JP6761599B2 - バレル研磨方法 - Google Patents
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Description
(1)金属製部品であるワークを研磨治具に固定する工程。
(2)バレル研磨機のバレル槽内の所定の位置に固定されるようにワークをセットする工程。
(3)バレル槽に研磨媒体を投入する工程。
(4)バレル研磨機を作動させてワークを研磨する工程。
ワーク20を研磨治具30に固定する。研磨治具30は、被研磨面を露出させた状態でワーク20を固定でき、且つ研磨時に変形しない強度を有しており、且つマスMに対して耐食性を有していれば、その形態は特に限定されない。本実施形態では板状の鋼材を研磨治具30とした。ワーク20を固定する面にはワーク20を把持するための把持具31が設けられており、把持具31を介して4つのワーク20を並列に固定した。
研磨治具30に固定されたワーク20を研磨槽11のキャビティ11aに固定されるようにセットする。本実施形態では、ボルトを介して研磨治具30を研磨槽11に固定した。固定する向きは、図1(A)の視点で溝21が垂設され、且つこの溝21がマスMに対して所定の位置となるようにセットする。ワーク20をセットする位置についての詳細は後述する。
バレル槽11のキャビティ11aに、研磨媒体である研磨メディアP、水、コンパウンドを投入する。研磨メディアPは、砥粒を樹脂に分散させて形成された研磨メディア(樹脂メディア)、セラミックス質の研磨メディア(セラミックスメディア。砥粒及び粘土質を混練して焼成した研磨メディア(焼成メディア)や砥粒同士を焼結した研磨メディア(焼結メディア))、金属で構成される研磨メディア(金属メディア)、等から適宜選択することができる。
(1)研磨力の向上
(2)研磨メディアの洗浄および研磨力の持続(研磨メディアの目詰まりを防止)
(3)被加工物の洗浄
(4)被加工物の光沢度の向上
(5)被加工物のスケールの除去。
(6)被加工物の油脂の除去
(7)被加工物に防錆効果を付与、または被加工物の変色の防止
(8)被加工物表面に打撃痕の形成を防止
(9)水を軟化
(10)被加工物が硬脆材料の場合、チッピングの抑制
モータ17を作動させるとカウンターウェイト15が回転し、カウンターウェイト15の回転に応じて研磨槽11が楕円形の軌道を描きながら振動する。この振動により研磨媒体は流動状態になり、マスMを形成する。ここで、マスの流動状態を図3に示す。図3は図1(A)と同じ視点であり、研磨中における研磨メディアPを含むマスMの流動状態をバレル槽の中央部における研磨メディアの流動方向での縦断面形状を示す。マスMの流動方向での断面形状で代表されたマスMの形状は、研磨槽11の底部11bからの高さの最小値をH1、最大値をH2とすることができる。ここで、研磨槽11の縦断面形状において、底部11bの湾曲部での最大幅Dの1/4、1/2、3/4の位置でのマスMの上面a、b、cの3点を結んだ仮想直線と研磨槽11との交点をそれぞれH1、H2とすることができる。
モータ17を所定時間作動させた後、即ち所定時間研磨を行った後、モータ17の作動を停止する。次いで、研磨治具30を研磨槽11から取り外した後、把持具31によるワーク20の把持を解除し、ワーク20を回収する。回収したワーク20を水洗し、必要に応じて防錆処理を行い研磨が完了する。
<研磨の進行>
研磨前及び研磨後の表面粗さRaの平均値をそれぞれ算出した。そして、「(研磨前の表面粗さの平均値)−(研磨後の表面粗さの平均値)」を算出し、この値を用いて以下の通り評価した。
○:算出した値が0.17以上
△:算出した値が0.10以上0.17未満
×:算出した値が0.10未満
<仕上げ程度のばらつき>
研磨後の表面粗さRaの平均値を算出した。そして、「(研磨後の表面粗さ)−(研磨後の表面粗さの平均値)」の絶対値を算出し、「(算出した絶対値)/(研磨後の表面粗さの平均値)×100」を算出し、この値を用いて以下の通り評価した。
○:算出した値が5%以内
△:算出した値が5%以上9%未満
×:算出した値が9%以上
<ワークの向き>
ワークをセットする方向を指し、垂直・水平はマスの流動面にするワークの溝の方向を示す。
<ワークの高さ位置>
ワークをセットする高さ位置を指す。天面・底面は図2における位置と同じであり、研磨槽のキャビティ底部からの距離を示す。
A:ワークの天面及び底面からキャビティ底部までの距離が、共に(H1+H2)×1/4以上(H1+H2)×3/4を充足する。
B:ワークの天面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×1/4以上(H1+H2)×3/4を充足するが、ワークの底面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×1/4未満である。
C:ワークの底面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×1/4以上(H1+H2)×3/4を充足するが、ワークの天面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×3/4を超える。
<ワークの水平位置>
ワークをセットする水平位置(図3における左右方向)を指す。マスの上面が最小値となる側の研磨槽の壁面の水平位置をゼロ点とし底部の湾曲部での最大幅をDとして、ワークをセットする水平位置を以下の通り示す。
A:1/4×D
B:1/2×D
C:3/4×D
<メディア>
A:球形状であり、径がφ2mmの焼結メディア
B:球形状であり、径がφ4mmの焼結メディア
C:球形状であり、径が6mmの焼結メディア
D:球形状であり、径が12mmの焼結メディア
E:三角柱形状であり、4mm×4mm×4mmの焼結メディア
マスの流動面にするワークの溝の方向が垂直である実施例1は「研磨の進行」及び「仕上げ程度ばらつき」の評価が共に○評価であったが、ワークの向きが水平でありその他の条件は実施例1と同じである実施例2は共に△評価となった。△評価は実用で使用するには問題のない程度に低い評価であり、研磨条件を最適化することで○評価となる可能性がある評価である。しかし、水平にセットすることで流動する研磨メディアの運動エネルギーが垂直方向の場合に比べて十分に伝わらなかったので、評価が低下したと推測される。
ワークの天面及び底面からキャビティ底部までの距離が(H1+H2)×1/8〜(H1+H2)×3/4を充足する実施例1は「研磨の進行」及び「仕上げ程度のばらつき」の評価が共に○評価であった。これに対し、ワークの天面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×1/4〜(H1+H2)×3/4を充足するが、ワークの底面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×1/4未満である実施例3は、「研磨の進行」の評価が△評価であった。これは、ワークの底面と研磨槽の底部との距離が短くなったことにより研磨メディアの流動化が阻害されたためであると推測される。
また、ワークの底面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×1/4〜(H1+H2)×3/4を充足するが、ワークの天面からキャビティ底部までの距離が、(H1+H2)×3/4を超える比較例1は、「研磨の進行」及び「仕上げ程度のばらつき」の評価が共に×評価であった。これは、ワークの天面近傍では研磨メディアに負荷される他の研磨メディアの荷重が不足することで、ワークの底面近傍での研磨力と大きな差が生じたためであると推測される。
ワークの水平位置が1/4×Dを満たす実施例1は「研磨の進行」及び「仕上げ程度のばらつき」の評価が共に○評価であった。これに対し、1/2×Dである実施例4は「研磨の進行」の評価が△評価であった。これは、流動するマスの高さが最大値H2となる研磨槽壁面との距離とワークとの距離が短くなったことで、流動が阻害されて研磨力が低下したためと推測される。
この距離がさらに短くなった比較例3は、「研磨の進行」の評価が×評価、「仕上げ程度のばらつき」の評価が△評価となり、さらに評価が低下した。
溝の幅の75〜85%を満たす径の球形状の研磨メディアを使用した実施例1は「研磨の進行」及び「仕上げ程度のばらつき」の評価が共に○評価であった。また、溝の幅の50〜75%を満たす径の球形状の研磨メディアを使用した実施例5及び溝の幅の85〜90%を満たす径の球形状の研磨メディアを使用した実施例5は、「研磨の進行」及び「仕上げ程度のばらつき」の評価が共に△評価であった。これより、溝の幅の75〜85%を満たす径の球形状の研磨メディアを使用することで、より効率よく研磨できることがわかった。
一方、溝の幅より大きい径の球形状の研磨メディアを使用した比較例3は、「研磨の進行」及び「仕上げ程度のばらつき」の評価が共に×評価であった。これは、研磨メディアが溝の凹曲面に十分に接触しなかったことに起因すると推測される。また、球形状以外の形状の研磨メディアを使用した比較例4は、「研磨の進行」の評価が△評価、「仕上げ程度のばらつき」の評価が×評価となった。これは、研磨メディアの鋭角部が凹曲面に接触することで、凹曲面に打痕が発生したことによると推測される。
11 バレル槽
11a キャビティ
11b 底部
12 バネ
13 架台
14 ベアリング
15 カウンターウェイト
15a 回転軸
16 カプラ
17 回転モータ
20 ワーク
21 溝
22 脚部
23 天面
24 底面
25a、25b、25c 被研磨面
30 研磨治具
30a 把持具
M マス
P 研磨メディア
Claims (2)
- 凹部が形成された金属製部品のバレル研磨方法であって、
前記金属製部品であるワークはコ字状であり、該ワークの内側の隅角部には一方向に伸延する凹曲面の溝である凹部が形成されており、
前記金属製部品であるワークを研磨治具に固定する工程と、
バレル研磨機のバレル槽内の所定の位置に固定されるように前記ワークをセットする工程と、
前記バレル槽に研磨媒体を投入する工程と、
前記バレル研磨機を作動させて前記ワークを研磨する工程と、
を含み、
前記ワークを研磨する工程は、前記バレル研磨機を作動させることでバレル槽を振動させると共に、該バレル槽に投入された研磨媒体を撹拌する工程を含み、
前記ワークをセットする工程では、前記溝がバレル槽の中央部における前記マスの流動方向での縦断面において垂設されるように前記ワークをセットし、
前記ワークをセットする位置は、研磨中における研磨媒体で形成されるマスの流動状態をバレル槽の中央部における前記マスの流動方向での縦断面形状で代表させ、
前記縦断面形状において、マスのバレル槽の底部からの高さの最小値をH1、最大値をH2としたときに、前記ワークをセットした時の天面と前記バレル槽の底部との距離が(H1+H2)×1/8以上であり、且つ底面と前記バレル槽の底部との距離が(H1+H2)×3/8以下であり、
前記縦断面形状においてマスの上面が最小値となる側の研磨槽の壁面の水平位置をゼロ点とし底部の湾曲部での最大幅をDとしたときに、ワークの水平位置がD/4〜D/2であり、
前記ワークを研磨する工程は、前記バレル研磨機を作動させることでバレル槽を振動させると共に、該バレル槽に投入された研磨媒体を撹拌する工程を含み、
前記研磨媒体における研磨メディアは、前記溝の幅の50〜90%の径の球形である
ことを特徴とするバレル研磨方法。
(ここで、H1及びH2は、研磨槽の縦断面形状において、底部の湾曲部での最大幅の1/4、1/2、3/4 の位置でのマスの上面の3点を結んだ仮想直線と研磨槽との交点を指す) - 前記ワークの被研磨面を、前記縦断面形状における水平方向の中心よりマスの高さが最小値H2となる側にセットすることを特徴とする請求項1に記載のバレル研磨方法。
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