JP6760595B2 - インクジェット印刷方法 - Google Patents
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Description
商業印刷、産業印刷分野へのインクジェット印刷の展開の利点としては、アナログ印刷のように印刷版を必要としないため、少量対応、バリアブル印刷等のオンデマンド印刷へ対応できることにある。
例えば、特許文献1には、顔料とジプロピレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒を含有する水系インクを、漏斗状ノズルが配列されたラインヘッドを用いて、3pl以下の液滴を吐出するインクジェット印刷方法が開示されている。
特許文献2では、シリアルヘッド方式を用いてシート紙印刷が行われているが、それに使用するインクとして、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aと、水不溶性ポリマー粒子Bと、有機溶媒Cとを含有し、水不溶性ポリマー粒子Aを構成する水不溶性ポリマーが、特定の親水性ノニオン性モノマー由来の構成単位を含有し、有機溶媒Cの沸点が、加重平均値で250℃以下であるインクジェット印刷用水系インクが開示されている。
高速印刷を行う場合は、ヘッド駆動周波数と解像度の制御が必要となる。例えば、印刷速度を上げれば、単位面積当たりに着弾するインク滴数が少なくなるため、1滴当たりの液滴量を多くする必要があり、そのため、1ドットが大きくなり、低解像度の画質となり、印刷品質が低下する。
一方、高解像度、小液滴量による印刷では、印刷速度が低下する。ヘッドの駆動周波数、特にラインヘッドの駆動周波数を上げれば、解像度を高くしても印刷速度を上げることができる。しかし、駆動周波数を上げると、インクの打滴速度の維持や、ノズルでのインクメニスカスの安定性を維持することが困難となり、連続吐出安定性が悪化するという問題がある。さらに、小液滴量で印刷する場合は、吐出ノズル内でのインク凝集物による閉塞も問題となる。
このインク乾燥不足を解決するため、インク成分として低沸点溶媒を用いたり、表面処理剤を併用することが提案されている。しかし、低沸点溶媒を用いると、ヘッド内部でインクが乾燥増粘し、吐出性が悪化するという問題があり、また表面処理剤を併用すると、処理剤塗布システムの導入が必要で、コストや装置大型化の点から不利である。
高速印刷でない印刷では、従来インクでもローラー転写汚れは発生しにくいが、生産性の低下や紙上での色間混色が起こるという問題があった。
本発明は、商業印刷に求められる高速印刷においても、吐出安定性が優れ、かつローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得ることができるインクジェット印刷方法、及びそれに用いる水系インクを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]水系インクを印刷媒体の表面に吐出して印刷を行う印刷工程を有するインクジェット印刷方法であって、該水系インクが、顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有し、
有機溶媒(B)が、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であり、
該水系インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下であり、
印刷速度が印刷媒体の搬送速度換算で70m/min以上である、インクジェット印刷方法。
[2]顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有する水系インクであって、有機溶媒(B)が、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であり、
該グリコールエーテル(b−1)が、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上であり、
沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下である、水系インク。
本発明の水系インク(以下、単に「インク」ともいう)は、顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有し、有機溶媒(B)が、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であり、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下であり、好ましくは該グリコールエーテル(b−1)は、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上である。
本発明の水系インクは、商業印刷に求められる高速印刷においても、ローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得ることができるため、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット印刷用の水系インクとして用いることができる。本発明の水系インクは、インクの吐出安定性に優れることから、インクジェット印刷用の水系インクとして用いることが好ましい。
なお、本明細書において、「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「印刷物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。また、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
インクジェット印刷用インクは、通常、ポリマー分散剤を配合するが、吐出ノズルからインクを吐出した後、インクを吐出しないで所定時間が経過すると、ノズル内でのインクの乾燥により、ノズル内でポリマー分散剤粒子が凝集、付着し、ノズルから再びインクを吐出する際に吐出不良が生じるという問題があった。
本発明においては、有機溶媒(B)として特定の粘度と蒸気圧を有するグリコールエーテルを含有するが、該グリコールエーテルは、適度な粘度を有し、駆動周波数が高い時の流動特性が優れているため、印刷速度が70m/min以上の高速印刷時における吐出安定性に寄与すると考えられる。また、該グリコールエーテルは、適度な蒸気圧を有するため、インクの乾燥性を抑制し、ノズル内で凝集付着物が発生するのを抑制することができると考えられる。そのため、高速印刷時における吐出安定性がより一層向上すると考えられる。
さらに、前記グリコールエーテルは、粘度と蒸気圧が適当な範囲であるため、印刷面におけるインクの乾燥不足をもたらすことがなく、ローラー汚れや印刷面はがれの発生を抑制することができ、ローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得ることができると考えられる。
本発明で用いられる水系インクは、顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有する。
顔料(A)は、染料に比べて印刷物の耐水性、耐候性の点で有利である。
顔料(A)は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料(A)は、印刷媒体へのローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、顔料(A)を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として含有されることが好ましい。
(水不溶性ポリマー)
水不溶性ポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう)は、顔料分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、印刷媒体への定着剤としての機能を有する。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味し、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。水不溶性ポリマーがカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーのインク中での存在形態は、顔料に吸着している状態、顔料を含有している顔料内包(カプセル)状態、及び顔料を吸着していない形態がある。顔料の分散安定性の観点から、本発明においては顔料含有ポリマー粒子の形態が好ましく、顔料を含有している顔料内包状態がより好ましい。
用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、インクの保存安定性を向上させる観点から、ビニルモノマー(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
(a)イオン性モノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましい。なお、イオン性モノマーには、酸やアミン等の中性ではイオンではないモノマーであっても、酸性やアルカリ性の条件でイオンとなるモノマーを含む。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上がより好ましい。
カチオン性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド等が挙げられる。
(b)疎水性モノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリル酸エステル、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜22のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数6〜18のアルキル基を有するものがより好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上を意味する。したがって「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)」も同義である。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(b)疎水性モノマーは、前記のモノマーを2種以上使用してもよく、スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルを併用してもよい。
(c)マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(c)マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(c)マクロモノマーとしては、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
水不溶性ポリマーには、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、更に、(d)ノニオン性モノマー(以下、「(d)成分」ともいう)をモノマー成分として用いることが好ましい。すなわち、更に(d)成分由来の構成単位を含有するポリマーが好ましい。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール−プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等のアラルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
水不溶性ポリマー製造時における、上記(a)及び(b)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は水不溶性ポリマー中における(a)及び(b)成分に由来する構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。
(b)成分の含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
(a)成分の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(b)成分の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
(c)成分を含有する場合、(c)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(d)成分を含有する場合、(d)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
[(a)成分/(b)成分]の質量比(すなわち、(b)成分に対する(a)成分の質量比)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.50以下である。
また、(c)成分を含有する場合、[(a)成分/〔(b)成分+(c)成分〕]の質量比(すなわち、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する(a)成分の質量比)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.40以下である。
前記水不溶性ポリマーは、モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2−メルカプトエタノールがより好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
水不溶性ポリマーは、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶剤を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程Iに用いる有機溶媒として用いるために、そのまま水不溶性ポリマー溶液として用いることが好ましい。
水不溶性ポリマー溶液の固形分濃度は、顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
本発明で用いられる水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点、及びローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下である。
なお、重量平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
本発明の水系インクは、顔料(A)を含有する水不溶性ポリマー粒子を含有することができる。
顔料(A)を含有する水不溶性ポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水分散体として下記の工程I及び工程IIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:水不溶性ポリマー、有機溶媒、顔料(A)、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
工程Iでは、まず、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に顔料(A)、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料(A)の順に加えることが好ましい。
水不溶性ポリマーを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料(A)への濡れ性、水不溶性ポリマーの溶解性、及び水不溶性ポリマーの顔料(A)への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。有機アミンとしては、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
中和剤は、インクの吐出安定性及び保存安定性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、アンモニアが好ましく、水酸化ナトリウムとアンモニアを併用することがより好ましい。また、該水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、上記の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
水不溶性ポリマーのアニオン性基の中和度は、顔料含有ポリマー粒子の顔料水分散体及びインク中における分散安定性及び保存安定性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは300モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは150モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量を水不溶性ポリマーのアニオン性基のモル量で除したものである。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤の使用量から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。前記アニオン性基はイオン性モノマーのカルボキシ基等が含まれる。
工程Iにおける顔料(A)の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及びローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
水不溶性ポリマーの顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及びローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
有機溶媒の顔料混合物中の含有量は、顔料(A)への濡れ性及び水不溶性ポリマーの顔料への吸着性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び生産性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
工程Iにおいては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る。分散体を得る分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程Iの予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、また、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下であり、分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、また、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、また、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
工程IIでは、工程Iで得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体)を得ることができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた顔料水分散体は、顔料(A)を含有する固体の水不溶性ポリマー粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料(A)と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、水不溶性ポリマーに顔料(A)が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に顔料(A)が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマーの粒子表面に顔料(A)が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは75nm以上であり、また、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、更に好ましくは110nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、顔料水分散体中の平均粒径と同じであり、好ましい平均粒径の態様は、顔料水分散体中の平均粒径の好ましい態様と同じである。
有機溶媒(B)は、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であるものが用いられる。グリコールエーテル(b−1)は、適度な粘度を有し、駆動周波数が高い時の流動特性が優れており、しかも適度な蒸気圧を有するため、インクの乾燥性を抑制し、ノズル内で凝集付着物が発生するのを抑制することができるため、70m/min以上の高速印刷時における吐出安定性に寄与すると考えられる。また、グリコールエーテル(b−1)は、粘度と蒸気圧が適当な範囲であるため、印刷面におけるインクの乾燥不足をもたらすことがなく、ローラー汚れや印刷面はがれの発生を抑制することができ、ローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得ることができると考えられる。
グリコールエーテル(b−1)の20℃における粘度は、水系インクに適切な粘性を付与し、吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは2.2mPa・s以上、より好ましくは2.4mPa・s以上、更に好ましくは2.6mPa・s以上であり、そして、好ましくは5.0mPa・s以下、より好ましくは4.5mPa・s以下、更に好ましくは4.2mPa・s以下、より更に好ましくは4.0mPa・s以下、より更に好ましくは3.5mPa・s以下である。本発明における「粘度」は、E型粘度計を用いて求めた粘度をいう。
グリコールエーテル(b−1)の20℃における蒸気圧は、水系インクに適切な乾燥性を付与し、ローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは0.04hPa以上、より好ましくは0.06hPa以上、更に好ましくは0.08hPa以上であり、そして、ヘッド内部、特にラインヘッド内部にインクの乾燥増粘物が発生し、吐出安定性が悪化するのを抑制する観点から、6.0hPa以下であり、好ましくは5.0hPa以下、より好ましくは4.5hPa以下、更に好ましくは4.0hPa以下、より更に好ましくは3.5hPa以下である。蒸気圧の測定方法としては静止法、気体流通法、沸点測定法等があるが、本発明における「蒸気圧」は、気体流通法により求めた飽和蒸気圧をいう。
グリコールエーテル(b−1)の沸点は、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、更に好ましくは138℃以上であり、そして、好ましくは215℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
なお、グリコールエーテル(b−1)は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。グリコールエーテル(b−1)として2種以上を用いる場合には、グリコールエーテル(b−1)の粘度、蒸気圧及び沸点は、各グリコールエーテルの水系インク中における含有量(質量%)で重み付けした加重平均値で算出される値を用いる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエーテル(沸点158℃)、プロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコールイソプロピルエーテル及びジエチレングリコールメチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
有機溶媒(B)は、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、更にグリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)することが好ましい。
グリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)としては、グリコールエーテル(b−1)以外のグリコールエーテル、アルコール、該アルコールのアルキルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、沸点90℃以上のアルコール及びアルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、沸点90℃以上の多価アルコールがより好ましい。グリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
有機溶媒(B)中の有機溶媒(b−2)の含有量は、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
本発明で用いられる水系インクは、インク粘度の上昇を抑制し、吐出安定性を向上させ、かつローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、界面活性剤(C)を含有する。
界面活性剤(C)としては、上記の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、及びこれらのエチレンオキシド付加物(以下、「EO付加物」ともいう)から選ばれる1種以上であり、より好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、及びこれらのEO付加物から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及びそのEO付加物から選ばれる1種以上である。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、インク粘度の上昇を抑制する観点から、アセチレングリコールのエチレンオキシド(以下、「EO」という)の平均付加モル数が好ましくは5以上、35以下の化合物が好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤のEO平均付加モル数は、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは9.5以上であり、そして、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。
アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物(EO付加物)は、上記の方法で得られたアセチレングリコールにエチレンオキシドを所望付加数となる様に付加反応を行うことにより得ることができる。
界面活性剤(C)、特にアセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社及びAir Products & Chemicals社製の「サーフィノール465(EO平均付加モル数:10、HLB:13)」、「サーフィノール485(EO平均付加モル数:30、HLB:17)」、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノールE81(EO平均付加モル数:8.1、HLB:12)」、「アセチレノールE100(EO平均付加モル数:10、HLB:13)」、「アセチレノールE200(EO平均付加モル数:20、HLB:16)」等が挙げられる。
本発明の水系インクは、顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)、水、及び必要に応じてその他の成分を混合し、攪拌することによって得ることができる。
本発明に係る水系インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
水系インク中の顔料(A)の含有量は、水系インクの印刷濃度を向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上である。また、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、吐出安定性を向上させ、かつローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましく7.0質量%以下、より更に好ましくは5.0質量%以下である。
(顔料(A)と水不溶性ポリマーとの合計含有量)
水系インク中の顔料(A)と水不溶性ポリマーとの合計含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは3.5質量%以上であり、そして、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは6.0質量%以下である。
水系インク中の水不溶性ポリマー(a)に対する顔料(A)の質量比〔(A)/(a)〕は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及びローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
水系インク中の有機溶媒(B)の含有量は、インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。
水系インク中のグリコールエーテル(b−1)の含有量は、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
有機溶媒(B)として、グリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)を含有する場合、水系インク中の有機溶媒(b−2)の含有量は、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは18質量%以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは14質量%以下である。
有機溶媒(B)として、グリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)を含有する場合、水系インク中の有機溶媒(b−2)に対するグリコールエーテル(b−1)の質量比〔(b−1)/(b−2)〕は、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点、並びにローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは45/55以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、より更に好ましくは50/50以下である。
水系インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量は、5質量%以下であり、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒を実質的に含まないことがより更に好ましい。
水系インク中の界面活性剤(C)の含有量は、インク粘度の上昇を抑制し、インクの吐出安定性を向上させ、ローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
水系インク中の水の含有量は、インクの吐出安定性及び保存安定性を向上させ、ローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより更に好ましく、そして、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
本発明の水系インクには、上記成分の他に、通常用いられる保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
水系インクの32℃の粘度は、インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは3.0mPa・s以上であり、更に好ましくは5.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下であり、より好ましくは9.0mPa・s以下であり、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
水系インクのpHは、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点、及びローラー転写汚れ、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは8.0以上であり、更に好ましくは8.5以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11.0以下であり、より好ましくは10.0以下であり、更に好ましくは9.5以下である。
なお、pHは、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のインクジェット印刷方法は、本発明の水系インクを印刷媒体の表面に吐出して印刷を行う印刷工程を有するインクジェット印刷方法であって、印刷速度が印刷媒体の搬送速度換算で70m/min以上であるインクジェット印刷方法である。
本発明のインクジェット印刷方法においては、シリアルヘッド方式及びラインヘッド方式等を用いることができるが、好ましくはラインヘッド方式のインクジェット印刷ヘッドを有するインクジェット印刷装置を用いて、本発明の水系インクを印刷媒体上に吐出する。ラインヘッド方式のインクジェット印刷ヘッドは、印刷媒体の幅程度の長尺の印刷ヘッドであり、印刷ヘッドは固定して、印刷媒体を搬送方向に移動させ、この移動に連動して印刷ヘッドのノズル開口からインク液滴を吐出させ、印刷媒体に付着させることにより、画像等を印刷することができる。
印刷媒体としては、普通紙、上質紙等の吸水性印刷媒体、アート紙、コート紙等の低吸水性印刷媒体、合成樹脂フィルム等の非吸水性印刷媒体等が挙げられる。印刷媒体は、ロール紙であることが好ましい。また印刷速度は、印刷媒体の搬送速度換算で72m/min以上であることが好ましい。印刷媒体の搬送速度とは、印刷媒体が印刷の際に移動する方向に対して移動する速度のことである。
印刷媒体は、ローラー転写汚れの抑制及び色間混色の抑制の効果がより発揮される観点から、低吸水性印刷媒体及び非吸水性印刷媒体が好ましく、具体的には、印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の吸水量が、0g/m2以上であり、好ましくは10g/m2以下、より好ましくは5g/m2以下である。該吸水量は、自動走査吸液計を用いて、実施例に記載の方法により測定することができる。
印刷ヘッドの印加電圧は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは5V以上、より好ましくは10V以上、更に好ましくは15V以上であり、そして、好ましくは40V以下、より好ましくは35V以下、更に好ましくは30V以下である。
印刷ヘッドの駆動周波数は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは1kHz以上、より好ましくは5kHz以上、更に好ましくは10kHz以上、より更に好ましくは20kHz以上、より更に好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは90kHz以下、より好ましくは80kHz以下、更に好ましくは70kHz以下、より更に好ましくは60kHz以下である。印刷ヘッドの駆動周波数は、吐出安定性の観点から、より更に好ましくは50kHz以下、より更に好ましくは40kHz以下、より更に好ましくは35kHz以下である。
インクの吐出液滴量は、インク液滴の着弾位置の精度を維持する観点及び画質向上の観点から、1滴あたり好ましくは0.5pL以上、より好ましくは1.0pL以上、更に好ましくは1.5pL以上、より更に好ましくは2pL以上であり、そして、好ましくは30pL以下、より好ましくは10pL以下、更に好ましくは5pL以下である。
印刷解像度は1200dpi以上であることが好ましい。例えば、ラインヘッドに配置されるノズル孔のノズル列の長さあたりの個数が1200dpi(ドット/インチ)である場合、印刷媒体上にインクを吐出すると、それに対応する1200dpiのドットの列が形成される。印刷媒体を移動させながらインク液滴を吐出すると、印刷媒体上にはノズル列の方向に沿ってドットが1200dpiの印刷解像度で形成される。
吐出ヘッド、好ましくはラインヘッドがインクを吐出する領域と対面する印刷媒体面は、好ましくは28℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは31℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下にすることが好ましい。
水系インクの印刷媒体上の付着量は、印刷物の画質向上及び印刷速度の観点から、固形分として、好ましくは0.1g/m2以上であり、そして、好ましくは25g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下、更に好ましくは10g/m2以下である。
本発明のインクジェット印刷方法においては、インク液滴を印刷媒体上に吐出して印刷した後、印刷媒体上に着弾したインク液滴を乾燥する工程を有することが好ましい。すなわち、更に、印刷工程後に印刷媒体上の水系インクを乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。
乾燥工程においては、色間混色のない良好な印刷物を得る観点から、印刷媒体面を、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上、より更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは65℃以上にする。そして、熱による印刷媒体の変形抑制とエネルギー低減の観点から、印刷媒体面を、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下、より更に好ましくは90℃以下にする。
<1> 水系インクを印刷媒体の表面に吐出して印刷を行う印刷工程を有するインクジェット印刷方法であって、該水系インクが、顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有し、
有機溶媒(B)が、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であり、
該水系インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下であり、
印刷速度が印刷媒体の搬送速度換算で70m/min以上である、インクジェット印刷方法。
<3> 水不溶性ポリマーが、(a)イオン性モノマー由来の構成単位と、(b)疎水性モノマー由来の構成単位を有するビニル系ポリマーである、上記<1>又は<2>に記載のインクジェット印刷方法。
<4> 水不溶性ポリマーが、更に(c)マクロモノマー由来の構成単位を含有する、上記<3>に記載のインクジェット印刷方法。
<5> 水不溶性ポリマーが、更に(d)ノニオン性モノマー由来の構成単位を含有する、上記<3>又は<4>に記載のインクジェット印刷方法。
<6> 前記水不溶性ポリマー中における(a)イオン性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である、上記<3>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<7> 前記水不溶性ポリマー中における(b)疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である、上記<3>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<8> 水不溶性ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下である、上記<2>〜<7>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<9> 水不溶性ポリマー(a)に対する顔料(A)の水系インク中の質量比〔(A)/(a)〕が、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である、上記<2>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<11> グリコールエーテル(b−1)の20℃における蒸気圧が、好ましくは0.04hPa以上、より好ましくは0.06hPa以上、更に好ましくは0.08hPa以上であり、そして、6.0hPa以下であり、好ましくは5.0hPa以下、より好ましくは4.5hPa以下、更に好ましくは4.0hPa以下、より更に好ましくは3.5hPa以下である、上記<1>〜<10>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<12> グリコールエーテル(b−1)の沸点が、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、更に好ましくは138℃以上であり、そして、好ましくは215℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である、上記<1>〜<11>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<13> グリコールエーテル(b−1)が、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上である、上記<1>〜<12>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<14> 有機溶媒(B)が、更にグリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)を含有し、水系インク中の有機溶媒(b−2)に対するグリコールエーテル(b−1)の質量比〔(b−1)/(b−2)〕が、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは45/55以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、より更に好ましくは50/50以下である、上記<1>〜<13>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<15> 有機溶媒(B)が、更にグリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)として1,2−アルカンジオールを含有する、上記<1>〜<14>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<16> 有機溶媒(B)中のグリコールエーテル(b−1)の含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である、上記<1>〜<15>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<18> 界面活性剤(C)がアセチレングリコール系界面活性剤である、上記<1>〜<17>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<19> アセチレングリコール系界面活性剤が、好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、及びこれらのEO付加物から選ばれる1種以上であり、より好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、及びこれらのEO付加物から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、及びそのEO付加物から選ばれる1種以上である、上記<18>に記載のインクジェット印刷方法。
<20> アセチレングリコール系界面活性剤のエチレンオキシドの平均付加モル数が、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは9.5以上であり、そして、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である、上記<18>又は<19>に記載のインクジェット印刷方法。
<22> 水系インク中の顔料(A)と水不溶性ポリマーとの合計含有量が、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは3.5質量%以上であり、そして、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは6.0質量%以下である、上記<1>〜<21>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<23> 水系インク中の有機溶媒(B)の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である、上記<1>〜<22>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<24> 水系インク中のグリコールエーテル(b−1)の含有量が、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、上記<1>〜<23>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<25> 水系インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒を実質的に含まない、上記<1>〜<24>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<26> 水系インク中の界面活性剤(C)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である、上記<1>〜<25>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<28> 印刷工程における吐出ヘッド内、好ましくはラインヘッド内の温度を、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上とし、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下とする、上記<1>〜<27>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<29> 印刷媒体面を、好ましくは28℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは31℃以上とし、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下とする、上記<1>〜<28>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<30> 水系インクの吐出液滴量が、1滴あたり好ましくは0.5pL以上、より好ましくは1.0pL以上、更に好ましくは1.5pL以上、より更に好ましくは2pL以上であり、そして、好ましくは30pL以下、より好ましくは10pL以下、更に好ましくは5pL以下である、上記<1>〜<29>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<31> 印刷ヘッドの駆動周波数が、好ましくは1kHz以上、より好ましくは5kHz以上、更に好ましくは10kHz以上、より更に好ましくは20kHz以上、より更に好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは90kHz以下、より好ましくは80kHz以下、更に好ましくは70kHz以下、より更に好ましくは60kHz以下、より更に好ましくは50kHz以下、より好ましくは40kHz以下、より更に好ましくは35kHz以下である、上記<1>〜<30>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<32> 更に、印刷工程後に印刷媒体上の水系インクを乾燥させる乾燥工程を有し、該乾燥工程において、印刷媒体面を、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上、より更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは65℃以上にする、上記<1>〜<31>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<33> 更に、印刷工程後に印刷媒体上の水系インクを乾燥させる乾燥工程を有し、該乾燥工程において、印刷媒体面を、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下、より更に好ましくは90℃以下にする、上記<1>〜<32>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<34> 印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の吸水量が、0g/m2以上であり、好ましくは10g/m2以下、より好ましくは5g/m2以下である、上記<1>〜<33>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
<35> 印刷媒体がロール紙である、上記<1>〜<34>のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
該グリコールエーテル(b−1)が、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上であり、
沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下である、水系インク。
<37> 上記<36>に記載の水系インクのインクジェット印刷方法への使用。
E型粘度計「TV−25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、20℃におけるグリコールエーテル(b−1)の粘度を測定した。
(2)水不溶性ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(3)顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、5×10−3質量%(固形分濃度換算)で行った。
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(5)水系インクのpHの測定
pH電極「6337−10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F−71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃における水系インクのpHを測定した。
(6)印刷媒体の吸水量
印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の吸水量は、自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100msにおける転移量を該吸水量として測定した。測定条件を以下に示す。
「Spiral Method」
Contact Time : 0.010〜1.0(sec)
Pitch (mm) : 7
Length Per Sampling (degree) : 86.29
Start Radius (mm) : 20
End Radius (mm) : 60
Min Contact Time (ms) : 10
Max Contact Time (ms) : 1000
Sampling Pattern (1 - 50) : 50
Number of Sampling Points (> 0) : 19
「Square Head」
Slit Span (mm) : 1
Slit Width (mm) : 5
(1)水不溶性ポリマー(1)の合成
メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)14部、スチレン(和光純薬工業株式会社製)46部、スチレンマクロモノマー「AS−6S」(東亞合成株式会社製、数平均分子量6,000、固形分50%)30部、ポリプロピレングリコールメタクリレート「ブレンマーPP−1000」(日油株式会社)25部、メチルエチルケトン25部を混合し、モノマー混合液140部を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン18部及び連鎖移動剤である2−メルカプトエタノール0.03部、及び前記モノマー混合液の10%(14部)を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、モノマー混合液の残りの90%(126部)と前記連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン42部及び重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)「V−65」(和光純薬工業株式会社製)3部を混合した混合液を滴下ロートに入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記重合開始剤3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、水不溶性ポリマー(重量平均分子量:60,000)の溶液を得た。水不溶性ポリマー溶液の固形分濃度は60質量%であった。
前記(1)で得られた水不溶性ポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた水不溶性ポリマー37部をメチルエチルケトン148部に溶かし、その中に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液12.5部と25%アンモニア水2部、及びイオン交換水372部を加え、更にシアン顔料としてC.I.ピグメント・ブルー15:3(PB15:3、大日精化工業株式会社製)100部を加え、顔料混合物を得た。中和度は100モル%であった。顔料混合物をディスパー翼を用いて7000rpm、20℃の条件下で1時間混合した。得られた分散液をマイクロフルイダイザー「高圧ホモジナイザーM-140K」(Microfluidics社製)を用いて、180MPaの圧力で15パス分散処理した。
得られた顔料含有ポリマー粒子の分散体を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。固形分濃度は20質量%であり、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は100nmであった。
製造例1で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体(固形分20質量%)24部(顔料3.5部、水不溶性ポリマー1.3部)、エチレングリコールイソプロピルエーテル10.0部、グリセリン1.0部、プロピレングリコール10.0部、アセチレングリコール系界面活性剤(製品名;サーフィノール465 Air Products & Chemicals社製、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド10モル付加物)1.5部及び全量を100部となるようにイオン交換水を添加、混合した。得られた混合液をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:1.2μm、材質:酢酸セルロース)で濾過し、pHが8.8の水系インクを得た。
実施例1において、有機溶媒(B)として、表1に示す溶媒を用いて、表2に示す配合組成とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、水系インクを得た。
(インクジェット印刷物の調製)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェット印刷ラインヘッド「KJ4B−Zシリーズ(1200dpi)」(京セラ株式会社製)を装備したWEB印刷型印刷評価装置(株式会社トライテック製)に実施例、比較例で得られた水系インクを充填した。
ラインヘッド印加電圧26V、吐出液適量3pl、ラインヘッド温度32℃、印刷解像度1200dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧−4.0kPaを設定した。印刷ヘッドの駆動周波数は50Hzである。また、ロール紙搬送速度(印刷速度)を75m/minに設定し、ラインヘッド内温度は表2に示すように設定した。
ロール紙の印刷媒体として、印刷媒体(「UPM Finesse Gloss」(UPM社製)、吸水量3.1g/m2)を印刷評価装置にセットし、印字命令を前記印字評価装置に転送し、水系インクをインクジェット印刷方式で印刷媒体上に印刷を行った。また、その印刷直後に、表2に示すように温度設定した温風乾燥機を通過させて印刷物を作成し、下記の評価試験1〜3を行った。
インクジェット印刷物の調製を行った後、30分間印刷評価装置を停止させ、印刷ラインヘッドを大気暴露させた。30分間経過後、再度印刷を再開した際の最初のベタ印刷物の吐出状態を観察し、下記式により吐出回復率(%)を算出し、吐出安定性を評価した。
吐出回復率(%)=[(30分間大気暴露後のベタ印刷の吐出面積)/(試験前のベタ印刷の吐出面積)]×100
吐出回復率(%)が大きいほど吐出安定性が優れていると判断され、数値として65以上であれば実用に供することができる。
(1)印刷評価装置上に設置してあるステンレス製の金属搬送ローラー上の汚れと印刷面のはがれを、下記の基準で評価した。下記評価基準が「+」以上であれば、実用に供することができ、下記評価基準が「++」以上であれば、実用に十分に供することができる点で好ましい。
(評価基準)
+++:搬送ローラーに印刷部の転写汚れがなく、印刷面に顔料の削れ落ちも認められない。
++ :搬送ローラーには目立って印刷部の転写汚れはないが、印刷面に顔料の削れ落ちが若干認められる。
+ :搬送ローラーに若干の印刷部の転写汚れが起こり、印刷面にも顔料の削れ落ちが若干認められる。
− :搬送ローラーに多量の印刷部の転写汚れが起こり、印刷面に顔料の削れ落ちが多く認められる。
(2)さらに、印刷評価装置上に設置してあるステンレス製の金属搬送ローラー上の汚れを下記の方法で評価した。
ヘッド〔「KJ4B−Zシリーズ(1200dpi)」(京セラ株式会社製)〕を3つ連続で設置し、前記記録媒体「UPM Finesse Gloss」(UPM社製)を用いて、該記録媒体上へのインク打ち込み量(以下、単に「打ち込み量」ともいう)を300から5づつ減少させ、打ち込み量とローラー汚れの有無について目視で観察した。
前記ヘッド1つのあたりの打ち込み量1200dpi×3pLを100として、ヘッド3つで最大値300となる。吐出液適量を調整することにより打ち込み量を5づつ減少させ、ローラー汚れが発生しない最大打ち込み量をローラー転写汚れの評価スコアとした。該スコアが高いほどインクを多量に打ち込まれた状況下においてもローラー汚れが発生しにくく、ローラー転写汚れ特性が良好であることを示す。
各実施例で用いたインク組成においてシアン顔料PB−15:3(大日精化工業株式会社製)の代わりにイエロー顔料C.I.ピグメント・イエロー74(PY74、大日精化工業株式会社製)を用いたインクを調製した。このイエローインクでベタ印字した後1秒以内に、このイエローインクが印刷された部位に前記のシアン顔料を用いたインクで文字「a」を印刷した際、文字「a」が鮮明に確認できるか否かを、下記の基準で評価した。下記評価基準が「+」以上であれば、実用に供することができ、下記評価基準が「++」以上であれば、実用に十分に供することができる点で好ましい。
(評価基準)
+++:文字「a」が鮮明に確認できる。
++ :文字「a」に太りが認められるが、文字としては認識できる。
+ :文字「a」部位からブリーディングが発生し、文字品質が大きく悪化した。
− :文字「a」部位から文字認識できないほどブリーディングが発生した。
Claims (15)
- 水系インクを印刷媒体の表面に吐出して印刷を行う印刷工程を有するインクジェット印刷方法であって、
該水系インクが、顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有し、
有機溶媒(B)が、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であり、
該水系インク中のグリコールエーテル(b−1)の含有量が4質量%以上20質量%以下であり、
有機溶媒(B)が、更にグリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)として1,2−アルカンジオールを含有し、
該水系インク中の有機溶媒(b−2)の含有量が1質量%以上18質量%以下であり、
該水系インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下であり、
印刷速度が印刷媒体の搬送速度換算で70m/min以上である、インクジェット印刷方法。 - グリコールエーテル(b−1)がアルキレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項1に記載のインクジェット印刷方法。
- グリコールエーテル(b−1)が、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷方法。
- 水系インク中のグリコールエーテル(b−1)の含有量が、8質量%以上20質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 顔料(A)が、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子として、水系インク中に含有される、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 界面活性剤(C)がアセチレングリコール系界面活性剤である、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 水系インク中の有機溶媒(b−2)に対するグリコールエーテル(b−1)の質量比〔(b−1)/(b−2)〕が、20/80以上80/20以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 有機溶媒(b−2)として、沸点が250℃以上の化合物を、沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いる、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 印刷解像度が1200dpi以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 更に、印刷工程後に印刷媒体上の水系インクを乾燥させる乾燥工程を有し、該乾燥工程において、印刷媒体面を30℃以上にする、請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 印刷工程における吐出ヘッド内の温度を20℃以上45℃以下とする、請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 水系インクの吐出液滴量が、1滴あたり0.5pL以上30pL以下である、請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 駆動周波数が、1kHz以上90kHz以下である、請求項1〜12のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の吸水量が、0g/m2以上10g/m2以下である、請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェット印刷方法。
- 顔料(A)、有機溶媒(B)、界面活性剤(C)及び水を含有する水系インクであって、
有機溶媒(B)が、少なくともグリコールエーテル(b−1)を含有し、該グリコールエーテル(b−1)の粘度が20℃で2.0mPa・s以上5.5mPa・s以下であり、かつその蒸気圧が20℃で0.03hPa以上6.0hPa以下であり、
該グリコールエーテル(b−1)が、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソプロピルエーテルから選ばれる1種以上であり、
該水系インク中のグリコールエーテル(b−1)の含有量が4質量%以上20質量%以下であり、
有機溶媒(B)が、更にグリコールエーテル(b−1)以外の有機溶媒(b−2)として1,2−アルカンジオールを含有し、
該水系インク中の有機溶媒(b−2)の含有量が1質量%以上18質量%以下であり、
沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下である、水系インク。
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