JP6747061B2 - 無機層状材料、無機層状材料積層体、及び無機層状材料分散液 - Google Patents

無機層状材料、無機層状材料積層体、及び無機層状材料分散液 Download PDF

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本開示は、無機層状材料、無機層状材料積層体、及び無機層状材料分散液に関する。
黒鉛(グラファイト)の単層構造であるグラフェンは、炭素六員環が平面方向に連なった二次元平面結晶であり、優れた導電性、熱伝導性等、優れた特性を有することから注目されている。グラフェンの優れた導電性、熱伝導性を引き出すためには、単層のグラフェン又は100nm以下等の範囲で複層化した薄片状黒鉛を用いることが求められている。
グラファイトと同様に層状結晶構造を有する単体や無機層状化合物を包含する無機層状物質を、単層化したナノシートや、当該ナノシートを100nm以下の範囲で複層化したような薄片も、極めて薄い厚みに比べて、面サイズは通常μmオーダーという異方性の高い材料である。このような無機層状物質のナノシート乃至100nm以下の範囲で複層化したような薄片は、高い比表面積を有したり、その2次元構造に起因する特殊な物性や、更には新規な物性を有し得ることから、ナノ粒子、ナノチューブ等と並ぶ、ナノ物質の新しいカテゴリーとして注目されている。
非特許文献1には、六方晶窒化ホウ素や硫化モリブデン等の無機層状化合物は、黒鉛と同様に液相で超音波照射を用いて剥離することにより、2次元ナノシートを製造することができると、開示されている。しかしながら、非特許文献1の方法によると面内方向の微細化が非常に進んでしまうものと微細化が不十分なものの両方が生成し、粒径が広範囲に分布してしまう傾向にあった。面内方向の微細化が非常に進んでしまうと、無機層状化合物の薄片同士が積層した積層膜を形成する際に、積層膜の機械的強度を低下させたり、積層膜内において電気や熱等を伝達させる際に薄片間の接触抵抗を増大させたりする要因になり機能向上において好ましくない。また、微細化が進まないものにおいては、100nmより厚い薄片が多く得られる傾向が高く、ナノシート乃至100nm以下の範囲で複層化したような薄片は、収率が悪かった。
また特許文献1には、窒化ホウ素をイオン液体と混合し、超音波照射等により窒化ホウ素を剥離することで、窒化ホウ素ナノシートがイオン液体中に分散している窒化ホウ素ナノシート含有分散液が得られる旨が開示され、更に、窒化ホウ素ナノシートと前記窒化ホウ素ナノシートに吸着しているイオン液体とを備える窒化ホウ素ナノシート複合体は溶媒中や樹脂中での分散性に優れると開示されている。しかしながら、特許文献1で用いるイオン液体は窒化ホウ素の薄片へ強固に吸着し、洗浄や焼成によっても除去しにくい。そのため、特許文献1で得られるイオン液体が吸着した窒化ホウ素の薄片は分散性には優れるものの、薄片が積層した積層膜、自立膜を形成することは困難であった。特に、2次元構造に起因する特殊な物性を損なわないような窒化ホウ素の薄片同士が直に隣接する積層膜を作製することは困難であった。イオン液体が吸着した窒化ホウ素の薄片同士が積層した積層膜は、例えば放熱性能に劣ると考えられる。
以上のことから、このような無機層状材料のナノシート乃至100nm以下の範囲で複層化したような薄片が、面内方向の微細化が進み過ぎない状態でより収率高く得られることが望まれていた。また、無機層状材料のナノシート乃至100nm以下の範囲で複層化したような薄片が、凝集し難く、且つ、2次元構造に起因する特殊な物性に優れた積層体を形成し易いなど、加工し易い状態で得られることが望まれていた。
特開2015−187057号
"Science",2011,331,p568−571
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、凝集し難く且つ加工し易い無機層状材料及び、当該無機層状材料を用いた無機層状材料積層体、並びに前記無機層状材料を含む無機層状材料分散液を提供することを第一の目的とする。
更に、収率が向上した無機層状材料の製造方法及び無機層状材料積層体の製造方法、薄片化が不十分な無機層状材料の残留が低下した無機層状材料分散液の製造方法を提供することを第二の目的とする。
(第1の実施形態)
前記第一の目的を解決するための本開示の1実施形態は、無機層状物質の片であり、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上5%以下であり、X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内であって、平均厚みが100nm以下である、無機層状材料を提供する。
前記第一の目的を解決するための本開示の1実施形態は、前記本開示に係る無機層状材料が積層されてなる、無機層状材料積層体を提供する。
また、前記第一の目的を解決するための本開示の1実施形態は、前記本開示に係る無機層状材料が溶媒に分散されてなる、無機層状材料分散液を提供する。
(第2の実施形態)
前記第二の目的を解決するための本開示の1実施形態は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程を有する、無機層状材料の製造方法を提供する。
前記第二の目的を解決するための本開示の1実施形態は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程を有する、無機層状材料分散液の製造方法を提供する。
前記第二の目的を解決するための本開示の1実施形態は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程により無機層状材料分散液とする工程と、
前記無機層状材料分散液を成膜又は成形する工程とを有する、無機層状材料積層体の製造方法を提供する。
(第3の実施形態)
前記第二の目的を解決するための本開示の別の1実施形態は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程を有する、無機層状材料の製造方法を提供する。
前記第二の目的を解決するための本開示の別の1実施形態は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程
のいずれかの工程を有する、無機層状材料分散液の製造方法を提供する。
前記第二の目的を解決するための本開示の別の1実施形態は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程
のいずれかの工程により無機層状材料分散液とする工程と、
前記無機層状材料分散液を成膜又は成形する工程とを有する、無機層状材料積層体の製造方法を提供する。
本開示の1実施形態によれば、凝集し難く且つ加工し易い無機層状材料及び、当該無機層状材料を用いた無機層状材料積層体、並びに前記無機層状材料を含む無機層状材料分散液を提供することができる。
更に、本開示の1実施形態によれば、収率が向上した無機層状材料の製造方法及び無機層状材料積層体の製造方法、薄片化が不十分な無機層状材料の残留が低下した無機層状材料分散液の製造方法を提供することができる。
実施例1−3で得られた本開示に係る無機層状材料積層体1のX線回折法による測定結果である。 実施例1−2で得られた本開示に係る無機層状材料1のAFM写真の1つである。 実施例1−3で得られた本開示に係る無機層状材料積層体1のSEM写真(10000倍)である。 実施例1−3で得られた本開示に係る無機層状材料積層体1のSEM写真(3000倍)である。
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
I.第1及び第2の実施形態
以下、本開示の第1の実施形態の無機層状材料、無機層状材料分散液、及び無機層状材料積層体、並びに、これらの第1の実施形態の物を製造するのに適した、第2の実施形態の無機層状材料の製造方法、無機層状材料分散液の製造方法、及び無機層状材料積層体の製造方法について順に説明する。
本開示において表面張力は、液体表面の有する、液体内部と比較して余剰な単位面積当たりの自由エネルギーと定義される。
1.無機層状材料
本開示の1実施形態の無機層状材料は、無機層状物質の片であり、
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上5%以下であり、
X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内であって、
平均厚みが100nm以下である。
本開示において、無機層状物質とは、グラファイトと同様に層状の結晶構造を有する単体や無機層状化合物を包含するものであり、グラファイト(黒鉛)は含まれない。このような無機層状物質は、層状結晶構造を有するものであり、例えば共有結合やイオン結合のような強い結合により形成されている単位層が、主に弱いファンデルワールス力を介して積層した層状構造を有する。
無機層状物質のうち、単体としては例えば、リン(特に黒リン)等が挙げられ、無機層状化合物としては、例えば、グラファイトの類似化合物である六方晶窒化ホウ素(h−BN)、菱面体晶窒化ホウ素(r−BN)、乱層構造窒化ホウ素(t−BN)等の層状構造を含む窒化ホウ素;六方晶炭窒化ホウ素(h−BCN);遷移金属ダイカルコゲナイド(MCh2、ここで、M=Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W等の遷移金属、Ch=S,Se,Teから選ばれる少なくとも1種);13族カルコゲナイド(GaS,GaSe,GaTe,InSe等);14族カルコゲナイド(GeS,SnS,SnSe,PbO等);ビスマスカルコゲナイド(BiSe,BiTe);層状酸化物(酸化チタン、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化タンタル、ぺロブスカイト、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化タングステン);層状ケイ酸塩(雲母、スメクタイト、タルク、カオリン等)等が挙げられる。
本開示に用いられる無機層状物質としては、中でも、グラフェンとよく似た結晶構造を有する、六方晶窒化ホウ素、及び遷移金属ダイカルコゲナイドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の1実施形態は、無機層状物質の片であり、無機層状物質を単層化したナノシート、及び、当該ナノシートが複層化された片の少なくとも一方を含み、薄片の平均厚みが100nm以下の範囲の無機層状材料である。
本開示の1実施形態の無機層状材料は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上5%以下であり、X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内である。
本開示の1実施形態の無機層状材料は、微量ではあるがフッ素が吸着または結合し、無機層状物質の薄片間の剥離が促進されてなるものであり、単層のナノシート又は前記平均面間隔が無機層状物質と同様の範囲内で複層化した片であって平均厚みが100nm以下であることから、2次元構造に起因する特殊な物性や、高い比表面積に対する応用を期待できるものである。
2次元構造に起因する特性としては、原料として用いられる無機層状物質の構成原子や原子配列等によるが、例えば、熱伝導性、高絶縁性、導電性、半導体性、磁性、強誘電性、焦電性、光磁気性、機械的特性、電磁波吸収性、電磁波反射性、非線形光学性、光吸収性、発光性等が挙げられる。
本開示の無機層状材料は、フッ素化グラファイトのようにフッ素化した化合物や、無機層状物質にフッ化水素をドーピングした材料とは明確に区別されるものである。このような場合には、グラファイトの場合と同様に、平均面間隔がフッ素化前やフッ化水素ドーピング前の無機層状物質よりもずっと広い面間隔を有するものとなり、且つ、上記飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が5%をはるかに超えるものとなる。フッ化水素ガスをドーピングすると、材料の安定性が悪く、加工性にも問題がある。
それに対して、本開示の微量のフッ素が吸着又は結合した無機層状材料は、安定性に優れ、剥離した無機層状材料がより再凝集し難いものである。また、前記無機層状材料に吸着又は結合したフッ素は上記のようにかなり微量であるため、無機層状材料の加工性や物性に影響を与えず、本開示の無機層状材料は、加工性にも優れるものである。本開示によれば、前記無機層状材料が凝集し難く且つ加工し易い薄片のまま積層し、集積膜等の積層体を任意に形成することができるため、各種物性に優れた無機層状材料積層体を得ることができる。
本開示の無機層状材料に吸着または結合しているフッ素は微量であることから、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いることが有効であることが判明した。飛行時間型二次イオン質量分析法は、固体試料の最表面にどのような成分(原子や分子)が存在するかを調べるための装置である。飛行時間型二次イオン質量分析法によれば、後述のX線光電子分光法では検出できないような極微量成分を検出することができる。
前記飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)は、飛行時間型二次イオン質量分析計(例えば、Physical Electronics社製、型名:TRIFTII)を用いて、69Gaを照射することで検出されるNEGATIVE2次イオンを、2次イオンマススペクトルとして検出することにより行う。当該飛行時間型二次イオン質量分析法により測定された、全(−)イオンの総カウント数と、フッ素(−)イオンのカウント数とを計測し、上記全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合を算出することができる。
また、本開示の無機層状材料は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上であるが、導電性及び熱伝導性により優れた無機層状材料積層体乃至無機層状材料とする点から、前記割合は5%以下であることが好ましく、更に 4%以下であることが好ましく、より更に3%以下であることが好ましい。ノイズとみなせるフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.1%〜0.2%程度となる場合があるため、ノイズを除く点から、0.4%以上としている。中でも前記フッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.45%以上であることが好ましく、0.5%以上であることが更に好ましい。
本開示の無機層状材料において、フッ素原子は微量しか存在しないため、X線光電子分光法による測定ではフッ素原子の組成は0%と測定されても良い。
なお、ここでX線光電子分光法による測定は、Thermo Fisher Scientific 社製(VG Theta Probe)、アルバックファイ社製(PHI5000 Versa Probe)等のX線光電子分光装置を用い、X線を試料に照射して検出される二次電子のスペクトルを解析して行うことができる。前記パーセントは、原子百分率を表す。
また、本開示の無機層状材料は、無機層状物質の片であり、X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内である。
本開示の無機層状材料は、X線回折法による平均面間隔や結晶構造の測定と、蛍光X線測定による含有元素の特定や赤外分光測定による層間挿入した有機物の特定等を組み合わせることにより、無機層状物質を同定することができる。
本開示の無機層状材料は、原料の無機層状物質の薄片間の剥離が促進されてなるものであるが、原料の無機層状物質と同様の平均面間隔を有するものであり、X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内である。
例えば、通常、六方晶窒化ホウ素の(002)面の平均面間隔(d002)は0.335nmであるので、本開示の無機層状材料が六方晶窒化ホウ素の片である場合、平均面間隔(d002)は0.333nm以上0.337nm以下の範囲内にある。また、通常、二硫化モリブデンの(002)面の平均面間隔(d002)は0.616nmであるので、本開示の無機層状材料が二硫化モリブデンの片である場合、平均面間隔(d002)は0.614nm以上0.618nm以下の範囲内にある。
無機層状材料に対して、X線回折装置(粉末X線回折 例えば、株式会社リガク製、型名:Miniflex II)を用いて、CuKα線(λ=0.15418nm)による回折パターンから、ピーク位置の2θを特定し、Braggの回折式:λ=2d・sinθより、平均面間隔:dを算出することができる。
本開示の無機層状材料は、各々は、構成する単位層厚みの整数倍の厚みを有するものであり、平均厚みが約0.3nm以上100nm以下である。本開示の無機層状材料の平均厚みは、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、より更に好ましくは50nm以下であることが望ましい。
なお、本開示において「平均厚み」とは、例えば、ガス吸着BET法の比表面積から、無機層状材料を板状と仮定しエッジの面積を無視して、無機層状材料の密度を用いて算出した値をいう。
より具体的には以下のようにして平均厚みを求めることができる。
ガス吸着BET法による無機層状材料の比表面積は、JIS Z 8830に記載されたBET一点法に従って、比表面積測定装置(例えばMicrometrics社製のFlow Sorb III 2310)を用いることにより測定することができる。
得られた比表面積(A:単位重量当たりの表面積)、無機層状材料の密度(ρ:単位体積当たりの物質の質量)を用いて以下のように算出する。ここで用いられる無機層状材料の密度は、X線回折法による平均面間隔の測定により同定される無機層状材料の理論密度をいい、国立研究開発法人である物質・材料研究機構が提供する無機材料データベース「Atom Work」、もしくは一般社団法人である化学情報協会が提供するデータベース「SciFinder」を参照することにより求めることができる。
アスペクト比の大きい直方体(板状)において、比表面積(A)、密度(ρ)、平均厚み(d)、質量(g)、直方体の底面積(S)、底面の周囲長(L)とすると、
A=(2S+L×d)/g
ここで、アスペクト比が十分に大きく、2S>>L×dであることより、
A=2S/g ・・・式(1)
一方、ρ=g/(体積)=g/(S×d) ・・・式(2)
上記式(1)及び式(2)より、d=2/(ρ×A) ・・・式(3)と変形することができる。
前記式(3)を用いて、測定された比表面積(A)と密度(ρ)を用いて、平均厚みdを算出することができる。
本開示の無機層状材料は、薄片の厚みが50nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合が、10個数%以上であることが好ましく、更に50個数%以上であることが好ましく、より更に70個数%以上であることが好ましい。2次元構造に起因する特性に優れる点から、薄片の厚みが50nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合は多ければ多いほど好ましく、80個数%以上であることがより好ましく、90個数%以上であることがより更に好ましい。中でも、厚みが0.3nm以上10nm未満の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合は、10個数%以上であることが好ましく、更に20個数%以上であることが好ましい。
前記個数%は、無機層状材料の全個数に対する、該当する厚みの無機層状材料の個数の割合を表す。
無機層状材料の各薄片の厚みは、より具体的には以下のようにして求めることができる。
無機層状材料、無機層状材料を含む混合液、又は無機層状材料分散液をサンプリングし、溶媒で20倍〜2000倍に希釈して薄片を凝集させずに分散させた後に、孔径0.02μm以下のメンブレンフィルター上に塗布することで溶媒を濾別しメンブレンフィルター上に無機層状材料を凝集させずに独立した状態で配置させる。分散剤が付着している場合には、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒で無機層状材料を洗浄することにより分散剤を除去しても良い。メンブレンフィルター上に凝集させずに独立した状態で配置された無機層状材料に、洗浄済みのシリコンウエハーを押し付け、剥がすことでシリコンウエハー上に無機層状材料を転写する。このシリコンウエハー上に独立分散した状態で付着している無機層状材料をAFMで測定し、薄片の厚みを測定する。AFM測定は、島津製作所製ナノサーチ顕微鏡SFT−3500における走査型プローブ顕微鏡(SPM)の機能を用い、コンタクトモード、即ちAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で走査範囲を10μm×10μmにして測定を行うことができる。シリコンウエハーに付着している無機層状材料におけるシリコンウエハーと無機層状材料の高さの差を無機層状材料の厚みとする。
前記個数%は、AFMにより、無機層状材料を合計200個観測できるまで上記操作を繰り返し、AFMで観測された200個のうち、該当する厚みを有する無機層状材料の個数を求め、200個中の個数割合を求めることで、算出することができる。
また、本開示の無機層状材料の面方向サイズは、無機層状材料の面積が最大になる方向から見た時の無機層状材料の表面の大きさをいい、最大径が0.05μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましく、更に0.1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、より更に0.5μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。前記面方向サイズは、光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等で直接観察により測定できる。平均最大径は、平均厚みと同様に、顕微鏡で測定した200個の無機層状材料の最大径の平均値を算出することで求めることができる。
本開示の無機層状材料は各々、アスペクト比(最大径/厚み)が3以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。本開示の無機層状材料の平均アスペクト比(平均最大径/平均厚み)は3以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
本開示の無機層状材料は、例えば、後述の本開示の第2の実施形態の無機層状材料の製造方法により製造することができる。
[無機層状材料の製造方法]
本開示の第2の実施形態の無機層状材料の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(以下、分散処理工程ということがある)を有する。
前記無機層状材料の製造方法により得られる無機層状材料は、単層の無機層状材料、及び、100nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合、更には、50nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が高いため、分級処理をしなくても優れた2次元構造に起因する特性を有する。また、充分に薄片化されていない無機層状材料がほとんど残留しないため、分級処理をしても無機層状材料の質量はほとんど低下せず、無機層状材料が高回収率で得られる。
前記無機層状材料の製造方法を用いると、単層の無機層状材料、及び、100nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が20質量%以上の収率で、より好ましくは50質量%以上の収率で、より好ましくは70質量%以上の収率で、より更に好ましくは75質量%以上の収率で、無機層状材料を得ることが可能であり、100質量%の収率で無機層状材料を得ることも可能である。更には、前記無機層状材料の製造方法を用いると、単層の無機層状材料、及び、50nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が20質量%以上の収率で、より好ましくは50質量%以上の収率で、より好ましくは70質量%以上の収率で、より更に好ましくは75質量%以上の収率で、無機層状材料を得ることが可能であり、100質量%の収率で無機層状材料を得ることも可能である。
前記無機層状材料の製造方法によれば、無機層状物質の薄片間の剥離が容易に進行して無機層状材料が生成され、且つ、当該無機層状材料が再凝集しにくいため、2次元構造に起因する特性に優れた無機層状材料を高収率で得ることができる。
無機層状物質は、二次元構造を有するナノシートが多層に積層した構造を有している。当該無機層状物質において、各層間にはファンデルワールス力が生じており、比較的弱い力で結合しているものと推定される。
使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒は、比較的低極性であり、表面張力が小さいため、前記無機層状物質の層間に浸入しやすいものと推定される。このような溶媒を用いて分散処理することにより、無機層状物質の剥離が促進されて、片である無機層状材料が生成されやすいものと推定される。
また、前記無機層状材料の製造方法においては、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤を組み合わせて用いる。このように前記フッ素系溶媒に対する溶解度の低い分散剤を選択して用いることにより、分散剤が液体の場合には、分散処理時の混合液は、前記溶媒相と、前記分散剤相の2相を含む不均一系となり、無機層状物質や無機層状材料は極性の近い前記分散剤相に存在し易い。
このような不均一の液体中においては、分散処理により生成した無機層状材料の周囲に分散剤が存在するために、無機層状材料同士が直ちに凝集することを抑制する。また、分散剤が高粘性であれば、その分、無機層状材料同士の接触が抑制され、その結果、無機層状材料の凝集は抑制される。更にこのような製造方法においては、前記分散剤相が前記溶媒相と分離しているため、分散剤が吸着した無機層状材料は前記分散剤相へ移行して、より再凝集が抑制されやすいものと推定される。
また、分散剤が固体の場合には、分散処理時の混合液は、前記溶媒相中に固体の無機層状材料と固体の分散剤を含む不均一系となり、無機層状材料と分散剤は、どちらも前記溶媒に対して親和性が低いため、前記溶媒相中では相対的に無機層状材料と分散剤の親和性が高まり、分散処理により生成した無機層状材料の周囲に分散剤が存在するために、無機層状材料同士の凝集を抑制し、分散性が向上すると推定される。
以上のことから、前記無機層状材料の製造方法によれば、微量ではあるがフッ素が吸着または結合し、無機層状物質の剥離が容易に進行して無機層状材料が生成され、且つ、無機層状材料が再凝集しにくくなり、前記本開示に係る無機層状材料を高収率で得ることができる。
前記無機層状材料の製造方法は、少なくとも分散処理工程を有するものであり、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の工程を有していてもよい。以下、このような無機層状材料の製造方法について順に詳細に説明する。
<無機層状物質>
本開示において原料となる無機層状物質の種類としては、前記第1の実施形態において説明した無機層状物質と同様であって良いのでここでの説明は省略する。
本開示において原料として用いられる無機層状物質は、例えば、天然無機層状材料、人造無機層状材料等を適宜選択することができる。
本開示において原料として用いられる無機層状物質は、無機層状物質の純度が高い方が好ましく、純度が80%以上であるものを用いることが好ましい。
原料として用いられる無機層状物質の大きさは、特に限定されず、最終的に得ようとする無機層状材料の大きさに応じて選択される。
当該無機層状物質の分散処理前における粒径は、分散処理が可能な大きさであれば特に限定されないが、通常、最大径が100μm以下のものが好ましく用いられる。
<使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒>
本開示においては、分散処理時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒が用いられることが好ましい。当該特定の溶媒は無機層状物質の層間に入り込みやすいため、無機層状物質の剥離が進行しやすくなる。なお、ここでの使用温度とは、分散処理開始時の溶媒温度をいう。
使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒の具体例としては、25℃において表面張力が20mN/m以下の、フッ素化アルキル基、フッ素化アルキルエーテル基等を有するフッ素系溶媒等が挙げられる。例えば、パーフルオロカーボン(例えば、C(2X+2):x=12の場合約16mN/m)、ハイドロフルオロエーテル(例えば、C49OCH:13.6mN/m、C49OC25:13.6mN/m、COCH:12.4mN/m、CCF(OCH)C:15mN/m等)、及びハイドロフルオロカーボン(例えば、C(2X+2―y):x=12、y=1〜12の場合約16mN/m)から使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を適宜選択して用いることができる。本開示においては、無機層状物質の層間に入り込みやすく、無機層状物質の剥離が進行しやすい点から、中でも、フッ素化アルキル基、及びフッ素化アルキルエーテル基の少なくとも1種を有するフッ素系溶剤を用いることが好ましい。
また、当該溶媒としては、無機層状物質の層間に入り込みやすく、無機層状物質の剥離が進行しやすい点から、中でも、使用温度での表面張力が15mN/m以下のフッ素系溶媒であることが好ましい。
本開示において使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<分散剤>
本開示において分散剤は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満のものを用いることが好ましい。
このような分散剤を選択して用いることにより、無機層状材料の再凝集を抑制し、当該無機層状材料を高収率で得ることができる。
前記分散剤は、無機層状材料を分散可能な従来公知の分散剤の中から、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満のものを適宜選択して用いればよい。
分散剤としては、無機層状材料に対して比較的親和性の高い疎水性基と、親水性基とを1分子内に有する化合物が挙げられる。当該疎水性基としては炭素数が3以上、より好ましくは6以上の炭化水素基が挙げられ、親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、及びこれらの塩等が挙げられる。このような分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性等の界面活性剤を使用できる。また、分散剤としては、高分子界面活性剤(高分子分散剤)を用いても良い。
分散剤としては、例えば、ドデカン酸ナトリウムのような脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムのようなモノアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル(塩)、モノアルキルリン酸塩等のアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウム塩類などのカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン系界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド,アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。上述した金属塩は、アニオン系界面活性剤の場合は塩の代わりに金属イオンの無い脂肪酸やスルホン酸、硫酸、リン酸等で、カチオン系の場合はアンモニウム塩の代わりにアミン構造であっても使用可能である。
また、高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;ポリエチレンイミン及びその誘導体等が挙げられる。ポリウレタン類としては、主骨格がポリウレタンで側鎖にポリエステル及びポリエーテル鎖の少なくとも1種及びアルキルアンモニウム塩を有する構造も好適に用いられる。
なお、本開示において、溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
サンプル管瓶に、本開示の製造方法に用いる溶媒と評価しようとする分散剤を0.1(g/100g溶媒)の濃度になる様に投入し、撹拌後、遠心分離により溶媒と残存する分散剤を分離後、残存する分散剤の質量を測定し、溶解度を算出する。分散剤が前記溶媒に全て溶解した場合には当該分散剤の前記溶媒に対する溶解度は0.1(g/100g溶媒)以上と判断される。
本開示において分散剤は、中でも、後述する無機層状材料分散液を調製する際に用いられる溶媒に対する前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上であることが、後述する無機層状材料分散液の分散性、及び、無機層状材料及び無機層状材料積層体の2次元構造に起因する特性の向上の点から好ましい。後述する無機層状材料分散液を調製する際に用いられる溶媒に対して、前記のように溶解度が高い分散剤を選択して用いると、当該分散剤は無機層状材料分散液中では溶解して均一性の高い分散液となる。更に、無機層状材料分散液を用いて無機層状材料積層体を調製する際には、当該分散剤は無機層状材料分散液に用いられた溶媒と共に除去されやすく、更に、無機層状材料積層体に残留した分散剤も、当該溶媒を用いて洗浄することにより容易に除去可能で、2次元構造に起因する特性が向上する。
また、本開示において分散剤は、室温(25℃)において固体であっても、液状であっても、生成された無機層状材料が、分散剤相側に移行しやすく再凝集が抑制されやすい点から好ましい。
中でも、分散剤の粘度が25℃において10mPa・s以上であることが、前記溶媒と当該分散剤の2相を含む混合液が高粘性の液体となり、無機層状材料の再凝集を抑制する点から更に好ましい。分散剤の粘度は、25℃において100mPa・s以上50000mPa・s以下であることが更に好ましく、25℃において100mPa・s以上3000mPa・s以下であることがより更に好ましい。
なお、当該分散剤の粘度は、25℃において、ASTMD4440に準じて測定するものをいう。
本開示において分散剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<分散処理>
前記無機層状材料の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状材料と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、当該混合液を、従来公知の分散機を用いて分散処理することにより、無機層状物質の剥離が容易に進行して無機層状材料が生成され、且つ、無機層状材料が再凝集しにくくなり、無機層状材料を高収率で得ることができる。
分散処理を行うための分散機としては、超音波分散機、2本ロール、3本ロール等のロールミル、アトライター、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル、ミキサーミル、機械的撹拌等が挙げられる。これらの中でも、せん断力を付与できる方法等、粘度が高い液体を分散させるのに適した方法を選択して用いることが好ましく、粉砕ボールを用いたボールミルとすることが好ましい。ボールミルのボール形は特に限定されないが、1mm以上100mm以下が好ましく、5mm以上50mm以下がより好ましい。
分散処理時における混合液の各成分の含有割合は特に限定されず、適宜調整すればよい。混合液中の無機層状材料と、前記分散剤との含有比は、再凝集を抑制する点から、無機層状材料1質量部に対して、分散剤が1質量部以上500質量部以下であることが好ましく、2質量部以上100質量部以上であることがより好ましい。
また、混合液中の無機層状材料と、前記溶媒との含有比は、無機層状材料からの剥離効率を上げて、無機層状材料の収率を向上する点から、無機層状材料1質量部に対して、溶媒が10質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、20質量部以上50000質量部以下であることがより好ましい。
<その他の工程>
前記無機層状材料の製造方法は、本開示の効果を損なわない範囲で更に他の工程を有していてもよい。このような工程としては、例えば、無機層状材料を取り出すための使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程や、分散剤を溶解して除去する工程等が挙げられる。前記溶媒を除去する工程は、後述する無機層状材料分散液の製造方法の溶媒除去工程と同様にして行うことができる。また、分散剤を溶解して除去する工程は、例えば前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を用いて、無機層状材料の表面に付着している分散剤を溶解、洗浄することにより行うことができる。
また、後述する無機層状材料分散液の製造方法と同様にして無機層状材料分散液を製造し、当該無機層状材料分散液から前記無機層状材料を得ることも好ましい。
更に、充分に薄片化されなかった無機層状材料を除去するための分級工程を含んでいても良い。
上記分級工程は、従来公知の分級方法の中から適宜選択して用いることができる。一方、前記製造方法により得られる無機層状材料は、充分に薄片化されていない無機層状材料がほとんど残留しないため、当該分級工程を行うことなく、2次元構造に起因する特性に優れた本開示の無機層状材料を得ることができる。
本開示の無機層状材料は、粉末として、種々の態様で、種々に応用することができる。下記に例示するが、これらに限定されるものではない。
本開示の無機層状材料は、溶媒を含む分散液として用いても良く、更に樹脂等と混合したペースト状の樹脂組成物として用いてもよい。前記無機層状材料を含む分散液は、後述するような無機層状材料積層体の製造に用いることができるほか、各種塗布液やインクとして用いることができる。
また、本開示の無機層状材料は、膜乃至シート状、成形体として用いても良い。
更に、本開示の無機層状材料は、高分子複合材料としても良いし、樹脂と混合したペレット、ワイヤー等として用いても良い。
2.無機層状材料分散液
本開示の1実施形態の無機層状材料分散液は、前記本開示の1実施形態の無機層状材料が溶媒に分散されてなるものである。
前述のように、本開示に係る無機層状材料は2次元構造に起因する特性に優れるため、本開示に係る無機層状材料分散液は、優れた2次元構造に起因する特性を有する無機層状材料積層体を製造するための予備調製物として優れている。
また、無機層状材料分散液に樹脂等を添加して、樹脂組成物として用いても良い。
本開示に係る無機層状材料としては、前述しているため、ここでの説明を省略する。
また、本開示に係る無機層状材料分散液は、分散剤を含有していることが好ましい。当該分散剤としては、前記無機層状材料の製造方法において説明したものと同様の分散剤を適宜選択して用いることができるため、ここでの説明を省略する。
また、本開示に係る無機層状材料分散液に含まれる溶媒は、前記本開示に係る無機層状材料を分散することができる溶媒であれば、特に限定されず用いることができる。中でも、前記分散剤を含有する場合に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒であることが好ましい。
当該前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上となる溶媒としては、分散液の分散安定性の点から、前記分散剤の溶解度が10(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましく、更に20(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましい。
前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒としては、分散剤に応じて適宜選択されれば良く、例えば、水、メタノール、フェノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゼン、酢酸エチル等が挙げられる。
本開示において前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本開示の無機層状材料分散液は、例えば、後述の本開示の第2の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法により製造することができる。
[無機層状材料分散液の製造方法]
本開示の第2の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程を有する。
前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒と前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒とが相分離する場合などには、前記(ii)の工程を用いても良い。しかし、中でも高収率で得られやすい点から、上記(i)の工程を有することが好ましい。
なお、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程を、以下、溶媒除去工程ということがあり、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程を、以下、溶媒添加工程ということがある。
本開示の無機層状材料分散液の製造方法は、前記本開示に係る無機層状材料の製造方法により得られた無機層状材料を含む混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去し、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加することにより、薄片化されていない無機層状物質の残留が少ない無機層状材料分散液の製造することができる。前記分散処理時に含まれていた使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒に入れ替えることにより、溶媒相と前記分散剤相の2相を含む不均一系であった分散液を、溶媒及び分散剤を1相とした無機層状材料分散液とすることができる。
前記無機層状材料分散液の製造方法は、少なくとも分散処理工程と、溶媒除去工程と、溶媒添加工程とを有するものであり、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の工程を有していてもよいものである。以下、このような無機層状材料分散液の製造方法について順に詳細に説明するが、分散処理工程については、前記無機層状材料の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
<溶媒除去工程>
上記(i)の工程においては、前述の分散処理工程により得られた分散処理後の混合液から、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する。当該溶媒を除去することにより、残渣として分散剤と無機層状材料との混合物を得ることができる。
溶媒を除去する方法は、用いた溶媒に応じて適宜選択すればよい。溶媒を除去する方法としては、操作の簡便性の点から、デカンテーションや濾過が好ましく、適宜加熱や減圧処理することにより溶媒を除去してもよい。
また、上記(ii)の工程においては、例えば、相分離していることを利用して分液により溶媒相を除去することができる。
<溶媒添加工程>
上記(i)の工程においては、前記溶媒除去工程により溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加することにより、無機層状材料の分散液を得ることができる。上記(ii)の工程においては、前記溶媒除去工程の前に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する。
前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上となる溶媒としては、分散液の分散安定性の点から、前記分散剤の溶解度が10(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましく、更に20(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましい。
前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒としては、前述したのでここでの説明を省略する。
本開示の無機層状材料分散液の製造方法は、本開示の効果を損なわない範囲で、更に他の工程を有していてもよい。他の工程としては、例えば、樹脂や、各種添加剤を添加する工程等が挙げられる。
無機層状材料分散液に用いられる添加剤としては、例えば、可塑剤、消泡剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
得られた無機層状材料分散液中の各成分の含有割合は特に限定されず、適宜調整すればよい。無機層状材料分散液中の無機層状材料の含有割合は、適宜調整されれば良いが、分散性の点から、無機層状材料分散液の固形分全量100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
また、無機層状材料分散液中の溶媒の含有割合は、無機層状材料分散液全量中に80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、更に90質量%以上97質量%以下であることが好ましい。
また、分散剤が含まれる場合の無機層状材料分散液中の分散剤の含有割合は、分散性の点から、無機層状材料分散液の固形分全量100質量部に対して、80質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、90質量部以上99.5質量部以下であることがより好ましい。
なお、本開示において固形分とは、溶媒以外の全ての成分を表し、例えば、液状の分散剤であっても固形分に含まれるものとする。
このように得られた無機層状材料分散液は、薄片の厚みが50nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合が、10個数%以上であることが好ましく、更に50個数%以上であることが好ましく、より更に70個数%以上であることが好ましい。2次元構造に起因する特性に優れる点から、薄片の厚みが50nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合は多ければ多いほど好ましく、80個数%以上であることがより好ましく、90個数%以上であることがより更に好ましい。中でも、厚みが0.34nm以上10nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合は、10個数%以上であることが好ましく、更に20個数%以上であることが好ましい。
3.無機層状材料積層体
本開示の1実施形態の無機層状材料積層体は、前記本開示の1実施形態の無機層状材料が積層されてなるものである。
前述のように、本開示に係る無機層状材料は平均厚みが100nm以下であって2次元構造に起因する特性に優れ、且つ、前記無機層状材料に吸着又は結合したフッ素は上記のようにかなり微量であるため、無機層状材料の加工性や物性に影響を与えないことから、前記本開示に係る無機層状材料が積層されてなる無機層状材料積層体は、優れた2次元構造に起因する特性を有する。
なお、本開示に係る無機層状材料としては、前述しているため、ここでの説明を省略する。
本開示に係る無機層状材料積層体は、前記本開示に係る無機層状材料が積層されてなる積層体であれば、形状は限定されるものではない。本開示に係る無機層状材料積層体は、前記本開示の無機層状材料の各々の少なくとも一部が互いに重なり合って積層されていれば良い。
また、本開示に係る無機層状材料積層体は、前記本開示の無機層状材料の各々の少なくとも一部が互いに接触しているものであっても良い。本開示に係る無機層状材料積層体は、前記本開示の無機層状材料の各々が、厚み方向の側面同士で接触しているものであっても良い。
本開示に係る無機層状材料積層体は、無機層状材料積層体乃至無機層状材料シートと呼称される、膜乃至シート状であっても良いし、立体構造を有する成形体であっても良い。
本開示に係る無機層状材料積層体は、構成する無機層状材料の厚みの分布により、直径18mmの円以上の面積を有する自立膜とすることも可能であるが、小片状であっても良い。
本開示に係る無機層状材料積層体が膜乃至シート状である場合、厚みは特に限定されるものではない。可撓性を有するようにする点から、本開示に係る無機層状材料積層体が膜乃至シート状である場合の厚みは1mm以下であることが好ましく、更に200μm以下であることが好ましい。
また、本開示に係る無機層状材料積層体は、前記本開示に係る無機層状材料が積層されてなるものであることから、曲面や凹凸の多い被着体に対しても追従させることができる。
本開示に係る無機層状材料積層体において、前記本開示の無機層状材料の各々の少なくとも一部が互いに重なり合って積層される方向は、通常、薄片の厚み方向である。
本開示に係る無機層状材料積層体においても、前記本開示の無機層状材料と同様に、X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内であることが好ましい。
また、本開示に係る無機層状材料積層体においても前記本開示の無機層状材料と同様に、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上であることが好ましく、0.45%以上であることがより好ましく、0.5%以上であることがより更に好ましい。また、本開示に係る無機層状材料積層体においても、前記フッ素(−)イオンのカウント数の割合は5%以下であることが好ましく、更に4%以下であることが好ましく、より更に3%以下であることが好ましい。
また、本開示に係る無機層状材料積層体においても前記本開示の無機層状材料と同様に、フッ素原子は微量しか存在しないため、X線光電子分光法による測定ではフッ素原子の組成は0%と測定されても良い。
本開示に係る無機層状材料積層体は、前記本開示に係る無機層状材料が積層されてなる積層体であるが、積層体を構成する無機層状材料の一部に薄片の厚みが100nm超過の無機層状材料が含まれていても良い。
本開示の無機層状材料積層体は、例えば、後述の本開示の第2の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法により製造することができる。
[無機層状材料積層体の製造方法]
本開示の第2の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を除去する工程
のいずれかの工程により無機層状材料分散液とする工程と、
前記無機層状材料分散液を成膜又は成形する工程とを有する。
前記無機層状材料積層体の製造方法は、少なくとも分散処理工程と、溶媒除去工程と、溶媒添加工程と、成膜又は成形工程とを有するものであり、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の工程を有していてもよいものである。以下、このような無機層状材料積層体の製造方法について順に詳細に説明するが、分散処理工程、溶媒除去工程、及び溶媒添加工程については、前記無機層状材料分散液の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
<成膜又は成形工程>
前記無機層状材料分散液を用いて、無機層状材料積層体を製造する方法は、従来公知の成膜方法又は成形方法の中から適宜選択することができる。
無機層状材料積層体の好適な成膜方法としては、濾紙、メンブレンフィルター等の多孔質基材上に前記無機層状材料分散液を滴下し、濾過することにより溶媒を除去して成膜する方法が挙げられる。また、無機層状材料積層体の好適な成形方法としては、例えば、多孔質の型に前記無機層状材料分散液を滴下し、濾過することにより溶媒を除去して成形する、鋳込み成形のような方法が挙げられる。これらの方法によれば、分散剤を溶媒と共に除去することが可能であることから、2次元構造に起因する特性に優れた無機層状材料積層体とするのに適している。
当該方法においては、更に、前記分散剤を溶解する溶媒で無機層状材料積層体を洗浄することが好ましい。分散剤を溶解する溶媒で洗浄することにより、分散剤が除去されて高純度の無機層状材料積層体を得ることができるため、2次元構造に起因する特性に優れた無機層状材料積層体とすることができる。当該分散剤を溶解する溶媒としては、前記分散剤の溶解度が、5(g/100g溶媒)以上、更に10(g/100g溶媒)以上となる溶媒を選択して用いることが好ましい。
このようにして得られた無機層状材料積層体は、前記多孔質基材又は透液性の型から剥がして単体として用いてもよく、ガラス基材や樹脂基材等、他の基材に転写して用いてもよい。
更に無機層状材料積層体をプレス機やロールプレス機等を用いて圧縮処理することで、2次元構造に起因する特性を高めても良い。
また、無機層状材料積層体の他の成膜方法としては、基材上に、前記無機層状材料分散液を公知の塗布法により塗布して塗布膜を形成し、溶媒を除去することにより無機層状材料積層体を成膜する方法、等が挙げられる。当該方法によれば、所望の基材上に無機層状材料積層体を直接形成することができるため、基材との密着性に優れた無機層状材料積層体を形成することができる。
本開示に係る無機層状材料、及び無機層状材料積層体は、各無機層状物質の2次元構造に起因する様々な特性に優れているため、本開示に係る無機層状材料、無機層状材料分散液、及び無機層状材料積層体は、例えば、ナノエレクトロニクス、ナノ複合材料、透明導電性フィルム、電極、電池、キャパシタ、水素貯蔵、エネルギー貯蔵、生体への応用、放熱シート、航空宇宙産業、センサー、トランジスタ等の様々な分野の用途に好適に適用することができる。
II.第3の実施形態
以下、本開示の第3の実施形態の無機層状材料の製造方法、無機層状材料分散液の製造方法、及び無機層状材料積層体の製造方法について順に説明する。
1.無機層状材料の製造方法
本開示の第3の実施形態の無機層状材料の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(以下、分散処理工程ということがある)を有する製造方法である。
使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒は、比較的低極性であり、表面張力が小さいため、前記無機層状物質の層間に浸入しやすい。このような溶媒を用いて分散処理することにより、前記第2の実施形態の無機層状材料の製造方法と同様に、無機層状物質の剥離が促進されて無機層状材料が生成されやすい。
また、第3の実施形態の製造方法においては、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、当該溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤を組み合わせて用いる。このような特定の分散剤を特定の溶媒と組み合わせて分散処理することにより、前記第2の実施形態の無機層状材料の製造方法と同様に、無機層状物質や無機層状材料は極性の近い前記分散剤相に存在し易くなり、分散処理により生成した無機層状材料の周囲に分散剤が存在するために、無機層状材料同士が直ちに凝集することが抑制される。更に本開示においては、前記分散剤相が前記溶媒相と分離しているため、分散剤が吸着した無機層状材料は前記分散剤相へ移行して、より再凝集が抑制されやすいものと推定される。
以上のことから、第3の実施形態の無機層状材料の製造方法によれば、無機層状物質の剥離が容易に進行して無機層状材料が生成され、且つ、無機層状材料が再凝集しにくいため、2次元構造に起因する特性に優れた無機層状材料を高収率で得ることができる。
第3の実施形態の無機層状材料の製造方法は、少なくとも分散処理工程を有するものであり、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記第2の実施形態の無機層状材料の製造方法と同様に、更に他の工程を有していてもよいものである。以下、このような第3の実施形態の無機層状材料の製造方法について順に詳細に説明する。
[分散処理工程]
当該分散処理工程において、無機層状物質と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤と、分散処理の方法とについては、前記第2の実施形態の無機層状材料の製造方法と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
<使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒>
本開示においては、分散処理時の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒が用いられる。当該特定の溶媒は無機層状物質の層間に入り込みやすいため、無機層状物質の剥離が進行しやすくなる。なお、ここでの使用温度とは、分散処理開始時の溶媒温度をいう。
使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒の具体例としては、25℃における表面張力が20mN/m以下の溶媒として、ヘキサン(17.9mN/m、以下単位省略)、ヘプタン(19.7)、2,4−ジメチルペンタン(17.7)等の炭化水素、ジエチルエーテル等のアルキルエーテル(例えばジエチルエーテル:16.7)、ジメチルシロキサン鎖を含む化合物(例えば、ヘキサメチルジシロキサン:15.1、ポリジメチルシロキサン:16〜20(重合度等により変動))、前述したようなフッ素化アルキル基、フッ素化アルキルエーテル基等を有するフッ素系溶媒(例えば、ハイドロフルオロエーテル(例えば、C49OCH:13.6mN/m、C49OC25:13.6mN/m、COCH:12.4mN/m、CCF(OCH)C:15mN/m等)、及びハイドロフルオロカーボン)等が挙げられる。本開示においては、無機層状物質の層間に入り込みやすく、無機層状物質の剥離が進行しやすい点から、中でも、フッ素系溶媒を用いることが好ましく、更に、フッ素化アルキル基、及びフッ素化アルキルエーテル基の少なくとも1種を有するフッ素系溶剤を用いることが好ましい。
また、当該溶媒としては、無機層状物質の層間に入り込みやすく、無機層状物質の剥離が進行しやすい点から、中でも、使用温度での表面張力が15mN/m以下の溶媒であることが好ましい。
第3の実施形態において使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第3の実施形態の無機層状材料の製造方法により得られる無機層状材料は、単層の無機層状材料、及び、100nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合、更には、50nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が高いため、分級処理をしなくても優れた2次元構造に起因する特性を有する。また、充分に薄片化されていない無機層状材料がほとんど残留しないため、分級処理をしても無機層状材料の質量はほとんど低下せず、薄片化された無機層状材料が高回収率で得られる。
第3の実施形態の無機層状材料の製造方法を用いると、単層の無機層状材料、及び、100nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が20質量%以上の収率で、より好ましくは50質量%以上の収率で、より好ましくは70質量%以上の収率で、より更に好ましくは75質量%以上の収率で、無機層状材料を得ることが可能であり、100質量%の収率で無機層状材料を得ることも可能である。更に、第3の実施形態の無機層状材料の製造方法を用いると、単層の無機層状材料、及び、50nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が20質量%以上の収率で、より好ましくは50質量%以上の収率で、より好ましくは70質量%以上の収率で、より更に好ましくは75質量%以上の収率で、無機層状材料を得ることが可能であり、100質量%の収率で無機層状材料を得ることも可能である。
また、第3の実施形態の無機層状材料の製造方法により得られる無機層状材料は、前述のように、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒によって、無機層状物質の剥離の薄片間の剥離が促進されてなるものであることから、前記第1の実施形態の無機層状材料と同様に、X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内と、前記無機層状物質の平均面間隔と同様になる。
また、第3の実施形態の無機層状材料の製造方法において、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒がフッ素を含む場合に得られる無機層状材料は、微量ではあるがフッ素が吸着または結合し、薄片間の剥離を促進されてなるものであることから、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は、前述した第一の本開示の無機層状材料のそれらと同様になる。
更に、第3の実施形態の無機層状材料の製造方法により得られる無機層状材料の厚み、及び面方向サイズはそれぞれ、前述した第1の実施形態の無機層状材料のそれらと同様になる。
第3の実施形態の無機層状材料の製造方法により得られる無機層状材料も、前述した第1の実施形態の無機層状材料と同様に、種々の態様で、種々に応用することができる。
2.無機層状材料分散液の製造方法
本開示の第3の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、無機層状材料と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(分散処理工程)と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(以下、溶媒除去工程ということがある)と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(以下、溶媒添加工程ということがある)
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(溶媒添加工程)と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)
のいずれかの工程を有する。
前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒と前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒とが相分離する場合などには、前記(ii)の工程を用いても良い。しかし、中でも高収率で無機層状材料を得られやすい点から、上記(i)の工程を有することが好ましい。
第3の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法は、前記第3の実施形態の無機層状材料の製造方法により得られた無機層状材料を含む混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去し、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加することにより、薄片化されていない無機層状材料の残留が少ない無機層状材料分散液の製造することができる。前記分散処理時に含まれていた使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒に入れ替えることにより、溶媒相と前記分散剤相の2相を含む不均一系であった分散液を、溶媒及び分散剤を1相とした無機層状材料分散液とすることができる。
第3の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法は、少なくとも分散処理工程と、溶媒除去工程と、溶媒添加工程とを有するものであり、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の工程を有していてもよいものである。第3の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法における、分散処理工程と、溶媒除去工程と、溶媒添加工程とについては、前述した第2の実施形態の無機層状材料の製造方法、第2の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
第3の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法により得られた無機層状材料分散液中の各成分の含有割合は特に限定されず、適宜調整すればよい。無機層状材料分散液中の無機層状材料、溶媒の含有割合、また、分散剤が含まれる場合の分散剤の含有割合は、それぞれ、前述した第1の実施形態の無機層状材料分散液のそれらと同様であることが好ましい。
このように得られた無機層状材料分散液は、薄片の厚みが50nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合が、10個数%以上であることが好ましく、更に50個数%以上であることが好ましく、より更に70個数%以上であることが好ましい。導電性及び熱伝導性に優れる点から、薄片の厚みが50nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合は多ければ多いほど好ましく、80個数%以上であることがより好ましく、90個数%以上であることがより更に好ましい。中でも、厚みが0.34nm以上10nm以下の無機層状材料の無機層状材料全体に対する含有割合は、10個数%以上であることが好ましく、更に20個数%以上であることが好ましい。
第3の実施形態の製造方法により得られた無機層状材料分散液は、単層の無機層状材料、及び、50nm以下の範囲で複層化した無機層状材料の割合が高いため、優れた2次元構造に起因する特性を有する無機層状材料積層体を製造するための予備調製物として優れている。また、第3の実施形態の製造方法により得られた無機層状材料分散液に樹脂等を添加して樹脂組成物として用いることができる。
3.無機層状材料積層体の製造方法
本開示の第3の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法は、使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒に、無機層状材料と、前記溶媒に対する溶解度が0.1(g/100g溶媒)未満の分散剤とを混合し、分散処理する工程(分散処理工程)と、
下記(i)又は(ii):
(i)前記分散処理後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)と、
前記溶媒が除去された混合物に、前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(溶媒添加工程)
(ii)前記分散処理後の混合液に、更に前記分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒を添加する工程(溶媒添加工程)と、
前記溶媒添加後の混合液から、前記使用温度での表面張力が20mN/m以下の溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)
のいずれかの工程により無機層状材料分散液とする工程と、
前記無機層状材料分散液を成膜又は成形する工程(成膜又は成形工程)とを有する。
第3の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法は、前記第3の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法により得られた無機層状材料分散液を用いて無機層状材料積層体を成膜又は成形しているため、2次元構造に起因する特性に優れた無機層状材料積層体を製造することができる。
第3の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法は、少なくとも分散処理工程と、溶媒除去工程と、溶媒添加工程と、成膜又は成形工程とを有するものであり、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の工程を有していてもよいものである。第3の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法における、分散処理工程と、溶媒除去工程と、溶媒添加工程と、成膜又は成形工程とについては、前述した第2の実施形態の無機層状材料の製造方法、第2の実施形態の無機層状材料分散液の製造方法、及び第2の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本開示の第3の実施形態の無機層状材料積層体の製造方法により得られる無機層状材料積層体も、前述した第1の実施形態の無機層状材料積層体と同様に、種々の態様で、種々に応用することができる。
以下、本開示について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本開示を制限するものではない。また、特に別途記載のない限り、25℃で実施した。
[評価方法]
<TOF−SIMSによるフッ素検出>
無機層状材料または無機層状材料積層体に対して、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析 Physical Electronics社製、型名:TRIFTII)を使用して、69Gaを照射することで検出されるNEGATIVE2次イオンを、2次イオンマススペクトルとして検出した。
試料は無機層状材料作製後6カ月以上経過する等、無機層状材料表面への分子吸着の影響が考慮される場合には、1次イオンビーム(69Ga)を用いて最表面をSiO換算にて約1nmエッチングした後、測定を行う。
<X線回折法による平均面間隔の測定>
無機層状材料または無機層状材料積層体に対して、XRD(粉末X線回折 株式会社リガク製、型名:Miniflex II)を用いて、CuKα線(λ=0.15418nm)による回折パターンから、ピーク位置の2θを特定し、Braggの回折式:λ=2d・sinθより、平均面間隔:dを算出した。
以下の例のうち、六方晶窒化ホウ素においては平均面間隔(d002)を測定した。通常、六方晶窒化ホウ素の平均面間隔(d002)は0.335nmである。
また、二硫化モリブデンにおいては平均面間隔(d002)を測定した。通常、二硫化モリブデンの平均面間隔(d002)は0.616nmである。
<無機層状材料の平均厚み>
窒素吸着BET法の比表面積から、無機層状材料を板状と仮定しエッジの面積を無視して、無機層状材料の密度を用いて算出した。
具体的には、比表面積の測定は、無機層状材料分散液を、透析膜により分散剤を除去した後に凍結乾燥することによって得られた無機層状材料を用いて行った。尚、分散液がイソプロピルアルコール等、水以外の溶媒を用いる際は、水またはt−ブチルアルコールへ溶媒置換をした後に凍結乾燥を行った。
窒素吸着BET法による比表面積は、JIS Z 8830に記載されたBET一点法に従って、流動式比表面積自動測定装置(Micrometrics社製のFlow Sorb III 2310)を用いることにより測定した。
得られた比表面積(A:単位重量当たりの表面積)、無機層状材料の密度(ρ:単位体積当たりの物質の質量)を用いて以下のように算出した。ここで用いられる無機層状材料の密度は、X線回折法による平均面間隔の測定により同定される無機層状材料の理論密度をいい、国立研究開発法人である物質・材料研究機構の提供する無機材料データベース「Atom Work」、もしくは一般社団法人化学情報協会の提供するデータベースである「SciFinder」を参照することにより求めることができる。
アスペクト比の大きい直方体(板状)において、比表面積(A)、密度(ρ)、平均厚み(d)、質量(g)、直方体の底面積(S)、底面の周囲長(L)とすると、
A=(2S+L×d)/g
ここで、アスペクト比が十分に大きく、2S>>L×dであることより、
A=2S/g ・・・式(1)
一方、ρ=g/(体積)=g/(S×d) ・・・式(2)
上記式(1)及び式(2)より、d=2/(ρ×A) ・・・式(3)と変形することができる。
前記式(3)を用いて、測定された比表面積(A)と密度(ρ)を用いて、平均厚みdを算出した。
<原子間力顕微鏡による観察>
無機層状材料を含む混合液、又は無機層状材料分散液をサンプリングし、使用した分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒で20倍〜2000倍に希釈した後に孔径0.02μmのメンブレンフィルター上に塗布することで溶媒を濾別しメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更に分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒で洗浄することにより分散剤を除去した。無機層状材料を載せた状態でメンブレンフィルターの上に洗浄済みのシリコンウエハーを押し付け、剥がすことでシリコンウエハー上に無機層状材料を転写した。このシリコンウエハー上に独立分散した状態で付着している無機層状材料をAFMで測定し、各薄片の面方向サイズの最大径を測定した。尚、AFM測定は、島津製作所製ナノサーチ顕微鏡SFT−3500における走査型プローブ顕微鏡(SPM)の機能を用い、コンタクトモード、即ちAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で走査範囲を10μm×10μmにして測定を行った。各薄片の厚みも測定することができ、シリコンウエハー上に付着している無機層状材料におけるシリコンウエハーと無機層状材料の高さの差を各無機層状材料の厚みとすることができる。尚、面方向サイズの最大径が10μmより大きい場合は、走査範囲を30μm×30μmにするか、各薄片の面方向サイズの最大径を測定する場合は、ナノサーチ顕微鏡の光学顕微鏡機能を使用して測定した。
1.実施例Iシリーズ(第1及び第2の実施形態)
(実施例1−1:無機層状材料の製造)
フッ素系溶剤(ハイドロフルオロエーテル(C49OC25)、3M社製Novec7200、表面張力13.6mN/m)20mL(28.6g)に六方晶窒化ホウ素(デンカ社製、商品名:デンカボロンナイトライド粉GP)4mgと分散剤(東京化成工業社製ドデシルベンゼンスルホン酸;前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 25(g/100g溶媒)、25℃における粘度 1200mPa・s)100mgを混合し、ボールミル(レッチェ社製ミキサーミル)にてステンレスボールと共に20Hz30分処理することにより、無機層状材料1を得た。
無機層状材料1を含む混合液から少量サンプリングし、孔径0.02ミクロンのメンブレンフィルター(GEヘルスケアジャパン社製、アノディスク、材質:アルミナ、以下別途記載のない限り同様)でフッ素系溶媒を濾別し、分散剤の溶解度が5(g/100g溶媒)以上の溶媒であるアセトンで洗浄した無機層状材料1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.54%であった。また、無機層状材料1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
(実施例1−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例1−1で得られた無機層状材料1を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水(前記分散剤の溶解度 25(g/100g溶媒))20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液1を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
なお当該収率は、無機層状材料分散液を1時間静置し、沈殿の生じないことを確認することで、沈殿するほど粗大な無機層状材料は残存しないこと、から収率100%と判断した。
また、無機層状材料分散液1を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.54%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液1を凍結乾燥し、その後比表面積(A)を測定したところ、23m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは38nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料1について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は57個数%、1μm以上10μm以下は43個数%、10μm超過は0個数%であった。
(実施例1−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例1−2と同様にして得られた無機層状材料分散液1をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、直径18mm、厚み約30μmの円形の無機層状材料積層体1を得た。無機層状材料積層体1は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料1同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。バインダーを含まないので無機層状材料の機能がバインダーに薄められることなく最大限に発揮され、また自立膜を形成するほど無機層状材料同士が密に集積するため、無機層状材料積層体内における薄片間の接触抵抗が下がり、電気や熱等の伝達機能に優れるという特徴がある。
無機層状材料積層体1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.54%であった。また、無機層状材料積層体1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。図1に、無機層状材料積層体1のX線回折法による測定結果を示す。無機層状材料積層体1のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
図2に、無機層状材料1のAFM写真を示す。
図3及び図4に、無機層状材料積層体1のSEM写真を示す。
(実施例2−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料2を得た。
(実施例2−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例2−1で得られた無機層状材料2を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液2を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液2を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料2についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液2から得られた無機層状材料2について比表面積(A)を測定したところ、21m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは42nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料2について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は19個数%、1μm以上10μm以下は81個数%、10μm超過は0個数%であった。
(実施例2−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例2−2と同様にして得られた無機層状材料分散液2をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体2を得た。無機層状材料積層体2は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料2同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体2についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料積層体2のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。無機層状材料積層体2のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例3−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、分散剤を東京化成工業社製span20(ソルビタンモノラウレート、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 4200mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料3を得た。
(実施例3−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例3−1で得られた無機層状材料3を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、イソプロピルアルコール20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液3を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液3を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料3についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液3から得られた無機層状材料3について比表面積(A)を測定したところ、21m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは42nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料3について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は22個数%、1μm以上10μm以下は48個数%、10μm超過は30個数%であった。
(実施例3−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例3−2と同様にして得られた無機層状材料分散液3をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、無機層状材料積層体3を得た。無機層状材料積層体3は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料3同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体3についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料積層体3のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。無機層状材料積層体3のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例4−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、分散剤をビックケミージャパン製BYK−9076(ポリウレタン含有、高分子量共重合物のアルキルアンモニウム塩、前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 15(g/100g溶媒)、25℃における粘度 1050mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料4を得た。
(実施例4−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例4−1で得られた無機層状材料4を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液4を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液4を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料4についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液4から得られた無機層状材料4について比表面積(A)を測定したところ、22m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは40nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料4について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は14個数%、1μm以上10μm以下は58個数%、10μm超過は28個数%であった。
(実施例4−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例4−2と同様にして得られた無機層状材料分散液4をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体4を得た。無機層状材料積層体4は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料4同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体4についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料積層体4のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。無機層状材料積層体4のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例5−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、フッ素系溶剤をパーフルオロカーボン(C2x+2、x=12)、3M社製フロリナートFC−43、表面張力16mN/m)10mL(18.7g)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料5を得た。
(実施例5−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例5−1で得られた無機層状材料5を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液5を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液5を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料5についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液5から得られた無機層状材料5について比表面積(A)を測定したところ、23m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは38nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料5について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は17個数%、1μm以上10μm以下は81個数%、10μm超過は2個数%であった。
(実施例5−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例5−2と同様にして得られた無機層状材料分散液5をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体5を得た。無機層状材料積層体5は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料5同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体5についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料積層体5のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。無機層状材料積層体5のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例6−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、フッ素系溶剤をハイドロフルオロカーボン(CxHyF(2x+2-y)x=12(主成分))、旭硝子社製アサヒクリンAC−2000、表面張力13.4mN/m)10mL(16.7g)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料6を得た。
(実施例6−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例6−1で得られた無機層状材料6を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液6を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液6を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料6についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液6から得られた無機層状材料6について比表面積(A)を測定したところ、23m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは38nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料6について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は12個数%、1μm以上10μm以下は86個数%、10μm超過は2個数%であった。
(実施例6−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例6−2と同様にして得られた無機層状材料分散液6をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体6を得た。無機層状材料積層体6は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料6同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体6についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料積層体6のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。無機層状材料積層体6のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例7−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、六方晶窒化ホウ素4mgを六方晶二硫化モリブデン粉体(住鉱潤滑剤社製、製品名:モリパウダーPB)8mgに変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料7を得た。
(実施例7−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例7−1で得られた無機層状材料7を含む混合液から、フッ素系溶剤を除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液7を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液7を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料7についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料二硫化モリブデンのモリパウダーPBと同様の0.616nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液7から得られた無機層状材料7について比表面積(A)を測定したところ、18m/gであった。二硫化モリブデンの密度(ρ)(5.0g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは22nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料7について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は70個数%、1μm以上10μm以下は30個数%、10μm超過は0個数%であった。
(実施例7−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例7−2と同様にして得られた無機層状材料分散液7をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体10を得た。無機層状材料積層体7は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料7同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体7についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合は0.56%であった。また、無機層状材料積層体7のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。無機層状材料積層体7のピークは2θ=14.38°に位置し、平均面間隔(d002)は0.616nmと算出され、原料二硫化モリブデンのモリパウダーPBと同様であった。
(比較例1−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、分散剤をAGCセイミケミカル製サーフロンS−420(パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤)(前記フッ素系溶剤に対する溶解度 0.7(g/100g溶媒)、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 800mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして比較無機層状材料1を得た。
(比較例1−2:無機層状材料分散液の製造)
比較例1−1で得られた比較無機層状材料1を含む混合液から、減圧留去によりフッ素系溶剤を除去し、イソプロピルアルコール20mLを添加することにより、比較無機層状材料分散液1を得た。当該比較無機層状材料分散液1は沈殿が生じていた。当該比較無機層状材料分散液1をデカンテーションして上澄み液を除去後、沈殿を目開き100μmのナイロンメッシュで濾別し加熱真空オーブンを用いて乾燥後に質量を測定すると、沈殿の質量は原料に対して78質量%であった。
また、比較無機層状材料分散液1の上澄み液を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した比較無機層状材料1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.1%)を除くと0%であった。また、比較無機層状材料1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、沈殿を含めない比較無機層状材料分散液1の上澄み液を用い、「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で得られた比較無機層状材料1について比表面積(A)を測定したところ、6.5m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは136nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の比較無機層状材料1について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は46個数%、1μm以上10μm以下は33個数%、10μm超過は21個数%であった。
(比較例1−3:無機層状材料積層体の製造)
比較例1−2と同様にして得られた比較無機層状材料分散液1を沈殿を含めない状態でメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較無機層状材料積層体1を得た。比較無機層状材料積層体1は、メンブレンフィルターから剥離せず、スパチュラで擦ると粉状に剥離することから、比較無機層状材料1同士は密に集積していないことが示された。
比較無機層状材料積層体1についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.1%)を除くと0%であった。また、比較無機層状材料積層体1のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。比較無機層状材料積層体1のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(比較例2−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、前記フッ素系溶剤を水(表面張力(25℃)72mN/m)に変更し、分散剤をAGCセイミケミカル製サーフロンS−420(パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤)(水に対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、イソプロピルアルコールへの溶解度 10(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 800mPa・s)における粘度 800mPa・s)に変更した以外は、実施例1−1と同様にして比較無機層状材料2を得た。
(比較例2−2:無機層状材料分散液の製造)
比較例2−1で得られた比較無機層状材料2を含む混合液から、水を除去し、イソプロピルアルコール20mLを添加することにより、比較無機層状材料分散液2を得た。当該比較無機層状材料分散液2は沈殿が生じていた。当該比較無機層状材料分散液2をデカンテーションして上澄み液を除去後、沈殿を目開き100μmのナイロンメッシュで濾別し加熱真空オーブンを用いて乾燥後に質量を測定すると、沈殿の質量は原料に対して79質量%であった。
また、比較無機層状材料分散液2の上澄み液を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した比較無機層状材料2についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.1%)を除くと0%であった。また、比較無機層状材料2のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、沈殿を含めない比較無機層状材料分散液2の上澄み液を用い、「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で得られた比較無機層状材料2について比表面積(A)を測定したところ、8.1m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは109nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の比較無機層状材料2について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は3個数%、1μm以上10μm以下は50個数%、10μm超過は47個数%であった。
(比較例2−3:無機層状材料積層体の製造)
比較例2−2と同様にして得られた比較無機層状材料分散液2を沈殿を含めない状態でメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較無機層状材料積層体2を得た。比較無機層状材料積層体2は、メンブレンフィルターから剥離せず、スパチュラで擦ると粉状に剥離することから、比較無機層状材料2同士は密に集積していないことが示された。
比較無機層状材料積層体2についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.1%)を除くと0%であった。また、比較無機層状材料積層体2のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。比較無機層状材料積層体2のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(比較例3−1、2:無機層状材料および無機層状材料分散液の製造)
イソプロピルアルコール100mLに六方晶窒化ホウ素(デンカ社製、商品名:デンカボロンナイトライド粉GP)0.5gを混合し、超音波処理装置(アズワン社製、型番:ASU−6M)にて48時間処理することにより、比較無機層状材料3が分散した比較無機層状材料分散液3を得た。
当該比較無機層状材料分散液3は沈殿が生じていた。当該比較無機層状材料分散液3をデカンテーションして上澄み液を除去後、沈殿を目開き100μmのナイロンメッシュで濾別し加熱真空オーブンを用いて乾燥後に質量を測定すると、沈殿の質量は原料に対して91質量%であった。
また、比較無機層状材料分散液3の上澄み液を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した比較無機層状材料3についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.1%)を除くと0%であった。また、比較無機層状材料分散液3のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、沈殿を含めない比較無機層状材料分散液3の上澄み液を用い、「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で得られた比較無機層状材料3について比表面積(A)を測定したところ、7.3m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは121nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の比較無機層状材料3について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は53個数%、1μm以上10μm以下は27個数%、10μm超過は20個数%であった。
(比較例3−3:無機層状材料積層体の製造)
比較例3−2と同様にして得られた比較無機層状材料分散液3を沈殿を含めない状態でメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄することにより、比較無機層状材料積層体3を得た。比較無機層状材料積層体3は、メンブレンフィルターから剥離せず、スパチュラで擦ると粉状に剥離することから、比較無機層状材料3同士は密に集積していないことが示された。
比較無機層状材料積層体3についてTOF−SIMS測定によりフッ素を検出したところ、全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合はノイズ(0.1%)を除くと0%であった。また、比較無機層状材料積層体3のX線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定した。比較無機層状材料積層体3のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
実施例1〜7及び比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜7においては、平均厚みが50nm以下の無機層状材料を高収率で得ることができ、薄片化が不十分な無機層状材料の残留が少ない無機層状材料分散液を得ることができ、自立膜として無機層状材料積層体を得ることができた。
一方、原料の無機層状化合物を剥離する際の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を用いたが、当該溶媒に溶解性が高い分散剤を用いた比較例1では、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上の無機層状材料は得られなかった。また、得られた比較無機層状材料1からは自立膜は形成されず、粉状に剥離される積層体が得られた。
また、比較例2でも、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上の無機層状材料は得られなかった。原料の無機層状化合物を剥離する際の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m超過の溶媒と、当該溶媒に溶解度が低い分散剤を組み合わせて用いた比較例2では、分散液に沈殿が生じてしまった。得られた比較無機層状材料2からは自立膜は形成されず、粉状に剥離される積層体が得られた。
また、従来技術と同様にアルコール系溶剤中で超音波を用いて剥離する方法による比較例3では、分散液に沈殿が生じてしまった。得られた比較無機層状材料3からは自立膜は形成されず、粉状に剥離される積層体が得られた。
2.実施例IIシリーズ(第3の実施形態)
以下第3の実施形態の実施例を示すが、第3の実施形態の実施例のうち、実施例1〜7及び比較例1〜3は、前記実施例Iシリーズの前記第1及び第2の実施形態の実施例1〜7及び比較例1〜3と同じものである。そのため、第3の実施形態の実施例のうち、実施例1〜7及び比較例1〜3のここでの詳細な記載は省略する。
(実施例8−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、前記フッ素系溶剤をヘプタン(表面張力19.65mN/m)20mL(13.6g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ヘプタンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料8を得た。
(実施例8−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例8−1で得られた無機層状材料8を含む混合液から、ヘプタンを除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液8を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液8を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料8について、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液8から得られた無機層状材料8について比表面積(A)を測定したところ、21m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは42nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料8について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は9個数%、1μm以上10μm以下は57個数%、10μm超過は34個数%であった。
(実施例8−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例8−2と同様にして得られた無機層状材料分散液8をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体8を得た。無機層状材料積層体8は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料8同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体8のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例9−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、前記フッ素系溶剤を2,4−ジメチルペンタン(表面張力17.7mN/m)20mL(13.4g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、2,4−ジメチルペンタンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料9を得た。
(実施例9−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例9−1で得られた無機層状材料9を含む混合液から、2,4−ジメチルペンタンを除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液9を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液9を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料9について、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液9から得られた無機層状材料9について比表面積(A)を測定したところ、21m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは42nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料9について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は7個数%、1μm以上10μm以下は54個数%、10μm超過は39個数%であった。
(実施例9−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例9−2と同様にして得られた無機層状材料分散液9をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体9を得た。無機層状材料積層体9は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料9同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体9のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
(実施例10−1:無機層状材料の製造)
実施例1−1において、前記フッ素系溶剤をポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製KF−96L−1cs、表面張力16.9mN/m)20mL(16.4g)へ変更し、分散剤を東京化成工業社製tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリジメチルシロキサンに対する溶解度 0.1(g/100g溶媒)未満、水への溶解度 50(g/100g溶媒)超過、25℃における粘度 370mPa・s)へ変更した以外は、実施例1−1と同様にして無機層状材料10を得た。
(実施例10−2:無機層状材料分散液の製造)
実施例10−1で得られた無機層状材料10を含む混合液から、ポリジメチルシロキサンを除去し、水20mLを添加することにより、沈殿の無い無機層状材料分散液10を得た(分散液に分散した無機層状材料の収率100%)。
また、無機層状材料分散液10を少量サンプリングし、前記「原子間力顕微鏡による観察」に記載した方法でメンブレンフィルター上に薄片を凝集させずに独立した状態で配置させた。更にアセトンで洗浄することにより分散剤を除去した無機層状材料10について、X線回折法による(002)面の平均面間隔(d002)を測定したところ、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様の0.335nmを示した。
更に、前記「無機層状材料の平均厚み」に記載した方法で、無機層状材料分散液10から得られた無機層状材料10について比表面積(A)を測定したところ、20m/gであった。六方晶窒化ホウ素の密度(ρ)(2.27g/cm)を用いて、平均厚み(d)を前記方法により算出したところ、平均厚みは44nmと求められた。
更に上記メンブレンフィルター上の無機層状材料10について、原子間力顕微鏡を用いて個々の薄片における面方向の最大径を200個測定したところ、個数の分布について1μm未満は2個数%、1μm以上10μm以下は57個数%、10μm超過は41個数%であった。
(実施例10−3:無機層状材料積層体の製造)
実施例10−2と同様にして得られた無機層状材料分散液10をメンブレンフィルター(孔径:約0.1μm)を用いて濾過し、水で洗浄することにより、無機層状材料積層体10を得た。無機層状材料積層体10は、メンブレンフィルターから剥離して自立膜が得られ、無機層状材料10同士が密に集積した構造であり、バインダーを含むことなく膜として機能することが示された。
無機層状材料積層体10のピークは2θ=26.64°に位置し、平均面間隔(d002)は0.335nmと算出され、原料窒化ホウ素のデンカボロンナイトライド粉GPと同様であった。
実施例1〜10においては、薄片化が不十分な無機層状材料の残留が少ない無機層状材料分散液を得ることができ、自立膜として無機層状材料積層体を得ることができた。
一方、原料の無機層状化合物を剥離する際の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m以下のフッ素系溶媒を用いたが、当該溶媒に溶解性が高い分散剤を用いた比較例1では、原料に対して78質量%もの沈殿が生じてしまった。また、得られた比較無機層状材料1からは自立膜は形成されず、粉状に剥離される積層体が得られた。
また、原料の無機層状化合物を剥離する際の溶媒として、使用温度での表面張力が20mN/m超過の溶媒と、当該溶媒に溶解度が低い分散剤を組み合わせて用いた比較例2では、原料に対して79質量%もの沈殿が生じてしまった。得られた比較無機層状材料2からは自立膜は形成されず、粉状に剥離される積層体が得られた。
また、従来技術と同様にアルコール系溶剤中で超音波を用いて剥離する方法による比較例3では、原料に対して91質量%もの沈殿が生じてしまった。得られた比較無機層状材料3からは自立膜は形成されず、粉状に剥離される積層体が得られた。

Claims (3)

  1. 六方晶窒化ホウ素又は六方晶二硫化モリブデンである無機層状物質の片であり、
    飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて測定される全(−)イオンの総カウント数に対するフッ素(−)イオンのカウント数の割合が0.4%以上5%以下であり、
    X線回折法による平均面間隔が前記無機層状物質の平均面間隔±0.002nmの範囲内であって、
    平均厚みが100nm以下である無機層状材料であり、当該無機層状材料同士を集積した積層体が自立膜を形成する、無機層状材料。
  2. 前記請求項1に記載の無機層状材料が積層されてなり、自立膜である、無機層状材料積層体。
  3. 前記請求項1に記載の無機層状材料が溶媒に分散されてなる、無機層状材料分散液。
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