[車両の排気系統]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るエンジンの排気消音装置を詳細に説明する。先ずは、前記排気消音装置が搭載される車両の排気系統について、図1を参照して概略的に説明する。なお、図1及び他の図面において、前後、左右、上下の方向表示を付している。これらの方向は、車両を基準としている。つまり、以下の説明中において用いている前後、左右、上下の方向は、図1に示している前後方向(車両前後方向)、左右方向(車幅方向)、及び、図1の紙面に垂直な方向である上下方向と一致させている。また、上流、下流というときは、排気のフロー方向を基準としている。
車両は、例えば四輪自動車であり、エンジン1と、当該エンジン1の排気系統を構成する排気装置10とを含む。エンジン1は、例えば直列4気筒のターボ過給機付きガソリンエンジンであり、車室前方のエンジン室に横置き、つまり、車幅方向に気筒が並ぶように設置されている。排気装置10は、このエンジン1に繋がっており、車両下面に沿って後方に向けて延びている。
排気装置10は、排気マニホールド11、ターボ過給機12、排気管路13、第1触媒装置14、第2触媒装置15、プリ消音装置16及びメイン消音装置2(排気消音装置)を備えている。排気マニホールド11は、エンジン1の各シリンダヘッドの排気ポートに接続される分岐端を上流側に、これら排気ポートから排出される排気を一つの流路に集合させる集合端を下流側に有する排気通路を内部に備える。ターボ過給機12は、排気マニホールド11の前記集合端に接続され、エンジン1から排出される排気のエネルギーを利用して、エンジン1の吸気を過給する。
排気管路13は、排気の通路となる管路であり、ターボ過給機12の下流端に接続され、後方に延びている。排気管路13には、上流側から順に、第1触媒装置14、第2触媒装置15及びプリ消音装置16が組み込まれており、末端にはメイン消音装置2が接続されている。第1、第2触媒装置14、15は、エンジン1から排出される排気中の有害成分を浄化するもので、例えば排気中のNOxを一時的に吸蔵し後に還元するNOx吸蔵還元触媒を含む触媒本体と、この触媒本体を収容するケーシングとから構成されている。
プリ消音装置16及びメイン消音装置2は、エンジン1の排気系統において排気騒音を低減させるために組み込まれている。これら消音装置16、2のうち、上流側に配置されるプリ消音装置16は、排気騒音のうち、主に高周波成分を低減する機能を有している。プリ消音装置16は、例えば吸音型の消音装置を採用することができ、排気が通る多孔質の内筒管と、これを覆う外筒管と、内筒管と外筒管との間に充填されたガラスウール等の吸音材とを備える。一方、メイン消音装置2は、排気騒音のうち、主に低中周波成分を低減する機能を有している。以下、このメイン消音装置2の構造について詳細に説明する。
[メイン消音装置の全体構造]
図2は、メイン消音装置2の上面図(後記のアッパープレート20Aを取り外した状態)、図3は、図2のIII−III線断面図、図4は、図2のIV−IV線断面図である。メイン消音装置2は、車両後端のリアフロア下に配置され、消音器本体20、排気導入管3(排気管)、第1排気導出管4A及び第2排気導出管4B(排気管)を含む。
消音器本体20は、エンジン1の排気が導入される消音空間S(膨張室)を形成するハウジングである。消音器本体20は、前後方向に比較的短く、左右方向に比較的長い形状、すなわち車幅方向に長手で、上下方向に偏平な、全体として丸味を帯びた直方体状の形状を有している。これにより、消音器本体20内の消音空間Sも、車幅方向に長手で偏平な空間となっている。
消音器本体20は、消音空間Sを区画する壁として、車両の前後方向に並ぶ前壁21及び後壁22と、左右方向(車幅方向)に並ぶ右壁23及び左壁24と、上下方向(車高方向)に並ぶ上壁25及び下壁26とを備えている。前壁21は、左右方向に直線的に延びる壁である。後壁22は、上面視で後方に向けて緩やかな凸形状となるように湾曲して、左右方向に延びる壁である。右壁23及び左壁24は、前後方向へ直線的に延びる短尺の壁であり、前壁21と後壁22とを、それぞれ右端側、左端側で繋いでいる。図3及び図4に示すように、左右方向の断面視において、左壁24は略半円形に湾曲した形状を備えている(右壁23も同様)。上壁25は、前壁21、後壁22、右壁23及び左壁24からなる側壁で囲まれる空間の上面を封止する壁、下壁26は、前記側壁の下面を封止する壁である。
消音器本体20は、上下方向に分割された半割れハウジングである、アッパープレート20Aとボトムプレート20Bとの接合体からなる。アッパープレート20Aは、上側に膨出したキャビティを有する半割れハウジングであり、その下縁の外周に上フランジ部201を有する。ボトムプレート20Bは、下側に膨出したキャビティを有する半割れハウジングであり、その上縁の外周に下フランジ部202を有する。
アッパープレート20Aは、上壁25と前記側壁の概ね上半分とを形成し、ボトムプレート20Bは、下壁26と前記側壁の概ね下半分とを形成する。上フランジ部201と下フランジ部202とが上下に重ね合わされ、接合されることで、アッパープレート20Aとボトムプレート20Bとが一体化され、消音空間Sを有する消音器本体20が形成されている。アッパープレート20Aの上壁25及びボトムプレート20Bの下壁26は、前後方向に延びる複数のビード203を備えている。ビード203は、消音空間Sに向けて凸となる溝形状部であり、消音器本体20の剛性を高める等の目的で設けられている。
排気導入管3、第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bは、消音空間S内において排気が通過する排気経路を構成する排気管である。つまり、消音空間Sという閉じた空間内において、排気を所望の経路に沿って流すために配置される管である。排気導入管3と、第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bとは、互いに分離された管である。排気導入管3は、排気を消音空間Sへ吹き出す排気出口Aを有する。一方、第1、第2排気導出管4A、4Bは各々、消音空間S内の排気を取り入れる第1排気入口B1、第2排気入口B2を有する。排気出口Aから吐出された排気は、消音空間Sに入って膨張し、その後、第1、第2排気入口B1、B2に取り入れられ、それぞれ第1、第2出口開口C1、C2から外部へ放出される。
排気導入管3は、消音空間Sへエンジン1の排気を導入する直線的な中空円管である。排気導入管3の上流側には、中継管31が差し込まれている。中継管31の上流端は、排気管路13の下流端に接続されている。排気導入管3の下流端は、上述の排気出口Aである。排気出口Aは、後壁22と対向している。
排気導入管3は、左右方向の中央付近において前壁21を貫通し、排気出口Aが後壁22に近づくように消音空間S内に配置されている。すなわち、図2に示されているように排気導入管3は、排気出口Aが消音器本体20の前後方向中央よりもさらに後壁22に近い位置に配置されるよう、前壁21側から消音空間Sに向けて差し込まれている。本実施形態では、排気出口Aと後壁22との間に後述の整流板6が配置されている。整流板6を使用しない他の実施形態では、排気出口Aをより後壁22に近づけるようにしても良い。
排気導入管3は、ボトムプレート20Bの前壁21の左右方向中央に設けられた管受け用の凹部で支持されている。また、排気導入管3の排気出口A付近が、支持板32にて支持されている。支持板32は、排気導入管3を貫通させて支持する支持孔を備える板金部材である。支持板32の上端側は上壁25に、下端側は下壁26に、それぞれ固着されている。なお、排気導入管3は、排気出口Aがやや上を向くように、後ろ上がりに消音器本体20へ取り付けられている。これは、消音空間S内で凝縮した排気中の水分(凝縮水)などが下壁26上に滞留することがあり、その滞留水が排気出口Aを通して排気導入管3へ逆流しないようにするためである。
第1排気導出管4A及び第2排気導出管4Bは、消音空間から前記排気を外部へ放出するための管である。第1、第2排気導出管4A、4Bは同じ構成要素を備え、排気導入管3の左右に対称に、消音空間S内に配置されている。第1、第2排気導出管4A、4Bは各々、第1直線管41(接続管)、第2直線管42(接続管)及び湾曲管43を備えている。湾曲管43は、U字状に湾曲した管である。第1直線管41と第2直線管42とは、湾曲管43の両端部から左右方向へ平行に各々延び出している。図5に、湾曲管43の単体の斜視図を示している。
第1、第2排気導出管4A、4Bの排気フローにおいて、第1直線管41は、第2直線管42よりも上流側に配置される排気管である。第1直線管41は、直線的に延びる前壁21に隣接するように配置されている。すなわち、第1直線管41の前側の側部と前壁21との前後方向の間隔は、狭小である。一方、第2直線管42は、前壁21から離間し、且つ後壁22からも離間した、消音空間Sの前後方向の略中央位置に配置されている。第1直線管41と第2直線管42との上下方向の高さ位置は、略同一である。湾曲管43は、このような第1、第2直線管41、42同士を接続している。
図3には、第2排気導出管4Bの第1直線管41の左右方向の断面が示されている。第1直線管41は、左右方向に直線状に延びる断面円形の管であり、上流端411と下流端412とを備えている。上流端411は、上述の第2排気入口B2(第1排気導出管4Aの第1直線管41の場合は第1排気入口B1)となる開口を備える管端部である。上流端411には、第2排気入口B2に排気をスムースに取り入れるために、ベルマウス状に内径を拡径させる加工が施されている。下流端412は、湾曲管43の上流端431に差し込まれる管端部である。
上述の通り、排気出口Aは後壁22の近傍位置(本実施形態では、後壁22に実質的に相当する整流板6の近傍位置)に配置されているのに対し、第1、第2排気入口B1、B2は、第1直線管41が前壁21に隣接することから、前壁21の近傍位置に配置されている。さらに、排気出口Aは左右方向の中央位置に配置されているのに対し、第1、第2排気入口B1、B2は、前壁21の右端側、左端側に各々配置されている。詳しくは、第1排気入口B1が前壁21付近の右壁23と対向し、第2排気入口B2が前壁21付近の左壁24と対向し、それぞれ右壁23、左壁24と近接する位置に配置されている。このように、排気出口Aと第1、第2排気入口B1、B2とを遠ざけることで、排気導入管3の排気騒音が第1、第2排気導出管4A、4Bに伝わり難い構造とされている。
第2直線管42は、左右方向に直線状に延びる断面円形の管であって、第1直線管41よりも左右幅が長い管である。第2直線管42の上流端は、湾曲管43の下流端432に差し込まれている。第1排気導出管4Aの第2直線管42の下流端は、右壁23を貫通している。この貫通した下流端には、第1テール管44Aが接続されている。また、第2排気導出管4Bの第2直線管42の下流端は、左壁24を貫通している。この貫通した下流端には、第2テール管44Bが接続されている。第1テール管44Aの下流端は第1出口開口C1であり、第2テール管44Bの下流端は第2出口開口C2である。排気は、これら第1、第2出口開口C1、C2から外部へ放出される。
図5を参照して、湾曲管43は、断面略円形であってU字型に湾曲した排気経路を作る管である。既述の通り、湾曲管43は、第1直線管41が接続される上流端431と、第2直線管42が接続される下流端432とを備える。湾曲管43は、上下方向に分割された半割れ管である第1半割れ管43Aと第2半割れ管43Bとの接合体からなる。第1半割れ管43Aと第2半割れ管43Bとは、外周フランジ部433と内周フランジ部434とによって互いに接合されている。外周フランジ部433は、U字型に湾曲した湾曲管43の外側湾曲部L1から外方へ延び出している。一方、内周フランジ部434は、湾曲管43の内側湾曲部L2で区画されるU字空間を埋めるように、内側湾曲部L2から内方へ延び出している。
第1半割れ管43Aは、上側に膨出した断面半円形であって下面視でU字型のキャビティを有し、外周フランジ部433の上側を形成する上フランジ部433A(第1フランジ部)を外周側に、内周フランジ部434の上側を形成する上フランジ部434Aを内周側に、それぞれ有している。第2半割れ管43Bは、下側に膨出した断面半円形であって上面視でU字型のキャビティを有し、外周フランジ部433の下側を形成する下フランジ部433B(第1フランジ部)を外周側に、内周フランジ部434の下側を形成する下フランジ部434Bを内周側に、それぞれ有している。上フランジ部433Aと下フランジ部433B、及び、上フランジ部434Aと下フランジ部434Bが各々上下に重ね合わされ、接合されることで、湾曲管43が形成される。
図2及び図3に示すように、湾曲管43はセットプレート27により消音器本体20で支持されている。セットプレート27は、上下方向に延びる平板部材であり、上端側に上フランジ部271、下端側に下フランジ部272、中央に2つのバーリング部273を有している。各バーリング部273には、湾曲管43の上流端431(下流端432)が密に挿通されている。上フランジ部271は上壁25に接合され、下フランジ部272は下壁26に接合されている。上壁25には溶接孔204(図4)が設けられ、栓溶接によって上フランジ部271が上壁25に固着されている。下フランジ部272はスポット溶接により下壁26に固着されている。
メイン消音装置2は、第1直線管41に適用される第1消音部51と、第2直線管42に適用される第2消音部52と、湾曲管43に適用される湾曲消音部53とを備える。これら消音部51〜53は、各々の管壁に穿孔された多数の小孔と、これらの小孔を有する管壁部分の外周を覆う吸音材と、当該吸音材の周囲を覆う吸音材カバーとからなる。第1、第2排気導出管4A、4Bを通過する排気に気流音(排気騒音)が発生した場合、当該気流音は小孔を通して管外に逃がされ、前記吸音材で吸音される。
第1消音部51は、第1直線管41の管軸方向の所定領域において、その周方向の一部をカバーするように取り付けられている。具体的には第1消音部51は、第1直線管41の全周のうち、第2直線管42と実質的に対向する管壁部分(後側の側部)にだけ設けられている。つまり、前記対向する管壁部分に多数の小孔413(図8)が穿孔され、当該小孔を有する管壁部分の外周に前記吸音材が配置され、この吸音材を覆うように前記吸音材カバーが第1直線管41の外周面に取り付けられている。このような部分配置とするのは、上述の通り、第1直線管41の前側の側部と前壁21との前後方向の間隔が狭小であり、吸音材及び吸音材カバーを配置するスペースが確保できないためである。
第2消音部52は、第2直線管42の管軸方向の所定領域において、その全周をカバーするように取り付けられている。具体的には第2消音部52は、前記所定領域において、第2直線管42の管壁の全周に亘って前記多数の小孔が穿孔され、当該小孔を有する管壁の全周を覆うように前記吸音材が配置され、この吸音材を覆うことが可能な筒状の吸音材カバーが第2直線管42の外周面に取り付けられている。なお、剛性を高めるため、第1消音部51及び第2消音部52の吸音材カバー同士が、連結部材54によって連結されている。
湾曲消音部53は、図3及び図4に示すように、第1半割れ管43A及び第2半割れ管43Bの膨出頂部付近に穿孔された多数の小孔43Hと、この小孔43Hを有する第1、第2半割れ管43A、43Bの外周面を各々覆う吸音材7と、これら吸音材7を各々覆う上カバー53A、下カバー53B(吸音材カバー)とを備えている。吸音材7は、例えばガラスウールである。この湾曲消音部53については、後記で詳述する。
整流板6は、排気出口Aと対向する位置に配置され、排気出口Aから後壁22へ向かう排気を左右方向(車幅方向の両側)に向かうよう案内するガイド面を備えている。整流板6は、排気出口Aの左右方向中央部に対向する先端部を備え、前記ガイド面は前記先端部から左右後方に延びている。排気出口Aから吹き出された排気は、前記先端部で分流され、左右のガイド面及び後壁22に沿って左右に向かう。左右に分流された排気は、右壁23、左壁24に各々吹き当たり、後壁22と右壁23及び左壁24との角部がラウンド形状とされていることも相俟って、右壁23、左壁24に沿って前方に向かう。その後、排気は、第1、第2排気入口B1、B2に進入し、第1、第2排気導出管4A、4Bを通過するものである。
整流板6は、消音器本体20の上壁25と下壁26とで支持されている。すなわち、整流板6の上端側にはフランジ部61が備えられ、フランジ部61が上壁25と栓溶接によって固着されている。一方、整流板6の下端側は、取り付け板28を介して下壁26に取り付けられている。取り付け板28は、ビード203を跨いで左右方向に延び、整流板6の座面を提供している。整流板6の下端側のフランジ部が取り付け板28にスポット溶接により固着され、さらに取り付け板28が下壁26にスポット溶接により固着されている。
[湾曲管及び湾曲消音部の詳細]
以下、湾曲管43及び湾曲消音部53について詳述する。図5に基づいて上述した通り、湾曲管43は第1半割れ管43Aと第2半割れ管43Bとが、外周フランジ部433と内周フランジ部434とによって互いに接合されてなる。図6は、図5の一点鎖線で囲んだ要部VIの拡大斜視図である。図7は、吸音材カバーが取り付けられた状態の湾曲管43の斜視図である。図7では、本実施形態では、吸音材カバーとしての上カバー53Aが、第1半割れ管43Aに装着されている状態を主に示している。図8は、図7に示す湾曲管43に、さらに第1直線管41及び第2直線管42が取り付けられた状態の斜視図である。第1消音部51が装着された第1直線管41は、湾曲管43の上流端431(端部)に、第2消音部52が装着された第2直線管42は、湾曲管43の下流端432(端部)に、それぞれの一端が接続されている。図9は、図8に示す湾曲管43に、さらにセットプレート27が取り付けられた状態の斜視図である。
図5を参照して、湾曲管43は、上流端431及び下流端432に、それぞれ非フランジ部435を備えている。非フランジ部435は、湾曲管43において外周フランジ部433及び内周フランジ部434が存在しない円筒形状の部分である。図6に示すように、外周フランジ部433を構成する上フランジ部433A及び下フランジ部433Bは、それぞれ第1半割れ管43A、第2半割れ管43Bの外側湾曲部L1に沿った折り曲げ加工部分である。外周フランジ部433のフランジ端縁433Eは、上流端431(下流端432)よりも所定長さだけ管内へ入り込んだ位置にある。フランジ端縁433Eから上流端431までの突出部分が非フランジ部435である。
外周フランジ部433が存在しないことから、非フランジ部435には、上フランジ部433A及び下フランジ部433Bの肉厚分及びこれらの曲げ代に相当する開口幅のスリットSLが存在している。すなわち、非フランジ部435における第1、第2半割れ管43A、43Bの突き合わせ面においては、第1半割れ管43Aの上対向面435Aと、第2半割れ管43Bの下対向面435Bとが、前記開口幅を置いて対向している。内周フランジ部434側にも、同様なスリットSLが存在している。
図3に示されているように、この非フランジ部435に第1直線管41の下流端412が差し込まれている。図示は省いているが、第2直線管42の上流端も、下流端432側の非フランジ部435に差し込まれている。さらに、非フランジ部435は、セットプレート27のバーリング部273(支持開口部)が設けられた開口に挿通されている。つまり、バーリング部273は、第1、第2直線管41、42の一端が差し込まれた非フランジ部435を支持している。このように、非フランジ部435を形成することによって、湾曲管43の簡易な支持構造、すなわち、単純な丸孔のバーリング部273を備えたセットプレート27にて湾曲管43を支持させる構造を実現できると共に、第1、第2直線管41、42もまたセットプレート27にて支持させることができる。
ここで、第1直線管41の下流端412は、湾曲管43に対して、非フランジ部435を越え、外周フランジ部433に到達する位置まで差し込まれている。図6には、第1直線管41の下流端412の下流端412の位置を一点鎖線で示している。下流端412は、湾曲管43の上流端431から、外周フランジ部433のフランジ端縁433Eよりも奥側まで差し込まれている。第2直線管42の上流端も同様に、外周フランジ部433に到達する位置まで差し込まれている。
非フランジ部435において第1、第2半割れ管43A、43B同士の対向部には、上述の通りスリットSLができてしまう。このスリットSLから排気が漏れると、気流音が発生し得る。しかし、第1、第2直線管41、42の一端を外周フランジ部433に到達する位置まで差し込ませることで、スリットSLからの漏気通路は塞がれる。このため、前記気流音の発生を防止することができる。
続いて、図3、図4及び図7を主に参照して、湾曲消音部53について詳述する。湾曲消音部53は、第1、第2半割れ管43A、43Bの外周面にそれぞれ添設された吸音材7と、これら吸音材7を覆う上カバー53A、下カバー53Bとを含む。吸音材7は、湾曲管43の非フランジ部435を除いた部分において、第1、第2半割れ管43A、43Bの膨出部の外周面の概ね全域に沿うように配置されている。前記膨出部の頂部付近に穿孔された小孔43Hは、完全に吸音材7にて覆われている。上カバー53Aは、第1半割れ管43Aの外周の吸音材7を覆い、下カバー53Bは、第2半割れ管43Bの外周の吸音材7を覆っている。
上カバー53A及び下カバー53Bは、カバー本体部531、部分フランジ532(第2フランジ部)、線接合部533、上流端534及び下流端535を含む、略U字型の半割れ状の部材である。カバー本体部531は、吸音材7を実際に覆う部分であり、第1、第2半割れ管43A、43Bの膨出部の外周面に対して、吸音材7の収容空間を介して対向している。上カバー53A及び下カバー53Bは、U字状に湾曲した湾曲管43の外側湾曲部L1に沿う外周部L3と、内側湾曲部L2に沿う内周部L4とを備える。
部分フランジ532は、各々外周部L3に沿って外方へ延出され、湾曲管43の上フランジ部433A、下フランジ部433Bと上下方向に重なり合うと共に接合される部分である。線接合部533は、各々内周部L4の近傍に位置し、第1、第2半割れ管43A、43Bの外周面に接合される部分である。上流端534は、湾曲管43の上流端431付近において、下流端535は、湾曲管43の下流端432付近において、それぞれ第1、第2半割れ管43A、43Bの膨出部の外周面に接する湾曲部分である。
部分フランジ532は、外周部L3の全長に亘って略均一な延び出し長さ(U字カーブの湾曲中心から径方向外側への延び出し長さ)を有しているのではなく、突出部532Aと退行部532Bとを備えている。突出部532Aの延び出し長さは、上、下フランジ部433A、433Bと略同じである。一方、退行部532Bの延び出し長さは、上、下フランジ部433A、433Bの半分乃至は1/5程度である。部分フランジ532は、このような突出部532Aと退行部532Bとが、外周部L3に沿って交互に形成されてなる形状を有する。
一方、上、下フランジ部433A、433B(外周フランジ部433)には、退行部532Bのような、意図的に延び出し長さを短くした部分は存在していない。従って、図7に示すように、上カバー53Aの部分フランジ532と第1半割れ管43Aの上フランジ部433Aとが上下方向に重ね合わせられると、両者は完全には重ならず、退行部532Bにおいて上フランジ部433Aが露呈する。下カバー53Bの部分フランジ532と第2半割れ管43Bの下フランジ部433Bとの関係も同様である。
湾曲管43の上フランジ部433Aと下フランジ部433Bとは、2枚重ねのスポット溶接にて接合される。また、上カバー53Aの部分フランジ532と第1半割れ管43Aの上フランジ部433A、及び、下カバー53Bの部分フランジ532と第2半割れ管43Bの下フランジ部433Bも、2枚重ねのスポット溶接にて接合される。つまり、外周フランジ部433においては、上、下フランジ部433A、433B及び上下2枚の部分フランジ532が4枚重なり合うものの、2枚重ねのスポット溶接で各々の接合がなされている。
すなわち、上、下フランジ部433A、433Bと各部分フランジ532とは、突出部532Aと上、下フランジ部433A、433Bとが各々重なる位置(第2位置)において、スポット溶接で接合されている。一方、上、下フランジ部433A、433Bは、退行部532Bの形成によって、上、下フランジ部433A、433Bが露呈している部分(第1位置)において、スポット溶接で接合されている。
これに対し、上、下カバー53A、53Bの内周部L4の側においては、外周部L3の側のようなフランジ接合の形態は採られていない。すなわち、内周部L4からはフランジ部が延出されておらず、当該内周部L4の縁部が線溶接により上、下カバー53A、53Bの各外周面に接合される線接合部533(図4)とされている。これは、U字型に湾曲した内周側においてあえてフランジ部を設けると、上、下カバー53A、53Bの成形性が悪くなることによる。
図10は、湾曲管43と上カバー53A(下カバー53B)との接合態様の一例を説明するための上面図である。外周フランジ部433、すなわち上フランジ部433Aと下フランジ部433Bの重ね合わせ部は、外周部L3の周方向に沿って所定ピッチで並ぶ複数の位置(第1位置)に形成される第1スポット溶接部SP1にて接合されている。一方、上フランジ部433Aと部分フランジ532とは、外周部L3の周方向の第1スポット溶接部SP1の形成位置とは異なる複数の位置(第2位置)に形成される第2スポット溶接部SP2にて接合されている。下フランジ部433Bと部分フランジ532とも同様である。
詳しくは、部分フランジ532の突出部532Aは、外周フランジ部433における第1スポット溶接部SP1のピッチ間に延び出すように形成されている。換言すると、部分フランジ532は、第1スポット溶接部SP1の形成位置を除く位置において上フランジ部433Aと重なり合う形状を有している。この突出部532Aにおいて、上フランジ部433A(外周フランジ部)と部分フランジ532とが第2スポット溶接部SP2により接合されている。これにより、第1スポット溶接部SP1と第2スポット溶接部SP2とが、外周部L3の周方向に略均等に配置されている。
内周フランジ部434(上フランジ部434A及び下フランジ部434B)の所定位置にも、第1スポット溶接部SP1が配置されている。上カバー53Aの線接合部533は、内周フランジ部434から管の軸心方向へ離間した位置において、第1半割れ管43Aの外周面に線溶接されている。
続いて、第1、第2排気導出管4A、4Bの組立手順の一例を説明する。予め第1半割れ管43Aに、吸音材7を挟み込んだ状態で、上カバー53Aを取り付ける。取り付け箇所は、外周部L3側については突出部532Aにおける第2スポット溶接部SP2、内周部L4側においては線接合部533である。第2半割れ管43Bにも、同様にして予め吸音材7及び下カバー53Bを取り付ける。そして、一対の半割れ管43A、43Bを、外周フランジ部433及び内周フランジ部434において、第1スポット溶接部SP1により接合する。これにより、図7に示す湾曲管43及び上、下カバー53A、53Bの組立体が作成される。
次に、湾曲管43の上流端431及び下流端432に備えられている非フランジ部435に、セットプレート27のバーリング部273が嵌め込まれる。その後、予め第1消音部51が組み付けられた第1直線管41が上流端431に、予め第2消音部52が組み付けられた第2直線管42が下流端432に差し込まれる。既述の通り、この差し込みは、非フランジ部435のスリットSLを埋める深さの差し込みである。これにより、図9に示す組立体が作成される。その後、連結部材54にて、第1消音部51と第2消音部52とを連結した上で、当該組立体が消音器本体20に組み付けられる。
[作用効果等]
以上説明したメイン消音装置2によれば、次のような作用効果を奏する。湾曲管43が、上フランジ部433A、434Aを有する第1半割れ管43Aと、下フランジ部433B、434Bを有する第2半割れ管43Bとの接合体によって形成されるので、消音器本体20のコンパクト化の要請に応えて小さい曲げ半径にも対応できる。第1半割れ管43Aと第2半割れ管43Bとは、外側湾曲部L1側において上フランジ部433Aと下フランジ部433B(外周フランジ部433)、内側湾曲部L2側において上フランジ部434Aと下フランジ部434B(内周フランジ部434)が、それぞれ第1スポット溶接部SP1にて所定の位置で接合される。
一方、吸音材カバーとしての上、下カバー53A、53Bは、外周部L3側に部分フランジ532を有する。第1半割れ管43Aと上カバー53Aとは、上フランジ部433Aと部分フランジ532の突出部532Aとの重ね合わせ部分において、第2スポット溶接部SP2により接合される。部分フランジ532は、第1スポット溶接部SP1の形成位置においては退行部532Bを有し、上フランジ部433Aとは重なり合わない。第2半割れ管43Bと下カバー53Bについても同様である。従って、半割れ管43A、43B同士の接合部(第1スポット溶接部SP1)、及び、半割れ管43A、43Bと上、下カバー53A、53Bとの接合部(第2スポット溶接部SP2)の双方共、2枚重ね打ちのスポット溶接とすることができる。このため、溶接不良や半割れ管の歪みの発生を防止することができる。
上、下カバー53A、53Bは、U字状に湾曲した湾曲管43の外側湾曲部L1に沿う外周部L3と、内側湾曲部L2に沿う内周部L4とを備え、部分フランジ532は外周部L3に沿って延出され、内周部L4には、湾曲管43の外周面に対する線接合部533が備えられている。すなわち、外周部L3側については、部分フランジ532を用いた上述のフランジ接合とされる一方、内周部L4側については、フランジ部ではなく、線溶接が行われる線接合部533によって湾曲管43の外周面に固定されている。
コンパクト化の要請の下、湾曲管43の曲げ半径を小さくせねばならない場合、これに合わせて上、下カバー53A、53Bの内周部L4側にフランジ部を形成しようとすると、成型性が悪くなる。例えば、絞り成型などで上、下カバー53A、53Bを成型する場合、曲げ半径が小さい内周部L4側にフランジ部を形成する加工は難しい。一方、内周部L4側の端縁の長さは、外周部L3側に比べて短いので、線溶接を採用しても第1、第2半割れ管43A、43Bへの歪みの発生は抑制できる。このため、内周部L4側については線接合部533とすることで、上、下カバー53A、53Bの形状をシンプルにし、作業性を良好なものとすることができる。
部分フランジ532は、外周フランジ部433における第1スポット溶接部SP1のピッチ間に延び出す突出部532Aを有する。このため、半割れ管43A、43B同士の接合部、及び、半割れ管43A、43Bと上、下カバー53A、53Bとの各々接合部を、外側湾曲部L1の周方向にバランス良く配置することができる。
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、第1、第2半割れ管43A、43Bの双方に、吸音材7及びその吸音材カバー(上、下カバー53A、53B)が取り付けられる例を示した。吸音材7及びその吸音材カバーは、第1半割れ管43A又は第2半割れ管43Bの少なくとも一方に添設されていれば良い。
(2)上記実施形態では、排気管の一例として、排気導入管3と、その左右両側に第1、第2排気導出管4A、4Bがシンメトリーに配置され、第1、第2排気導出管4A、4Bの各々の一部を湾曲管43が構成する例を示した。これは一例であり、排気導出管が1本の形態としても良い。また、U字状に湾曲した湾曲管が排気導入管3の一部を構成する態様としても良い。さらに、本実施形態では、排気経路を180°転換させる湾曲管43を例示したが、U字状に湾曲していればよく180°より若干緩い湾曲、或いは180°を若干超過する湾曲であっても良い。
(3)上、下カバー53A、53Bの部分フランジ532(第2フランジ部)は、上、下フランジ部433A、433B(第1フランジ部)と第2スポット溶接部SP2の形成が可能な程度に重なり合う突出部532Aを有すると共に、上、下フランジ部433A、433B同士の第1スポット溶接部SP1が可能な程度に両者を露出させる退行部532Bを有している限りにおいて、その形状は自由である。また、湾曲管43の湾曲径が比較的大きい場合は、内周部L4側にも部分フランジを設けるようにしても良い。