JP6740847B2 - 空調システム - Google Patents

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本発明は、ベーンを含んで構成される吹出口から気流を吹き出すことで、所定の空間に対して空気調和を施す空調システムに関する。
従来から、ベーンを含んで構成される吹出口から気流を吹き出すことで、所定の空間(以下、空調対象空間という)に対して空気調和を施す空調システムが開発されている。例えば、粘性流体の噴流(ここでは気流)が近くの壁面に引き寄せられる「コアンダ効果」を利用し、空調対象空間内の温度調節機能を効果的に発揮させる空調技術が種々提案されている。
特許文献1では、天井面に配設された複数個の拡散ガイド部材を介して気流を放射状に拡散することで、天井面に沿って送風する空調システムが提案されている。
特開2004−36970号公報(図1、図5等)
ところが、特許文献1で提案された吹出構造では、拡散ガイド部材は点状の気流源であるため部屋の隅角部まで気流が十分に到達せず、天井全域にわたり一様な放射面を形成するのが難しいという問題があった。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、一般空調及び天井放射空調の吹出口を兼用しつつも、天井全域にわたり略一様な放射面を形成可能な空調システムを提供することを目的とする。
本発明に係る「空調システム」は、空調対象空間の上側境界面をなす天井板の側方直下まで、流路を通じて気流を案内する気流案内手段と、一面状の先端面を有し、前記流路に取り付けられるベーンとを備え、前記天井板の天井面及び前記ベーンの上面に挟まれて形成されるスリット状の吹出口は、前記流路からの前記気流を前記空調対象空間に向けて吹き出し、前記上面は、前記天井面に対して前上方に傾斜する複数の第1傾斜領域と、前記天井面に対して前下方に傾斜する複数の第2傾斜領域とを含んで構成され、複数の前記第1傾斜領域及び複数の前記第2傾斜領域は、前記吹出口の延在方向に沿って規則的に配置されている。
このように、ベーンの上面は、天井面に対して前上方に傾斜する複数の第1傾斜領域と、天井面に対して前下方に傾斜する複数の第2傾斜領域とを含んで構成されるので、流路からの気流は、吹出口を介して、第1傾斜領域の形状に沿って吹き出す前上方気流及び第2傾斜領域の形状に沿って吹き出す前下方気流に分流される。
ここで、気流案内手段は、空調対象空間の上側境界面をなす天井板の側方直下まで気流を案内すると共に、複数の第1傾斜領域及び複数の第2傾斜領域は、吹出口の延在方向に沿って規則的に配置されている。換言すれば、線状の気流源を天井板の側方直下に配置する吹出構造を採用することで、吹出口の延在方向における気流の分布を一様に近づけるのが容易となる。
しかも、天井面及び上面に挟まれてスリット状の吹出口が形成されるので、天井面の近傍に位置する前上方気流は、吹出口から天井面に向けて集められ易くなり、その分だけコアンダ効果が発生する可能性が高まる。これらの複合的な作用により、一般空調及び天井放射空調の吹出口を兼用しつつも、天井全域にわたり略一様な放射面を形成できる。
また、前記第1傾斜領域は、前記第2傾斜領域と比べて、前記天井面に近い側に位置することが好ましい。これにより、前下方気流による干渉を低減可能であると共に、天井面に引き寄せられる前上方気流の量を増加できる。
また、前記第1傾斜領域及び/又は前記第2傾斜領域は、前記吹出口の先端側に向かうにつれて前記延在方向の幅が拡大する形状を有することが好ましい。これにより、前上方気流及び/又は前下方気流を円滑に案内できる。
また、前記先端面は、前記吹出口の延在方向に沿って周期的な形状を有することが好ましい。これにより、前上方気流(或いは前下方気流)が延在方向に沿って略均等に分配される。
また、前記第1傾斜領域及び前記第2傾斜領域を前記ベーンの奥行き方向に沿って仕切ると共に、前記天井板と前記ベーンの間を連結する板状の隔壁部を更に備えることが好ましい。これにより、気流の分配が円滑になると共に、ベーンの支持強度を十分に確保できる。
また、前記吹出口の中にて前記第2傾斜領域に対応する位置に設けられる補助ベーンを更に備えることが好ましい。天井面よりも下方に設けた補助ベーンを用いて、前下方気流の向きを適切に規制できる。
また、空調システムは、前記空調対象空間に設けられた天井放射空調用カーテン装置を更に備え、前記天井放射空調用カーテン装置は、前記天井板に支持され、且つ前記空調対象空間内に個別空間を画定可能に配置された熱遮蔽カーテンを有していてもよい。天井放射空調による熱が熱遮蔽カーテン113によって反射され、個別空間内で効率の良い熱伝達を行うことができ、快適な空間を実現することができる。
本発明に係る空調システムによれば、一般空調及び天井放射空調の吹出口を兼用しつつも、天井全域にわたり略一様な放射面を形成できる。
本発明の第1実施形態に係る空調システムの全体構成図である。 図1に示すII−II線に沿った断面図である。 図1に示すIII−III線に沿った断面図である。 図2及び図3に示すベーン及びガイド部材の分解斜視図である。 変形例に係る吹出口の構造的特徴を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る空調システムの構成の一例を示す斜視図である。 (a)及び(b)は、図6の空調システムにおける天井放射空調用カーテン装置の構成を示す側面図である。 図7の天井放射空調用カーテン装置の熱遮蔽効果を調査するために行った実験を説明する平面図であり、(a)は部屋の全体図、(b)は部屋の部分拡大図である。 図7の天井放射空調用カーテン装置の熱遮蔽効果を調査するために行った実験において熱遮蔽カーテン或いは通常カーテンを取り付けた場合の窓表面温度の時刻歴を測定した結果を示すグラフである。 (a)はPMVの時刻歴を測定した結果を示すグラフであり、(b)はMRTの時刻歴を測定した結果を示すグラフである。 (a)はペリメータ側カーテンの表面温度の時刻歴を示すグラフであり、(b)はインテリア側カーテンの表面温度の時刻歴を示すグラフである。
以下、本発明に係る空調システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
[空調システム10の全体構成]
図1は、この実施形態に係る空調システム10の全体構成図である。図2は、図1に示すII−II線に沿った断面図である。
図1に示す空調システム10は、病室を含む部屋12の天井板14の上方(つまり天井裏)に設置されており、部屋12内の空調対象空間16に対して空気調和を施すシステムである。空調システム10は、天井板14に埋め込まれたダクト型の室内機20と、室内機20を通じて導入された気流ACを天井面18の近傍まで案内する気流案内手段22と、を基本的に備える。
気流案内手段22は、2本の上流側ダクト24、2つのダクト分岐部26、4本の下流側ダクト28、及び4つのチャンバ30を含んで構成される。ここで、上流側ダクト24及び下流側ダクト28は、蛇腹状の構造を有し、屈折施工が容易なフレキシブルダクトである。
各上流側ダクト24の一端部は室内機20に接続され、他端部はダクト分岐部26に接続されている。各下流側ダクト28の一端側はダクト分岐部26に接続され、他端部はチャンバ30の接続面32に接続されている。これにより、上流側ダクト24、ダクト分岐部26、下流側ダクト28及びチャンバ30を通じて4つに分岐する、気流ACの流路34(図2)が形成される。
図2に示すように、各チャンバ30は、概略角柱状の外形を有すると共に、接続面32の下方にて柱軸方向に沿って開口する開口部36を有する。各チャンバ30の接続面32を天井板14の側部に突き当てて配置しているので、開口部36は、天井面18の近傍を臨む位置関係下にある。これにより、気流案内手段22は、空調対象空間16の上側境界面をなす天井板14の側方直下まで、流路34を通じて気流ACを案内可能である。
開口部36の下側、つまり流路34の先端側には、天井面18に沿って板状のベーン40が取り付けられている。天井板14の天井面18及びベーン40の上面42に挟まれることで、スリット状の吹出口44が形成される。吹出口44の位置には、天井板14とベーン40を連結する複数のガイド部材46が設けられている。
[吹出口44の構造的特徴]
続いて、図1及び図2に示す吹出口44の構造的特徴について、図3及び図4を参照しながら詳細に説明する。図3は図1に示すIII−III線に沿った断面図であり、図4は図2に示すベーン40及びガイド部材46の分解斜視図である。
図3及び図4に示すX方向はベーン40の延在方向であり、Y方向はベーン40の奥行き方向であり、Z方向は天井板14とベーン40の離間方向である。また、矢印Y1側が吹出口44の先端側であり、矢印Y2側が吹出口44の基端側である。また、矢印Z1側が天井面18に近い側であり、矢印Z2側が天井面18から遠い側である。
ベーン40は、金属・樹脂等の材料からなり、例えば、プレス加工により成形された1枚の金属板である。ベーン40の上面42は、平坦な形状を有する1つの平坦領域50と、複数の第1傾斜領域52と、複数の第2傾斜領域54から構成される。
各第1傾斜領域52は、矢印Z1側を基準として凸状に湾曲した形状を有する。各第1傾斜領域52は、ベーン40の先端側にて天井面18に対して前上方に傾斜している。また、各第1傾斜領域52は、平坦領域50との接続線の位置から矢印Y1側に向かうにつれてX方向の幅が徐々に拡大している。
各第2傾斜領域54は、矢印Z1側を基準として凹状に湾曲した形状を有する。各第2傾斜領域54は、ベーン40の先端側にて天井面18に対して前下方に傾斜している。また、各第2傾斜領域54は、平坦領域50との接続線の位置から矢印Y1側に向かうにつれてX方向の幅が徐々に拡大している。
複数の第1傾斜領域52及び複数の第2傾斜領域54は、X方向に沿って規則的に、具体的には1つずつ交互に配置されている。これにより、ベーン40の先端面56は、一面状であると共に、X方向に沿って周期的な形状(ここでは正弦波の形状)を有する。
ところで、破線で示す上面42の仮想線は、第1傾斜領域52及び第2傾斜領域54をY方向に沿って仕切る複数の仕切り線58に相当する。各ガイド部材46は、隣接する2本の仕切り線58の位置にて上面42に接触するように、且つ、第2傾斜領域54の上方に配置されている。
各ガイド部材46は、平行に離間して配置された2枚の隔壁部60、60と、隔壁部60、60の間に介挿された補助ベーン62とを有する。各隔壁部60は、Y方向に長尺な矩形状の板材からなり、矢印Z1側の側面(上側面)が天井板14に固定されると共に、矢印Z2側の側面(下側面)がベーン40にそれぞれ固定される。
補助ベーン62は、矩形状の板材を幅方向(X方向)に沿って湾曲させてなる。また、補助ベーン62は、隔壁部60の下側面(矢印Z2側の側面)に対して僅かに傾斜して配置されている。これにより、ガイド部材46をベーン40の上に配置する場合、補助ベーン62は、第2傾斜領域54に対応する位置に、且つ、矢印Z1側を基準として凹状に設けられる。
[空調システム10の動作]
この実施形態に係る空調システム10は、以上のように構成される。続いて、空調システム10の動作について説明する。
室内機20から導入された気流ACは、上流側ダクト24、ダクト分岐部26、下流側ダクト28及びチャンバ30により形成される流路34を通じて、天井板14の側方直下まで案内される。その後、スリット状の吹出口44は、開口部36を終端とする流路34からの気流ACを、空調対象空間16に向けて吹き出す。
例えば、気流ACの一部(以下、前上方気流C1)は、隣接するガイド部材46における隔壁部60、60の間を通って吹き出される。この場合、前上方気流C1は、天井面18、隔壁部60、60の外側面、平坦領域50、及び第1傾斜領域52で囲まれた空間内を、Y方向に沿って案内される。その結果、第1傾斜領域52の形状に沿った気流、すなわち、吹出口44から前上方に向かう前上方気流C1が発生する。
或いは、気流ACの一部(以下、前下方気流C2)は、同一のガイド部材46における隔壁部60、60の間を通って吹き出される。この場合、前下方気流C2は、補助ベーン62の下面、隔壁部60の内側面、平坦領域50、及び第2傾斜領域54で囲まれた空間内を、Y方向に沿って案内される。その結果、第2傾斜領域54の形状に沿った気流、すなわち、吹出口44から前下方に向かう前下方気流C2が発生する。
分流された前上方気流C1が天井面18(放射面)に引き寄せられながら進行することで、天井板14を冷却或いは加熱し、その結果として空調対象空間16に対して「天井放射空調」が施される。一方、分流された前下方気流C2が部屋12の床面に向けて進行することで、空調対象空間16に対して「一般空調」が施される。その後、室内機20が前上方気流C1(或いは前下方気流C2)を再度導入することで、空調対象空間16内の空気が循環する。天井放射空調及び一般空調の吹出口44を兼用するためにこの実施形態の構成を採用することで、次に示す作用効果が得られる。
[空調システム10による効果]
(1)空調システム10は、空調対象空間16の上側境界面をなす天井板14の側方直下まで、流路34を通じて気流ACを案内する気流案内手段22と、一面状の先端面56を有し、流路34に取り付けられるベーン40とを備え、天井板14の天井面18及びベーン40の上面42に挟まれて形成されるスリット状の吹出口44は、流路34からの気流ACを空調対象空間16に向けて吹き出す。
そして、上面42は、天井面18に対して前上方に傾斜する複数の第1傾斜領域52と、天井面18に対して前下方に傾斜する複数の第2傾斜領域54とを含んで構成され、複数の第1傾斜領域52及び複数の第2傾斜領域54は、吹出口44の延在方向(X方向)に沿って規則的に配置されている。
このように、ベーン40の上面42は、天井面18に対して前上方に傾斜する複数の第1傾斜領域52と、天井面18に対して前下方に傾斜する複数の第2傾斜領域54とを含んで構成されるので、流路34からの気流ACは、吹出口44を介して、第1傾斜領域52の形状に沿って吹き出す前上方気流C1及び第2傾斜領域54の形状に沿って吹き出す前下方気流C2に分流される。
ここで、気流案内手段22は、天井板14の側方直下まで気流ACを案内すると共に、複数の第1傾斜領域52及び複数の第2傾斜領域54は、吹出口44の延在方向に沿って規則的に配置されている。換言すれば、線状の気流源を天井板14の側方直下に配置する吹出構造を採用することで、吹出口44の延在方向における気流ACの分布を一様に近づけるのが容易となる。
しかも、天井面18及び上面42に挟まれてスリット状の吹出口44が形成されるので、天井面18の近傍に位置する前上方気流C1は、吹出口44から天井面18に向けて集められ易くなり、その分だけコアンダ効果が発生する可能性が高まる。これらの複合的な作用により、一般空調及び天井放射空調の吹出口を兼用しつつも、天井全域にわたり略一様な放射面を形成できる。
(2)また、第1傾斜領域52は、第2傾斜領域54と比べて、天井面18に近い側(矢印Z1側)に位置するように設けてもよい。これにより、前下方気流C2による干渉を低減可能であると共に、天井面18に引き寄せられる前上方気流C1の量を増加できる。
(3)また、第1傾斜領域52及び/又は第2傾斜領域54は、吹出口44の先端側(矢印Y1側)に向かうにつれてX方向の幅が拡大する形状を有してもよい。これにより、前上方気流C1及び/又は前下方気流C2を円滑に案内できる。
(4)また、先端面56は、X方向に沿って周期的な形状を有してもよい。これにより、前上方気流C1(或いは前下方気流C2)がX方向に沿って略均等に分配される。
(5)また、第1傾斜領域52及び第2傾斜領域54をY方向に沿って仕切ると共に、天井板14とベーン40の間を連結する板状の隔壁部60を設けてもよい。これにより、気流ACの分配が円滑になると共に、ベーン40の支持強度を十分に確保できる。
(6)また、吹出口44の中にて第2傾斜領域54に対応する位置に補助ベーン62を設けてもよい。天井面18よりも下方に設けた補助ベーン62を用いて、前下方気流C2の向きを適切に規制できる。
[変形例]
続いて、変形例に係る吹出口70について図5を参照しながら説明する。この吹出口70は、[1]ベーン72の形状違い、及び[2]ガイド部材46の構成を欠く点で、本実施形態の吹出口44(図3)と異なっている。なお、本実施形態と同様に、吹出口70の中にガイド部材46(図3及び図4)を設けてもよい。
図5は、変形例に係る吹出口70の構造的特徴を示す図である。より詳しくは、図5(a)は図3に対応する吹出口70の断面図であり、図5(b)は図5(a)に示すベーン72の斜視図である。
図5(a)(b)に示すX方向はベーン72の延在方向であり、Y方向はベーン72の奥行き方向であり、Z方向は天井板14とベーン72の離間方向である。また、矢印Y1側が吹出口70の先端側であり、矢印Y2側が吹出口70の基端側である。また、矢印Z1側が天井面18に近い側であり、矢印Z2側が天井面18から遠い側である。
ベーン72は、板状のベーン本体74と、五角形状である複数枚の側板76から構成される。ベーン本体74は、長さ方向に沿って短冊状に切り込み、複数の短冊部分を幅方向の順に沿って2回ずつ交互に山折り・谷折りの曲げ加工を施してなる1枚の金属材である。複数の側板76は、ベーン本体74の曲げ加工により生じた高さ方向(Z方向)の隙間を塞ぐための部材である。
ベーン72の上面78は、矢印Z2側からの平面視にて、平坦な形状を有する1つの平坦領域80と、複数の第1段差領域82と、複数の第2段差領域84から構成される。
各第1段差領域82は、矢印Y2側から順に、天井面18に対して前上方に傾斜する第1傾斜領域86と、平坦な形状を有する第2平坦領域87を有する。各第2段差領域84は、矢印Y2側から順に、天井面18に対して前下方に傾斜する第2傾斜領域88と、平坦な形状を有する第2平坦領域89を有する。
複数の第1段差領域82及び複数の第2段差領域84は、X方向に沿って規則的に、ここでは1つずつ交互に配置されている。これにより、ベーン72の先端面90は、一面状であると共に、X方向に沿って周期的な形状(ここでは方形波の形状)を有する。
以上のように、上面78は、天井面18に対して前上方に傾斜する複数の第1傾斜領域86と、天井面18に対して前下方に傾斜する複数の第2傾斜領域88とを含んで構成される。これによっても、ベーン40(図4)の場合と同様の作用効果が得られる。
図6は、本発明の第2実施形態に係る空調システムの構成の一例を示す斜視図であり、図7(a)及び(b)は、図6の空調システムにおける天井放射空調用カーテン装置の構成を示す側面図である。図6の空調システムでは、図1の空調システムに間仕切り用の天井放射空調用カーテン装置を適用し、図1の空調システムを用いて、天井放射空調用カーテン装置によって間仕切られた個別空間内の空調を行うものである。以下、第2実施形態に係る空調システムを病院に適用した場合を例に挙げて説明する。
図6の空調システム11は、部屋12の空調対象空間16に設けられた天井放射空調用カーテン装置111を備える。天井放射空調用カーテン装置111は、天井板14の天井面18側に取り付けられたカーテンレール112と、カーテンレール112を介して天井板14に支持され、且つ空調対象空間16内に個別空間を画定可能に配置された熱遮蔽カーテン113とを有している。
カーテンレール112は、部屋12に設置された複数のベッド114a,114aのそれぞれに対応して配置された複数のレール部112a,112aを有している。レール部112aは、平面視において1つのベッド114aを取り囲むように、例えば略コの字型に配設されている。また、レール部112aは、図7(a)に示すように、天井板14に埋め込まれており、鉛直方向断面視において天井板14の天井面18から下方に突出しないように固定されている。
熱遮蔽カーテン113は、熱遮蔽部材からなる複数のカーテン本体113a,113aからなり(図7(a))、カーテン本体113aがレール部112aの複数のランナー(不図示)に着脱可能に固定されている。熱遮蔽部材は、例えば金属蒸着糸を編み込んでなるレース状部材であり、熱を遮蔽しつつ、気流を透過することが可能となっている。熱遮蔽部材の熱遮蔽特性は、JIS R 3106に準拠して分光反射率の測定値から算出することができ、例えば波長250nm〜2500nmの範囲で分光反射率30〜60%であるのが好ましい。このカーテン本体113aをレール部112aに沿って平面視略コの字状或いは略L字状に吊すと、部屋12内の空調対象空間16が間仕切られ、ベッド114aを含む個別空間16aが画定される。
尚、本実施形態では、熱遮蔽部材がレース状部材であるが、これに限らず、金属蒸着糸を密に編み込んでなる布状部材や、金属蒸着層を有するシート状部材であってもよい。この場合、カーテン本体113aは気流を透過し難いため、カーテン本体113aは、気流を透過する糸状、レース状等の吊り部(不図示)を介してレール部112aに取り付けられる。この吊り部は、後述する熱反射に影響を与えない範囲の高さで設けられるのは言うまでも無い。
本第2実施形態の空調システム11では、前上方気流C1が部屋12内のベッドの幅方向に沿って発生しており(図6)、図1の第1実施形態の空調システム10とは、前上方気流C1が部屋12内のベッドの長手方向に沿って発生している点で異なるが、その作用は第1実施形態と基本的に同じである。すなわち空調システム11では、空調システム10と同様、分流された前上方気流C1が天井面18(放射面)に引き寄せられながら進行することで、天井板14を冷却或いは加熱し、その結果空調対象空間16及び個別空間16aに対して「天井放射空調」が施される。
また、空調システム11では、上述のようにレール部112aが天井板14に埋め込まれ、また、カーテン本体113aが熱を遮蔽しつつ気流を透過することが可能に構成されているため、レール部112a或いはカーテン本体113aによって前上方気流C1の進行が妨げられず(図7(b))、天井板12の吹出口から室内機の吸込口に亘って天井面18に沿って進行する。
このとき、個別空間16aに対応する天井板14aの熱は、電磁波として当該個別空間16a内を伝播し、その一部がカーテン本体112aに到達する(図7(b))。そしてカーテン本体112aに到達した熱は、カーテン本体112aの熱遮蔽特性により、その大部分が反射され、残りの部分がカーテン本体112aを透過するか或いは当該カーテン本体に吸収される。この結果、カーテン本体112aに到達した熱が、個別空間16aの外部或いはカーテン本体112aに伝達し難くなり、カーテン本体112aにおいて対流或いは再放射などに因る熱損失が低減される。よって、本来天井放射空調を施したい患者Kやベッド114aの上面近傍に、効率良く熱伝達を行うことが可能となる。
次に、天井放射空調用カーテン装置111を適用した場合の個別空間16aにおける熱遮蔽効果を調査するために、下記実験を行った。
先ず、図8(a)に示すように、病院内の部屋を想定し、4つのベッドB1,B2,B3,B4を2行2列で配置した部屋を実験棟内に準備し、各ベッドの三方を囲むように熱遮蔽カーテンを取り付けた。そして、図8(b)に示すように、各熱遮蔽カーテンのうち、窓側、すなわちペリメータゾーン側に位置するカーテン部分をペリメータ側カーテン、室内側、すなわちインテリアゾーン側に位置するカーテン部分をインテリア側カーテン、部屋と外部の境界に設けられたドア側に位置するカーテン部分を出入り口側カーテンとした。そして、当該部屋の空調機を稼働して設定温度を所定値とし、2016年9月2日15時30分から17時44分まで、熱遮蔽カーテンを取り付けた場合の窓表面温度の時刻歴を測定した。次に、ベッドB4の上記熱遮蔽カーテン(低放射カーテン)を通常カーテン(布カーテン)に速やかに変更し、17時44分過ぎから18時50分まで、通常カーテンを取り付けた場合の窓表面温度の時刻歴を測定し、図9に示すようなグラフを得た。
次に、上記時間範囲でPMV(Predicted Mean Vote、予測平均温冷感)の時刻歴を算出した結果を図10(a)に、上記時間範囲でMRT(Mean Radiant Temperature、平均放射温度)の時刻歴を算出した結果を図10(b)に示す。尚、PMVは、ISO 7730に基づいて下記式で算出し、M値は47W/m(0.8MET、1MET=58.2W/m)、L値は、気温、湿度、平均放射温度(MRT)、着衣量、風速等をパラメータとするプログラム(ソフトウェア名「PMV_cal」)により算出される値を用いた。また、MRTは下記式を用いて算出した。
PMV=(0.303e−0.036M+0.028)L
L:人体の熱負荷[W/m
M:代謝量[W/m
MRT={(θsi・ψ1/4
θsi:面iの表面温度[℃]
ψ:ある位置から面iへの形態係数
図10(a)に示すように、熱遮蔽カーテンを用いた場合におけるPMVMAX=0.17、PMVMIN=−0.13であるのに対し、通常カーテンを用いた場合におけるPMVMAX=0.21、PMVMIN=−0.09であった。このように、図9に示す窓表面温度、すなわち外気温が徐々に下降しているのにPMVMAX及びPMVMINのいずれも上昇していることから、通常カーテンと比較して、熱遮蔽カーテンによって熱遮蔽効果が得られると推察される。また、図10(b)に示すように、熱遮蔽カーテンを用いた場合、MRTMAX=24.7、MRTMIN=23.8であり、通常カーテンを用いた場合、MRTMAX=24.7、MRTMIN=23.7であり、熱遮蔽カーテンと通常カーテンでMRTの変化が殆ど無いことから、ペリメータ側カーテン表面温度が窓表面温度の影響を受けると推察される。
次に、ペリメータ側カーテンの表面温度の時刻歴を図11(a)に、インテリア側カーテンの表面温度の時刻歴を図11(b)に示す。図11(a)に示すように、ペリメータ側熱遮蔽カーテンの表面温度の最大値は25.2℃、最小値は24.6℃であり、ペリメータ側通常カーテンの表面温度の最大値は24.8℃、最小値は24.4℃であった。また、図11(b)に示すように、インテリア側熱遮蔽カーテンの表面温度の最大値は25.0℃、最小値は23.7℃であり、インテリア側通常カーテンの表面温度の最大値は25.2℃、最小値は23.7℃であった。このようにペリメータ側通常カーテンの表面温度がペリメータ側熱遮蔽カーテンの表面温度よりも下がったのは、窓表面温度の低下に因るものであり、ペリメータ側熱遮蔽カーテンは、ペリメータ側通常カーテンと比較して窓表面温度の影響を受け難く、熱遮蔽効果が得られることが分かった。
このように本第2実施形態によれば、熱遮蔽カーテン113が、天井板14に支持され且つ空調対象空間16内に個別空間16aを画定可能に配置されるので、天井放射空調による熱の大部分が熱遮蔽カーテン113によって反射され、個別空間16a内で効率の良い熱伝達を行うことができる。また、診察等を実施する医師や看護師は病院内を移動することが多く、医師等の体感温度とベッドに横たわっている患者の体感温度とが異なる場合があるため、従来のメディカルカーテンを用いて通常の空調機の設定温度を調整しても、患者が快適と感じる室内温度を得ることが難しい。一方、本第2実施形態によれば、患者Kに天井放射空調を施しつつ、熱遮蔽カーテン113により個別空間16a内で効率良く熱伝達させることができるので、患者Kに寒さや暑さなどの不快感を与え難くすることができ、快適な空間を実現することが可能となる。
また、熱遮蔽カーテン113を配置することにより、個別空間16a内において窓や壁等の外皮構造の温度変化の影響を受け難くなり、ペリメータゾーン等の外気の影響を受け易い空間或いはその近傍においても熱遮蔽効果を得ることができ、快適な空間を実現することが可能となる。
[備考]
なお、この発明は、上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
この空調システム10では、室内機20を介して空調対象空間16内の空気を循環させる構成を採用しているが、この設備構成に限られない。例えば、部屋12内に別の排気口を設けて空気を循環させない構成、或いは、空調対象空間16の外部から気流ACを導入する構成を採用してもよい。また、気流案内手段22の設備構成についても、図1の構成例に対して任意に変更できる。
また、ベーン40(72)の形状は図4(図5)に示す例に限られない。具体的には、第1傾斜領域52(86)及び第2傾斜領域54(88)のサイズ、形状、個数、位置、及びこれらの相対関係を任意に変更してもよい。また、ベーン40(72)の成形方法は上記した例に限られず、材料の種類に適した工法、具体的には切削加工・射出成型を含む工法を種々適用できる。
また、図4例では、隔壁部60及び補助ベーン62が、ガイド部材46として一体的に構成されているが、それぞれ別体で構成されてもよい。つまり、隔壁部60或いは補助ベーン62を単体で設けた場合であっても、上記した作用効果がそれぞれ得られる。
また、空調システム11は、天井板14に埋め込まれたレール部112aを有するが、これに限らず、天井板14に取り付けられたブラケットと、該ブラケットの下端に固定され、ブラケットを介して天井板14に吊り下げられたレール部とを有していてもよい。本構成によっても、レール部によって前上方気流C1の進行が妨げられず、上記した作用効果が得られる。
10‥空調システム
11‥空調システム
12‥部屋
14‥天井板
16‥空調対象空間
16a‥個別空間
18‥天井面
20‥室内機
22‥気流案内手段
34‥流路
40、72‥ベーン
42、78‥上面
44、70‥吹出口
46‥ガイド部材
50、80‥平坦領域
52、86‥第1傾斜領域
54、88‥第2傾斜領域
56、90‥先端面
60‥隔壁部
62‥補助ベーン
74‥ベーン本体
76‥側板
111‥天井放射空調用カーテン装置
112‥カーテンレール
112a‥レール部
113‥熱遮蔽カーテン
113a‥カーテン本体
114a‥ベッド
AC‥気流
B1,B2,B3,B4 ベッド
C1‥前上方気流
C2‥前下方気流
K‥患者

Claims (7)

  1. 空調対象空間の上側境界面をなす天井板の側方直下まで、流路を通じて気流を案内する気流案内手段と、
    一面状の先端面を有し、前記流路に取り付けられるベーンと
    を備え、
    前記天井板の天井面及び前記ベーンの上面に挟まれて形成されるスリット状の吹出口は、前記流路からの前記気流を前記空調対象空間に向けて吹き出し、
    前記上面は、
    前記天井面に対して前上方に傾斜する複数の第1傾斜領域と、
    前記天井面に対して前下方に傾斜する複数の第2傾斜領域と
    を含んで構成され、
    複数の前記第1傾斜領域及び複数の前記第2傾斜領域は、前記吹出口の延在方向に沿って規則的に配置されている
    ことを特徴とする空調システム。
  2. 前記第1傾斜領域は、前記第2傾斜領域と比べて、前記天井面に近い側に位置することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
  3. 前記第1傾斜領域及び/又は前記第2傾斜領域は、前記吹出口の先端側に向かうにつれて前記延在方向の幅が拡大する形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の空調システム。
  4. 前記先端面は、前記延在方向に沿って周期的な形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調システム。
  5. 前記第1傾斜領域及び前記第2傾斜領域を前記ベーンの奥行き方向に沿って仕切ると共に、前記天井板と前記ベーンの間を連結する板状の隔壁部を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空調システム。
  6. 前記吹出口の中にて前記第2傾斜領域に対応する位置に設けられる補助ベーンを更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空調システム。
  7. 前記空調対象空間に設けられた天井放射空調用カーテン装置を更に備え、
    前記天井放射空調用カーテン装置は、前記天井板に支持され、且つ前記空調対象空間内に個別空間を画定可能に配置された熱遮蔽カーテンを有する、
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空調システム。
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