JP6760550B1 - 蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であるにもかかわらず、イエロールーム内において、表面に印刷された識別標識の識別性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する。外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であって、前記蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を備えている、蓄電デバイス用外装材。

Description

本開示は、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイスに関する。
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質などの蓄電デバイス素子を封止するために外装材が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の外装材が多用されていた。
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
このような蓄電デバイス用外装材においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの蓄電デバイス素子を配し、熱融着性樹脂層を熱融着させることにより、蓄電デバイス用外装材の内部に蓄電デバイス素子が収容された蓄電デバイスが得られる。
特開2008−287971号公報 特開2015−166261号公報
例えば、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスは、装着対象とする電気機器等の機器の外観と色彩を統一させるために、黒色に着色することが求められることがある(例えば、特許文献2を参照)。
一方、蓄電デバイス用外装材を用いた蓄電デバイスの製造工程においては、蓄電デバイスの表面に、商品情報(例えば、ロットナンバーを表示した文字や数字や、バーコードや記号など)等の識別標識等が印刷されることがある。蓄電デバイスの表面に識別標識が付されることにより、例えば正規品と偽造品との区別を行うことができる。同様に、蓄電デバイス用外装材の製造工程においても、外側の表面に識別標識等が印刷されることがある。
ところが、本開示の発明者らが検討したところ、蓄電デバイスや蓄電デバイス用外装材の外観が黒色を呈するように着色すると、これらの製造工程などにおいて、印刷された識別標識等の識別性が低下するという新たな課題が見出された。
具体的には、蓄電デバイスや蓄電デバイス用外装材の製造工程においては、イエロールーム内等黄色の光源下で加工や検査が行われることがある。ところが、外観が黒色を呈する蓄電デバイスや蓄電デバイス用外装材に識別標識等を印刷し、イエロールーム内の黄色の光源下で加工や検査を行うと、識別標識の識別性が低下し、商品情報等を正確に読み取ることができない虞があるという問題が見出された。
このような状況下、本開示は、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であるにもかかわらず、イエロールーム内やオレンジ〜黄色のランプの光源下において、表面に印刷された識別標識の識別性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供することを主な目的とする。
本開示の発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成され、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材において、バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を設けることにより、黒色の中でも、とりわけ黄色の補色である青味の色相を呈する黒に調整することができ、イエロールーム内やオレンジ〜黄色のランプの光源下において、表面に印刷された識別標識の識別性が高められることを見出した。
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であって、
前記蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を備えている、蓄電デバイス用外装材。
本開示によれば、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であるにもかかわらず、イエロールーム内やオレンジ〜黄色のランプ(Naランプ)の光源下において、表面に印刷された識別標識の識別性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供することができる。また、本開示によれば、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法、及び当該蓄電デバイス用外装材を利用した蓄電デバイスを提供することもできる。
本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。 本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であって、蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を備えていることを特徴とする。本開示の蓄電デバイス用外装材によれば、当該構成を備えていることにより、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であるにもかかわらず、イエロールーム内の光源下において、表面に印刷された識別標識の優れた識別性を発揮することができる。
以下、本開示の蓄電デバイス用外装材について詳述する。なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材において、「外観が黒色を呈する」とは、蓄電デバイス用外装材を外側から肉眼で観察した場合に、黒色であると認識されることを意味している。より具体的には、「外観が黒色を呈する」の「黒色」は、CIE1976 L***(CIELAB) 色度座標において、L*値が40以下であり、好ましくは35以下である。なお、L*値についても、SCI方式、視野10°及び光源F2の測定条件で、外側から測定された、反射光のL***色空間におけるものである。また、黒色は、L*値に加えて、さらに、a*値が、−20〜+20であることが好ましく、−10〜+10であることがより好ましい。本開示の蓄電デバイス用外装材は、外観が黒色を呈することに加えて、さらにb*が−0.20以下であることを特徴としている。
また、イエロールーム内とは、紫外線を含む500nm以下の波長の光がカットされた室内を意味しており、当該室内においては、光が黄色に視認される。イエロールームは、例えば半導体工場のクリーンルーム内で感光性物質が扱われるフォトリソグラフィ工程を行うために一般に設けられている。
1.蓄電デバイス用外装材の積層構造と物性
本開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図1に示すように、外側から順に、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4を備える積層体から構成されている。蓄電デバイス用外装材10において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。蓄電デバイス用外装材10と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓄電デバイス用外装材10の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、蓄電デバイス素子が収容される。本開示の蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体において、バリア層3を規準とし、バリア層3よりも熱融着性樹脂層4側が内側であり、バリア層3よりも基材層1側が外側である。
蓄電デバイス用外装材10は、例えば図2から図6に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの層間の接着性を高めること(さらには、後述の通り、蓄電デバイス用外装材10を着色すること)などを目的として、必要に応じて接着剤層2を有していてもよい。また、例えば図3及び図4に示すように、基材層1とバリア層3との間に、蓄電デバイス用外装材10を着色することなどを目的として、必要に応じて着色層21を有していてもよい。また、例えば図5及び図6に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層5を有していてもよい。また、図6に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられる。また、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、蓄電デバイス素子を保護するという蓄電デバイス用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられる。また、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みの好ましい範囲については、例えば、35〜180μm程度、35〜155μm程度、35〜120μm程度、45〜180μm程度、45〜155μm程度、45〜120μm程度、60〜180μm程度、60〜155μm程度、60〜120μm程度が挙げられる。
本開示の蓄電デバイス用外装材10は、SCI方式、視野10°及び光源F2の測定条件で、外側から測定された、反射光のL***色空間におけるb*値が、−0.20以下であることが好ましい。当該b*値の上限がこのような特定の値に設定されていることにより、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材において、黄色の補色である青味の色相を呈する黒に調整することができ、イエロールーム内や黄色の光源下において、表面に印刷された識別標識の優れた識別性が発揮される。
*値としては、−0.20以下であることを限度として、特に制限されないが、識別性がさらに向上し、かつ、外観が黒色であることが好適に認識される観点から、好ましくは約−0.50以下、より好ましくは約−0.80以下が挙げられる。また同様の観点から、b*値としては、好ましくは約−5.00以上、より好ましくは約−4.00以上、さらに好ましくは約−2.00以上、さらに好ましくは約−1.50以上が挙げられる。b*値の好ましい範囲としては、−5.00〜−0.20程度、−5.00〜−0.50程度、−5.00〜−0.80程度、−4.00〜−0.20程度、−4.00〜−0.50程度、−4.00〜−0.80程度、−2.00〜−0.20程度、−2.00〜−0.50程度、−2.00〜−0.80程度、−1.50〜−0.20程度、−1.50〜−0.50程度、−1.50〜−0.80程度が挙げられる。これらの中でも、b*値は、特に−1.50〜−0.80程度が好ましい。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材10は、SCI方式、視野10°及び光源F2の測定条件で、外側から測定された、反射光のL***色空間におけるa*値が、+0.20以下であることが好ましい。これにより、識別性がさらに向上し、かつ、外観が黒色であることが好適に認識される。
*値としては、識別性がさらに向上し、かつ、外観が黒色であることが好適に認識される観点から、より好ましくは約+0.10以下、さらに好ましくは+0.04以下、さらに好ましくは約+0.02以下、さらに好ましくは約0.00以下、さらに好ましくは約−0.01以下が挙げられる。また、a*値としては、好ましくは約−3.50以上、より好ましくは約−3.00以上、さらに好ましくは約−2.00以上、さらに好ましくは約−0.50以上、さらに好ましくは約−0.30以上、さらに好ましくは約−0.15以上、さらに好ましくは約−0.10以上が挙げられる。また、a*値の好ましい範囲としては、−3.50〜+0.20程度、−3.50〜+0.10程度、−3.50〜+0.04程度、−3.50〜+0.02程度、−3.50〜0.00程度、−3.50〜−0.01程度、−3.00〜+0.20程度、−3.00〜+0.10程度、−3.00〜+0.04程度、−3.00〜+0.02程度、−3.00〜0.00程度、−3.00〜−0.01程度、−2.00〜+0.20程度、−2.00〜+0.10程度、−2.00〜+0.04程度、−2.00〜+0.02程度、−2.00〜0.00程度、−2.00〜−0.01程度、−0.50〜+0.20程度、−0.50〜+0.10程度、−0.50〜+0.04程度、−0.50〜+0.02程度、−0.50〜0.00程度、−0.50〜−0.01程度、−0.30〜+0.20程度、−0.30〜+0.10程度、−0.30〜+0.04程度、−0.30〜+0.02程度、−0.30〜0.00程度、−0.30〜−0.01程度、−0.15〜+0.20程度、−0.15〜+0.10程度、−0.15〜+0.04程度、−0.15〜+0.02程度、−0.15〜0.00程度、−0.15〜−0.01程度、−0.10〜+0.20程度、−0.10〜+0.10程度、−0.10〜+0.04程度、−0.10〜+0.02程度、−0.10〜0.00程度、−0.10〜−0.01程度が挙げられる。これらの中でも、a*値は、特に、−0.30〜−0.01程度、−0.10〜−0.01程度が好ましい。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材10は、SCI方式、視野10°及び光源F2の測定条件で、外側から測定された、反射光のL***色空間におけるL*値が、35.0以下であることが好ましい。これにより、識別性がさらに向上し、かつ、外観が黒色であることが好適に認識される。
*値としては、識別性がさらに向上し、かつ、外観が黒色であることが好適に認識される観点から、より好ましくは約33.0以下、より好ましくは約30.0以下、さらに好ましくは約28.0以下が挙げられる。また、L*値としては、好ましくは約25.0以上、より好ましくは約26.0以上が挙げられる。また、L*値の好ましい範囲としては、25.0〜35.0程度、25.0〜33.0程度、25.0〜30.0程度、25.0〜28.0程度、26.0〜35.0程度、26.0〜33.0程度、26.0〜30.0程度、26.0〜28.0程度が挙げられる。これらの中でも、L*値は、特に、25.0〜30.0程度、26.0〜30.0程度、さらには26.0〜29.0程度、さらには26.0〜28.0程度が好ましい。
<L*値、a*値及びb*値の測定>
本開示において、L*値、a*値及びb*値の値は、以下の方法により測定された値である。蓄電デバイス用外装材について、白色校正キャップ(例えば、CM−A177:コニカミノルタ製)で校正した分光測色計(例えば、コニカミノルタ社製CM−700d)の観察条件を10°、観察光源をF2、CSIモードに設定(JIS Z8722−2009)し、外側(基材層側)表面のL*、a*、b*の測定を常温常湿下にて行う。測定は各サンプル3点測定し、その平均値を測定値とする。
本開示の蓄電デバイス用外装材、及びこれを用いた蓄電デバイスにおいて、印刷される識別標識としては、例えば、ロットナンバーを表示した文字や数字や、バーコードや記号等が挙げられる。また、当該識別標識の印刷に使用されるインクの色(すなわち、識別標識の色)は、黒色の外観を有する本開示の蓄電デバイス用外装材において、識別性に優れることから、白色が好ましい。
2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材の外層側に位置する。
基材層1を形成する素材については、基材としての機能、すなわち少なくとも絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されない。基材層1は、例えば樹脂を用いて形成することができ、樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。例えば、基材層に添加剤や後述する着色剤を配合することによって、蓄電デバイス用外装材10の色味(微細な色合い)を調整することもできる。
基材層1が樹脂により形成されている場合、基材層1は、例えば、樹脂により形成された樹脂フィルムであってもよいし、樹脂を塗布して形成したものであってもよい。樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などがあげられる。
基材層1を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、基材層1を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。
基材層1を形成する樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4‐アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエステルフィルム、及び延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
基材層1は、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層1が2層以上により構成されている場合、基材層1は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層1としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層1としてもよい。
基材層1において、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体、2層以上のポリエステルフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体、2層以上の延伸ポリエステルフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層1が2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムとポリエステル樹脂フィルムの積層体、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層1が2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層1の最外層に位置することが好ましい。
基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものがあげられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01から1.0μm程度が挙げられる。
また、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層1の厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、3〜50μm程度、好ましくは10〜35μm程度が挙げられる。基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、それぞれ、好ましくは2〜25μm程度が挙げられる。
例えば接着剤層が、黒色に着色した層である場合には、接着剤層よりも外側に位置する基材層は、透明又は半透明であることが好ましい。
[接着剤層2]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3との接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、バリア層3よりも外側に位置する、青色剤を含む層とすることができる。例えば、接着剤層2を黒色に着色することによって、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材とした上で、さらに、接着剤層2に後述の青色剤を配合して、前述の識別性を高めることができる。なお、前述の識別性を高める観点から、青色剤を配合した上で、さらに、接着剤層2に含まれる着色剤の種類や含有量などの組成、基材層1、必要に応じて設けられる表面被覆層6や着色層21などのバリア層3よりも外側に位置する層の組成、さらには、後述する蓄電デバイス用外装材のエージング処理条件などを調整することにより、蓄電デバイス用外装材10の色味を調整することができる。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層2は単層であってもよいし、多層であってもよい。
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。硬化剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族のイソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化XDI(H6XDI)、水素化MDI(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物として多量体(例えば三量体)を使用することもできる。このような多量体には、アダクト体、ビウレット体、ヌレート体等が挙げられる。なお、脂肪族イソシアネート系化合物とは脂肪族基を有し芳香環を有さないイソシアネートを指し、脂環式イソシアネート系化合物とは脂環式炭化水素基を有するイソシアネートを指し、芳香族イソシアネート系化合物とは芳香環を有するイソシアネートを指す。接着剤層2がポリウレタン接着剤により形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層1が剥がれることが抑制される。
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
顔料の種類は、前記のb*値が−0.20以下となり、接着剤層2の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン−ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、チタン系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.05〜5μm程度、好ましくは0.08〜2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。なお、顔料の一次粒子径が変化すると、同じ種類の顔料であっても、色味が変化する。例えば、黒色顔料の一次粒子径が大きくなると、僅かに青みがかった黒色になることがある。このため、本開示においては、使用する顔料の一次粒子径を調整することも好ましい。なお、顔料の二次粒子径は、好ましくは約0.8μm以下、より好ましくは約0.6μm以下、さらに好ましくは約0.4μm以下である。また、顔料の二次粒子径は、好ましくは約0.05μm以上、より好ましくは約0.1μm以上である。顔料の二次粒子径の好ましい範囲としては、0.05〜0.8μm程度、0.05〜0.6μm程度、0.05〜0.4μm程度、0.1〜0.8μm程度、0.1〜0.6μm程度、0.1〜0.4μm程度が挙げられる。
着色剤の中でも、蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、黒色剤を用いることが好ましい。黒色剤とは、黒色に着色できる顔料、染料などの添加剤であり、黒色着色剤である。黒色剤としては、黒色顔料が挙げられる。また黒色顔料としては、炭素、チタン系の顔料が好ましい。なお、炭素からなる黒色顔料は、一般にカーボンブラックと称されている。チタン系の顔料としてはチタンブラックが好ましい。また、カーボンブラックとチタンブラックを混合して使用してもよい。
さらに、蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とした上で、識別性を向上させる観点からは、接着剤層2は、黒色剤に加えて、さらに、青色剤を含むことが好ましい。青色剤とは、青色に着色できる顔料、染料などの添加剤であり、青色着色剤である。青色剤としては、アントラキノン、インジゴイドなどの染料、フタロシアニン、ウルトラマリン、フェロシアン化第二鉄、紺青などの顔料が挙げられ、フタロシアニンとしては銅フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどが挙げられ、銅フタロシアニンが好適である。銅フタロシアニンは、青色系の顔料として知られている。
本開示の蓄電デバイス用外装材を構成する積層体の外側から蛍光X線分析法(XRF)による分析を行うと、Cu元素が検出されることが好ましい。例えば、蓄電デバイス用外装材の接着剤層2の顔料として、銅を含む顔料(例えば、銅フタロシアニン)などを含む場合、積層体の外側から蛍光X線分析法(XRF)による分析を行うと、Cu元素が検出される。後述のように、表面被覆層6や着色層21が銅を含む顔料(例えば、銅フタロシアニン)などを含む場合にも、外側から蛍光X線分析法(XRF)による分析を行うと、Cu元素が検出される。蛍光X線分析法(XRF)によるCu元素の検出には、実施例に記載の測定条件が採用できる。
接着剤層2における着色剤の含有量は、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、適切に着色する観点から、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上である。また、接着剤層2における着色剤の含有量は、適切に基材層1とバリア層3との接着性を保持する観点から、好ましくは約50.0質量%以下、より好ましくは約30.0質量%以下、さらに好ましくは20.0質量%以下である。接着剤層2における着色剤の含有量の好ましい範囲としては、0.5〜50.0質量%程度、0.5〜30.0質量%程度、0.5〜20.0質量%程度、1.0〜50.0質量%程度、1.0〜30.0質量%程度、1.0〜20.0質量%程度が挙げられる。
また、接着剤層2に着色剤として黒色剤を配合する場合、接着剤層2における黒色剤の含有量は、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、適切に着色する観点から、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上である。また、適切に基材層1とバリア層3との接着性を保持する観点から、当該黒色剤の含有量は、好ましくは約50.0質量%以下、より好ましくは約30.0質量%以下、さらに好ましくは20.0質量%以下である。また、当該黒色剤の好ましい範囲としては、0.5〜50.0質量%程度、0.5〜30.0質量%程度、0.5〜20.0質量%程度、1.0〜50.0質量%程度、1.0〜30.0質量%程度、1.0〜20.0質量%程度が挙げられる。また、接着剤層2に青色剤を配合する場合、接着剤層2における青色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、例えば0.5〜30質量%程度、好ましくは1〜20質量%が挙げられる。
また、接着剤層2に黒色剤と青色剤を配合する場合、接着剤層2における黒色剤と青色剤の割合については、黒色剤を100質量部として、青色剤の割合は、好ましくは約0.1質量以上、より好ましくは約1質量部以上、さらに好ましくは約10質量部以上である。また、当該青色剤の割合は、好ましくは約150質量部以下、より好ましくは約100質量部以下である。また、当該青色剤の割合の好ましい範囲としては、0.1〜150質量部程度、0.1〜100質量部程度、1〜150質量部程度、1〜100質量部程度、10〜150質量部程度、10〜100質量部程度である。
接着剤層2の厚みは、基材層1とバリア層3とを接着できれば、特に制限されないが、例えば、約1μm以上、約2μm以上である。また、接着剤層2の厚みは、例えば、約10μm以下、約5μm以下である。接着剤層2の厚みの好ましい範囲については、1〜10μm程度、1〜5μm程度、2〜10μm程度、2〜5μm程度が挙げられる。
[着色層21]
着色層21は、基材層1とバリア層3との間に必要に応じて設けられる層である。接着剤層2を有する場合には、基材層1と接着剤層2との間、接着剤層2とバリア層3との間の少なくとも一方に着色層21を設けてもよい。また、基材層1の外側に着色層21を設けてもよい。着色層21を設けることにより、蓄電デバイス用外装材を好適に黒色に着色することができる。
本開示の蓄電デバイス用外装材において、着色層21は、バリア層3よりも外側に位置する、青色剤を含む層とすることができる。例えば、着色層21を黒色に着色することによって、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材とした上で、着色層21に青色剤を配合して、蓄電デバイス用外装材10の色味を調整して、前述の識別性を高めることができる。なお、識別性を高める観点から、着色層21に青色剤を配合した上で、さらに、着色層21に含まれる着色剤の種類や含有量などの組成、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2や表面被覆層6などのバリア層3よりも外側に位置する層の組成、さらには、後述する蓄電デバイス用外装材のエージング処理条件などを調整することにより、蓄電デバイス用外装材10の色味を調整することができる。
着色層21は、例えば、着色剤を含むインキを基材層1の表面、またはバリア層3の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
着色層21に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。
着色層21における着色剤の含有量は、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、適切に着色する観点から、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上である。また、着色層21における着色剤の含有量は、適切に着色層21を形成させる観点から、好ましくは約50.0質量%以下、より好ましくは約30.0質量%以下、さらに好ましくは20.0質量%以下である。着色層21における着色剤の含有量の好ましい範囲としては、0.5〜50.0質量%程度、0.5〜30.0質量%程度、0.5〜20.0質量%程度、1.0〜50.0質量%程度、1.0〜30.0質量%程度、1.0〜20.0質量%程度が挙げられる。
また、着色層21に黒色剤を配合する場合、着色層21における黒色剤の含有量は、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、適切に着色する観点から、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上である。また、着色層21における黒色剤の含有量は、適切に着色層21を形成させる観点から、好ましくは約50.0質量%以下、より好ましくは約30.0質量%以下、さらに好ましくは20.0質量%以下である。また、着色層21における黒色剤の含有量の好ましい範囲としては、0.5〜50.0質量%程度、0.5〜30.0質量%程度、0.5〜20.0質量%程度、1.0〜50.0質量%程度、1.0〜30.0質量%程度、1.0〜20.0質量%程度が挙げられる。また、着色層21に青色剤を配合する場合、着色層21における青色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、例えば0.5〜30質量%程度、好ましくは1〜20質量%が挙げられる。
また、着色層21に黒色剤と青色剤を配合する場合、着色層21における黒色剤と青色剤の割合については、黒色剤を100質量部として、青色剤の割合は、好ましくは約0.1質量以上、より好ましくは約1質量部以上、さらに好ましくは約10質量部以上である。また、当該青色剤の割合は、好ましくは約150質量部以下、より好ましくは約100質量部以下である。当該青色剤の好ましい範囲としては、0.1〜150質量部程度、0.1〜100質量部程度、1〜150質量部程度、1〜100質量部程度、10〜150質量部程度、10〜100質量部程度である。
[バリア層3]
蓄電デバイス用外装材において、バリア層3は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
バリア層3としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層3としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層3は、複数層設けてもよい。バリア層3は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層3を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
アルミニウム合金箔は、蓄電デバイス用外装材の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する蓄電デバイス用外装材を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた蓄電デバイス用外装材を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、又はJIS H4000:2014 A8079P−Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
バリア層3の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば9〜200μm程度が挙げられる。バリア層3の厚みは、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下である。また、バリア層3の厚みは、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上である。当該厚みの好ましい範囲としては、10〜85μm程度、10〜50μm程度、10〜40μm程度、10〜35μm程度、20〜85μm程度、20〜50μm程度、20〜40μm程度、20〜35μm程度、25〜85μm程度、25〜50μm程度、25〜40μm程度、25〜35μm程度が挙げられる。バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合、上述した範囲が特に好ましい。また、特に、バリア層3がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みとしては、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下が挙げられる。また、ステンレス鋼箔の厚みとしては、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上が挙げられる。また、ステンレス鋼箔の厚みの好ましい厚みの範囲としては、10〜60μm程度、10〜50μm程度、10〜40μm程度、10〜30μm程度、10〜25μm程度、15〜60μm程度、15〜50μm程度、15〜40μm程度、15〜30μm程度、15〜25μm程度が挙げられる。
また、バリア層3が金属箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層3は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層の表面に行い、バリア層に耐腐食性を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層3が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層3とする。
耐腐食性皮膜は、蓄電デバイス用外装材の成形時において、バリア層(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層表面の溶解、腐食、特にバリア層がアルミニウム合金箔である場合にバリア層表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止、成形時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止の効果を示す。
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸−クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万程度であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(1)又は一般式(3)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R12NH)を用いて官能基(−CH2NR12)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0〜200mg程度、好ましくは5.0〜150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
耐腐食性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm〜20μm程度、より好ましくは1nm〜100nm程度、さらに好ましくは1nm〜50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4 +、CePO4 -などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2 +、CrPO4 -などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
熱融着性樹脂層4を構成している樹脂については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層4が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、蓄電デバイス用外装材の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層1で例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは10〜50mg/m2程度、さらに好ましくは15〜40mg/m2程度が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15〜85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層5の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15〜45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層5の厚みが10μm未満である場合や接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35〜85μm程度が挙げられる。
[接着層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、バリア層3(又は耐腐食性皮膜(耐酸性皮膜など))と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。なお、接着層5の形成に使用される樹脂としては、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンが挙げられる。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
バリア層3と熱融着性樹脂層4とを強固に接着する観点から、接着層5は、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
さらに、蓄電デバイス用外装材の厚みを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた蓄電デバイス用外装材とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。接着層5は、これらの樹脂のうち少なくとも1種と前記酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
また、バリア層3と接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC−O−C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C−O−C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ポリウレタンなどが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50〜2000程度、より好ましくは100〜1000程度、さらに好ましくは200〜800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層5は、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
接着層5における、ポリウレタンの割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
なお、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
接着層5の厚さは、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下である。また、接着層5の厚さは、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上である。当該厚さの範囲としては、好ましくは、0.1〜50μm程度、0.1〜40μm程度、0.1〜30μm程度、0.1〜20μm程度、0.1〜5μm程度、0.5〜50μm程度、0.5〜40μm程度、0.5〜30μm程度、0.5〜20μm程度、0.5〜5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。なお、接着層5が接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層5を形成することができる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層4と接着層5との押出成形により形成することができる。
[表面被覆層6]
本開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐傷性、成形性などの向上の少なくとも一つを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を備えていてもよい。表面被覆層6は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイス用外装材の最外層側に位置する層である。前記の通り、本開示の蓄電デバイス用外装材において、バリア層よりも外側に青色剤を含む層を備えていることにより、イエロールーム内の光源下において、表面に印刷された識別標識の識別性に優れた効果が発揮される。ただし、蓄電デバイス用外装材が僅かに青色を呈して色ムラが視認される場合もあるが、本開示の蓄電デバイス用外装材の最外層に表面被覆層6が設けられている場合、表面被覆層が光を拡散して光沢を抑制する効果を奏するため、色ムラの発生が抑制され、見た目の均一性が高められるという利点がある。一方、本開示の蓄電デバイス用外装材の最外層に表面被覆層6を有していない場合、蓄電デバイス用外装材の表面の光沢が高く、傷が目立ち易いが、表面被覆層6が設けられている場合、表面被覆層が光を拡散して光沢を抑制する効果を奏するため、傷が目立ちにくいという利点もある。これらの利点は、表面被覆層6が後述の添加剤(特に艶消剤)を含んでいる場合に、特に発揮されやすい。
また、本開示の蓄電デバイス用外装材においては、表面被覆層6を黒色に着色することによって、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材とした上で、前述の青色剤を配合して、バリア層3よりも外側に位置する、青色剤を含む層とすることができる。例えば、表面被覆層6を黒色に着色することによって、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材とした上で、表面被覆層6に青色剤を配合して、蓄電デバイス用外装材10の色味を調整して、前述の識別性を高めることができる。なお、識別性を高める観点から、表面被覆層6に青色剤を配合した上で、さらに、表面被覆層6に含まれる着色剤の種類や含有量などの組成、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2や着色層21などのバリア層3よりも外側に位置する層の組成、さらには、後述する蓄電デバイス用外装材のエージング処理条件などを調整することにより、蓄電デバイス用外装材10の色味を調整することができる。
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂により形成することができる。
表面被覆層6を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する主剤と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。硬化剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族のイソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化XDI(H6XDI)、水素化MDI(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物として多量体(例えば三量体)を使用することもできる。このような多量体には、アダクト体、ビウレット体、ヌレート体等が挙げられる。表面被覆層6がポリウレタンにより形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与される。
表面被覆層6は、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、前述した滑剤や着色剤、アンチブロッキング剤、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、粘着付与剤、耐電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
添加剤は、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、識別性を向上させる観点から、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムは青味を帯びているため、表面被覆層の添加剤として使用することで、より青味を帯びさせることが可能となる。また、添加剤としてシリカと炭酸カルシウムを混合して使用することが好ましい。シリカを表面被覆層の添加剤として使用することで反射光を拡散しやすくし、蓄電デバイス用外装材の外観に、より青味を帯びさせることが可能となる。また、これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点からは、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
表面被覆層6が着色剤を含む場合、着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。表面被覆層6に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。また、表面被覆層6に含まれる着色剤の好ましい含有量についても、[接着剤層2]の欄で記載した含有量と同じである。
例えば、表面被覆層6に黒色剤を配合する場合、表面被覆層6における黒色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、例えば5〜60質量%程度、好ましくは10〜40質量%が挙げられる。また、表面被覆層6に青色剤を配合する場合、表面被覆層6における青色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が黒色に着色されれば特に制限されず、例えば0.5〜30質量%程度、好ましくは1〜20質量%が挙げられる。
また、例えば、表面被覆層6に黒色剤と青色剤を配合する場合、表面被覆層6における黒色剤と青色剤の割合については、黒色剤を100質量部として、青色剤の割合は、好ましくは約0.1質量以上、より好ましくは約1質量部以上、さらに好ましくは約10質量部以上である。また、当該青色剤の割合は、好ましくは約150質量部以下、より好ましくは約100質量部以下である。また、当該青色剤の好ましい範囲は、0.1〜150質量部程度、0.1〜100質量部程度、1〜150質量部程度、1〜100質量部程度、10〜150質量部程度、10〜100質量部程度である。
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層6を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層6に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
例えば接着剤層が、黒色に着色した層である場合には、接着剤層よりも外側に位置する表面被覆層は、透明又は半透明であることが好ましい。
3.蓄電デバイス用外装材の製造方法
蓄電デバイス用外装材の製造方法については、本発明の蓄電デバイス用外装材が備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層する工程を備える方法が挙げられる。具体的には、本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法は、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、外側から順に、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とが積層された積層体を得る工程を備えており、前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を備えている。
本発明の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法、タンデムラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法や、積層体Aのバリア層3上に接着層5が積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層4とサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)、(4)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4を積層する方法などが挙げられる。
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、外側から順に、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/バリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4を備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層1のバリア層3とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層1表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
蓄電デバイス用外装材は、各層を積層した後、エージング処理に供することが好ましい。蓄電デバイス用外装材のエージング処理条件を変化させることにより、外観が黒色の蓄電デバイス用外装材の色味を変化させることができる。このため、色味を調整することを目的として、エージング処理条件を選択することが好ましい。エージング処理条件の調整項目としては、例えば、昇温速度、加熱温度、加熱時間、前処理の有無やその温度などが挙げられる。なお、エージング処理条件によって色味が変化する主たる要因としては、蓄電デバイス用外装材に含まれる着色剤の凝集の程度がエージング処理条件によって変化することが挙げられる。
4.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子を外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
<蓄電デバイス用外装材の製造>
実施例1−5,10及び比較例1
基材層として、延伸ナイロン(ONy)フィルム(厚さ15μm)を準備した。また、バリア層として、アルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O(厚さ35μm))を用意した。次に、バリア層と基材層とを後述の接着剤(着色剤を含有する2液型ウレタン接着剤)を用いてドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
次に、上記で得られた各積層体のバリア層の上に、接着層(厚さ20μm)としての無水マレイン酸変性ポリプロピレンと、熱融着性樹脂層(厚さ20μm)としてのランダムポリプロピレンとを共押出しすることにより、バリア層の上に接着層/熱融着性樹脂層とを積層させた。さらに、得られた積層体の基材層の表面に、シリカ粒子を含む樹脂組成物(樹脂は、ポリオール化合物とイソシアネート系化合物の混合物から形成されるポリウレタン樹脂)を厚さ3μmとなるように塗工することにより、つや消し調の表面被覆層を形成して、外側から順に、表面被覆層(3μm)/基材層(厚さ15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(20μm)が積層された積層体(総厚み96μm)を得た。
実施例6
実施例1において、表面被覆層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、基材層(厚さ15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(20μm)が積層された積層体(総厚み93μm)を得た。
実施例7
実施例2において、表面被覆層を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、基材層(厚さ15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(20μm)が積層された積層体(総厚み93μm)を得た。
実施例8
実施例3において、表面被覆層を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様にして、基材層(厚さ15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(20μm)が積層された積層体(総厚み93μm)を得た。
実施例9,11−14
実施例1において、表面被覆層を形成しなかったこと、及び接着剤層の形成に用いる接着剤として、接着剤C1の代わりに、それぞれ表1に記載の接着剤C4〜C8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、基材層(厚さ15μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(35μm)/接着層(20μm)/熱融着性樹脂層(20μm)が積層された積層体(総厚み93μm)を得た。
<接着剤>
基材層とバリア層との間の接着剤層の形成には、以下の接着剤を使用した。各実施例及び比較例で使用した接着剤の種類を表1に示す。
[接着剤B]
黒色剤としてカーボンブラック(二次粒子径0.2μm)を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C1]
黒色剤としてカーボンブラックを使用した。カーボンブラック26質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン4質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C2]
黒色剤としてカーボンブラックを使用した。カーボンブラック15質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン15質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C3]
黒色剤としてカーボンブラックを使用した。カーボンブラック13質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン17質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C4]
黒色剤として、接着剤Bに含まれているカーボンブラックと同じカーボンブラックを使用した。カーボンブラック20質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン10質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C5]
黒色剤として、接着剤Bに含まれているカーボンブラックと同じカーボンブラックを使用した。カーボンブラック18質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン12質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C6]
黒色剤として、接着剤Bに含まれているカーボンブラックと同じカーボンブラックを使用した。カーボンブラック22質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン8質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C7]
黒色剤として、接着剤Bに含まれているカーボンブラックと同じカーボンブラックを使用した。カーボンブラック16質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン14質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
[接着剤C8]
黒色剤として、接着剤Bに含まれているカーボンブラックと同じカーボンブラックを使用した。カーボンブラック14質量部に対して、青色剤として、銅フタロシアニン116質量部を含む、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物の混合物)
<エージング処理条件>
各実施例及び比較例で製造される蓄電デバイス用外装材について、外側から観察される色の調整に利用したエージング処理条件は、以下の通りである。
[条件A]
80℃環境において12時間静置する。
[条件B]
まず、ステップ1として、室温(25℃程度)において3時間静置する。次に、ステップ2として、55℃環境において3時間静置する。次に、ステップ3として、80℃環境において12時間静置する。
[条件C]
60℃から100℃環境において3日間静置する。
<L*値、a*値及びb*値の測定>
各実施例及び比較例で得られた蓄電デバイス用外装材について、白色校正キャップ(CM−A177:コニカミノルタ製)で校正したコニカミノルタ社製分光測色計(CM−700d)の観察条件を10°、観察光源をF2、CSIモードに設定(JIS Z8722−2009)し、外側(基材層側)表面のL*、a*、b*の測定を常温常湿下にて行った。測定は各サンプル3点測定し、その平均値を評価結果として表1に示す。
<蛍光X線分析法(XRF)によるCu元素の測定>
実施例1〜3及び比較例1で得られた蓄電デバイス用外装材について、以下の測定条件にて、蛍光X線分析法(XRF)によるCu元素の検出の有無を確認した。その結果、比較例1では、Cu元素に由来するピークは検出されなかった。また、実施例1〜3では、Cu元素に由来するピークが検出された。なお、CuKαのピーク強度は、実施例1は0.4、実施例2は1.2、実施例3は1.2であった。
(測定条件)
使用装置:EDX−800HS(島津製作所製)
X線:Rhターゲット
電圧:50kV
電流:1000μA
照射面積:100φ
測定時間:100sec
測定雰囲気:真空
測定面:外側(蓄電デバイス用外装材の外側にX線が照射される)
解析方法:EDX−800HS(島津製作所製)に付属のソフト「PCEDX」による自動強度計算を実施する。具体的には、測定によって得られたスペクトルに対して、ピーク検出を行う。ピーク検出条件の係数は10とする。次に、検出されたピークに対して、強度計算から検出強度を算出する。
<イエロールーム内での識別性>
各実施例及び比較例で得られた蓄電デバイス用外装材の表面被覆層の表面に、インクジェットプリンター(マーケム・イマージュ株式会社製 機種名 9040)を用いて、1ドットの直径が約0.3mm、文字列の高さが約1.5mmの数字列「0123456789」を印刷してサンプルとした。なお、印刷に用いたインクは白色とした。次に、イエロールーム内にて、各サンプルを30cm離れた位置から肉眼で観察して、以下の評価基準に従って、識別性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:すぐに認識可能
B:認識に数秒要する
C:サンプル角度を変えて認識できる
<外観の黒色>
蛍光灯下の室内において、前記の<イエロールーム内での識別性>で用意した各サンプルについて、肉眼で観察して、以下の評価基準に従って、外観が黒色であると認識されることについて評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:明確に黒色であると認識される。
B:青色または赤色がわずかに認識されるが、黒色であると問題無く認識される
C:青色または赤色がはっきりと認識され、黒色であると認識されない虞がある。
表1に示される結果から明らかなとおり、実施例1〜14の蓄電デバイス用外装材は、バリア層よりも外側に青色剤を含む層を備えていることから、外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であるにもかかわらず、イエロールーム内において、表面に印刷された識別標識の識別性に優れていることが分かる。なお、実施例1〜14の蓄電デバイス用外装材は、イエロールーム内だけでなく、一般的な蛍光灯下の室内においても、表面に印刷された識別標識の識別性に優れていた。また、実施例1〜14の蓄電デバイス用外装材は、一般的な蛍光灯下の室内において、外観が黒色であると問題無く認識することができた。
以上の通り、本開示は、以下に示す態様の発明を提供する。
項1. 外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であって、
前記蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を備えている、蓄電デバイス用外装材。
項2. 前記積層体の外側から蛍光X線分析法による分析を行うと、Cu元素が検出される、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 前記基材層と前記バリア層との間に、接着剤層を備えており、
前記接着剤層が、前記青色剤を含む層である、項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
項4. 前記基材層と前記バリア層との間に、着色層を備えており、
前記着色層が、前記青色剤を含む層である、項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 前記基材層の前記バリア層側とは反対側に、表面被覆層を備えている、項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項6. 外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
外側から順に、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とが積層された積層体を得る工程を備えており、
前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、青色剤を含む層を備えている、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項7. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
1 基材層
2 接着剤層
21 着色層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
6 表面被覆層
10 蓄電デバイス用外装材

Claims (7)

  1. 外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材であって、
    前記蓄電デバイス用外装材は、外側から順に、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されており、
    前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、黒色に着色され、青色剤を含む層を備えている、蓄電デバイス用外装材。
  2. 前記積層体の外側から蛍光X線分析法による分析を行うと、Cu元素が検出される、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
  3. 前記基材層と前記バリア層との間に、接着剤層を備えており、
    前記接着剤層が、前記青色剤を含む層である、請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
  4. 前記基材層と前記バリア層との間に、着色層を備えており、
    前記着色層が、前記青色剤を含む層である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  5. 前記基材層の前記バリア層側とは反対側に、表面被覆層を備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
  6. 外観が黒色を呈する蓄電デバイス用外装材の製造方法であって、
    外側から順に、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とが積層された積層体を得る工程を備えており、
    前記積層体は、前記バリア層よりも外側に、黒色に着色され、青色剤を含む層を備えている、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
  7. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
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