JP6755988B2 - 車両動力補助システム - Google Patents

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Description

この発明は、車両動力補助システムに関し、駆動輪または従動輪を回転駆動または回生制動させる電動発電機の発熱を抑制することができる技術に関する。
従来の補助動力システムとして、従動輪に電動発電機を接続し、駆動アシストおよび回生を行う技術が提案されている(特許文献1)。この構成は、例えば、従動輪が、この従動輪から動力を伝達する機械的な連結部材であるドライブシャフトと、ディファレンシャルギヤと、機械的な接続と切断を切り替えるためのクラッチとを介して電動発電機と連結している。
特開2016−25789号公報
特許文献1では、従動輪と電動発電機を連結するための機械的なドライブシャフト、ディファレンシャルギヤおよびクラッチを設置することで、従動輪の足回りに設置する構造体が増え、車両の重量が増加する問題があった。その対策として、二つの駆動輪または従動輪にそれぞれ電動発電機を準備し、駆動輪または従動輪の車輪用軸受で支持した位置に電動発電機を設置して駆動輪または従動輪に前記構造体を介在させることなく駆動するダイレクトドライブ形式とすることで、前記ドライブシャフト、ディファレンシャルギヤおよびクラッチなどの構造体を減らすことができる。また、電動発電機をブレーキロータ内に収めることで、周囲の構造を変更することなく、従来の車輪用軸受と同等な実装性を実現することが可能となる。
しかしながら、上記対策に対しても次のような課題がある。
電動発電機は、磁性材料にコイルを巻いたステータと、磁性材もしくは、磁性材と永久磁石とを有するロータとを備え、前記コイルは、駆動または回生時に前記コイルに電流が流れることで自己発熱する。
また、ブレーキが稼働した際のブレーキロータおよびブレーキキャリパの発熱により、ブレーキおよび電動発電機の周囲温度が上昇する。このため、電動発電機は、周囲からの冷却効果が得られ難く、さらに電動発電機よりもブレーキ側が高温となった場合には、ブレーキの熱放射あるいは熱伝導により、この電動発電機の温度が上昇し、コイルの異常または永久磁石が減磁する可能性がある。
この発明の目的は、駆動輪または従動輪での回転駆動または回生制動が行えて、電動発電機の発熱を抑制することができる車両動力補助システムを提供することである。
この発明の車両動力補助システムは、車両30の車輪4,5を回転支持する車輪用軸受31に支持され前記車輪4,5を回転駆動可能な駆動アシスト力および回生駆動力を発生させる電動発電機14と、この電動発電機14を制
御する制御装置39と、温度検出手段51とを備え、
前記制御装置39は、直流電源10からの直流電力を交流電力に電力に変換する電力変換回路12と、
この電力変換回路12を制御する制御回路13とを備え、
前記制御回路13は、前記温度検出手段15で検出される温度に応じて前記直流電源10からの前記電動発電機14に流れる電流を制限する機能を有し、
前記温度検出手段15は、前記車輪4,5を制動するブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の径方向内側で、且つ、前記電動発電機14のステータ41の径方向外側に設けられ、前記ブレーキロータ36、前記ブレーキキャリパ37および前記ステータ41の発熱による温度を検出する。
この構成によると、車輪4,5を回転支持する車輪用軸受31に電動発電機14が支持されるため、ドライブシャフト、ディファレンシャルギヤおよびクラッチなどの構造体が不要であり、駆動アシスト力を与えるための構成が簡易で済み、前記構造体を備えた従来例よりも、車両30の重量が増大することを抑えることができる。
温度検出手段15は、ブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37およびステータ41の発熱による温度も検出する。特に、ブレーキロータ36の温度が上がりやすいブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の径方向内側で、且つ、ステータ41の径方向外側に、温度検出手段15を配置することで、ステータ41の発熱による温度上昇だけでなく、ブレーキ35が稼働した際のブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の発熱に起因する電動発電機14の温度上昇を正確に検出することが可能となる。ステータ41の径方向内側に温度検出手段15を配置するよりもステータ41の径方向外側に温度検出手段15を配置する方が、ブレーキ35の熱放射あるいは熱伝導が伝わりやすいからであり、さらにブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の径方向内側が最も高温になりやすいからである。制御回路13は、例えば、判断部13aにより検出される温度が閾値を超えると判断したとき、直流電源10から電動発電機14に流れる電流を制限する。これにより、電動発電機14の異常を未然に防止することができる。
前記閾値は、設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。前記「電流を制限する」とは、電流を零にすることも含む。
前記車輪用軸受31が、前記車両の主駆動源1と機械的に非連結の車輪5である従動輪5を支持する軸受であってもよい。
この場合、電動発電機14が簡易で省スペースで済む構成であるため、車体の足回りの構造等を変更することなく、この電動発電機14を従動輪5に簡単に設置することができる。
前記車輪用軸受31が、前記車両の主駆動源1と機械的に連結された車輪4である駆動輪4を支持する軸受であってもよい。
前述のように、電動発電機14の部品点数が少なく構成が簡易で省スペースで済むことから、車体の足回りの構造等を変更することなく、この電動発電機14を駆動輪4に簡単に設置することができる。
前記電動発電機14は、このモータロータ42が前記ステータ41の半径方向外方に位置するアウターロータ型であってもよい。この場合、モーメント発生位置が外径側であるアウターロータ型の電動発電機14は、インナーロータ型のものより、限られたスペース内でより大きなトルクを発生することができる。
前記判断部13aは、前記ステータ41のコイル41aに定められた最大電流が流れ、且つ前記電動発電機14におけるモータロータ42の永久磁石Mgが減磁しない温度を前記閾値としてもよい。
前記定められた最大電流は、設計等によって任意に定める電流であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な電流を求めて定められる。
この構成によると、前記閾値を超えるとき電動発電機14に流れる電流を制限するため、例えば、ブレーキ35の熱放射あるいは熱伝導等により、この電動発電機14の温度が上昇して永久磁石Mgが減磁することをより確実に防止することができる。
前記判断部13aは、前記ステータ41のコイル41aが機能を喪失しない上限温度を前記閾値としてもよい。
前記コイル41aが機能を喪失しない上限温度は、実際にコイル41aが機能を喪失する温度に対して余裕を持って定められていてもよく、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により定められる。なおコイル41aが機能を喪失した状態とは、コイル41aの焼損等により所望の電流を流せない状態を言う。
この構成によると、前記閾値を超えるとき電動発電機14に流れる電流を制限するため、コイル41aの異常をより確実に防止することができる。
この発明の車両動力補助システムは、車両の車輪を回転支持する車輪用軸受に支持され前記車輪を回転駆動可能な駆動アシスト力および回生駆動力を発生させる電動発電機と、この電動発電機を制御する制御装置と、温度検出手段とを備え、前記制御装置は、直流電源からの直流電力を交流電力に電力に変換する電力変換回路と、この電力変換回路を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記温度検出手段で検出される温度に応じて前記直流電源からの前記電動発電機に流れる電流を制限する機能を有し、前記温度検出手段は、前記車輪を制動するブレーキロータおよびブレーキキャリパの径方向内側で、且つ、前記電動発電機のステータの径方向外側に設けられ、前記ブレーキロータ、前記ブレーキキャリパおよび前記ステータの発熱による温度を検出する。このため、駆動輪または従動輪での回転駆動または回生制動が行えて、電動発電機の発熱を抑制することができる。
この発明の実施形態に係る車両動力補助システムにおける車両内の電動発電機の搭載箇所を示す図である。 同車両動力補助システムの制御装置等を示すブロック図である。 同電動発電機を搭載した従動輪およびその足回り部を示す断面図である。 同電動発電機等を切断した箇所を示す斜視図である。 同電動発電機に取り付ける温度検出手段等を示す分解斜視図である。 同電動発電機等の拡大断面図である。 同電動発電機等を軸方向から見た図である。 車両動力補助システムの概念構成を示すブロック図である。 同車両動力補助システムを搭載した車両の一例となる電源系統図である。 同車両動力補助システムによる駆動電流の制限を示すフローチャートである。 この発明のさらに他の実施形態に係る車両動力補助システムにおける車両内の電動発電機の搭載箇所を示す図である。
この発明の実施形態に係る車両動力補助システムを図1ないし図10と共に説明する。
<電動発電機の搭載箇所について>
図1に示すように、この車両動力補助システムは、駆動輪の走行駆動を行う主駆動源1と機械的に非連結である従動輪を持つ車両に搭載される。図1の例では、車両は、前側の車輪4が駆動輪、後側の車輪5が従動輪となる前輪駆動車であり、主駆動源1が、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関である。この内燃機関は、クラッチ2、トランスミッション3等を介して前側の車輪(駆動輪)4に機械的に接続している。後側の左右の車輪(従動輪)5,5にそれぞれ電動発電機14,14を搭載している。各電動発電機14は、変速機を用いないダイレクトドライブモータであり、電力を供給することで駆動アシスト力を発生し、また、車両の運動エネルギーを電力に変換することで発電する。
図2に示すように、この車両動力補助システムは、車両に搭載された直流電源10と、車輪5を回転支持する車輪用軸受31(図3)に支持された電動発電機14と、この電動発電機14を制御する制御装置39とを備える。
<車輪用軸受について>
図3および図4に示すように、車輪用軸受31は、固定輪である外輪32と、複列の転動体34と、回転輪である内輪33とを有する。外輪32に複列の転動体34を介して内輪33が回転自在に支持されている。内外輪33,34間の軸受空間には、グリースが封入されている。内輪33は、外輪32よりも軸方向のアウトボード側に突出した箇所にハブフランジ33aを有する。外輪32は、インボード側の端部において、ナックル等の足回りフレーム部品Nkに図示外のボルトで取付けられている。なおこの明細書において、車両動力補助システムが車両に搭載された状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
ハブフランジ33aのアウトボード側の側面には、ブレーキロータ36と車輪5のホイール5aとが軸方向に重なった状態で、ハブボルト6により取り付けられている。ホイール5aの外周に、車輪5のタイヤ5bが取り付けられている。ホイール5aの軸方向幅内に、車輪用軸受31全体が収まっている。なお、図示の車輪用軸受31は、内輪回転タイプの第3世代型への適用例について示しているが、外輪回転タイプ、第1,第2世代型などの車輪用軸受であっても適用可能である。
<ブレーキ35について>
ブレーキ35は、ディスク式のブレーキロータ36と、ブレーキキャリパ37とを備える摩擦ブレーキである。ブレーキロータ36は、平板状部36aと、外周部36bとを有する。平板状部36aは、ハブフランジ33aに重なる環状で且つ平板状の部材である。外周部36bは、平板状部36aから外輪32の外周側へ延びる。外周部36bは、平板状部36aの外周縁部からインボード側に円筒状に延びる円筒状部36baと、この円筒状部36baのインボード側端から外径側に平板状に延びる平板部36bbとを有する。
ブレーキキャリパ37は、ブレーキロータ36の平板部36bbを挟み付ける摩擦パッド(図示せず)を有する。ブレーキキャリパ37は、足回りフレーム部品Nkに取付けられている。ブレーキキャリパ37は、油圧式および機械式のいずれであってもよく、また電動モータ式であってもよい。
<電動発電機14について>
この電動発電機14は、駆動アシスト力および回生制動力を発生させる。前記駆動アシスト力は、車輪5の回転で発電を行い給電されることによって車輪5を回転駆動可能な走
行補助用の駆動力である。電動発電機14は、外輪32の外周面に取付けられたステータ41と、このステータ41の外周側に位置する環状のロータ42とを備える。この電動発電機14は、例えば、アウターロータ型のIPM同期モータである。各同期モータにおいて、ステータ41の巻き線形式として分布巻、集中巻の各形式が採用できる。
ステータ41は、コアと、このコアの各ティースに巻回されたコイル41a(図7)とを有する。ロータ42は、回転ケース7と、この回転ケース7の内周に設けられる磁性体と、この磁性体に内蔵される永久磁石Mg(図7)とを備え、回転ケース7がハブフランジ33aに取付けられている。ハブフランジ33aの外周面に、例えば、嵌合、溶接、または接着等により、回転ケース7のアウトボード側の内周面が固定されている。
電動発電機14は、その全体が、ブレーキロータ36の外周部36bよりも小径である。さらに電動発電機14におけるハブフランジ33aへの取付部を除く全体が、車輪用軸受31のインボード側の車体取付面と、ハブフランジ33aとの間の軸方向範囲に位置する。このため、電動発電機14を車輪用軸受31に支持する際には、車輪5の周辺の減衰装置などの構造の変更が必要ない。さらに車輪用軸受31についても、外輪32以外の、内輪33などの構成部品は既存品を流用できる。
<温度検出手段の実装位置等について>
図5〜図7に示すように、この電動発電機14には、ブレーキロータ36、ブレーキキャリパ37およびステータ41の発熱による温度を検出する温度検出手段15が取り付けられている。温度検出手段15は、例えば、サーミスタまたは熱電対など、径方向外側のロータ部分に干渉することなくステータ41に取り付けることができるのであれば形式は問わない。この温度検出手段15は、ブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の径方向内側で、且つ、ステータ41の径方向外側に、例えば接着剤等を用いて固定されている。
換言すれば、ブレーキロータ36の温度が上がりやすいブレーキキャリパ37の近くで、且つ、固定されているステータ41に、温度検出手段15を取り付けることにより、電動発電機14の内部温度を検出できるようにしている。温度検出手段15の軸方向の取り付け範囲(図6参照)については、ステータ41の径方向外側の軸方向範囲内に収まるように温度検出手段15が取り付けられる。
温度検出手段15の円周方向の取り付け範囲(図7参照)は、この例では、ブレーキ温度を正確に測定するために、ブレーキキャリパ37の両端部37a,37bから内輪33の回転軸中心部Oを結ぶ線L1,L2の内側で、且つ、ステータ41の径方向外側の面(外周面)である。なお、ブレーキキャリパ37の両端部37a,37bから内輪33の回転軸中心部Oを結ぶ線L1,L2の外側に、温度検出手段15の円周方向の一部がはみ出してもよい。
<車両動力補助システムについて>
図8は、この車両動力補助システムSmの概念構成を示すブロック図である。同図8に示すように、主駆動源1は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関、または電動発電機(電動モータ)、または両者を組み合わせたハイブリッド型の駆動源である。前記「電動発電機」は、回転付与による発電が可能な電動モータを称す。図示の例では、車両30は、前側の車輪4が駆動輪、後側の車輪5が従動輪となる前輪駆動車であって、主駆動源1が内燃機関1aと駆動輪側の電動発電機1bとを有するハイブッリド車(以下、「HEV」と称することがある)である。
具体的には、駆動輪側の電動発電機1bが48V等の中電圧で駆動されるマイルドハイ
ブリッド形式である。ハイブリッドはストロングハイブリッドとマイルドハイブリッドとに大別されるが、マイルドハイブリッドは、主要駆動源が内燃機関であって、発進時や加速時等にモータで走行の補助を主に行う形式を言い、EV(電気自動車)モードでは通常の走行を暫くは行えても長時間行うことができないことでストロングハイブリッドと区別される。同図の例の内燃機関1aは、クラッチ2および減速機3を介して駆動輪である車輪4のドライブシャフトに接続され、減速機3に駆動輪側の電動発電機1bが接続されている。
この車両動力補助システムSmは、従動輪である車輪5の回転駆動を行う走行補助用の電動発電機14と、この電動発電機14の制御を行う制御装置39と、上位ECU40に設けられて制御装置39に駆動および回生の制御を行わせる指令を出力する個別電動発電機指令手段8とを備える。
電動発電機14は、制御装置39を介して直流電源10に電気的に接続されている。直流電源10は、バッテリー(蓄電池)またはキャパシタ、コンデンサ等を用いることができ、その形式や車両30への搭載位置は問わない。この実施形態では、車両30に低電圧バッテリー50および中電圧バッテリーが搭載され、前記中電圧バッテリーが直流電源10に適用される。電動発電機14は、ハブ輪である内輪33(図3)にロータ42(図3)が取付けられているため、電動発電機14に車輪5の回転方向にトルクを発生するように電流を印加すると内輪33(図3)が回転駆動され、逆に車輪5の方向と逆方向にトルクが発生するように電流を印加すると制動され、回生電力が得られる。
<車両30の制御系について>
上位ECU40は、車両30の統合制御を行う手段であり、トルク指令生成手段43を備える。このトルク指令生成手段43は、アクセルペダル等のアクセル操作手段56およびブレーキペダル等のブレーキ操作手段57からそれぞれ入力される操作量の信号及び車速等の車両の情報の信号に従ってトルク指令を生成する。この車両30は、主駆動源1として内燃機関1aおよび駆動輪側の電動発電機1bを備え、また二つの車輪5,5をそれぞれ駆動する二つの電動発電機14,14を備えるため、前記トルク指令を各駆動源1a,1b,14,14に定められた規則によって分配するトルク指令分配手段44が上位ECU40に設けられている。
内燃機関1aに対するトルク指令は内燃機関制御手段47に伝達され、内燃機関制御手段47によるバルブ開度制御等に用いられる。駆動輪側の発電電動機1bに対するトルク指令は、駆動輪側電動発電機制御手段48に伝達されて実行される。従動輪側の発電機14,14に対するトルク指令は、制御装置39,39に伝達される。トルク指令分配手段44のうち、制御装置39,39へ出力する部分を個別電動発電機指令手段8と称している。この個別電動発電機指令手段8は、ブレーキ操作手段57の操作量の信号に対して、電動発電機1bが回生制動により制動を分担する制動力の指令となるトルク指令を制御装置39へ与える機能も備える。
<制御装置39について>
図2および図8に示すように、制御装置39は、電力変換回路12と制御回路13とを有する。また、制御装置39には、電動発電機14の内部温度を検出する前述の温度検出手段15が電気的に接続されている。電力変換回路12は、直流電源10からの直流電力を交流電力に変換する回路であり、直流電源10に電気的に接続されている。電動発電機14が三相の交流電動発電機であれば、電力変換回路12は、直流電力を三相の交流電圧に変換する三相のインバータである。このインバータは、例えば、図示外のコンデンサおよび六個のスイッチング素子等を含む。
制御回路13は、温度検出手段15より電動発電機14の内部温度を取得することができ、電力変換回路12に指令し電動発電機14を力行制御、または回生制御し、電動発電機14に供給する電力を制御することができる(フローチャートと共に後述する)。
この制御回路13は、温度検出手段15で検出される温度が閾値を超えるか否かを判断する判断部13aを備える。制御回路13は、判断部13aにより前記温度が閾値を超えると判断したとき、直流電源10から電動発電機14に流れる電流を制限する。
判断部13aは、ステータ41のコイル41a(図7)に定められた最大電流が流れ、且つ電動発電機14におけるモータロータ42の永久磁石Mg(図7)が減磁しない温度を閾値としてもよいし、ステータ41のコイル41a(図7)が機能を喪失しない上限温度を閾値としてもよい。前記「電流を制限する」とは、電流を零にすることも含む。制限される電流として、電動発電機14の内部温度が閾値以下に収まる力行回生トルクが温度・トルクマップから算出され、この算出された力行回生トルクから制限されるべき力行回生電流が算出される。前記温度・トルクマップは、例えば、予め試験またはシミュレーション等により定められる。制御回路13は、検出される温度が閾値以下になれば、電流制限を解除する。
<電源系統図>
図9は、図8に示した車両動力補助システムを搭載した車両の一例となる電源系統図である。同図の例では、バッテリーとして低電圧バッテリー50と、中電力バッテリーである直流電源10とが設けられ、低電圧バッテリー50は、DC/DCコンバータ51を介して接続されている。電動発電機14は二つあるが、代表して一つで図示している。図8の駆動輪側の電動発電機1bは、図9では図示を省略しているが、従動輪側の電動発電機14と並列に中電力系統に接続されている。低電圧系統には低電圧負荷52が接続され、中電圧系統には中電圧負荷53が接続される。低電圧負荷52および中電圧負荷53は、それぞれ複数あるが、代表して一つで示している。
低電圧バッテリー50は、制御系等の電源として各種の自動車一般に用いられているバッテリーであり、例えば12Vまたは24Vとされる。低電圧負荷52としては、内燃機関1a(図8))のスタータモータ、灯火類、上位ECU40(図8)およびその他のECU(図示せず)等の基幹部品がある。低電圧バッテリー50は電装補機類用補助バッテリーと称し、直流電源10は電動システム用補助バッテリー等と称しても良い。
中電圧バッテリーである直流電源10は、低電圧バッテリー50よりも電圧が高く、かつストロングハイブリッド車等に用いられる高圧バッテリー(100V以上、例えば200〜400V程度)よりも低く、かつ作業時に感電による人体への影響が問題とならない程度の電圧であり、近年マイルドハイブリッドに用いられている48Vバッテリーが好ましい。48Vバッテリー等の直流電源10は、従来の内燃機関を搭載した車両に比較的容易に搭載することができ、マイルドハイブリッドとして電力による動力アシストや回生により、燃費低減することができる。
前記48V系統の中電圧負荷53は前記アクセサリー部品であり、前記駆動輪側の発電機である動力アシストモータ、電動ポンプ、電動パワーステアリング、スーパーチャージャ、およびエアーコンプレッサなどである。アクセサリーによる負荷を48V系統で構成することで、高電圧(100V以上のストロングハイブリッド車など)よりも動力アシストの出力が低くなるものの、乗員やメンテナンス作業者への感電の危険性を低くすることができる。電線の絶縁被膜を薄くすることができるので、電線の重量や体積を減らすことができる。また、12Vよりも小さな電流量で大きな電力量を入出力することができるため、電動機または発電機の体積を小さくすることができる。これらのことから、車両の燃費低減効果に寄与する。
この車両動力補助システムは、こうしたマイルドハイブリッド車のアクセサリー部品に好適であり、動力アシストおよび電力回生部品として適用される。なお、従来よりマイルドハイブリッド車において、CMG、GMG、ベルト駆動式スタータモータ(いずれも図示せず)などが採用されることがあるが、これらはいずれも、内燃機関または動力装置に対して動力アシストまたは回生するため、伝達装置および減速機などの効率の影響を受ける。
これに対してこの実施形態の車両動力補助システムは、図8に示すように、従動輪である車輪5に対して搭載されるため、内燃機関1a等の主駆動源1とは切り離されており、電力回生の際には車体の運動エネルギーを直接利用することができる。また、CMG、GMG、ベルト駆動式スタータモータなどを搭載する際には、車両30の設計段階から考慮して組み込む必要があり、後付けすることが難しいが、車輪5内に収まるこの車両用システムの電動発電機14は、完成車であっても部品交換と同等の工数で取り付けることができ、内燃機関1aのみの完成車に対しても48Vのシステムを構成することができる。この実施形態の車両動力補助システムを搭載した車両に、図8の例のように別の補助駆動用の電動発電機1bが搭載されていても構わない。その際は車両30に対する動力アシスト量や回生電力量を増加させることができ、さらに燃費低減に寄与する。
<フローチャート>
図10は、この車両動力補助システムによる駆動電流の制限を示すフローチャートである。図2等も適宜参照しつつ説明する。
本処理開始後、電動発電機14の内部温度を温度検出手段15により検出する(手順1)。次に、制御回路13の判断部13aは、検出された温度が予め設定された閾値を超えていないかを判断する(手順2)。温度が閾値を超えていないとの判断(手順2:Yes)で手順4に移行する。
温度が閾値を超えている場合(手順2:No)、手順3に移行する。
手順3において、制御回路13は、電動発電機14の力行回生電流を制限する。詳しくは、力行回生電流制限開始後、制御回路13は、電動発電機14の内部温度が閾値以下に収まる力行回生トルクを、前記温度・トルクマップから算出する(手順3−1)。次に、制御回路13は、算出された力行回生トルクから力行回生電流を算出する(手順3−2)。その後手順4において、制御回路13は、電動発電機14の力行回生電流を電力変換回路12に指令する。その後本処理を終了する。
<作用効果>
以上説明した車両動力補助システムによれば、車輪5を回転支持する車輪用軸受31に電動発電機14が支持されるため、ドライブシャフト、ディファレンシャルギヤおよびクラッチなどの構造体が不要であり、駆動アシスト力を与えるための構成が簡易で済み、前記構造体を備えた従来例よりも、車両の重量が増大することを抑えることができる。
温度検出手段15は、ブレーキロータ36、ブレーキキャリパ37およびステータ41の発熱による温度を検出する。特に、ブレーキロータ36の温度が上がりやすいブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の径方向内側で、且つ、ステータ41の径方向外側に、温度検出手段15を配置することで、ステータ41の発熱による温度上昇だけでなく、ブレーキ35が稼働した際のブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の発熱に起因する電動発電機14の温度上昇を正確に検出することが可能となる。
ステータ41の径方向内側に温度検出手段15を配置するよりもステータ41の径方向外側に温度検出手段15を配置する方が、ブレーキ35の熱放射あるいは熱伝導が伝わりやすいからであり、さらにブレーキロータ36およびブレーキキャリパ37の径方向内側が最も高温になりやすいからである。制御回路13は、判断部13aにより検出される温度が閾値を超えると判断したとき、直流電源10から電動発電機14に流れる電流を制限する。これにより、電動発電機14の異常を未然に防止することができる。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図11に示すように、駆動輪である車輪4を回転支持する車輪用軸受に電動発電機14を設け、この電動発電機14を前述の制御装置39(図2等)により制御する車両動力補助システムとしてもよい。その他、駆動輪である車輪4を回転支持する車輪用軸受のみに電動発電機14を設けた車両動力補助システムとしてもよい。
車両動力補助システムは、電動発電機14が駆動アシスト力および回生制動力を発生させる構成であるが、回生制動力のみ発生させるシステムとしてもよい。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…主駆動源
4…車輪(駆動輪)
5…車輪(従動輪)
10…直流電源
12…電力変換回路
13…制御回路
13a…判断部
14…電動発電機
15…温度検出手段
30…車両
31…車輪用軸受
36…ブレーキロータ
37…ブレーキキャリパ
39…制御装置
41…ステータ
41a…コイル

Claims (4)

  1. 車両の車輪を回転支持する車輪用軸受に支持され前記車輪を回転駆動可能な駆動アシスト力および回生駆動力を発生させる電動発電機と、この電動発電機を制御する制御装置と、温度検出手段とを備え、
    前記制御装置は、直流電源からの直流電力を交流電力に電力に変換する電力変換回路と、
    この電力変換回路を制御する制御回路とを備え、
    前記制御回路は、前記温度検出手段で検出される温度に応じて前記直流電源からの前記電動発電機に流れる電流を制限する機能を有し、
    前記温度検出手段は、前記車輪を制動するブレーキロータおよびブレーキキャリパの径方向内側で、且つ、前記電動発電機のステータの径方向外側に設けられ、前記ブレーキロータ、前記ブレーキキャリパおよび前記ステータの発熱による温度を検出する車両動力補助システム。
  2. 請求項1に記載の車両動力補助システムにおいて、前記車輪用軸受が、前記車両の主駆動源と機械的に非連結の車輪である従動輪を支持する軸受である車両動力補助システム。
  3. 請求項1に記載の車両動力補助システムにおいて、前記車輪用軸受が、前記車両の主駆動源と機械的に連結された車輪である駆動輪を支持する軸受である車両動力補助システム。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両動力補助システムにおいて、前記電動発電機は、このモータロータが前記ステータの半径方向外方に位置するアウターロータ型である車両動力補助システム。
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