JP6739836B2 - レーザおよびそれを用いたレーザ超音波探傷装置 - Google Patents

レーザおよびそれを用いたレーザ超音波探傷装置 Download PDF

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本発明は、レーザおよびそれを用いたレーザ超音波探傷装置に関する。詳細には、本発明は、波長変換素子を用い、中赤外光を発する小型レーザおよびそれを用いたレーザ超音波探傷装置に関する。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、強度と軽さを併せ持った大変ユニークで革新的な構造材料であり、その有用性は全世界的に認知され、航空機、カーなど様々な分野への応用が始まっているところである。このCFRP等カーボン複合材料開発のキーとなる技術の一つが、欠陥検出のための非破壊検査技術である。超音波探傷試験(LUT:Laser−Ultrasonic Testing)とは、検査部に短パルスレーザを照射し、材料に局所的な体積の膨張・収縮を起こして、超音波を発生させその伝搬を解析することで、材料表面や内部の欠陥を非破壊的に検出する方法のことである。LUTのキーテクノロジは多岐にわたるが、とりわけ、超音波生成用パルスレーザが重要で、CFRP検査に最適化された波長で、使いやすく信頼性の高いレーザが極めて重要であるが、現在CFRPのLUTに使用されているレーザは、大型で大変扱いにくく、信頼性の低いCOレーザである。
最近、COレーザに代わるレーザとして、光パラメトリック発振(OPO:Optical Parametric Oscillation)を用いた中赤外光を発するレーザが開発された(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1は、周期分極反転構造が形成された、Mgを添加した化学量論組成のLiTaO単結晶を用い、OPO発振を行い、3.23μmの中赤外光がCFRPへのレーザダメージが少なく、感度の高い光源であることを報告している。しかしながら、非破壊検査の精度を向上させるためには、OPO発振効率のさらなる向上が求められる。
OPO発振効率を向上させる別の中赤外光を発するレーザが開発された(例えば、非特許文献2および特許文献1を参照)。特許文献1および非特許文献2によれば、OPOと差周波発振(DFM:Different Frequency Mixing)とを組み合わせた中赤外光を発するレーザが開示される。
図1は、従来技術によるOPOとDFMとの組み合わせのレーザの原理を示す図である。
図1(B)に示すように、特許文献1および非特許文献2によれば、OPOとDFMとを共振器内に配置した構成を開示する。ここで、OPOでは、図1(A)に示すように、ポンプ波(ωpump)がシグナル波(ωsignal)とアイドラ波(ωidler)とに変換される。目的とする中赤外光は、アイドラ波であるが、Manley−Roweの関係により、その変換効率は、波長3.2μm近傍の中赤外光生成の場合、アイドラ光とシグナル光のエネルギー比は1:2なので、最大33%に制限される。そこで、図1(B)に示すように、OPOに続いて、DFMを組み込むことにより、シグナル波が、アイドラ波と差周波波(ωdifference)とに変換される。これにより、アイドラ生成効率が改善する。
実際に、非特許文献2によれば、OPOとDFMとを組み合わせたレーザにおけるアイドラ波の発振効率は、OPO単独によるそれよりも大きいことが示されている。しかしながら、このような構造を達成するためには、OPOとDFMとを別個に温度制御する必要があり、レーザそのものの小型化が求められている。また、特許文献1においても、具体的な構成が開示されていない。
一方、二回連続で波長変換する別の波長変換レーザ装置が開発されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2によれば、入射光の波長とは異なる第1の波長の光に変換する第一の波長変換素子と、第一の波長変換素子により変換された光および第一の波長変換素子により変換されなかった基本波が入射されて第1の波長とは異なる第2の波長の光に変換する第二の波長変換素子とを備えた波長変換レーザ装置が開示されており、第一の波長変換素子と第二の波長変換素子の少なくともいずれか一方が、ファンアウト構造の疑似位相整合素子か、チャープ構造の疑似位相整合素子であり、第一の波長変換素子と第二の波長変換素子が同じ温度に制御されていることを特徴とする。
しかしながら、特許文献2では、第一の波長変換素子と第二の波長変換素子とは、いずれも、第二高調波発生をし、OPOとDFMとの組み合わせではなく、中赤外光を発振することができない。
特許第5520933号明細書 特開2015−165260号公報
H. Hatanoら,J.Optics,17(2015)094011 畑野秀樹ら,14p−2G−9「PP−MgSLTを用いたOPO+DFMによる高効率中赤外レーザー光源開発とCFRPのレーザー超音波探傷への応用」,第76回応用物理学会秋季学術講演会,2015
本発明の課題は、中赤外の光を発する小型レーザ、および、それを用いたレーザ超音波探傷装置を提供することである。
本発明によるレーザは、第1の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第1の波長変換素子であって、温度Tにおいて、ポンプ波長λを有するポンプ光を、アイドラ波長λを有するアイドラ光とシグナル波長λを有するシグナル光とに波長変換し、ここで、前記ポンプ波長λと前記アイドラ波長λと前記シグナル波長λとは、関係1/λ=1/λ+1/λを満たす、第1の波長変換素子と、第2の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第2の波長変換素子であって、前記温度Tにおいて、前記シグナル波長λを有する前記シグナル光を、差周波波長λを有する差周波光と前記アイドラ波長λを有する前記アイドラ光とに波長変換し、ここで、前記シグナル波長λと前記差周波波長λと前記アイドラ波長λとは、関係1/λ=1/λ+1/λを満たす、第2の波長変換素子と、前記第1の波長変換素子および前記第2の波長変換素子を加熱し、温度を制御する温度制御部とを備え、前記温度制御部は、前記第1の波長変換素子および前記第2の波長変換素子の前記温度Tを、前記第2の波長変換素子が、前記ポンプ波長λを有するポンプ光を、アイドラ波長λi’を有するアイドラ光とシグナル波長λs’を有するシグナル光とに波長変換し、ここで、前記ポンプ波長λと前記アイドラ波長λi’と前記シグナル波長λs’とが、関係1/λ=1/λs’+1/λi’および関係λs’=λi’を満たす場合の縮退温度Tよりも高くなるよう制御し、これにより上記課題を達成する。
前記第1の波長変換素子および/または前記第2の波長変換素子の周期分極反転構造は、ファンアウト構造であってもよい。
前記第1の波長変換素子および/または前記第2の波長変換素子は、定比組成のニオブ酸リチウム、実質的に定比組成のタンタル酸リチウム、Mg、Zn、ScおよびIからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のニオブ酸リチウム、および、Mg、Zn、ScおよびInからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のタンタル酸リチウムからなる群から選択される単結晶からなってもよい。
前記第1の波長変換素子および前記第2の波長変換素子は、単一の単結晶からなってもよい。
前記第1の波長変換素子および/または前記第2の波長変換素子は、Mg、Zn、ScおよびInからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のタンタル酸リチウムからなる単結晶からなり、前記第1の周期Λは、30.5μm以上31.5μm以下の範囲であり、前記第2の周期Λは、32.5μm以上33.15μm以下の範囲であってもよい。
前記第1の周期Λは、30.8μm以上31.2μm以下の範囲であり、前記第2の周期Λは、32.7μm以上32.9μm以下の範囲であってもよい。
前記温度Tは、65℃以上150℃以下の範囲の温度であってもよい。
本発明による超音波によって被験物の探傷を試験するレーザ超音波探傷装置は、ポンプ波長λを有するポンプ光を発する励起源と、前記励起源からの前記ポンプ光を、アイドラ波長λを有するアイドラ光に波長変換し、前記アイドラ光を前記被験物に照射するレーザとを備え、前記レーザは、上述のレーザであり、これにより上記課題を解決する。
前記レーザは、前記アイドラ光が3.15μm以上3.25μm以下の波長を有する中赤外光を発してもよい。
前記被験物で発生した超音波を検出し、解析する解析部をさらに備えてもよい。
前記被験物は、炭素繊維強化プラスチックであってもよい。
前記励起源は、Nd:YAGレーザまたはNd:YVOレーザであってもよい。
本発明によるレーザは、第1の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第1の波長変換素子と、第2の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第2の波長変換素子と、これらを加熱し、温度を制御する温度制御部とを備え、温度制御部は、これらの温度Tを、第2の波長変換素子が、OPO発振する場合の縮退温度Tよりも高くなるよう制御する。これにより、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子を同じ温度Tで動作させても、望まない第2の波長変換素子によるOPO発振を抑制できるので、高い変換効率を達成できる。また、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子は、単一の温度制御部によって同一温度に制御すればよいので、別個の温度制御部を不要とし、レーザ全体を小型化できる。このようなレーザを採用すれば、小型かつ高精度なレーザ超音波探傷装置を提供できる。
従来技術によるOPOとDFMとの組み合わせのレーザの原理を示す図 本発明によるレーザを示す模式図 本発明によるレーザ超音波探傷装置を示す模式図 実験で用いた光学系を示す図 実施例1のレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図 比較例2の実施例1のレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図 実施例1のレーザの出力光のエネルギーの温度依存性を示す図 実施例1のレーザのポンプ光のエネルギーと出力光のエネルギーとの関係を示す図 比較例2のレーザにおける第2の波長変換素子の出力光のエネルギーの温度依存性を示す図 比較例2のレーザのポンプ光のエネルギーと出力光のエネルギーとの関係を示す図 実施例3によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図 実施例4によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図 実施例5によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図 実施例6によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図 実施例7によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明によるレーザを説明する。
図2は、本発明によるレーザを示す模式図である。
図2(A)に示すように、本発明によるレーザ200は、少なくとも、第1の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第1の波長変換素子210と、第2の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第2の波長変換素子220と、これら第1の波長変換素子210と第2の波長変換素子220とを同時に加熱し、温度を制御する単一の温度制御部230とを備える。第1の波長変換素子210と第2の波長変換素子220との加熱を単一の温度制御部230が行うので、別個の温度制御部を不要とし、レーザ200全体を小型化できる。
第1の波長変換素子210は、疑似位相整合によりパラメトリック(OPO)発振する波長変換素子である。第1の波長変換素子210は、温度Tにおいて、ポンプ波長λを有するポンプ光を、アイドラ波長λを有するアイドラ光とシグナル波長λを有するシグナル光とに波長変換する。ここで、ポンプ波長λとアイドラ波長λとシグナル波長λとは、関係1/λ=1/λ+1/λを満たす。
詳細には、第1の周期Λは、ポンプ波長λとアイドラ波長λとシグナル波長λを用いて、次のように表される。
1/Λ=n(T)/λ−n(T)/λ−n(T)/λ
ここで、n(T)、n(T)およびn(T)は、それぞれ、温度Tにおける、ポンプ光、シグナル光およびアイドラ光の各波長に対する屈折率である。
第2の波長変換素子220は、疑似位相整合により差周波(DFM)発振する波長変換素子である。第2の波長変換素子220は、温度Tにおいて、シグナル波長λを有するシグナル光を、差周波波長λを有する差周波光とアイドラ波長λを有するアイドラ光とに波長変換する。ここで、シグナル波長λと差周波波長λとアイドラ波長λとは、関係1/λ=1/λ+1/λを満たす。
詳細には、第2の周期Λは、差周波波長λとアイドラ波長λとシグナル波長λを用いて、次のように表される。
1/Λ=n(T)/λ−n(T)/λ−n(T)/λ
ここで、n(T)、n(T)およびn(T)は、それぞれ、温度Tにおける、差周波光、シグナル光およびアイドラ光の各波長に対する屈折率である。
温度制御部230は、第1の波長変換素子210および第2の波長変換素子220を温度Tに加熱するが、温度Tが、第2の波長変換素子220がOPO発振する場合の縮退温度Tよりも高くなるように制御する。第2の波長変換素子220が、OPO発振するとは、ポンプ波長λを有するポンプ光を、アイドラ波長λi’(λ≠λi’)を有するアイドラ光とシグナル波長λs’(λ≠λs’)を有するシグナル光とに波長変換することをいう。ここで、ポンプ波長λとアイドラ波長λi’とシグナル波長λs’とが、関係1/λ=1/λs’+1/λi’および関係λs’=λi’を満たす場合の温度が縮退温度Tである。
このような温度制御部230は、温度制御機構(内部あるいは外部)を備えたヒータ、ペルチエ温度制御器等であり得、40℃以上200℃以下の温度範囲に加熱可能であれば足りる。
本願発明者らは、差周波発振を目的とする第2の波長変換素子220が、所定の条件において、第1の波長変換素子210に入射するポンプ光によってパラメトリック発振し、これが発振効率の低下につながることを発見した。そこで、上述の第1の波長変換素子210および第2の波長変換素子220の温度Tを、第2の波長変換素子220がOPO発振する場合の縮退温度Tよりも高くすることによって、第2の波長変換素子220のOPO発振が抑制されるので、全体の発振効率を向上させることができる。
より詳細には、図2(B)に示すように、第1の波長変換素子210に入射するポンプ波長λおよびポンプ周波数ωを有するポンプ光は、第1の波長変換素子210において、アイドラ波長λおよびアイドラ周波数ωを有するアイドラ光と、シグナル波長λおよびシグナル周波数ωを有するシグナル光とに波長変換される。
次いで、波長変換されたアイドラ光とシグナル光とは、第2の波長変換素子220に入射し、アイドラ光は、第2の波長変換素子220を透過し、シグナル光は、第2の波長変換素子220において、差周波波長λおよび差周波周波数ω有する差周波光と、アイドラ波長λおよびアイドラ周波数ω有するアイドラ光とに波長変換される。
ここで、温度制御部230が、第1の波長変換素子210と第2の波長変換素子220の温度Tを縮退温度Tよりも高くなるように制御するので、第2の波長変換素子220は、ポンプ光、アイドラ光およびシグナル光のいずれが入射しても、OPO発振することはない。
その結果、第1の波長変換素子210に入射したポンプ光のポンプ周波数ωは、理想的な、第1の波長変換素子210によって変換されたアイドラ光のアイドラ周波数ωと、第2の波長変換素子220によって変換されたアイドラ光のアイドラ周波数ωと、第2の波長変換素子220によって変換された差周波光の差周波周波数ωとの和となる。ここで、第1の波長変換素子210の第1の周期Λおよび第2の波長変換素子220の第2の周期Λの調整によっては、差周波周波数ωとアイドラ周波数ωとが、実質的に等しくなるようにすることもできる。このような場合には、理論的な変換効率が100%となる。
ここで、レーザ200が中赤外の光を発するレーザである場合には、少なくともアイドラ光のアイドラ波長λが、中赤外(例えば、3μm〜3.5μm)となるように、ポンプ光の波長λ、第1の周期Λおよび/または第2の周期Λを設計すればよい。
第1の周期Λおよび/または第2の周期Λは、固定値であってもよいし、ある幅を持っていてもよい。例えば、ある幅を持っている場合には、第1の波長変換素子210および/または第2の波長変換素子220の周期分極反転構造は、ファンアウト構造となる。ファンアウト構造とすれば、第1の波長変換素子210および/または第2の波長変換素子220の発振波長が、第1の周期Λおよび/または第2の周期Λの幅に応じて可変となるので、スライド機構などを設けて、第1の波長変換素子210と第2の波長変換素子220とを所望の周期を選択するようにすればチューニング可能な可変波長レーザを提供できる。
第1の波長変換素子210および/または第2の波長変換素子220は、周期分極反転構造を形成可能で、180°ドメインを有する強誘電体単結晶であるが、好ましくは、定比組成のニオブ酸リチウム、実質的に定比組成のタンタル酸リチウム、Mg、Zn、ScおよびIからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のニオブ酸リチウム、および、Mg、Zn、ScおよびInからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のタンタル酸リチウムからなる群から選択される単結晶からなる。これらの単結晶であれば、良質な単結晶が入手でき、大口径の素子を提供でき、レーザダメージ耐性もあり、高い発振効率を可能とする。
なお、本明細書中において、実質的に「定比組成である」とは、LiO/(Ta+LiO)またはLiO/(Nb+LiO)のモル分率が完全に0.50ではないものの、コングルエント組成よりも化学量論比に近い組成LiO/(Ta+LiO)または(LiO/(Nb+LiO)のモル分率=0.490〜0.5)を有しており、そのことに起因するデバイスの特性の低下が通常のデバイスの設計において問題にならない程度であることをいう。このような実質的に定比組成であるタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム単結晶は、例えば、特許第3551242号に記載される二重るつぼを使用したチョクラルスキー法により作製され得る。
また、Mg、Zn、ScおよびIからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含むことにより、光損傷を低減できるので、発振効率を向上できる。なお、添加量は、光損傷の低減の観点から、好ましくは、0.1mol%以上3.0mol%以下の範囲である。
第1の波長変換素子210および第2の波長変換素子220の周期分極反転構造は、例えば、リソグラフィを用いた、特許第3511204号等に知られる電子ビーム照射法あるいは電界印加法によって製造される。
第1の波長変換素子210および第2の波長変換素子220が単一の単結晶からなってもよい。これにより、共振器長を短くすることができるので、さらなる小型化を可能にする。
第1の波長変換素子210および/または第2の波長変換素子220は、Mg、Zn、ScおよびInからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のタンタル酸リチウムからなる単結晶からなる場合、好ましくは、第1の周期Λは、30.5μm以上31.5μm以下の範囲であり、第2の周期Λは、32.5μm以上33.15μm以下の範囲である。これにより、レーザ200は、ポンプ波長λが約1μm(例示的には1064nmのYAGレーザ)を有する場合、波長3μm以上3.5μm以下の範囲の中赤外の光を発することができる。
より好ましくは、第1の波長変換素子210および第2の波長変換素子220の周期分極反転構造の周期が固定であり、第1の周期Λは、30.8μm以上31.2μm以下の範囲から選択され、第2の周期Λは、32.7μm以上32.9μm以下の範囲から選択される。これにより、レーザ200は、波長3.15μm以上3.25μm以下の範囲の中赤外の光を発することができ、とりわけ、CFRPのレーザ超音波探傷に有利である。
さらに、この場合、温度Tは、65℃以上150℃以下の温度範囲に制御される。この範囲であれば、第2の波長変換素子220がOPO発振する場合の縮退温度Tよりも高くなるので、OPO発振を抑制し、レーザ200の発振効率を高めることができる。
あるいは、第1の波長変換素子210の周期分極反転構造の周期が固定であり、第2の波長変換素子220の周期分極反転構造がファンアウト構造であり、第1の周期Λは、30.8μm以上30.95μm以下の範囲から選択され、第2の周期Λは、32.7μm以上33.15μm以下の範囲を満たす。これにより、レーザ200は、温度Tおよび/または第2の波長変換素子220の上記第2の周期Λを適宜選択するだけで、波長3μm以上3.5μm以下の範囲の中赤外の光を発することができ、波長チューニングが可能となる。
さらに、この場合、温度Tは、少なくとも室温(30℃)以上100℃以下の温度範囲であれば、第2の波長変換素子220がOPO発振する場合の縮退温度Tよりも高くなるので、OPO発振を抑制し、レーザ200の発振効率を高めることができる。第2の波長変換素子の周期分極反転構造がファンアウト構造を有する場合を例示したが、第1の波長変換素子の周期分極反転構造がファンアウト構造であり、第2の波長変換素子の周期分極反転構造の周期が固定であっても、同様にチューニング可能なレーザとなることは言うまでもない。また、これらを組み合わせて、さらに複雑なチューニング可能なレーザとしてもよい。
図2(A)では、本発明のレーザ200は、第1の波長変換素子210、第2の波長変換素子220および温度制御部230に加えて、入力カプラ240および出力カプラ250を備える。これにより、共振器を構成できる。また、本発明のレーザ200の光の出射側には、フィルタ260が設置され、これにより、所望の波長を有する光(ここでは、アイドラ波長λを有するアイドラ光および差周波波長λを有する差周波光)のみを取り出すことができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明によるレーザ超音波探傷装置を説明する。
図3は、本発明によるレーザ超音波探傷装置を示す模式図である。
本発明によるレーザ超音波探傷装置300は、少なくとも、ポンプ波長λを有するポンプ光を発する励起源310、および、励起源310からのポンプ光をアイドラ波長λを有するアイドラ光に波長変換し、被験物320に照射するレーザ200を備える。ここで、レーザ200は、実施の形態1で説明したレーザ200と同様であるため、説明を省略する。
励起源310は、ポンプ波長λを有する光が、レーザ200においてアイドラ波長λを有する光に変換される限り制限はないが、例示的には、波長1064nmを有する光を発するYAGレーザまたはNd:YVOレーザである。これらは入手可能であり、励起源として優れている。このようなレーザを励起源310に使用すれば、波長3μm以上3.5μm以下の範囲の波長を有する中赤外光をアイドラ光として得ることができる。このような中赤外光は、被験物320が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である場合に被験物320へのダメージを生じることなく高い感度で、被験物320における欠陥、剥離、亀裂等の探傷を可能にするため好ましい。図3において、励起源310とレーザ200とは、被験物320に振動を発生させるパルスレーザとして機能する。
本発明によるレーザ超音波探傷装置300は、パルスレーザによって発生した被験物320の振動を検出する別のレーザ330をさらに備えることが好ましい。例えばレーザ330は、He−Ndレーザ、ファイバレーザ、帰還形半導体レーザ等の周波数が安定なレーザであり得る。
図3では、本発明によるレーザ超音波探傷装置300は、被験物320で発生する超音波を検出し、解析する解析部340をさらに備える。解析部340は、超音波をファブリ・ペロー干渉計、フォトダイオード、増幅器などの光検出に用いられる光学部品を備え、超音波の画像解析等を行う中央演算処理装置や、結果をオシロスコープ等で可視化する表示部を備えてもよい。
図3では、図示しないが、ミラー、コリメートレンズ、集光レンズ、ビームスプリッタ、1/4波長板、フィルタ等の光学系を含んでよいことは言うまでもない。
本発明によるレーザ超音波探傷装置300の動作について簡単に説明する。ここで、理解をしやすくるため、励起源310が、波長1064nmを有するYAGレーザであり、レーザ200が、YAGレーザをアイドラ波長3.2μmを有するアイドラ光に変換し、被験物320がCFRPであり、レーザ330がHe−Ndレーザであるものとする。
レーザ超音波探傷装置300において、励起源310が発するポンプ波長λを有するポンプ光(YAGレーザ)が、レーザ200に入射し、レーザ200は、YAGレーザをアイドラ波長約3.2μmを有するアイドラ光に変換する。このアイドラ光がパルスレーザとして機能する。
レーザ200からのパルスレーザは、例えば、ビームスプリッタ(図示せず)、ミラー(図示せず)などの光学系を介して、被験物320の表面に照射される。被験物320の表面にパルスレーザが照射されると、被験物320の表面に広帯域の超音波が発生する。この超音波は、被験物320の表面から内部を伝播して裏面まで達し、反射され、再びエコーとして表面に戻る。なお、ビームスプリッタによりパルスレーザの一部を解析部340に導き、オシロスコープのトリガ信号として使用してもよい。ここで、本発明では、被験物320がCFRPにおいては、レーザ200が波長3.2μmの中赤外光のパルスレーザを発するので、CFRPにダメージを生じさせることなく、超音波を発生させることができる。
一方、レーザ330は、被験物320の表面に戻ってきたエコーを検出するように機能するが、レーザ330から発せられた連続発振レーザは、ミラー(図示せず)、ビームスプリッタ(図示せず)、1/4波長板(図示せず)等の光学系を介して被験物320の表面に照射される。この反射光は、再度、1/4波長板、ビームスプリッタ、レンズ(図示せず)等の光学系を経て、解析部340のファブリ・ペロー干渉計、フォトダイオードに入射され、電気信号に変換される。電気信号は適宜増幅器などにより増幅され、低周波ノイズを除去して、オシロスコープに入力される。
被験物320の裏面で反射されてきたエコーによって、被験物320の表面が超音波振動すると、表面の空間的に位置は超音波の周期で変位する。そのため、レーザ330からのレーザ(光)は、被験物320の表面で反射される際に、変位に伴うドップラーシフトを受け、波長が変化する。このような波長の変化を、解析部340において例えばファブリ・ペロー干渉計を通すことにより、強度の変化に変換できる。
被験物320の表面および裏面で反射を繰り返すエコーが表面に戻る際に、解析部340の例えばフォトダイオードの出力信号は大きく変化することになる。この信号を例えばオシロスコープ上で表示させれば、被験物320の空洞、亀裂、不純物等の欠陥の有無を判別できる。一定の時間間隔で信号強度が変化する場合には、被験物320が欠陥を有さないと判別できる。一定の時間間隔よりも短い時間で信号強度が変化する場合、被験物320が欠陥を有しており、欠陥箇所でエコーが反射されていると判別できる。
実施の形態2では、エコーの検出方法としてファブリ・ペロー干渉計を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、マイケルソン干渉計、さらにはダイナミックホログラムを組み合わせてもよい。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[実施例1]
実施例1では、第1の波長変換素子(図2の210)および第2の波長変換素子(図2の220)が、Mgを1mol%添加した定比組成のタンタル酸リチウム単結晶(Mg:SLTと称する)からなり、第1の波長変換素子の第1の周期Λが30.9μm、3mm×3mm×24mm長の角柱状であり、第2の波長変換素子の第2の周期Λが32.88μm、3mm×3mm×20mm長の角柱状であり、これらを単一の温度制御部(図2の230)としてヒータに配置したレーザを構築した。第1の波長変換素子は、OPO素子であり、第2の波長変換素子は、DFM素子であった。図中では、第1の波長変換素子をOPO、および、第2の波長変換素子をDFMと省略して示す場合がある。
ここで、Mg:SLTに関する屈折率分散式(例えば、Dolevら,Appl.Phys.B,2009,96,423−432、および、Limら、Japanese Journal of Applied Physics,52,2013,032601を参照)を用いて、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。結果を図5に示す。
図4は、実験で用いた光学系を示す図である。
図4に示す光学系により、温度と出力光のエネルギーとの関係、ならびに、ポンプ光のエネルギーと出力光のエネルギーとの関係を調べた。実験に用いた共振器はシグナル波に対する単共振型発振器(SRO)として構成した。共振器ミラーは平行平板型で共振器長は約110mmとした。ポンプ光の光源(励起源)は、Q−SW型YAGレーザ(Quantel社Centurionレーザ)であった。ポンプ光の波長は1.064nmであり、パルス幅9ns(FWHM)、繰り返し周波数100Hzおよびパルスエネルギー28.8mJで使用した。ポンプ光のビームは、ウエスト直径2.4mmφ(1/e)のトップハット形状を有した。
ポンプ光のビーム(パルス光)は、ビーム整形および光量調節のための光学系を経て、共振器に入射した。次いで、共振器で波長変換された出射光を、赤外光分離フィルタを経て、Spectrogen社製LP2500フィルタ(2500nmより短波長の光をカットする)を通して、中赤外光のみを取り出し、12A−Pセンサで検出した。第2の波長変換素子(DFM素子)のOPO光(1.9〜2.4μm帯)の一部は、アイドラ分離フィルタの反射光として取り出し。PE50型センサで検出した。結果を図7および図8に示す。
[比較例2]
比較例2では、第1の波長変換素子の第1の周期Λが31.1μmであり、第2の波長変換素子の第2の周期Λが32.85μmであり、いずれも、3mm×3mm×20mm長の角柱状であり、それぞれ別個の温度制御部に配置した以外は、実施例1と同様であった。
実施例1と同様に、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。また、図4に示す実験系を用いて、温度と出力光のエネルギーとの関係、ならびに、ポンプ光のエネルギーと出力光のエネルギーとの関係を調べた。ポンプ光のパルスエネルギーが36mJであり、ポンプ光のビームは、ウエスト直径1.9mmφ(強度1/e)であった。これらの結果を図6、図9および図10に示す。
[実施例3]
実施例3では、第1の波長変換素子の第1の周期Λがそれぞれ30.9μm、90.95μm、31.0μm、31.05μmおよび31.1μmの3mm×3mm×24mm長の角柱状であり、第2の波長変換素子の第2の周期Λがそれぞれ32.68μm、32.73μm、32.78μm、32.82μm、32.85μmおよび32.88μmの3mm×3mm×20mm長の角柱状であり、これらを単一の温度制御部(図2の230)に配置したレーザを構築した。実施例1と同様に、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。結果を図11に示す。
[実施例4]
実施例4では、第1の波長変換素子の第1の周期Λが30.8μmの3mm×3mm×24mm長の角柱状であり、第2の波長変換素子の第2の周期Λが32.70μm以上33.15μm以下の範囲を満たすファンアウト構造を有する3mm×3mm×20mm長の角柱状であり、これらを単一の温度制御部(図2の230)に配置したレーザを構築した。実施例1と同様に、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。結果を図12に示す。
[実施例5]
実施例5では、第1の波長変換素子の第1の周期Λが30.85μmとした以外は、実施例4と同様であった。実施例1と同様に、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。結果を図13に示す。
[実施例6]
実施例6では、第1の波長変換素子の第1の周期Λが30.9μmとした以外は、実施例4と同様であった。実施例1と同様に、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。結果を図14に示す。
[実施例7]
実施例7では、第1の波長変換素子の第1の周期Λが30.95μmとした以外は、実施例4と同様であった。実施例1と同様に、ポンプ波長1.064μmである場合の発振波長と位相整合温度との関係を算出した。結果を図15に示す。
図5は、実施例1のレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図5によれば、単一温度80℃(T)において、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子も、発振波長(すなわちアイドラ波長)が3.24μmで位相整合条件を満たす、すなわち、3.24μmのアイドラ光を発することが示される。さらに、第2の波長変換素子によるパラメトリック発振は見られるものの、64℃(T)で縮退状態となり、それ以上の温度ではパラメトリック発振しないことが分かった。
第1の波長変換素子は、ポンプ波長λ(1.064μm)とアイドラ波長λ(3.242μm)とシグナル波長λ(1.584μm)とが、関係1/λ=1/λ+1/λを満たし、第2の波長変換素子は、シグナル波長λ(1.584μm)と差周波波長λ(3.098μm)とアイドラ波長λ(3.242μm)とが、関係1/λ=1/λ+1/λを満たしていた。一方、縮退状態では、ポンプ波長λ(1.064μm)とアイドラ波長λi’(2.128μm)とシグナル波長λs’(2.128μm)とが、関係1/λ=1/λs’+1/λi’および関係λs’=λi’を満たした。
図6は、比較例2の実施例1のレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図6によれば、第1の波長変換素子の温度が30℃であり、第2の波長変換素子の温度が80℃である場合に、発振波長(すなわちアイドラ波長)が3.23μmで位相整合条件を満たす、すなわち、3.23μmのアイドラ光を発することが示される。さらに、第2の波長変換素子によるパラメトリック発振は見られるものの、71℃で縮退状態となり、それ以上の温度ではパラメトリック発振しないことが分かった。この場合には、第1の波長変換素子と第2の波長変換素子とを別個のヒータ等によりそれぞれ異なる温度に制御する必要があるため、レーザを小型化できない。
さらに、図6によれば、単一温度56℃において、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子も、発振波長(すなわちアイドラ波長)が3.19μmで位相整合条件を満たす、すなわち、3.19μmのアイドラ光を発することが示されるが、この場合には、動作温度(56℃)が第2の波長変換素子がパラメトリック発振する場合の縮退温度(71℃)よりも低いため、レーザは、3.19μmのアイドラ光に加えて、第2の波長変換素子によるパラメトリック発振の光(ここでは、2.8μmおよび1.99μm)も発するため、中赤外光への変換効率は著しく低減することが示される。
図7は、実施例1のレーザの出力光のエネルギーの温度依存性を示す図である。
図7では、ポンプ光のエネルギーが28.8mJである場合のレーザからのアイドラ波長3.24μmを有するアイドラ光(出力光)のエネルギーの温度依存性を示す。図7によれば、温度80℃近傍において、アイドラ光はもっとも高いエネルギーを有した。このことは、図5に示す結果に良好に一致した。
図8は、実施例1のレーザのポンプ光のエネルギーと出力光のエネルギーとの関係を示す図である。
図8では、温度制御部が第1の波長変換素子および第2の波長変換素子を40℃または80℃に加熱した際の、ポンプ光のエネルギーとアイドラ波長3.24μmを有するアイドラ光(出力光)との関係を示す。図8によれば、温度80℃におけるアイドラ光のエネルギーは、温度40℃のそれよりも顕著に大きかった。このことは、図5に示す結果に良好に一致し、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子が単一温度で制御され、中赤外の光を発するレーザとして機能することを示す。
図9は、比較例2のレーザにおける第2の波長変換素子の出力光のエネルギーの温度依存性を示す図である。
図9では、ポンプ光のエネルギーが36mJである場合の第2の波長変換素子からのアイドラ波長3.23μmを有するアイドラ光(出力光)のエネルギーの温度依存性を示す。図9によれば、温度80℃近傍において、アイドラ光はもっとも高いエネルギーを有した。このことは、図6に示す結果に良好に一致した。
図10は、比較例2のレーザのポンプ光のエネルギーと出力光のエネルギーとの関係を示す図である。
図10では、第1の波長変換素子を30℃に、第2の波長変換素子を80℃にそれぞれ加熱した際の、ポンプ光のエネルギーとアイドラ波長3.23μmを有するアイドラ光(出力光)との関係を示す。参考のため、図10には、第1の波長変換素子のみの結果、すなわち、第1の波長変換素子を室温(30℃)に維持した際の、第1の波長変換素子におけるポンプ光のエネルギーとアイドラ波長3.23μmを有するアイドラ光との関係も示す。
図10によれば、第1の波長変換素子のみの場合よりも、第1の波長変換素子と第2の波長変換素子とを用いることにより、アイドラ光のエネルギーが増大し、OPOとDFMとのフォトンリサイクリングが有効であることが分かる。なお、図8と図10とを単純に比較はできないが、単一温度において同様の出力エネルギーが得られることから、本発明の単一温度で制御したレーザが有効であり、別個の温度制御を不要とし、小型化できることが示された。
以上から、本発明によるレーザにおいて、第1の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第1の波長変換素子と、第2の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第2の波長変換素子と、これらを温度Tに加熱し、温度を制御する単一の温度制御部とを備え、温度制御部は、これらの温度Tを、第2の波長変換素子が、OPO発振する場合の縮退温度Tよりも高くなるよう制御することが有効であることが示された。
図11は、実施例3によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図11によれば、第1の波長変換素子(OPO)の位相整合条件のカーブと、第2の波長変換素子(DFM)の位相整合条件のカーブとが交差する温度(T)に設定することにより、単一の動作温度(T)で第1の波長変換素子および第2の波長変換素子がともに位相整合条件を満たし、波長3.2μ近傍の中赤外の光を発することができることが分かる。さらに、動作温度Tが、第2の波長変換素子がOPO発振する場合の縮退温度(T)よりも高くなる条件を満たす位相整合条件を選択するだけで、高い変換効率を確実にすることができることが示された。
具体的には、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子がともにMg:SLT単結晶からなる場合、第1の周期Λは、30.8μm以上31.2μm以下の範囲であり、第2の周期Λは、32.7μm以上32.9μm以下の範囲であればよいことが分かる。さらには、この場合、温度Tは、65℃以上150℃以下の範囲の温度であれば、第2の波長変換素子のパラメトリック発振する場合の縮退温度(T)よりも高くなるので、波長約3.2μmの中赤外の光を発するレーザを提供できることが分かった。
図12は、実施例4によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図13は、実施例5によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図14は、実施例6によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図15は、実施例7によるレーザの発振波長と位相整合温度との関係を示す図である。
図12〜図15には、位相整合温度が30℃以上100℃以下の範囲の結果を示すが、位相整合温度が100℃を超えても動作可能な範囲があることは理解されたい。また、図12〜図15の結果は、いずれも、第1の波長変換素子および第2の波長変換素子の温度(すなわち、図中の位相整合温度)が、第2の波長変換素子のパラメトリック発振する場合の縮退温度よりも高くなるよう設計されており、第2の波長変換素子のパラメトリック発振は見られない条件で算出されている。図12〜図15において、アイドラ波長は、第1の波長変換素子によるパラメトリック発振に基づくアイドラ波長を有する光と、第2の波長変換素子による差周波発振によるアイドラ波長を有する光との両方の条件を満たしている。
図12〜図15によれば、第1の波長変換素子の第1の周期を、30.8μm以上30.95μm以下の範囲から選択される値に固定とし、第2の波長変換素子の第2の周期を、32.7μm以上33.15μm以下の範囲を満たす幅を有するファンアウト構造とすることにより、少なくとも温度30℃以上100℃以下の範囲において、3μm以上3.5μm以下の範囲の中赤外の光を発することができる。本発明によるレーザは、温度Tおよび/または第2の波長変換素子の第2の周期Λを適宜選択するだけで、波長3μm以上3.5μm以下の範囲の中赤外の光を発することができ、波長チューニングが可能となることが示された。
なお、アイドラ光の波長と、差周波光の波長とが交差する温度を採用すれば、理論的に100%の変換効率を達成できる。しかしながら、例えば、CFRPを被験物とする際には、差周波光も中赤外の波長範囲を有するため、レーザ超音波探傷においてはその精度に大きな影響を及ぼさないため、厳密な制御は求められない場合もある。
また、実施例4〜7では、第2の波長変換素子の周期分極反転構造がファンアウト構造を有するように設計したが、逆であっても、同様にチューニング可能なレーザとなることは言うまでもない。また、これらを組み合わせて、さらに複雑なチューニング可能なレーザとしてもよい。
本発明によるレーザは、とりわけ、波長変換を利用した中赤外光のレーザ光の発振に有利であり、温度制御部が1つでよいので、小型レーザである。このようなレーザは、超音波探傷装置に適用され、CFRPの欠陥の検出に好ましい。
200 レーザ
210 第1の波長変換素子
220 第2の波長変換素子
230 温度制御部
240 入力カプラ
250 出力カプラ
260 フィルタ
300 レーザ超音波探傷装置
310 励起源
320 被験物
330 別のレーザ
340 解析部

Claims (12)

  1. 第1の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第1の波長変換素子であって、温度Tにおいて、ポンプ波長λを有するポンプ光を、アイドラ波長λを有するアイドラ光とシグナル波長λを有するシグナル光とに波長変換し、ここで、前記ポンプ波長λと前記アイドラ波長λと前記シグナル波長λとは、関係1/λ=1/λ+1/λを満たす、第1の波長変換素子と、
    第2の周期Λを有する周期分極反転構造を有する第2の波長変換素子であって、前記温度Tにおいて、前記シグナル波長λを有する前記シグナル光を、差周波波長λを有する差周波光と前記アイドラ波長λを有する前記アイドラ光とに波長変換し、ここで、前記シグナル波長λと前記差周波波長λと前記アイドラ波長λとは、関係1/λ=1/λ+1/λを満たす、第2の波長変換素子と、
    前記第1の波長変換素子および前記第2の波長変換素子を加熱し、温度を制御する温度制御部と
    を備え、
    前記温度制御部は、前記第1の波長変換素子および前記第2の波長変換素子の前記温度Tを、前記第2の波長変換素子が、前記ポンプ波長λを有するポンプ光を、アイドラ波長λi’を有するアイドラ光とシグナル波長λs’を有するシグナル光とに波長変換する際の、前記ポンプ波長λと前記アイドラ波長λi’と前記シグナル波長λs’とが、関係1/λ=1/λs’+1/λi’および関係λs’=λi’を満たす場合の縮退温度Tよりも高くなるよう制御し、
    前記アイドラ光の前記アイドラ波長λ が3μm以上3.5μm以下の波長を有する中赤外光を発する、レーザ。
  2. 前記第1の波長変換素子および/または前記第2の波長変換素子の周期分極反転構造は、ファンアウト構造である、請求項1に記載のレーザ。
  3. 前記第1の波長変換素子および/または前記第2の波長変換素子は、定比組成のニオブ酸リチウム、実質的に定比組成のタンタル酸リチウム、Mg、Zn、ScおよびIからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のニオブ酸リチウム、および、Mg、Zn、ScおよびInからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のタンタル酸リチウムからなる群から選択される単結晶からなる、請求項1に記載のレーザ。
  4. 前記第1の波長変換素子および前記第2の波長変換素子は、単一の単結晶からなる、請求項1に記載のレーザ。
  5. 前記第1の波長変換素子および/または前記第2の波長変換素子は、Mg、Zn、ScおよびInからなる群から選択される少なくとも1以上の元素を含む実質的に定比組成のタンタル酸リチウムからなる単結晶からなり、
    前記第1の周期Λは、30.5μm以上31.5μm以下の範囲であり、
    前記第2の周期Λは、32.5μm以上33.15μm以下の範囲である、請求項2に記載のレーザ。
  6. 前記第1の周期Λは、30.8μm以上31.2μm以下の範囲であり、
    前記第2の周期Λは、32.7μm以上32.9μm以下の範囲である、請求項5に記載のレーザ。
  7. 前記温度Tは、65℃以上150℃以下の範囲の温度である、請求項6に記載のレーザ。
  8. 超音波によって被験物の探傷を試験するレーザ超音波探傷装置であって、
    ポンプ波長λを有するポンプ光を発する励起源と、
    前記励起源からの前記ポンプ光を、アイドラ波長λを有するアイドラ光に波長変換し、前記アイドラ光を前記被験物に照射するレーザと
    を備え、
    前記レーザは、請求項1に記載のレーザである、レーザ超音波探傷装置。
  9. 前記レーザは、前記アイドラ光が3.15μm以上3.25μm以下の波長を有する中赤外光を発する、請求項8に記載のレーザ超音波探傷装置。
  10. 前記被験物で発生した超音波を検出し、解析する解析部をさらに備える、請求項8に記載のレーザ超音波探傷装置。
  11. 前記被験物は、炭素繊維強化プラスチックである、請求項9に記載のレーザ超音波探傷装置。
  12. 前記励起源は、Nd:YAGレーザまたはNd:YVOレーザである、請求項8に記載のレーザ超音波探傷装置。
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