JP6756315B2 - イオン源 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマ生成容器内にカスプ磁場を形成するバケット型(多極磁場型又はマルチカスプ型とも言う。)のイオン源に関するものである。
バケット型のイオン源としては、特許文献1に示すように、イオン源ガスが導入される直方体形状をなすプラズマ生成容器と、プラズマ生成容器の内部にカスプ磁場を形成する複数の磁石と、プラズマ生成容器の内部に挿入された複数のフィラメントとを備え、フィラメントから放出させた電子によりプラズマを生成して、その一部をプラズマ生成容器の長手方向に沿って形成されたイオン引出し口からイオンビームとして引き出すように構成されたものがある。
このイオン源は、上述した複数のフィラメントから放出された電子がプラズマ生成容器の長手方向に沿ってExBドリフト(以下、単にドリフトという)するように構成されており、具体的にはプラズマ生成容器の長手方向に沿って下方から上方まで設けられた複数のフィラメントが、等間隔に且つ長手方向中央に対して対称的に配置されている。
しかしながら、このような構成であると、電子がプラズマ生成容器の長手方向に沿ってドリフトするので、プラズマ生成容器内におけるドリフト方向側では電子が行き詰ってプラズマ密度が濃くなり、ドリフト方向と逆側ではプラズマ密度が薄くなる。その結果、プラズマ密度が濃いドリフト方向側に配置されたフィラメントは、プラズマ密度が薄いドリフト方向と逆側に配置されたフィラメントよりもダメージが大きく寿命が短くなってしまう。
さらに、特許文献1に示すイオン源は、プラズマ生成容器から引出電極により引き出されるイオンビームの引出領域が、プラズマ生成容器に形成されたイオン引出し口よりも長手方向において短くなるように構成されている。
このことから、上述したフィラメント配置であると、例えば電子が長手方向に沿って下方から上方にドリフトする場合、最もドリフト方向側、すなわち最も上方に位置するフィラメントから放出された電子は、その位置からさらに上方にドリフトするので、その電子が引出領域よりもさらに上方にドリフトしていると、その電子により生成されたプラズマは、引出領域から引き出されるイオンビームにあまり寄与していないことになる。また、電子が長手方向に沿って上方から下方にドリフトする場合は、最もドリフト方向側である最も下方に位置するフィラメントから放出された電子により生成されたプラズマが、イオン引出領域から引き出されるイオンビームにあまり寄与しないことになる。
特開2011−228044号公報
そこで本発明は、ドリフト方向側に位置するフィラメントの長寿命化を図るとともに、そのフィラメントが放出した電子により生成されたプラズマから効率良くイオンビームを引き出せるようにすることをその主たる課題とするものである。
本発明に係るイオン源は、長尺状のプラズマ生成容器と、前記プラズマ生成容器の内部にカスプ磁場を形成する複数の磁石と、前記プラズマ生成容器の長手方向に沿って列状に設けられるとともに、前記プラズマ生成容器の内部に挿入された複数の第1フィラメントとを具備し、前記第1フィラメントから放出された電子が、前記長手方向の一方側から他方側に向かってExBドリフトするように構成されており、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第1フィラメントまでの距離よりも、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も他方側に位置する第1フィラメントまでの距離の方が短いことを特徴とするものである。
このようなイオン源であれば、プラズマ生成容器の長手方向中央から長手方向の最も一方側に位置する第1フィラメントまでの距離よりも、当該長手方向中央から長手方向の最も他方側に位置する第1フィラメントまでの距離の方が短いので、最もドリフト方向側に位置する第1フィラメントが従来よりも長手方向中央に近づく。
これにより、第1フィラメントから放出される電子のExBドリフトによる行き詰まりが緩和されるので、プラズマ生成容器内におけるドリフト方向側のプラズマ密度が濃くなることを抑えることができ、ドリフト方向側に位置するフィラメントの長寿命化を図れる。
さらに、第1フィラメントから放出された電子が例えば長手方向に沿って下方から上方にExBドリフトする場合、最もドリフト方向側に位置する第1フィラメントを従来よりも長手方向中央に近づけているので、この第1フィラメントから放出された電子をイオン引出領域よりも上方にドリフトする前にイオン源ガスと反応させてプラズマを生成させることができ、このプラズマからイオンビームを効率良く引き出すことができる。
前記第1フィラメントと平行に設けられるとともに、前記プラズマ生成容器の内部に挿入された複数の第2フィラメントをさらに具備し、前記第2フィラメントから放出された電子が、前記長手方向の他方側から一方側に向かってExBドリフトするように構成されており、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も他方側に位置する第2フィラメントまでの距離よりも、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第2フィラメントまでの距離の方が短いことが好ましい。
このような構成であれば、第2フィラメントから放出された電子のExBドリフト方向が、第1フィラメントから放出された電子のExBドリフト方向と逆向きになるので、プラズマ生成容器内において、第2フィラメントから放出された電子により生成されるプラズマの密度が濃い領域が、第1フィラメントから放出された電子により生成されるプラズマの密度が薄い領域と重なり、第2フィラメントから放出された電子により生成されるプラズマの密度が薄い領域が、第1フィラメントから放出された電子により生成されるプラズマの密度が濃い領域と重なる。これにより、長手方向に沿ったプラズマ密度をより均一化することができる。
そのうえ、プラズマ生成容器の長手方向中央から長手方向の最も他方側に位置する第2フィラメントまでの距離よりも、当該長手方向中央から長手方向の最も一方側に位置する第2フィラメントまでの距離の方が短いので、上述した最もドリフト方向側の第1フィラメントと同様、最もドリフト方向と逆側に位置する第2フィラメントの長寿命化を図るととともに、その第2フィラメントが放出した電子により生成されたプラズマから効率良くイオンビームを引き出すことができる。
プラズマ生成容器内における長手方向全体にプラズマを生成させるためには、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第1フィラメントまでの距離よりも、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第2フィラメントまでの距離の方が短いことが好ましい。
具体的な実施態様としては、前記第1フィラメント及び前記第2フィラメントが、前記長手方向に沿って非等間隔に配置されている構成が挙げられる。
プラズマ密度のさらなる均一化を図るためには、前記第1フィラメント及び前記第2フィラメントが、互いに点対照な配置であることが好ましい。
前記プラズマ生成容器が、略直方体形状をなし、長手方向に沿った第1の側壁にイオンの引出し口が形成されたものであり、前記複数の磁石が、前記第1の側壁に垂直な前記長手方向に沿った第2の側壁及び前記第1の側壁に対向する第3の側壁それぞれの中央に前記長手方向に沿って配置されており、前記第1のフィラメントが、前記第2の側壁及び前記第3の側壁により形成される角部から前記プラズマ生成容器の内部に挿入されており、その先端が、前記プラズマ生成容器の横断面において、前記第2の側壁中央に配置された磁石と前記第3の側壁中央に配置された磁石とを結ぶ仮想線よりも前記プラズマ生成容器の内側に位置していることが好ましい。
このような構成であれば、第1フィラメントを、第2の側壁中央に配置された磁石と第3の側壁中央に配置された磁石とを結ぶ仮想線よりもプラズマ生成容器の内側に挿入しているので、プラズマ生成容器のより中心に近い位置でプラズマを生成することができ、プラズマをプラズマ生成容器内の全体に亘って生成することができる。
このように構成した本発明によれば、ドリフト方向側に位置するフィラメントの長寿命化を図るとともに、そのフィラメントが放出した電子により生成されたプラズマから効率良くイオンビームを引き出すことができる。
本実施形態のイオン源の構成を示す模式図。 同実施形態のプラズマ生成容器の横断面図。 同実施形態のプラズマ生成容器内におけるカスプ磁場分布を示す図。 同実施形態のフィラメントの配置を示すプラズマ生成容器の背面図。 同実施形態のフィラメントの配置を示すプラズマ生成容器の正面図。
本発明に係るイオン源の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態のイオン源100は、例えばイオン注入装置やイオンドーピング装置等のイオンビーム照射装置に用いられるものであり、図1に示すように、プラズマ生成容器10と、プラズマ生成容器10からイオンビームを引き出す複数の電極からなる引出し電極系20と、プラズマ生成容器10の内部にカスプ磁場を形成する複数の磁石30と、プラズマ生成容器10の内部に電子を放出する複数のフィラメント40とを具備したものである。
プラズマ生成容器10は、イオン源ガスが導入されて内部でプラズマを生成するための容器であって、図1及び図2に示すように、例えば略直方体形状などの長尺状をなすものである。このプラズマ生成容器10は、長手方向に沿った第1の側壁10a(以下、前側壁10aという)に長手方向に沿って延びるイオン引出し口10Hが形成されている。
引出し電極系20は、プラズマから電界の作用でイオンビームを加速して引き出すものであり、図1に示すように、プラズマ生成容器10のイオン引出し口10H近傍に設けられている。引出し電極系20を構成する複数の電極21〜24は、長手方向に沿って複数の孔やスリットが形成されており、これらの孔やスリットが形成されている領域がイオンビームを引き出す引出領域Xとなる。本実施形態の引出し電極系20は、イオンビームの上流側から下流側に向けて配置された加速電極21、引出電極22、抑制電極23、及び接地電極24からなるが、例えば引出電極22、抑制電極23、及び接地電極24から構成されていても良いし、2枚の電極や5枚以上の電極から構成されていても構わない。
複数の磁石30は、図1及び図2に示すように、プラズマ生成容器10の内部を取り囲むように設けられている。具体的には、プラズマ生成容器10のイオン引出し口10Hが形成された前側壁10a以外の側壁、すなわち前側壁10aと垂直な一対の長手方向に沿った第2の側壁(以下、左側壁10b、右側壁10cという)、前側壁10aと対向する第3の側壁(以下、後側壁10dという)、及び長手方向に対向する一対の第4の側壁(以下、上側壁10e、下側壁10fという)それぞれに設けられている。
本実施形態の磁石30は、側壁それぞれに取り付けられた概略矩形平板状の支持板31により支持された永久磁石であるが、電磁石を用いても構わない。
磁石30の配置についてより詳細に説明すると、本実施形態では少なくとも左側壁10b、右側壁10c、及び後側壁10dそれぞれの中央に磁石30が配置されている。これらの磁石30は、左側壁10b及び右側壁10cの中央に位置する磁石30のプラズマ生成容器10内側の極性(図2ではS)と、後側壁10dの中央に位置する磁石30のプラズマ生成容器10内側の極性(図2ではN)とが互いに異なるように、プラズマ生成容器10の長手方向に沿って列状に配置されている。
さらに本実施形態では、左側壁10b及び右側壁10cにおいて、複数の磁石30がイオン引出し方向に沿って極性が互いに異なるように略等間隔に配列されており、後側壁10dにおいて、複数の磁石30がイオン引出し方向と直交し且つプラズマ生成容器10の長手方向と直交する方向に沿って極性が互いに異なるように略等間隔に配列されている。なお、磁石30の配置態様は、例えば図2に示した磁石30それぞれの磁極を逆にしたり、各側壁10b、10c、10dに配列した磁石30の個数や間隔を変更したりするなど適宜変更可能である。
このように配列した複数の磁石30により形成されるカスプ磁場Bは図3に示すようになる。このカスプ磁場Bは、左側壁10b、右側壁10c、及び後側壁10dのそれぞれに3列の磁石30が配置された態様を示しているが、各側壁に配置する磁石30の列数は適宜変更して構わない。
複数のフィラメント40は、プラズマ生成容器10内に放出した電子によってイオン源ガスを電離させてプラズマを生成するためのものであり、図2に示すように、プラズマ生成容器10の隣接する側壁間に形成された角部10Kからプラズマ生成容器10の内部に挿入して設けられている。
より具体的には、複数の角部10Kに複数のフィラメント40が設けられており、本実施形態ではイオン引出し口10Hの長手方向及びイオン引出し方向からなる平面に対して対称位置にある角部10K(後側壁10dの長辺に形成された角部10K)に設けられている。
以下、各角部10Kに設けられたフィラメント40を区別する場合、左側壁10b及び後側壁10dの間に形成された角部10Kに設けられたフィラメント40を第1フィラメント40Aといい、右側壁10c及び後側壁10dの間に形成された角部10Kに設けられたフィラメント40を第2フィラメント40Bという。
各フィラメント40は、フィラメント支持機構50により支持されており、当該フィラメント支持機構50にフィラメント40を加熱するためのフィラメント電源が接続される。フィラメント支持機構50は、フィラメント40を支持するフィラメントホルダ51と、1又は複数のフィラメントホルダ51が取り付けられたベース部材52とを有し、プラズマ生成容器10の角部10Kの所定位置に形成された開口を塞ぐようにベース部材52を角部10Kに固定することで、フィラメント40がプラズマ生成容器10内に配置される。
このように配置された各フィラメント40は、図2に示すように、角部10Kを形成する隣接する各側壁(右側壁10cと後側壁10d、左側壁10bと後側壁10d)に対して略45度の傾斜角度を有するように固定されている。
さらに本実施形態では、第1フィラメント40Aの先端は、プラズマ生成容器10の横断面において、左側壁10bに配置された磁石30と後側壁10dに配置された磁石30とを結ぶ仮想線Z1よりもプラズマ生成容器10の内側に位置している。また、第2フィラメント40Bの先端も同様に、右側壁10cに配置された磁石30と後側壁10dに配置された磁石30とを結ぶ仮想線Z2よりもプラズマ生成容器10の内側に位置している。このように、各フィラメント40の先端をプラズマ生成容器10の中心付近に位置させることにより、プラズマ生成容器10のより中心に近い位置でプラズマを生成することができ、プラズマ生成容器10内の全体に亘ってプラズマを生成することが可能となる。
各フィラメント40とプラズマ生成容器10との間には、後者を正極側にして、直流のアーク電源が接続される。これにより、プラズマ生成容器10の内部では図2に示す電場Eが生じ、各フィラメント40から放出された電子は、この電場Eと上述したカスプ磁場Bとに直交する方向にExBドリフト(以下、単にドリフトという)することになる。本実施形態では、第1フィラメント40Aにより生じる電場Eの向きと、第2フィラメント40Bより生じる電場Eの向きとが直交しているので、第1フィラメント40Aから放出された電子のドリフト方向と第2フィラメント40Bから放出された電子のドリフト方向とが逆向きになる。本実施形態では、第1フィラメント40Aから放出された電子が、プラズマ生成容器10の長手方向の下方から上方に向かってドリフトするとともに、第2フィラメント40Bから放出された電子が、前記長手方向の上方から下方に向かってドリフトする。
第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bは、図4に示すように、角部10Kに沿って(プラズマ生成容器10の長手方向に沿って)複数設けられており、ここでは互いに平行な列状に配置されている。
また、第1フィラメント40Aと第2フィラメント40Bとが互いに接触しないようにすべく、図5に示すように、第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bを角部10Kに沿った方向において互いに異なる位置に設けてある。なお、ここでいう「角部10Kに沿った方向において互いに異なる位置」とは、左右方向(長手方向に直交する方向)から視て、第1フィラメント40Aと第2フィラメント40Bとが重なり合わない位置である。すなわち、第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bは、第1フィラメント40Aの中心線と第2フィラメント40Bの中心線とが一直線状にならないように配置されている。なお、ここでいう中心線は、フィラメント40の中心を通る仮想的な線であり、ここではフィラメント40の先端を通る線である。
さらに、本実施形態では、第1フィラメント40Aの中心線と第2フィラメント40Bの中心線とが長手方向において交互となるように、第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bを長手方向に沿って千鳥状に配置している。
然して、本実施形態では図5に示すように、プラズマ生成容器10の長手方向中央から長手方向の最も下方に位置する第1フィラメント40Aまでの距離L1aよりも、プラズマ生成容器10の長手方向中央から長手方向の最も上方に位置する第1フィラメント40Aまでの距離L1bの方が短くなるようにしてある。
言い換えると、プラズマ生成容器10の長手方向と直交する中央仮想線Oから最も下方に位置する第1フィラメント40Aの中心線C1aまでの離間距離L1aよりも、当該中央仮想線Oから最も上方に位置する第1フィラメント40Aの中心線C1bまでの離間距離L1bの方が短くなっている。
さらに言い換えると、最も下方に位置する第1フィラメント40Aは、第1フィラメント40Aから放出された電子の最もドリフト方向と逆側に位置する第1フィラメント40Aであり、最も上方に位置する第1フィラメント40Aは、第1フィラメント40Aから放出された電子の最もドリフト方向側に位置する第1フィラメント40Aである。
本実施形態では、中央仮想線Oよりも下方に位置する第1フィラメント40Aの個数(ここでは3個)よりも、中央仮想線Oよりも上方に位置する第1フィラメント40Aの個数(ここでは、2個)の方が少なくなるようにしてある。より具体的には、最も上方に位置するベース部材52に取り付けたフィラメントホルダ51の個数(ここでは、1つ)を、最も下方に位置するベース部材52に取り付けたフィラメントホルダ51の個数(ここでは、2つ)よりも少なくしている。
これにより、第1フィラメント40Aは、全体として下方に偏って配置されている。すなわち、本実施形態の第1フィラメント40Aは、中央仮想線Oの上方よりも下方において密に配置されている。
また、第1フィラメント40Aは、長手方向に沿って非等間隔に配置されており、ここでは互いに隣り合う第1フィラメント40Aの離間距離の全てが互いに異なる距離となるように配置されている。なお、必ずしも全ての離間距離を異なる距離にする必要はなく、一部の離間距離を同じ距離にしても良い。
第2フィラメント40Bは、プラズマ生成容器10の長手方向中央から長手方向の最も上方に位置する第2フィラメント40Bまでの距離L2aよりも、プラズマ生成容器10の長手方向中央から長手方向の最も下方に位置する第2フィラメント40Bまでの距離L2bの方が短くなるように配置されている。
言い換えれば、中央仮想線Oから最も上方に位置する第2フィラメント40Bの中心線C2aまでの離間距離L2aよりも、中央仮想線Oから最も下方に位置する第2フィラメント40Bの中心線C2bまでの離間距離L2bの方が短くなっている。
さらに言い換えると、最も上方に位置する第2フィラメント40Bは、第2フィラメント40Bから放出された電子の最もドリフト方向と逆側に位置する第2フィラメント40Bであり、最も下方に位置する第2フィラメント40Bは、第2フィラメント40Bから放出された電子の最もドリフト方向側に位置する第2フィラメント40Bである。
本実施形態では、第2フィラメント40Bの配置を第1フィラメント40Aの配置と点対称(上下逆さま)にしてあり、第2フィラメント40Bは、全体として上方に偏って配置されて中央仮想線Oの下方よりも上方において密であり、第1フィラメント40Aと同様に、長手方向に沿って非等間隔に配置されている。
さらに、上述した点対称な配置により、中央仮想線Oから最も下方に位置する第1フィラメント40Aの中心線C1aまでの離間距離L1aよりも、中央仮想線Oから最も下方に位置する第2フィラメント40Bの中心線C2bまでの離間距離L2bの方が短くなるようにしてある。また、中央仮想線Oから最も上方に位置する第2フィラメント40Bの中心線C2aまでの離間距離L2aよりも、中央仮想線Oから最も上方に位置する第1フィラメント40Aの中心線C1bまでの離間距離L1bの方が短くなるようにしてある。
このように構成された本実施形態のイオン源100であれば、プラズマ生成容器10の中央仮想線Oから最もドリフト方向と逆側に位置する第1フィラメント40Aの中心線C1a及び第2フィラメント40Bの中心線C2aまでの距離L1a、L2aよりも、中央仮想線Oから最もドリフト方向側に位置する第1フィラメント40Aの中心線C1b及び第2フィラメント40Bの中心線C2bまでの距離L1b、L2bを短くしているので、最もドリフト方向側に位置する第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bは、従来よりも長手方向中央に近づく。
これにより、ドリフト方向側の第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bから放出される電子のドリフトによる行き詰まりが緩和されるので、プラズマ生成容器10内におけるドリフト方向側のプラズマ密度が濃くなることを抑えることができ、ドリフト方向側に位置する第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bの長寿命化を図れる。
さらに、最もドリフト方向側に位置する第1フィラメント40Aを長手方向中央に近づけているので、この第1フィラメント40Aから放出された電子を引出領域Xよりも上方にドリフトする前にイオン源ガスと反応させてプラズマを生成させることができ、このプラズマからイオンビームIBを効率良く引き出すことができる。
第2フィラメント40Bに関しても同様であり、最もドリフト方向側に位置する第2フィラメント40Bを長手方向中央に近づけているので、この第2フィラメント40Bから放出された電子を引出領域Xよりも下方にドリフトする前にイオン源ガスと反応させてプラズマを生成できるようになり、このプラズマからイオンビームIBを効率良く引き出すことができる。
加えて、第1フィラメント40Aから放出された電子のドリフト方向と第2フィラメント40Bから放出された電子のドリフト方向とが逆向きなので、プラズマ生成容器10内において、第2フィラメント40Bから放出された電子のドリフト方向側の領域と、第1フィラメント40Aから放出された電子のドリフト方向と逆側の領域とが重なる。これにより、第2フィラメント40Bから放出された電子により生成されるプラズマの密度が濃い領域が、第1フィラメント40Aから放出された電子により生成されるプラズマの密度が薄い領域と重なり、長手方向に沿ったプラズマ密度をより均一化することができる。
さらに加えて、中央仮想線Oから最も下方に位置する第1フィラメント40Aまでの離間距離L1aよりも、中央仮想線Oから最も下方に位置する第2フィラメント40Bまでの離間距離L2bの方が短く、中央仮想線Oから最も上方に位置する第2フィラメント40Bまでの離間距離L2aよりも、中央仮想線Oから最も上方に位置する第1フィラメント40Aまでの離間距離L1bの方が短いので、プラズマ生成容器10内における長手方向の全体にプラズマを生成させることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、第1フィラメント40Aから放出された電子が長手方向に沿って下方から上方にドリフトし、第2フィラメント40Bから放出された電子が長手方向に沿って上方から下方にドリフトするように構成されていたが、各フィラメント40A、Bから放出された電子のドリフト方向が前記実施形態とは逆向きになるように構成しても良い。
具体的には、例えばS極の磁石30及びN極の磁石30の配置を前記実施形態とは逆にするなどして、第1フィラメント40Aから放出された電子が長手方向に沿って上方から下方にドリフトし、第2フィラメント40Bから放出された電子が長手方向に沿って下方から上方にドリフトするように構成されていても良い。
また、前記実施形態では、第1フィラメント40A及び第2フィラメント40Bが、互いに点対称な配置であったが、第1フィラメント40Aの配置とは独立して、第2フィラメント40Bを配置しても良い。
さらに、フィラメント40を設ける角部は前記実施形態に限られず、イオン引き出し口が形成された前側壁10aの長辺に形成される角部に設けても良いし、前側壁10aの長辺に形成される角部及び後側壁10dの長辺に形成される角部それぞれにフィラメント40を設けても良い。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
100・・・イオン源
10 ・・・プラズマ生成容器
20 ・・・引出し電極系
30 ・・・磁石
10K・・・角部
40A・・・第1フィラメント
40B・・・第2フィラメント

Claims (6)

  1. 長尺状のプラズマ生成容器と、
    前記プラズマ生成容器の内部にカスプ磁場を形成する複数の磁石と、
    前記プラズマ生成容器の長手方向に沿って列状に設けられるとともに、前記プラズマ生成容器の内部に挿入された複数の第1フィラメントとを具備し、
    前記第1フィラメントから放出された電子が、前記長手方向の一方側から他方側に向かってExBドリフトするように構成されており、
    前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第1フィラメントまでの距離よりも、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も他方側に位置する第1フィラメントまでの距離の方が短いイオン源。
  2. 前記第1フィラメントと平行に設けられるとともに、前記プラズマ生成容器の内部に挿入された複数の第2フィラメントをさらに具備し、
    前記第2フィラメントから放出された電子が、前記長手方向の他方側から一方側に向かってExBドリフトするように構成されており、
    前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も他方側に位置する第2フィラメントまでの距離よりも、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第2フィラメントまでの距離の方が短い請求項1記載のイオン源。
  3. 前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第1フィラメントまでの距離よりも、前記プラズマ生成容器の前記長手方向中央から前記長手方向の最も一方側に位置する第2フィラメントまでの距離の方が短い請求項2記載のイオン源。
  4. 前記第1フィラメント及び前記第2フィラメントが、前記長手方向に沿って非等間隔に配置されている請求項2又は3記載のイオン源。
  5. 前記第1フィラメント及び前記第2フィラメントが、互いに点対照な配置である請求項2乃至4のうち何れか一項に記載のイオン源。
  6. 前記プラズマ生成容器が、略直方体形状をなし、前記長手方向に沿った第1の側壁にイオンの引出し口が形成されたものであり、
    前記複数の磁石が、前記第1の側壁に垂直な前記長手方向に沿った第2の側壁及び前記第1の側壁に対向する第3の側壁それぞれの中央に前記長手方向に沿って配置されており、
    前記第1のフィラメントが、前記第2の側壁及び前記第3の側壁により形成される角部から前記プラズマ生成容器の内部に挿入されており、その先端が、前記プラズマ生成容器の横断面において、前記第2の側壁中央に配置された磁石と前記第3の側壁中央に配置された磁石とを結ぶ仮想線よりも前記プラズマ生成容器の内側に位置している請求項1乃至5のうち何れか一項に記載のイオン源。
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