A.第1実施形態:
A−1.点火プラグ100の構成:
図1は、一実施形態としての点火プラグ100の概略図である。図中には、点火プラグ100の中心軸CL(「軸線CL」とも呼ぶ)が示されている。軸線CLの左側には、点火プラグ100の中心軸CLを含む平らな断面が示され、軸線CLの右側には、点火プラグ100の外観が示されている。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。軸線CLを中心とする円の径方向を「径方向」とも呼ぶ。径方向は、軸線CLに垂直な方向である。軸線CLを中心とする円の円周方向を、「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、図1における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から中心電極20に向かう方向である。また、図1における先端方向Df側を点火プラグ100の先端側と呼び、図1における後端方向Dfr側を点火プラグ100の後端側と呼ぶ。
点火プラグ100は、軸線CLに沿って延びる貫通孔12(軸孔12とも呼ぶ)を有する筒状の絶縁体10と、貫通孔12の先端側で保持される中心電極20と、貫通孔12の後端側で保持される端子金具40と、貫通孔12内で中心電極20と端子金具40との間に配置された抵抗体73と、中心電極20と抵抗体73とに接触してこれらの部材20、73を電気的に接続する導電性の第1シール部72と、抵抗体73と端子金具40とに接触してこれらの部材73、40を電気的に接続する導電性の第2シール部74と、絶縁体10の外周側に固定された筒状の主体金具50と、一方の端部33(基端部33とも呼ぶ)が主体金具50の先端面55に接合されるとともに他方の端部34(先端部34とも呼ぶ)が中心電極20とギャップgを介して対向するように配置された接地電極30と、を有している。本実施形態では、複数個(図1の例では、3個)の接地電極30が、周方向に沿っておおよそ等間隔で並ぶように、配置されている。そして、各接地電極30の先端部34は、中心電極20の径方向の外側の外周面と対向している。
絶縁体10の軸線方向の略中央には、外径が最も大きな大径部14が形成されている。大径部14より後端側には、後端側胴部13が形成されている。大径部14よりも先端側には、後端側胴部13よりも外径の小さな先端側胴部15が形成されている。先端側胴部15よりもさらに先端側には、縮外径部16と、脚部19とが、先端側に向かってこの順に形成されている。縮外径部16の外径は、前方向Dfに向かって、徐々に小さくなっている。縮外径部16の近傍(図1の例では、先端側胴部15)には、前方向Dfに向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部11が形成されている。絶縁体10は、機械的強度と、熱的強度と、電気的強度とを考慮して形成されることが好ましく、例えば、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。
中心電極20は、金属製の部材であり、絶縁体10の貫通孔12内の前方向Df側の端部に配置されている。本実施形態では、中心電極20は、点火プラグ100の軸線CLに沿って延びる棒状の部材である(すなわち、中心電極20の中心軸は、点火プラグ100の中心軸CLと同じである)。中心電極20は、中心軸CLに沿って延びる棒状の軸部300と、軸部300の後端部340に取り付けられる係止部400と、軸部300の先端部に取り付けられる環状のチップ500と、を有している。チップ500の外周面は、複数個の接地電極30のそれぞれの先端部34の内周側の面と対向して、放電用のギャップgを形成する。ギャップgでは、軸線CLにおおよそ垂直な方向の放電が、生じる。なお、チップ500は、軸部300と比べて放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、貴金属を含む合金、など)を用いて形成されている。軸部300と係止部400とは、耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケル、ニッケルを主成分として含む合金、など)で形成されている。なお、主成分は、含有率(重量パーセント(wt%))が最も高い成分を意味している。中心電極20のより詳しい構成については、後述する。
端子金具40は、軸線CLに平行に延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性材料を用いて形成されている(例えば、鉄を主成分として含む金属)。端子金具40は、前方向Dfに向かって順番で並ぶ、キャップ装着部49と、鍔部48と、軸部41と、を有している。軸部41は、絶縁体10の軸孔12の後方向Dfr側の部分に挿入されている。キャップ装着部49は、絶縁体10の後端側で、軸孔12の外に露出している。
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための抵抗体73が配置されている。抵抗体73は、導電性材料(例えば、ガラスと炭素粒子とセラミック粒子との混合物)を用いて形成されている。抵抗体73と中心電極20との間には、第1シール部72が配置され、抵抗体73と端子金具40との間には、第2シール部74が配置されている。これらのシール部72、74は、導電性材料(例えば、金属粒子と抵抗体73の材料に含まれるものと同じガラスとの混合物)を用いて形成されている。中心電極20は、第1シール部72、抵抗体73、第2シール部74によって、端子金具40に電気的に接続されている。
主体金具50は、軸線CLに沿って延びる貫通孔59を有する筒状の部材である。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入され、主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50は、導電材料(例えば、主成分である鉄を含む炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。絶縁体10の前方向Df側の一部は、貫通孔59の外に露出している。また、絶縁体10の後方向Dfr側の一部は、貫通孔59の外に露出している。
主体金具50は、工具係合部51と、先端側胴部52と、を有している。工具係合部51は、点火プラグ用のレンチ(図示せず)が嵌合する部分である。先端側胴部52は、主体金具50の先端面55を含む部分である。先端側胴部52の外周面には、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)の取付孔に螺合するためのネジ部57が形成されている。ネジ部57は、軸線CLの方向に延びる雄ねじが形成された部分であり、螺旋状のネジ山と螺旋状のネジ溝とを有している(図示省略)。
主体金具50の工具係合部51と先端側胴部52との間の外周面には、径方向外側に突き出たフランジ状の中胴部54が形成されている。先端側胴部52のネジ部57と中胴部54との間には、環状のガスケット90が配置されている。ガスケット90は、例えば金属の板状部材を折り曲げることによって形成されており、点火プラグ100がエンジンに取り付けられた際に押し潰されて変形する。このガスケット90の変形によって、点火プラグ100(具体的には、中胴部54の前方向Df側の面)と、エンジンと、の隙間が封止され、燃焼ガスの漏出が抑制される。なお、ガスケット90が省略されてもよい。この場合、中胴部54は、直接に、エンジンの点火プラグ100用の取付孔を形成する部分(例えば、エンジンヘッド)に接触してよい。
主体金具50の先端側胴部52には、先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部56が形成されている。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の縮外径部16と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。本実施形態では、先端側パッキン8は、例えば、鉄製の板状リングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
主体金具50の工具係合部51より後端側には、薄肉のカシメ部53が形成されている。また、中胴部54と工具係合部51との間には、薄肉の座屈部58が形成されている。主体金具50の工具係合部51からカシメ部53にかけての内周面と、絶縁体10の後端側胴部13の外周面との間には、円環状のリング部材61,62が挿入されている。さらにこれらのリング部材61,62の間には、タルク70の粉末が充填されている。点火プラグ100の製造工程において、カシメ部53が内側に折り曲げられて加締められると、座屈部58が圧縮力の付加に伴って外向きに変形(座屈)し、この結果、主体金具50と絶縁体10とが固定される。タルク70は、この加締め工程の際に圧縮され、主体金具50と絶縁体10との間の気密性が高められる。また、パッキン8は、絶縁体10の縮外径部16と主体金具50の縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。
接地電極30は、金属製の棒状の部材である。接地電極30の基端部33は、主体金具50の先端面55に接合されている(例えば、抵抗溶接)。接地電極30は、主体金具50に接合された基端部33から先端方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部34に至る。先端部34の内周側の面は、中心電極20のチップ500の外周面に対向して、ギャップgを形成する。接地電極30は、耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケル、ニッケルを主成分として含む合金、など)で形成されている。接地電極30の内部に、熱伝導性に優れる材料(例えば、純銅、銅を主成分として含む合金、等)で形成される芯部が設けられてもよい。
A−2.中心電極20の構成:
図2は、中心電極20の断面図である。この断面は、中心電極20の中心軸CLを含む断面である。軸部300は、環状のチップ500の貫通孔502内に配置される第1部分310と、第1部分310よりも先端方向Df側に配置される第2部分320と、第1部分310から後方向Dfrへ向かって延びる棒部330と、棒部330の後方向Dfr側に配置されて軸部300の後端を形成する後端部340と、を有している。これらの部分310、320、330、340のそれぞれの形状は、軸線CLを中心とする略円柱状である。
軸部300の第2部分320は、軸部300の前方向Df側の端を形成している。第2部分320の外径は、第1部分310の外径よりも、大きい。棒部330の外径は、第1部分310の外径と同じである。後端部340の外径は、棒部330の外径よりも小さい。後端部340の外周面342には、雄ネジが形成されている。図1に示すように、軸部300のうちの棒部330の途中から後方向Dfr側の部分は、絶縁体10の貫通孔12内に配置され、軸部300のうちの棒部330の途中から前方向Df側の部分は、絶縁体10の貫通孔12の前方向Df側に露出する。
係止部400(図2)は、軸線CLに沿って延びる貫通孔402を有する環状の部材である。係止部400の貫通孔402の内周面には、雌ネジが形成されている。軸部300の後端部340は、係止部400の貫通孔402に、ねじ込まれる。これにより、係止部400に軸部300が固定される。
係止部400のうちの前方向Df側の部分410の外径は、絶縁体10(図1)の貫通孔12のうちの棒部330が配置される部分の内径よりも大きい(大径部410とも呼ぶ)。大径部410の前方向Df側の部分412では、外径が前方向Dfに向かって徐々に小さくなる(縮外径部412とも呼ぶ)。係止部400の縮外径部412は、絶縁体10の縮内径部11によって、支持される。これにより、係止部400が絶縁体10の縮内径部11よりも前方向Df側へ移動することが抑制される。そして、係止部400に固定されている軸部300が、絶縁体10の軸孔12から前方向Df側へ抜けることが、抑制される。
チップ500は、軸線CLに沿って延びる貫通孔502を有する環状の部材である。チップ500は、軸部300の第1部分310の外周を囲む第1部分510と、軸部300の第2部分320の外周を囲む第2部分520と、で構成されている。このように、軸部300の第1部分310と第2部分320とは、チップ500の貫通孔502内に配置されている。
チップ500の第1部分510の内径は、軸部300の第1部分310の外径とおおよそ同じである。チップ500の第2部分520の内径は、軸部300の第2部分320の外径とおおよそ同じである。このように、チップ500の第1部分510の内径は、軸部300の第2部分320の外径よりも小さい。従って、チップ500の第1部分510は、軸部300の第2部分320よりも前方向Df側へ移動できない。この結果、チップ500が軸部300から外れることを抑制できる。なお、チップ500の第1部分510と第2部分520とのそれぞれの外径は、おおよそ同じである。そして、チップ500の外周面504(本実施形態では、第1部分510の外周面と第2部分520の外周面とを含む)は、接地電極30の先端部34に対向して、ギャップgを形成する。
また、チップ500は、溶融部359を介して、軸部300に接合されている。本実施形態では、チップ500の前方向Df側の面509と軸部300の前方向Df側の面309との境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359が形成され、チップ500と軸部300とが溶接される(レーザ溶接と呼ばれる)。図2の実施形態では、溶融部359は、チップ500の第2部分520の内周面と軸部300の第2部分320の外周面との境界部分に、形成されている。また、図示を省略するが、溶融部359は、周方向の全周に亘って、形成されている。
このように、チップ500は、溶融部359を介して、軸部300に接合されている。従って、チップ500が軸部300から外れることを、更に、抑制できる。また、軸部300に対するチップ500の位置ズレを抑制できる。また、溶融部359は、チップ500から軸部300へ、熱を伝達できる。従って、チップ500の温度が高くなることを抑制できる。また、上記の通り、チップ500の第1部分510の内径は、軸部300の第2部分320の外径よりも小さいので、仮に溶融部359にクラックが生じる場合であっても、チップ500が軸部300から外れることは、抑制される。
なお、溶融部359は、チップ500と軸部300との溶接時に溶融した部分である。このような溶融部359は、ビードとも呼ばれる。溶融部359は、チップ500と軸部300とを接合する接合部(または、溶接部)である、ということができる。溶融部359は、チップ500の成分と軸部300の成分とを含んでいる。換言すれば、溶融部359は、チップ500の成分と軸部300の成分との合金層である。また、溶融部359は、チップ500と軸部300とが一体化した部分である。
A−3.点火プラグ100の製造方法:
上記した点火プラグ100の製造方法としては、任意の方法を採用可能である。例えば、以下の製造方法を採用可能である。まず、絶縁体10と、端子金具40と、抵抗体73の材料粉末と、シール部72、74の材料粉末と、係止部400と、軸部300と、チップ500と、主体金具50と、直線状の接地電極30と、を含む点火プラグ100の部品を準備する。絶縁体10は、例えば、アルミナなどの材料粉末を所定の形状に成形し、成形された部材を焼成することによって、製造される。端子金具40、係止部400、軸部300、チップ500、直線状の接地電極30などの金属部材は、例えば、鍛造、切削などの方法によって、製造される。主体金具50のネジ部57の雄ネジと、軸部300の後端部340の外周面342の雄ネジとは、例えば、転造によって形成される。係止部400の貫通孔402の雌ネジは、例えば、タップを用いて形成される。
次に、軸部300に、チップ500を取り付ける。本実施形態では、チップ500は、軸部300の後端部340から、軸部300の部分310、320に、嵌め込まれる。そして、軸部300にチップ500が溶接される。
次に、軸部300を、絶縁体10(図1)の貫通孔12内の係止部400に、固定する。具体的には、絶縁体10の貫通孔12に、後方向Dfr側の開口から、係止部400を挿入し、係止部400を、縮内径部11上に載せ置く。係止部400は、縮内径部11に支持されることによって、貫通孔12内の所定位置に配置される。軸部300を、貫通孔12に、前方向Df側の開口から、挿入する。軸部300の後端部340を、係止部400の貫通孔402に挿入し、軸部300を、軸線CLを中心に係止部400に対して回転させることによって、軸部300の後端部340を係止部400の貫通孔402にねじ込む。これにより、係止部400に軸部300が固定される。ここで、係止部400に対する軸部300のねじ込み量を調整することによって、軸線CLに平行な方向の軸部300(ひいては、チップ500)の位置を、調整できる。
なお、係止部400に軸部300を固定する際には、工具を用いて係止部400を支持することによって、係止部400が軸部300と共に回転することを抑制することが好ましい。例えば、係止部400の後方向Dfr側の面に、溝が形成されてよい。そして、係止部400の溝に挿入するためのチップを有する棒状の工具(例えば、ねじ回し)を準備し、工具を、後方向Dfr側の開口から貫通孔12に挿入し、工具のチップを係止部400の溝に挿入することによって、係止部400の回転を止めてもよい。
次に、第1シール部72、抵抗体73、第2シール部74のそれぞれの材料粉末の投入と、投入された粉末材料の成形とが、部材72、73、74の順番に、行われる。粉末材料の投入は、貫通孔12の後方向Dfr側の開口から、行われる。投入された粉末材料の成形は、後方向Dfr側の開口から挿入した棒を用いて、行われる。材料粉末は、対応する部材の形状と略同じ形状に、成形される。
次に、絶縁体10を、各材料粉末に含まれるガラス成分の軟化点よりも高い所定温度まで加熱し、所定温度に加熱した状態で、貫通孔12の後方向Dfr側の開口から、端子金具40を貫通孔12に挿入する。この結果、各材料粉末が圧縮および焼結されて、シール部72、74と、抵抗体73と、のそれぞれが形成される。これにより、係止部400(ひいては、中心電極20)は、絶縁体10に固定される。
次に、絶縁体10の外周に主体金具50を組み付ける。そして、主体金具50に、複数の接地電極30を固定する(例えば、抵抗溶接)。次に、各接地電極30を曲げて、ギャップgを調整する。以上により、スパークプラグが製造される。なお、主体金具50を絶縁体10に組み付ける前に、主体金具50に接地電極30が接合されてもよい。
B.他の実施形態:
B−1:概要:
図3〜図7は、中心電極の別の実施形態を示す断面図である。各図には、中心電極の前方向Df側の一部分(具体的には、チップを含む一部分)の軸線CLを含む断面が示されている。これらの実施形態の中心電極は、図1、図2の中心電極20の代わりに、利用可能である。いずれの実施形態においても、中心電極の後方向Dfr側の部分の構成は、図2に示す実施形態の構成(すなわち、軸部300の後端部340と、係止部400)と、同じである。そして、中心電極(ひいては、点火プラグ)の製造方法としては、上記の実施形態の製造方法と同じ方法を採用可能である。以下、順に説明する。
B−2:第2実施形態:
図3(A)の第2実施形態と図2の実施形態との間の差異は、2点ある。第1の差異は、図3(A)のチップ500aから、軸部300の第2部分320の外周を囲む部分が省略されている点である。第2の差異は、溶融部359aが、チップ500aの前方向Df側の面509aと第2部分320の外周面328との境界部分に設けられている点である。中心電極20aの他の部分の構成は、図2の中心電極20の対応する部分の構成と同じである。
チップ500aは、軸部300の第2部分320の後方向Dfr側の面328上に、載っている。そして、チップ500aの全体が、第1部分310の外周を囲んでいる。チップ500aの内径は、第1部分310の外径とおおよそ同じであり、第2部分320の外径よりも小さい。従って、チップ500aが、軸部300から外れることを抑制できる。なお、軸線CLに平行な方向のチップ500aの厚さは、図2のチップ500の同じ方向の厚さと、同じである(すなわち、軸線CLに平行な方向の第1部分310(図3(A))の長さは、図2の第1部分310の同じ方向の長さよりも、長い)。
また、チップ500aは、溶融部359aを介して、軸部300に接合されている。従って、チップ500aの脱落と位置ズレと昇温とを抑制できる。なお、溶融部359aは、チップ500aの前方向Df側の面509aと、軸部300の第2部分320の外周面328と、の境界部分に、レーザLzを照射することによって、形成可能である。溶融部359aは、周方向の全周に亘って、形成されている。
B−3:第3実施形態:
図3(B)の第3実施形態と図2の実施形態との間の差異は、チップ500bの第1部分510bと軸部300bの第1部分310bの厚さ(ここでは、軸線CLに平行な方向の厚さ)が、チップ500bの第2部分520bと軸部300bの第2部分320bの同じ方向の厚さよりも、薄い点だけである。中心電極20bの他の部分の構成は、図2の中心電極20の対応する部分の構成と同じである。本実施形態においても、チップ500bの第1部分510bの内径は、軸部300bの第2部分320bの外径よりも、小さい。従って、チップ500bが、軸部300bから外れることを抑制できる。
また、チップ500bは、溶融部359bを介して、軸部300bに接合されている。従って、チップ500bの脱落と位置ズレと昇温とを抑制できる。なお、溶融部359bは、チップ500bの前方向Df側の面509bと、軸部300bの前方向Df側の面309と、の境界部分に、形成されている。溶融部359bは、境界部分にレーザLzを照射することによって、形成可能である。溶融部359bは、周方向の全周に亘って、形成されている。
B−4:第4実施形態:
図3(C)の第4実施形態と図2の実施形態との間の差異は、2点ある。第1の差異は、図3(C)のチップ500cの貫通孔502cの内周面の全体の形状が、前方向Dfに向けて内径が徐々に大きくなるテーパ状である点である。第2の差異は、軸部300cのうちのチップ500cの貫通孔502c内に配置される部分310c、320cの外周面の全体の形状が、前方向Dfに向けて外径が徐々に大きくなるテーパ状である点である。中心電極20cの他の部分の構成は、図2の中心電極20の対応する部分の構成と同じである。
本実施形態では、チップ500cの貫通孔502cの内周面の形状は、軸部300cの部分310c、320cの外周面の形状と、おおよそ同じである。従って、これらの内周面と外周面との間には、隙間はほとんど無い。そして、チップ500cのうちの後方向Dfr側の部分である第1部分510cは、軸部300cの第1部分310cの外周を囲み、
チップ500cのうちの前方向Df側の部分である第2部分520cは、軸部300cの第2部分320cの外周を囲んでいる。そして、チップ500cの第1部分510cの内径は、軸部300cの第2部分320cの外径よりも、小さい。従って、チップ500cが軸部300cから外れることを抑制できる。
また、チップ500cは、溶融部359cを介して、軸部300cに接合されている。従って、チップ500cの脱落と位置ズレと昇温とを抑制できる。なお、溶融部359cは、チップ500cの前方向Df側の面509cと、軸部300cの前方向Df側の面309cと、の境界部分に、形成されている。溶融部359cは、境界部分にレーザLzを照射することによって、形成可能である。溶融部359cは、周方向の全周に亘って、形成されている。
B−5:第5実施形態:
図4(A)の第5実施形態と、図3(A)の実施形態との間の差異は、3点ある。第1の差異は、図4(A)のチップ500dの貫通孔502dの内周面に、雌ネジが形成されている点である。第2の差異は、軸部300dの第1部分310dの外周面319dに、チップ500dの貫通孔502dの雌ネジにねじ込むための雄ネジが形成されている点である。第3の差異は、溶融部が省略されている点である。中心電極20dの他の部分の構成は、図3(A)の中心電極20aの対応する部分の構成と同じである。
本実施形態では、チップ500dの内径は、第2部分320の外径よりも小さい。従って、チップ500dが、軸部300dから外れることを抑制できる。さらに、チップ500dに設けられた雌ネジに、軸部300dの第1部分310dの雄ネジが、ねじ込まれている。従って、軸部300dに対するチップ500dの軸線CLに平行な方向の位置ズレを抑制できる。また、軸部300dに対するチップ500dの位置ズレを、抑制できる。
B−6:第6実施形態:
図4(B)の第6実施形態と、図3(A)の実施形態との間の差異は、2点ある。第1の差異は、軸部300eが、先端側の部分を形成する第1部材380eと、第1部材380eよりも後端側の部分を形成する第2部材390eと、で構成されている点である。第2の差異は、溶融部が省略されている点である。中心電極20eの他の部分の構成は、図3(A)の中心電極20aの対応する部分の構成と同じである。
第1部材380eは、図3(A)の第2部分320と同じ部分である板部分320eと、板部分320eから軸線CLに沿って後方向Dfrに向かって延びる棒部分324eと、で構成されている(以下、板部分320eを、第2部分320eとも呼ぶ)。棒部分324eの外周面326eには、雄ネジが形成されている。
第2部材390eは、棒部330と棒部330の前方向Df側に設けられた第1部分310eとを含んでいる。第1部分310eは、図3(A)の第1部分310のうちの外周面を形成する外周側の部分と同じである。第1部分310eの内周側には、後方向Dfrに向かって凹む凹部312eが形成されている。この凹部312eの内周面には、雌ネジが形成されている。この凹部312eに、第1部材380eの棒部分324eが、ねじ込まれる。
第1部材380eと第2部材390eとで構成される軸部300eの外観形状は、図3(A))の軸部300の外観形状と、同じである。チップ500dの内径は、第2部分320eの外径よりも小さい。従って、チップ500dが、軸部300eから外れることを抑制できる。また、本実施形態では、チップ500dの内径は、第1部分310eの外径と、おおよそ同じである。従って、チップ500dの内周面と第1部分310eの外周面との間の摩擦力によって、軸部300eに対するチップ500dの軸線CLに平行な方向の位置ズレを抑制できる。なお、チップ500eは、軸部300eの第1部分310eに、圧入されてもよい。
B−7:第7実施形態:
図5(A)の第7実施形態と、図2の実施形態との間の差異は、2点ある。第1の差異は、チップ500fの内周面の内径が、軸部300の外周面のうちの径方向に対向する部分の外径よりも大きい点である。第2の差異は、溶融部が省略されている点である。中心電極20fの他の部分の構成は、図2の中心電極20の対応する部分の構成と同じである。
チップ500fは、軸部300の第1部分310の外周を囲む第1部分510fと、第2部分320の外周を囲む第2部分520fと、で構成されている。チップ500fの第1部分510fの内径は、軸部300の第2部分320の外径よりも小さい。従って、チップ500fが軸部300から外れることを抑制できる。
また、チップ500fの第1部分510fの内径は、軸部300の第1部分310の外径よりも大きい。従って、第1部分510fの内周面と第1部分310の外周面との間には、隙間610fが形成される。また、チップ500fの第2部分520fの内径は、軸部300の第2部分320の外径よりも大きい。従って、第2部分520fの内周面と第2部分320の外周面との間には、隙間620fが形成される。このように、軸部300の外周面とチップ500fの内周面とのうち径方向に沿って互いに対向する部分が、隙間610f、620fを形成する。
内燃機関の運転によって、中心電極20fの温度は、上昇する。これにより、チップ500fと軸部300とは、それぞれ、膨張し得る。この際、軸部300(特に、チップ500fの貫通孔502f内に配置される部分310、320)とチップ500fとの間の線膨張率の差に起因して、軸部300とチップ500fとの間に応力が作用し得る。本実施形態では、チップ500fの内周面と軸部300の外周面との間に隙間610f、620fが形成されているので、そのような応力を緩和できる。従って、チップ500fと軸部300とのそれぞれの破損が抑制される。この結果、チップ500fが軸部300から外れることを抑制できる。
B−8:第8実施形態:
図5(B)の第8実施形態と、図3(A)の実施形態との差異は、2点ある。第1の差異は、チップ500gの内周面の内径が、軸部300の外周面のうちの径方向に対向する部分の外径よりも大きい点である。第2の差異は、溶融部が省略されている点である。中心電極20gの他の部分の構成は、図3(A)の中心電極20aの対応する部分の構成と同じである。
本実施形態では、チップ500gの全体が、軸部300の第1部分310の外周を囲んでいる。そして、チップ500gの内径は、軸部300の第2部分320の外径よりも小さい。従って、チップ500gが、軸部300から外れることを抑制できる。
また、チップ500gの内径は、軸部300の第1部分310の外径よりも大きい。従って、チップ500gの内周面と第1部分310の外周面との間には、隙間610gが形成される。このように、軸部300の外周面とチップ500gの内周面とのうち径方向に沿って互いに対向する部分が、隙間610gを形成する。従って、軸部300(特に、チップ500gの貫通孔502g内に配置される部分310)とチップ500gとの間で線膨張率が異なる場合であっても、線膨張率の差に起因する応力を緩和できる。従って、チップ500gと軸部300とのそれぞれの破損が抑制される。この結果、チップ500gが軸部300から外れることを抑制できる。
B−9:第9実施形態:
図5(C)の第9実施形態と、図5(B)の実施形態との間の差異は、2点ある。第1の差異は、軸部300hが、第1部分310から前方向Dfに向かって延びる延長部350を有している点である。延長部350の外径は、第1部分310の外径と同じである。延長部350には、軸線CLに垂直な貫通孔370が設けられている。貫通孔370は、第1部分310の前方向Df側に、配置されている。第2の差異は、軸部300hが、延長部350の貫通孔370に挿入された棒状の部材320hを有している点である(第2部分320hとも呼ぶ)。軸線CLに垂直な方向の第2部分320hの最大長(図5(C)上での左右方向の長さ)は、第1部分310の外径よりも大きい。中心電極20hの他の部分の構成は、図5(B)の中心電極20gの対応する部分の構成と同じである。
本実施形態では、軸部300hの第2部分320hは、第1部分310とは別の部材を用いて形成されている。この場合も、図5(B)の実施形態と同様に、チップ500gの内径は、軸線CLに垂直な方向の第2部分320hの最大長よりも小さので、チップ500gが軸部300hから外れることを抑制できる。また、チップ500gの内周面と第1部分310の外周面との間に隙間610gが形成されているので、チップ500gと軸部300h(特に、チップ500gの貫通孔502g内に配置される部分310)との間で線膨張率が異なる場合であっても、チップ500gと軸部300hとの破損を抑制できる。
なお、棒状の第2部分320hの太さは、貫通孔370の内径と比べて、おおよそ同じ、または、若干大きいことが好ましい。このような第2部分320hを、圧入によって、貫通孔370に挿入すれば、第2部分320hが延長部350から外れることを、抑制できる。これに代えて、第2部分320hを、溶接によって、延長部350に固定してもよい。この場合、第2部分320hの主成分(例えば、ニッケル)が、延長部350の主成分と同じであることが好ましい。この構成によれば、第2部分320hと延長部350とを接合する溶融部の強度低下を、抑制できる。従って、溶融部にクラックが生じることを、抑制できる。
B−10:第10実施形態:
図5(D)の第10実施形態と、図3(C)の実施形態との間の差異は、2点ある。第1の差異は、チップ500iのうちの前方向Df側の部分である第2部分520iの内周面の内径が、軸部300cの第2部分320cの外周面のうちの径方向に沿って対向する部分の外径よりも、大きい点である。第2の差異は、溶融部が省略されている点である。中心電極20iの他の部分の構成は、図3(C)の中心電極20cの対応する部分の構成と同じである。
本実施形態では、チップ500iの後方向Dfr側の部分である第1部分510cの内径は、軸部300cの第2部分320cの外径よりも、小さいので、チップ500iが軸部300cから外れることを抑制できる。また、本実施形態では、チップ500iの第1部分510cの内周面は、軸部300cの第1部分310の外周面に接触している。一方、チップ500iの第2部分520iの内周面と、軸部300cの第2部分320の外周面との間には、隙間610iが形成されている。従って、チップ500iと軸部300c(特に、チップ500iの貫通孔502i内に配置される部分310c、320c)との間で線膨張率が異なる場合であっても、チップ500gと軸部300との破損を抑制できる。
B−10:第11〜第14実施形態:
図6(A)〜図6(D)は、第11〜第14の実施形態の中心電極20j〜20mを、それぞれ示している。これらの中心電極20j〜20mは、図5(A)〜図5(D)の中心電極20f〜20iに、溶融部359j〜359mを追加したものである。
図6(A)の中心電極20jでは、チップ500fの前方向Df側の面509fと軸部300の前方向Df側の面309との境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359jが形成され、チップ500fと軸部300とが溶接される。チップ500fの第2部分520fと軸部300の第2部分320との間の隙間は、溶融部359jによって埋められている。
図6(B)の中心電極20kでは、チップ500gの前方向Df側の面509gと第2部分320の外周面328との境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359kが形成され、チップ500gと軸部300とが溶接される。
図6(C)の中心電極20lでは、チップ500gの前方向Df側の面509gと第2部分320hとの境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359lが形成され、チップ500gと第2部分320h(ひいては、軸部300h)とが溶接される。
図6(D)の中心電極20mでは、チップ500mの前方向Df側の面509mと軸部300cの前方向Df側の面309cとの境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359mが形成され、チップ500mと軸部300cとが溶接される。チップ500mの前方向Df側の部分である第2部分520mと軸部300の第2部分320cとの間の隙間は、溶融部359mによって埋められている。また、本実施形態では、チップ500mの後方向Dfr側の部分である第1部分510mの内周面と、軸部300cの第1部分310cの外周面との間には、隙間610mが形成されている。なお、チップ500mの第1部分510mの内径は、軸部300cの第2部分320cの外径よりも小さい。
以上説明した図6(A)〜図6(D)の実施形態は、図5(A)〜図5(D)の実施形態と同様の利点を実現できる。さらに、図6(A)〜図6(D)の実施形態では、チップ500f、500g、500mが、溶融部359j〜溶融部359mによって、軸部300、300h、300cに接合されている。従って、チップ500f、500g、500mの脱落と位置ズレと昇温とを抑制できる。
B−11:第15〜第18実施形態:
図7(A)〜図7(D)は、第15〜第18の実施形態の中心電極20n〜20qを、それぞれ示している。図7(A)の第15実施形態と、図4(B)の実施形態との間の差異は、軸部300nが、第3部分360nを有している点だけである。中心電極20nの他の部分の構成は、図4(B)の中心電極20eの対応する部分の構成と同じである。
第3部分360nは、チップ500eの後方向Dfr側に配置された部分である。第3部分360nは、軸線CLを中心とする円柱状の部分であり、第3部分360nの外径は、チップ500eの内径よりも大きい。第3部分360nの後方向Dfr側には、棒部330が接続されている。図示するように、チップ500eは、第2部分320eと第3部分360nとの間に挟まれている。従って、チップ500eが軸部300nから外れることを抑制できる。また、軸部300nに対するチップ500eの軸線CLに平行な方向の位置ズレを抑制できる。特に、本実施形態では、チップ500eの前方向Df側の部分は第2部分320eに接触し、チップ500eの後方向Dfr側の部分は、第3部分360nに接触している。従って、軸線CLに平行な方向のチップ500eの位置ズレを、適切に、抑制できる。
図7(B)の第16実施形態と、図7(A)の実施形態との間の差異は、チップ500oの内径が、軸部300nの第1部分310eの外径よりも大きい点だけである。中心電極20oの他の部分の構成は、図7(A)の中心電極20nの対応する部分の構成と同じである。本実施形態では、チップ500oの内径は、第2部分320eの外径と、第3部分360nの外径と、のいずれよりも小さい。従って、チップ500oが軸部300nから外れることを抑制できる。また、チップ500oの内周面と第1部分310eの外周面との間には、隙間610oが形成される。従って、チップ500oと軸部300n(特に、チップ500oの貫通孔502o内に配置される部分310e)との間で線膨張率が異なる場合であっても、チップ500oと軸部300nとの破損を抑制できる。
図7(C)の第17実施形態の中心電極20pは、図7(B)の中心電極20oに、溶融部359pを追加したものである。この中心電極20pでは、チップ500oの前方向Df側の面509oと第2部分320eの外周面328eとの境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359pが形成され、チップ500oと軸部300nとが溶接される。従って、チップ500oの脱落と位置ズレと昇温とを抑制できる。
図7(D)の第18実施形態の中心電極20qは、図7(A)の中心電極20nに、溶融部359pを追加したものである。この中心電極20qでは、チップ500eの前方向Df側の面509eと第2部分320eの外周面328eとの境界部分に、レーザLzを照射することによって、溶融部359pが形成され、チップ500eと軸部300nとが溶接される。従って、チップ500eの脱落と位置ズレと昇温とを抑制できる。
C.変形例:
(1)中心電極の構成は、上記実施形態の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、チップと軸部とが溶接されていない実施形態(例えば、図4(A)、図4(B)の実施形態)において、チップを軸部に溶接してもよい(すなわち、チップが溶融部を介して軸部に接合されてもよい)。いずれの場合も、溶融部の位置としては、任意の位置を採用可能である。例えば、チップの後方向Dfr側の面と軸部との境界部分に、溶融部が形成されてもよい。また、溶融部は、周方向の全周に代えて、周方向の一部の範囲のみに形成されてもよい。例えば、複数個の溶融部が、周方向に分散して配置されてもよい。
また、溶融部を介してチップが軸部に接合されている実施形態において、溶融部が省略されてもよい。この場合、チップの内周面と軸部の外周面とのうちの径方向に沿って互いに対向する部分のうちの少なくとも一部において、チップの内周面が軸部の外周面に接触した状態で、チップが軸部に支持されることが好ましい。この構成によれば、チップの内周面と軸部の外周面との摩擦によって、軸部に対するチップの位置ズレを抑制できる。
上記の各実施形態において、軸部の外周面とチップの内周面とのうちの径方向に沿って互いに対向する部分のうちの少なくとも一部分において、軸部の外周面とチップの内周面とが、互いに離れた隙間を形成してもよい。このような隙間は、図5(A)〜図5(D)の実施形態のように、周方向の全周に亘って形成されてよい。これに代えて、隙間が、周方向の一部の範囲のみに形成されてもよい。例えば、複数個の隙間が、周方向に分散して配置されてもよい。また、軸線CLに平行な方向の一部の範囲のみに、隙間が形成されてもよい。例えば、図5(A)の実施形態において、隙間610fが省略され、隙間620fが維持されてもよい(この場合、チップ500fの第1部分510fの内周面は、軸部300の第1部分310の外周面に、接触する)。逆に、隙間620fが省略されて、隙間610fが維持されてもよい(この場合、チップ500fの第2部分520fの内周面は、軸部300の第2部分320の外周面に、接触する)。また、図5(A)〜図5(D)、図6(A)〜図6(D)の実施形態において、隙間が省略されてもよい。
また、上記の各実施形態において、軸部の第2部分の構成としては、上記の構成に代えて、チップが前方向Dfに移動することを抑制可能な他の種々の構成を採用可能である。例えば、図5(C)、図6(C)の実施形態において、第2部分320hに代えて、図2の第2部分320の外周側の部分に相当する環状の部材を、延長部350に嵌め込むことによって、第2部分を形成してもよい。このような第2部分を形成する部材を、延長部350に固定する方法としては、溶接、圧入などの任意の方法を採用可能である。
図7(A)〜図7(D)の実施形態の第3部分360nは、上記の他の実施形態の軸部に設けられてもよい。また、第3部分の構成は、上記第3部分360nの構成に代えて、チップが後方向Dfrに移動することを抑制可能な他の種々の構成を採用可能である。例えば、第3部分は、図5(C)の第2部分320hのように、棒部330に設けられた貫通孔(例えば、軸線CLに垂直な貫通孔)に挿入される棒状の部材によって、形成されてもよい。ここで、第2部分と第3部分との少なくとも一方が、軸部のうちのチップの貫通孔内に配置される部分とは別の部材で構成されていることが好ましい。そして、チップを軸部に組み付けた後に、第2部分と第3部分との少なくとも一方を、軸部に固定することとしてよい。固定方法としては、図7(A)〜図7(D)の実施形態のようにネジを用いる方法に代えて、溶接や圧入などの、他の任意の方法を採用可能である。
なお、軸部を構成する2個の部材を溶接によって接合する場合、2個の部材の間で主成分が同じであることが好ましい。この構成によれば、2個の部材を接合する溶融部の強度低下が抑制されるので、溶融部にクラックが生じることを抑制できる。ただし、軸部を構成する複数の部材の間で、主成分が異なっていてもよい。
また、中心電極の軸部は、1つの部材で構成されてもよく、2以上の部材で構成されてもよい。また、中心電極の軸部の内部に、熱伝導性に優れる材料(例えば、純銅、銅を主成分として含む合金、等)で形成される芯部が設けられてもよい。また、軸線CLに垂直な断面におけるチップの貫通孔の形状は、円に代えて、他の任意の形状であってよい(例えば、矩形状、X形状、など)。同様に、軸線CLに垂直な断面における軸部の形状は、円に代えて、他の任意の形状であってよい(例えば、矩形状、X形状、など)。
いずれの場合も、中心電極の軸部とチップとは、以下の構成を有することが好ましい。すなわち、中心電極は、中心電極の軸線の方向に延びる軸部と、軸部の先端側の一部が配置される貫通孔を有するチップと、を含む。ここで、チップの貫通孔内に配置される軸部の先端側の一部は、軸部の先端を含む部分であってもよく、軸部の先端を含まずに軸部の先端よりも後端側の部分であってもよい。軸部のうち、軸部の先端を含むとともに軸線の方向の長さが軸部の軸線の方向の全長の半分である部分を、前半部分と呼ぶ場合に、軸部の先端側の一部は、前半部分の少なくとも一部であってよい。そして、軸部は、チップの貫通孔内に配置される第1部分と、第1部分よりも中心電極の先端側に配置される第2部分を含む。チップの貫通孔は、軸部の第1部分が配置されるとともに、軸線CLに垂直な方向の貫通孔の最大長(例えば、最大内径)が軸部の第2部分の軸線に垂直な方向の最大長(例えば、最大外径)よりも小さい小孔部分を含む。この構成によれば、チップの小孔部分が軸部の第2部分よりも前方向Df側に移動できないので、軸部からチップが外れることを抑制できる。なお、第1部分と第2部分とは、1つの部材によって形成された一体の部分であってよい。これに代えて、第2部分は、第1部分とは別の部材によって形成されてもよい。また、軸部の第2部分は、チップの貫通孔内に配置されてもよく、チップの貫通孔の外(具体的には、チップよりも前方向Df側)に配置されてもよい。また、チップの貫通孔の小孔部分における軸線CLに垂直な方向の貫通孔の最大長は、小孔部分において軸線CLに垂直な任意の方向に沿って内径を測定する場合の最大値である。同様に、軸部の第2部分の軸線CLに垂直な方向の最大長は、軸線CLに垂直な任意の方向に沿って長さを測定する場合の最大値である。なお、通常は、軸部の第1部分の軸線CLに垂直な方向の最大長は、軸部の第2部分の軸線CLに垂直な方向の最大長よりも、小さい。
また、チップの位置ズレを抑制するために、軸部に、チップの貫通孔の小孔部分よりも後端側に配置される第3部分を設ける場合、軸線に垂直な方向の第3部分の最大長(例えば、最大外径)は、チップの貫通孔の小孔部分における軸線CLに垂直な方向の貫通孔の最大長(例えば、最大内径)よりも大きいことが好ましい。第3部分の構成としては、このような最大長を有する任意の構成を採用可能である。なお、チップが軸部の第2部分に接触した状態で、第3部分は、チップに接触していてもよく、チップから離れていてもよい。
(2)中心電極の係止部と軸部(例えば、図2の係止部400と軸部300)を接続する方法は、上記の方法に代えて、他の任意の方法を採用可能である。例えば、係止部の後方向Dfr側の面に、凹凸を設ける。このような係止部を絶縁体10の貫通孔12内の縮内径部11上に配置し、第1シール部72、抵抗体73、第2シール部74のそれぞれの粉末材料を、順番に、貫通孔12内に投入する。係止部の凹凸の部分は、第1シール部72の材料粉末で、埋められる。この状態で、絶縁体10を加熱し、端子金具40を貫通孔12に挿入して、シール部72、74と、抵抗体73とを、焼成する。これにより、係止部400は、第1シール部72によって、絶縁体10に固定されるので、係止部の回転は抑制される。この状態で、中心電極の軸部を、前方向Df側の開口から貫通孔12内に挿入し、軸部を係止部に接続する。
また、中心電極の後方向Dfr側の部分の構成は、図2に示す構成(具体的には、係止部400と軸部の後端部340)に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、係止部に、雄ネジが形成され、軸部に、係止部の雄ネジがねじ込まれる雌ネジが形成されてもよい。また、係止部と軸部との接続部分は、絶縁体10の縮内径部11よりも前方向Df側に配置されてもよい。一般的には、絶縁体10の貫通孔12に、前方向Df側の開口から挿入される軸部を、絶縁体10に固定することが可能な任意の構成を採用可能である。
(3)中心電極のチップの材料は、貴金属を含む材料に代えて、他の種々の材料であってよい。例えば、貴金属を含まずに、タングステンを含む材料を用いてもよい。なお、白金とイリジウムとは、酸化しにくいので、白金とイリジウムとの少なくとも一方を含む材料を用いることによって、チップの耐酸化性を向上できる。
(4)点火プラグの構成は、図1に示す構成に変えて、他の種々の構成であってよい。例えば、接地電極30の総数は、1でもよく、2でもよく、4以上であってもよい。また、接地電極の構成としては、中心電極のチップと対向して放電用のギャップを形成する部分を含む任意の構成を採用可能である。例えば、接地電極は、中心電極のチップの外周面を囲む環状の部分を含んでもよい。また、抵抗体73が省略されてもよい。また、絶縁体10の貫通孔12内の中心電極と端子金具40との間に、磁性体が配置されてもよい。また、中心電極の中心軸が、点火プラグの中心軸と異なっていてもよい。この場合、上記の中心電極の説明において、軸線CLを、中心電極の軸線に読み替えればよい。いずれの場合も、中心電極のうち、絶縁体の貫通孔内に配置される部分から貫通孔から露出する部分へ向かう方向を、先端方向Dfとして採用可能である。また、接地電極が省略されてもよい。この場合、点火プラグは、点火プラグの他の部材(例えば、主体金具)と、内燃機関の部材(例えば、エンジンヘッド)と、の少なくとも一方と、中心電極と、の間で、放電を生じさせてよい。一般的には、点火プラグの構成としては、中心電極と、中心電極を先端側で保持する絶縁体と、絶縁体を保持する筒状の主体金具と、を備える種々の構成を採用可能である。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。