以下図面を参照しながら、車両制御システムの実施形態について説明する。車両制御システムは、車両が発車する際に、乗客用のドアが閉まっているか等の出発準備ができているかを判断する情報を参照し、出発準備ができていれば、力行(力行走行)する。
しかしながら、他車両の状態について考慮していないシステムにおいては、他車両が付近で回生(回生走行)をする予定にもかかわらず、その回生を待たず自車両を力行させてしまったり、他車両の力行のタイミングと自車両の力行のタイミングが重なってしまったりする。このため、電力消費量が増加することが多々ある。
そこで、車両制御システムは、他車両の回生や力行のタイミングを、架線電圧を測定することで把握し、又は/及び、運行データベース等を参照することで把握する。他車両の回生や力行のタイミングを把握することで、車両制御システムは、他車両の回生のタイミングに合わせて力行する、又は、他車両の力行のタイミングを避けて力行する。
(1)第1の実施の形態
(1−1)本実施の形態による車両制御システムの構成
図1を参照して、本実施の形態の車両制御システムの構成について説明する。本実施の形態の車両制御システムは、例えば自動運転により運行する車両に適用することができ、車両102は、図示せぬ変電所から供給される電力または他車両の回生電力を得るために架線101に接続される。駆動装置104は、例えば車両駆動モータと当該モータに電力を供給する電力変換装置で構成され、電力変換装置は架線101から電力の供給を受ける。また、電力変換装置は、制御装置である駆動制御装置103によって制御される。なお、車両102は、駆動装置104を制御することによって力行や回生等の動作を行う。
車両102の速度の値である速度152を計測する速度計測装置105と、車両102の架線電圧の値である架線電圧153を測定する架線電圧計測装置106とは、車両102の運転状態を判定する運転状態判定装置107に接続されている。なお、架線電圧計測装置106は架線101と駆動装置104との間に接続されている。また、速度計測装置105と架線電圧計測装置106とは車両102の走行状態に基づいた情報を出力する信号出力装置である。速度検知装置である速度計測装置105は速度検知信号である速度152を出力し、架線電圧計測装置106は架線電圧の計測信号である架線電圧153を出力する。
運転状態判定装置107は、架線電圧153と、速度152と、乗客ドアの開閉情報などに基づく出発可能状態とを基に、制御指令154を生成し、駆動制御装置103へ制御指令154を出力する。駆動制御装置103は、制御指令154を基に駆動指令151を作成し、駆動装置104へ駆動指令151を出力する。
駆動制御装置103で参照される、駆動制御データテーブルTB100を図2に示す。駆動制御データテーブルTB100は、運転状態判定装置107からの制御指令154を、駆動装置104への駆動指令151に変換するテーブルである。制御指令列TB101には、「出発(TRUE)」と「出発不可(FALSE)」の2値が格納されている。また駆動指令列TB102には、「出発(TRUE)」に対応する「通常運転」と、「出発不可(FALSE)」に対応する「制動」が格納されており、それぞれ変換される。制御指令154の「出発(TRUE)」又は「出発不可(FALSE)」を決める制御指令処理に関しては後述する。駆動指令151の「通常運転」は、次駅に向かって運行するように指令を出す。この指令は、例えば、目標走行パターンを決めておいて、その走行パターンに従って指令を出すなどでよい。「制動」はブレーキをかけ、駅を出発させない。
駆動装置104は、力行時には、図示せぬ変電所から供給される電力が、架線101を経由して駆動装置104に流れることで、図示せぬギアを介し、図示せぬ車輪を駆動する。逆に、回生時には、ブレーキがかかることで、駆動装置104は、発電機の役割を果たし、生じた電力が架線101に流れる。上述のように、架線101と駆動装置104との間では、電力の流れが、回生時と力行時で逆の向きになる。
速度計測装置105は、速度発電機や速度センサ等であり、車両102の速度152を検知や検出や計測等する。速度発電機は、車両102の車軸に接触させ、その回転を利用する接触型でも、車両102の車軸に接触させず、磁束変化を利用する非接触型でもよい。速度センサは、ドップラ効果を使用したドップラ式でも格子状に作られた受光素子上に結像される光学像から、測定対象の光学的なムラの移動を検出する空間フィルタ式等とする。
架線電圧計測装置106で計測される架線電圧153は、他車両の運転状態との兼ね合いでその値が変化する。例えば、他車両が力行中であれば、架線電圧153は低くなり、逆に、他車両が回生中であれば、架線電圧153は高くなる。
運転状態判定装置107に参照される出発可能状態データテーブルTB200を図3に示す。出発可能状態データテーブルTB200は、乗客ドア状態等を出発可能状態に変換するテーブルである。乗客ドア状態とは、乗客ドアが閉まっているか開いているかの状態であり、閉まっている状態を「閉(LO)」、開いている状態を「開(HI)」とする。乗客ドア状態列TB201には、「閉(LO)」と「開(HI)」の2値が格納されている。出発可能状態列TB202には、「閉(LO)」に対応する「出発可能」と「開(HI)」に対応する「出発不可能」が格納されており、それぞれ変換される。よって、例えば、乗客が乗降している間は、乗客ドアは開いており、乗客ドア状態は「開(HI)」となり、出発可能状態は、「出発不可能」となる。ドアが閉じれば、乗客ドア状態は「閉(LO)」となり、出発可能状態は「出発可能」となる。
(1−2)同時力行抑制/力行回生同期機能
かかる車両制御システムの運転状態判定装置107での処理内容である同時力行抑制/力行回生同期機能について説明する。運転状態判定装置107は、上述の通り速度152と架線電圧153と出発可能状態とに基づいて、制御指令154を「出発」とするか「出発不可」とするかを判定する制御指令処理を行う。このことで、同時力行抑制/力行回生同期機能が実現されている。
運転状態判定装置107は、制御指令処理において、図4に示すように、入力情報である速度152から車両102が停車している(停止状態)かどうかを判定する(SP201)。停車と判定すると、運転状態判定装置107は、車両102の出発可能状態が「出発可能」であるか否かを判定する(SP202)。車両102が「出発可能」だと判定すると、運転状態判定装置107は、閾値電圧1が設定されているかを判定する(SP203)。閾値電圧1が設定されていると判定すると、運転状態判定装置107は、架線電圧153が閾値電圧1以上であるか否かを判定する(SP204)。架線電圧153が閾値電圧1以上であると判定すると、運転状態判定装置107は、制御指令154を「出発」とする(SP207、力行回生同期制御)。
また、運転状態判定装置107は、閾値電圧1が設定されていないと判定すると、又は、架線電圧153が閾値電圧1より小さいと判定すると、閾値電圧2が設定されているか否かを判定する(SP205)。閾値電圧2が設定されていると判定すると、運転状態判定装置107は、架線電圧153が閾値電圧2以上であるか否かを判定する(SP206)。架線電圧153が閾値電圧2以上であると判定すると、運転状態判定装置107は、制御指令154を「出発」とする(SP207、同時力行抑制制御)。
これに対し、運転状態判定装置107は、停車と判定しないと、制御指令154は前の状態を維持し(SP209)、処理を終了する。また、出発可能状態が「出発可能」でないと判定すると、制御指令を「出発不可」とし(SP208)、制御指令154は前の状態すなわち出発不可を維持し(SP209)、処理を終了する。
さらに、運転状態判定装置107は、SP205において閾値電圧2が設定されていないと判定すると、制御指令154は前の状態を維持し(SP209)、処理を終了する。また、架線電圧153が閾値電圧2より小さいと判定すると制御指令154は前の状態を維持し(SP209)、処理を終了する。
上述の通り、制御指令154を「出発」とする場合は、力行回生同期が可能な場合(SP204、YES)と、同時力行抑制が可能な場合(SP206、YES)とである。また、走行中(SP201、NO)には、制御指令154は前の状態とするため(SP209)、制御指令154が変化するのは停車中のみである。なお、制御指令が「出発」とならなければ、走行状態とはならない。このため、走行中(SP201、NOの場合)に制御指令154が「出発不可」に変化することはない。
なお、閾値電圧1は変電所の無負荷時電圧(変電所から架線に対して供給電力がない場合の電圧)とする。架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を超えている場合には、他車両が回生していることになるため、運転状態判定装置107は、回生している他車両と同期するかどうかを判定できる。
また、閾値電圧2は車両102の力行時基準電圧とする。力行時基準電圧は、一般的には変電所から定格出力した場合の電圧となっていることが多いが、変電所から定格出力した場合の電圧に対してある割合低減した値となっている場合であっても本発明の内容を妨げるものではない。架線電圧153が車両102の力行時基準電圧よりも低下している場合には、設計時に想定している条件よりも力行性能が低下することになる。この条件が起こるのは、少なくとも他の車両が力行している状況と考えられるため、運転状態判定装置107は、力行している他車両との同期を回避するかどうかを判定できる。
(1−3)本実施の形態と従来との消費電力量の比較
(1−3−1)力行回生同期制御の場合
図5を用いて、図4の処理において、回生している他車両と同期するかどうかを判定するための閾値電圧1のみが設定されていた場合の、本実施の形態における速度152と架線電圧153と路線消費電力量の関係について従来と比較しながら説明する。
上から、車両速度(km/h)と時刻の関係図(X1)、車両架線電圧(V)と時刻の関係図(X2)、出発可能状態と時刻の関係図(X3)、制御指令と時刻の関係図(X4)及び路線消費電力量(kWh)と時刻の関係図(X5)を示している。横軸である時刻は共通の尺度であり、秒単位であり、縦軸は、それぞれ、車両速度(km/h)、車両架線電圧(V)、出発可能状態、制御指令及び路線消費電力量(kWh)とする。なお、図中の破線は、従来の関係を示しており、実線が本実施の形態による関係を示している。また、関係図X1、X2、及びX3は運転状態判定装置107へ入力される情報についての図であり、関係図X4は運転状態判定装置107から出力される情報についての図である。関係図X5は、本実施の形態の効果を示すための車両102の消費電力量についての図である。
従来は、他車両の回生と車両102の力行のタイミングを調整しない。以下、図5中の破線に着目して説明する。時刻T1から、出発可能状態は「出発可能」となり(X3)、車両102が力行するが(X1)、車両102の架線電圧153が閾値電圧1以上となっておらず、他車両の回生がない。このため、変電所から電力供給等されて、路線消費電力量が増加している(X5)。
また、時刻T3からT5にかけて、車両102の架線電圧153が上昇しており、他車両が回生しているが、車両102は惰行中である(X1)。このため、発生している電力を有効活用できておらず消費電力量は変動しない(X5)。
同様に、時刻T8からT9の、車両102の力行時には(X1)、他車両の回生がないため、変電所から電力供給されて、路線消費電力量が増加している(X5)。また、時刻T10からT11にかけて、他車両が回生しているため、車両102の架線電圧153が上昇しているが、車両102は惰行中である(X1)。このため、発生している回生電力を有効活用できず消費電力量は変動しない(X5)。
これに対し、本実施の形態について、図5中の実線に着目して説明する。なお、各駅においての出発可能状態は本制御適用前と同じである(X3)。
時刻T0において車両102は停車しており(X1)、出発可能状態は「出発不可能」となる(X3)。従って、時刻T0における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP208及びSP209と進み、車両102の制御指令154は「出発不可」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換され、この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車状態を維持する。車両102が走行していないため、路線消費電力量は0のままとなる(X5)。
時刻T1において、出発可能状態は「出発可能」となり(X3)、車両102の架線電圧153は閾値電圧1を超えていない(X2)。従って、時刻T1における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP204、SP205及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発不可」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換され、この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車状態を維持する。車両102が走行していないため、路線消費電力量は0のままとなる(X5)。
時刻T2において、車両102の架線電圧153が変化するが閾値電圧1を超えない(X2)。また、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。従って、時刻T2における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP204、SP205及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発不可」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換され、この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車状態を維持する。車両102が走行していないため、路線消費電力量は0のままとなる(X5)。
時刻T3において、車両102の架線電圧153が変化し、閾値電圧1を超える(X2)。また、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。従って、時刻T3における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP204及びSP207と進み、車両102の制御指令154は「出発」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換され、この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され、車両102は力行し、速度152が上昇する(X1)。このとき、車両102は力行しているが、車両102の架線電圧153が閾値電圧1を超えているため、変電所から電力供給されず、他車両の回生電力のみで、車両102の力行が行われる。このため、路線消費電力量は0のままとなる(X5)。
時刻T4において、車両102の架線電圧153は変化し、閾値電圧1を下回る(X2)。また、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。さらに、速度152は0を超えているため(X1)停車と判定されない。従って、時刻T4における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され、車両102は力行し、速度152が上昇する(X1)。また、車両102が走行中であり(X1)、車両102の架線電圧153が閾値電圧1を下回っている(X2)。このため、変電所から電力供給が行われ、路線消費電力量が増加する(X5)。
時刻T5において、車両102の走行状態が力行から惰行に変化し(X1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。また、速度152が0を超えているため(X1)停車と判定されない。従って、時刻T5における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の通常運行を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は惰行となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T6において、車両102の走行状態が惰行から回生に変化し(X1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。また、速度152が0を超えているため(X1)停車と判定されない。従って、時刻T6における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は回生となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T7において、車両102は停車直後であり、速度152は0であるため(X1)停車と判定される。また、乗客の乗降が行われることから出発可能状態は「出発不可能」に変更される(X3)。従って、時刻T7における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP208及びSP209と進み、車両102の制御指令154は「出発不可」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車している。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T8において、出発可能状態は「出発可能」となる(X3)。また、車両102の架線電圧153は閾値電圧1を超えていない(X2)。従って、時刻T8における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP204、SP205及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発不可」である(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車している。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T9において、車両102の架線電圧153は閾値電圧1を超えている(X2)。また、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。従って、時刻T9における制御指令処理は、図4より、ステップ201、202、203、204及び207と進み、車両102の制御指令154は「出発」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され、車両102は力行し、速度152が上昇する(X1)。このとき、車両102は力行しているが、車両102の架線電圧153が閾値電圧1を超えているため(X2)、変電所から電力供給されず、他車両の回生電力のみで、車両102の力行が行われる。このため、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T10において、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。また、速度152が0を超えているため(X1)停車と判定されない。従って、時刻T10における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され車両102は力行し、速度152が上昇する(X1)。このとき、車両102は力行しているが、車両102の架線電圧153が閾値電圧1を超えているため、変電所から電力供給されず、他車両の回生電力のみで、車両102の力行が行われる。このため、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T11において、車両102の走行状態が力行から惰行に変化し(X1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。また、速度152が0を超えているため(X1)停車と判定されない。従って、時刻T11における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の通常運行を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は惰行となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T12において、車両102の走行状態が惰行から回生に変化し(X1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(X3)。また、速度152が0を超えているため(X1)停車と判定されない。この結果、時刻T12における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は回生となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
時刻T13において、車両102は停車直後であり、速度152は0であるため(X1)停車と判定され、乗客の乗降が行われることから出発可能状態は「出発不可能」に変更される(X3)。時刻T13における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP208及びSP209と進み、車両102の制御指令154は「出発不可」となる(X4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車している。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(X5)。
(1−3−2)同時力行抑制制御の場合
図6を用いて、図4の処理において、他車両が力行中かどうかを判定するための閾値電圧2のみが設定されていた場合の、本実施の形態における速度152と架線電圧153と路線消費電力量の関係について従来と比較しながら説明する。
上から、車両速度(km/h)と時刻の関係図(Y1)、車両架線電圧(V)と時刻の関係図(Y2)、出発可能状態と時刻の関係図(Y3)、制御指令と時刻の関係図(Y4)及び路線消費電力量(kWh)と時刻の関係図(Y5)を示している。横軸である時刻は共通の尺度であり、秒単位であり、縦軸は、それぞれ、車両速度(km/h)、車両架線電圧(V)、出発可能状態、制御指令及び路線消費電力量(kWh)とする。なお、図中の破線は、従来の関係を示しており、実線が本実施の形態による関係を示している。また、関係図Y1、Y2、及びY3は運転状態判定装置107へ入力される情報についての図であり、関係図Y4は運転状態判定装置107から出力される情報についての図である。関係図Y5は、本実施の形態の効果を示すための車両102の消費電力量についての図である。
従来は、他車両の力行と車両102の力行のタイミングを調整しない。以下、図6中の破線に着目して説明する。時刻S1から、出発可能状態は「出発可能」となり(Y3)、車両102が力行する(Y1)。また、他車両が力行しているため、車両102の架線電圧153が閾値電圧2よりも低下している。このため、変電所から電力供給等され、架線の送電ロスが増加し、路線消費電力量が増加している(Y5)。
また、時刻S3からS4にかけて、車両102の架線電圧153が上昇しており、他車両が回生しているが、車両102は惰行中のため(Y1)、発生している回生電力を有効活用できない(Y5)。
これに対し、本実施の形態について、図6中の実線に着目して説明する。なお、各駅において出発可能状態になるタイミングは本制御適用前と同じである(Y3)。
時刻S0において車両102は停車しており(Y1)、出発可能状態は「出発不可能」となる(Y3)。従って、時刻S0における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP208及びSP209と進み、車両102の制御指令154は「出発不可」となる(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車状態を維持する。車両102が走行していないため、路線消費電力量は0のままとなる(Y5)。
時刻S1において、出発可能状態は「出発可能」となるが(Y3)、車両102の架線電圧153は閾値電圧2を超えていない(Y2)。従って、時刻S1における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP205、SP206及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発不可」となる(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車状態を維持する。車両102が走行していないため、路線消費電力量は0のままとなる(Y5)。
時刻S2において、車両102の架線電圧153が変化し、閾値電圧2を超える(Y2)。また、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。従って、時刻S2における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP205、SP206及びSP207と進み、車両102の制御指令154は「出発」となる(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され、車両102は力行し、速度152が上昇する(Y1)。また、車両102が走行中であり(Y1)、車両102の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を下回っている。このため、変電所から電力供給が行われ、路線消費電力量が増加する(Y5)。
時刻S3において、車両102の架線電圧153が変化し、変電所の無負荷時電圧を超え(Y2)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。また、速度152は0を超えているため(Y1)停車と判定されない。従って、時刻S3における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154に「出発」が出力される(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され、車両102は力行し、速度152が上昇する(Y1)。このとき、車両102は力行しているが、車両102の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を超えているため、変電所から電力供給されず、他車両の回生電力のみで、車両102の力行が行われる。このため、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S4において、車両102の走行状態が力行から惰行に変化し(Y1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。また、速度152が0を超えているため(Y1)停車と判定されない。従って、時刻S4における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の通常運行を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は惰行となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S5において、車両102の走行状態が惰行から回生に変化し(Y1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。また、速度152が0を超えているため(Y1)停車と判定されない。従って、時刻S5における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は回生となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S6において、車両102は停車直後であり、上述の通り乗客の乗降が行われることから出発可能状態は「出発不可能」に変更される(Y3)。また、速度152は0であるため(Y1)停車と判定される。従って、時刻S6における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP208及びSP209と進み、車両102の制御指令154は「出発不可」となる(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車している。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S7において、出発可能状態は「出発可能」となり(Y3)、車両102の架線電圧153は閾値電圧2を超えている(Y2)。このため、他車両の力行を回避することができる。この結果、時刻S7における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP203、SP205、SP206及びSP207と進み、車両102の制御指令154は「出発」となる(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動され、車両102は力行となり、速度152が上昇する(Y1)。また、車両102が走行中であり(Y1)、車両102の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を下回っているため(Y2)、変電所から電力供給が行われ、路線消費電力量が増加する(Y5)。
時刻S8において、車両102の架線電圧153は変電所の無負荷時電圧を超えるが(Y2)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。また、速度152が0を超えているため(Y1)停車と判定されない。従って、時刻S8における制御指令処理は、図4より、ステップ201、及び209と進み、車両102の制御指令154から「出発」が出力される(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換され、この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動される。このため、車両102は力行し、速度152が上昇する(Y1)。このとき、車両102は力行しているが、車両102の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を超えているため(Y2)、変電所から電力供給されず、他車両の回生電力のみで、車両102の力行が行われる。このため、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S9において、車両102の走行状態が力行から惰行に変化する(Y1)。また、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。また、速度152が0を超えているため(Y1)停車と判定されない。従って、時刻S9における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の通常運行を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は惰行となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S10において、車両102の走行状態が惰行から回生に変化するが(Y1)、出発可能状態は「出発可能」を維持する(Y3)。また、速度152が0を超えているため(Y1)停車と判定されない。従って時刻S10における制御指令処理は、図4より、ステップSP201及びSP209と進み、車両102の制御指令154は前回と同じため「出発」が維持される(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発」は駆動指令151の「通常運行」に変換される。この駆動指令151の「通常運行」を受けた駆動制御装置103により、駆動装置104が駆動されるが、走行状態は回生となっている。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
時刻S11において、車両102は停車直後であり、上述の通り乗客の乗降が行われることから出発可能状態は「出発不可能」となる(Y3)。また、速度152は0であるため(Y1)停車と判定される。従って、時刻S11における制御指令処理は、図4より、ステップSP201、SP202、SP208及びSP209と進み、車両102の制御指令154は「出発不可」となる(Y4)。上述の駆動制御データテーブルTB100により、制御指令154の「出発不可」は駆動指令151の「制動」に変換される。この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両102は停車している。このため、変電所からの電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Y5)。
(1−4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の車両制御システムは、架線電圧153から他車両が回生していることを判定し、自車両102等の制御対象車両102の力行のタイミングを同期する。このことで、本実施の形態の車両制御システムは、他車両の回生電力を自車両102等の制御対象車両102の力行電力として使用し、省エネを図ることができる。
また、本実施の形態の車両制御システムは、架線電圧153から他車両が力行していることを判定し、自車両102等の制御対象車両102の力行のタイミングをずらす。このことで、本実施の形態の車両制御システムは、不要なエネルギーの使用を避け、省エネを図ることができる。
(1−5)変形例
変形例として、図1の構成に車両制御システムの出力や速度152を操作する装置であるマスコンと、車両制御システムの運転をする運転士に対して運転を支援する運転支援装置とを搭載し、運転士がマスコンを操作することで車両制御システムを制御する構成も可能である。
図7を参照して、変形例の構成について説明する。変形例による車両制御システムは、運転士によって、運転される車両601に適用することができ、車両601は、図示せぬ変電所から供給される電力または他車両の回生電力を得るために架線101に接続される。車両601は、駆動装置104を備え、駆動装置104は、駆動制御装置103によって制御されており、車両601は駆動装置104によって力行や回生等する。
車両601の速度152を計測する速度計測装置105と、車両601の架線電圧153を測定する架線電圧計測装置106とは、車両601の運転状態を判定する運転状態判定装置107に接続されている。なお、架線電圧計測装置106は架線101と駆動装置104との間に接続されている。また、速度計測装置105と架線電圧計測装置106とは車両の走行状態に基づいた情報を出力する信号出力装置である。
駆動制御装置103には、運転状態判定装置107の代わりに、運転士によって操作されるマスコン602が接続されている。運転士は、運転支援装置603の表示内容に基づいて、マスコン602を操作し、運転指令651を駆動制御装置103に伝える。運転支援装置603は、運転状態判定装置107に接続されており、制御指令154に基づいて、「出発」、「出発不可」を操作支援指令として表示する。運転士とマスコン602を介して、運転状態判定装置107は、駆動制御装置103に、制御指令154と同等の内容である運転指令651を伝える。このため本変形例は、図4又は図5で示した第1の実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例の場合は、マスコン602と駆動制御装置103を合わせて制御装置とみなしてもよい。第1の実施の形態においては、図2,3に示す変換テーブルを使用する例を示したが、当該変換テーブルを用いずに、演算により指令情報を生成しても良い。
(2)第2の実施の形態
(2−1)本実施の形態による車両制御システムの構成
第1の実施の形態においては、架線電圧153に基づいて車両102が力行するタイミングを調整している。この場合、他車両の回生や力行を待ったために、運行計画通りの時間に次駅に到着することができず、遅れの発生原因となってしまう可能性がある。
そこで、本実施の形態の車両システムは、同一路線上を走行する全ての車両の運行データを記録する運行データベース702内の運行データ751を参照する。このことで、本車両システムは、発車タイミング調整のために使用できる時間、例えば停車中の駅から次駅までに予定されている走行時間から実際に走行にかかる時間を減算した時間、を把握することができる。このため、その時間内(余裕時間)で発車タイミング調整し、運行計画通りの時間に次駅に到着することができる。
本実施の形態の車両制御システムは、運行データベース702と位置計算装置703とがさらに設けられている点を除いて、第1の実施の形態の車両制御システムと同様に構成されている。特に説明のない点に関しては、実施の形態1と同様とする。
図8に示す、本実施の形態による車両制御システムは、例えば自動運転により運行する車両に適用することができる。車両701は、図示せぬ変電所からの電力を供給する架線101に接続される。駆動装置104には架線101を介して電力が供給されて、駆動装置104により車両701は駆動される。駆動装置104は、駆動制御装置103によって制御されており、車両701は、駆動装置104によって力行や回生等を行う。
また、車両701の架線電圧153を測定する架線電圧計測装置106は、架線101と駆動装置104との間に接続され、車両701の運転状態を判定する運転状態判定装置704に接続されている。また、車両701の速度152を計測するために速度計測装置105も同様に、運転状態判定装置704に接続されている。
また、速度152を基に車両701の位置752を算出する位置計算装置703と、車両701の運行データ751を記録する運行データベース702は、運転状態判定装置704に接続されている。位置計算装置703で算出する位置752は、車両701が、どの駅にいるか、どの区間にいるか等を運転状態判定装置704が判定するために使用される。
なお、位置計算装置703は、例えば、速度152を利用せずに、GPS(Global Positioning System)を利用することで位置情報を求めてもよいものとする。
駆動制御装置103には、運転状態判定装置704から制御指令154が出され、駆動制御装置103は、制御指令154を基に駆動指令151を作成する。ここで、制御指令154は、架線電圧153と、速度152と、位置752と、運行データ751と、乗客ドアの情報などに基づく出発可能状態とを基に作成される。
駆動制御装置103に参照される、駆動制御データテーブルTB100と、運転状態判定装置704に参照される、出発可能状態データテーブルTB200とについては、第1の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
運行データベース702の運行データ751は、遅れを発生させないために運転状態判定装置704で参照されるデータであり、運行データベース702には、図9に示すような列車計画(ダイヤグラム)の内容が運行データテーブルTB300として格納されており、列車ごとの列車番号と編成と運行区間及び経路及び停車駅及び各駅の着発時刻(又は通過時刻)等が格納されている。
運行データテーブルTB300には、列車1、列車2、…、列車Nまでの路線内の列車の運行データを格納する運行データ列TB301が設けられており、列車ごとの詳細な情報はそれぞれ列車データテーブルTB400のように格納されている。本実施の形態においては、自車両701等の制御対象車両701のデータを参照する。
列車データテーブルTB400には、列車番号、編成、及び運転区間等といった項目名等の索引情報が格納されている項目列TB401と、内容である、車両形式、両数、駅名、発着時刻及び進路といった詳細が格納される内容列TB402が設けられている。
(2−2)本実施の形態による同時力行抑制/力行回生同期機能
図10は、本実施の形態による同時力行抑制/力行回生同期機能に関して、運転状態判定装置704により実行される制御指令処理の処理手順を示す。
制御指令処理において、制御指令154を「出発」とするか「出発不可」とするかを判定するという処理内容については、第1の実施の形態と同様であるため、差分がある箇所についてのみ説明する。
本実施の形態では、運転状態判定装置704は、制御指令処理を実行するために、位置752と、運行データ751を入力情報としてさらに取得する。
停車中の場合、運転状態判定装置704は、位置752からどの駅に停車しているかを判定し(SP801)、次の駅への到着が遅延しない時刻までの時間である余裕時間を算出済であるかを判定し(SP802)、余裕時間を算出済の場合は、車両701の出発可能状態が「出発可能」かを判定する(SP805)。
運転状態判定装置704が、余裕時間を算出していない場合、運転状態判定装置704は余裕時間の算出(SP803)と、出発限度時刻の算出(SP804)を実施し、ステップSP805へ進む。なお、出発限度時刻は、列車計画(ダイヤグラム)上で予定されている出発時刻(列車データテーブルTB400の発時刻)に余裕時間を加算することで算出する。
また、運転状態判定装置704は、車両701の出発可能状態が「出発可能」の場合に、現時刻が出発限度時刻または出発限度時刻を超えているかを判定し(SP806)、現時刻が出発限度時刻または出発限度時刻を超えている場合に、運転状態判定装置704は、制御指令154を「出発」とする(SP811、出発限度時刻制御)。運転状態判定装置704が、現時刻が出発限度時刻を超えていないと判定した場合は、SP807へ進む。
(2−3)本実施の形態の効果
上述の処理以外に関しては、第1の実施の形態と同様であり、ステップSP201〜SP209と、ステップSP801、SP805及びSP807〜SP813とが対応している。本実施の形態によれば、出発可能状態の判定(SP805)後に、出発限度時刻の判定(SP806)を行うことで、列車計画(ダイヤグラム)の計画内容を守りつつ、他車両の回生電力の有効利用や、他車両の力行と自車両701の力行タイミングの同期を回避することができる。
(2−4)変形例
なお、図11に示すように、運行データベース702の代わりに地上システムと通信する通信装置902を車両901に設けてもよい。通信装置902が、運行状況を管理している地上システムと適切なタイミングで通信を行い、運転状態判定装置704が参照する列車計画(ダイヤグラム)を適切に更新するようにしてもよい。
また、図12に示すように、運行データベース702に加えて通信装置902を車両1001に設け、運転状態判定装置704が参照する運行データベース702を適切に更新するようにしてもよい。
いずれの構成においても運転状態判定装置704の処理は変更とならないため、図8のシステム構成と同じ効果が得られる。
第2の実施の形態においては、図2,3に示す変換テーブルを使用する例を示したが、当該変換テーブルを用いずに、演算により指令情報を生成しても良い。
(3)第3の実施の形態
(3−1)本実施の形態による車両制御システムの構成
第1及び第2の実施の形態においては、他車両の力行や回生の情報を、架線電圧153を測定することで取得していたが、架線電圧153を参照せずとも、他車両の運行計画(ダイヤグラム)を参照することによって、他車両の力行や回生のタイミングを予測することができる。
そこで、本実施の形態では、架線電圧153を測定する架線電圧計測装置106やその測定した電圧を参照する機能を省略することで車両制御システムにかかるコストを減らすことができる。
本実施の形態の車両制御システムは、架線電圧計測装置106が設けられていない点を除いて、第2の実施の形態の車両制御システムと同様に構成されている。特に説明のない点に関しては、実施の形態2と同様とする。
図13に示す、本実施の形態による車両制御システムは、架線電圧153の代わりに、運行データ751により、他車両の力行及び回生のタイミングを予測する。
駆動制御装置1102は、現在時刻が後述の制御指令処理によって設定された出発時刻に達するまたは超えた場合には、次駅に向かって運行するように「通常運行」指令を出す。例えば、目標走行パターンを決めておいて、その走行パターンに従った指令を出力する。現在時刻が後述の制御指令処理によって設定された出発時刻に達していない場合には、「制動」指令を出して、駅を出発させない。なお、本実施の形態においても第1及び第2の実施の形態と同様に変換テーブルを使用してもよいものとする。
(3−2)本実施の形態による同時力行抑制/力行回生同期機能
かかる車両制御システムの運転状態判定装置1103での処理内容である同時力行抑制/力行回生同期機能について説明する。上述の通り速度152と位置752と運行データ751とに基づいて、出発時刻指令1151の時刻を判定する制御指令処理を運転状態判定装置1103で実行することで、同時力行抑制/力行回生同期機能を実現している。
運転状態判定装置1103は、制御指令処理において、図14に示すように、入力情報である速度152から車両1101が停車しているかどうかを判定する(SP1201)。停車と判定しない場合は処理を終了し、停車と判定すると、運転状態判定装置1103は、停車中の駅で出発時刻指令1151が未算出か判定する(SP1202)。出発時刻指令1151が算出されている場合は処理を終了する。
また、運転状態判定装置1103は、現在停車している駅において、出発時刻指令1151が算出されていない場合、前の駅等で設定されて残っている出発時刻指令1151を初期化し(SP1203)、位置752で現在停車中の駅を特定して、運行データ751に基づいて、余裕時間を算出し(SP1204)、当該余裕時間に基づいて出発限度時刻TLを算出する(SP1205)。
次に、他車両の回生開始予想時刻である回生開始予想時刻TS(SP1206)と、他車両の力行終了予想時刻である力行終了予想時刻TE(SP1207)とを算出する。運行データ751には図9の運行データテーブルTB300に示したとおり、他車両のデータに関しても格納されているため、運行データ751の他車両のデータを参照することにより他車両の回生開始予想時刻及び力行終了予想時刻を算出する。
ステップSP1206において回生開始予想時刻TSは、車両1101の位置752から、運行データ751を基に、10km以内かつその時点から一番早く回生を開始する他車両の時刻とする。また、ステップSP1207において力行終了予想時刻TEは、運行データ751を基に、車両1101の位置752に対して電力を供給する変電所の給電範囲内で、その時点から一番早く力行を開始する他車両の時刻とする。
次に、出発限度時刻TLと、回生開始予想時刻TSと、力行終了予想時刻TEとを比較することで、この時刻のいずれかを出発時刻指令1151とする。具体的には、まず、出発限度時刻TLが回生開始予想時刻TS以上(TLの方がTSよりも遅い時刻またはTLとTSが同じ時刻)かを判定する(SP1208)。出発限度時刻TLが回生開始予想時刻TS以上であれば、出発時刻指令1151を回生開始予想時刻TSとし(SP1209)、処理を終了する。
出発限度時刻TLが回生開始予想時刻TSより小さければ(TSの方がTLより遅い時刻)、出発限度時刻TLが力行終了想時刻TE以上(TLの方がTEよりも遅い時刻またはTLとTEが同じ時刻)かを判定する(SP1210)。出発限度時刻TLが力行終了予想時刻TE以上であれば、出発時刻指令1151を力行終了予想時刻TEとする(SP1211)。出発限度時刻TLが力行終了予想時刻TE以上でなければ、出発時刻指令1151を出発限度時刻TLとし(SP1212)処理を終了する。
以上に記載した通り、走行中に、出発時刻指令1151を変更する処理は実行していないため、走行中に出発時刻指令1151が変動することはない。
なお、ステップSP1209の処理により、出発時刻指令1151を回生開始予想時刻TSと設定した場合には、列車計画(ダイヤグラム)を守りながら、他車両の回生電力を有効に活用することができる。また、ステップSP1211の処理により、出発時刻指令1151を力行終了予想時刻TEと設定した場合には、他車両の回生電力を有効活用できないが、他車両と車両1101との同時力行を回避して運行することが可能となる。また、ステップSP1212の処理により、出発時刻指令1151を出発限度時刻TLと設定した場合には、他車両と同時に力行している時間をできるだけ小さくすることができる。ただし、出発時刻指令1151を出発限度時刻TLと設定した場合には、他車両の回生電力を有効に活用することも、他車両と車両1101との同時力行を完全に回避することもできない。
また、ステップ1206で10km以内と指定したが、この距離は路線に応じて変更しても良い。また、架線およびレールで定まる抵抗値をR〔Ω/km〕、車両1101の最大回生電力をP〔kW〕、回生絞り込みする電圧をV1〔V〕、及び変電所の無負荷時電圧をV0〔V〕とした場合、
X=V1(V1−V0)/(1000PR)
で求まる距離X〔km〕を用いても良い。この距離は、他車両が回生絞り込みすることなく、最大回生した場合に、車両1101の架線電圧153が、変電所の無負荷時電圧で受電可能な距離を求めている。従って、この距離以内で回生電力が発生した際に力行すれば、回生絞り込みが行われることなく回生電力の利用が可能となる。
(3−3)本実施の形態と従来との消費電力量の比較
図15を用いて、本実施の形態における速度152と架線電圧153と路線消費電力量の関係について従来と比較しながら説明する。
図15の上から、車両速度(km/h)と時刻の関係図(Z1)、出発時刻指令1151と時刻の関係図(Z2)、及び路線消費電力量(kWh)と時刻の関係図(Z3)を示している。横軸である時刻は共通の尺度であり、秒単位である。縦軸は、それぞれ、車両速度(km/h)、出発時刻指令(秒単位)及び路線消費電力量(kWh)とする。なお、図中の破線は従来の関係を示しており、実線が本実施の形態による関係を示している。また、関係図Z1は運転状態判定装置1103へ入力される情報についての図であり、関係図Z2は運転状態判定装置1103から出力される情報についての図である。関係図Z3は、本実施の形態の効果を示すための車両1101の消費電力量についての図である。
従来は、他車両の回生と車両1101の力行のタイミングを調整しない。以下、図5中の破線に着目して説明する。時刻R1において、車両1101が力行するが(Z1)、他車両の回生がないため、変電所から電力供給等されて、路線消費電力量が増加している(Z3)。
また、時刻R3からR5にかけて、他車両が回生しているが、車両1101は惰行中のため(Z1)、ここで発生している電力を有効活用できていない(Z3)。
これに対し、本実施の形態について、図15中の実線に着目して説明する。
時刻R0において車両1101は停車している(Z1)。このとき、停車している駅で出発時刻指令1151を算出していない(Z2)。また、時刻R0における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201、SP1202、SP1203、SP1204、SP1205、SP1206及びSP1207と進む。この結果、運転状態判定装置1103は、運行データ751より、TL=R4、TS=R3、TE=R2を算出する。次に、運転状態判定装置1103は、ステップSP1208にて、TS≦TLの判定を行い、成立するため、ステップSP1208に進み、出発時刻指令1151としてR3が算出される(Z2)。なお、現時刻であるR0が出発時刻指令1151であるR3に至っていない(R0<R3)。このため、駆動指令151は「制動」となり、この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両1101は停車状態を維持する。車両1101が走行していないため、路線消費電力量は0のままとなる(Z3)。
時刻R3において、出発時刻となったため車両1101は力行となる。このとき、速度152が上昇し速度152が0を超えるため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R3における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR3のままとなる(Z2)。時刻R3からR4においては、車両1101は力行しているが、他車両が回生しており、車両1101の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を超える。このため、変電所から電力供給されず、他車両の回生電力のみで、車両1101の力行が行われる。このため、路線消費電力量は0のままとなる(Z3)。
時刻R4において、車両1101の架線電圧153が変化し、変電所の無負荷時電圧を下回り、速度152は0を超えているため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R4における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR3のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は力行しており、車両1101の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を下回っているため、変電所から電力供給が行われ、路線消費電力量が増加する(Z3)。
時刻R5において、車両1101の走行状態が力行から惰行に変化する(Z1)。このとき、速度152が0を超えているため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R5における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR3のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は惰行しており、変電所から電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Z3)。
時刻R6において、車両1101の走行状態が惰行から回生に変化する(Z1)。このとき、速度152が0を超えているため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R6における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR3のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は回生しており、変電所から電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Z3)。
時刻R7において、車両1101は停車している(Z1)。このとき、当該駅で出発時刻指令1151を算出済みでない(Z2)。従って、時刻R7における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201、ステップSP1202、ステップSP1203、ステップSP1204、ステップSP1205、ステップSP1206及びSP1207と進む。この結果、運転状態判定装置1103は、運行データ751より、TL=R8、TS=R9、TE=R8を算出する。次に、ステップSP1208にて、運転状態判定装置1103は、TS≦TLの判定を行うが、TS≦TLの条件が成立しないことから、ステップSP1210に進む。次に、ステップSP1210にて、TE≦TLの判定を行い、TE≦TLの条件が成立するため、ステップSP1211に進み、出発時刻指令1151としてR8が算出される(Z2)。なお、現時刻であるR7が出発時刻指令1151であるR8に至っていない(R7<R8)。このため、駆動指令151は「制動」となり、この駆動指令151の「制動」を受けた駆動装置104により、車両1101は停車状態を維持する。車両1101が走行していないため、路線消費電力量は変化しない(Z3)。
時刻R8において、出発時刻となったため車両1101は力行となる。このとき、速度が上昇し速度152が0を越えるため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R8における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR8のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は力行しており、車両1101の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を下回っている。このため、変電所からの電力供給は行われ、路線消費電力量が増加する(Z3)。
時刻R9において、車両1101の架線電圧153が変化し、変電所の無負荷時電圧を超え、速度152は0を超えているため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R9における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR8のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は力行しているが、他車両との同時力行を回避したため、車両1101の架線電圧153が変電所の無負荷時電圧を超える。このため、変電所から電力供給はされず、路線消費電力量は変化しない(Z3)。
時刻R10において、車両1101の走行状態が力行から惰行に変化し(Z1)、速度152が0を超えているため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R5における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR8のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は惰行しており、変電所から電力供給はないため、路線消費電力量は変化しない(Z3)。
時刻R11において、車両1101の走行状態が惰行から回生に変化し(Z1)、速度152が0を超えているため(Z1)停車と判定されない。従って、時刻R11における制御指令処理は、図14より、ステップSP1201及びSP1202と進み、出発時刻指令1151はR3のままとなる(Z2)。このとき、車両1101は回生しており、変電所から電力供給はなく、路線消費電力量は変化しない(Z3)。
時刻R12において、車両1101は停車しており(Z1)、また、当該駅で列車ダイヤが終了となるため制御指令処理は実行されず終了となる。
(3−4)本実施の形態の効果
本実施の形態によれば、架線電圧153を測定する架線電圧計測器106を車両制御システムに設けることなく、他車両の力行及び回生のタイミングを予測することができ、車両制御システムの省エネ化を図ると共にコストの低減も図れる。
(3−5)変形例
なお、図16に示すように、運行データベース702の代わりに地上システムと通信する通信装置902を車両1401に設けてもよい。このことで、適切なタイミングで運行状況を管理しているサーバ等の地上システムと通信を行い、車両1401の運転状態を判定する運転状態判定装置1103が参照する列車計画(ダイヤグラム)を適切に更新するようにしてもよい。
また、図17に示すように、運行データベース702に加えて地上システムと通信する通信装置902を車両1501に設けてもよい。このことで、車両1501の運転状態を判定する運転状態判定装置1103が参照する運行データベース702を、通信装置を介して地上システムから受信した情報に基づいて適切に更新するようにしてもよい。
いずれの構成においても運転状態判定装置1103の処理は変更とならないため、図13のシステム構成と同じ効果が得られる。
(4)その他の実施例
制御指令154、出発時刻指令1151及び出発可能状態の初期値は、特に定めず不定としてもよいし、特定の値としてもよいものとする。また、駆動制御データテーブルTB100や出発可能状態データテーブルTB200や運行データテーブルTB300等のデータテーブルは、そのデータテーブルを使用する駆動制御装置103、1102や運転状態判定装置107、704、1103等が保持していてもよいし、図示せぬメモリ等に他のデータテーブルと共に保持していても良いものとする。
なお、第1の実施の形態において、運転士を支援する変形例として、図7に示すように、生成した制御指令154に基づいて運転支援装置に「出発」、「出発不可」を表示する例を示したが、このような運転支援装置を搭載する実施形態は、第2及び第3の実施の形態においても、当然適用することができる。
101:架線、102、601、701、901、1001、1101、1401、1501:車両、103、1102:駆動制御装置、104:駆動装置、
105:速度計測装置、106:架線電圧計測装置、107、704、1103:運転状態判定装置、151:運転指令、152:速度、153:架線電圧、154:制御指令、602:マスコン、603:運転支援装置、702:運行データベース、703:位置計算装置、751:運行データ、752:位置、902:通信装置、1151:出発時刻指令。