JP2008081859A - 横型耐炎化炉および耐炎化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前駆体繊維Aを熱処理室2内で連続的に熱処理する横型耐炎化炉1において、熱処理2室に連設されたシール室4,4の外壁5,5に、前駆体繊維Aを挿入、挿出するためのスリット状の挿入口7,7’を開口形成し、挿入口7,7’を挟んだ上下に挿入口7,7’の外側でかつ被処理物Aに向かって空気を噴出する一対のノズル10a,10bを設け、このノズル10a,10bを単一の給気路35に接続したことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
このような分解ガスが耐炎化炉の前駆体繊維の挿入口から炉外に漏出することを防止するために、熱処理室の挿入口に隣接してシール室を設け、更に挿入口の外側で被処理物へ向かって炉本体外の空気を吹き付けるエアーカーテン手段を設けた熱処理炉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、熱処理炉内の温度ムラ抑制のため、熱処理炉の挿入口にスリットを設け、スリットより炉内もしくは炉外へ加熱空気を噴出する機構を備えた耐炎化熱処理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、これらの耐炎化炉を用いた耐炎化処理においては、多量の前駆体繊維を効率良く連続的に処理するために、耐炎化炉に前駆体繊維の挿入口を複数設け、前駆体繊維を炉の外部で折り返しながら熱処理室内に連続して挿入及び挿出することを繰り返す。このため、従来から上下方向に複数のパスが設けられ、前駆体繊維が横方向に走行する横型耐炎化炉が用いられている。これらは、熱処理室内の煙突効果により熱処理室内に上方が高圧となり、下方が低圧となる圧力分布を生じる。
これにより、熱処理室内部で発生した分解ガスが熱処理室上方の挿入口からシール室内に漏出し、燃焼処理の必要なガス量を増加させることがあった。また、熱処理室下方の挿入口ではシール室から温度の低い空気を吸い込むことによって熱処理室内の温度が低下する虞があった。
例えば、特許文献1では、1つのエアーカーテン手段の上下を被処理物が通過し、2箇所のノズルから、一方は上を通過する被処理物の下面に、他方は下を通過する被処理物の上面に向かって空気を噴出する構造のため、各段のシール室圧力に応じた最適な噴出し風速に設定することができなかった。したがって分解ガスの漏出を確実に防止するために、最適条件よりも熱処理室外部の空気の流入量を増加させる必要があった。
このように構成することで、単一の給気路によって上下のノズルに供給される空気の圧力、流量等を略等しくすることができる。また、単一の給気路に供給される空気の流量、圧力等を調整することで上下に配置されたノズルから噴出する空気の風速等を同時に調節することができる。これにより、熱処理室内部に生じた上下方向の圧力分布に応じて、上下のノズルの風速等を同時に最適な値に調節することができる。
図1(a)に示すように、横型耐炎化炉1は箱型の熱処理室2を備えている。熱処理室2には内部に熱風を循環させる図示しない熱風循環装置が連結されている。また、熱処理室2には排気口30が設けられている。排気口30は排気路31を介してファン14に接続されている。排気路31の途中には、例えばバルブ等の流量調節機構13が設けられている。ファン14は外部の図示しないガス回収処理装置に接続されている。
ここで、シール室4の前駆体繊維Aの走行方向の長さLsは繊維の性状、室内の清掃やメンテナンス作業性等を考慮して適宜決定される。
図1(b)に示すように、エアーカーテン手段8の上下のノズル10a,10bは単一の給気路35に接続され、給気路35には、例えばバルブ等の流量調節機構21が設けられている。各流量調節機構21はさらに共通給気路37を介して給気ファン24に接続されている。
図2に示すように、シール室4,4の外壁5,5の挿入口7,7’の上下に配置されたノズル10a,10bは、挿入口7,7’から外側に向かい、挿入口7,7’から挿入、挿出される前駆体繊維Aに向けて配置された2枚の板材により両板材間に形成されるもので、前駆体繊維Aに対して角度θを持つように配置されている。このとき、角度θは、0°より大きく90°より小さい範囲とする。さらに、30°以上60°以下の範囲とすることがより好ましい。ここで、対向するノズル10a、10bの間隔Dnは、4mm以上60mm以下の範囲とする。さらに、15mm以上40mm以下の範囲であることがより好ましい。
図4(a)に示すように、エアーカーテン手段8に接続された単一の給気路35はエアーカーテン手段8内部で上下のノズル10a,10bに対応した上下の給気路35a,35bに分岐している。エアーカーテン手段8内部の給気路35の分岐点には、供給された空気を上下の給気路35a,35bに均一に分配するように、頂点を分岐点に向けて配置された断面略三角形状の分配板25が設けられている。
ここで、多孔板18,19の開口率及び設置数は、支持部9の幅と高さの比や噴出口20からの噴出風速等に従って適宜決定する。
図1(a)に示すように、複数の前駆体繊維Aが紙面に垂直方向に平行に揃えられた状態で耐炎化炉1の図示左側のシール室4の最上段の挿入口7から挿入される。次いで、前駆体繊維Aは熱処理室2の外壁3の挿入口6を通過し、熱処理室2の対抗する外壁3の挿入口6’から挿出される。さらに、前駆体繊維Aは熱処理室2に連接されたシール室4の外壁5の挿入口7’を通過して耐炎化炉1の外部に挿出される。耐炎化炉1の外部に挿出された前駆対繊維Aはシール室4の外部のロール11に巻き掛けられるようにして折り返され、挿出された挿入口7’の一つ下の挿入口7’から、再び耐炎化炉1内部に挿入される。
図3および図4(a)に示すように、エアーカーテン手段8に接続された単一の給気路35から供給された空気は、エアーカーテン手段8内部の給気路35の分岐点に設けられた分配板25によって上下に均一に分配され、上下のノズル10a,10bに対応した給気路35a,35bに供給される。上下の各給気路35a,35bに分配された空気は多孔板18,19を通過するときに圧力損失によって均一に整流される。上下均一に分配され整流された空気はノズル10a、10bの先端の上下の噴出口20a,20bから略等しい風速で噴出され、前駆体繊維Aに上下から衝突するエアーカーテンを形成する。ここで、多孔板等18,19を複数設置したことで、開口率がより小さい多孔板等を1枚設置するよりも圧力損失を低く抑制しつつ、噴出しムラを抑制することができる。
ここで、エアーカーテン手段8によって形成されるエアーカーテンの風速は、1〜50m/秒であると、分解ガスの漏出と熱処理室2内部への外気の侵入をより確実に防止できる。また、エアーカーテンの風速が1m/秒以上であると、外気が熱処理室2内に侵入することがない。また、風速が50m/秒以下であれば、エアーカーテンの気流によって熱処理室2内の分解ガスが漏出することがない。
また、外気の流入を抑制する適正な噴出し風速は、シール室4,4内部の圧力に応じて変化する。すなわち、シール室4,4の各区画4a,4b,4cの圧力を、熱処理室2内部の上下方向の圧力分布に応じた個別の値に設定するためには、ノズル10a,10bから噴出する空気の風速を区画4a,4b,4c毎に最適な値に調整する必要がある。
したがって、図1(b)に示すように各々の区画4a,4b,4cに各々設けた排気口35から排出される気体の流量を流体調節機構21によって調節し、各区画4a,4b,4cの圧力を個別に設定することができる。よって、シール室4,4の各区画4a,4b,4cの圧力を熱処理室2の上下方向の圧力分布に応じた適正な圧力に個別に設定することができる。
例えば熱処理室2内部と外気との温度差250℃、熱処理室2内部の高さ方向の高低差が1mの場合、熱処理室2上部の圧力が+1.5Pであれば、隣接するシール室4の上部の区画4cの圧力を−0.5Pとする。また熱処理室2下部の圧力が−3.8Pであれば、隣接するシール室4の下部の区画4aの圧力を−3.5Pとする。
このようにすると、熱処理室2下部の挿入口6,6’から熱処理室2に流入するシール室4,4内の温度の低い空気の量を抑制し、熱処理室2内の温度が低下することを防止することができる。
また、エアーカーテン手段8の内部にレール38,39を設け多孔板18,19を取外し可能な構造としたことで、長期にわたって運転し、多孔板18,19に塵、埃がたまった場合には、多孔板18,19をエアーカーテン手段8の外部に取り出して洗浄することができる。したがって、耐炎化炉1メンテナンスが容易になり、耐炎化処理の生産性を向上させることができる。
また、対向するノズル10a、10bの間隔を4mm以上としたことで、前駆体繊維Aがエアーカーテン手段8に接触することがなく、製品の品質低下を招くことがない。また60mm以下としたことで、シールに必要な気体の噴出風速が小さくて済む。したがって多孔板等18,19での圧損が増大して給気ファン24等の空気供給設備の負荷が大きくなることを防止することができる。
また、本実施形態では、ポリアクリロニトリル系繊維からなる前駆体繊維Aを耐炎化処理する場合について説明したが、その他の被処理物について本発明の横型耐炎化炉1を使用することも可能である。
また、挿入口6、6’、挿入口7、7’の上下の開口寸法は、前駆体繊維Aが接触することなく通過できる範囲で可能なかぎり狭くすることが好ましい。これは出入口を通した気体の流通が起こりにくくなるためである。従って各出入口は開口寸法が上下方向に調節可能なスリットであることが好ましい。
また、エアーカーテン手段8は幅方向の両端から気体が供給される構造であってもよい。また、仕切り板12は、シール室の全段を区画するように各段に設けなくてもよい。また、熱処理室2に備えた排気ファン14によって排気することでシール室4内を負圧とすることが可能なら、シール室2には排気口15及び排気17ファンを備えていなくても良い。
また、エアーカーテンに供給される気体は空気でなくてもよい。
図5に示すように、模擬的な1段の熱処理室2として、一方の外壁3にシール室4、エアーカーテン手段8を設け、熱処理室2を負圧に設定するための排気ファン14、ダンパ等の流量調節機構13を設けた。挿入口6、6’、挿入口7はそれぞれ紙面に垂直方向の開口長さ2000mm、開口高さDiを40mmとした。
エアーカーテン手段8の支持部9の長さLnは400mm、ノズル10a、10bの開口部は紙面に垂直方向の開口長さ2000mm、開口幅Wnを2mmとした。ノズル10a、10bの対向する間隔Dnは40mmとした。
実施例1と同様、調整を行った所、ノズル10a、10bからの平均噴出し風速は16m/s、紙面に垂直な幅方向各21点での噴出ムラは10a、10b合わせて平均値の±6%であった。挿入口7での平均流入速度は0.2m/sであった。
図6に示すように、実施例1と同じ熱処理室2、シール室4に、従来のエアーカーテン手段8を設けた。エアーカーテン手段8、8’のノズル10a、10bは、図10に示すように多孔板18を1枚と流量調整室23を備えている。多孔板18の開口率は、実施例1と圧損がほぼ同じ、3%である。ノズル10a、10bの噴出し口20a,20bは実施例1と同じである。エアーカーテン手段8はノズル10a、10bからの平均噴出し風速6m/sに調整した後、排気ファン14、流量調節ダンパ13による排気量の調整を行った。このときノズル10a、10bからの幅方向各21点での噴出ムラは10a、10b合わせて平均値の±10%であった。シール室4の圧力は−2.5Paで、挿入口7での平均流入速度は0.3m/sであった。
ノズル10a、10bからの平均噴出し風速を16m/sとした以外は比較例1に同じとした。
比較例1と同様、調整を行った所、ノズル10a、10bからの幅方向各21点での噴出ムラは10a、10b合わせて平均値の±9%であった。シール室4の圧力は−7Paで、挿入口7での平均流入速度は0.4m/sであった。
図8に示すように、模擬的な2段の熱処理室2とした以外は、比較例1と同じ構成とした。
上段のエアーカーテン手段8はノズル10a、10bからの平均噴出し風速5m/sとし、中段及び下段のエアーカーテン手段8’、8’’は平均噴出し風速16m/sとした。噴出ムラは比較例1及び2に示したとおりである。
中段のエアーカーテン手段8’のノズル10a、10bからの平均噴出し風速を5m/sとした以外は比較例3に同じとした。
挿入口7の上段、下段ともに、全ての箇所で外気が流入した。平均流入速度は上段が0.3m/sに対し、下段は1.5m/sであった。
中段のエアーカーテン手段8’のノズル10a、10bからの平均噴出し風速を10m/sとした以外は比較例3に同じとした。
挿入口7の下段は全ての箇所で外気が流入し、平均流入速度は1m/sであった。上段はほぼすべての箇所でシール室4の気体が外部に漏出した。
1 耐炎化炉(横型耐炎化炉)
2 熱処理室
4 シール室
5 外壁
7 挿入口
7’ 挿入口
10a ノズル
10b ノズル
18 多孔板 (整流手段)
19 多孔板 (整流手段)
35 給気路
Claims (8)
- 被処理物を熱処理室内で連続的に熱処理する横型耐炎化炉において、前記熱処理室に連設されたシール室の外壁に、前記被処理物を挿入、挿出するためのスリット状の挿入口を開口形成し、前記挿入口を挟んだ上下に前記挿入口の外側でかつ被処理物に向かって空気を噴出する一対のノズルを設け、このノズルを単一の給気路に接続したことを特徴とする横型耐炎化炉。
- 前記給気路に多数の孔が形成されたスクリーン状の整流手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の横型耐炎化炉。
- 前記整流手段は取り外し可能な多孔板と網のどちらか一方または両方を用いたことを特徴とする請求項2記載の横型耐炎化炉。
- 前記ノズルから噴出する空気が熱処理室外部の空気であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の横型耐炎化炉。
- 被処理物を熱処理室内で連続的に熱処理する横型耐炎化炉を用いた耐炎化処理方法において、前記熱処理室内で連続的に加熱処理される前記被処理物の挿入、挿出時に、被処理物の挿入口近傍で共通する給気路から供給された空気を、前記挿入口を挟む上下一対のノズルにより前記被処理物に噴出することを特徴とする耐炎化処理方法。
- 前記供給路に多数の孔が形成されたスクリーン状の整流手段を設けて前記給気路内の前記空気の圧力分布を均等にして前記ノズルにより前記被処理物に噴出することを特徴とする請求項5記載の耐炎化処理方法。
- 前記整流手段として取り外し可能な多孔板と網のどちらか一方または両方を用いて前記給気路内の前記空気の圧力分布を均等にして前記ノズルにより前記被処理物に噴出することを特徴とする請求項6記載の耐炎化処理方法。
- 前記ノズルから前記熱処理室外部の空気を噴出することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の耐炎化処理方法。
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