本発明に係るコネクタは、金属等の導電性材料から成る端子と、この端子を内方で収容及び保持するハウジングと、を少なくとも備えたものであり、その端子に対して電線の芯線が物理的且つ電気的に接続されている。このコネクタは、相手方コネクタとの嵌合に伴って、自らの端子と相手方端子とを物理的且つ電気的に接続させる一方、相手方コネクタからの抜去と共に、端子間の物理的且つ電気的な接続を解消させる。このコネクタは、相手方コネクタに対する挿入方向(嵌合方向)と抜去方向が互いに逆向きになっている。以下においては、相手方コネクタに対する自らの挿入方向を「コネクタ挿入方向」と称し、相手方コネクタに対する自らの嵌合方向を「コネクタ嵌合方向」と称し、相手方コネクタに対する自らの抜去方向を「コネクタ抜去方向」と称する。また、これらの双方向の向きを特定しない場合には、これを「コネクタ挿抜方向」と称する。
図1は、本発明に係るコネクタ(後述する実施形態のコネクタ1や変形例1及び2のコネクタ2,3)の外観の一例を概念的に示したものである。本図では、その外観の大部分を成すハウジング20,120,220が、端子10,110,210を内方に収容及び保持する収容保持体20A,120A,220Aと、この収容保持体20A,120A,220Aの外周面に対して間隔を空けて配置され、かつ、その外周面を覆うフード20B,120B,220Bと、を備えている。この場合、ハウジング20,120,220は、収容保持体20A,120A,220Aとフード20B,120B,220Bが一体成形されたものであってもよく、個々に成形された収容保持体20A,120A,220Aとフード20B,120B,220Bを組み付けて一体化したものであってもよい。また、ハウジング20,120,220は、そのようなフード20B,120B,220Bを備えないものであってもよい。
以下に、それぞれのコネクタ1−3の具体的な形態について、各々に対応させた図面を用いて詳述する。尚、この形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを図1から図11に基づいて説明する。
図1から図5の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、金属等の導電性材料から成る端子10(図4及び図5)と、この端子10を内方側で収容及び保持するハウジング20(図1から図5)と、を備える。尚、本実施形態の説明で用いる各図のハウジング20は、説明の便宜上、図1のフード20Bの有無に拘わらず、収容保持体20Aのみを図示することにしている。
本実施形態の端子10は、相手方コネクタ(図示略)の相手方端子(図示略)と電線30の端末の芯線31(図4)とに対して各々電気的に接続されるものである。この端子10は、相手方端子に対して物理的且つ電気的に接続される端子接続部11と、電線30に対して物理的且つ電気的に接続される電線接続部12と、を有する(図4及び図5)。この端子10は、母材となる金属板に対する折曲げ加工や切断加工等のプレス成形によって所定形状に成形される。
端子接続部11は、雄型の相手方端子が挿入及び嵌合される雌型又は雌型の相手方端子に挿入及び嵌合する雄型に形成する。本実施形態では、端子10が雌端子となるように、端子接続部11を箱状の雌型に形成している。電線接続部12は、電線30の端末の芯線31を物理的且つ電気的に接続させるように形成する。その接続は、圧着や溶着等によって行う。本実施形態では、電線接続部12に2枚のバレル片を設け、それぞれのバレル片を剥き出しの芯線31に加締めて行くことによって、電線接続部12を芯線31に圧着させる。
本実施形態の端子10は、コネクタ挿抜方向に沿って相手方端子との挿抜が行われるように端子接続部11を形成し、かつ、圧着された電線30の端末の軸線方向がコネクタ挿抜方向に沿うように電線接続部12を形成する。
本実施形態のハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形する。このハウジング20には、端子10と電線30の端末とを収容及び保持する収容保持体20Aが設けられている。
収容保持体20Aは、端子10を内方に収容する端子収容室21を有する(図4及び図5)。また、この収容保持体20Aは、第1開口部22(図3及び図5)と第2開口部23(図2及び図4)とを有する。その第1開口部22と第2開口部23は、双方とも、端子収容室21を収容保持体20Aの外方に連通させる開口である。
第1開口部22は、電線30を収容保持体20Aの内方に挿入する際の開口(挿入口)であると共に、その挿入された電線30を収容保持体20Aの内方から外方に向けて引き出しておく開口でもある。このため、この第1開口部22は、その電線30の端末を通過させることが可能な形状に形成する。一方、この第1開口部22は、端子10を通過させることが不能な形状に形成する。つまり、このコネクタ1においては、電線30の端末を挿通させることは可能であるが、端子10の端子収容室21への収容が第1開口部22を介して行われないように、そして、端子収容室21に収容された端子10が第1開口部22を介して収容保持体20Aの外方に抜け出さないように、その第1開口部22を形成する。例えば、本実施形態の第1開口部22は、電線30の端末を当該端末の軸線方向(つまりコネクタ挿抜方向)に沿って通過させることが可能な形状(ここでは円柱状)に形成している。
第2開口部23は、端子10と接続する際に相手方端子が挿入される開口(挿入口)である。このため、この第2開口部23は、収容保持体20Aにおけるコネクタ挿入方向側に配置し、その方向に向けて開口させる。この第2開口部23は、端子10を通過させることが不能な形状に形成する。つまり、このコネクタ1においては、端子10の端子収容室21への収容が第2開口部23を介して行われないように、そして、端子収容室21に収容された端子10が第2開口部23を介して収容保持体20Aの外方に抜け出さないように、その第2開口部23を形成する。
更に、この収容保持体20Aは、端子10を端子収容室21に収容する際に端子10が挿入される端子挿入口24を有する(図5)。ここで、この収容保持体20Aは、絶縁性材料から成る複数の分割構造体を組み合わせて形成する。端子挿入口24は、その複数の分割構造体の組付け完了後における収容保持体20Aの内方に配置する。従って、この端子挿入口24からの端子10の挿入は、遅くとも複数の分割構造体の組付けが完了する前までに実施する。この収容保持体20Aにおいては、複数の分割構造体の内の1つに第1開口部22が配置されており、複数の分割構造体の組付けが完了する前までに当該分割構造体の内方に第1開口部22から電線30の端末を挿入し、この分割構造体の外方に電線30の端末を引き出す。つまり、複数の分割構造体の内の1つには、第1開口部22から挿入された電線30の端末を自らの外方に引き出すことが可能な電線引出口が配置されている。その電線引出口は、複数の分割構造体の組付け完了前に電線30の端末を外方へと引き出すためのものである。端子挿入口24は、その引き出されている電線30の端末に接続した端子10を複数の分割構造体の組付け完了前に挿入させることが可能な形状に形成する。この収容保持体20Aにおいては、電線30が繋がれている端子10を端子挿入口24から端子収容室21に収容した後、複数の分割構造体の組付けを完了させる。この収容保持体20Aにおいては、この複数の分割構造体の組付けの完了に伴い、端子挿入口24が内方に配置される。この組付け完了後の収容保持体20Aにおいては、内方の端子挿入口24が第2開口部23を介して収容保持体20Aの外方に連通している。
このように、このコネクタ1においては、収容保持体20Aの内方の端子収容室21に端子10を収容することができると共に、その収容された端子10の第1開口部22や第2開口部23からの収容保持体20Aの外方への脱落を防ぐことができる。このため、このコネクタ1においては、端子10のハウジング20からの脱落を防ぐためのランスを端子収容室21に突設させる必要がない。従って、このコネクタ1においては、ハウジング20の体格の小型化が可能になり、これに伴いコネクタ1そのものの体格の小型化も可能になる。
以下に、本実施形態の収容保持体20Aの具体例を説明する。本実施形態の収容保持体20Aは、分割構造体として、第1開口部22が配置される第1分割構造体40と、第2開口部23及び端子挿入口24が配置される第2分割構造体50と、を備えている(図2から図5)。その第1分割構造体40と第2分割構造体50は、硬質の合成樹脂等の絶縁性材料で成形する。
第1分割構造体40と第2分割構造体50は、コネクタ挿抜方向に沿って並べて配置され、その状態で互いに組み付けられることによって収容保持体20Aを成している。例えば、この例示の第1分割構造体40には、第2分割構造体50側に、その組付けに際しての位置決め用の第1及び第2の溝部41,42が形成されている(図4)。また、第2分割構造体50には、第1分割構造体40側に、その組付けに際しての位置決め用の第1及び第2の突出部51,52が形成されている(図5)。第1溝部41は、第1分割構造体40の内方でコネクタ挿抜方向に沿って形成された溝であり、コネクタ抜去方向に向けて突出させた第1突出部51が挿入される。また、第2溝部42は、第1分割構造体40の外周面側でコネクタ挿抜方向に沿って形成された溝であり、コネクタ抜去方向に向けて突出させた第2突出部52が嵌め込まれる。この例示では、その第2突出部52が係止爪52aを有する被係合部として形成され、かつ、第1分割構造体40と第2分割構造体50の組付け後にその分離方向で係止爪52aを係止することが可能な係合部として第2溝部42が形成されている。従って、その第2溝部42と第2突出部52は、組付け時の第1分割構造体40と第2分割構造体50との間の位置決め構造だけでなく、組付け後の第1分割構造体40と第2分割構造体50の分離を抑える係合構造も兼ねている。
この収容保持体20Aにおいて、端子収容室21は、第1分割構造体40と第2分割構造体50の内の少なくとも第2分割構造体50の内方に配置する。この例示では、第1分割構造体40の内方に収容室21a(図4)が設けられると共に、第2分割構造体50の内方に収容室21b(図5)が設けられる。収容室21aには、端子10の電線接続部12側が収容される。収容室21bには、端子10の端子接続部11側が収容される。端子収容室21は、第1分割構造体40と第2分割構造体50とを組み付けた際に、その収容室21a,21bの開口同士が合わさることによって形成される。
端子収容室21は、第1分割構造体40と第2分割構造体50の内方の空間そのものを利用して形成されたものであってもよく、その空間に配置された別部材の内方の空間を利用して形成されたものであってもよい。この例示では、第1分割構造体40の内方の空間に配置した第1止水部材60(図3から図5)の内方の空間を収容室21aとして利用し、第2分割構造体50の内方の空間を収容室21bとして利用する。
その第1止水部材60は、電線30の被覆32の周縁を介した外部からの水等の液体の浸入を抑えるためのものであり、軟質の合成樹脂材料(例えばゴム)等の絶縁性材料で成形される。この第1止水部材60は、第1分割構造体40とは別に成形し、この第1分割構造体40に対して取り付けるものであってもよく、第1分割構造体40に対してインサート成形等の一体成形で成形して一体化させたものであってもよい。第1止水部材60は、第1分割構造体40とは別体の場合、収容保持体20Aの構成部品の1つである分割構造体として用意される。一方、第1止水部材60は、第1分割構造体40に一体成形される場合、この第1分割構造体40の構成要素の1つとなる。ここでは、その第1止水部材60のコネクタ抜去方向側に第1開口部22を形成し、その第1開口部22を第1止水部材60の内方の収容室21aに連通させている。但し、第1開口部22は、第1分割構造体40のコネクタ抜去方向側に形成し、第1止水部材60の内方の収容室21aに連通させてもよい。
この例示では、予め成形した第1分割構造体40に対して、第1止水部材60をインサート成形で成形している(図6)。その第1止水部材60は、コネクタ挿抜方向における両端を開口させた内方の空間を有するものであり、第1分割構造体40の内方の空間のコネクタ挿抜方向における一方の開口から他方の開口に渡って配置されている。
この第1止水部材60においては、コネクタ抜去方向側の一方の開口が第1開口部22となり、内方の空間に収容室21aが配置される。この第1止水部材60においては、その内方の空間における収容室21aと第1開口部22との間に、電線30の端末を収容する収容室61も形成されている(図6)。その収容室61の内周面には、電線30の被覆32に密着させる環状のリップ61aが複数設けられている。
また、この第1止水部材60のコネクタ挿入方向側の他方の開口は、収容室21aを第1止水部材60及び第1分割構造体40の外方に連通させる開口であり、第1開口部22から挿入された電線30の端末を第1止水部材60の外方に引き出すことが可能な電線引出口62として利用する(図4)。つまり、第1分割構造体40には、この第1止水部材60を介することによって、第1開口部22から挿入された電線30の端末を第1分割構造体40の内方から外方に引き出すことが可能な電線引出口62が配置される。従って、第1分割構造体40と第2分割構造体50の組み付け完了前には、その電線引出口62から電線30の端末を引き出しておくことができる。その電線引出口62は、端子10の電線接続部12を収容室21aに収容する際の電線接続部12の挿入口としても利用する。
また、第1分割構造体40の外周面上には、第2止水部材70が配置される(図1から図5)。その第2止水部材70は、相手方コネクタとの間での水等の液体の浸入を抑えるためのものであり、軟質の合成樹脂材料(例えばゴム)等の絶縁性材料で成形される。この第2止水部材70の外周面には、相手方コネクタのハウジングに密着させる環状のリップ71が複数設けられている。この第2止水部材70は、第1分割構造体40とは別に成形し、この第1分割構造体40に対して取り付けるものであってもよく、第1分割構造体40に対してインサート成形等の一体成形で成形して一体化させたものであってもよい。この例示では、第1分割構造体40に対する第1止水部材60のインサート成形時に、この第2止水部材70についても同様にインサート成形する。
第2分割構造体50は、第2開口部23をコネクタ挿入方向側に形成すると共に、端子挿入口24をコネクタ抜去方向側に形成する。第2開口部23は、内方の収容室21bをコネクタ挿入方向側で第2分割構造体50の外方に連通させる。端子挿入口24は、その収容室21bをコネクタ抜去方向側で第2分割構造体50の外方に連通させる。その収容室21bは、収容された端子10の端子接続部11の一端(コネクタ挿入方向側の端部)が第2開口部23の近傍に配置されるように形成する。例えば、その端子接続部11の一端は、収容室21bにおいて、第2開口部23の周縁の壁部に当接させてもよく、その壁部に対して微小隙間を空けて配置されるようにしてもよい。その微小隙間とは、例えば、端子収容室21での端子10のコネクタ挿入方向側への所定量以上の位置ズレを抑えることができる大きさとする。
ここで、この例示の収容保持体20Aは、2つの端子10を互いに同一方向に向けて収容するものであり、2つの端子収容室21が並べて配置されている。例えば、第1分割構造体40は、内方に空間(第1止水部材60がインサート成形される空間)を有する角柱状に成形する。そして、第1止水部材60は、その第1分割構造体40の内方の空間において、2つの収容室21aとコネクタ抜去方向側の2つの第1開口部22とコネクタ挿入方向側の2つの電線引出口62とを有する形状に成形する。また、第2分割構造体50は、2つの収容室21bとコネクタ挿入方向側の2つの第2開口部23とコネクタ抜去方向側の2つの端子挿入口24とを有する角柱状に成形する。
以下に、このように構成されている本実施形態のコネクタ1の組付け工程について説明する。
このコネクタ1においては、第1分割構造体40における第1止水部材60の内方の空間(収容室61、収容室21a)へと電線30の端末を第1開口部22から挿入し(図7)、その電線30の端末を電線引出口62から第1分割構造体40の外方に引き出す(図8)。続いて、このコネクタ1においては、その電線30の端末の被覆32を剥いで芯線31を露出させ、その芯線31に対して端子10の電線接続部12を圧着させる(図9)。
このコネクタ1においては、電線30が取り付けられた端子10を端子接続部11から端子挿入口24に挿入し、その端子接続部11側を第2分割構造体50の内方の収容室21bに収容する(図10)。その際、端子10の電線接続部12側は、収容室21bの外方に飛び出ている。しかる後、このコネクタ1においては、第1分割構造体40よりもコネクタ抜去方向側に引き出されている電線30を引っ張りながら、端子10を電線接続部12から端子挿入口を兼ねた電線引出口62に挿入し、その電線接続部12側を第1止水部材60の内方の収容室21aに収容する(図11)。その際には、第1分割構造体40と第2分割構造体50とが組み付けられ、その相互間が各々の第2溝部42と第2突出部52によって係合される。第1分割構造体40と第2分割構造体50は、端子挿入口24と電線引出口62とをコネクタ挿抜方向で重ね合わせた状態で互いに組み付ける。これにより、このコネクタ1においては、端子10が端子収容室21に収容されると共に、端子挿入口24と電線引出口62とが組付け完了後の収容保持体20Aの内方に配置される。
本実施形態のコネクタ1は、以上のようにして組み付けられる。
本実施形態のコネクタ1においては、複数の分割構造体の組み合わせから成る収容保持体20Aの内方に端子挿入口24を配置する一方で、その収容保持体20Aの外壁の開口として、端子10が通過できない大きさの第1開口部22と第2開口部23とが形成されているので、端子収容室21の壁部からランスを突設させなくても、その端子10のハウジング20からの脱落を防ぐことができる。このため、このコネクタ1においては、ランスが突設されていた従来のものと比較して、ハウジング20の体格を小型化できるので、コネクタ1そのものの体格の小型化も可能になる。
ここで、このコネクタ1においては、相手方端子の抜き取り等で端子10に対してコネクタ挿入方向側への力が作用したとしても、端子接続部11が第2開口部23の周縁の壁部で係止されるので、端子収容室21に対するコネクタ挿入方向側への端子10の相対的な位置ズレを抑制することができる。
更に、このコネクタ1においては、端子収容室21内の端子10の一部がコネクタ抜去方向側で係止されるように、第1分割構造体40の第2分割構造体50側の端面を形成してもよい。これにより、このコネクタ1においては、相手方端子の挿入等で端子10に対してコネクタ抜去方向側への力が作用したとしても、その第1分割構造体40の端面で端子10が係止されるので、端子収容室21に対するコネクタ抜去方向側への端子10の相対的な位置ズレを抑制することができる。また、この例示では、端子10の端子接続部11に突出部(ランス)11aを突設し、かつ、第2分割構造体50の収容室21bの壁面に突出部11aが収容される溝部53を設けている(図10及び図11)。このコネクタ1においては、端子10に対してコネクタ抜去方向側への力が作用した際に、突出部11aを溝部53の壁面で係止させ、端子収容室21に対するコネクタ抜去方向側への端子10の相対的な位置ズレを抑制することができる。
このように、本実施形態のコネクタ1は、ハウジング20にランスを設けずとも、端子収容室21に対するコネクタ挿抜方向への端子10の相対的な位置ズレを抑えることができる。従って、このコネクタ1は、この点も体格の小型化に寄与している。
[変形例1]
本発明に係るコネクタの変形例の1つを図12から図24に基づいて説明する。
図1及び図12から図15の符号2は、本変形例のコネクタを示す。このコネクタ2は、前述した実施形態のコネクタ1と同様に、端子110(図14及び図15)とハウジング120(図1及び図12から図15)とを備えており、そのハウジング120の収容保持体120Aが、そのコネクタ1と同様の端子収容室121(図14)と第1開口部122(図13及び図15)と第2開口部123(図12及び図14)と端子挿入口124(図14)とを有している。このため、このコネクタ2においては、コネクタ1と同じように、電線30の端末を通過させることが可能である一方、端子110を通過させることが不能な形状に第1開口部122が形成されていると共に、その端子110を通過させることが不能な形状に第2開口部123が形成されている。また、このコネクタ2においては、コネクタ1と同じように、収容保持体120Aが複数の分割構造体の組み合わせから成るものとして形成されている。本変形例の端子挿入口124は、そのコネクタ1の端子挿入口24と同じように、その複数の分割構造体の組付け完了後における収容保持体120Aの内方に配置され、かつ、電線30の端末(第1開口部122から挿入して組付け完了前の複数の分割構造体の内の1つから引き出した電線30の端末)に接続されている端子110の挿入が可能な形状に形成されている。従って、本変形例のコネクタ2は、実施形態のコネクタ1と同様の効果を得ることができる。
以下に、本変形例の収容保持体120Aの具体例を説明する。本変形例の収容保持体120Aは、分割構造体として、端子収容室121及び第1開口部122及び端子挿入口124が配置される第1分割構造体140と、第2開口部123が配置される第2分割構造体150と、を備えている(図12から図15)。その第1分割構造体140と第2分割構造体150は、硬質の合成樹脂等の絶縁性材料で成形する。
この収容保持体120Aにおいては、第1分割構造体140を本体とし、この第1分割構造体140の端子挿入口124側に被せるカバーとして第2分割構造体150が用意されている。このため、この収容保持体120Aにおいては、第1分割構造体140に対して第2分割構造体150が組み付けられる。例えば、この例示の第1分割構造体140と第2分割構造体150との間には、組付け後の相互間の分離を抑える係合構造が設けられている。その係合構造は、第1分割構造体140と第2分割構造体150の内の一方に設けた被係合部と、その内の他方に設けた係合部と、を備える。この例示では、第1分割構造体140に被係合部としての係止爪141が設けられ、かつ、第2分割構造体150に係合部としての溝部151が設けられている(図12から図15)。その係止爪141と溝部151は、第1分割構造体40と第2分割構造体50の組付け後に、その分離方向で係止爪141を溝部151で係止することができるように形成する。
端子収容室121は、第1分割構造体140の内方の空間そのものを利用して形成されたものであってもよく、その空間に配置された別部材の内方の空間を利用して形成されたものであってもよい。この例示では、第1分割構造体140の内方の空間そのものを端子収容室121として利用する。この例示の第1分割構造体140は、コネクタ抜去方向側に第1開口部122が形成され、かつ、コネクタ挿入方向側に端子挿入口124が形成されている。
ここで、この第1分割構造体140には、端子収容室121と第1開口部122との間に、軟質の合成樹脂材料(例えばゴム)等の絶縁性材料で成形された止水部材160を配置している(図12から図15)。その止水部材160は、第1分割構造体140とは別に成形し、この第1分割構造体140に対して取り付けるものであってもよく、第1分割構造体140に対してインサート成形等の一体成形で成形して一体化させたものであってもよい。止水部材160は、第1分割構造体140とは別体の場合、収容保持体120Aの構成部品の1つである分割構造体として用意される。一方、止水部材160は、第1分割構造体140に一体成形される場合、この第1分割構造体140の構成要素の1つとなる。
この例示の止水部材160は、電線30の被覆32の周縁を介した外部からの水等の液体の浸入を抑える止水機能と、相手方コネクタとの間での水等の液体の浸入を抑える止水機能と、を備える。このため、この止水部材160には、端子収容室121と第1開口部122とに連通させた空間161が内方に形成されている。その内方の空間161は、第1開口部122と同心上に配置されており、その第1開口部122から挿入した電線30の端末が挿入される。その内方の空間161の内周面には、電線30の被覆32に密着させる環状のリップ161aを複数設けている(図16)。更に、この止水部材160は、その外周面に、相手方コネクタのハウジングに密着させる環状のリップ162を複数設けている(図16)。
この例示では、予め成形した第1分割構造体140に対して、止水部材160をインサート成形で成形している(図16)。例えば、第1分割構造体140は、内方の端子収容室121と端子挿入口124とが形成された主体部140Aと、この主体部140Aのコネクタ抜去方向側の端部に対して間隔を空けて配置され、第1開口部122が形成された板状部140Bと、を有する。主体部140Aは、コネクタ挿抜方向に延在させた角柱状に成形されており、コネクタ挿抜方向における両端が開口された内方の空間を端子収容室121とし、その2つの開口の内のコネクタ挿入方向側を端子挿入口124とする。板状部140Bは、コネクタ挿抜方向に対する直交平面を有する板状のものであり、その板厚方向に沿う貫通孔を第1開口部122とする。
この第1分割構造体140は、主体部140Aと板状部140Bとを連結させる連結部140Cを有している(図16)。その連結部140Cは、主体部140Aとはコネクタ挿抜方向の長さが異なる角柱をコネクタ挿抜方向に対する直交方向で二分割させたものに相当しており、第1開口部122と同心の弧状溝140C1を有している。
止水部材160は、この連結部140Cが内包されると共に、弧状溝140C1と同心の内方の空間161が形成されるように、板状部140Bと連結部140Cとに対して成形金型Mを用いて一体成形する(図17から図19)。その成形金型Mは、かかる形状の止水部材160をインサート成形する際に用いられる一般的な形態のものである。このため、ここでは、この成形金型Mの詳細な説明を省略する。
但し、この止水部材160のインサート成形時には、流し入れた合成樹脂材料が連結部140Cの内壁面(弧状溝140C1の壁面等)から端子収容室121へと流入しないようにする必要がある。そこで、この例示の成形金型Mは、合成樹脂材料の端子収容室121への流入を抑える板状型Maを備えている。これらの各図では、説明の便宜上、その板状型Maのみを示している。
板状型Maは、その外周面に、連結部140Cの内壁面に沿って突出させた突出部Ma1を有する。連結部140Cに対して板状型Maを設置した際には、その連結部140Cの内壁面に突出部Ma1を食い込ませる。このため、その突出部Ma1は、そのような食い込みが可能となる形状に形成する。これにより、この板状型Maは、その外周面と連結部140Cの内壁面との間への合成樹脂材料の流入を抑制するので、合成樹脂材料の端子収容室121への流入を抑えることができる。従って、このコネクタ2においては、最低限必要な電線30の被覆32の部分にのみ止水部材160を設けることができるので、実施形態のコネクタ1と比較して、その合成樹脂材料の使用量を減らすことが可能になり、原価の低減を図ることができる。また、このコネクタ2においては、端子収容室121の壁面に止水部材が配置されていないので、実施形態のコネクタ1と比較して、この端子収容室121を成す第1分割構造体140の内方の空間を小さくすることができ、この点から第1分割構造体140の体格の小型化が可能になる。よって、このコネクタ2は、このことからも、ハウジング120の体格、延いてはコネクタ2自体の体格の小型化を図ることができる。
この第1分割構造体140においては、第1開口部122から挿入された電線30の端末が止水部材160の内方の空間161に入り込み、この空間161から引き出された電線30の端末が端子収容室121に挿入される。その電線30の端末は、端子収容室121を経て端子挿入口124から第1分割構造体140の外方に引き出される。このため、本変形例の端子挿入口124は、その電線30の端末を第1分割構造体140の外方に引き出すことが可能な電線引出口を兼ねている。
第2分割構造体150は、コネクタ挿入方向側の一端の壁部152に第2開口部123を形成した角筒状の成形体である(図12及び図14)。第2開口部123は、その壁部152を境にした第2分割構造体150の内方の空間と外方とを連通させる。この第2分割構造体150は、端子挿入口124に第2開口部123を重ね合わせた状態で第1分割構造体140に組み付けられる。これにより、この第2分割構造体150は、端子収容室121内の端子110の収容保持体120Aからの脱落を防ぐことができる。
以下に、このように構成されている本変形例のコネクタ2の組付け工程について説明する。
このコネクタ2においては、電線30の端末を第1開口部122から挿入する(図20)。その電線30の端末は、第1分割構造体140における止水部材160の内方の空間161を経た後、この第1分割構造体140の端子収容室121を通り、電線引出口を兼ねた端子挿入口124から第1分割構造体140の外方に引き出す(図21)。続いて、このコネクタ2においては、その電線30の端末の被覆32を剥いで芯線31を露出させ、その芯線31に対して端子110の電線接続部112を圧着させる(図22)。
このコネクタ2においては、第1分割構造体140よりもコネクタ抜去方向側に引き出されている電線30を引っ張りながら、端子110を電線接続部112から端子挿入口124に挿入し、端子接続部111まで第1分割構造体140の内方の端子収容室121に収容させる(図23)。しかる後、このコネクタ2においては、端子挿入口124に第2開口部123が重ね合わされるように、第2分割構造体150を第1分割構造体140に組み付ける(図24)。これにより、電線引出口を兼ねた端子挿入口124は、組付け完了後の収容保持体120Aの内方に配置される。
本変形例のコネクタ2は、以上のようにして組み付けられる。
本変形例のコネクタ2においては、実施形態のコネクタ1と同様に、複数の分割構造体の組み合わせから成る収容保持体120Aの内方に端子挿入口124を配置する一方で、その収容保持体120Aの外壁の開口として、端子110が通過できない大きさの第1開口部122と第2開口部123とが形成されているので、端子収容室121の壁部からランスを突設させなくても、その端子110のハウジング120からの脱落を防ぐことができる。このため、このコネクタ2においては、ランスが突設されていた従来のものと比較して、ハウジング120の体格を小型化できるので、コネクタ2そのものの体格の小型化も可能になる。
ここで、このコネクタ2において、端子収容室121内の端子110は、端子接続部111におけるコネクタ挿入方向側の端面を端子挿入口124と同等の位置に配置することが望ましい。例えば、端子110は、その端子接続部111の端面と端子挿入口124のコネクタ挿入方向側(つまり第2分割構造体150の内壁面と面一になる部分)とが面一になるよう端子収容室121内に配置することが望ましい。これにより、このコネクタ2においては、相手方端子の抜き取り等で端子110に対してコネクタ挿入方向側への力が作用したとしても、端子接続部111が第2分割構造体150の内壁面における第2開口部23の周縁で係止されるので、端子収容室121に対するコネクタ挿入方向側への端子110の相対的な位置ズレを抑制することができる。
更に、このコネクタ2においては、端子収容室121内の端子110の一部がコネクタ抜去方向側で係止されるように、端子収容室121の形状を決めてもよい。例えば、この例示の端子収容室121には、内周壁から突出又は膨出させた係止部121aを設けている(図16、図18及び図20から図24)。そして、端子110の端子接続部111には、端子収容室121内の端子110がコネクタ抜去方向側へと動こうとした際に係止部121aで係止される被係止部111aを設けている(図22から図24)。これにより、このコネクタ2においては、相手方端子の挿入等で端子110に対してコネクタ抜去方向側への力が作用したとしても、端子110の被係止部111aが端子収容室121の係止部121aで係止されるので、端子収容室121に対するコネクタ抜去方向側への端子110の相対的な位置ズレを抑制することができる。また、このコネクタ2においては、図示しないが、実施形態のコネクタ1と同じように、端子110に突出部(ランス)を突設し、かつ、その突出部が収容される溝部を端子収容室121の壁面に設けることによって、同様の効果を狙ってもよい。
このように、本変形例のコネクタ2は、ハウジング120にランスを設けずとも、端子収容室121に対するコネクタ挿抜方向への端子110の相対的な位置ズレを抑えることができる。従って、このコネクタ2は、この点も体格の小型化に寄与している。
[変形例2]
本発明に係るコネクタの変形例の1つを図25から図35に基づいて説明する。
図1及び図25から図28の符号3は、本変形例のコネクタを示す。このコネクタ3は、前述した実施形態のコネクタ1や変形例1のコネクタ2と同様に、端子210(図27及び図28)とハウジング220(図1及び図25から図26)とを備えており、そのハウジング220の収容保持体220Aが、そのコネクタ1,2と同様の端子収容室221(図27から図29)と第1開口部222(図26及び図28)と第2開口部223(図25、図27及び図29)と端子挿入口224(図27及び図28)とを有している。このため、このコネクタ3においては、コネクタ1,2と同じように、電線30の端末を通過させることが可能である一方、端子210を通過させることが不能な形状に第1開口部222が形成されていると共に、その端子210を通過させることが不能な形状に第2開口部223が形成されている。また、このコネクタ3においては、コネクタ1,2と同じように、収容保持体220Aが複数の分割構造体の組み合わせから成るものとして形成されている。本変形例の端子挿入口224は、そのコネクタ1の端子挿入口24やコネクタ2の端子挿入口124と同じように、その複数の分割構造体の組付け完了後における収容保持体220Aの内方に配置され、かつ、電線30の端末(第1開口部222から挿入して組付け完了前の複数の分割構造体の内の1つから引き出した電線30の端末)に接続されている端子210の挿入が可能な形状に形成されている。従って、本変形例のコネクタ3は、実施形態のコネクタ1や変形例1のコネクタ2と同様の効果を得ることができる。
本変形例の収容保持体220Aは、分割構造体として、溝部を有する複数の端子側分割構造体と、第1開口部が配置され、かつ、複数の前記端子側分割構造体の内の少なくとも1つに組み付けられる電線側分割構造体と、を備える。複数の端子側分割構造体は、その内の少なくとも1つが溝部に連通する端子挿入口を有し、かつ、互いに組み付けることで、互いに合わさったそれぞれの溝部が端子収容室と第2開口部とを成すように形成する。具体的に、この例示の収容保持体220Aは、分割構造体として、溝部221aを有する第1端子側分割構造体240(図27及び図28)と、溝部221bを有する第2端子側分割構造体250(図29)と、第1開口部222が配置され、かつ、第1端子側分割構造体240に組み付けられる電線側分割構造体260と、を備える(図27から図29)。その第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250と電線側分割構造体260は、硬質の合成樹脂等の絶縁性材料で成形する。
この収容保持体220Aにおいては、互いに組み付けることによって角柱状を成し、その内方に端子収容室221としての空間が設けられるように、第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250とを形成する。その第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250は、その角柱を端子収容室221と共にコネクタ挿抜方向に対する直交方向で二分割させるものとして成形されている。このため、端子収容室221は、第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250とがコネクタ挿抜方向に対する直交方向に沿って組み付けられた際に、双方の溝部221a,221b同士が合わさることによって形成される。また、この第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250においては、互いに組み付けられた際に、双方の溝部221a,221bのコネクタ挿入方向側の一端の開口223a,223b同士が合わさることによって、第2開口部223が形成される(図25及び図27)。一方、この収容保持体220Aにおいては、第1端子側分割構造体240の溝部221aにおける第2端子側分割構造体250側の開口を端子挿入口224として利用する(図27及び図28)。
この例示の第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250との間には、組付け後の相互間の分離を抑える2種類の係合構造が設けられている。それぞれの係合構造は、第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250の内の一方に設けた被係合部と、その内の他方に設けた係合部と、を備える。第1係合構造は、第1端子側分割構造体240に設けた被係合部としての第1係止爪241と、第2端子側分割構造体250に設けた係合部としての第1溝部251と、で構成されている(図25、図27及び図29)。この第1係合構造は、コネクタ挿入方向側の端部に1箇所設けている。第2係合構造は、第1端子側分割構造体240に設けた被係合部としての第2係止爪242と、第2端子側分割構造体250に設けた係合部としての第2溝部252と、で構成されている(図25から図29)。この第1係合構造は、コネクタ抜去方向側の端部に2箇所設けている。
電線側分割構造体260には、第1開口部222の他に、軟質の合成樹脂材料(例えばゴム)等の絶縁性材料で成形された止水部材270が配置される(図26及び図28)。その止水部材270は、電線側分割構造体260とは別に成形し、この電線側分割構造体260に対して取り付けるものであってもよく、電線側分割構造体260に対してインサート成形等の一体成形で成形して一体化させたものであってもよい。止水部材270は、電線側分割構造体260とは別体の場合、収容保持体220Aの構成部品の1つである分割構造体として用意される。一方、止水部材270は、電線側分割構造体260に一体成形される場合、この電線側分割構造体260の構成要素の1つとなる。
この例示の止水部材270は、変形例1のコネクタ2と同じように、電線30の被覆32の周縁を介した外部からの水等の液体の浸入を抑える止水機能と、相手方コネクタとの間での水等の液体の浸入を抑える止水機能と、を備える。このため、この止水部材270は、その内方に空間271が形成されている(図30)。その内方の空間271は、コネクタ挿抜方向の両端が外方に向けて開口されており、その内のコネクタ抜去方向側の開口を同心上の第1開口部222に連通させている。この内方の空間271には、その第1開口部222から挿入した電線30の端末が挿入される。止水部材270は、その内方の空間271の内周面に設けた複数の環状のリップ271aと、外周面に設けた複数の環状のリップ272と、を備えている(図30)。リップ271aは、電線30の被覆32に密着させる。リップ272は、相手方コネクタのハウジングに密着させる。
この例示では、予め成形した電線側分割構造体260に対して、止水部材270をインサート成形で成形している(図30)。例えば、電線側分割構造体260は、第1開口部222が形成された板状部260Aと、この板状部260Aからコネクタ挿入方向に向けて延在させた第1延在部260Bと、この第1延在部260Bからコネクタ挿入方向に向けて更に延在させた板状の第2延在部260Cと、を有する(図27、図29及び図30)。第1板状部260Aは、コネクタ挿抜方向に対する直交平面を有する板状のものであり、その板厚方向に沿う貫通孔を第1開口部222とする。第1延在部260Bは、第1端子側分割構造体240とはコネクタ挿抜方向の長さが異なる形状のものに相当しており、第1開口部222と同心の弧状溝260B1を有している。
止水部材270は、その第1延在部260Bが内包されると共に、弧状溝260B1と同心の内方の空間271が形成されるように、板状部260Aと第1延在部260Bとに対して成形金型を用いて一体成形する。その成形金型は、変形例2で説明した成形金型Mと同様のものであり、突出部Ma1を有する板状型Maを備えている。本変形例において、その突出部Ma1は、止水部材270のコネクタ挿入方向側への体格の大型化を抑えるために利用する。従って、このコネクタ3においては、変形例1のコネクタ2と同じように、最低限必要な電線30の被覆32の部分にのみ止水部材270を設けることができるので、その合成樹脂材料の使用量を減らすことが可能になり、原価の低減を図ることができる。また、このコネクタ3においては、端子収容室221の壁面に止水部材が配置されていないので、この点からも変形例1のコネクタ2と同じように、ハウジング220の体格、延いてはコネクタ3自体の体格の小型化を図ることができる。
この電線側分割構造体260においては、第1開口部222から挿入された電線30の端末が止水部材270の内方の空間271に入り込み、この空間271から引き出される。従って、この電線側分割構造体260においては、その止水部材270におけるコネクタ挿入方向側の開口が、第1端子側分割構造体240と第2端子側分割構造体250と電線側分割構造体260の組付け完了前に、第1開口部222から挿入された電線30の端末を電線側分割構造体260の外方に引き出すことが可能な電線引出口273として利用される(図27)。
この電線側分割構造体260は、第1端子側分割構造体240に対してコネクタ挿抜方向に沿って組み付ける。これらの組付けに際しては、第1端子側分割構造体240の凸部244(図28)が電線側分割構造体260の凹部261(図27)に挿入されると共に、電線側分割構造体260の凸部262(図27)が第1端子側分割構造体240の凹部245(図28)に挿入される。また、この第1端子側分割構造体240と電線側分割構造体260との間には、組付け後の相互間の分離を抑える係合構造が設けられている。その係合構造は、第1端子側分割構造体240と電線側分割構造体260の内の一方に設けた被係合部と、その内の他方に設けた係合部と、を備える。この例示では、第1端子側分割構造体240に係合部としての溝部243が設けられ、かつ、電線側分割構造体260に被係合部としての係止爪263が設けられている(図29)。
以下に、このように構成されている本変形例のコネクタ3の組付け工程について説明する。
このコネクタ3においては、電線30の端末を第1開口部222から挿入する(図31)。その電線30の端末は、電線側分割構造体260における止水部材270の内方の空間271を経て、電線引出口273から電線側分割構造体260の外方に引き出す(図32)。続いて、このコネクタ3においては、その電線30の端末の被覆32を剥いで芯線31を露出させ、その芯線31に対して端子210の電線接続部212を圧着させる(図33)。
このコネクタ3においては、電線側分割構造体260に第1端子側分割構造体240を組み付けた後、端子210を端子挿入口224から溝部221aに挿入する(図34)。第1端子側分割構造体240においては、その溝部221aに端子210における紙面下方側が収容される。しかる後、このコネクタ3においては、端子挿入口224に溝部221bの開口221b1(図29)が重ね合わされるように、第2端子側分割構造体250を第1端子側分割構造体240に組み付ける(図35)。これにより、このコネクタ3においては、端子210が端子収容室221に収容されると共に、端子挿入口224と電線引出口273とが組付け完了後の収容保持体220Aの内方に配置される。
本変形例のコネクタ3は、以上のようにして組み付けられる。
本変形例のコネクタ3においては、実施形態のコネクタ1や変形例1のコネクタ2と同様に、複数の分割構造体の組み合わせから成る収容保持体220Aの内方に端子挿入口224を配置する一方で、その収容保持体220Aの外壁の開口として、端子210が通過できない大きさの第1開口部222と第2開口部223とが形成されているので、端子収容室221の壁部からランスを突設させなくても、その端子210のハウジング220からの脱落を防ぐことができる。このため、このコネクタ3においては、ランスが突設されていた従来のものと比較して、ハウジング220の体格を小型化できるので、コネクタ3そのものの体格の小型化も可能になる。
ここで、このコネクタ3において、端子収容室221内の端子210は、端子接続部211におけるコネクタ挿入方向側の端面を第2開口部223と同等の位置に配置することが望ましい。例えば、端子210は、その端子接続部211の端面を第2開口部223の周縁の内壁に対して当接させる又は実施形態と同様の微小隙間を空けるよう端子収容室221内に配置することが望ましい。これにより、このコネクタ3においては、相手方端子の抜き取り等で端子210に対してコネクタ挿入方向側への力が作用したとしても、端子接続部211が第2開口部223の周縁の内壁で係止されるので、端子収容室221に対するコネクタ挿入方向側への端子210の相対的な位置ズレを抑制することができる。
更に、このコネクタ3においては、端子収容室221内の端子210の一部がコネクタ抜去方向側で係止されるように、端子収容室221の形状を決めてもよい。例えば、ここでは、変形例1のコネクタ2と同じように、端子収容室221の内周壁から係止部221cを突出又は膨出させると共に、端子210の端子接続部211に被係止部211aを設けている(図35)。これにより、このコネクタ3においては、相手方端子の挿入等で端子210に対してコネクタ抜去方向側への力が作用したとしても、端子210の被係止部211aが端子収容室221の係止部221cで係止されるので、端子収容室221に対するコネクタ抜去方向側への端子210の相対的な位置ズレを抑制することができる。また、このコネクタ3においては、図示しないが、実施形態のコネクタ1と同じように、端子210に突出部(ランス)を突設し、かつ、その突出部が収容される溝部を端子収容室221の壁面に設けることによって、同様の効果を狙ってもよい。
このように、本変形例のコネクタ3は、ハウジング220にランスを設けずとも、端子収容室221に対するコネクタ挿抜方向への端子210の相対的な位置ズレを抑えることができる。従って、このコネクタ3は、この点も体格の小型化に寄与している。
本変形例のコネクタ3は、収容保持体220Aを次のように構成してもよい。その新たな構成の収容保持体220Aにおいて、複数の分割構造体は、それぞれが溝部を有し、かつ、その内の1つに第1開口部と溝部に連通する端子挿入口とが配置されるように成形する。更に、これらの複数の分割構造体は、互いに組み付けることで、互いに合わさったそれぞれの溝部が端子収容室と第2開口部とを成すように形成する。例えば、上記の例示の当て嵌めるならば、その収容保持体220Aは、第1開口部222と溝部221aと端子挿入口224とが配置された第1分割構造体(第1端子側分割構造体240と電線側分割構造体260とが1つの成形体として成形されたもの)と、溝部221bが配置された第2分割構造体(第2端子側分割構造体250)と、を備えている。その第1分割構造体には、第1端子側分割構造体240に相当する部分に止水部材270が配置されている。本変形例のコネクタ3は、このように構成したとしても、先の例示と同様の効果を得ることができる。
ところで、前述した実施形態のコネクタ1や変形例1,2のコネクタ2,3においては、端子10,110,210の軸線(雄端子の軸線等のような相手方端子との嵌合に際しての嵌合方向における中心軸)と電線30の端末の軸線とをコネクタ挿抜方向で略同心上に配置している。しかしながら、これらのコネクタ1,2,3においては、それぞれの軸線をコネクタ挿抜方向に対する直交方向でオフセットさせてもよい。これにより、これらのコネクタ1,2,3では、端子収容室21,121,221における端子10,110,210のコネクタ挿抜方向での引っ掛かり代(例えば変形例2,3の係止部121a,221cと被係止部111a,211aとの引っ掛かり代)を大きく取ることができるので、端子収容室21,121,221に対する端子10,110,210のコネクタ挿抜方向での相対的な位置ズレがより抑えやすくなる。