JP6754116B2 - 大腸癌マーカー - Google Patents

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Description

本発明は大腸癌を精度よく検出できる可能性を有する大腸癌マーカーと大腸癌細胞の存在を判定する指針となるデータの収集方法に関する。
大腸癌(Colorectal cancer、CRC)は、世界で最も罹患者数の多い癌の一種である。腫瘍が粘膜層に限局している場合は、外科的治療や内視鏡手術により完治させることが可能であるが、患者の多くは、既に進行している状態で発見されている。そのため、早期発見法が必要とされている。現在、癌胎児性抗原(CEA)が大腸癌細胞検出のための血液検査マーカーとして広く用いられているが、早期ステージにおける感受性は、5−10%ほどと非常に低い。
したがって、感受性の高いマーカーが強く求められている。例えば、大腸癌細胞により分泌される新たな候補物質の同定は、早期診断の改善に繋がると考えられる。
ホルマリン固定パラフィン包埋(以下「FFPE」と呼ぶ。)組織は、患者の病歴、治療成績、薬物応答性などの詳細な臨床情報と共に、病院で保存されている。また、FFPE組織は、免疫組織学(IHC)やin situハイブリダイゼーション法を用いた、癌を初めとした様々な疾患の診断や研究に日常的に使用されている。
以前は、FFPE組織はプロテオーム解析を行うための素材としては不適切だと考えられていた。しかし、近年、プロテオーム解析を行うためのFFPE組織からのタンパク質抽出法が開発されたことにより、様々なFFPE組織を用いたプロテオーム研究が報告されるようになった。そのため、保管されているFFPE組織は、新たなバイオマーカーを探索するための有用な素材になったといえる。
WO2008/032868号 特表2007−527001号公報
「看護師のための検査値・数式辞典」奈良信夫 104頁 http://www.ac.auone−net.jp/〜taijirou/arudora−ze.html "Aldolase A isoenzyme levels in serum and tissues of patients with liver diseases"Asaka M, Nagase K, Miyazaki T, Alpert E.;Gastroenterology. 1983 Jan;84(1):155−60.
上記のように、大腸癌細胞を精度よく検出するためのマーカーは、まだ提案されていない。そこで本発明が解決しようとする課題は、精度よく大腸癌細胞を検出できるマーカーの提供である。
本発明では、上記課題を解決するために、FFPE大腸癌組織を用いたショットガンプロテオミクスによって、大腸癌細胞を精度よく検出できるバイオマーカーを探した。その結果、アルドラーゼAの実量の変化が好適に利用できることを見出し本発明を完成するに至った。なお、アルドラーゼAは、ラジオイムノアッセイ(RIA)で調べた場合、健常人の血清中には171±39ng/ml含まれているとされている(非特許文献3)。
アルドラーゼが、上昇する疾患としては、Kugelberg−Welander症候群、多発性筋炎、進行性筋ジストロフィー症、白血病、心筋梗塞、ウイルス性肝炎、悪性腫瘍、甲状腺機能異常が知られている。また、減少する疾患としては、果糖不耐症、Tay−Sachs病が知られている。
また、アルドラーゼAは、腎臓癌細胞のマーカーとして提案されていた(特許文献1)。また、癌細胞の増殖によってアルドラーゼAがアップレギュレーションすることも報告されている(特許文献2)。また、血液検査においてアルドラーゼの高値によって疑われる場合に大腸癌が挙げられているという記載も見られる(非特許文献1、2)。
しかし、これらの文献にもアルドラーゼAが大腸癌細胞の検出のためのバイオマーカーになり得るという開示はない。また、これらの文献では、癌細胞の増殖によってアルドラーゼのアップレギュレーションがマーカーとしての表示となっている。一方、本発明に係るマーカーでは、大腸癌細胞の増殖は、アルドラーゼAの実量の減少がマーカーとしての表示となり、上記の開示内容とは異なる。
アルドラーゼはA型、B型、C型の3つのアイソザイムを持つことが知られている。血液検査のアルドラーゼはこの3つの型の総量で評価されている。しかも通常血液検査におけるアルドラーゼの検出は、酵素活性による評価が行われている。
したがって、実量の変化はなくても癌細胞によってアルドラーゼの酵素活性が高くなっている場合は、高値として検出される。つまり、従来は、アルドラーゼの上昇はどの型の上昇によるものであったのか、また実量の変化はどうだったのかといった点については、不明であった。
今回発明者らは、大腸癌細胞が増殖すると、大腸癌細胞が存在していた溶媒(試料)中のアルドラーゼAの実量が減少することを見出し、本発明を完成するに至った。
よって、本発明に係る大腸癌マーカーとは、アルドラーゼAからなる大腸癌マーカーである。
アルドラーゼAは、大腸癌細胞の増殖によって、(酵素活性ではなく)実量が減少する。このような知見に基づく大腸癌マーカーはかつて存在しなかったので、大腸癌細胞を検出するための精度の高いマーカーとなり得る可能性がある。
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の写真である。 大腸癌FFPE組織を用いたショットガンプロテオミクスを実施した結果同定されたタンパク質を癌部、非癌部の区別で分類したベン図である。 スペクトラルカウントに基づいた非標識半定量法の結果を示すグラフである。 DAVIDを使用して、癌部で発現が変動していたタンパク質の遺伝子オントロジー(GO)解析の結果である。 アルドラーゼA、シクロフィリンA、アネキシンA2の大腸癌組織における定量PCRの結果を示すグラフである。 アルドラーゼAの免疫組織染色の写真である。 シクロフィリンAの免疫組織染色の写真である。 アネキシンA2の免疫組織染色の写真である。 アルドラーゼA、シクロフィリンA、アネキシンA2のmRNA量を示すグラフである。
以下に本発明に係る大腸癌マーカーについて図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
本発明に係る大腸癌マーカーはアルドラーゼAから構成される。大腸癌マーカーの検出は、適切に採取された細胞が存在していた溶媒(試料)中のアルドラーゼAの量を測定することで行われる。「測定する」とは「分析する」といってもよい。この試料はヒトから採取されたものを用いることができる。つまり、試料としては、血液等の体液が好適に利用できる。しかし、尿、糞便、唾液などでも利用できる。
発明者らの検討によれば、同条件で測定した時、正常細胞は、アルドラーゼAを細胞外に分泌するが、大腸癌細胞は、細胞内ではアルドラーゼAを発現しているものの、細胞外には分泌しない(検出限界以下)。つまり、大腸癌細胞でのアルドラーゼAの分泌低下(または分泌抑制)は、大腸癌細胞の存在を示す実質的な特異的マーカーとなる。
したがって、本発明に係る大腸癌マーカーは、被験者体液(試料)において、アルドラーゼAが、通常体液に存在する量より低値を示した場合には、その被験者は大腸癌に羅患している可能性を示唆するものと判断する。また、その試料中には、大腸癌細胞が存在していた可能性を示唆するものと判断するといってもよい。
また、試料中のアルドラーゼAの実量を測定し、通常体液に存在する量と比較することは、試料提供した被験者が大腸癌に羅患している、若しくは被験者の体内に大腸癌細胞が存在すると判断するための指標となるデータを収集する方法といえる。また、このような手順は大腸癌マーカーを分析する方法を構成しているといえる。
なお、アルドラーゼAは、健常人の血清中には171±39ng/mlあるとされている。今後、より測定しやすい方法による新たな調査によって、この値は多少変化するかもしれない。ここでは、将来の測定方法の変化によって変更されるかもしれない値を含め、通常体液中に存在するアルドラーゼAの存在量を「基準量」と呼ぶ。
また、アルドラーゼAの実量とは、酵素活性から見た値(U/L)ではなく、試料中のアルドラーゼAの実量(ng/ml)をいう。アルドラーゼAの実量は、RIA(ラジオイムノアッセイ)だけでなく、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)による検出若しくは液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)などで計測することができる。
以下に、本発明に係る大腸癌マーカーをFFPE大腸癌組織を用いたショットガンプロテオミクスによって見出した大腸癌マーカーについて説明する。
以下の実験において、グアニジン塩酸塩、ジチオスレイトール(DTT)、トリス、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)及びヨードアセトアミド(IAA)は和光純薬社製のものを用いた。その他の試薬についてはシグマ社製を用いた。
<大腸癌組織及び患者>
本実施例で使用した大腸癌組織は、2011年に日本医科大学付属病院で外科手術を受けた10名の大腸癌患者のものを使用した。全ての患者は、術前に化学療法や放射線治療を受けておらず、大腸炎や感染症などの炎症性疾患歴もない。病理診断及び進行度分類はWHOの基準に従い実施した。本実施例はヘルシンキ宣言(2008)に基づき実施されており、それぞれの患者から、大腸組織を以下の検討に使用することに対しての同意と理解を得ている。
<FFPE組織からのタンパク質抽出>
10名の患者から得られた大腸癌FFPE組織を用いてプロテオーム解析を行うこととした。病理及び臨床情報は表1に示す。
なお、表1中「TisN0M0」の「Tis」は、Tumor in situのことで、癌細胞が粘膜内に留まっており、粘膜下層にまで及んでいない状態を表す。
HE(ヘマトキシリン・エオシン)染色による組織学的評価の後、癌部と正常構造を保っている非癌部とに分離した。薄切した組織(10μm)は、キシレン中で脱パラフィンした後、アルコール中(100%→90%→80%→70%)で再水和した。Mayerのヘマトキシリンで染色後、癌部と非癌部を顕微鏡観察下、マニュアルで切除した(図1:後に説明する。)。
過去の報告に基づき、lysis buffer(6M guanidine−HCl,40mM Tris−HCl pH8.2,65mM DTT)を用いて、これらの部位よりタンパク質を抽出した。なお、タンパク質の抽出のより具体的な手順は、以下の文献に基づいた。得られたタンパク質の濃度はブラッドフォード法にて測定した。
X. Jiang, S. Feng, R. Tian, M. Ye, H. Zou, Development of efficient protein extraction methods for shotgun proteome analysis of formalin−fixed tissues, Journal of proteome research, 6 (2007) 1038−1047.
<液中トリプシン消化>
Bluemleinらの方法に基づき、液中消化を実施した。それぞれの試料より得られた10μgのタンパク質を45mM DTT及び20mM TCEPにより還元した後、100mM IAAでアルキル化を行った。アルキル化後、プロテオミクスグレードのトリプシン(Agilent Technologies Inc., Santa Clara,CA,USA)を用いて、37℃、24時間インキュベートすることで試料の酵素消化を行った。得られた消化産物をPepClean C−18 Spin Columns(Thermo,Rockford,IL,USA)を使用して脱塩を行った。
なお、Bluemleinらの方法は、以下の文献を参照した。
K. Bluemlein, M. Ralser, Monitoring protein expression in whole−cell extracts by targeted label− and standard−free LC−MS/MS, Nature protocols, 6 (2011) 859−869.
<LC−MS/MS解析>
約2μgの精製したペプチドをHTS PALオートサンプラー(CTC Analytics, Zwingen, Switzerland)を用いて、L−trapカラム(Chemicals Evaluation and Research Institute, Tokyo, Japan)に注入した後、逆相C18−column(Zaplous column α, 3−μm diameter gel particles and 100Å pore size, 0.1 × 150 mm; AMR)を使用したAdvance−nano UHPLCシステム (AMR Inc., Tokyo, Japan)で分離を行った。
移動相にはsolution A(0.1%ギ酸in水)及びsolution B(アセトニトリル)を用い、流速500nL/minで、溶離液組成を5% Bから35% Bまで、120分間で連続的に変化させた。溶出してきたペプチドは、amaZon ETD イオントラップ型質量分析計(Bruker Daltonics, Billerica, MA, USA)を用いて測定した。
得られた質量分析のデータは、Mascot(version_2.3.01;Matrix Science, London,UK)を用いてSwissProt のHomo sapiensのデータベースに対して検索を行った。検索の条件は次の通りに行った。
酵素:トリプシン; 質量誤差:±0.5Da及びMS/MS誤差:±0.5Da;修飾:システインのカルバミドメチル化;メチオニンの酸化、アミノ基のフォルミル化(リジン、アルギニン、N末)
<スペクトラルカウント>
Logスケールに基づいたタンパク質発現量の変動値をスペクトラルカウントに基づいたRsc値として計算した。
なお、Rsc値については、以下の文献を参照した。
W.M. Old, K. Meyer−Arendt, L. Aveline−Wolf, K.G. Pierce, A. Mendoza, J.R. Sevinsky, K.A. Resing, N.G. Ahn, Comparison of label−free methods for quantifying human proteins by shotgun proteomics, Molecular & cellular proteomics : MCP, 4 (2005) 1487−1502.
また、相対発現量値(NSAF)も計算した。癌部で発現量が2倍以上変動しているものを候補タンパク質とすることとした。即ち、Rsc値が>1または<−1を示したものである。
なお相対発現量値(NSAF)については、以下の文献を参照した。
B. Zybailov, M.K. Coleman, L. Florens, M.P. Washburn, Correlation of relative abundance ratios derived from peptide ion chromatograms and spectrum counting for quantitative proteomic analysis using stable isotope labeling, Analytical chemistry, 77 (2005) 6218−6224.
<バイオインフォマティクス>
同定された候補タンパク質の機能分類についてDatabase for Annotation, Visualization, and Integrated Discovery (DAVID) version 6.7 (http://david.abcc.ncifcrf.gov/home.jsp)を用いて実施した。
なお、この実施に際しては以下の文献を参照した。
G. Dennis, Jr., B.T. Sherman, D.A. Hosack, J. Yang, W. Gao, H.C. Lane, R.A. Lempicki, DAVID: Database for Annotation, Visualization, and Integrated Discovery, Genome biology, 4 (2003) P3.
<定量RT−PCR>
大腸癌FFPE組織からRNeasy FFPE Kit(QIAGEN, Valencia, CA, USA)を用いてRNA抽出を行った。また、培養大腸癌細胞からはGenElute Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用いて抽出した。
FFPE組織から得られたRNAはSuperScript VILO cDNA Synthesis Kitを用いて、培養大腸癌細胞から得られたRNAはHigh Capacity cDNA Reverse Transcription kitを用いて、製品のプロトコール通りにcDNA合成を行った。
アルドラーゼA(Aldolase A)、シクロフィリンA(Cyclophilin A)及びアネキシンA2(Annexin A2)の発現量を調べるため、定量PCR(qRT−PCR)を7500 system(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて実施した。
プライマーとTaqManプローブはTaqMan Gene Expression Assayのaldolase A (Hs00765620_m1)、cyclophilin A (Hs04194521_s1)、 annexin A2 (Hs00743063_s1)及び18S rRNA (Hs03928990_g1)を用いた。定量結果は、内因性コントロールとの相対値である、標的/18S rRNAとして表記している。
<免疫組織染色>
パラフィン包埋薄切組織(3μm)を用いて免疫組織染色を行った。アルドラーゼA及びシクロフィリンAの染色には、Histofine Simple Stain MAX−PO (R) kit(Nichirei, Tokyo, Japan)を用い、アネキシンA2には、Histofine Simple Stain MAX−PO (M) kit (Nichirei)を用いた。
シクロフィリンAとアネキシンA2については、脱パラフィン後、切片をクエン酸緩衝液(pH6.0)中で121℃、15分間オートクレーブ処理を行った。また、内因性のペルオキシダーゼ活性を阻害するために、0.3%過酸化水素含有メタノール中で30分間インキュベートした。
次に、組織切片を抗−ALDOA抗体(1:150 dilution; Atlas Antibodies, Stockholm, Sweden)、抗−cyclophilin A抗体(1:150 dilution;Novus Biologicals,Littleton,CO,USA)、または抗−annexin A2抗体(1:300 dilution;LifeSpan BioSciences,Inc.,Seattle,WA,USA)と4℃で16時間反応させた。
結合した抗体をdiaminobenzidine tetrahydrochlorideを基質としてSimple Stain MAX−PO(R)またはSimple Stain MAX−PO(M)試薬と反応させ検出した。その後、切片をMayer’s hematoxylinで染色した後、2名の研究者が盲検下個別に全ての組織切片の評価を行った。
切片は、強度(0,未染色;1,弱;2,中;3,強)及び陽性上皮細胞の割合(0,0−5%;1,6−25%;2,26−50%;3,51−75%;4,76−100%)の両方をスコア化し、それぞれの合算値を組織のスコアとした。
<培養大腸癌細胞>
培養大腸癌細胞であるDLD−1,SW480及びSW620と正常大腸上皮細胞であるCCD 841 CoNは、American Type Culture Collection (Manassas,VA,USA)から購入した。全ての細胞は、10%FBS含有RPMI1640で5%CO条件下で培養した。
<タンパク質抽出>
大腸癌細胞を100−mmディッシュに5×10個/ディッシュで播種した後、培養液中で培養した。72時間後、lysis buffer(7M urea,2M thiourea,5% CHAPS,and1% Triton X−100)で溶解し、タンパク質溶液を得た。また、細胞外に分泌されたタンパク質を解析するため、72時間後の培養液を回収した。
<ウェスタンブロット>
タンパク質溶液または培養液を還元条件下SDS−PAGEで分離した後、PVDF膜に転写を行った。膜は、抗−annexin A2抗体,抗−aldolase A抗体または抗−cyclophilin A抗体(Cell Signaling Technology Inc., Beverly, MA, USA)と4℃で一晩反応させた。
その後、膜を洗浄し、HRP−結合抗−ウサギIgG抗体(American Qualex,San Clemente,CA)と反応させた。洗浄後、化学発光試薬と反応させ、myECL Imager system(ThermoFisher Scientific)で検出を行った。次に、等量のタンパク質を反応させていたかを確認するために、同じ膜中に存在するβ−actinの検出を行った。全てのウェスタンブロットは3回実施した。
<統計解析>
全てのデータは平均±標準誤差で示している。2グループ間のデータは、対応のないt検定で比較を行った。*P<0.05または、**P<0.001を有意であると考えた。統計解析は、GraphPad Prism version 5(GraphPad Software,La Jolla,CA,USA)を用いて行った。
<結果>
1.大腸癌組織の癌部と非癌部に発現するタンパク質の同定
癌の進行に伴い発現するタンパク質を調べるため、大腸癌FFPE組織を用いたショットガンプロテオミクスを実施した。FFPE組織から癌部と非癌部を分離するために、マニュアルでの切除を行った。また、タンパク質発現は、細胞だけでなく周囲の間質に発現しているタンパク質も解析を行った。
図1にその組織の写真を示す。図1(a)は、切除を行う前の非癌部の写真であり、図1(b)は、切除を行う前の癌部の写真である。また、図1(c)は、切除後の非癌部の写真であり、図1(d)は切除後の癌部の写真である。なお、切片はヘマトキリン染色を行った。
図2には同定されたタンパク質のベン図を示している。癌部だけに発現しているタンパク質は、106種類であり、非癌部だけに発現しているタンパク質は44種類であった。癌部および非癌部の両方に発現しているタンパク質は98種類あった。
2.<大腸癌組織の癌部と非癌部に発現しているタンパク質の半定量解析>
次に、癌部で発現量が変動しているタンパク質を同定するために、スペクトラルカウントに基づいた非標識半定量法を実施した。結果を図3に示す。図3(a)は、Rsc値の結果であり、図3(b)は、NSAF値の結果である。左か右に行くほど癌部で発現が上昇しているようになるように、Rsc値を対応するタンパク質名に対してプロットした(横軸)。なお、横軸のタンパク質名は一部を除き省略している。
図3(a)において、縦軸はRsc値である。正と負のRsc値は、それぞれ癌部において発現量が増加または減少していることを表している。
図3(b)は、NSAF値(棒グラフ)を対応するタンパク質名に対してプロットしており(X軸)、それぞれ癌部におけるNSAF値(正値)と非癌部におけるNSAF値(負値)とした。高い正または負のRsc値を示したタンパク質は、CRCの早期発見マーカーとしてのポテンシャルがあると考えられる。
全部で84種類の癌部で発現量が変動しているタンパク質が同定された。結果を表2および表3に示す。発現量が上昇している代表的なタンパク質の中には、腫瘍マーカーとして知られているヒートショックプロテイン(HSP60:81番)やCEA(76番)が含まれていた。一方、ハウスキーピングのタンパク質として知られているヒストンH4やβ−アクチンなどの発現は変動していなかった。
なお、アルドラーゼA、シクロフィリンA、アネキシンA2は、いずれも表3の64番、59番、62番である。シクロフィリンAは、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA(Peptidyl−prolyl cis−trans isomerase A)と記載されている。
3.<癌部で発現が変動しているタンパク質の機能分類>
表3、表4で大腸癌マーカーとして可能性のあるタンパク質が挙げられたが、血液中で検出できなければ、マーカーとなりえない。そこで、DAVIDを使用して、癌部で発現が変動していたタンパク質の遺伝子オントロジー(GO)解析を行った。結果を図4に示す。
図4は、同定されたタンパク質の細胞成分分類に対するGO解析により割り当てられた細胞成分分類のカテゴリーを表示している。縦軸は相対存在率(%)であり、横軸はタンパク質の分類名である。細胞成分での分類の結果(図4)より、大腸癌患者の血液中で検出できる可能性がある、「細胞外基質」に分類された21種類のタンパク質に注目することとした。これらのタンパク質を表4に示す。
なお、DAVIDは、National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID) によって提供されるデータベースである。
4.<大腸癌組織の癌部と非癌部におけるアルドラーゼA、シクロフィリンA及びアネキシンA2のmRNA発現の解析>
Fructose−bisphosphate aldolase A (aldolase A:アルドラーゼA)、 peptidyl−prolyl cis−trans isomerase A(cyclophilin A:シクロフィリンA)及びannexin A2(アネキシンA2)は、癌部で発現が上昇しているため(図3)、診断マーカー候補として分泌されている可能性がある。大腸癌部で発現が上昇していることを確認するため、大腸癌組織を用いて定量PCRを行った。結果を図5に示す。その結果、これらのタンパク質のmRNA発現量は、非癌部に比べて癌部で有意に上昇していた。
図5を参照して、図5(a)はAldolase A(アルドラーゼA)、図5(b)はCyclophilin A(シクロフィリンA)、図5(c)はAnnexin A2(アネキシンA2)の結果である。いずれのグラフも横軸は非癌部(non−cancer)と癌部(cancer)を表し、縦軸は、mRNAの発現量(単位なし)である。なお、mRNAの発現量は18SrRNA量で正規化してある。いずれのタンパク質も癌部において発現量が上昇していた。なお、「*」はP値<0.05であり、「**」はP値<0.001を表す。
5.<大腸癌組織の癌部と非癌部におけるアルドラーゼA、シクロフィリンAおよびアネキシンA2の免疫組織染色>
次に3つの候補タンパク質の発現について免疫染色を実施した。結果を図6、図7、図8に示す。
図6はアルドラーゼAの免疫組織染色の写真(図6(a)および図6(b))と免疫組織染色のスコア(図6(c))である。図6(a)および(b)はそれぞれ(a−1)、(a−2)と(b−1)、(b−2)がある。(a−2)および(b−2)は、(a−1)および(b−1)の一部拡大写真である。
また、図6(c)は横軸に非癌部(non−cancer)と癌部(cancer)であり、縦軸が免疫染色のスコアである。図6(c)で示すように、癌部においてaldolase Aが強く発現していた。なお、「*」はP値<0.05を表す。
図7はシクロフィリンAの免疫組織染色の写真(図7(a)および図7(b))と免疫組織染色のスコア(図7(c))である。図7(a)および(b)はそれぞれ(a−1)、(a−2)と(b−1)、(b−2)がある。(a−2)および(b−2)は、(a−1)および(b−1)の一部拡大写真である。
また、図7(c)は横軸に非癌部(non−cancer)と癌部(cancer)であり、縦軸が免疫染色のスコアである。図7(c)で示すように、癌部においてcyclophilin Aが強く発現していた。なお、「**」はP値<0.001を表す。
図8はアネキシンA2の免疫組織染色の写真(図8(a)および図8(b))と免疫組織染色のスコア(図8(c))である。図8(a)および(b)はそれぞれ(a−1)、(a−2)と(b−1)、(b−2)がある。(a−2)および(b−2)は、(a−1)および(b−1)の一部拡大写真である。
また、図8(c)は横軸に非癌部(non−cancer)と癌部(cancer)であり、縦軸が免疫染色のスコアである。図8(c)で示すように、癌部においてアネキシンA2が強く発現していた。なお、「**」はP値<0.001を表す。
以上のように、免疫染色の結果、3つの候補タンパク質はいずれも、非癌部に比べて癌部で有意に高く発現していた。なお、正常粘膜の表層の一部においてこれらの候補タンパク質が強く発現していたため、非癌部の免疫染色スコアは、平均が3または4であった。
6.<培養大腸癌細胞におけるアルドラーゼA、シクロフィリンA及びアネキシンA2の発現>
候補タンパク質が、バイオマーカーとして適しているかを調べるため、培養大腸癌細胞における候補タンパク質のmRNA及びタンパク質の発現を定量PCRとウェスタンブロットで確認した。
図9において、図9(a)〜(c)は、それぞれ、アルドラーゼA、シクロフィリンA、及びアネキシンA2のmRNA量を表す。各図において、縦軸はそれぞれのタンパク質のmRNA量(単位なし)であり、横軸は、細胞種類である。なお、縦軸は18SrRNA量で正規化してある。すでに説明したように、CCD841は正常大腸上皮細胞であり、DLD−1、SW480及びSW620は、培養大腸癌細胞である。
図9(a)〜(c)でわかるように、今回検討した培養細胞全てで候補タンパク質は発現しており、またその発現量は正常細胞に比べて大腸癌細胞で全体的に上昇している傾向が見られた。なお、「*」はP値<0.05であり、「**」はP値<0.001を表す。
図9(d)および図9(e)は、ウェスタンブロットの写真である。図9(d)は細胞抽出液から得た結果であり、図9(e)は培養液から得た結果である。図9(d)は上からアルドラーゼA、シクロフィリンA及びアネキシンA2であり、一番下がβ−actinである。β−actinはコントロールとして示した。
各写真の横方向には、細胞種類を示した。CCD841は正常細胞であり、その他は癌細胞である。アルドラーゼAは、いずれの細胞においても、黒い線状の影(免疫反応産物)が確認できる。シクロフィリンA及びアネキシンA2も、いずれの細胞においても、黒い線状の影が確認できる。β−actinは内因性コントロールとして用い、全ての試料で同一量のタンパク質が泳動された事を確認した。したがって、いずれのタンパク質も細胞のmRNAの発現量と類似しているといえる。
図9(e)は、培養液から得たウェスタンブロットの結果である。アルドラーゼAは、3つの大腸癌細胞の培養液では、黒い影は認められなかった。しかし、正常大腸上皮細胞では、黒い影が認められた。つまり、アルドラーゼAは、正常細胞では、細胞外に分泌されるが、大腸癌細胞では、細胞外に分泌されていないといえる。
シクロフィリンAは、全ての細胞において、黒い影は認められなかった。つまり、シクロフィリンAは、細胞外には分泌されないタンパク質である。
アネキシンA2は正常細胞とSW480(大腸癌細胞)において黒い影が認められた。つまり、アネキシンA2は、細胞外に分泌される場合とされない場合がある。
以上のように検討した大腸癌細胞全てでaldolase A(アルドラーゼA)のmRNA及びタンパク質は正常細胞における発現量より有意に多く発現していた。一方、正常細胞では培養液中でもaldolase Aの存在が認められたのに対して、3つの大腸癌細胞の培養液中では存在が認められなかった(図9(e))。
これらのことは、大腸癌の進行に伴う遺伝子異常の蓄積などによりaldolase Aの細胞外への分泌が抑制されたことを示唆している。それゆえ、血中におけるaldolase Aの実量の低下は、大腸癌の早期発見のためのバイオマーカーとして有用であるといえる。
本発明に係る大腸癌マーカーは、大腸癌細胞の検出に好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. 大腸癌マーカーとしてのアルドラーゼAの生体試料中における実量を測定する工程と、
    アルドラーゼAの基準量と、前記実量を比較する工程を含む大腸癌マーカーの分析方法。
  2. アルドラーゼAからなる大腸癌マーカー。
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