JP6760363B2 - フルフラール組成物及びフルフラール組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2016年3月30日に、日本出願された特願2016−069219号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
また、フルフラールは潤滑油精製等において、溶剤抽出原料中の芳香族分に対する大きな溶解力と高い選択性を有することから、溶剤抽出法の溶剤として用いられている。
例えば、特許文献1においては、熱水処理したバイオマスの懸濁液から得た固形残渣を酸処理してバッチ式蒸解釜に供給し、加圧・加熱条件下、蒸解釜下部から蒸気を導入するとともに釜上部から蒸気を排出しつつ、酸処理された固形残渣を加水分解することにより、フルフラールを製造している。
また、特許文献2においては、バイオマスである木粉とイオン交換水とを含有する水性懸濁液原料を加水分解装置に供給し、加圧・加熱条件下で加水分解処理を行い、加水分解処理された木粉含有懸濁液を加水分解装置の底部排出口より排出するとともに、加水分解装置の中間位置に設けられ、固液分離装置を備えた中間取り出し口よりフルフラールを含有する加水分解処理液を連続的に取り出すことにより、フルフラールを製造している。
本発明者らが従来のフルフラール組成物の雑臭の原因について検討したところ、フルフラール組成物の雑臭は、フルフラール組成物に特定の不純物が残存していることが原因であることを見出した。
特に、従来のフルフラール組成物は、3−メチルブタナールを含む低沸点アルデヒド成分が含有される結果、フルフラール組成物の香りに雑臭が生じ、これらの不純物がフルフラール組成物の香りに悪影響を与えていることを見出した。また、低沸点アルデヒド成分以外にも、低沸点のケトン、エステル、又はアルコールを含む低沸点有機化合物成分や、高沸点の芳香族化合物を含む高沸点有機化合物成分、及び高沸点化合物成分によって、フルフラール組成物の香りに雑臭が生じることを見出した。
例えば、溶剤抽出原料中の芳香族分に対するフルフラールの大きな溶解力と高い選択性を期待して溶剤抽出を行っても、フルフラール組成物中の不純物によって、フルフラールによっては抽出されるべきではない成分が抽出されてしまい、特に不必要に抽出された高沸点成分は、溶剤であるフルフラールの回収後のエキストラクトに残存してしまう。また、溶剤であるフルフラールの回収においても、不必要に抽出された低沸点成分が回収フルフラールに混入することにより、フルフラールの再利用を困難にする可能性がある。
また、本発明は、溶剤抽出法の溶剤として、優れた抽出性及び回収性を備えた、バイオマス由来のフルフラール組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
(2)前記フルフラール組成物に占める3−メチルブタナールの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.002質量%以下である、(1)に記載のフルフラール組成物;
(3)前記フルフラール組成物に占めるベンゾフランの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.005質量%以下である、(1)又は(2)に記載のフルフラール組成物;
(4)フルフラールを主成分として含むフルフラール組成物であって、前記フルフラール組成物中に占める前記フルフラールの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、98質量%以上であり、前記フルフラール組成物中に占めるベンゾフランの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.005質量%以下である、フルフラール組成物;
(5)前記フルフラール組成物に占める高沸点化合物成分の含有量の合計が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.015質量%以下である、(4)に記載のフルフラール組成物;
(6)前記フルフラール組成物に占める3−メチルブタナールの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.004質量%以下である、(4)又は(5)に記載のフルフラール組成物;
(7)バイオマスの水性懸濁液を加水分解塔に供給し、加圧・加熱条件下で加水分解処理して加水分解処理懸濁液を得ると共に、フルフラールを含む加水分解処理液を得る加水分解工程を含み、前記加水分解工程では、前記加水分解塔内の懸濁液を固液分離して前記加水分解処理液を回収すると共に、前記加水分解塔内の温度と圧力を維持しながら、前記加水分解塔内の気相部分からガスを排出することを特徴とする、フルフラール組成物の製造方法;
(8)前記加水分解塔における前記加水分解処理液の取出口を、前記バイオマスの水性懸濁液の供給口より下側であって、前記加水分解処理懸濁液の排出口の上側に設ける(7)に記載のフルフラール組成物の製造方法;
(9)前記加水分解工程において、更に加水分解塔に蒸気を導入する、(7)又は(8)に記載のフルフラール組成物の製造方法;
(10)前記加水分解工程において、更に加水分解塔内の気相部分に蒸気を導入する(9)に記載のフルフラール組成物の製造方法;
(11)更に前記加水分解工程により得られた前記加水分解処理液を単蒸留してフルフラールを含む蒸気を得、この蒸気を冷却してフルフラールを含有するフラッシュ液を得るフラッシュ液取得工程、及び得られたフルフラールを含有するフラッシュ液を精製してフルフラール組成物を得る工程を含む、(7)〜(10)のいずれか1項に記載のフルフラール組成物の製造方法;及び
(12)pMCが100〜108である(1)〜(6)のいずれか1項に記載のフルフラール組成物。
また、本発明のフルフラールの製造方法によれば、香料成分として雑臭の少ない優れた香りを有し、溶剤抽出法の溶剤として優れた抽出性と回収性を備えるフルフラール組成物を製造することができる。
本発明のフルフラール組成物は、フルフラールを主成分として含む。フルフラールを主成分として含むとは、フルフラール組成物中に占めるフルフラールの含有量が、フルフラール組成物の総質量に対して98質量%以上100質量%未満であることを意味し、98.5質量%以上100質量%未満が好ましく、98.8質量%以上100質量%未満がより好ましく、99.0質量%以上100質量%未満が更に好ましく、99.5質量%以上100質量%未満が特に好ましく、99.8質量%以上100質量%未満が最も好ましい。
フルフラール組成物中のフルフラールの含有量が98質量%以上100質量%未満であれば、フルフラール組成物を香料成分として使用することができ、溶剤抽出法の溶剤としても使用することができる。
不純物は、低沸点アルデヒド成分、低沸点有機化合物成分、高沸点有機化合物成分、高沸点化合物成分(ただし、前記高沸点有機化合物成分を除く)、及びその他の成分からなる群から選択される少なくとも一つの成分を意味する。「その他の成分」とは、前記低沸点アルデヒド成分、低沸点有機化合物成分、高沸点有機化合物成分及び高沸点化合物成分(ただし、前記高沸点有機化合物成分を除く)以外の成分を意味し、例えば水も含まれる。
フルフラール組成物を香料成分として使用する場合、不純物はフルフラールの香りに対して雑臭を与える場合があり、特にその不純物が揮発しやすく、低沸点である場合にフルフラール組成物に雑臭を与えやすい。また、フルフラール組成物を溶剤抽出法の溶剤として使用する場合、不純物はフルフラール組成物の抽出性と回収性を悪化させる可能性がある。したがって、フルフラール組成物中の不純物が少なければ、フルフラール組成物は優れた抽出性を有する。
本発明のフルフラール組成物が、バイオマス由来であることは、例えば、ASTM D6866−10に準拠して、pMC(Percent Modern Carbonの略)を測定することによって特定することができる。
すなわち、放射性炭素年代測定を用いてフルフラール組成物の14C濃度を測定することにより、フルフラール組成物が天然系(バイオマス)由来か、石油系由来かを区別することが可能である。
フルフラール組成物が100%天然系由来の物質で製造されたものであれば、フルフラール組成物のpMCは105前後を示す。
一方、フルフラール組成物が、石油等の化石燃料に由来するものであれば、pMCはほぼ0を示す。なお、天然系‐石油系が混合されたフルフラール組成物であれば、これらの混合比がpMCに反映される。
したがって、本発明の別の側面は、pMCが50〜108のフルフラール組成物である。
本発明のまた別の側面は、pMCが80〜108のフルフラール組成物である。
本発明のまた別の側面は、pMCが95〜108のフルフラール組成物である。
本発明のまた別の側面は、pMCが100〜108のフルフラール組成物である。
本発明の更にまた別の側面は、pMCが103〜107のフルフラール組成物である。
本発明の1つの側面は、フルフラールと、低沸点アルデヒド成分、低沸点有機化合物成分、高沸点有機化合物成分、高沸点化合物成分(ただし、前記高沸点有機化合物成分を除く)、及びその他の成分からなる群から選択される少なくとも一つの成分である不純物と、を含むフルフラール組成物であって、
前記フルフラール組成物中に占める前記フルフラールの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、98質量%以上100質量%未満であり、
前記フルフラール組成物中に占める前記不純物の含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0質量%を超えて2質量%以下であり、かつ
前記フルフラール組成物中に占める3−メチルブタナールの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.004質量%以下である、フルフラール組成物である。
本発明のフルフラール組成物中の成分及びその含有量について、以下に詳細に説明する。
フルフラール組成物中に占める3−メチルブタナールの含有量が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
フルフラール組成物中に占める2−メチルプロパナール、2−ブテナール、2−メチルブタナール、及び2−ペンテナールの含有量が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
また、フルフラール組成物中に占める2−メチルプロパナール、2−ブテナール、2−メチルブタナール、及び2−ペンテナールの含有量の合計が、前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
フルフラール組成物中に占める前記低沸点アルデヒド成分の含有量が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
また、フルフラール組成物中に占める前記低沸点アルデヒド成分の含有量の合計が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
においの感じ方には個人差があるため一概には言えないが、これらの化合物はケトン、エステル、又はアルコールに特有のにおいや刺激臭を有する。これらの化合物は、低沸点アルデヒド成分と比較すれば悪臭を有するものではないが、いずれの成分もある一定以上の量がフルフラール組成物に混入することにより、フルフラール組成物に雑臭を与え、フルフラールの香りを損ねる。
フルフラール組成物中に占める前記低沸点有機化合物成分の含有量が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
また、フルフラール組成物中に占める前記低沸点有機化合物成分の含有量の合計が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
すなわち、これらの成分は溶剤抽出法における溶剤抽出原料中の抽出対象化合物に対する、フルフラールとは異なる親和性を有する。したがって、これらの成分が不純物としてフルフラール組成物に含有されることにより、フルフラールの溶剤抽出原料中の芳香族分に対する大きな溶解力と高い選択性を期待して溶剤抽出を行っても、フルフラール組成物中のこれらの不純物によって、フルフラールによっては抽出されるべきではない成分が抽出されてしまい、特に不必要に抽出された高沸点成分は、溶剤であるフルフラールの回収後のエキストラクトに残存してしまう。
また、溶剤であるフルフラールの回収においても、不必要に抽出された低沸点成分が回収フルフラールに混入することにより、フルフラールの再利用を困難にする可能性がある。
本明細書において、「高沸点有機化合物成分」とは、ベンゾフラン(沸点:173℃)、2−メチルベンゾフラン(沸点:198℃)、及び2−メトキシフェノール(沸点:205℃)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物である。
本明細書において、「高沸点化合物成分」とは、フルフラールの沸点より高い沸点を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であり、特に断らない限り、前述の高沸点有機化合物成分を含む。「高沸点化合物成分」の別の態様としては、フルフラール組成物の終点より高い沸点を有する化合物からなる化合物群であり、特に断らない限り、前述の高沸点有機化合物成分を含む。
また、これらの化合物は溶剤抽出法における溶剤抽出原料中の抽出対象化合物に対する、フルフラールとは異なる親和性を有する。したがって、溶剤抽出法の溶剤としてフルフラール組成物を使用する際にも、上述の不都合が生じうる。
すなわち、フルフラール組成物中に占める前記高沸点化合物成分の含有量の合計は、フルフラール組成物の総質量に対して、0.015質量%以下が好ましく、0.012質量%以下がより好ましく、0.010質量%以下が更に好ましく、0.005質量%以下が特に好ましく、かつ、フルフラール組成物中に占める前記高沸点有機化合物成分の含有量の合計は、フルフラール組成物の総質量に対して、0.005質量%以下が好ましく、0.004質量%以下がより好ましく、0.003質量%以下が更に好ましく、前記高沸点化合物成分及び前記高沸点有機化合物成分の含有量はともに0質量%であってもよい。
また、フルフラール組成物に占める前記高沸点有機化合物成分及び前記高沸点化合物成分(ただし、前記高沸点有機化合物成分を除く)の含有量は、それぞれ、フルフラール組成物の総質量に対して、0.005質量%以下が好ましく、0.004質量%以下がより好ましく、0.003質量%以下が更に好ましく、0.002質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であってもよい。
本発明の1つの側面は、フルフラールと、低沸点アルデヒド成分、低沸点有機化合物成分、高沸点有機化合物成分、高沸点化合物成分(ただし、前記高沸点有機化合物成分を除く)、及びその他の成分からなる群から選択される少なくとも一つの成分である不純物と、を含むフルフラール組成物であって、
前記フルフラール組成物中に占める前記フルフラールの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、98質量%以上100質量%未満であり、
前記フルフラール組成物中に占める前記不純物の含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0質量%を超えて2質量%以下であり、かつ
前記フルフラール組成物中に占める3ベンゾフランの含有量が、前記フルフラール組成物の総質量に対して、0.005質量%以下である、フルフラール組成物である。
本発明のフルフラール組成物中の成分及びその含有量について、以下に詳細に説明する。
また、ベンゾフランはその沸点から揮発性に乏しいため、フルフラール組成物の香りに対する影響は上述のように大きくないかもしれないが、ある一定以上の量がフルフラール組成物に混入すれば、フルフラール組成物に雑臭を与え、フルフラールの香りを損ねる。
フルフラール組成物中に占める3−メチルブタナールの含有量が前記上限値以下であれば、フルフラール組成物の香りが悪くならず、香りの優れたフルフラール組成物となる。
本発明のフルフラール組成物の蒸留範囲が前記範囲であれば、蒸留範囲が充分に狭いため、溶剤抽出におけるフルフラールの回収が容易となる。
本発明のフルフラール組成物の製造方法は、バイオマスの水性懸濁液からフルフラールを含む加水分解処理液を得る加水分解工程を含む。
本発明のフルフラールの製造方法に用いるバイオマスの水性懸濁液は、バイオマスを水と混合したスラリーであることが好ましい。バイオマスは乾燥固形物であっても、水分を含んだ固形物であってもよいが、その場合、水と混合してスラリー状態にしてから加水分解工程に付することが好ましい。
水としてはイオン交換水を用いることが好ましく、酸やアルカリを添加しないことが好ましい。酸やアルカリを添加しないことにより、高沸点有機化合物成分の生成を抑制することができる。
バイオマスの水性懸濁液に占めるバイオマスの含有量が前記範囲内であれば、フルフラールの生成が効率的に進む。
バイオマスの粉砕は、例えば、ウィーレー式ミルを用いて粉砕することができ、粉砕物を篩にかけて粒径をそろえて用いることが好ましい。加水分解工程に付すバイオマスの大きさは、最大部分の長さが0.1mm以上100mm以下であることが好ましく、0.5mm以上80mm以下であることがより好ましい。
バイオマスの熱水処理は、必要により粉砕したバイオマスを水性液と混合して加熱することにより行うことができる。バイオマスと水性液の混合割合は特に制限されないが、バイオマスの乾燥重量の1質量部に対して、好ましくは5質量部以上50質量部以下の水性液、より好ましくは10質量部以上20質量部以下の水性液を用いることができる。水性液としては、水、水とその他の溶媒、例えばアルコールとの混合物が挙げられ、水が好ましい。水としてはイオン交換水を用いることが好ましく、酸やアルカリを添加しないことが好ましい。酸やアルカリを添加しないことにより、高沸点有機化合物成分の生成を抑制することができる。
本発明のフルフラール組成物の製造方法における加水分解工程は、バイオマスの水性懸濁液を加水分解塔に供給し、加圧・加熱条件下で加水分解処理して加水分解処理懸濁液を得ると共に、フルフラールを含む加水分解処理液を得る工程であり、加水分解塔内の懸濁液を固液分離して加水分解処理液を回収すると共に、加水分解塔内の温度と圧力を維持しながら、加水分解塔内の気相部分からガスを排出することを特徴とする。
加水分解処理は、加水分解処理の一時的な停止を必要とせずに、効率的に加水分解処理ができる点から、連続式加水分解処理であることが好ましい。
また、加水分解塔は、加圧・加熱条件下で加水分解を行うことのできるものであればよく、形状は制限されない。
加水分解塔内の気相部分からガスを排出することにより、得られるフルフラール組成物への低沸点アルデヒド成分及び低沸点有機化合物成分の混入を抑制することができる。
加水分解塔内の気相部分から蒸気を導入することにより、加水分解塔内の加圧・加熱条件を調整でき、加水分解塔内の温度と圧力を維持しやすい。そのため、安定的なバイオマスの加水分解処理を行うことができ、一定の品質のフルフラール組成物を製造することができる。
加水分解工程における蒸気の導入は、連続的に行われてもよいし、断続的に行われてもよい。加水分解塔内の温度と圧力とをモニターし、一方または両方が設定範囲未満に低下しそうなときに蒸気を導入するようにしてもよい。
高沸点有機化合物成分の生成を抑制することができ、得られるフルフラール組成物への高沸点有機化合物成分の含有を抑制できる点で、加水分解処理は、加圧・加熱下における水を用いた加水分解処理、特に酸及びアルカリを含まない水による加水分解処理であることがより好ましい。
具体的には、加水分解処理は、120℃以上250℃以下で行うことができ、140℃以上230℃以下が好ましく、150℃以上200℃以下がより好ましい。また、加水分解処理は、0.35MPa以上2.8MPa以下で行うことができ、0.5MPa以上2.5MPa以下が好ましく、1.0MPa以上2.0MPa以下がより好ましい。
加水分解処理が、120℃以上250℃以下であれば、バイオマスからのフルフラールの生産が効率的に進行する。また、加水分解処理が、0.35MPa以上2.8MPa以下であれば、バイオマスからのフルフラールの生産が効率的に進行する。
処理液回収時間が前記下限値以上であれば、バイオマスが充分に加水分解され、効率的にフルフラールを回収することができる。処理液回収時間が前記上限値以下であれば、バイオマスの加水分解により生成したフルフラールの分解や縮合を抑制することができる。
ここで、処理液回収時間とは、バイオマスの水性懸濁液が原料供給口11から供給されてから、加水分解処理懸濁液が処理液回収口13から回収されるまでの時間を言う。
処理液回収時間は、加水分解塔内の懸濁液相部分の液面からの処理液回収口までの距離を変更することにより調整することができる。
懸濁液排出時間が前記範囲にあれば、加水分解懸濁液に含まれる加水分解されたバイオマスの固形分をパルプの製造原料として用いることができる。
懸濁液排出時間は、加水分解塔内の懸濁液相部分の液面からの懸濁液排出口までの距離を変更することにより調整することができる。
処理液回収時間と懸濁液排出時間との比が、1/1.1〜1/4であれば、バイオマスからのフルフラールの生産が効率的に進行する。
なお、バッチ式加水分解処理においては、処理液回収時間と懸濁液排出時間は同じになる。
加水分解塔内の温度と圧力の維持は、加水分解塔に蒸気を導入することにより行うことが好ましく、導入した蒸気が凝集、ドレン化しにくい点から、加水分解塔内の気相部分に蒸気を導入することがより好ましい。
なお、加水分解塔内の圧力のみを上昇させるために、空気を加水分解塔内に導入してもよい。加水分解塔内に導入する空気は圧縮されていてもよい。
洗浄液としては、水、酸水溶液を挙げることができるが、加水分解処理液の化学的性質に悪影響を及ぼさない水溶液であれば、特に制限なく用いることができる。洗浄液としては、水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。
したがって、本発明のフルフラールの製造方法は、溶解パルプの製造工程におけるクラフト蒸解の前工程である、前加水分解工程としても有用である。
本発明のフルフラール組成物の製造方法は、フラッシュ液取得工程を含んでもよい。
フラッシュ液取得工程は、加水分解工程により得られた加水分解処理液を単蒸留してフルフラールを含む蒸気を得、この蒸気を冷却してフルフラールを含有するフラッシュ液を得る工程である。
フラッシュ液取得工程が、加水分解工程により得られた加水分解処理液の加圧加熱処理を含むことにより、加水分解処理液中のフルフラール以外の水溶性の加水分解生成物の一部をフルフラールに変換することができる。
加圧加熱処理の圧力は、0.35MPa以上2.8MPa以下が適用でき、0.5MPa以上2.5MPa以下が好ましく、1.0MPa以上2.0MPa以下がより好ましい。
加圧加熱処理時間は、加圧加熱処理における温度及び圧力条件によって異なるが、0.5分間以上300分間以下の範囲で適宜選択することができ、30分間以上270分間以下が好ましく、60分間以上240分間以下がより好ましく、90分間以上210分間以下が更に好ましい。
本発明のフルフラール組成物の製造方法は、フルフラール精製工程を含んでもよい。
フルフラール精製工程は、加水分解工程により得られた加水分解処理液、又はフラッシュ液取得工程により得られたフラッシュ液を、フラッシュ液取得工程以外の精製により、フルフラール組成物を得る工程である。
フルフラールの分離精製は、公知の方法、あるいは公知の方法を組み合わせて行うことができ、例えば、有機溶媒による抽出、蒸留、又はこれらの操作の組み合わせにより行うことができる。フルフラールの抽出に用いられる有機溶媒としては、酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられる。
また、蒸留装置についても特に制限されず、棚段式蒸留塔、棚段式減圧蒸留塔、充填式蒸留塔、充填式減圧蒸留塔、等を用いることができる。
フルフラールを含む蒸留精製対象液をフィードした初留塔では、塔底部に水蒸気(好ましくは0.1MPa以上0.5MPa以下)を導入して加熱し、塔頂部から低沸点成分、塔底部から高沸点成分を除去し、塔中段からフルフラール組成物を含む溶液を回収し、上層(主に水を含有する。)と下層(主にフルフラール組成物を含有する。)に分離し、下層を脱水塔へフィードする。脱水塔では、減圧しながら(好ましくは40Torr以上80Torr以下)、塔底部を加熱し、塔頂部から水を除去することにより塔底部からフルフラール組成物が得られる。
前記フルフラール組成物の各成分の含有量をガスクロマトグラフィーにより決定することができる。各成分の含有量が本発明の範囲外である場合には、更に上記精製方法を繰り返すことにより、本発明のフルフラール組成物を得ることができる。
フルフラール組成物中の成分の定量は、下記の条件下で行った。
(ヘッドスペース部)
本体:HSS7694(アジレント・テクノロジー株式会社製)、オーブン温度:80℃、ループ温度:90℃、ガスクロマトグラフ部連結部温度:150℃、ループ充填時間:0.2分、ループ平衡時間:0.05分、サンプル注入時間:0.5分、容器平衡時間:20分、容器加圧時間:0.2分。
(ガスクロマトグラフ部)
本体:GC6890(アジレント・テクノロジー株式会社製)、カラム:DB−1(アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ:60m、内径:0.25mm、膜厚:1.0μm)、カラム温度:40℃で10分間保持し、昇温速度10℃/分で260℃まで昇温し、260℃で5分間保持、キャリアーガス:ヘリウム、注入口温度:200℃、注入モード:Split(1:20)、カラムガス流量:1.0mL/分。
(マススペクトル部)
本体:MSD5973N(アジレント・テクノロジー株式会社製)、マススペクトル部連結部温度:280℃、イオン化法:電子イオン化(EI)法、検出モード:スキャンモード(m/z 10から500)。
フルフラール組成物の香りは官能試験によって評価した。香りが良好であるものを「A」、やや悪いものを「B」、悪いものを「C」とし、パネル5名による最頻値を採用した。
JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に記載の常圧法蒸留試験方法に準じて、初留点と終点を測定した。得られた初留点と終点との差から、蒸留範囲を求めた。
ユーカリ・ペリータのバイオマス原料(厚さ:約10mm、大きさ:約50mm)に、バイオマス原料1kg(乾燥質量)に対して水4kgの比率で水を添加し、バイオマスの水性懸濁液を得た。
加水分解塔の頂部(頂部の加水分解塔内部は気相である。)の原料供給口から、得られたバイオマスの水性懸濁液をバイオマス乾燥質量として30t/時間で連続的に供給した。加水分解塔内を温度:160℃、圧力:1MPaの加水分解処理条件とし、バイオマス原料を加水分解処理した。その際、加水分解塔の頂部のガス排出口から気相のガスを、前記圧力を一定に維持するように連続的に排出しつつ、上記加水分解処理温度を維持するように、加水分解塔の頂部の蒸気導入口から蒸気を連続的に導入した。
バイオマスが加水分解処理された加水分解処理懸濁液は、加水分解塔の底部(底部の加水分解塔内部は懸濁液相である。)の懸濁液排出口からバイオマス乾燥重量として24t/時間で連続的に排出した。なお、加水分解処理対象物は、原料供給口から懸濁液排出口まで3時間の滞留時間で移動させた。
また、処理液回収口(処理液回収時間1.5時間の位置)からは、固液分離装置を通して加水分解処理懸濁液の液体部分である加水分解処理液を6t/時間で連続的に分離して回収した。
得られた加水分解処理液の4.5m3を、容量6m3の加圧加熱処理装置に供給し、温度:180℃、圧力:1MPaの加圧加熱条件下で、120分間、加圧加熱処理した。
加圧加熱処理後、加圧加熱処理装置に設置されたフラッシュ弁からフルフラールを含む蒸気を集め、集めた蒸気を冷却してフルフラールを含む水溶液であるフラッシュ液を得た。
さらにフラッシュ液を蒸留精製して、フルフラール組成物を得た。
得られたフルフラール組成物のフルフラール含量は、98.5質量%以上であった。
ユーカリ・ペリータのバイオマス原料(厚さ:約10mm、大きさ:約50mm)の400g(乾燥質量)を、0.5質量%の硫酸水溶液に一晩浸漬し、硫酸水溶液を篩(100メッシュ)で除去し、バッチ式蒸解釜(株式会社東洋高圧製)に供給した。電気炉で蒸解釜内温180℃まで加熱し、蒸解釜下部から1.85MPaの蒸気を導入するとともに、蒸解釜上部に設置されたフラッシュ弁からフルフラールを含む蒸気を集め、集めた蒸気を冷却してフルフラールを含む水溶液であるフラッシュ液を得た。
フラッシュ液を蒸留精製して、フルフラール組成物を得た。
11 原料供給口
12 懸濁液排出口
13 処理液回収口
14 ガス排出口
15 蒸気導入口
21 原料供給ライン
22 懸濁液排出ライン
23 処理液回収ライン
24 ガス排出ライン
25 蒸気導入ライン
31、32、33、34、35 弁
43 固液分離装置
50 加水分解塔内の気相部分
60 加水分解塔内の懸濁液相部分
Claims (5)
- バイオマスの水性懸濁液を加水分解塔に供給し、加圧・加熱条件下で加水分解処理して加水分解処理懸濁液を得ると共に、フルフラールを含む加水分解処理液を得る加水分解工程を含み、
前記加水分解工程では、前記加水分解塔内の懸濁液を固液分離して前記加水分解処理液を回収すると共に、前記加水分解塔内の温度と圧力を維持しながら、前記加水分解塔内の気相部分からガスを排出することを特徴とする、フルフラール組成物の製造方法。 - 前記加水分解塔における前記加水分解処理液の取出口を、前記バイオマスの水性懸濁液の供給口より下側であって、前記加水分解処理懸濁液の排出口の上側に設ける請求項1に記載のフルフラール組成物の製造方法。
- 前記加水分解工程において、更に加水分解塔に蒸気を導入する、請求項1又は2に記載のフルフラール組成物の製造方法。
- 前記加水分解工程において、更に加水分解塔内の気相部分に蒸気を導入する請求項3に記載のフルフラール組成物の製造方法。
- 更に前記加水分解工程により得られた前記加水分解処理液を単蒸留してフルフラールを含む蒸気を得、この蒸気を冷却してフルフラールを含有するフラッシュ液を得るフラッシュ液取得工程、及び
得られたフルフラールを含有するフラッシュ液を精製してフルフラール組成物を得る工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルフラール組成物の製造方法。
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