図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
図1において、タンクシステム1は、エンジン(ENG)2のための燃料を溜めるタンク3を有する。エンジン2は、車両、船舶、航空機などの乗り物の動力源である。タンクシステム1は、例えば、車両用タンクシステムである。この場合、エンジン2は、内燃機関により提供される。燃料は、液体としてエンジン2に供給される。ただし、燃料は、燃料蒸気を生じることがある。燃料は、ガソリン、またはディーゼル燃料などである。
タンクシステム1は、エンジン2とタンク3との間に燃料供給装置4を有する。燃料供給装置4は、インタンクポンプ、燃料フィルタ、燃料噴射ポンプ、および燃料噴射弁を備えることができる。タンク3内の燃料は、燃料供給装置4によりエンジン2へ供給される。エンジン2は、燃料を燃焼することにより、動力を提供する。
タンクシステム1は、燃料蒸気浄化システム5を有する。燃料蒸気浄化システム5は、燃料蒸気をエンジン2に供給することにより燃焼させる。燃料蒸気浄化システム5は、大気への燃料蒸気の排出を抑制する。燃料蒸気浄化システム5は、燃料蒸気浄化機器(FVEC)6を有する。燃料蒸気浄化機器6は、燃料蒸気を一時的に蓄積する蓄積器と、蓄積された燃料蒸気を所定のタイミングでエンジン2に供給する制御器とを有する。例えば、蓄積器は、燃料蒸気を吸着する活性炭により提供される。また、制御器は、電気的な制御装置と、押し流し用の外気を導入する弁とによって提供される。
燃料蒸気浄化システム5は、タンク3内の空洞と燃料蒸気浄化機器6とを連通する燃料蒸気通路7を有する。燃料蒸気通路7は、タンク3内に発生した燃料蒸気を燃料蒸気浄化機器6に案内する。燃料蒸気通路7は、タンク3へ外気を供給する通路でもある。燃料蒸気通路7は、タンク3から延びている。
燃料蒸気浄化システム5は、燃料制御弁8を有する。燃料制御弁8は、燃料蒸気、および空気の流通を許容する。燃料制御弁8は、タンク3から燃料蒸気浄化機器6への燃料液体の流出を抑制する。燃料蒸気通路7の中に流出した燃料液体は、大量の燃料蒸気を発生する場合がある。この場合、燃料蒸気浄化機器6が飽和する場合がある。そこで、燃料液体の流出は、可能な限り抑制されることが望ましい。燃料制御弁8は、燃料蒸気通路7に設けられている。燃料制御弁8は、タンク3に固定されている。図中には、燃料液体の液面FLが例示されている。
燃料蒸気浄化機器6が制御装置を備える場合、制御装置は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置とを有する。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置を機能させる。
制御装置が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
図2において、燃料制御弁8の正規の姿勢が図示されている。以下の説明において、上、下、上方向UP、および下方向DWなどの語は、正規の姿勢に基づいている。燃料制御弁8はいわゆるロールオーバーバルブである。燃料制御弁8は、重力に反応する重力弁である。燃料制御弁8は、燃料液体遮断弁、またはフロート弁など多様な名称で呼ばれる場合がある。図中には、閉弁状態が図示されている。図中には、上方向UPと下方向DWとが図示されている。図中には、燃料制御弁8の中心軸AXが図示されている。図中には、燃料の液面FLの一例が図示されている。
燃料制御弁8は、ケース10と、可動体20とを有する。ケース10は、樹脂製である。ケース10は、タンク3から延び出す燃料蒸気通路7を区画形成している。ケース10は、固定の弁座面を提供する。ケース10は、可動体20を収容する容器を提供する。ケース10は、可動体20の移動を案内する案内部材でもある。ケース10は、タンク3内の燃料液体の飛沫を阻止するカバーでもある。
可動体20は、燃料蒸気通路7を開閉する。燃料制御弁8は、可動体20の位置に応じて、開弁状態と閉弁状態とを提供する。可動体20が上端位置にあるとき、燃料制御弁8は閉弁状態を提供する。可動体20が下端位置にあるとき、燃料制御弁8は開弁状態を提供する。可動体20が上端位置以外にあるとき、燃料制御弁8は開弁状態を提供する。可動体20は、燃料制御弁8を開弁状態または閉弁状態に操作する操作部材でもある。
可動体20は、樹脂製である。可動体20は、樹脂成形品である。樹脂は、熱可塑性樹脂である。樹脂は、ポリアセタール(POM)またはポリカーボネート(PC)などにより提供できる。可動体20は、ケース10の中を移動可能である。可動体20は、移動範囲STにわたって、上下方向に、すなわち中心軸AXに沿って移動可能である。可動体20は、弁座面と接し、または離れて、燃料蒸気通路7を開閉する弁体面を有する。
可動体20は、タンク3の傾斜角度、すなわち重力によって移動する。可動体20は、重力によって移動できる質量を有している。可動体20は、図示される正規の姿勢において、燃料液体に浮くことができる。可動体20は、可動体20の少なくとも一部が燃料液体の中に没する場合に、燃料液体に浮く。可動体20は、燃料液体に浮いて移動するための空気室を有している。可動体20は、フロートとも呼ばれる。可動体20は、可動弁体とも呼ばれる。
タンク3の傾斜角度が所定角度を下回る場合には、燃料制御弁8は開弁状態を提供する。タンク3の傾斜角度が所定角度を越える場合には、燃料制御弁8は閉弁状態を提供する。例えば、車両が横転した場合には、可動体20は燃料液体に浮かない。この場合、燃料制御弁8は閉弁状態を提供する。
タンク3の傾斜角度が所定角度を下回る場合であって、燃料液体の液面FLが十分に低い場合、燃料制御弁8は開弁状態を提供する。タンク3の傾斜角度が所定角度を下回る場合であって、燃料液体の液面FLが十分に高い場合、燃料制御弁8は閉弁状態を提供する。これにより、タンク3内の燃料液体の液面FLが高い場合でも、燃料液体の流出が抑制される。
ケース10は、第1ケース11と、第2ケース12とを有する。第1ケース11は、樹脂成形品である。第1ケース11は、小径部13、大径部14、および段差部15を有する。小径部13は、所定の直径をもつ。小径部13は、出口管を提供する。小径部13は、弁を提供する部分でもある。大径部14は、小径部13より大きい直径をもつ。大径部14は、可動体29を収容している。大径部14は、可動体20を収容する収容室34を区画する。段差部15は、小径部13と大径部14とを接続する部分である。段差部15は、小径部13の下端部と、大径部14の上端部とを接続している。段差部15は、小径部13の下端部と、大径部14の上端部との間を閉塞している。第1ケース11は、通気穴を備えることができる。
小径部13は、仕切壁16を有する。仕切壁16は、小径部13の内部空洞を上下に仕切るように、小径部13の中に設けられている。仕切壁16は、内フランジでもある。小径部13は、筒状部17を有する。筒状部17は、仕切壁16によって支持されている。筒状部17は、上下方向に延びる通路を提供する。筒状部17は、仕切壁16から下方向に延び出すように配置されている。筒状部17は、仕切壁16から大径部の方向、すなわち下方向DWへ突出している。この形状は、仕切壁16の上から筒状部17の中への燃料液体の戻り流を助ける。
筒状部17の上端は、仕切壁16に連続している。筒状部17の下端は、可動体20に向けて開口している。筒状部17の下端内側には、固定の弁座面18が形成されている。弁座面18は、筒状部17の内側面である。弁座面18は、下向きに広がる内拡大面である。弁座面18は、先端に向けて内径が大きくなる内コーン状である。弁座面18は、直線状の内拡大面を有するテーパ面である。弁座面18は、曲面でもよい。
小径部13は、筒状である。小径部13は、筒状部17より大きい内径を有する。よって、小径部13と筒状部17との間には、仕切壁16で閉じられた筒状空洞が形成されている。小径部13は、内部に出口通路31としての空洞を区画形成する。出口通路31は、出口開口32と仕切壁16との間に形成されている。小径部13は、筒状、または仕切壁16を底とする有底筒状である。筒状部17は、燃料制御弁8によって開閉されるバルブ通路33を区画形成している。バルブ通路33は、凸曲面によって区画されている。バルブ通路33は、上方向UPへ向けて滑らかに広がる内面を有する。バルブ通路33は、下方向DWに向けて、上記弁座面18によって拡大している。
大径部14は、筒状である。大径部14は、内部に収容室34としての空洞を区画形成する。大径部14は、可動体20を収容している。大径部14の下端には、第2ケース12が設けられている。
第2ケース12は、第1ケース11の下端に設けられている。第2ケース12は、大径部14の下端に接続されている。この実施形態では、第1ケース11と第2ケース12とは、スナップフィットによって接続されている。第1ケース11と第2ケース12とは、ネジ、別体リテーナ、溶着などの接続手法を利用して接続されていてもよい。第2ケース12は、ケース10の底部を提供する。第2ケース12は、大径部14の下端を覆うように配置されている。第2ケース12は、下部開口35を区画形成している。下部開口35は、ケース10内への主要な入口である。下部開口35は、燃料液体のための入口として機能する。
可動体20は、本体21、フランジ部22、およびニードル部23を有する。本体21は、筒状である。本体21は、上面21a、下面21b、および外側面21cを有する。上面21aは、径方向外側に向けて下がるように傾斜している。上面21aは、燃料制御弁8に許容されている傾斜角において想定される液面に対応している。
フランジ部22は、本体21より上方向UPに位置している。フランジ部22は、本体21から離れている。フランジ部22は、本体21とニードル部23との間に位置している。フランジ部22は、ニードル部23の基部において、径方向外側に延び出している。
フランジ部22は、上面22a、下面22b、および外側面22cを有する。上面22aは、径方向内側に向けて下がるように傾斜している。上面22aは、燃料制御弁8に許容されている傾斜角において想定される液面に対応している。下面22bは、図示される正規の姿勢において、水平に拡がっている。外側面22cの直径は、本体21の直径より小さい。フランジ部22は、上下方向に貫通する複数の燃料通路を有している。燃料通路は、上面22aの上に燃料液体が溜まることを抑制する。フランジ部22は、断面三角形の回転立体である。
ニードル部23は、上方向UPに向けて先細である。ニードル部23は、先端部に、曲面によって提供された可動の弁体面25を有する。燃料制御弁8は、弁座面18と弁体面25とが接触することにより閉弁状態を提供する。燃料制御弁8は、弁座面18と弁体面25とが離れることにより開弁状態を提供する。
ニードル部23の先端は、弁座面18の中に挿入されている。ニードル部23の先端は、弁座面18に案内されて、中心軸AXに位置付けられる。よって、弁座面18のうち、開口端の近傍の範囲は、ニードル部23を案内する案内面として機能する。
本体21、フランジ部22、およびニードル部23は、中央にフロート室24を区画形成している。フロート室24は、上方向UPにおいて閉塞されている。フロート室24は、下方向DWにおいて下面21bに開放されている。可動体20は、正規の姿勢においてのみ浮力を生じるキャップ状のフロートを提供している。
燃料制御弁8は、支援形状40を有する。本体21は、大きい樹脂の塊と呼ぶことができる。本体21は、複数の貫通穴41を区画形成している。支援形状40は、複数の貫通穴41によって提供されている。複数の貫通穴41は、本体21の中に分散している。複数の貫通穴41は、比較的厚い樹脂の中に位置している。複数の貫通穴41は、上下方向に延びている。複数の貫通穴41は、本体21の上面21aと下面21bとに連通している。複数の貫通穴41は、上面21aに開口している。複数の貫通穴41は、本体21の外側面21cには、開口していない。複数の貫通穴41の上面21aにおける開口は、フランジ部22の下に位置している。複数の貫通穴41は、フロート室24より径方向外側に位置している。
燃料制御弁8の製造方法は、可動体20を樹脂で成形する段階を有する。この段階において、複数の貫通穴41は、成形型によって成形されている。よって、複数の貫通穴41は、成形された形状である。複数の貫通穴41は、成形型を抜くための成形痕を有する。
複数の貫通穴41の中に位置する成形型は、成形段階において、樹脂の熱を運び出す。複数の貫通穴41の中に位置する成形型は、樹脂の熱の放出を促進する。このため、可動体20は、比較的厚い樹脂層によって成形される。比較的厚い樹脂層は、可動体20に求められる質量を与える。
複数の貫通穴41は、周方向に連続する環状部42を有する。環状部42は、フロート室24と連通される場合がある。この場合、環状部42は、フロート室24に対する補助室として機能させることができる。環状部42は、スプリングを収容するための収容室として利用される場合がある。
複数の貫通穴41は、通路としても機能する。空気または燃料の一部は、複数の貫通穴41を通る。弁座面18と弁体面25とは、弁を提供している。上面21aにおける複数の貫通穴41の複数の開口は、上下方向に関して弁から離れている。このため、燃料の飛沫は、弁に届きにくい。
複数の貫通穴41の複数の開口と、弁との間には、フランジ部22が設けられている。フランジ部22は、複数の貫通穴41から吹き出す燃料液体の弁への到達を抑制する障壁部材を提供する。このため、燃料の飛沫は、弁に届きにくい。
上面21aにおける複数の貫通穴41の複数の開口は、フロート室24より径方向外側に開口している。このため、上面21aにおける複数の貫通穴41の複数の開口は、径方向に関して弁から離れている。このため、燃料の飛沫は、弁に届きにくい。また、上面21aは、径方向外側に向けて傾斜している。このため、燃料の飛沫は、弁に届きにくい。
上述の観点において、支援形状40は、可動体20の樹脂成形を支援する。支援形状40は、可動体20の樹脂成形を容易にする。別の観点において、支援形状40は、弁への燃料飛沫の到達を抑制する機能を支援する。このように、支援形状40は、樹脂成形工程、および/または燃料流出抑制を支援する。
燃料制御弁8は、浮力調節機構50を有する。浮力調節機構50は、主としてフランジ部22によって提供されている。浮力調節機構50は、可動体20がフロートとして機能するときに、可動体20の浮力を調節する。フランジ部22は、複数の観点において、可動体20の浮力を調節する。
まず、フランジ部22は、可動体20がフロートとして機能するときに、液面FLにおける安定性を向上する。言い換えると、可動体20の感度を調節する。フランジ部22は、可動体20が液面FLに浮く場合に、フランジ部22が液面FLの上下にわたって位置するように位置付けられている。
フランジ部22は、可動体20が液面FLより上に移動する場合に、液面FLより上への比較的大きい体積の移動を生じさせる。このため、可動体20は、上方向UPへの移動に対抗するように、下方向DWへ作用する重量が増加し、浮力を失う。フランジ部22は、可動体20が液面FLより下に移動する場合に、液面FLより下へ比較的大きい体積の移動を生じさせる。このため、可動体20は、下方向DWへの移動に対抗するように、下方向DWへ作用する重量が減り、浮力を得る。このように、可動体20の浮沈に対抗するように、可動体20の浮力が調節される。フランジ部22がない場合、可動体20の浮沈に伴う浮力変化は、液面FLに対してニードル部23が発生する体積変化に依存する。このため、浮力の調節量は小さい。これに対して、フランジ部22は、ニードル部23よりも太いから、フランジ部22は、比較的大きな体積変化を生じる。この結果、液面FLにおける可動体20の位置が安定化される。
次に、フランジ部22は、可動体20がフロートとして機能するときに、傾斜角に起因する浮力変化を抑制する。中心軸AXの傾斜角が増加する場合、フランジ部22の一方の部分は液面FLの上に追加的に浮上する。同時に、フランジ部22の他方の部分は、液面FLの下に追加的に沈下する。このとき、可動体20は、追加浮上部分の体積に応じて、下方向DWへ作用する重量が増加し、浮力を失う。同時に、可動体20は、追加沈下部分の体積に応じて、下方向DWへ作用する重量が減り、浮力を得る。上面22aと、下面22bと、外側面22cとが規定するフランジ部22の形状は、追加浮上部分と、追加沈下部分とがバランスするように設定されている。
燃料制御弁8は、障壁機構60を有する。障壁機構60は、複数の障壁61と、複数の障壁通路62とを有する。複数の障壁61は、板状の部材である。複数の障壁61は、それらの間に、複数の障壁通路62を区画している。複数の障壁61は、第1ケース11の内部に形成されている。複数の障壁61は、第1ケース11と一体的に樹脂成形されている。複数の障壁61は、複数の消波板、または複数のバッフル板とも呼ばれる。
複数の障壁61は、上下方向に関して、すなわち中心軸AXに沿って、小径部13の径方向内側から延びている。複数の障壁61は、小径部13および段差部15から下方向DWに向けて延び出している。
さらに、複数の障壁61は、ケース10と可動体20との間に位置している。複数の障壁61は、可動体20と対向するように延びている。複数の障壁61は、上下方向に関して、閉弁状態にある可動体20に接触するか、閉弁状態にある可動体20と微小隙間を形成するように延びている。複数の障壁61は、上下方向に関して、上面22aと微小隙間を介して対向している。複数の障壁61は、開弁状態と閉弁状態との間において、可動体20の移動を許容するように形成されている。複数の障壁61は、閉弁状態の近傍において、ケース10と可動体20との間の空洞に位置するように形成されている。
小径部13と段差部15との間は、滑らかな曲面によって接続されている。複数の障壁61は、この曲面に沿って延びている。複数の障壁61は、小径部13の内側面から、径方向内側に向けて僅かに突出している。複数の障壁61は、筒状部17から離れている。複数の障壁61は、径方向に関して、小径部13の内側から延びている。複数の障壁61は、径方向に関して、段差部15に沿って延びている。複数の障壁61は、径方向に関して、段差部15の範囲内で延びている。複数の障壁61は、径方向に関して、大径部14には到達していない。複数の障壁61は、筒状部17より径方向外側に位置している。複数の障壁61は、径方向に関して、互いに重複している。障壁61は、径方向外側から径方向内側へ向かう直線的な流れを阻害する障壁部材でもある。
複数の障壁61は、それらの間に複数の障壁通路62を区画形成している。障壁通路62は、中心軸AXに対して、径方向外側から径方向内側へ向けて延びる。
燃料制御弁8は、流量調整機構70を有する。流量調整機構70は、可動体20が閉弁状態から開弁状態へ移動する場合に、流量に急激な増加を与える。すなわち、可動体20が閉弁状態から、わずかに移動するだけで、大きい流量増加を提供する。流量調整機構70は、開弁状態において、大きい開口面積を与える。
流量調整機構70は、筒状部17に形成された複数の溝71を有する。複数の溝71は、弁座面18の開放端に配置されている。複数の溝71は、弁座面18の開放端にのみ配置されている。複数の溝71は、弁座面18のうち、弁体面25と接触するシール線より開放端側に配置されている。複数の溝71は、シール線には到達していない。この結果、弁体面25が、弁座面18からわずかにリフトするだけで、複数の溝71を経由する流れが許容される。弁座面18に沿った流れだけでなく、複数の溝71を通る流れが許容されることで、大きい流量増加が得られる。逆に、弁体面25が、弁座面18に向けて接近する場合には、大きい流量から、急激に流れが遮断される。
複数の溝71は、弁座面18の開口端の縁を複数の凸部72に分割している。複数の凸部72は、ニードル部23と接触する。複数の凸部72は、ニードル部23を案内する。この観点で、流量調整機構70は案内機構でもある。複数の凸部72は、弁体面25を弁座面18の上のシール線へ案内する。
図3において、流量調整機構70を詳細に説明する。図中には、第1ケース11の内部における筒状部17の斜視図が図示されている。さらに、固定の弁座面18と可動の弁体面25とが接触するシール線18aが図示されている。
筒状部17は、仕切壁16から軸方向に沿って突出している。筒状部17は、仕切壁16から下方向DWに向けて突出している。仕切壁16の下方向DWには、小径部13と筒状部17との間に円筒状の空洞が形成されている。筒状部17は、円筒状である。筒状部17は、円柱状の外側面17aを有する。筒状部17は、外側面17aと仕切壁16とを滑らかにつなぐ曲面部17bを有する。筒状部17は、開口端に複数の先端面17cを有する。それぞれの先端面17cは、環状の面を複数の溝71によって分割した扇状の面である。
筒状部17は、開口端から軸方向に延びる弁座面18を有する。弁座面18は、円錐台状である。弁座面18は、内テーパ面とも呼ばれる。弁座面18の上端部には、バルブ通路33が連通している。筒状部17の先端面には、弁座面18の大径端が開口している。弁座面18の小径端は、バルブ通路33に連通している。弁座面18の軸方向における中間部分には、シール線18aが位置している。シール線18aは、完全な環状である。
筒状部17の先端部は、複数の溝71と、複数の凸部72とを有する。複数の溝71は、シール線18aより先端に設けられている。複数の溝71は、弁座面18より径方向外側へ広がっている。複数の溝71は、放射状である。複数の凸部72は、複数の溝71の間に設けられている。複数の凸部72は、その内側に、弁座面18を間欠的に残している。
複数の溝71は、すべてが同じ形状を有している。溝71は、径方向に関して、筒状部17の内外を貫通している。溝71は、筒状部17の先端において開放された凹部でもある。溝71は、外側面17aに開口している。溝71は、弁座面18に開口している。複数の溝71のそれぞれは、2つの側面71aと、それらの間の底面71bとによって区画されている。凸部72は、先端面17cを有する。凸部72も、側面71aと側面71aとの間に形成されている。よって、複数の溝71は、周方向に沿って間欠的に設けられている。
溝71は、径方向内側の縁71cを有する。縁71cは、底面71bと弁座面18との間に位置している。縁71cは、シール線18aより開口端側に位置している。シール線18aより先端側であって、シール線18aの直近に複数の縁71cが位置付けられている。複数の縁71cは、環状に配置されている。底面71bと弁座面18との交差部は、曲面状の複数の縁71cである。縁71cは、弁体面25との強い衝突を抑制するようにやや丸い縁である。縁71cは、底面71bと弁座面18とを滑らかにつなぐ曲面である。
図示の例では、筒状部17は先端部に6つの溝71と6つの凸部72とを有する。これら溝71と凸部72とによって、筒状部17の先端部はクラウン状に形成されている。言い換えると、筒状部17の先端部は、周方向に沿って凹凸状である。
シール線18aは、縁71cより僅かに奥側に位置している。シール線18aは、縁71cと同じ位置でもよい。シール線18aは、縁71cの直近に設けられることが望ましい。
図4は、筒状部17とニードル部23とを示す。図中には、閉弁状態が図示されている。破線は、開弁状態におけるニードル部23の位置を例示している。図中には、可動体20の移動範囲ST、すなわちニードル部23の移動範囲STが図示されている。
弁体面25は、可動体20によって操作可能である。弁体面25は、閉弁状態において、シール線25aにおいて弁座面18に接触する。言い換えると、弁体面25は、閉弁状態において、弁座面18のシール線18aに接触する。弁体面25は、開弁状態において弁座面18から離れる。シール線25aは、完全な環状である。
ニードル部23は、弁座面18に向けて延びている。弁体面25は、ニードル部23の先端部に設けられている。ニードル部23の先端部は、移動範囲STの全域にわたって筒状部17の中に位置付けられている。複数の凸部72は、弁体面25の移動範囲STより長く延びている。ニードル部23の先端部における弁体面25は、弁座面18の上に接触可能である。ニードル部23の先端部は、凸部72の上に広がる弁座面18に接触可能である。開弁状態において、複数の凸部72に残された弁座面18は、弁体面25と接触している。開弁状態において、複数の凸部72に残された弁座面18は、弁体面25を案内している。よって、ニードル部23が上下方向UP、DWへ移動する場合、ニードル部23の先端部は、弁座面18に沿って移動する。特に、複数の凸部72に沿って延びる弁座面18は、ニードル部23を案内する案内面を提供する。この観点で、複数の凸部72は、案内部材でもある。複数の凸部72に残された弁座面18は、ニードル部23の先端部において弁体面25を案内している。これにより、可動体20の端部において可動体20を案内することができる。
溝71の底面71bと弁座面18との間には縁71cが設けられている。縁71cは、底面71bと弁座面18とを滑らかにつなぐ曲面である。この曲面は、弁体面25と縁71cとの衝突を抑制するために貢献する。例えば、ニードル部23が溝71の中に沿って開弁状態から閉弁状態へ移動した場合でも、弁体面25が縁71cと衝突して生じる損傷が抑制される。なお、ニードル部23は、筒状部17に対して中心軸AX周りに回転可能である。よって、筒状部17の同じ場所に、ニードル部23が接触することによる摩耗が抑制されている。
縁71cの直近に設けられたシール線18aは、縁71cによる弁体面25の損傷を抑制するために貢献する。ニードル部23は、溝71の中に位置しながら、開弁位置から閉弁位置に向けて案内される場合がある。この場合でも、シール線18aの手前では、ニードル部23が弁座面18の上に位置するから、縁71cと弁体面25との衝突が抑制される。
複数の溝71は、ニードル部23が閉弁位置から僅かに開弁方向へ移動するだけで、大きな開口面積を提供する。閉弁状態から、弁体面25がリフトする場合、シール線25aの全体が弁座面18と対向している間は、開口面積は、制限されている。しかし、シール線25aが複数の溝71と対向すると、複数の溝71が開口面積を急激に増加させる。このように、この燃料制御弁8は、複数の溝71および複数の凸部72と、弁体面25との対向によって開弁状態における開口面積が規定される。このため、開口面積は歯車状である。この結果、広い開口面積を有する燃料制御弁8が提供される。また、複数の凸部72は、内側に弁座面18を有する。このため、可動の弁体面25を案内することができる。
以上に述べた実施形態によると、複数の溝71が設けられるから、開弁状態において、大きい開口面積が与えられる。この結果、広い開口面積を有する燃料制御弁が提供される。また、複数の凸部72は、可動の弁体面25を案内する。このため、案内機能が損なわれない。
他の実施形態
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、燃料制御弁8は、可動体20を上方向へ、すなわち閉弁方向へ付勢するスプリングを備えない。これに代えて、燃料制御弁8は、スプリングを有していてもよい。スプリングは、圧縮状態で、ケース10と可動体20との間に配置される場合がある。
上記実施形態では、燃料制御弁8は、タンク3に装着されている。これに代えて、燃料制御弁8は、タンク3へ燃料液体を戻すことができる場合、燃料蒸気通路7の中に設けられてもよい。
上記実施形態では、可動体20に一体的に弁体面25を形成した。これに代えて、可動体20と弁体面25とを別部材に形成してもよい。例えば、弁体面25は、可動体20に対して所定移動量だけ移動可能に構成してもよい。このような所定移動量は、遊びとも呼ばれる。所定移動量は、開弁特性にヒステリシス特性を与えるために貢献する。また、弁体面25は、弾力性のある弾性部材に形成してもよい。
上記実施形態では、弁座面18および弁体面25を直線状のテーパ面によって提供している。これに代えて、弁座面18および/または弁体面25は、凸状または凹状の曲面によって提供されてもよい。