する。噴霧部24は、トウバンド60の幅方向に延びるノズル部分を有し、筐体23の内部の上方に設けられている。噴霧部24は、筐体23の内部を搬送されるトウバンド60の上面に向けて、ノズル部分より液状のバインダ66を噴霧する。ここで言うトウバンド60の上面は、製造装置1により製造される吸収性物品61(図4参照)の使用時において、水分と最初に接触するトウバンド60の面であり、吸収性物品61の吸収体62の上面である。バインダ66は、筐体23から外部に延びるチューブ27を通じて、噴霧部24に供給される。
ガイド部25は、筐体23の内部で鉛直方向に延び、トウバンド60の上面と下面とを支持して、トウバンド60の姿勢を安定させる。排出部26は、筐体23の内部の下方に配置され、噴霧部24から噴霧されたバインダ66の一部を筐体23の外部に排出する。
噴霧部24がバインダ66を噴霧する噴霧方法は、限定されない。例えば、トウバンド60の幅方向と直交する方向から見た添着装置9の鉛直断面において、噴霧部24からトウバンド60に向けて、バインダ66を扇状に拡散させて噴霧してもよい。また例えば、噴霧部24からトウバンド60の複数の位置にバインダ66を噴霧してもよい。また例えば、トウバンド60の側方又は下方から、トウバンド60に向けて、バインダ66を噴霧してもよい。
また例えば、添着装置9は、第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8との間において、トウバンド60にバインダ66を添着してもよいし、第1開繊ロール対7と第2拡幅装置6との間において、トウバンド60にバインダ66を添着してもよい。
また、添着装置9がトウバンド60にバインダ66を添着する方法は、限定されない。例えば、添着装置9は、回転ブラシ、回転ロール、又は回転ディスクのいずれかにより、トウバンド60にバインダ66を添着してもよい。
バインダ66としては、例えば、トウバンド60の繊維70を溶解可能な各種可塑剤を利用できる。可塑剤としては、例えば、トリアセチン、トリエチレン、グリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステル等のエステル系可塑剤を用いることができる。可塑剤は、トウバンド60の種類に応じて適宜選択できる。
トウバンド60がセルロースアセテートトウを含む場合、可塑剤として、トリアセチンや酢酸セルロースを用いることが望ましい。このような可塑剤を用いることで、トウバンド60の複数本の繊維70を結合できると共に、可塑剤が揮発することにより、吸収性物品61中に可塑剤が残留するのを防止できる。これにより、吸収性物品61の安全性を高めることができる。
バインダ66としては、トウバンド60の複数本の繊維70を接着して結合させる接着剤を用いてもよい。この接着剤としては、各種の接着剤を任意に使用できる。
気体開繊装置10は、搬送されるトウバンド60の複数本の繊維70を、少なくとも1つの開繊室(本実施形態では第1開繊室43bと第2開繊室43c)において、第1気体G1により開繊する。具体的に気体開繊装置10は、導入部17、本体部18、及び滞留部19を有する。導入部17は、本体部18の上流側に配置されている。導入部17は、本体部18にトウバンド60と第1気体G1とを導入する。また導入部17は、第2開繊ロール対8を通過したトウバンド60と、第1気体G1とを混合する。
本体部18は筒状であり、本体部18の内部には、開繊室が形成されている。本実施形態では、本体部18の内部には、搬送方向Pに延びる搬送路43が形成されている。搬送路43は、上流側から下流側に向けて順に配置された流路43a、第1開繊室43b、及び、第2開繊室43cを含んでいる。
本体部18は、導入部17を通過したトウバンド60及び第1気体G1と、添加装置11の第2管部22を通過した吸水性の粒状物65及び第2気体G2とを搬送路43に搬送しながら混合し、トウバンド60の複数本の繊維70を開繊すると共に、トウバンド60の内部に、吸水性の粒状物65を分散して配置する。粒状物65は、高吸水性樹脂からなる。
滞留部19は、本体部18の下流側に配置されている。滞留部19は、本体部18を通過したトウバンド60を一時的に滞留させることにより、トウバンド60の過度の膨張を抑制すると共に、トウバンド60の嵩又は密度を調整する。滞留部19は、複数の長尺部材39を有する。長尺部材39は、搬送方向Pに延び、搬送路43の周方向に間隔をおいて配置されている。長尺部材39の上流端部は、本体部18の下流端部に接続されている。複数の長尺部材39の下流端部は、上流側から下流側に向かって、互いに接近している。
添加装置11は、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、粒状物65をトウバンド60に添加する。具体的に添加装置11は、気体開繊装置10の本体部18の内部において、粒状物65をトウバンド60に添加する。添加装置11は、ホッパ20、第1管部21、及び第2管部22を有する。ホッパ20、第1管部21、及び第2管部22は、上方から下方に向けて順に配置されている。ホッパ20には、粒状物65が貯留される。
第1管部21と第2管部22とは、ホッパ20の下方で鉛直方向に延びている。第1管部21の上側端部は、ホッパ20の下側端部と接続され、第1管部21の下側端部は、第2管部22の上側端部と接続されている。第2管部22の下側端部は、気体開繊装置10の本体部18と接続されている。第1管部21は、ホッパ20から落下する粒状物65と、第1管部21に導入される第2気体G2とを混合する。添加装置11は、ホッパ20に貯留された粒状物65を、第2気体G2と共に、第1管部21と第2管部22とに順に流通させ、本体部18の内部に供給する。
添加装置11は、気体開繊装置10の導入部17において、トウバンド60に粒状物65を添加するように配置されていてもよい。或いは、添加装置11は、気体開繊装置10よりも上流側(例えば、気体開繊装置10よりも上流側且つ第2開繊ロール対8よりも下流側)において、トウバンド60に粒状物65を添加するように配置されていてもよい。トウバンド60が気体開繊装置10を通過することにより、吸収体(繊維シート)62が得られる。
搬送ロール対12は、吸収体62を下流側に搬送する。搬送ロール対12は、互いに平行に軸支された一対の搬送ロール(引取ロールとも称する。)28、29を有する。吸収体62は、一対の搬送ロール28、29の間に挿通される。吸収体62は、一対の搬送ロール28、29に引き取られて、下流側の第2製造部3に搬送される。
第2製造部3は、供給装置47、搬送装置48、及び、貼着装置49を有する。供給装置47は、添着装置9よりも下流側に配置され、トウバンド60(ここでは吸収体62)の下方から、吸収体62に吸水性を有するバックシート63を供給する。具体的に供給装置47は、軸支されたシートロール67からバックシート63を繰り出して、搬送ラインL上に供給する。バックシート63は、本実施形態ではパルプシートであるが、これに限定されない。バックシート63の内部には、粒状物65が分散して配置されている。
搬送装置48は、バックシート63を搬送ラインLに搬送する。バックシート63の上には、吸収体62が供給される。貼着装置49は、バックシート63の上に吸収体62を重ねた状態で、バックシート63と吸収体62とを貼着する。貼着装置49を通過した吸収体62とバックシート63とは、所定の寸法で切断される。これにより、吸収性物品61が製造される。
バックシート63の内部には、粒状物65は配置しなくてもよい。また吸収性物品61は、本実施形態ではおむつ用途であるが、当然ながら、これ以外の用途でもよく、例えば、尿漏れ防止用パッド用途であってもよい。吸収性物品61が、尿漏れ防止用パッド用途等である場合、バックシート63は、省略してもよい。
[気体開繊装置及び添加装置]
図2は、図1の気体開繊装置10と添加装置11とのトウバンド60の幅方向から見た鉛直断面図である。導入部17は、第1混合部35と第1ノズル部36とを有する。第1混合部35は、搬送方向Pに延びる管状部である。第1混合部35の上流側の側部には、気体導入口35aが設けられている。第1混合部35の上流端部には、トウバンド導入口35bが設けられている。第1混合部35の下流端部は、本体部18に接続されている。
気体導入口35aは、加圧された第1気体G1(一例として空気)を、第1混合部35の内部空間40に導入する。トウバンド導入口35bは、トウバンド60を内部空間40に導入する。
第1ノズル部36は、第1混合部35の内部で、第1混合部35の上流側に設けられている。第1ノズル部36の下流側の先端には、テーパー部36aが形成されている。テーパー部36aは、上流側から下流側に向かって、先細りの形状を有する。テーパー部36aの外周面と対向する第1混合部35の内周面は、テーパー部36aの外周面と離隔しながら、上流側から下流側に向かって縮径されている。これにより、テーパー部36aの外周面と第1混合部35の内周面との間には、気体導入口35aから導入される第1気体G1を内部空間40にジェット状に噴出させる環状断面のジェット流路41が設けられている。
第1ノズル部36の内部には、トウバンド導入口35bから第1混合部35の長手方向に延びるトウバンド導入路42が設けられている。トウバンド導入路42の出口は、気体導入口35aよりも下流側に設けられている。トウバンド導入路42を通過したトウバンド60は、ジェット流路41を通過したジェット状の第1気体G1と混合されて、内部空間40を流通する。
第1気体G1は、空気以外の気体でもよい。また、トウバンド導入路42の出口と気体導入口35aとは、鉛直方向から見て重なる位置に設けられていてもよい。また、トウバンド導入路42の出口は、気体導入口35aよりも上流側に設けられていてもよい。
本体部18は、第1部材31と第2部材32とを有する。第1部材31と第2部材32とは、板部31a、32aを有する。板部31a、32aの板面は、鉛直方向に垂直な方向に延びている。第2部材32は、第1部材31よりも上方に配置されている。第1部材31と第2部材32とは、ネジ等の不図示の締結部材を用いて、互いに組み合わされている。第2部材32の板部32aには、板厚方向に第2管部22が貫通している。
滞留部19には、複数の長尺部材39で囲まれた滞留室46が形成されている。滞留室46の搬送方向Pに垂直な断面(流路断面)は、上流側から下流側に向かって漸減されている。滞留室46において、トウバンド60が各長尺部材39から受ける押圧力は、トウバンド60が滞留室46を上流側から下流側に搬送されるにつれて増大する。これによりトウバンド60は、滞留室46に滞留しながら複数の長尺部材39により搬送方向Pに圧縮されて密度が増加する。本体部18から排出された第1気体G1及び第2気体G2は、複数の長尺部材39の間隙から外部に抜ける。
長尺部材39は、一例として棒状部材で構成されているが、これに限定されず、例えば、板部材でもよい。長尺部材39を板部材で構成する場合は、板部材の板面をトウバンド60に面接触させる。
第1管部21は、第2混合部37と第2ノズル部38とを有する。第2混合部37と第2ノズル部38とは、第1管部21の長手方向の途中に設けられている。第2混合部37は、鉛直方向に延びる管状部である。第2混合部37の上側の側部には、気体導入口37aが設けられている。第2混合部の上側の端部には、粒状物導入口37bが設けられている。
気体導入口37aは、加圧された第2気体G2(一例として空気)を、第2混合部37の内部空間53に導入する。粒状物導入口37bは、ホッパ20から、粒状物65を内部空間53に導入する。
第2ノズル部38は、第2混合部37の内部に設けられている。第2ノズル部38の下側の先端には、テーパー部38aが設けられている。テーパー部38aは、上方から下方に向かって、先細りの形状を有する。テーパー部38aの外周面と対向する第2混合部37の内周面は、テーパー部38aの外周面と離隔しながら、上方から下方に向かって縮径されている。これにより、テーパー部38aの外周面と第2混合部37の内周面との間には、気体導入口37aから導入される第2気体G2を第1管部21の内部空間53にジェット状に噴出させる環状断面のジェット流路44が設けられている。
第2ノズル部38の内部には、粒状物導入口37bから第2混合部37の長手方向に延びる粒状物導入路45が設けられている。粒状物導入路45の出口は、気体導入口37aよりも下方に設けられている。第2管部22の下端部の出口22aは、第1開繊室43bの内部において開口している。粒状物導入路45を通過した粒状物65は、ジェット流路44を通過したジェット状の第2気体G2と混合されて、第1管部21の内部空間53と第2管部22の内部空間54とを流通し、第2管部22の出口22aから第1開繊室43bの内部に噴出される。第2管部22の出口22aは、一例として、第2開繊室43cの出口よりも上流側で、本体部18の搬送方向Pの中央よりも下流側に配置されている。また第2管部22の出口22aは、本体部18の内周面18cと離隔した位置に配置されている。
第2気体G2は、加圧された気体に限定されず、大気圧又は負圧に設定された気体でもよい。また第2気体G2は、空気以外の気体でもよい。また、粒状物導入路45の出口と気体導入口37aとは、側面視において重なる位置に設けられていてもよい。また、粒状物導入路45の出口は、気体導入口37aよりも上方に設けられていてもよい。
第2管部22の下端部は、搬送路43の内部において、搬送方向Pに延びている。一例として、第2管部22の下端部と、搬送路43とは、搬送方向Pに平行に延びている。第2管部22の出口22aは、下流側に向けて開口している。
図3は、図1の本体部18の分解図である。第1部材31と第2部材32とは、鉛直方向を厚み方向とし、搬送方向Pを長手方向とし、且つ、搬送方向Pと水平面内で直交する方向を幅方向とする略直方体状に形成されている。
板部31a、32aの互いに対向する板面の中央には、搬送方向Pに延びる溝部31b、32bが形成されている。第1部材31の溝部31bを挟む両側の部分は、第2部材32の溝部32bを挟む両側の部分と面接触する。これにより、溝部31b、32bが組み合わされて、第1部材31と第2部材32との各内表面が連続し、本体部18の内周面18cが形成される。この内周面18cによって、流路43a、第1開繊室43b、及び、第2開繊室43cを含む搬送路43が形成されている。
第2管部22は、第2部材32の幅方向の中央に配置されている。一例として、第2管部22は、第2部材32を貫通した状態で、第2部材32に溶接により接合されている。第2管部22の流路断面は、一例として円形状であるが、これに限定されず、例えば、楕円形状や矩形状でもよい。また第2管部22は、第2部材32の幅方向の中央以外の位置に配置されていてもよい。
本体部18の入口18aには、導入部17の下流端部が接続され、流路43aが、第1混合部35の内部空間40と接続されている。本体部18は、上流側部18dと下流側部18eとを有する。上流側部18dの内部には、流路43aと第1開繊室43bとが形成されている。流路43aは、上流側部18dの上流側に位置し、第1開繊室43bは、上流側部18dの下流側に位置している。第1開繊室43bは、上流側開繊室43b1と下流側開繊室43b2とを有する。上流側開繊室43b1の幅W1は、上流側から下流側に向けて漸増している。下流側開繊室43b2の幅W2は、上流側から下流側に向けて、上流側開繊室43b1の幅W1よりも急な割合で漸増している。これにより、第1開繊室43bの流路断面積は、上流側から下流側に向けて漸増している。このように本体部18は、入口18aから出口18bに向かう方向において、搬送路43の流路断面積が増加する領域を有する。
第1開繊室43bをトウバンド60が搬送される際、トウバンド60が、第1開繊室43bの形状に対応して膨張し、複数本の繊維70が、立体的に絡み合いながら開繊される。また、第2管部22の出口22aから噴出される粒状物65が、トウバンド60の繊維間隙72に効率よく分散して配置される。
下流側部18eの内部には、第2開繊室43cが形成されている。第2開繊室43cは、第1開繊室43bと連続している。第2開繊室43cの幅W3は、下流側開繊室43b2の出口における幅W2よりも拡幅されている。これにより、第2開繊室43cの流路断面積は、下流側開繊室43b2の出口における流路断面積よりも拡大されている。第2開繊室43cの幅W3は、搬送方向Pに一定である。第2開繊室43cをトウバンド60が搬送される際、複数本の繊維70は、更に開繊されて膨張する。
第1開繊室43bと第2開繊室43cとの流路断面は、幅方向を長軸方向とし、鉛直方向を短軸方向とする略楕円形状である。これにより、第1開繊室43bと第2開繊室43cとの流路断面は、幅方向を長手方向とする扁平な形状を有する。第1開繊室43bと第2開繊室43cとの流路断面は、矩形状以外であればよく、例えば、円形状であってもよい。
上流側部18dと下流側部18eとの境界部分には、搬送方向Pと直交する環状の端面18fが形成されている。端面18fは、第2開繊室43cの周方向に延びている。端面18fには、複数の孔18gが設けられている。孔18gには、長尺部材39が接続される。これにより、滞留室46の流路断面の形状は、長尺部材39が端面18fに接続される接続位置における搬送路43の流路断面の形状と相似している。従って、第1開繊室43bと第2開繊室43cとにより開繊されながら成型されるトウバンド60の形状は、滞留室46においても保持される。
図4は、図1の製造装置1により製造された吸収性物品61の搬送方向Pから見た鉛直断面図である。図5は、図1の製造装置1により製造された吸収性物品61の繊維70と粒状物65とを模式的に示す拡大図である。
図4に示すように、吸収性物品61の搬送方向Pから見た鉛直断面は、全体として、幅方向の寸法が厚み方向の寸法よりも大きい略矩形状である。また、吸収体62の搬送方向Pから見た鉛直断面は、幅方向の寸法が鉛直方向の寸法よりも大きい略楕円形状である。
製造装置1では、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、添着装置9により、トウバンド60にバインダ66が添着され、気体開繊装置10により、複数本の繊維70が立体的に絡み合いながら開繊される。これにより、トウバンド60が第1気体G1により開繊されて嵩高に膨らんだ状態を維持しつつ、トウバンド60の内部の全体において、複数本の繊維70が結合されている。
図5に示すように、これにより、吸収体62の内部の全体には、バインダ66により複数本の繊維70が互いに結合してなる複数の結合部分71が形成されている。吸収体62では、複数本の繊維70が立体的に絡み合いながら開繊されたことにより、複数本の繊維70の網目構造が形成されながら、複数本の繊維70が結合部分71により互いに結合されている。
粒状物65は、気体開繊装置10の第1開繊室43bにおいてトウバンド60に添加されることにより、トウバンド60の内部の全体に拡散され、吸収体62の内部の全体に均一に分散して配置されている。また吸収体62では、結合部分71により結合された複数本の繊維70の繊維間隙72に粒状物65が保持されている。従って、吸収体62の内部に配置された粒状物65は、吸収体62から脱落しにくい。
また吸収体62では、結合部分71により繊維間隙72が維持されているので、吸収性物品61に上方から水分が接触した場合、繊維間隙72を維持したまま、上側部分62aから上側部分62aの下方に向けて水分が迅速に通過し易く、繊維間隙72に水分が滞留しにくい。これにより、吸収性物品61の液透過性が高められている。
また吸収体62において、結合部分71により繊維間隙72が維持されていることで、吸収体62の通気性が高められているので、吸収性物品61の使用中にムレが発生するのが抑制されている。
また複数の結合部分71により、複数本の繊維70の相対的な移動が規制されているので、ユーザーが着座する際の荷重等が吸収性物品61に及んでも、繊維間隙72が強固に維持され、吸収性物品61の形態が良好に保たれ易い。
また、吸収性物品61の上方から吸収体62に接触した水分は、吸収体62とバックシート63との内部に迅速に拡散される。このため、吸収体62とバックシート63との内部に分散して配置された複数の粒状物65に水分が吸収され易い。これにより吸収性物品61では、吸収体62の上側部分を通過した水分が、吸収性物品61の上面に戻りにくく、吸水後の吸収性物品61の上面のべたつきが効果的に低減される。
また吸収体62の内部には、互いに結合されていない繊維70の領域が豊富に残留しているため、ふんわりとした柔らかな触感が維持されている。これにより吸収性物品61は、高いクッション性を有している。
以上に説明したように、製造装置1によれば、搬送されるトウバンド60の複数本の繊維70が、気体開繊装置10の少なくとも1つの開繊室(本実施形態では第1開繊室43bと第2開繊室43c)において、第1気体G1により開繊され、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、吸水性の粒状物65がトウバンド60に添加されることにより、複数本の繊維70が立体的に絡み合いながら開繊されると共に、繊維間隙72に粒状物65が分散される。これにより、繊維間隙72に粒状物65が均一に分散して配置された吸収性物品61が得られる。従って、水分を繊維間隙72に拡散させて、粒状物65に効率よく吸水させることができる。
また、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、バインダ66がトウバンド60に添着されることにより、気体開繊装置10により開繊されたトウバンド60の全体で、繊維間隙72を広く維持しながら、複数本の繊維70を結合できる。これにより、吸収性物品61に荷重が及んでも、繊維間隙72を強固に維持して、吸収性物品61の上面から内部に向けて水分を効率よく流通させ、粒状物65に吸水させることができる。よって、吸収性物品61の液透過性を高めて、吸収性物品61の繊維間隙72に水分が滞留するのを抑制でき、吸収性物品61の液戻りを防止できると共に、吸水前後において、吸収性物品61に良好なクッション性を付与できる。
また、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、バインダ66をトウバンド60に添着して、液戻りを防止した吸収性物品61を製造できるので、吸収性物品61の液戻りを防止するために、別途の装置を準備したり、別途の工程を行ったりしなくてもよい。これにより吸収性物品61では、例えば、吸収体62の上面に液戻りを抑制するためのシートを設けなくてもよい。従って、吸収性物品61の製造効率を向上できる。
また、導入部17から筒状の本体部18の内部の第1開繊室43bと第2開繊室43cとに導入される第1気体G1により、第1開繊室43bと第2開繊室43cとにおいて、複数本の繊維70を効率よく嵩高に開繊できる。よって、吸水前後の吸収性物品61のクッション性を高め易くできる。
また添加装置11は、気体開繊装置10の本体部18の内部において、粒状物65をトウバンド60に添加するので、本体部18の内部において、粒状物65をトウバンド60に添加しながら、複数本の繊維70を第1気体G1により開繊でき、粒状物65を繊維間隙72に均一に分散して配置し易くできる。
また、第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とにより開繊されたトウバンド60の複数本の繊維70を、気体開繊装置10により、更に立体的に絡み合わせながら開繊できるので、繊維間隙72を広げた状態で、複数本の繊維70をバインダ66により結合し易くでき、吸収性物品61の液透過性を更に高め易くできる。
また添着装置9は、複数対の開繊ロール対のうち、最も下流側の第2開繊ロール対8と、気体開繊装置10との間において、バインダ66をトウバンド60に添着するので、複数の開繊ロール対(第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8)により開繊された複数本の繊維70にバインダ66を添着して、気体開繊装置10により、複数本の繊維70を開繊できる。よって、複数の開繊ロール対7、8にバインダ66が付着するのを防止しながら、複数本の繊維70にバインダ66を添着でき、複数の開繊ロール対7、8のメンテナンス作業を軽減して、吸収性物品61の製造効率を向上できる。以下、第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る気体開繊装置110の側面図である。図6に示すように、気体開繊装置110の本体部118には、第2開繊室143cの出口よりも上流側にバインダ導入口118iが形成されている。バインダ導入口118iの下流側には、添加装置11の第2管部22が配置されている。バインダ導入口118iの上方には、添着装置109が配置されている。
添着装置109は、液状のバインダ66を貯留するタンク55と、タンク55の内部のバインダ66をバインダ導入口118iに供給するポンプ56とを有する。第2実施形態では、ポンプ56の駆動力により、タンク55の内部のバインダ66が、バインダ導入口118iを介して本体部118の第1開繊室143bに噴霧される。
これにより気体開繊装置110では、トウバンド60の複数本の繊維70が第1気体G1により開繊されながら、トウバンド60にバインダ66が添着され、且つ、粒状物65が添加される。従って、トウバンド60の開繊される複数本の繊維70に対して、偏りを抑制しながらバインダ66を添着させ、複数の粒状物65を複数の繊維間隙72に効率よく分散して配置させ易くすることができる。バインダ導入口118iは、第2管部22よりも下流側に配置されていてもよいし、導入部117に配置されていてもよい。
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る製造装置100の部分図である。図7に示すように、製造装置100の第2製造部103は、供給装置30、塗布装置34、及びガイドロール対69を有する。
供給装置30は、添着装置9よりも下流側において、液透過性と疎水性とを有するトップシート64を、トウバンド60(本実施形態では吸収体62)の上面に供給する。具体的に第2製造部103では、軸支されたシートロール68からトップシート64を繰り出して、搬送ラインLに供給する。本実施形態では、トップシート64は、厚み方向に貫通する複数の微細孔が形成されたポリプロピレン(PP)シートである。
塗布装置34は、シートロール68から搬送ラインLへ向けて搬送されるトップシート64に接着剤を塗布する。ガイドロール対69は、一対のガイドロール51、52を有する。ガイドロール51、52の間には、バックシート63、吸収体62、及びトップシート64が、バックシート63の上に吸収体62とトップシート64とが順に重ねられた状態で挿通される。ガイドロール対69を通過したバックシート63、吸収体62、及びトップシート64は、貼着装置49により貼着され、所定の寸法に切断される。これにより、吸収性物品161が製造される。
図8は、図7の製造装置100により製造された吸収性物品161の搬送方向Pから見た鉛直断面図である。図8に示すように、吸収体62の上面が、トップシート64と重ねられるので、吸収性物品161の液戻りを更に良好に防止できる。また第1実施形態と同様に、吸収体62の内部の全体において、複数本の繊維70が、バインダ66により結合され、液透過性が高められているので、供給装置30が供給するトップシート64として、高度な液透過性や、高度な疎水性を有さないシートでも使用でき、トップシート64の材料の選択幅を拡大することにより、吸収性物品161の製造効率を向上できる。
(確認実験)
[実験1]
第1実施形態の製造装置1を用いて、吸収体62のみからなる吸収性物品を実施例1として製造した。製造装置1から気体開繊装置10を省略した装置を用い、吸収体のみからなる吸収性物品を比較例1として製造した。
製造装置1から添着装置9を省略した装置を用いて、吸収体のみからなる吸収性物品を比較例2として製造した。製造装置1から気体開繊装置10と添着装置9とを省略した装置を用いて、吸収体のみからなる吸収性物品を比較例3として製造した。比較例1と比較例3とでは、搬送ロール対12の上流側で、且つ、添着装置9及び第2開繊ロール対の下流側の位置において、トウバンドの上方から、トウバンドに粒状物を添加した。
比較例4として、実施例1の吸収体62に含まれる粒状物65と同じ粒状物を内部に分散して配置したパルプシートの上に、第2実施形態のトップシート64と同じ構造を有するトップシートを重ねてなる吸収性物品を製造した。
トウバンド60に対する粒状物65の添加位置が、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも下流側の位置(本実験では滞留室46内の位置)に設定されていること以外は製造装置1と同様の構成を有する装置を用いて、吸収体のみからなる吸収性物品を比較例5として製造した。実施例1及び比較例1〜5の吸収性物品のトウの重量と粒状物の重量とは、表1に示す通りに設定した。
実施例1及び比較例1〜5の吸収性物品について、以下の手順により、確認実験を行った。実施例1及び比較例1〜5の吸収性物品の上面に、内径が6cmのガラス筒を、開口を鉛直方向に向けて載置した。この状態で、青色に着色した50mlの生理食塩水を、ガラス筒の中に一度に注水した。生理食塩水をガラス筒の中に注水してから、生理食塩水の全てが吸収性物品に吸収されるまでの経過時間を、液吸収時間として測定した。
生理食塩水をガラス筒の中に注水してから3分経過後、吸収性物品の上面に形成された生理食塩水の液拡散長(縦拡散長及び横拡散長)を測定した。縦拡散長は、吸収性物品の長手方向とし、横拡散長は、吸収性物品の幅方向とした。ここで、液拡散長が大きいほど、吸収性物品に含まれる粒状物に生理食塩水を接触させ易くなるため、吸水性に優れると評価できる。
生理食塩水をガラス筒の中に注水してから5分経過後、乾燥重量を予め測定した3枚の濾紙を重ねて吸収性物品の上面に載置し、最も上方の濾紙の上に3.5kgの錘を載置した。生理食塩水をガラス筒の中に注水してから8分経過後、錘を取り外して3枚の濾紙を取り出し、3枚の濾紙に吸収された生理食塩水量を液戻り量として算出した。また、3枚の濾紙を取り出した直後の吸収性物品の上面を手で触って、吸収性物品の上面のべたつきとクッション性とを評価した。クッション性は、A(良い)、B(やや良い)、C(やや弱い)、又はD(非常に弱い)の4段階に分けて評価した。確認実験の結果を表2に示す。
表1中の「ロール」は「開繊ロール対」を示し、「気体」は「気体開繊装置」を示している。表1及び2に示されるように、実施例1の吸収性物品は、比較例1〜5の吸収性物品と粒状物の重量が同等で、トウの重量が同等以下でありながら、比較例1〜5の吸収性物品と比べて、液吸収時間が短時間で、液戻り量が少ないことが分かった。また実施例1の吸収性物品の縦横の液拡散長は、比較例1〜3の吸収性物品と略同等であることが分かった。また実施例1の吸収性物品は、液吸収後の上面のべたつきが少なく、良好な感触を維持でき、クッション性が良いことが分かった。
この理由として、実施例1の吸収性物品では、気体開繊装置10により、トウバンド60の複数本の繊維70が立体的に絡み合いながら拡散され、添着装置9により、吸収体62の内部の複数本の繊維70が結合され、吸収体62の液透過性が高められたため、生理食塩水が吸収体62の複数本の繊維70の繊維間隙72を迅速に通過して、複数の粒状物65に効率よく吸収され、繊維間隙72に生理食塩水が滞留しにくくなったことが考えられる。
比較例1の吸収性物品は、実施例1の吸収性物品に比べて、液吸収時間が遅く、液戻り量が2.2倍以上に達し、クッション性が優れないことが分かった。この理由として、比較例1では、気体開繊装置10を用いてトウバンドの複数本の繊維が開繊されず、繊維間隙が十分でない状態でトウバンドの複数本の繊維がバインダ66により結合されたことにより、クッション性が低減し、繊維間隙に滞留する生理食塩水量が増大したことが考えられる。
比較例2の吸収性物品は、実施例1の吸収性物品に比べて、液吸収時間が遅く、液戻り量が2.8倍に達し、液吸収後の上面にべたつきが発生すると共に、クッション性がやや弱いことが分かった。
この理由として、比較例2の吸収性物品では、添着装置9を用いてトウバンドにバインダ66が添着されなかったため、吸収性物品の複数本の繊維が錘により加圧されて繊維間隙が縮小したことで、比較例1よりもクッション性が低減し、繊維間隙に滞留する生理食塩水量が増大したことが考えられる。
比較例3の吸収性物品は、実施例1の吸収性物品に比べて、液吸収時間が遅く、液戻り量が約3.3倍に達し、液吸収後の上面にべたつきが発生すると共に、クッション性が非常に弱いことが分かった。
この理由として、比較例3の吸収性物品では、気体開繊装置10を用いてトウバンドの複数本の繊維が開繊されなかったため、比較例2よりも繊維間隙が十分でなく、繊維間隙に滞留する生理食塩水量が増大したことや、添着装置9を用いてトウバンドにバインダ66が添着されなかったため、吸収性物品の複数本の繊維が錘により加圧されて、比較例2よりも繊維間隙が縮小したことが考えられる。
比較例4の吸収性物品は、液吸収後の上面のべたつきが少なく、実施例1の吸収性物品に比べて縦横の拡散長が大きかったものの、実施例1の吸収性物品に比べて液吸収時間が遅く、液戻り量が多く、クッション性が非常に弱いことが分かった。
この理由として、パルプはトウに比べて親水性が高く、パルプ繊維が生理食塩水を吸水したことや、パルプ繊維が吸水した生理食塩水により液戻りが発生し易くなったことが考えられる。
比較例5の吸収性物品は、第2開繊室43cの出口よりも下流側でトウバンドの上面に粒状物が添加されたことにより、吸収体の上側領域に粒状物が局在して配置された構造を有していることが分かった。このような吸収性物品が得られた理由として、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも下流側では、第1開繊室43bの内部及び第2開繊室43cの内部の各位置に比べて、複数本の繊維が相対的に移動しにくく、粒状物65が分散しにくいことが考えられる。
また比較例5の吸収性物品は、実施例1の吸収性物品に比べて、横拡散長が小さく、液吸収時間が遅く、液戻り量が実施例1の3倍以上に達することが分かった。また、比較例5の吸収性物品は、クッション性は良いものの、液吸収後の上面のべたつきが多いことも分かった。
この理由として、比較例5の吸収性物品では、実施例1の吸収性物品のように、吸収体の複数本の繊維70が立体的に絡み合いながら結合されてはいるが、吸収体の上側領域に局在して配置された粒状物に生理食塩水が集中的に吸収されたことにより、繊維間隙に生理食塩水が拡散しにくくなったことや、吸収体の上側領域で生理食塩水を吸収して膨潤した粒状物により、生理食塩水が吸収体の上側領域を通過しにくくなり、生理食塩水が吸収体の上側領域に滞留したこと等が考えられる。
この比較例5の結果から、実施例1と同様の効果を得るためには、気体開繊装置10の最も下流側における開繊室(第2開繊室43c)の出口よりも上流側において、トウバンド60に粒状物65を添加し、トウバンド60の繊維間隙に粒状物65を均一に分散して配置する必要があると考えられる。
[実験2]
実施例1、比較例1〜3、及び比較例5の吸収性物品にバックシートを重ねることにより、実施例2、比較例6〜8、及び比較例10の吸収性物品を製造した。バックシートは、比較例4のパルプシートよりも厚み寸法が大きいパルプシートの内部に、実施例1の粒状物65と同様の粒状物を、比較例4のパルプシートの粒状物量よりも多く分散して配置することにより製造した。実施例2の吸収性物品は、第1実施形態の吸収性物品61と同様であり、製造装置1を用いて製造した。比較例9として、実施例2、比較例6〜8、及び比較例10のバックシートと同様のバックシートの上に、第2実施形態のトップシート64と同じ構造を有するトップシートを重ねてなる吸収性物品を製造した。吸収性物品の吸収体とバックシートとの単位体積当たりの粒状物量は同等とした。
実施例2及び比較例6〜10の吸収性物品に含まれるトウの重量、粒状物の重量、及びバックシートのパルプの重量は、表3に示す通りに設定した。実施例2及び比較例6〜10の吸収性物品について、実施例1及び比較例1〜5と同様の手順で確認実験を行った。実施例2及び比較例6〜10の吸収性物品に吸収させる生理食塩水量は、240mlに設定した。確認実験の結果を表4に示す。
表3及び4に示されるように、実施例2の吸収性物品は、比較例6〜10の吸収性物品と、粒状物の重量が同等で、パルプの重量が同等以下でありながら、比較例6〜10の吸収性物品に比べて、液吸収時間を短縮できると共に、液戻り量を約1/3以下に抑制できることが分かった。また実施例2の吸収性物品の液拡散長は、比較例6〜10の吸収性物品と同等であり、液吸収後の上面のべたつきが少なく、クッション性が良いことが分かった。
このような結果が得られた理由としては、実施例1と同様の理由が考えられる。また、実施例2の吸収性物品に吸収された生理食塩水の一部は、バックシート63のパルプ繊維に吸収されたものと推測されるが、吸収体62の上側部分が、バックシート63と比較的距離をおいて離隔していると共に、生理食塩水が吸収体62とバックシート63とに含まれる粒状物65に効果的に吸収されたことにより、液戻り量を低減でき、吸水後の上面のべたつきを防止できたことが考えられる。
比較例6の吸収性物品は、液吸収後の上面のべたつきが少ないものの、実施例2の吸収性物品に比べて、液吸収時間が遅く、液戻り量が実施例2の2.9倍に達し、クッション性がやや低下することが分かった。
この理由として、比較例6の吸収性物品は、気体開繊装置によりトウバンドの複数本の繊維が開繊されなかったために繊維間隙が十分でなく、実験1に比べて大量の生理食塩水を透過させるための液透過性が不足し、生理食塩水が複数の粒状物に効果的に吸収されなかったことが考えられる。
比較例7の吸収性物品は、実施例2の吸収性物品に比べて、液吸収時間が遅く、液戻り量が実施例2の3.1倍に達し、液吸収後の上面にべたつきが発生すると共に、クッション性がやや弱いことが分かった。
この理由として、比較例7の吸収性物品では、吸収体の複数本の繊維が結合されていないために、錘の荷重により吸収体の繊維間隙が縮小し、この繊維間隙に滞留する生理食塩水量が増大したことが考えられる。
比較例8の吸収性物品は、実施例2の吸収性物品に比べて、液吸収時間が遅く、液戻り量が実施例2の3.5倍に達し、液吸収後の上面にべたつきが発生すると共に、クッション性が非常に弱いことが分かった。
この理由として、比較例8の吸収性物品では、比較例3と同様に繊維間隙が十分でなく、実験1に比べて大量の生理食塩水を透過させるための吸収体の液透過性が、比較例7の吸収性物品よりも更に不足し、生理食塩水が、複数の粒状物に効果的に吸収されなかったことが考えられる。
比較例9の吸収性物品は、液吸収後の上面のべたつきは少ないものの、実施例2の吸収性物品に比べて液吸収時間が遅く、液戻り量が実施例2の3.7倍に達し、クッション性が非常に弱いことが分かった。
この理由として、比較例9の吸収性物品では、実施例2及び比較例6〜8の吸収性物品に比べてパルプ重量が大きく、パルプ繊維が吸収した大量の生理食塩水が、薄いトップシートの複数の微細孔を通じてトップシートの上方に移動し、液戻りが増大したことが考えられる。
比較例10の吸収性物品は、実施例2の吸収性物品に比べて、横拡散長が小さく、液吸収時間が遅く、液戻り量が比較例9と同等に多いことが分かった。また、比較例10の吸収性物品は、クッション性は良いものの、液吸収後の上面のべたつきが多いことも分かった。
この理由としては、比較例5の吸収性物品と同等の理由が考えられる。また、比較例10の吸収性物品は、粒状物を含むバックシートを用いたことにより比較例5の吸収性物品に比べて粒状物の重量が増大しているが、吸収体の上側領域に局在して配置された粒状物が生理食塩水を吸収して膨潤したことで、生理食塩水が吸収体の上側領域を通過しにくくなり、全ての粒状物に生理食塩水を吸収させにくくなったため、実験1に比べて大量に投入された生理食塩水が吸収体の上側領域に滞留し、液戻りが増大したことが考えられる。
本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。各実施形態で製造した吸収体の表面には、別のシートや、別の吸収性物品を重ねて配置してもよい。