JP6761281B2 - 走査露光装置および物品製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、走査露光装置および該走査露光装置を用いて物品を製造する物品製造方法に関する。
露光装置は、感光材が塗布された基板に原版のパターンを投影することによって基板を露光することによって原版のパターンに対応する転写像を感光材に形成する。転写像は、現像工程を経ることによって物理的なパターンに変換される。露光装置の方式の1つとして、走査露光装置がある。走査露光装置は、原版のパターン領域よりも小さい範囲に限定された露光光に対して原版および基板を走査する走査露光によって原版のパターンに対応する転写像を基板に形成する。
特許文献1には、走査露光装置による露光方法が記載されている。この露光方法では、基板上に形成される転写像の歪みを、補正内容を記述する多項式に基づいて補正する。この際に、多項式の係数に代入する値の候補のうち、該係数のそれぞれに対して設定されている閾値を越える値の候補を閾値以下の値に変更し、その変更の程度に応じて、対応する閾値を越えない他の値の候補を変更する。これにより、露光装置の全機能の範囲内で可能な限り転写像の歪みを補正する。
特開2010−114164号公報
投影光学系に設けられた光学素子を駆動することによって基板に形成される転写像の形状を補正する走査露光装置において、光学素子の駆動が基板および原版の走査速度に追従できない場合、転写像の形状を目標とする形状に補正することができない。この場合、パターンの重ね合わせ精度が低下する。このような不具合を避けるために、基板および原版の走査速度を低下させると、転写像の形状の補正精度を高めることはできるが、スループットが低下する。しかしながら、転写像の形状の補正精度として常に最高の補正精度が要求される訳ではない。
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、要求される重ね合わせを満たしつつ高いスループットを得るために有利な技術を提供することを目的とする。
本発明の1つの側面は、原版のパターン領域のパターンを基板に投影する投影光学系を有し、前記パターン領域に対応する転写像を走査露光によって前記基板に形成する走査露光装置に係り、前記走査露光装置は、前記基板に形成される転写像の形状が補正されるように投影光学系の光学特性を調整する調整機構と、前記転写像の形状補正における補正残差に関する許容範囲に基づいて前記走査露光における最大走査速度を決定し、前記最大走査速度を越えないように前記基板および前記原版の走査を制御するとともに前記調整機構を制御する制御部と、を備える。
本発明によれば、要求される重ね合わせを満たしつつ高いスループットを得るために有利な技術を提供する。
本発明の一実施形態の走査露光装置の構成を示す図。 基板に形成される転写像の形状を調整機構によって調整する例を示す図。 駆動機構による光学素子のz軸方向の駆動量(レンズ駆動量(z))と投影光学系の倍率との関係を例示する図。 基板に形成される転写像の形状を調整機構によって調整する例を示す図。 投影光学系の光学素子を駆動する駆動機構の応答特性を例示する図。 走査方向(y軸方向)における位置yと光学素子の駆動速度vとの関係(a)、および、走査方向(y軸方向)における位置yと光学素子の駆動位置との関係(b)を例示する図。 基板に形成される転写像の形状補正における補正残差に関する許容範囲に基づいて主制御装置によって基板ステージ、原版および光学素子の駆動プロファイルを決定する処理を示す図。 転写写像の形状補正が、走査位置yに応じてx軸方向の倍率が変化する成分と、走査位置yに応じて走査方向における位置ずれ量(x軸方向の位置に対する0次成分)が変化する成分と、を含む例を示す図。 走査位置yと走査速度Vとの関係を例示する図。
以下、本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
図1には、本発明の一実施形態の走査露光装置EXの構成が示されている。走査露光装置EXは、原版109のパターンを基板115に投影する投影光学系110を有し、原版109のパターンに対応する転写像を走査露光によって基板115に形成する。ここで、基板115は、フォトレジストを有し、転写像は、フォトレジストに潜像として形成されうる。潜像は、現像工程によって物理的なパターンであるレジストパターンに変換されうる。転写像は、例えば、原版109のパターン領域に対応する像として考えると理解しやすい。
走査露光装置EXは、基板115に形成される転写像の形状が補正されるように投影光学系110の光学特性を調整する調整機構150を備えうる。調整機構150は、例えば、投影光学系110の光学素子123を駆動する駆動機構113を含みうる。調整機構150は、その他、基板ステージ116を駆動する駆動機構119および原版ステージ125を駆動する駆動機構126を含んでもよい。走査露光装置EXは、更に、基板115に形成される転写像の形状補正における補正残差に関する許容範囲に基づいて基板115および原版109の走査を制御するとともに調整機構150を制御する主制御装置(制御部)103を備えうる。走査露光装置EXは、更に、ユーザインターフェース130を備えうる。オペレータ等のユーザは、ユーザインターフェース130を操作することによって各種の情報を入力することができる。
以下、走査露光装置EXの構成をより具体的に説明する。図1では、投影光学系110の光軸と平行で、基板115から原版109に向かう方向をz軸とし、それと直交する方向をx軸およびy軸とするxyz座標が定義されている。光源101は、露光光を射出する。光源101は、主制御装置103によって制御される光源制御装置102によって制御されうる。光源101から射出された露光光は、照明光学系104の整形光学系(不図示)によって所定のビーム形状に整形される。整形されたビームは、オプティカルインテグレータ(不図示)に入射し、該オプティカルインテグレータによって、原版109を均一な照度分布で照明するために複数の2次光源が形成される。
照明光学系104は、照明光学系104の開口数(NA)を決定する開口絞り105を有する。開口絞り105は、ほぼ円形の開口部を有し、照明系制御装置108によって当該開口部の直径が制御されることによって、照明光学系104の開口数(NA)が制御される。投影光学系110の開口数に対する照明光学系104の開口数の比は、コヒーレンスファクタ(σ値)と呼ばれる。照明系制御装置108は、照明光学系104の開口絞り105を制御することによってσ値を設定することができる。
照明光学系104の光路上にはハーフミラー106が配置され、原版109を照明する露光光の一部がこのハーフミラー106により反射され取り出される。ハーフミラー106の反射光の光路上にはフォトセンサ107が配置され、フォトセンサ107によって露光光の強度(露光エネルギー)が検出される。
原版109は、原版ステージ125によって保持され、原版ステージ125が駆動機構126によってy軸方向に駆動されることによって、原版109がy軸方向に駆動される。原版109には、製造すべき半導体デバイス等のデバイスのパターンが形成されている。照明光学系104は、原版109のパターンを露光光によって照明する。投影光学系110は、例えば、屈折型またはカタディオプトリック系等の光学系でありうる。投影光学系110は、原版109のパターンの像を縮小倍率β(例えば、β=1/4)で縮小し、基板115に投影する。これにより基板115のフォトレジストが露光され、該フォトレジストに原版109のパターンの転写像(潜像)が形成される。
投影光学系110の瞳面(原版109が配置される面(物体面)に対するフーリエ変換面)には、開口部がほぼ円形である開口絞り111が配置され、モータ等の駆動機構112によって開口絞り111の開口部の直径が制御される。投影光学系110は、光学素子123を有し、調整機構150としての駆動機構113が光学素子123を駆動することによって投影光学系110の光学特性が調整される。駆動機構112、113は、主制御装置103によって制御される投影系制御装置114によって制御される。
基板115は、基板ステージ116によって保持され、基板ステージ116が駆動機構119によってx軸、y軸、z軸方向およびこれらの軸の周りの回転に関して駆動される。基板ステージ116を駆動する駆動機構119および原版ステージ125を駆動する駆動機構126は、主制御装置103によって制御されるステージ制御装置120によって制御される。走査露光において、ステージ制御装置120は、基板ステージ116および原版ステージ125が同期して走査されるように駆動機構119、126を制御する。基板ステージ116には、移動鏡117が設けられていて、レーザ干渉計118によって移動鏡117のx軸、y軸、z軸方向等の変位が検出されることによって基板ステージ116のx軸、y軸、z軸方向の位置およびこれらの軸の周りの回転角が検出される。ステージ制御装置120は、レーザ干渉計118による検出結果に基づいて基板ステージ116の位置および回転角をフィードバック制御しうる。
投光光学系121および検出光学系122は、フォーカス検出系を構成する。投光光学系121は、基板115のフォトレジストを感光させない波長を有する複数の光束を基板115に投光し、基板115からの反射光が検出光学系122に入射する。検出光学系122は、複数の光束を受光する受光素子が配置されていて、複数の光束のそれぞれの受光位置が検出される。投影光学系110の光軸方向(z軸方向)における基板115の位置は、受光素子が受光する光束の位置ずれとして検出される。
図2(a)〜(d)および図4には、基板115に形成される転写像の形状を調整機構150によって調整する例が示されている。図2(a)〜(d)および図4において、点線は、基板上におけるディストーションがないショット領域を示し、実線は、ディストーションを有するショット領域を示している。通常、光学素子123によって投影光学系110の光学特性を補正するとともに駆動機構119、126によって基板115、原版109を同期させて制御することによって点線で示されるようなショット領域に原版109のパターンを転写することができる。しかし、原版109のパターンを転写すべき基板115が有する下地のショット領域が実線で示されるようなディストーションを有する場合には、そのディストーションに応じて、基板に形成される転写像の形状を補正する必要がある。
図2(a)には、走査方向(y軸方向)に直交する方向(x軸方向)における位置ずれ量が走査方向における位置に応じて変化する例が示されている。このような転写像の形状補正(ディストーション補正)は、走査方向における位置に応じて投影光学系110の倍率を光学素子123によって変化させることによって形成することができる。図2(b)には、走査方向(y軸方向)における位置ずれ量(x軸方向の位置に対する0次成分)が走査方向における位置に応じて変化する例が示されている。このような転写像の形状補正(ディストーション補正)は、駆動機構119、126による基板115、原版109の走査速度を制御することによって形成することができる。
図2(c)には、x軸方向の位置に対する1次成分が走査方向(y軸方向)における位置に応じて変化する例が示されている。このような形状補正(ディストーション補正)は、駆動機構119、126による基板115、原版109の走査時にz軸周りの回転を制御することによって形成することができる。図2(d)には、x軸方向の位置に対する2次成分が走査方向(y軸方向)の位置に応じて変化する例が示されている。このような形状補正(ディストーション補正)は、走査方向における位置に応じて投影光学系110の光学素子123を光軸に対して傾斜させることによって形成することができる。
図4には、走査方向(y軸方向)に直交する方向(x軸方向)における位置ずれ量が走査方向における位置に応じて変化する例が示されている。このような形状補正(ディストーション補正)は、走査方向における位置に応じて投影光学系110の倍率を光学素子123によって変化させることによって形成することができる。以下、具体例として図4に例示されるような補正を行う例を説明する。
図3には、駆動機構113による光学素子123のz軸方向の駆動量(レンズ駆動量)(z)と投影光学系110の倍率Mとの関係が例示されている。図6に示された例では、光学素子123のz軸方向の駆動量(レンズ駆動量)(z)と投影光学系110の倍率(M)とが比例関係を有する。この比例関係における比例定数をs、投影光学系110のx軸方向の倍率をMとする。sは、光学素子123のz軸方向の駆動量(レンズ駆動量z)と投影光学系110の倍率(光学特性)との関係を示す敏感度である。M、s、zは、式(1)の関係を有しうる。
M=s*z ・・・(1)
走査方向(y軸方向)における位置(走査位置)をyとすると、走査位置yに応じて倍率Mが変化するようなディストーション(転写像の形状)は、式(2)のように一般化されうる。
M=M(y) ・・・(2)
例えば、図2(a)のディストーション(転写像の形状)は、走査位置yに対して倍率Mが線形関係を有するので、式(3)のように表すことができる。
M(y)=k1*y ・・・(3)
また、図4のディストーション(転写像の形状)は、式(4)のように表すことができる。
M(y)=k1*y+k2*y ・・・(4)
式(1)、(2)より式(5)が得られる。式(5)は、光学素子123のz軸方向における駆動量zが基板ステージ116(基板115)の走査位置yに応じて定まることを意味する。
z=M(y)/s ・・・(5)
式(5)を時間で微分すると、式(6)が得られる。
dz/dt=M’(y)/s*dy/dt ・・・(6)
dz/dtを光学素子123のz軸方向における駆動速度v、dy/dtを基板ステージ116(基板115)の走査速度Vと置くと、式(7)が得られる。
v=M’(y)/s*V ・・・(7)
式(7)より、光学素子123の駆動速度vが基板ステージ116(基板115)の走査速度Vに依存することが分かる。なお、原版ステージ125(原版109)の走査速度は、β*Vである。
以下では、目標とする転写像の形状補正(ディストーション補正)が図4に例示されているものとし、一例として、k1=−0.02(ppm/mm)、k2=0.0011(ppm/mm)とする。この場合、式(4)、(7)から式(8)が得られる。
v=(−0.02+0.0022*y)/s*V ・・・(8)
式(8)は、走査速度Vが速くなるほど、光学素子123の駆動速度を速くする必要があることを示している。しかし、光学素子123を駆動する駆動機構113は、駆動速度の上限、即ち、最大駆動速度を有する。図5には、駆動機構113の応答特性が例示されている。駆動機構113の最大駆動速度は、v_maxとして示されている。図5において、横軸は、駆動機構113に対して与えられる指令速度であり、縦軸は、駆動速度を示している。点線で示されるように指令速度と実駆動速度(実際の駆動速度)とが一致していることが理想であるが、実際には、実線で示されるように、指令速度と実駆動速度とが一致しない領域が存在しうる。具体的には、最大駆動速度v_maxを超える指令速度が駆動機構113に与えられても、駆動機構113は、そのような指令速度に追従することができない。
図6(a)には、走査位置yと光学素子123の駆動速度vとの関係が複数の走査速度Vについて例示されている。ここでは、ショット領域のy軸方向の寸法を33(mm)とし、ショット領域の入口(走査開始位置)をy=0(mm)とした。また、駆動機構113による光学素子123の最大駆動速度v_maxを±4000(nm/sec)とし、s=0.004(ppm/nm)とした。走査速度Vが300(mm/sec)の場合はショット領域の全域(0〜33(mm))において、光学素子123の駆動速度vがv_maxに到達せず理想的に駆動できる。一方、V=550(mm/sec)に走査速度Vが上がると、y=22mm付近で光学素子123の駆動速度がv_maxになり、それを超える走査位置yにおいて光学素子123の駆動速度vはv_maxを越えることができない。更に、V=780(mm/sec)に走査速度Vが上がると、y=18mm付近で駆動速度vがv_maxになり、それを超える走査位置yにおいて光学素子123の駆動速度vはv_maxを越えることができない。
図6(b)は、図6(a)と同一の条件の下で計算されたものであり、図6(b)には、走査位置yと光学素子123の駆動位置zとの関係が複数の走査速度Vについて例示されている。図6(b)において、駆動前における位置からの変化量をzとしている。V=300(mm/sec)の場合、理想的な駆動ができている。一方、V=550(mm/sec)の場合は、駆動速度がv_maxに到達するy=22mmの付近で理想的な駆動プロファイルから離れてしまう。また、V=780mm/secになると、y=18mm付近で理想的な駆動プロファイルから離れ、駆動誤差ΔzがV=550mm/secと比べて大きくなっていることが分かる。
本実施形態では、主制御装置(制御部)103は、転写像の形状補正(ディストーション補正)における補正残差に関する許容範囲に基づいて基板115および原版109の走査を制御するとともに調整機構150を制御する。ここで、補正残差の許容範囲を最大残差Tによって与える。つまり、補正残差の許容範囲をT以下とする。
式(1)によって示されているように、投影光学系110の倍率Mと光学素子123の駆動量zとの間には比例関係がある。したがって、投影光学系110の倍率Mの誤差と光学素子123の駆動量zの誤差Δzとの間にも同様の比例関係がある。つまり、式(9)が成り立つ。
T≧|s*Δz| ・・・(9)
例えば、T=0.1ppmとすると、s=0.004(ppm/nm)および式(9)より、Δz≦±25 nmとする必要がある。この条件を満たす最大走査速度Vを求めると、V=506mm/secとなる。つまり、基板ステージ116(基板115)の最大走査速度V=506mm/secで走査露光を行うことによって、補正残差の許容範囲を満たしつつスループットの低下を抑えることができる。これにより、要求される重ね合わせを満たしつつ高いスループットを得ることができる。
図7には、基板115に形成される転写像の形状補正における補正残差に関する許容範囲に基づいて主制御装置103によって基板ステージ116、原版ステージ125および光学素子123の駆動プロファイルを決定する処理が示されている。工程S710〜S740の順序は任意である。
工程S710では、主制御装置103は、不図示のユーザインターフェースを介して入力される情報に基づいて、基板115に形成される転写像の形状補正(ディストーション補正)の目標を設定する。ここで、転写像の形状補正の目標は、例えば、発生させるディストーションを示す式で与えられうる。発生させるディストーションの次数が既知の場合は、転写像の形状補正の目標は、定数(図4の例では、k1、k2の値)で与えられてもよい。転写像の形状補正の目標は、上記の例のように、投影光学系110のx軸方向の倍率Mを走査位置yの多項式で表現することによって与えられうる。ただし、転写像の形状補正の目標は、例えば、投影光学系110の他の種々の光学特性に従って与えられうる。
また、調整機構150によって調整される投影光学系110の光学特性は、上記の例のように、投影光学系110の倍率Mとすることができる。ただし、調整機構150によって調整される投影光学系110の光学特性は、投影光学系110の倍率、ディストーションおよび像面湾曲の少なくとも1つを含みうる。補正残差の許容範囲は、調整機構150によって調整される投影光学系110の光学特性の調整誤差として設定されうる。例えば、調整機構150によって調整される投影光学系110の光学特性が投影光学系110の倍率、ディストーションおよび像面湾曲である場合を考える。この場合、投影光学系110の倍率、ディストーションおよび像面湾曲のそれぞれに対して補正残差としての調整誤差の許容範囲が設定されうる。更に、補正残差の許容範囲は、転写像の形状の特徴(例えば、ディストーション量、位置ずれ量)を示す情報として与えられてもよい。
補正残差の許容範囲は、それを示す数値をユーザがユーザインターフェース130を介して入力することによって与えられてもよいし、ユーザがユーザインターフェース130を操作することによって複数の候補から選択することよって与えられてもよい。
あるいは、ユーザインターフェース130は、補正残差に関する許容範囲が互いに異なる複数のモードから1つのモードを選択する機能をユーザに提供しうる。複数のモードは、例えば、補正精度優先モード、および、スループット優先モードを含みうる。補正精度優先モードでは、スループット(例えば、時間あたりの基板の処理枚数)よりも補正精度が優先され、スループット優先モードでは、補正精度よりもスループッが優先される。この例では、主制御装置103は、複数のモードから1つのモードが選択されたことに応じて、補正残差に関する許容範囲として、選択されたモードに予め対応付けられた許容範囲が設定されうる。補正精度優先モードに対応付けられる許容範囲は、スループット優先モードに対応付けられる許容範囲より小さい。ユーザは、補正残差の具体的な許容範囲を考慮することなく、優先事項(補正精度またはスループット)に基づいてモードを選択することにより、間接的に補正残差の許容範囲を指定することができる。
工程S730では、主制御装置103は、敏感度sを取得する。敏感度sは、前述の例では、比例定数で与えられたが、光学素子123の駆動量とその駆動量に対応する光学特性との関係を示す情報であればよい。工程S740では、主制御装置103は、光学素子123を駆動する駆動機構113の応答特性を示す情報を取得する。主制御装置103は、例えば、不図示のメモリに予め格納された情報から駆動機構113の応答特性を示す情報を取得することができる。駆動機構113の応答特性を示す情報は、前述のように、光学素子123をz軸方向に駆動する際の最大駆動速度v_maxでありうる。ただし、駆動機構113の応答特性を示す情報は、調整すべき光学特性に応じた情報でありうる。
工程S750では、主制御装置103は、工程S710〜S740で設定および取得された情報に基づいて、前述の方法に従って、基板ステージ116(基板115)および原版ステージ125(原版10)の最大走査速度を決定する。ここで、基板ステージ116(基板115)および原版ステージ125(原版10)の一方の最大走査速度が決定されれば、他方も決定される。工程S760では、主制御装置103は、工程S750で決定した最大走査速度に基づいて、基板ステージ116(基板115)、原版ステージ125(原版10)および光学素子123の駆動プロファイルを決定する。駆動プロファイルは、基板ステージ116(基板115)、原版ステージ125(原版10)および光学素子123を駆動するための情報である。駆動プロファイルは、例えば、時間軸上での基板ステージ116(基板115)、原版ステージ125(原版10)および光学素子123の位置、速度および加速度の少なくとも1つを含みうる。工程S770では、主制御装置103は、工程S760で決定した駆動プロファイルに従って基板115の露光を制御する。
転写像の形状補正は、図8(a)に例示されるように、走査位置yに応じてx軸方向の倍率が変化する成分と、走査位置yに応じて走査方向における位置ずれ量(x軸方向の位置に対する0次成分)が変化する成分とを含んでいてもよい。走査位置yに応じて走査方向における位置ずれ量が変化する成分は、図8(b)、(c)に例示されている。図8(b)の例では、走査位置yに応じて変化する走査方向における位置ずれ量dyは、式(10)で表される。
dy=a1*y ・・・(10)
図8(c)の例では、走査位置yに応じて変化する走査方向における位置ずれ量dyは、式(11)で表される。
dy=a1*y+a2*y ・・・(11)
ここで、走査位置yおよび位置ずれ量dyを考慮すると、走査速度Vは、式(12)で表される。
V=d(y+dy)/dt ・・・(12)
例えば、図8(c)のような形状補正を行う場合、式(11)、(12)より得られる式(13)に従うことになる。
V=(1+a1+2*a2*y)*dy/dt ・・・(13)
走査速度Vは、走査位置yに従って制御すればよい。ここで、dy/dtは、形状補正をしない場合の走査速度V0である。
例えば、a1=−0.3(nm/mm)、a2=0.01(nm/mm)とすると、走査位置yと走査速度Vの関係は図9に示される。ここで、走査速度V0=600mm/secとしている。図9から分かるように、走査位置y=0において600(mm/sec)よりも少し走査速度を落とした状態から走査を開始し、ショット端y=33mmの位置では600(mm/sec)よりも少し走査速度を上げた状態で走査することになる。
図8に示されるように走査位置yに従ってx軸方向の倍率と走査方向の位置ずれ量とが変化する場合、光学素子123の最大駆動速度に基づいて決定される最大走査速度を上限として、走査方向における位置ずれ量を補正するための走査速度を考慮する必要がある。上記の例のように、V0=600(mm/sec)としたのでは、走査速度506(mm/sec)を超えているため、補正残差を許容範囲に収めることができない。そこで、走査方向における位置ずれ量を補正するための最大走査速度が506mm/secを超えないように、V0を設定する必要がある。つまり、式(14)を満たすように、V0を決定すればよい。
506 ≧ (1+ a1+2*a2*y)*V0 ・・・(14)
図8に示される例では、最大走査速度はy=33mmの位置での走査速度であり、
1+a1+2*a2*y=1+(−0.3/10)+(2*0.01*33/10)=0.999<1
となるため、V0は506(mm/sec)から速度を落とす必要があり、例えば、505(mm/sec)の走査速度であれば条件を満たすことになる。
以下、上記の露光装置を用いた物品製造方法を説明する。物品製造方法は、塗布工程、露光装置、現像工程および処理工程を含みうる。塗布工程では、基板の上にフォトレジストが塗布される。露光工程では、塗布工程を経た基板の上のフォトレジストが上記の走査露光装置によって露光されうる。現像工程では、露光工程を経た基板の上のフォトレジストが現像されレジストパターンが形成されうる。処理工程では、現像工程を経た基板が処理されうる。この処理は、例えば、エッチング、イオン注入または酸化を含みうる。
EX:走査露光装置、110:投影光学系、113:駆動機構、123:光学素子、115:」基板、109:原版、150:調整機構、

Claims (10)

  1. 原版のパターン領域のパターンを基板に投影する投影光学系を有し、前記パターン領域に対応する転写像を走査露光によって前記基板に形成する走査露光装置であって、
    前記基板に形成される転写像の形状が補正されるように投影光学系の光学特性を調整する調整機構と、
    前記転写像の形状補正における補正残差に関する許容範囲に基づいて前記走査露光における最大走査速度を決定し、前記最大走査速度を越えないように前記基板および前記原版の走査を制御するとともに前記調整機構を制御する制御部と、
    を備えることを特徴とする走査露光装置。
  2. 前記制御部は、前記許容範囲において、前記調整機構の応答特性に基づいて前記最大走査速度を決定する、
    ことを特徴とする請求項に記載の走査露光装置。
  3. 前記調整機構は、前記投影光学系に配置された光学素子を駆動する駆動機構を含み、
    前記応答特性は、前記光学素子の駆動量と前記光学特性の変化との関係を示す敏感度、および、前記光学素子の最大駆動速度を含む、
    ことを特徴とする請求項に記載の走査露光装置。
  4. 前記制御部は、前記最大走査速度を越えない範囲において、前記転写像の形状が補正されるように前記基板および前記原版の走査速度を変化させる、
    ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の走査露光装置。
  5. 前記補正残差に関する前記許容範囲として、前記光学特性の調整誤差に関する許容範囲が与えられ、前記制御部は、前記調整誤差に関する許容範囲に基づいて、前記基板および前記原版の走査を制御するとともに前記調整機構を制御する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走査露光装置。
  6. 前記補正残差に関する前記許容範囲が互いに異なる複数のモードを有し、前記制御部は、前記複数のモードから1つのモードが選択されたことに応じて、前記補正残差に関する前記許容範囲として、選択されたモードに予め対応付けられた許容範囲を選択する、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の走査露光装置。
  7. 前記複数のモードは、スループットよりも補正精度を優先する補正精度優先モード、および、補正精度よりもスループットを優先するスループット優先モードを含む、
    ことを特徴とする請求項に記載の走査露光装置。
  8. 前記補正精度優先モードに対応付けられる許容範囲は、前記スループット優先モードに対応付けられる許容範囲より小さい、
    ことを特徴とする請求項に記載の走査露光装置。
  9. 前記調整機構によって調整される前記光学特性は、前記投影光学系の倍率、ディストーションおよび像面湾曲の少なくとも1つを含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の走査露光装置。
  10. 基板の上にフォトレジストを塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程を経た前記基板の上の前記フォトレジストを請求項1乃至のいずれか1項に記載の走査露光装置によって露光する露光工程と、
    前記露光工程を経た前記基板の上の前記フォトレジストを現像してレジストパターンを形成する現像工程と、
    前記現像工程を経た前記基板を処理する処理工程と、
    を含むことを特徴とする物品製造方法。
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