JP6742048B1 - 義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
義歯材の研削・研磨に用いられる砥石には、口腔内で使用可能な生体安全性(為害防止性)が求められ、また、義歯の使用感、審美性、歯垢等の沈着防止性を高め、さらに複雑な形状の仕上げ面においても十分な平滑性、光沢性等を実現できる種々の機能性が求められる。そして、これらの要求は年々高まっている。
このような脆性モードによる義歯材の研削・研磨の後、更に精密な仕上げ面とするために、クロロプレン、シリコーン等のゴムバインダーを用いた砥石による研磨が行われている。しかし、ゴムは柔らかく、砥粒に対する接着力(砥粒の固定力)も弱い。したがって、脆性モードによる研削・研磨後の粗い仕上げ面を、義歯材に要求される高度な精密研磨面へと仕上げることは難しい。そのため、不織布等の基材にダイヤモンド等の砥粒が埋め込まれたバフ材による表面仕上げも行われている。しかし、この表面仕上げでは、ある程度の光沢を有する研磨面が得られても、義歯材に要求される高度な精密研磨面の実現には至っていない。
したがって、脆性モードの粗い表面を、義歯材に要求される上記の諸特性を満足するように、延性モード(カンナのように表面から少しずつ削るモード)による精密な研削・研磨が可能な砥石が求められている。
一方、新たな課題も明らかになってきた。すなわち、義歯材に適用する砥石は、使用後、オートクレーブによる高温高圧の滅菌処理に付して再利用される。しかし、上記ポリ尿素複合研磨材は、この滅菌処理によりポリ尿素が分解ないし変性してしまい、初期の性能を保った状態では再利用できないことがわかってきた。この原因は定かではないが、高温高圧の滅菌処理により尿素結合とイソシアネート基との反応によるビュレット架橋点が開裂して3次元化構造が壊れて2次元化構造に変化し、またハードブロック及び凝集ブロックといった疑似架橋点も開裂し、ポリ尿素の物性が大きく変化してしまうことが一因と考えられる。
本発明はこれらの知見に基づき、更に検討を重ねて完成させるに至ったものである。
〔1〕
ポリアミン化合物と、3価以上のポリオール化合物と、ジイソシアネート化合物と、3価以上のポリイソシアネート化合物と、砥粒とを含む混合物を重合硬化してなる、義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔2〕
上記ポリアミン化合物が下記(a)〜(d)のいずれかを含む、[1]に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
(a)芳香族ポリアミンオリゴマー
(b)芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物
(c)脂肪族ポリアミンオリゴマー、芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物
(d)脂肪族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ポリアミンオリゴマー
〔3〕
上記ポリアミン化合物が芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物を含み、上記混合物中の上記ポリアミン化合物に占める上記芳香族ジアミン化合物の割合が40質量%以下である、〔2〕に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔4〕
上記芳香族ポリアミンオリゴマーが下記式(I)で表されるポリアミンオリゴマーを含む、〔2〕又は〔3〕に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔5〕
上記芳香族ジアミン化合物が、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)[別名:1,3−プロパンジオール−ビス(p−アミノベンゾエート)]、4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾイックアシッドイソブチルエステル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸ジエチルエステル、及び2,2’、3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンの1種又は2種以上を含む、〔2〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔6〕
上記の3価以上のポリオール化合物が、1分子中に3〜6個の水酸基を有し分子量が92〜600であるポリオール化合物を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔7〕
上記の3価以上のポリオール化合物が、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、及びメチルグルコシドの1種又は2種以上を含む、〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔8〕
上記ジイソシアネート化合物が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔9〕
上記の3価以上のポリイソシアネート化合物が、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート由来のもの、3価以上のジフェニルメタンジイソシアネートプレポリマー、及び、1,3,5−トリス(6−イソシアナートヘキサ−1−イル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンの少なくとも1種を含む、〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔10〕
上記混合物中、ジイソシアネート化合物と3価以上のポリイソシアネート化合物の各含有量の合計に占めるジイソシアネート化合物の含有量の割合が40質量%以上である、〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔11〕
上記ジフェニルメタンジイソシアネート化合物がカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、〔10〕に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔12〕
上記混合物中、上記ポリアミン化合物の含有量100質量部に対し、上記の3価以上のポリオール化合物の含有量が2〜17質量部である、〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔13〕
上記ポリ尿素複合砥石材の密度が0.4〜3.5g/cm3である、〔1〕〜〔12〕のいずれか1つに記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
〔14〕芳香族ポリアミンオリゴマーと芳香族ジアミン化合物と3価以上のポリオール化合物と有機溶媒との混合液と、砥粒と、ジイソシアネート化合物と、3価以上のポリイソシアネート化合物とを混合し、この混合物を重合硬化することを含む、義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材の製造方法。
本発明の砥石材は、バインダー(結合材)として特定の構成成分を有するポリ尿素樹脂と、当該ポリ尿素樹脂中に分散してなる砥粒とにより構成される。本発明の砥石材は、歯科用の義歯材を精密に研削・研磨するために好適である。本発明において「義歯材」という場合、歯科用の歯肉材を含む意味である。
上記ポリアミン化合物は、上記ジイソシアネート化合物及び3価以上のポリイソシアネート化合物と反応して重合し、ポリ尿素を形成するものであれば特に制限はない。上記ポリアミン化合物が有するアミノ基は無置換のアミノ基が好ましい。上記ポリアミン化合物は、好ましくは下記(a)〜(d)のいずれかを含み、より好ましくは下記(a)〜(d)のいずれかである。
(a)芳香族ポリアミンオリゴマー
(b)芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物
(c)脂肪族ポリアミンオリゴマー、芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物
(d)脂肪族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ポリアミンオリゴマー
すなわち、芳香族ポリアミンオリゴマーの割合は、砥石材の目的の機能にあわせて適宜に調整されるものである。
上記ポリアミン化合物が上記(c)を含む場合、上記ポリアミン化合物中の(c)の割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
上記ポリアミン化合物は上記(b)又は(c)であることがさらに好ましく、(b)であることがより好ましい。
上記ポリアミン化合物が上記(b)又は(c)を含む場合、上記混合物中に含まれる上記ポリアミン化合物全体に占める上記芳香族ジアミン化合物の割合は40質量%以下であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましく、2〜30質量%であることが更に好ましい。
上記ポリアミン化合物が上記(c)及び(d)のいずれかを含む形態において、上記混合物中に含まれる上記ポリアミン化合物全体に占める上記脂肪族ポリアミンオリゴマーの割合は3〜20質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましく、3〜7質量%とすることも好ましい。この場合においては、上記ポリアミン化合物は(c)であることが好ましい。
上記のポリアルキレンポリオール、ポリアルキレンエーテルポリオール又はポリアルキレンエステルポリオールの数平均分子量は200〜2000が好ましく、600〜2000がより好ましく、1000〜2000が更に好ましい。
本明細書において数平均分子量は、分子末端基の水酸基の定量により、又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
上記反応で使用する数平均分子量200以上のポリアルキレンポリオール、ポリアルキレンエーテルポリオール又はポリアルキレンエステルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、プロピレンオキシドとエチレンオキシドの共重体のグリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエチレンアジペートポリオール、ポリブチレンアジペートポリオール、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンから誘導されるラクトン系ポリエステルポリオール、3−メチルペンタンジオールとアジピン酸の反応より得られるアジペート系ポリオール等のポリエステルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール等のポリアルキレンポリオールが挙げられる。
上記芳香族ポリアミンオリゴマーは市販品として入手可能である。上記ポリオールとして、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)を原料とした芳香族ポリアミンオリゴマーとしては、エボニックインダストリー社より市販されているバーサリンクP250(ポリオール平均分子量250)、バーサリンクP650(ポリオール平均分子量650)、バーサリンクP1000(ポリオール平均分子量1000)、バーサリンクP2000(ポリオール平均分子量2000)(いずれも、商品名)が挙げられる。また、クミアイ化学工業(株)社より市販されているエラスマー250P(平均分子量250)、エラスマー650P(平均分子量650)、エラスマー1000P(平均分子量1000)、ポレアSL−100A(平均分子量1000)(いずれも、商品名)が挙げられる。これらの芳香族ポリアミンオリゴマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。これら芳香族ポリアミンオリゴマーはすべて、生体に対する安全性の観点から、歯科用砥石材の原料としてより好ましい。
トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、
4−クロロ−3,5−ジアミンベンゾイックアシッドイソブチルエステル、
4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸ジエチルエステル、
2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、
4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、
4,4’−メチレンビス(2,5−ジクロロアニリン)、
4,4’−メチレンビス(メチルアンスラアニレート)、
3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン、
3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン、
1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、
式(II)中、R2は、−[O−CH2−CH(CH3)]p−、又は、−[O−CH(CH3)−CH2]q−[O−CH2−CH2]r−[O−CH2−CH(CH3)]s−で表される2価の基である。繰り返し単位の数を示すp〜sはいずれも1以上である。pは1〜68が好ましく、5〜33がより好ましい。q+sは2以上であり、3.6〜6.0が好ましい。rは9〜38.7が好ましく、12〜38.7がより好ましい。
式(III)中、繰り返し単位の数を示すt〜vはいずれも1以上である。uは9〜17が好ましく、11〜17がより好ましい。t+vは6以上であり、6〜24が好ましい。
xは0又は1である。Raが水素原子の場合xは0であり、Raがエチル基の場合xは1である。
上記式(II)及び(III)で表される脂肪族ポリアミンオリゴマーは商業的に入手することもできる。上記式(II)の化合物としては、例えば、サンテクノケミカル社より市販されているジェファーミンD400(数平均分子量400)、ジェファーミンD2000(数平均分子量2000)、ジェファーミンED−900(数平均分子量900)、ジェファーミンED2003(数平均分子量2000)を用いることができる。また、上記式(III)の化合物としては、例えば、サンテクノケミカル社より市販されているジェファーミンT−403(数平均分子量440)、ジェファーミンT−3000(数平均分子量3000)、ジェファーミンT−5000(数平均分子量5000)を用いることができる。
上記の3価以上のポリオール化合物は、1分子中に水酸基を3個以上有する化合物であれば特に制限されない。上記混合物中に含まれる上記の3価以上のポリオール化合物は、1分子中に3個以上、好ましくは3〜6個の水酸基を有し、分子量が92〜600、好ましくは92〜400、より好ましくは92〜300のポリオール化合物を含むことが好ましい。より好ましい形態は、上記混合物中に含まれる上記ポリオール化合物のすべてが、1分子中に3個以上、好ましくは3〜6個の水酸基を有し、分子量が92〜600、好ましくは92〜400、より好ましくは92〜300のポリオール化合物である形態である。
上記ジイソシアネート化合物の種類は特に制限されない。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、フェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)等を挙げることができる。
本発明において、ジイソシアネート化合物として単に「MDI」という場合、未変性のMDIの他、変性MDIを包含する意味である。変性MDIとして、例えば、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)が挙げられる。
生体に対する安全性をより高める観点から上記ジイソシアネート化合物はMDI(液状MDIを含む)であることが好ましい。
上記の3価以上のポリイソシアネート化合物は、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する化合物である。3価以上のポリイソシアネート化合物の具体例として、ポリメリックMDI(クルードMDI)由来のもの、MDIプレポリマー、及び1,3,5−トリス(6−イソシアナートヘキサ−1−イル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等を挙げることができる。これらは生体に対する安全性の観点でも優れている。
また、ヘキサメチレンジイソシアネートのダイマー(ウレチジオン結合体)、トリマー(イソシアヌレート結合体)又はそれらの混合物等を併用してもよい。
これに対し、本発明の砥石材では、上記混合物中に、ジイソシアネート化合物に加え、3価以上のポリイソシアネート化合物を併用した上で、さらに3価以上のポリオール化合物も配合する。このような配合原料として重合反応を行うことにより、まず、反応速度の速いアミノ基とイソシアネート基との反応が優先的に進んでポリ尿素構造が形成され、次いで、3価以上のポリイソシアネート化合物に由来する残留イソシアネート基とポリオール化合物とが反応して、分子に強固な分岐構造に基づく3次元的架橋が形成されていると考えられる。このような段階的な反応により、ポリ尿素樹脂に特有の物性(硬く、かつゴム弾性も有する)を発現しながら、湿熱処理に対して安定な架橋構造をも併せもつ、特異な特性のポリ尿素樹脂が得られる。
したがって、このようなポリ尿素樹脂をバインダーとする本発明の砥石材は、義歯材研削・研磨用途で必要な高温高圧下の滅菌処理(例えばオートクレーブ滅菌処理)の繰り返しに対して優れた耐久性を示すと考えられる。
なお、本発明の砥石材を構成するバインダーは上記の通り、何種類もの反応を経て得られる、3次元的に架橋形成された不溶・不融の重合硬化物であり、その構造分析は事実上困難である。そこで本発明では、従来技術による物との相違を明示して発明を明確化すべく、砥石材の発明において製造方法(プロセス)を発明特定事項とするものである。
本発明の砥石材に用いる砥粒として、ホワイトアランダム(WA)、アランダム(A)等のアルミナ、グリーンカーボランダム(GC)、カーボランダム(C)等の炭化ケイ素、ダイヤモンド(ニッケルコートダイヤモンドを含む)、立方晶窒化ホウ素(CBN)、酸化第二鉄、酸化マンガン、酸化クロム、二酸化ケイ素(石英溶融シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、雲母等を1種又は2種以上を混合して使用することができる。
上記砥粒の粒径に特に制限はなく、目的に応じた粒径の砥粒が採用される。上記砥粒として、例えば、#60メッシュサイズから1μmあるいはそれより小さなサイズの超微細なものを使用できる。すなわち、本発明の砥石材は義歯材の手作業による研削工程から精密研磨工程まで使用可能なものである。
上記「メッシュ」は1インチ(25.4mm)あたりの桝目の数を意味する。例えば、#60メッシュは、1インチあたり60の桝目を有するメッシュである。
本発明の砥石材の製造に際し、硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒の例としては、アミン系のものとして例えば、トリエチレンジアミン及びこれをグリコール溶媒に溶解したもの、三共エアプロダクト社製DABCO−1027、DABCO−1028、DABCO−33LV(いずれも商品名)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。また有機酸の塩(酢酸カリウム塩、シュウ酸カリウム塩等)、更に有機金属触媒(ジブチルチンジラウレート、スタナースオクテート等)が挙げられる。
これらは1種で又は2種以上併用して使用することもできる。その好ましい使用量は、ポリアミン化合物100質量部に対して5質量部以下である。
また、本発明の砥石材は、繊維系物質(繊維状フィラー)としてポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、羊毛、コットン、シルク等を含有していてもよい。本発明の砥石材が繊維状フィラーを含有する場合、砥石材中の繊維状フィラーの含有量(質量%)は、1〜15質量%であることが好ましく、3〜13質量%であることがより好ましく、5〜12質量%であることが更に好ましい。砥石材中の繊維状フィラーの含有量(質量%)は、溶媒を除く原料の合計質量に占める繊維状フィラーの質量(質量)の割合を示すものである。
また、本発明の砥石材は、高分子中空微小球コンポジット(粒子径10〜14μm)、たとえばマツモトマイクロスフェア−MFLシリーズ、無機系中空微小球(シリカ系)等の気泡体を含有していてもよい。
続いて本発明の砥石材の製造方法について説明する。
本発明の砥石材の製造方法は、上記混合物を重合硬化させることを含む限り、特に制限されない。例えば、特許第6489465号、特許第4357173号、特許第3921056号の記載を適宜に参照することができる。
例えば、少なくとも、芳香族ポリアミンオリゴマーと芳香族ジアミン化合物と3価以上のポリオール化合物と有機溶媒との混合液と、砥粒と、ジイソシアネート化合物と、3価以上のポリイソシアネート化合物とを混合し、この混合物を重合硬化することにより、本発明の砥石材を得ることができる。この重合硬化反応として、例えば、上記混合物を金型に入れて重合反応を進行させ、金型から脱型し、この硬化物をさらに100〜140℃にて数時間、後硬化して砥石材を得る。
原料としては下記のものを使用した。
・Liq MDI(液状MDI)、コロネートMX(東ソー社製、NCO含有量29.0質量%)
・CMDI(クルードMDI)、ミリオネートMR200(東ソー社製、NCO含有量31.0質量%、全イソシアネート化合物中、ジイソシアネート化合物を約40質量%、3価以上のポリイソシアネート化合物を約60質量%含有する。)
・エラスマー1000P:ポリ(テトラメチレンオキシド)−ジ−p−アミノベンゾエート(クミアイ化学工業社製、アミン価98.68KOHmg/g)
・CUA−4:トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾアート)(クミアイ化学工業社製、アミン価351.2KOHmg/g)
・TCDAM:4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロベンゼンアミン)(クミアイ化学工業社製、アミン価319.2KOHmg/g)
・DD1604:4−クロロ−3,5−ジアミノ−ベンゾイックアシッドイソブチルエステル(バイエル社製、アミン価462.4KOHmg/g)
・グリセリン(GC)〔カントーケミカル社製〕
・トリメチロールプロパン(TMP)〔カントーケミカル社製〕
・トリエタノールアミン(TEA)〔カントーケミカル社製〕
・アセトン(カントーケミカル社製)
・365mfc:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(日本ソルベイ社製)
ダイヤモンド砥粒
・D200−230(粒径#200〜230メッシュ)〔トーメイダイヤ社製〕
・D270−325(粒径#270〜325メッシュ)〔トーメイダイヤ社製〕
・D10−20(粒径10〜20μm)〔トーメイダイヤ社製〕
・D4−6(粒径4〜6μm)〔トーメイダイヤ社製〕
・D2−3(粒径2〜3μm)〔トーメイダイヤ社製〕
表1に示す配合(質量部)に従って、ビーカーに芳香族ポリアミンオリゴマー、芳香族ジアミン化合物、ポリオール化合物(以下、イソシアネート基と反応するこれらの成分を合わせて「硬化成分」という。)を測り取り、全ての硬化成分の融点以上に加温し、硬化成分を溶解して均一な溶液とした。この溶液を室温まで冷却し、表1に示す配合(質量部)に従って所定量のジイソシアネート化合物、又はジイソシアネート化合物と3価以上のポリイソシアネート化合物(以下、「イソシアネート成分」という。)を混合し、25〜35℃の予熱された金型に注入し、硬化が十分進んだ後、脱型した。得られた硬化物を120℃で6時間加熱処理し、厚さ5mmのシート状の各試料(ポリ尿素樹脂)を作製した。
各試料を134℃で3時間のオートクレーブ処理に付して滅菌処理を行った。この滅菌処理は、134℃で10分間のオートクレーブ処理を30回もの多数回繰り返す滅菌処理と同程度の負荷であることを確認している。
2)[芳香族ジアミン化合物の使用量(g)/芳香族ジアミン化合物の分子量]/[芳香族ポリアミンオリゴマーの使用量(g)+芳香族ジアミン化合物の使用量(g)]
3)[ジイソシアネート化合物及び3価以上のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基当量]/[芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物のアミノ基当量とポリオール化合物の水酸基当量とを合わせた活性基当量]
4)[ポリオール化合物の使用量(g)/ポリオール化合物の分子量]/[芳香族ポリアミンオリゴマーの使用量(g)+芳香族ジアミン化合物の使用量(g)]
5)厚さ5mmのシート状ポリ尿素樹脂に、上からD型硬度計を押し付け、置針の示す値を硬度とした。
6)100×DMF浸漬後の試料の体積/DMF浸漬前の試料の体積={[試料を22℃で7日間ジメチルホルムアミド(DMF)に浸漬後の膨潤試料の質量(g)−浸漬前の試料の質量(g)]/0.9445+浸漬前の試料の体積(cm3)}/浸漬前の試料の体積(cm3)
・0.9445:DMFの22℃での密度(単位g/cm3)
・浸漬前の試料の体積(cm3)=浸漬前の試料の質量(g)/シート状試料の密度(g/cm3)
7)100×滅菌処理後の試料の硬度/滅菌処理前の試料の硬度
(滅菌処理後の試料の硬度は、滅菌処理後、80℃で12時間乾燥し、次いで22℃で1週間コンディショニングした後の硬度である。)
8)滅菌処理後の試料のDMF膨潤度/滅菌処理前の試料のDMF膨潤度
これに対し、本発明の砥石材のバインダー組成を有する合成例1〜6のポリ尿素樹脂は、硬度が比較的高く、DMF膨潤度は低く、これらの特性は滅菌処理によっても良好に維持されていた。
表2に示す配合(質量部)に従って、ビーカーに硬化成分及び有機溶媒(アセトン/365mfc=7/3(質量比))の混合物を測り取り、均一な溶液とした。この溶液に、表2に示す配合(質量部)に従って、所定量の砥粒を添加して分散した後、所定量のイソシアネート成分を混合し、混合物を室温で、軸が設置された金型に注入した。混合物の重合硬化後、脱型し、120℃で5時間熱処理し、直径6mm、長さ18mmの円柱状軸付き砥石材を得た。この砥石材をプレート状ダイヤモンド砥石により、上部を砲弾状に加工し、砥石材を得た。
ここで、表2中の硬化成分の符号(「A」、「A・G」、「A・M」、「A・E」、「B・G」、「C・G」、「D・G」)は、表1に記載された硬化成分の「略記号」に対応する。すなわち、表1に記載の硬化成分の配合比と同じ配合比で各硬化成分を配合したことを意味する。例えば、表2において略記号がA・Gである実施例1は、E1000P:CUA−4:GC=80:20:4.8(質量比)の配合比で各硬化成分を配合したものを、砥粒100質量部に対して17.7質量部使用したことを意味する。また、表2中のイソシアネート成分の符号「β」は、表1と同じく、Liq MDI/CMDI=1/1(質量比)の混合品である。
砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを、義歯材に見立てたジルコニアワーク面(0.7cm×0.7cmの平面)を回転数10000rpm、約200g重の力で縦方向に15秒かけて研削し、次に横方向に15秒かけて研削し、更に再度縦方向に15秒かけて研削し、ワーク面全体を研削・研磨して仕上げ面を得た。仕上げ面の算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、及び光沢度としてRΔqを、ミツトヨ社製サーフテストST.410により測定した。
2)表1における硬度と同様に測定した。
3)100×滅菌処理前の各物性/滅菌処理後の各物性
これに対し実施例2〜7の砥石材は、滅菌処理後においても、十分に平滑で光沢度も高い仕上げ面へと仕上げることができるものであった。
表3に示す配合(質量部)に従って、ビーカーに硬化成分及び有機溶媒(アセトン/365mfc=8/2(質量比)の混合物を測り取り、均一な溶液とした。この溶液に、表3に示す配合(質量部)に従って所定量の砥粒を添加して分散した後、表3に示す配合(質量部)に従って所定量のイソシアネート成分を混合し、混合物を室温で、軸が設置された金型に注入した。混合物の重合硬化後、脱型し、120℃で5時間熱処理し、直径6mm、長さ18mmの円柱状軸付き砥石材を得た。この砥石材をプレート状ダイヤモンド砥石により、上部を砲弾状に加工し、砥石材を得た。
2)表1における硬度と同様に測定した。
歯科用に一般的に使用されているビトリファイド砥石を取り付けた電動ハンドグラインダーを、義歯材に見立てたジルコニアワーク面(0.7cm×0.7cmの平面)に回転数10000rpm、約200g重の力で縦方向に15秒かけて粗研削し、次に横方向に15秒かけて粗研削し、更に再度縦方向に15秒かけて、ワーク面全体を粗研削し、粗研削面を得た。
次いで、実施例7の砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを上記粗研削面に上記条件でかけて研削し、研削面を得た。
その後、実施例8の砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを上記研削面に上記条件でかけて中仕上げし、中仕上げ面を得た。
最後に、実施例9の砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを上記中仕上げ面に上記条件でかけて仕上げし、仕上げ面を得た。
上記ビトリファイド砥石による粗研削は脆性モード、実施例7〜9のそれぞれの砥石材による研削・研磨は延性モードであった。上記粗研削面、研削面、中仕上げ面、仕上げ面それぞれの算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、及び光沢度としてRΔqを、ミツトヨ社製サーフテストST.410により測定した。結果を表4に示す。
実施例8の砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを、表5に示す粗面を有するジルコニアワーク面(0.7cm×0.7cmの平面)とコバルト/クロム合金ワーク面(0.7cm×0.7cmの平面)のぞれぞれに、回転数10000rpm、約200g重の力で縦方向に15秒かけ、次に横方向に15秒かけ、更に再度縦方向に15秒かけて、ワーク面全体を研削・研磨し、中仕上げ面を得た。次いで、実施例9の砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを上記中仕上げ面に上記条件でかけて仕上げし、仕上げ面を得た。全ての研削・研磨は延性モードで行われた。上記中仕上げ面、仕上げ面それぞれの算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、及び光沢度として二乗平均平方根傾斜RΔqを、ミツトヨ社製サーフテストST.410により測定した。結果を表5に示す。
実施例10の砥石材を取り付けた電動ハンドグラインダーを、表6に示す粗面を有するハイブリッドレジンワーク面(0.7cm×0.7cmの平面)とコンポジットレジンワーク面(0.7cm×0.7cmの平面)のそれぞれに、回転数8000rpm、約200g重の力で縦方向に15秒かけ、次に横方向に15秒かけ、更に再度縦方向に15秒かけて、ワーク面全体を研磨し、仕上げ面を得た。全ての研磨は延性モードで行われた。上記仕上げ面の算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、及び光沢度としてRΔqを、ミツトヨ社製サーフテストST.410により測定した。結果を表6に示す。
Claims (14)
- ポリアミン化合物と、3価以上のポリオール化合物と、ジイソシアネート化合物と、3価以上のポリイソシアネート化合物と、砥粒とを含む混合物を重合硬化してなる、義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記ポリアミン化合物が下記(a)〜(d)のいずれかを含む、請求項1に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
(a)芳香族ポリアミンオリゴマー
(b)芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物
(c)脂肪族ポリアミンオリゴマー、芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物
(d)脂肪族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ポリアミンオリゴマー - 前記ポリアミン化合物が芳香族ポリアミンオリゴマー及び芳香族ジアミン化合物を含み、前記混合物中の前記ポリアミン化合物に占める前記芳香族ジアミン化合物の割合が40質量%以下である、請求項2に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記芳香族ジアミン化合物が、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾイックアシッドイソブチルエステル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸ジエチルエステル、及び2,2’、3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンの1種又は2種以上を含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記の3価以上のポリオール化合物が、1分子中に3〜6個の水酸基を有し分子量が92〜600であるポリオール化合物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記の3価以上のポリオール化合物が、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、及びメチルグルコシドの1種又は2種以上を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記ジイソシアネート化合物が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記の3価以上のポリイソシアネート化合物が、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート由来のもの、3価以上のジフェニルメタンジイソシアネートプレポリマー、及び、1,3,5−トリス(6−イソシアナートヘキサ−1−イル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンの少なくとも1種を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記混合物中、ジイソシアネート化合物と3価以上のポリイソシアネート化合物の各含有量の合計に占めるジイソシアネート化合物の含有量の割合が40質量%以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記ジフェニルメタンジイソシアネートがカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項10に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記混合物中、前記ポリアミン化合物の含有量100質量部に対し、前記の3価以上のポリオール化合物の含有量が2〜17質量部である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 前記ポリ尿素複合砥石材の密度が0.4〜3.5g/cm3である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材。
- 芳香族ポリアミンオリゴマーと芳香族ジアミン化合物と3価以上のポリオール化合物と有機溶媒との混合液と、砥粒と、ジイソシアネート化合物と、3価以上のポリイソシアネート化合物とを混合し、この混合物を重合硬化することを含む、義歯材研削・研磨用ポリ尿素複合砥石材の製造方法。
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